説明

二次加工処理された合成繊維織物のリサイクル方法及びその装置

【課題】装置の損傷や有毒ガスの発生を抑え、二次加工処理された合成繊維織物のリサイクルを可能し、種々の成形品を成形が可能な樹脂をリサイクルする装置及び方法を提供する。
【解決手段】二次加工処理された合成繊維織物を第1射出成形機1で溶融し、再生ポリエチレンテレフタレート及び樹脂改質剤とを含むPET混合物を第2射出成形機2で溶融し、第2成形機2から溶融した混合物を第1射出成形機1に混入して、溶融した合成繊維織物とPET混合物とを混合し、再生合成樹脂を成形すると共に、フィルタ33を介して第1射出成形機1内のガスを排出し、第2射出成形機2内のガスを排出する二次加工処理された合成繊維織物のリサイクル方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次加工処理された合成繊維織物のリサイクル方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カーテン、暗幕やどん帳などはポリエステルなどの合成繊維織物で製造されていることが多い。合成繊維織物は燃えやすいため、ホテル・映画館・劇場など商用施設、あるいは病院・老人ホームなどの医療介護施設で使用されるカーテン、暗幕やどん帳は、防炎処理(難燃処理)をすることが法令で義務付けられている。また、一般家庭においても防炎処理されたカーテンなどの使用が推奨されている。
【0003】
防炎処理は、カーテンなどに縫製する前の織物を防炎剤(難燃剤)に浸漬させて行なわれることが多い。あるいは、防炎剤(難燃剤)に浸漬させて処理された合成繊維織物糸で織物を織りカーテンなどに縫製したり、縫製した後のカーテンなどを防炎剤(難燃剤)に浸漬させて処理することもある。また、カーテンなどをクリーニングした後は、再度防炎剤に浸漬させて防炎処理を施すこともある。なお、防炎処理については、非特許文献1に記載されている。その他、撥水性や防汚性カーテンなどに付加するために、フッ素系撥水撥油剤やフッ素系防汚剤(いずれもフッ素化合物)をカーテンなどに浸漬又は塗布させることもある。
【0004】
【非特許文献1】「カーテン・暗幕の浸漬法による防炎二次加工の解禁について」,防炎ニュース,(財)日本防火協会,2005年10月,No.164,p.5−7
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、使用されている防炎剤は主にハロゲン系防炎剤(臭素化合物)である。したがって、防炎処理された合成繊維織物を溶融しリサイクルする場合、防炎剤に含有する臭素化合物がしているため、合成繊維織物を溶融すると有毒な臭素ガスや臭化水素ガスが発生したり、臭素ガスや臭化水素ガスにより射出成形機などの装置が損傷する問題があり、防炎処理された合成繊維織物をリサイクルすることができなかった。仮に、リサイクルできたとしても、リサイクルされた合成樹脂に防炎剤が残留し、成形品を成形することが困難となる。
【0006】
撥水処理や防汚処理された合成繊維織物をリサイクルする場合でも、人体に有害なガスや装置に損傷を与えるガスが発生することもある。同様に、リサイクルされた合成樹脂に撥水剤や防汚剤が残留し、成形品を成形することが困難となることもある。
【0007】
また、リサイクルされた再生合成樹脂のIV値(Intrinsic Viscosity)が小さいことがあり、固有粘度が低く、複雑な形状を有する成形品を成形することが困難なこともある。
【0008】
従って、本発明の目的は、装置の損傷や有毒ガスの発生を抑え、二次加工処理された合成繊維織物のリサイクルを可能し、種々の成形品を成形が可能な再生合成樹脂をリサイクルする装置及び方法を提供する。なお、本願では、二次加工処理とは、防炎、撥水又は防汚の機能をカーテンなどに付加するための加工処理を言う。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、二次加工処理された合成繊維織物を第1射出成形機で溶融し、ポリエチレンテレフタレート及び樹脂改質剤とを含むPET混合物を第2射出成形機で溶融し、
前記第2射出成形機から溶融した前記PET混合物を前記第1射出成形機に混入して、溶融した前記合成繊維織物と前記PET混合物とを混合し、再生合成樹脂を成形すると共に、
フィルタを介して前記第1射出成形機内のガスを排出し、前記第2射出成形機内のガスを排出することを特徴とする防炎処理された合成繊維織物のリサイクル方法である。
【0010】
本願発明は、二次加工処理された合成繊維織物を溶融し成形品を成形可能な第1射出成形機と、
ポリエチレンテレフタレート及び樹脂改質剤とを含むPET混合物を溶融し、前記第1射出成形機に前記PET混合物を混入可能な第2射出成形機と、
前記第1射出成形機の加熱シリンダに射出方向に沿って設けられた複数のダクトに接続され、第1射出成形機内のガスを排出可能な第1ガス排出装置と、
前記第2射出成形機の加熱シリンダに設けられたダクトに接続され、第2射出成形機内のガスを排出可能な第2ガス排出装置と、
