説明

二次成形可能な合板製品及びその製造方法

本発明は、二次成形可能な合板製品及び二次成形可能な合板製品を製造する方法に関する。この二次成形可能な合板製品は、合板のベニヤが互いに接合されるようにして形成される。本発明において、ベニヤは、ポリオレフィンフィルムから形成された自己接着性材料によって互いに結合され、ポリオレフィンフィルムは、ベニヤとポリオレフィンフィルムとの間で共有結合を形成するために、木材の−OH基との反応性基を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルにおいて定義されるような二次成形可能な(post formable)合板製品及び請求項11のプリアンブルにおいて定義されるような二次成形可能な合板製品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な木板及び木板の製造方法が従来技術から知られている。ここで言う木板(wood board)とは、例えば合板、パーティクルボード、硬質及び中硬質ファイバーボードである。
【0003】
木板の作製では、樹脂及び様々な接着材料を使用して木板のベニヤを互いに接着及び接合する。合板は、伝統的に、接着性樹脂としてフェノールホルムアルデヒドを使用して形成される。しかしながら、その他の接着剤も使用されており、これらの代替品の一部はポリマー系である。極めて多くが乾燥条件下でつくられる接着接合力は、フェノールホルムアルデヒド系接着剤の場合よりはるかに強いが、浸漬及び煮沸後、接着強度及び木質繊維の破損については、許容標準要件を満たさない。
【0004】
フェノールホルムアルデヒド接着剤を使用したとしても、合板製造中の破裂は大きな問題である。破裂は、合板内の蒸気圧が接着接合強度より高いことによって引き起こされる。合板は100℃より高い温度でホットプレスされ、これはベニヤ中の水分が蒸気に変化することを意味する。接着接合強度が十分に強くないのにホットプレスを開放すると、合板が破裂する。この破裂の発生は、ベニヤの含水量を5%未満に維持することによって最小限に抑えることができる。しかしながら、熱硬化性樹脂とは異なり、熱可塑性樹脂は、温度が、ポリマー結晶性温度(polymer crystalline temperature)より低くなるまで最も強力な結合を形成しないことも心に留めておくべきである。従って、破裂を回避するための理想的な状態とは、ベニヤの含水量を3%未満に維持する又は/及びポリマーの温度がその結晶性温度より低くなるまで印加された圧力を維持することである。これは、ホットプレスに続いてコールドプレスを行なう又は連続熱冷プレスを使用することによって可能である。
【0005】
マレイン酸化(maleated)ポリエチレン(MAPE)又はマレイン酸化ポリプロピレン(MAPP)を使用して木質繊維/ポリマー複合材料を形成することも知られており、マレイン酸化ポリマーは、繊維とポリマーとの結合剤として使用される。セルロース繊維は、ポリプロピレン−無水マレイン酸コポリマーで表面を改質できることが知られている。
【0006】
更に、例えば欧州特許出願第0782917号(EP0782917)明細書から、押出成形フィルムで被覆された板の作製が知られている。このフィルムは、一実施形態において、無水マレイン酸グラフト化エチル−ビニルアセテート(MA−g−EVA)コポリマーを含む。フィルム製造中にフィルムの処理は行なわれない(例えば、活性化を行なわない)。
【0007】
(本発明の目的)
本発明の目的は、新しいタイプの合板及び合板を製造する方法を開示することである。本発明は、全く新しく極めて単純なやり方で合板のベニヤのコーティング及び接着問題を解決することを目的とする。
【発明の概要】
【0008】
本発明による二次成形可能な合板製品及び製造方法は、請求項に記載の内容によって特徴づけられる。
【0009】
本発明は、二次成形可能な合板製品に基づく。この二次成形可能な合板製品は、合板のベニヤが互いに接合されるようにして形成される。本発明において、ベニヤは、ポリオレフィンフィルムから形成された自己接着性材料によって互いに結合され、ポリオレフィンフィルムは、ベニヤとの間に共有結合を形成するために、木材の−OH基との反応性基を含有する。ポリオレフィンフィルムは、この反応性基による自己接着剤である。
【0010】
