説明

二次監視レーダ装置

【課題】スイープ相関処理におけるターゲットの検出率の向上を図り得る二次監視レーダ装置を提供する。
【解決手段】モノパルス測角処理部13の処理の実行・停止を切り替えるためのスイッチをモノパルス測角処理部13内のソフトウェア処理により実現するようにし、デコード処理部14で処理すべくΣビデオ信号をモノパルス測角処理部13で処理すべくΣビデオ信号とは別に専用の伝送路D2にて転送するようにし、これによりモノパルス測角処理部13とデコード処理部14とが別々にΣビデオ信号を処理できるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば航空管制用レーダ装置に用いられる二次監視レーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
航空管制用の二次監視レーダ装置は、例えば特許文献1に示されているように、質問信号(1030MHz)を航空機上のトランスポンダ(応答装置)に送信し、このトランスポンダにより解読された質問信号に対応する応答信号(1090MHz)を受信することによって航空機の識別を行なうものである。
【特許文献1】特開2005−69890号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記二次監視レーダ装置では、航空機から到来する応答信号を空中線装置で受信し、この空中線装置の複数個所で得られる各受信信号の和パターンのΣビデオ信号が各受信信号の差パターンのΔビデオ信号より信号レベルが大きい時に、モノパルス測角処理部にΣビデオ信号を入力してモノパルス測角処理を実行すると共に、デコード処理部にてΣビデオ信号をデコード処理し、スイープ相関処理部にて測角値とデコード処理データとの相関の有/無を判定し、この判定結果からターゲット情報を検出するようにしている。
【0004】
しかし、モノパルス方式の場合、信号処理に使用するデータはΣ>α・Δの関係を満足したデータとなるため、実際に和パターンで受信したデータ数(ヒット数)より少なくなる。このため、スイープ相関処理部にてターゲットの検出率が低減する傾向となる。
【0005】
そこで、この発明の目的は、スイープ相関処理におけるターゲットの検出率の向上を図り得る二次監視レーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記目的を達成するために、以下のように構成される。
目標対象物からの信号を空中線装置にて受信し、空中線装置の複数個所で得られる各受信信号の和信号が各受信信号の差信号より信号レベルが大きい時に、モノパルス測角処理部にて和信号及び差信号を入力してモノパルス測角処理を実行すると共に、デコード処理部にて和信号を復号処理し、スイープ相関処理部にて測角処理データと復号処理データとを入力して相関処理を実行し、この処理結果から目標対象物に関する目標情報を得る二次監視レーダ装置において、モノパルス測角処理部に設けられ、モノパルス測角処理のオン・オフを選択的に切り替える切替手段と、和信号の信号レベルと差信号の信号レベルとを比較し、この比較結果から和信号の信号レベルが差信号の信号レベルより大きい時に、切替手段をオンさせ、和信号の信号レベルが差信号の信号レベル以下の時に、切替手段をオフさせる切替制御手段と、切替手段をバイパスさせて和信号をデコード処理部に供給する信号供給手段とを備えるようにしたものである。
【0007】
なお、信号供給手段は、切替手段の前段とデコード処理部との間を接続するバイパス経路を備えたことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、デコード処理部で処理すべく和信号はモノパルス測角処理部で処理すべく和信号とは別に専用のバイパス経路を介してデコード処理部に供給されることになり、これによりデコード処理部とモノパルス測角処理部とで別々に和信号を処理できるようにしている。従って、和信号の信号レベルが差信号の信号レベルより大きいか否かに関わらず、デコード処理部において常に全ての和信号を復号処理して多くの処理結果を得ることができ、これによりスイープ相関処理部におけるターゲットの検出率を高めることができる。
【0009】