前記第1ガス排出装置のガス排出口に接続されたフィルタとを備えたことを特徴とする防炎処理された合成繊維織物のリサイクル装置である。
【0011】
二次加工処理、例えば防炎処理された合成繊維織物は、第1射出成形機で溶融され再生合成樹脂として成形される。合成繊維織物は防炎剤を含んでいるので、有毒な臭素ガスや臭化水素ガスが第1射出成形機内で発生する。有毒な臭素ガスや臭化水素ガスを除去するフィルタを介して第1射出成形機内のガスを排出するので、有毒なガスが外部に排出されることがない。また、射出成形機内に臭素化合物が残留することがないので、射出成形機の損傷を抑制できる。なお、効果的に第1射出成形機内のガスを排出する観点から、第1射出成形機の加熱シリンダに射出方向に沿って設けられた複数のダクトからガスを排出することが好ましい。
【0012】
更に、ポリエチレンテレフタレート及び樹脂改質剤とを溶融し、溶融した合成繊維織物と混合するので、リサイクルされた再生合成樹脂のIV値が高くなり、複雑な形状を有する成形品を成形することも可能となる。また、ポリエチレンテレフタレート及び樹脂改質剤とを溶融する第2射出成形機内のガス(主として水蒸気)を排出するので、再生合成樹脂のIV値の増大に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明に係るリサイクル装置を示すブロック図である。第1射出成形機1はインラインスクリュー式射出成形機であり、防炎処理された合成繊維織物を溶融し再生合成樹脂を成形する。再生される合成繊維織物の材質は特に限定されないが、ポリエステル製などが好ましい。合成繊維織物は、防炎処理された古くなったカーテン、暗幕やどん帳などであるが、カーテンなどの縫製時に不要となった端切れも含まれる。また、カーテンなどは、合成樹脂製のカーテンフック(例えば、ポリエチレンテレフタレート製)やカーテンウェイト(例えば、ポリエチレンテレフタレート製やアクリル製)などが装着された状態でもよい。
【0014】
合成繊維織物は投入口11にされ、加熱シリンダ12により溶融される。駆動装置16によりスクリュー(図示しない)が回転し、溶融した合成繊維織物がダイ18を通過して押し出され、冷却装置(図示しない)を経て再生合成樹脂が成形される。例えば、線状の再生合成樹脂が成形されるが、細かく切断してペレットに加工してもよい。
【0015】
一方、第2射出成形機2はインラインスクリュー式射出成形機であり、再生ポリエチレンテレフタレート及び樹脂改質剤とを含む混合物(PET混合物という)が投入口21から投入され、加熱シリンダ22により溶融される。駆動装置26によりスクリュー(図示しない)が回転し、溶融したPET混合物が押し出され、第1射出成形機1内に射出する。したがって、溶融した合成繊維織物とPET混合物が混合された状態で再生合成樹脂が成形されるので、IV値の高い再生合成樹脂が成形可能となる。再生ポリエチレンテレフタレートの代わりに、いわゆるバージンのポリエチレンテレフタレート、あるいは再生ポリエチレンテレフタレート及びバージンのポリエチレンテレフタレートの混合物を使用してもよい。樹脂改質剤は特に限定されないが、アクリル系ゴム層とメタクリル系樹脂層からなるメタクリル系樹脂改質剤(例えば、株式会社クラレ製、商品名パラフェイスME−120)が使用できる。
【0016】
第1射出成形機1の加熱シリンダ12には、射出方向に沿って複数のダクト13が設けられている。ダクト13は第1ガス排出装置31に接続されているので、第1ガス排出装置31は第1射出成形機1内に発生したガスを排出する。したがって、第1射出成形機1内には臭素化合物が残留することがないので、第1射出成形機1内の腐食や損傷を抑制できる。
【0017】
更に、第1ガス排出装置31のガス排出口にはフィルタ33が接続され、フィルタ33は臭素ガスや臭化水素ガスなどの有毒な除去することができる。したがって、有害ガスが外部に排出されることがなく、成形された再生合成樹脂に臭素化合物が残留することがない。
【0018】
また、第2射出成形機2の加熱シリンダ22には、ダクト23が設けられ、第2ガス排出装置32に接続されている。したがって、第2射出成形機2内のガス(主として水蒸気)が排出可能となるので、IV値の高い再生合成樹脂の成形に寄与する。なお、溶融した合成繊維織物とPET混合物とが混合される位置より更に射出口側にダクト14を設け、第1ガス排出装置31に接続し、第1射出成形機1内のガスを排出してもよい。
【0019】
射出成形機を例に説明したが、合成繊維織物やPET混合物を溶融させて排出する装置であればよい。例えば、第1及び第2射出成形機1、2の代わりとして、それぞれ第1及び第2押出成形機を使用してもよい。
【0020】
防炎処理された合成繊維織物を例に説明したが、撥水処理や防汚処理されたカーテンなどの合成繊維織物にあってもよい。この場合、撥水剤や防汚剤が外部に排出されず、残留することなく、再生合成樹脂に残留することもない。
【実施例】
【0021】
下記に示す装置により構成されたリサイクル装置を構成し、防炎処理された合成繊維織物から再生合成樹脂を成形した。
第1押出成形機:ユニテックパロマ株式会社製押出成形機、溶融能力:毎時30kg