更に、本発明は、二次成形可能な合板製品を製造する方法に基づき、この方法において、二次成形可能な合板製品のベニヤは、接着材料及び熱によって互いに接合及びプレスされる。本発明において、この接着材料はポリオレフィンフィルムから形成される自己接着性材料であり、このポリオレフィンフィルムは、ベニヤとの間に共有結合を形成するために木材の−OH基との反応性基を含有し、ベニヤを互いに接着させるためにこの自己接着性材料をベニヤ間に取り付けて加熱すると、ポリオレフィンフィルムが接着性となり、またベニヤの−OH基と反応性となり、ベニヤとポリオレフィンフィルムとの間に共有結合が形成される。
【0011】
本明細書において、二次成形可能な合板製品(post formable plywood product)は、多数のベニヤから及び主に木材系材料から形成され、ベニヤが互いに積層及び接着されている全てのプリフォーム又は最終合板製品等を指す。本明細書において、ベニヤは、全ての材料層、典型的には薄い材料層を指す。
【0012】
本発明による二次成形可能な合板製品は、異なる厚さのベニヤ層を含むことができる。ベニヤ層の厚さは様々である。ベニヤ層は望ましい位置に配置することができ、すなわち望ましい順序で横方向又は縦方向に配置することができる。
【0013】
本発明は、具体的には、再加熱によって成形可能な二次成形合板(post formed plywood)に基づく。この二次成形合板は自己接着性材料の使用に基づき、この自己接着性材料は、反応性基、例えば無水マレイン酸基によってグラフトされ、この反応性基は、他の材料、例えば、木材等の天然物又は木材系製品における−OH基と反応して共有結合を形成する。
【0014】
本発明の一実施形態において、ポリオレフィンフィルムは第1層及び第2層の少なくとも2つの層を含み、少なくともこの第1層が自己接着性層であり、木材の−OH基との反応性基を含有する。
【0015】
本発明の一実施形態において、ポリオレフィンフィルムは少なくとも3つの層を含み、フィルムの外層が自己接着性層であり、木材の−OH基との反応性基を含有する。
【0016】
一実施形態において、少なくとも1つの追加層が第1層と第2層との間に配置される。一実施形態において、フィルムは1つよりも多い追加層、例えば2〜10の追加層を含むことができる。一実施形態において、追加層は機能性添加剤を含有することができる。一実施形態において、追加層は、例えば、難燃剤、紫外線安定剤及び充填材を含有することができる。
【0017】
本発明の一実施形態において、ポリオレフィンフィルムは少なくとも部分的に架橋される。一実施形態においては、第2層が少なくとも部分的に架橋される。一実施形態においては、第1層が少なくとも部分的に架橋される。一実施形態において、ポリオレフィンフィルムは、シラン水分法(silane moisture method)、電子ビーム(EB)照射、ビニル−シラン加水分解及びこれらの組み合わせの群から選択される方法によって架橋される。架橋は、フィルム調製中又はフィルムを合板のベニヤ上にプレスする前に行なうことができる。或いは、架橋は、プリフォーム又は最終的な合板の製造中又は製造後に、ポリオレフィンの融点より低い温度で行なうことができる。
【0018】
本発明の一実施形態において、ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン及びこれらの組み合わせの群から選択される。ポリオレフィンフィルム又は各層は、添加剤及び充填材を含むことができる。
【0019】
ポリオレフィンフィルム及び/又はフィルム層は、石油化学系及び再生可能な原材料から形成することができる。加えて、バイオプラスチック材料を使用することができる。加えて、バイオベースポリマーを使用することができる。好ましくは、バイオベースポリマーは、180℃を超える又は190℃を超える処理温度を有する。一実施形態において、全てのフィルム層は実質的に同じ材料から形成される。代替の実施形態においては、少なくとも1つのフィルム層が、その他のフィルム層とは異なる材料から形成される。
【0020】
異種のポリマーを互いに接着するために、相溶化剤をフィルムに添加することができる。
【0021】
