説明

二次監視レーダ及び監視方法

【課題】拡張スキッタを利用して、航空機の捕捉の精度を向上する。
【解決手段】第1トラックファイル生成手段と、第2トラックファイル生成手段と、抽出手段と、抽出手段が抽出した航空機に送信する質問を生成する質問生成手段と、生成した質問を送信する送信手段とを備える。第1トラックファイル生成手段は、航空機から送信された拡張スキッタに含まれる航空機の識別子及び当該航空機の位置と、計時手段から取得した受信時刻とを関連付けて第1トラックファイルデータに追加する。第2トラックファイル生成手段は、航空機から送信された応答に含まれる航空機の識別子及び当該航空機の位置と、受信時刻とを関連づけて第2トラックファイルデータに追加する。抽出手段は、第1トラックファイルデータに含まれる位置及び受信時刻と、第2トラックファイルデータに含まれる位置及び受信時刻とを利用して、所定の位置に存在する航空機を抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、航空機に質問を送信するとともに、航空機から質問に対応して送信された応答を受信して航空機を監視する二次監視レーダ及び監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の飛行の監視には、モードS二次監視レーダ(SSRモードS:Secondary Surveillance Radar Mode S)等のレーダ装置が利用される。モードS二次監視レーダは、航空機に搭載されているトランスポンダに質問信号を送信し、トランスポンダから送信される応答信号を受信し、解析して航空機を監視する。
【0003】
トランスポンダには、処理や送受信する信号が異なるモードSトランスポンダとATCRBSトランスポンダとがある。したがって、モードS二次監視レーダは、オールコール期間とロールコール期間とを設定し、各トランスポンダを備える航空機を監視する。具体的には、オールコール期間には、モードSトランスポンダを搭載する航空機に対するモードS一括質問とATCRBSトランスポンダを備える航空機に対するATCRBS一括質問とを送信し、各質問に対する応答を受信する。また、モードS二次監視レーダは、ロールコール期間には、オールコール期間で捕捉したモードSトランスポンダを搭載する航空機にモードS個別質問を送信し、この質問に対する応答を受信する。
【0004】
現在のモードS二次監視レーダでは、ロールコール期間に航空機を捕捉する際、1回のスキャンで取得した位置から、次のスキャン時に航空機が存在すると予測できる位置(予測位置)や質問を送信する際のアンテナの角度(送信範囲)を予測し、質問の送信タイミングを設定する。したがって、特に近距離の場合、送信範囲が広くなり、効率良く質問することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−266350号公報
【特許文献2】特開2010−266351号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Michael C. Stevens “Secondary Surveillance Radar” 1988, ISBN 0-89006-292-7.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明は、ロールコール期間において、拡張スキッタを利用して、航空機の捕捉の精度を向上する二次監視レーダ及び監視方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態に係る二次監視レーダは、第1トラックファイル生成手段と、第2トラックファイル生成手段と、抽出手段と、抽出手段が抽出した航空機に送信する質問を生成する質問生成手段と、生成した質問を送信する送信手段とを備える。第1トラックファイル生成手段は、航空機から送信された拡張スキッタに含まれる航空機の識別子及び当該航空機の位置と、計時手段から取得した受信時刻とを関連付けて第1トラックファイルデータに追加する。第2トラックファイル生成手段は、航空機から送信された応答に含まれる航空機の識別子及び当該航空機の位置と、受信時刻とを関連づけて第2トラックファイルデータに追加する。抽出手段は、第1トラックファイルデータに含まれる位置及び受信時刻と、第2トラックファイルデータに含まれる位置及び受信時刻とを利用して、所定の位置に存在する航空機を抽出する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係るモードS二次監視レーダについて説明するブロック図である。