第2押出成形機:日立造船株式会社製押出成形機、型式SH50、溶融能力:毎時50kg
第1ガス排出装置:神港精機株式会社製真空ポンプ、型式SW200AS、吸引能力:毎分2500リッター
第2ガス排出装置:神港精機株式会社製真空ポンプ、型式SW200AS、吸引能力:毎分2500リッター
フィルタ:アイシーイー株式会社製、商品名:リベリアジュニア
【0022】
ハロゲン系防炎剤(臭素化合物)で防炎処理されたポリエステル製カーテン(ポリエチレンテレフタレート製カーテンフック、ポリエステル製カーテンウェイトを含む)1.0kgを裁断し、第1射出成形機1により溶融し、バージンのポリエチレンテレフタレート0.15kg及び樹脂改質剤としてアクリル系衝撃強度改質剤(株式会社クラレ製、商品名パラフェイスME−120)0.05kgを第2射出成形機2により溶融し、これらを混合した後、再生合成樹脂を成形した。成形中は、第1ガス排出装置31、第2ガス排出装置32を動作させ、第1射出成形機1及び第2射出成形機2内のガスを排出した。
【0023】
成形された再生合成樹脂のIV値は0.5〜0.75であり、ラチェット式カーテンフックなどを成形可能な値であった。成形された再生合成樹脂を管状電気炉法(JIS K2541に準拠)に前処理した後、イオンクロマトグラフ法により分析したが、臭素化合物は検出されなかった。また、三点比較式臭袋法により、フィルタ33から排出されるガス中の臭気を判定したが臭気が認められなかったので、有毒な臭素ガスや臭化水素ガスは除去できた。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るリサイクル装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0025】
1 第1射出成形機
2 第2射出成形機
11、21 投入口
12、22 加熱シリンダ
13、23、14 ダクト
31 第1ガス排出装置
32 第2ガス排出装置
33 フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次加工処理された合成繊維織物を第1射出成形機で溶融し、ポリエチレンテレフタレート及び樹脂改質剤とを含むPET混合物を第2射出成形機で溶融し、
前記第2射出成形機から溶融した前記PET混合物を前記第1射出成形機に混入して、溶融した前記合成繊維織物と前記PET混合物とを混合し、再生合成樹脂を成形すると共に、
フィルタを介して前記第1射出成形機内のガスを排出し、前記第2射出成形機内のガスを排出することを特徴とする防炎処理された合成繊維織物のリサイクル方法。
【請求項2】
二次加工処理された合成繊維織物を溶融し成形品を成形可能な第1射出成形機と、
ポリエチレンテレフタレート及び樹脂改質剤とを含むPET混合物を溶融し、前記第1射出成形機に前記PET混合物を混入可能な第2射出成形機と、
前記第1射出成形機の加熱シリンダに射出方向に沿って設けられた複数のダクトに接続され、第1射出成形機内のガスを排出可能な第1ガス排出装置と、
前記第2射出成形機の加熱シリンダに設けられたダクトに接続され、第2射出成形機内のガスを排出可能な第2ガス排出装置と、
前記第1ガス排出装置のガス排出口に接続されたフィルタとを備えたことを特徴とする防炎処理された合成繊維織物のリサイクル装置。
【請求項3】
二次加工処理された合成繊維織物を第1押出成形機で溶融し、ポリエチレンテレフタレート及び樹脂改質剤とを含むPET混合物を第2押出成形機で溶融し、
前記第2押出成形機から溶融した前記PET混合物を前記第1押出成形機に混入して、溶融した前記合成繊維織物と前記PET混合物とを混合し、再生合成樹脂を成形すると共に、
フィルタを介して前記第1押出成形機内のガスを排出し、前記第2押出成形機内のガスを排出することを特徴とする防炎処理された合成繊維織物のリサイクル方法。
【請求項4】
二次加工処理された合成繊維織物を溶融し成形品を成形可能な第1押出成形機と、
ポリエチレンテレフタレート及び樹脂改質剤とを含むPET混合物を溶融し、前記第1押出成形機に前記PET混合物を混入可能な第2押出成形機と、
前記第1押出成形機の加熱シリンダに押出方向に沿って設けられた複数のダクトに接続され、第1押出成形機内のガスを排出可能な第1ガス排出装置と、
前記第2押出成形機の加熱シリンダに設けられたダクトに接続され、第2押出成形機内のガスを排出可能な第2ガス排出装置と、
前記第1ガス排出装置のガス排出口に接続されたフィルタとを備えたことを特徴とする防炎処理された合成繊維織物のリサイクル装置。

【図1】
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【公開番号】特開2008−149706(P2008−149706A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281935(P2007−281935)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000147132)ユニテックパロマ株式会社 (8)
【Fターム(参考)】