本発明の一実施形態において、ポリオレフィンフィルムの反応性基は、ポリオレフィンフィルムの製造中、180℃より高い温度、一実施形態においては190℃より高い温度で活性化される。一実施形態において、活性化に十分な時間は約0.5〜3分、一実施形態においては約2〜3分である。ここで形成されたフィルムは、最大数の共有結合を木材と形成可能な活性化官能基を含有する。
【0022】
一実施形態において、ポリオレフィンフィルムは、メルトインデックス≦4g/10分(190℃/2.16kgで測定)を有する。このため、このポリオレフィンフィルムは、フィルム形成能を180℃より高い温度又は190℃より高い温度で維持することができる。
【0023】
本発明の一実施形態において、ポリオレフィンフィルムは、無水マレイン酸反応性基を含有するマレイン酸化ポリオレフィンを含有する。
【0024】
本発明の一実施形態において、フィルム層は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、無水マレイン酸ポリエチレン(MAPE)、無水マレイン酸ポリプロピレン(MAPP)、これらの誘導体又はこれらの組み合わせを含有する。好ましい実施形態において、少なくとも1つのフィルム層が無水マレイン酸ポリオレフィンを含有する。一実施形態において、外側のフィルム層が無水マレイン酸ポリオレフィンを含有する。
【0025】
ポリオレフィンフィルムの両面をマレイン酸化する場合、特にマレイン酸化層の温度が製造中に180℃又は190℃を超えてマレイン酸が無水マレイン酸に転化されるようにマレイン酸化層を処理する場合、ポリオレフィンフィルムを木材に直接接着させることができる。無水マレイン酸は木材との反応性が極めて高く、セルロースの−OH基と共有結合を形成する。この活性化がないと、通常のマレイン酸化フィルムは主に水素結合を形成し、水素結合は共有化学結合よりずっと弱い。このため、下塗り及び層の接合をすることなく、ポリオレフィンフィルムを木材表面に直接結合させることができる。
【0026】
本発明の好ましい実施形態において、自己接着性材料及びベニヤは無水マレイン酸ポリオレフィンによって互いに接合される。無水マレイン酸ポリオレフィンは、ポリオレフィンフィルムと合板のベニヤとの間で化学的及び機械的結合を形成する。
【0027】
好ましい実施形態において、マレイン酸化ポリオレフィンを含むフィルム又はフィルム層はポリマー、例えばポリエチレン又はポリプロピレンも含有する。好ましくは、マレイン酸化ポリオレフィンを含むフィルム層は、基本的に、MAPE+PE又はMAPP+PPから成る。
【0028】
本発明の一実施形態において、マレイン酸化ポリオレフィンは、マレイン酸をマレイン酸化ポリオレフィンの0.3〜15質量%、一実施形態においてはマレイン酸化ポリオレフィンの1〜5質量%含有する。好ましくは、フィルム層を望ましい度合いにまでマレイン酸化することによって、自己接着性材料の摩擦及び濡れ特性を改善する。
【0029】
一実施形態において、ポリオレフィンフィルムは、反応性基を含有するイソシアネートグラフト化ポリオレフィンを含有する。
【0030】
一実施形態において、ポリオレフィンフィルム又はこのフィルムの層は、ポリオレフィンとの反応性官能基を含有するアルコキシシランでグラフト化される。
【0031】
ポリオレフィンフィルムの厚さは、フィルム材料の特性及び合板の用途によって異なる。本発明の一実施形態において、ポリオレフィンフィルムは、厚さ50〜350μmを有する。
【0032】
自己接着性材料は、それ自体が既知の装置及び方法を使用して、例えば、押出成形又は共押出成形によって調製することができる。
【0033】
合板は、それ自体が既知の装置及び方法を使用して形成することができる。ベニヤの積層、これらの接合及び合板の形成におけるその他の典型的な工程は、当該分野でそれ自体が既知のいずれのやり方でも行なうことができる。自己接着性材料は、ホットプレス技法、押出機を使用した技法、フィルム技法、ロール塗布技法、シリンダ塗布技法、塗膜/多層塗膜塗布技法(全てそれ自体が既知である)、これらの組み合わせ又は対応する技法を使用して合板のベニヤ間に配置される。ベニヤは、例えばホットプレス技法及び/又は高周波技法を使用して互いに接合することができる。
【0034】