【図2】図1のモード二次監視レーダで記憶する第1トラックファイルデータ(図2(a))及び第2トラックファイルデータ(図2(b))の一例である。
【図3】図1のモードS二次監視レーダで拡張スキッタを受信した場合の処理の一例を説明するフローチャートである。
【図4】図1のモードS二次監視レーダにおけるオールコール期間の処理の一例を説明するフローチャートである。
【図5】図1のモードS二次監視レーダにおけるロールコール期間の処理の一例を説明するフローチャートである。
【図6】図5のフローチャートの抽出処理の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を用いて実施形態に係る二次監視レーダについて説明する。この二次監視レーダは、航空機に質問を送信するとともに、送信した質問に対して航空機送信された応答を受信して航空機の飛行を監視するシステムである。
【0011】
図1に示すように、実施形態に係るモードS二次監視レーダ1は、アンテナ11と、アンテナ11を介して信号を送受信する送受信部12と、送受信部12に接続され、質問応答を制御するとともに受信する応答を処理する信号処理部13と、信号処理部13で利用するデータを記憶する記憶部14とを備えている。
【0012】
送受信部12は、送受切替器121、送信機122及び受信機123を有し、アンテナ11を介して質問(質問信号)を送信するとともに、アンテナ11で受信する応答(応答信号)を信号処理部13に出力している。
【0013】
信号処理部13は、受信した拡張スキッタを処理する拡張スキッタ処理部131、質問及び送信に関する処理を実行するSSR処理部132及び拡張スキッタ処理部131及び信号処理部で利用する時刻を計時する計時部133を備えている。なお、計時部133は、計時部133自体で時刻を管理するものに限られず、外部から時刻を取得するものであってもよい。
【0014】
拡張スキッタ処理部131は、モードS応答判定手段131a、拡張スキッタ判定手段131b及び第1トラックファイル生成手段131cを備えている。
【0015】
モードS応答判定手段131aは、受信機123で受信した信号から所定のプリアンブルを検出すると、受信した信号をモードS応答信号と判定する。所定のプリアンブルとは、4つのパルスで形成されるモードS応答信号のプリアンブルである。その後、モードS応答判定手段131aは、プリアンブルに続くデータブロックに対しての判定と最後の24bit部分のパリティーをデコードし、モードS応答データを作成する。また、モードS応答判定手段131aは、このモードS応答信号の受信時刻(検出時刻)を計時部133から取得し、に受信時刻を付して拡張スキッタ判定手段131bに出力する。
【0016】
拡張スキッタ判定手段131bは、受信時刻が付されたモードS応答データを入力すると、拡張スキッタの応答であるか否かを判定する。具体的には、拡張スキッタ判定手段131bは、PIフィールド=0であって、かつ、DFフィールド=17又は18のモードS応答信号を拡張スキッタとし、第1トラックファイル生成手段131cに出力し、それ以外のモードS応答信号は破棄する。
【0017】
第1トラックファイル生成手段131cは、入力した拡張スキッタに含まれる位置情報を、モードS二次監視レーダ1を基準とした位置情報に変換する。具体的には、アンテナ11の位置を基準とした座標(r,θ)に変換する。また、第1トラックファイル生成手段131cは、
第1トラックファイルデータ14aは、図2(a)に示すように、例えば、「モードSアドレス」、「位置情報」、「受信時刻」を含むデータであり、新たに信号を受信する毎に第1トラックファイル生成手段131cによって新たなレコードが追加されて更新される。
【0018】
SSR処理部132は、第1質問生成手段132a、相関処理手段132b、第2トラックファイル生成手段132c、抽出手段132d、第2質問生成手段132e、応答判定手段132f、レポート生成手段132g及び第2トラックファイル更新手段132hを備えている。
【0019】
第1質問生成手段132aは、オールコール期間に、オールコール質問を生成し、送信機122に出力する。
【0020】
相関処理手段132bは、オールコール期間に、受信機123で受信した信号のうち相関のとれた信号(応答)から、航空機の位置(スラントレンジ、アジマス)、モードSアドレスを解析し、解析結果を第2トラックファイル生成手段132cに出力する。
【0021】
第2トラックファイル生成手段132cは、相関処理手段132bから入力した航空機の位置を利用して次のスキャン時に当該航空機が存在すると予測される位置(予測位置)を求める。また、第2トラックファイル生成手段132cは、受信した応答に含まれる内容に、求めた予測位置を追加して第2トラックファイルデータ14bを生成し、記憶部14に記憶させる。
【0022】
第2トラックファイルデータ14bは、図2(b)に示すように、例えば、「モードSアドレス」、オールコールによって捕捉するか、ロールコールによって捕捉するかの捕捉方法を特定する「追記のステータス」、応答を送信した際の航空機の位置である「航空機位置」(スラントレンジ、アジマス)、モードS二次監視レーダ1が信号を受信した時刻である「受信時刻」、「予測位置」(スラントレンジ、アジマス)、予測位置に存在する航空機に質問を送信する範囲「送信範囲」(アジマス)を含むデータである。
【0023】
抽出手段132dは、ロールコール期間において、アンテナ11からアジマスを入力し、計時部133から時刻を取得するとともに、記憶部14で記憶される第1トラックファイルデータ14a及び第2トラックファイルデータ14bから、所定条件に該当する航空機を質問の送信対象の航空機(ターゲット)と抽出する。所定条件に該当する航空機とは、モードS二次監視レーダ1の監視の対象となる範囲に存在する航空機である。また、抽出手段132dは、抽出したターゲットの条件に応じて、質問の送信範囲を決定し、第2質問生成手段132eに出力する。
【0024】
例えば、あるターゲットから拡張スキッタを受信し、このターゲットに質問を送信する場合、拡張スキッタの受信時刻と質問の送信時刻とが近いほど、ターゲットの予測位置を正確に求めることができる。したがって、計時部133から取得する現在時刻と第1トラックファイルデータ14aに含まれる拡張スキッタの受信時刻との差分が短いほど、予測位置を正確に求めることができ、送信範囲は短くすることができる。そのため、抽出手段132dは、ターゲットが遠距離に存在する場合、送信範囲を制限しないが、ターゲットが近距離に存在する場合には送信範囲を制限する。
【0025】
具体的には、抽出手段132dは、第1トラックファイルデータ14aから所定条件のターゲットを抽出し、抽出されたターゲットのうち、現在時刻t2と拡張スキッタの受信時刻t1の差分t3(t2−t1)がモードS二次監視レーダ1の1スキャンより短いターゲットを抽出し、抽出したターゲットの次のスキャン時における予測位置と送信範囲を求める。予測位置と送信範囲の求め方は、例えば、一般的なモードS二次監視レーダで利用している方法を利用してもよい。
【0026】
また、送信範囲が求められると、抽出手段132dは、現在時刻t2と拡張スキッタの受信時刻t1の差分t3に応じて、調整した送信範囲βを求める。例えば、
t3≦1[s]の場合、
β=α×x1・・・(1)
(制限率x1=0.6)、
1[s]<t3≦2[s]の場合、
β=α×x2・・・(2)
(制限率x2=0.7)、
2[s]<t3≦3[s]の場合、
β=α×x3・・・(3)
(制限率x3=0.8)、
とすることができる。
【0027】
すなわち、差分t3が短いほど送信範囲が狭く設定されるように制限率(x1,x2,x3)を利用して制限され、差分t3が長い場合には制限されずに送信範囲が設定される。なお、ここで挙げた差分t3と制限率との関係は一例であって、状況に応じて設定される。このように送信範囲を制限することで、ロールコール期間における質問応答のスケジュールを無駄なく設定することができる。
【0028】
また、拡張スキッタの取得(例えば、0.5秒に1回)は、モードS二次監視レーダ1の応答(ロールコール応答)の取得(例えば、10秒又は4秒に1回)よりも短い間隔で行なわれるため、拡張スキッタを使用した方がロールコール応答を使用するよりも正確な予測位置及び送信範囲を求めることができる。したがって、第1トラックファイルデータ14a及び第2トラックファイルデータ14bで同一のターゲットについてデータを有している場合には、拡張スキッタに基づいて生成された第1トラックファイルデータ14aに含まれるデータを抽出して予測位置及び送信範囲を求める。
【0029】
第2質問生成手段132eは、入力したデータを利用して、ターゲットに送信する質問を生成するとともに、質問応答のスケジュールを生成し、送信機122に出力する。すなわち、オールコールでデータが取得できていなかった航空機についても、拡張スキッタを受信してデータが取得できれば、ロールコールの捕捉対象とすることができるため、航空機の捕捉が安定し、無駄な質問応答も不要になる。
【0030】
応答判定手段132fは、第2質問生成手段132eで生成したスケジュールに従って受信機123で応答を受信すると、再度、質問を送信する必要があるか否か判定する。また、応答判定手段132fは、再度質問を送信する必要がある場合、判定結果及び受信した質問の内容を含むデータを第2質問生成手段132eに出力し、質問を送信する必要がない場合、判定結果及び受信した質問の内容を含むデータをレポート生成手段132gに出力する。