本発明の一実施形態において、自己接着性材料は、温度120〜170℃でのホットプレスによって合板のベニヤに取り付けられる。本発明の一実施形態における利点は、フィルムをベニヤ表面に定着させるために必要な温度が120〜140℃にすぎないことである。ホットプレス条件、例えば温度、圧力及び時間は、木材のタイプ(例えば、トウヒ、樺)及びポリマーの溶融温度に左右される。プラスチックのメルトフローを誘発するために、ホットプレス温度を、ポリマーの溶融温度より20〜50℃高い温度に設定することが重要である。一実施形態において、プレス時間は2〜12分であり、二次成形可能な合板製品の厚さに依存する。
【0035】
本発明の一実施形態において、ポリオレフィンフィルムは高周波加熱によって加熱され、この高周波加熱におけるパラメータは2〜8分、12〜14MHzである。
【0036】
本発明の一実施形態において、二次成形可能な合板製品は二次成形される。好ましくは、二次成形を、ポリオレフィンの融点より高い温度で行なう。合板が成形性の場合、合板を炉又はマイクロ波炉内で再加熱することができる。再加熱中に圧力は必要とされないが、最初のホットプレス中に形成された結合を損なわないように、合板を加圧下で成形し、また冷却することが望ましい。
【0037】
本発明の一実施形態において、本発明の方法は2つの段階を有し、第1段階において二次成形可能な合板製品を形成し、第2段階において、この事前に形成された二次成形可能な合板製品を二次成形することによって最終合板製品を形成する。
【0038】
一実施形態において、自己接着性材料を、二次成形可能な合板製品上にコーティングとして配置することができる。
【0039】
一実施形態においては、触媒をフィルム製造において使用する。触媒は結合剤(例えば、無水マレイン酸)と木材との間に形成される共有結合の頻度を上昇させる。このような結合を形成することが知られ且つ好ましい触媒は亜鉛無水物である。好ましくは、触媒は酢酸亜鉛水和物である。触媒を、結合剤(例えば、無水マレイン酸)と同じ層中で押出成形することはできない。これは触媒が無水マレイン酸を開環してしまうからである。従って、触媒を、押出成形後のフィルムに適用し、ホットプレス中の熱によって活性化させる又は木材に直接、適用することができる。1つのフィルムが触媒をその外側の層に含有し、別のフィルムが活性化された結合剤を含有し、ホットプレス中にこれらのフィルムが溶融混合し木材と反応するようにと異なる厚さ(0.05〜0.1mm)の複数のフィルムを押出成形する方法もある。
【0040】
本発明は、二次成形可能な合板製品を提供する。合板は、再加熱によって成形することができる。合板のベニヤ間の接着性は、自己接着性材料のおかげで優れている。
【0041】
本発明の合板製品は、木材そのもののように強靭な結合を自己接着性フィルムが形成する点で、従来技術とは異なる。また、従来の合板とは異なり、本願で提示の発明は、プリプレスよりはむしろポストプレスを必要とする。これに加え、熱可塑性樹脂を使用することから、合板を再加熱して成形することも可能である。本発明によって、同じパネル内で平坦な合板と湾曲した合板の両方が可能になる。これに加え、熱可塑性接着性フィルムによって合板の総吸湿量が低下するため、標準的な合板より寸法的に安定している。吸湿量は、標準的な合板より50%低く、これは熱処理された合板と同じレベルであるが、機械的性質に損失はない。
【0042】
本発明による合板は、様々な用途に適している。この合板は、良好な成形性が必要とされる用途(例えば、台所及び家具、輸送用途、型枠)に使用することができる。
【0043】
以下において、本発明を、添付の図1及び図2を参照しながら詳細な実施形態例によって説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】化学反応の概略図である。
【図2】本発明による自己接着性材料の構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
(発明の詳細な説明)
図1は、自己接着性材料及び合板の製造における化学反応の概略図である。本発明の合板を作製するためには、多くの工程がある。まず、原材料の選定である。次が、マレイン酸から無水マレイン酸へのマレイン酸化材料の転化である。自己接着性フィルムが形成され、これを合板に取り付ける必要がある。合板上にて活性無水マレイン酸基は、合板のベニヤ(4)内の木材の水酸化物基(hydroxide group)と反応する。
【0046】
図2は、本発明の自己接着性材料の構造を示す。
【0047】