【0031】
レポート生成手段132gは、応答判定手段132fから入力した判定結果及びデータを利用して、ロールコールレポートを生成する。ロールコールレポートは、航空機の飛行に関するデータであり、応答が正常な判定結果であった場合、レポート生成手段132gは、航空機の飛行状況と正常に飛行している旨を含むレポートを生成する。また、レポート生成手段132gは、応答が正常でない判定結果であった場合、航空機の飛行状況と異常が発生している旨のレポートを生成する。
【0032】
第2トラックファイル更新手段132hは、レポート生成手段132gで生成されたレポートに従って記憶部14で記憶されている第2トラックファイルデータ14bを更新する。
【0033】
〈拡張スキッタ処理〉
図3に示すフローチャートを用いて、拡張スキッタ処理部131における処理を説明する。拡張スキッタ処理部131では、モードS応答判定手段131aが、モードS応答信号のプリアンブルを検出すると(S01でYES)、計時部133から検出時刻を取得する(S02)。
【0034】
拡張スキッタ判定手段131bは、モードS応答信号のPIフィールド=0であるか否かを判定し(S03)。PIフィールド=0であるとき(S03でYES)、拡張スキッタ判定手段131bは、モードS応答信号のDFフィールド=17又は18であるか否かを判定する(S04)。
【0035】
拡張スキッタ判定手段131bでモードS応答信号がDFフィールド=17又は18と判定されることでモードS応答信号が拡張スキッタと判定された場合、第1トラックファイル生成手段131cは、拡張スキッタに含まれる位置情報を座標変換してモードS二次監視レーダ1を基準とした位置情報を求める(S05)。その後、第1トラックファイル生成手段131cは、ステップS05で求めた位置情報を利用して第1トラックファイルデータ14aを生成し、記憶部14に記憶させる(S06)。
【0036】
また、拡張スキッタ判定手段131bでモードS応答信号のPIフィールド=0でないと判定された場合(S03でNO)及びモードS応答信号のDFフィールド=17又は18でないと判定された場合(S04でNO)、拡張スキッタ判定手段131bは、このモードS応答信号を破棄する(S07)。
【0037】
ステップS06における第1トラックファイルの生成又はステップS07におけるモードS応答信号の破棄の後、拡張スキッタ処理部131では、ステップS01の処理に戻り、プリアンブルが検出されると(S01でYES)、ステップS02〜S06の処理が繰り返される。
【0038】
〈オールコール処理〉
図4に示すフローチャートを用いて、SSR処理部132におけるオールコール期間の処理について説明する。オールコール期間には、SSR処理部132では、第1質問生成手段132aがオールコール質問を生成し、送信機122に出力して送信する(S11)。
【0039】
その後、相関処理手段132bは、受信機123から受信した信号を入力すると、受信した全ての信号について、予め定められた相関範囲内の応答であるか否かを判定する(S13)。
【0040】
第2トラックファイル生成手段132cは、相関範囲内の応答であると判定された応答(S13でYES)を利用して第2トラックファイルデータ14bを生成し、記憶部14に記憶させる(S14)。一方、相関処理手段132bは、相関範囲内の応答でないと判定された信号(S13でNO)を破棄する(S15)。
【0041】
〈ロールコール処理〉
図5に示すフローチャートを用いて、SSR処理部132におけるロールコール期間の処理について説明する。ロールコール期間には、SSR処理部132では、抽出手段132dがアンテナ11からアジマスを取得するとともに(S21)、計時部133から時刻を取得する(S22)。その後、抽出手段132dは、記憶部14に記憶される第1トラックファイルデータ14aと第2トラックファイルデータ14bとから質問の送信対象のターゲットを抽出し、送信範囲を求める(S23)。ステップS23における抽出処理については、図6を用いて後述する。
【0042】
その後、第2質問生成手段132eが、ステップS23における抽出処理で抽出されたターゲットに送信する質問及び質問の送信スケジュールを生成し(S24)、送信機122に出力して質問を送信する(S25)。
【0043】
ステップS25で質問を送信後、応答判定手段132fは、受信機123がステップS25で送信した質問に対して受信した応答を入力する(S26)。応答判定手段132fは、入力した信号が、応答として正常であるか(エラーが含まれないか)否かを判定し(S27)、正常であるとき(S27でYES)、GICBレジスタのパラメータの要求がリクエストされているか否か(応答にGICBのパラメータの要求が含まれているか否か)を判定する(S28)。ステップS28でリクエストされていると判定されると(S28でYES)、ステップS24の処理に戻り、GICBレジスタのパラメータの要求する質問の送信についてステップS24〜S27の処理が繰り返される。
【0044】
一方、応答判定手段132fは、正常に受信していないと判定したとき(S27でNO)、航空機の位置(スラントレンジ、アジマス)が所定範囲内であるとき場合(S29でYES)、ステップS24の処理に戻り、再度、質問の送信についてステップS24〜S27の処理が繰り返される。
【0045】
応答判定手段132fでリクエストされていないと判定した場合(S28でNO)、又は、所定範囲内に存在しないと判定した場合(S29でNO)、レポート生成手段132gは、応答判定手段132fから入力する応答に含まれるデータを利用して、ロールコールレポートを生成し、第2トラックファイル更新手段132hに出力する(S30)。
【0046】
トラックファイル生成手段132cは、ロールコールレポートを参照し、応答を正常に受信(スケジュールに従って受信)したか否かを判定する(S31)。正常に受信していた場合(S31でYES)、第2トラックファイル更新手段132hは、ロールコールレポートに含まれる新たなデータで第2トラックファイルデータ14bを更新する(S32)。一方、正常に受信していなかった場合(S31でNO)、第2トラックファイル更新手段132hは、正常に応答を受信していない航空機に関するデータを削除して第2トラックファイルデータ14bを更新する(S33)。なお、第2トラックファイル更新手段132hは、正常に受信していなかった場合、受信できなかった航空機に関するデータを削除する他、図2(c)に示すように、受信できなかった航空機に関する「追跡ステータス」を「コースト」に変更してもよい。
【0047】
《抽出処理》
図6に示すフローチャートを用いて、図5のフローチャートのステップS23における抽出処理について説明する。抽出手段132dは、抽出処理が開始すると、第1トラックファイルデータ14aから、質問を送信するターゲットを抽出する(S41)。また、抽出手段132dは、第1トラックファイルデータ14aに含まれる時刻t1と、ステップS22で抽出した時刻t2とから、前回、ターゲットから応答を受信してからの経過時間(差分t3(t2−t1))を算出する(S42)。
【0048】
その後、抽出手段132dは、ステップS42で算出した経過時間t3と1スキャンの間隔とを比較し、1スキャンより短い間隔で受信したターゲットを抽出する(S43)。また、抽出手段132dは、抽出したターゲットの予測位置を求める(S44)。
【0049】
続いて、抽出手段132dは、ステップS44で算出した予測位置に存在するターゲットに質問を送信する場合の送信範囲(レンジ)を求める(S45)。また、抽出手段132dは、ステップS45で求められた送信範囲から、制限した送信範囲(制限範囲)を求める(S46)。
【0050】
制限範囲が求められると、抽出手段132dは、第2トラックファイルデータ14bから、質問を送信するターゲットを抽出する(S47)。ステップS47でターゲットを抽出すると、抽出手段132dは、ステップS41で第1トラックファイルデータ14aから抽出したターゲットと同一のターゲットがあるか否かを判定する(S48)。
【0051】
同一のターゲットについては(S48でYES)、抽出手段132dは、第1トラックファイルデータ14aから抽出したターゲットについてのデータを第2質問生成手段132eに出力する(S49)。一方、同一でないターゲットについては(S48でNO)、抽出手段132dは、第2トラックファイルデータ14bから抽出したターゲットについてのデータを第2質問生成手段132eに出力する(S50)。
【0052】
上述したように、実施形態に係るモードS二次監視レーダによれば、拡張スキッタを有効利用することで、ガーブル等が原因で通常の質問応答で取得することができない航空機のデータについても取得が可能となり、航空機の捕捉の精度が向上する。
【0053】
上記のように、本発明を実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例および運用技術が明らかとなる。また、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0054】
1…二次監視レーダ
11…アンテナ
12…送受信部
121…送受切替器