自己接着性材料は、第1層(1)、第2層(2)及び追加層(3)の3層からなるフィルムから形成される。第1層は底層(1)であり、第2層は上層(2)であり、追加層(3)は第1層(1)と第2層(2)との間に配置される。
【0048】
上部フィルム層(2)及び底部フィルム層(1)は、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びマレイン酸化ポリオレフィン、例えば無水マレイン酸ポリエチレン(MAPE)又は無水マレイン酸ポリプロピレン(MAPP)から形成される。
【0049】
追加層(3)は、上層(2)と底層(1)との間に挟持される。追加層は架橋性ポリエチレン又はポリプロピレンから形成され、添加剤(難燃剤、殺生物剤、紫外線安定剤等)及び充填材を含む。
【0050】
試験で使用される自己接着性材料及び合板は、以下のようにして準備することができる。第1段階において、3層式の自己接着性フィルムを、ポリオレフィン、マレイン酸化ポリオレフィン及び添加剤/充填材から共押出成形によって調製する。マレイン酸化ポリオレフィンはマレイン酸を含有し、このマレイン酸は、フィルム製造中に、190℃より高い温度で無水マレイン酸に転化される。望ましいフィルム層を、この段階における電子ビームの照射によって架橋することができる。フィルムの層を互いに接合することによってフィルムを形成する。第2段階において、形成されたフィルムをサイズに合わせて切断し、合板のベニヤ間に配置する。ホットプレス、コールドプレス及び/又は高周波プレスによって、ベニヤを互いに結合する。ホットプレスは、温度約120〜170℃、圧力約1.2〜1.9N/mm2で2〜12分に亘って行なわれる。ホットプレスに続いてコールドプレスを行なうことができる。コールドプレスは、温度が80〜100℃より低くなるまで、圧力約1.2〜1.9N/mm2で0.5〜7分に亘って行なわれる。高周波プレスは、周波数12〜14MHzで約2〜8分に亘って行なわれる。代替の実施形態において、自己接着性材料を、この段階でビーム照射又はシラン水分法によって架橋することができる。形成された二次成形可能な合板製品は、再加熱し、成型することができる。
【0051】
異種のポリマーを共押出成形する場合は、これら異種の材料を接合するために、相溶化材料が自己接着性材料において必要とされる。
【0052】
マレイン酸化ポリオレフィンは、ポリオレフィンの量の通常2〜15%のマレイン酸を含有する。180℃より高い温度での押出成形時に、マレイン酸は無水マレイン酸へと部分的に又は完全に転化される。ポリマーフィルムは、製品の使用に役立つのなら架橋性とすることもできる。
【0053】
合板をフェノールホルムアルデヒド接着剤で接着する場合、実際にはグルーライン層のクリープは問題とならないが、熱可塑性樹脂を使用する場合は事情が異なり、用途(例えば、建造物)によっては致命的となり得る。木材はクリープするため、フィルムが木材そのもの以上にクリープしないことが重要である。これは、以下のように多くのやり方でもって達成することができる。
【0054】
(1)フィルム厚さ:使用したフィルムが十分に薄いグルーラインになると、原則的に、木材はより大きくクリープする。しかしながら、フィルム厚さ(グルーライン)は、木材のタイプ及び製品用途に依存する。
【0055】
(2)フィルム又は合板の架橋及び部分架橋:フィルムを、ベニヤ間でのホットプレス前に架橋することができるが(シラン法、照射法の両方のケース)、電子ビーム照射処理の場合、照射によって表面だけでなくフィルム全体が架橋されることが十分にありえる。フィルム全体が架橋されてしまうと、フィルムをベニヤにホットプレスする際に問題が生じる。シラン又は電子ビーム照射による架橋は、合板作製後に行なうことが可能であるが、ここでもまた、電子ビーム照射の場合、木材を損傷する恐れがあることから注意が必要である。
【0056】
(3)高分子量のポリマー:中間層が高分子量のポリオレフィン(HDPE)を含有する場合、これによって耐クリープ性が上昇する。
【実施例】
【0057】
これらの実施例において、図2の自己接着性材料及び本発明の二次成形可能な合板を準備し、また試験において使用した。試験結果を、フェノール樹脂のグルーラインを使用した従来の合板の結果と比較した。
【0058】
実施例1
11層の二次成形可能な合板を樺材ベニヤから作製し、自己接着性材料を接着剤として使用した。ベニヤ及び自己接着性材料を、ホットプレスによって互いに接合する。ベニヤ厚さは1.5mmであった。ホットプレス条件は、760秒の場合、140℃、1.7N/mm2、0.2N/mm2であった。540秒の場合は、より高い圧力を印加した。コールドプレス条件は、1.7N/mm2で300秒であった。
【0059】
自己接着性フィルム材料は、3つの層:2%MAPE+PE/PE/PE+2%MAPEを含む。その厚さは0.27mmであった。フィルムは各ベニヤ間に配置された。
【0060】
実施例2
11層の二次成形可能な合板をトウヒ材ベニヤから作製し、自己接着性材料を接着剤として使用した。ベニヤ及び自己接着性材料を、ホットプレスによって互いに接合する。ベニヤ厚さは1.5mmであった。ホットプレス条件は、760秒の場合、140℃、1.2N/mm2、0.2N/mm2であった。540秒の場合は、より高い圧力を印加した。コールドプレス条件は、1.2N/mm2で300秒であった。
【0061】
自己接着性フィルム材料は、3つの層:2%MAPE+PE/PE/PE+2%MAPEを含む。その厚さは0.27mmであった。フィルムは各ベニヤ間に配置された。
【0062】
実施例3
11層の二次成形可能な合板を樺材ベニヤから作製し、自己接着性材料を接着剤として使用した。ベニヤ及び自己接着性材料を、高周波プレスよって互いに接合する。ベニヤ厚さは1.5mmであった。高周波プレス条件は、13.56MHz(電力9kW)で8分であった。
【0063】
自己接着性フィルム材料は、3つの層:2%MAPE+PE/PE/PE+2%MAPEを含む。その厚さは0.27mmであった。フィルムは各ベニヤ間に配置された。
【0064】
試験(実施例1〜3)から、煮沸及び浸漬(EN314−1及びEN314−2)後の自己接着性材料の接着強度は、フェノール樹脂より良好であると判明した。本発明の合板は、従来の合板と同様の曲げ特性を有していた。合板をフェノールホルムアルデヒド樹脂に対して本発明のフィルムで接着すると、吸湿量が50%低下した。寸法安定性の向上については、本発明のフィルムで接着した合板は、熱処理された木材と同じレベルであり、機械的性質に損失はない。
【0065】
試験から、自己接着性材料とベニヤの−OH基との間の接着力が優れていることが判明した。
【0066】
更に、木材内へのより良好な浸透により、再加熱が実際に、全体的な接着強度を向上させることが明らかであった。
【0067】
本発明による二次成形可能な合板製品は、様々なタイプの用途のためのその様々な実施形態において適当である。
【0068】
本発明の実施形態は提示した実施例に限定されず、多くの変形が付随する請求項の範囲内で可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベニヤが互いに接合されるようにして形成される二次成形可能な合板製品であって、前記ベニヤが、ポリオレフィンフィルムから形成された自己接着性材料によって互いに結合され、前記ポリオレフィンフィルムが、前記ベニヤと該ポリオレフィンフィルムとの間に共有結合を形成するための、木材の−OH基との反応性基を含有することを特徴とする二次成形可能な合板製品。
【請求項2】
前記ポリオレフィンフィルムが、少なくとも部分的に架橋される、請求項1に記載の二次成形可能な合板製品。
【請求項3】
前記ポリオレフィンフィルムの前記反応性基が、前記自己接着性材料の調製中に、180℃より高い温度で活性化される、請求項1又は2に記載の二次成形可能な合板製品。
【請求項4】
前記ポリオレフィンフィルムが、第1層(1)及び第2層(2)の少なくとも2つの層を含み、少なくとも前記第1層が自己接着性層であり木材の−OH基との反応性基を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の二次成形可能な合板製品。
【請求項5】
前記ポリオレフィンフィルムが、少なくとも3つの層を含み、前記フィルムの外層(1、2)が自己接着性層であり木材の−OH基との反応性基を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の二次成形可能な合板製品。
【請求項6】
ポリオレフィンが、ポリエチレン、ポリプロピレン及びこれらの組み合わせの群から選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の二次成形可能な合板製品。