122…送信機
123…受信機
13…信号処理部
131…拡張スキッタ処理部
131a…モードS応答判定手段
131b…拡張スキッタ判定手段
131c…第1トラックファイル生成手段
132…SSR処理部
132a…第1質問生成手段
132b…相関処理手段
132c…第2トラックファイル生成手段
132d…抽出手段
132e…第2質問生成手段(質問生成手段)
132f…応答判定手段
132g…レポート生成手段
132h…第2トラックファイル更新手段
133…計時部(計時手段)
14…記憶部(第1記憶部、第2記憶部)
14a…第1トラックファイルデータ
14b…第2トラックファイルデータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機に質問を送信し、当該質問に対して航空機から送信された応答を受信すると、受信した応答に含まれるデータを用いて航空機の飛行を監視する二次監視レーダであって、
現在の時刻を計時する計時手段と、
航空機から送信された拡張スキッタを受信すると、当該拡張スキッタに含まれる航空機の識別子及び当該航空機の位置と、前記計時手段から取得した当該拡張スキッタの受信時刻とを関連付けて第1記憶部に記憶される第1トラックファイルデータに追加する第1トラックファイル生成手段と、
航空機から送信された応答を受信すると、当該応答に含まれる航空機の識別子及び当該航空機の位置と、前記計時手段から取得した当該応答の受信時刻とを関連づけて第2記憶部に記憶される第2トラックファイルデータに追加する第2トラックファイル生成手段と、
前記第1トラックファイルデータに含まれる位置及び受信時刻と、前記第2トラックファイルデータに含まれる位置及び受信時刻とを利用して、所定の位置に存在する航空機を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段が抽出した航空機に送信する質問を生成する質問生成手段と、
前記質問生成手段が生成した質問を送信する送信手段と、
を備えることを特徴とする二次監視レーダ。
【請求項2】
前記抽出手段は、受信時刻と前記計時手段から入力する現在の時刻との時間差が1スキャンに要する時間より短い場合、当該時間差に応じた質問の送信範囲を設定し、
前記送信手段は、前記抽出手段で設定された送信範囲内で質問を送信することを特徴とする請求項1に記載の二次監視レーダ。
【請求項3】
前記抽出手段は、同一の航空機に関するデータが前記第1トラックファイルデータと前記第2トラックファイルデータとに含まれているとき、前記第1トラックファイルデータに含まれるデータを優先して抽出することを特徴とする請求項1又は2に記載の二次監視レーダ。
【請求項4】
航空機に質問を送信し、当該質問に対して航空機から送信された応答を受信すると、受信した応答に含まれるデータを用いて航空機の飛行を監視する監視方法であって、
航空機から送信された拡張スキッタを受信すると、当該拡張スキッタに含まれる航空機の識別子及び当該航空機の位置と、現在の時刻を計時する計時手段から取得した当該拡張スキッタの受信時刻とを関連付けて第1記憶部に記憶される第1トラックファイルデータに追加するステップと、
航空機から送信された応答を受信すると、当該応答に含まれる航空機の識別子及び当該航空機の位置と、前記計時手段から取得した当該応答の受信時刻とを関連づけて第2記憶部に記憶される第2トラックファイルデータに追加するステップと、
前記第1トラックファイルデータに含まれる位置及び受信時刻と、前記第2トラックファイルデータに含まれる位置及び受信時刻とを利用して、所定の位置に存在する航空機を抽出するステップと、
抽出した航空機に送信する質問を生成するステップと、
生成した質問を送信するステップと、
を備えることを特徴とする監視方法。
【請求項5】
所定の位置に存在する航空機を抽出するステップでは、受信時刻と前記計時手段から入力する現在の時刻との時間差が1スキャンに要する時間より短い場合、当該時間差に応じた質問の送信範囲を設定し、
質問を送信するステップでは、設定された送信範囲内で質問を送信することを特徴とする請求項4に記載の監視方法。
【請求項6】
所定の位置に存在する航空機を抽出するステップでは、同一の航空機に関するデータが前記第1トラックファイルデータと前記第2トラックファイルデータとに含まれているとき、前記第1トラックファイルデータに含まれるデータを優先して抽出することを特徴とする請求項4又は5に記載の監視方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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