【請求項7】
前記ポリオレフィンフィルムが、無水マレイン酸反応性基を含有するマレイン酸化ポリオレフィンを含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の二次成形可能な合板製品。
【請求項8】
前記マレイン酸化ポリオレフィンが、マレイン酸を前記マレイン酸化ポリオレフィンの0.3〜15質量%含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の二次成形可能な合板製品。
【請求項9】
前記ポリオレフィンフィルムの層が、ポリエチレン、ポリプロピレン、マレイン酸化ポリエチレン、マレイン酸化ポリプロピレン又はこれらの組み合わせを含有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の二次成形可能な合板製品。
【請求項10】
前記ポリオレフィンフィルムが、50〜350μmの厚さを有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の二次成形可能な合板製品。
【請求項11】
二次成形可能な合板製品を製造する方法であって、前記二次成形可能な合板製品のベニヤが接着材料及び熱によって互いに接合及びプレスされる方法であり、前記接着材料が、ポリオレフィンフィルムから形成された自己接着性材料であり、前記ポリオレフィンフィルムが、前記ベニヤと該ポリオレフィンフィルムとの間に共有結合を形成するために木材の−OH基との反応性基を含有し、前記自己接着性材料が、前記ベニヤを互いに接着させるために前記ベニヤ間に取り付けられ、加熱されると、前記ポリオレフィンフィルムが接着性となり、かつ前記ベニヤと前記ポリオレフィンフィルムとの間に共有結合を形成するための前記ベニヤの−OH基と反応性となることを特徴とする方法。
【請求項12】
前記ポリオレフィンフィルムの前記反応性基が、前記自己接着性フィルムの調製中に、180℃より高い温度で活性化される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリオレフィンフィルムが、120〜170℃でのホットプレスによって加熱される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリオレフィンフィルムが、高周波加熱によって加熱され、前記高周波加熱におけるパラメータが、2〜8分、12〜14MHzである、請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリオレフィンフィルムが、少なくとも部分的に架橋される、請求項11〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリオレフィンフィルムが、シラン水分法又は電子ビーム(EB)照射によって架橋される、請求項11〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記方法が2つの段階を含み、第1段階において二次成形可能な合板製品を形成し、第2段階において、事前に形成された前記二次成形可能な合板製品を二次成形することによって最終合板製品を形成する、請求項11〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
二次成形可能な合板製品が、再加熱され、加圧下で形成され、かつ冷却されるようにして成形される、請求項11〜17のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−514852(P2011−514852A)
【公表日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−547207(P2010−547207)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【国際出願番号】PCT/FI2009/050131
【国際公開番号】WO2009/103848
【国際公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(510224538)
【Fターム(参考)】