切替制御手段は、和信号及び差信号とは異なるオムニパターン信号を用いるとき、和信号の信号レベルが差信号の信号レベルより大きく、かつ和信号の信号レベルがオムニパターン信号の信号レベルより大きい場合に、切替手段をオンさせることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、オムニパターン信号を用いる場合であっても、スイープ相関処理部におけるターゲットの検出率を高めることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上詳述したようにこの発明によれば、スイープ相関処理におけるターゲットの検出率の向上を図り得る二次監視レーダ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、この発明の第1の実施形態に係わる二次監視レーダ装置の構成を示すブロック図である。図1において、図中符号11は空中線装置で、ターゲットとなる航空機からのRF信号を受信する。空中線装置11では、受信信号の和パターンの信号と差パターンの信号が得られる。このうち和パターンの信号は、受信機12でΣビデオ信号に変換されてモノパルス測角処理部13、デコード処理部14及びレベル比較器15にそれぞれ供給される。また差パターンの信号は、受信機16でΔビデオ信号に変換されてモノパルス測角処理部13及びレベル比較器15にそれぞれ供給される。これらΣビデオ信号及びΔビデオ信号は、図2に示すような関係を成す。
【0013】
レベル比較器15は、Σビデオ信号の振幅レベルとΔビデオ信号の振幅レベルとを比較し、Σビデオ信号の振幅レベルがΔビデオ信号の振幅レベルより大きいときに、ゲート信号をモノパルス測角処理部13に出力する。
【0014】
モノパルス測角処理部13は、ゲート信号が入力されたときに、Σビデオ信号とΔビデオ信号とを用いてモノパルス測角処理を実行する。
【0015】
デコード処理部14は、Σビデオ信号を入力してデコード処理を実行する。
【0016】
そして、モノパルス測角処理部13から出力されるモノパルス値及びデコード処理部14から出力されるデコード結果は、スイープ相関処理部17に供給される。スイープ相関処理部17は、モノパルス値及びデコード結果を入力してスイープ相関処理を実行し、この処理結果に基づいてターゲット情報を出力する。
【0017】
次に、上記構成における動作について説明する。
以前は、図3に示す二次監視レーダ装置が考えられていた。なお、図3において、図1と同一部分には同一符号を付す。
【0018】
空中線装置11にて受信された各RF信号(和パターン、差パターン)は各々の受信機12,16にてΣビデオ信号、Δビデオ信号として出力される。出力された両ビデオ信号は、レベル比較器15にて振幅レベルの比較を行い、Σ>α・Δの関係が成立した場合のみ、スイッチS1をONとさせ、Σ>α・Δの条件を満足しているΣビデオ信号について、以下の信号処理が行われる。
【0019】
信号処理ではモノパルス測角処理部13によりモノパルス値が出力され、デコード処理部14によりデコード結果が出力される。
【0020】
両データはスイープ相関処理部17により、受信した信号について相関の有/無が判定され、その判定結果をもとにターゲット情報が出力される。
【0021】
モノパルス方式の場合、信号処理に使用するデータはΣ>α・Δの関係を満足したデータとなるため、実際に和パターンで受信したデータ数(ヒット数)より少なくなる。このため、スイープ相関処理部にてターゲットの検出率が低減する傾向となる。
【0022】
そこで、本実施形態では、上記スイッチS1をモノパルス測角処理部13内のソフトウェア処理にて実現するようにし、受信機12とモノパルス測角処理部13との間を伝送路D1で接続すると共に、伝送路D1の途中からデコード処理部14までを伝送路D2で接続するようにしている。つまり、デコード処理部14に供給するΣビデオ信号は、モノパルス測角処理部13によるモノパルス測角処理の実行・停止の切替処理をバイパスすることになる。
【0023】
したがって、スイープ相関処理部17におけるターゲットの検出率は従来の場合よりも高くなる。
【0024】
以上のように上記第1の実施形態では、モノパルス測角処理部13の処理の実行・停止を切り替えるためのスイッチをモノパルス測角処理部13内のソフトウェア処理により実現するようにし、デコード処理部14で処理すべくΣビデオ信号をモノパルス測角処理部13で処理すべくΣビデオ信号とは別に専用の伝送路D2にて転送するようにし、これによりモノパルス測角処理部13とデコード処理部14とが別々にΣビデオ信号を処理できるようにしている。
【0025】
従って、Σ>α・Δの関係を満たすか否かに関わらず、デコード処理部14において常に全てのΣビデオ信号をデコード処理して多くの処理結果を得ることができ、これによりスイープ相関処理部17におけるターゲットの検出率を高めることができる。
【0026】
(第2の実施形態)
図4は、この発明の第2の実施形態に係わる二次監視レーダ装置の構成を示すブロック図である。図4において、上記図1と同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0027】
この第2の実施形態は、オムニパターン受信信号を受信する受信機18を有し、この受信機18の出力信号であるΩビデオ信号をΣビデオ信号と比較するレベル比較器19を有する点、このレベル比較器19とレベル比較器15の出力がAND回路20に入力され出力信号がゲート信号としてモノパルス測角処理部13に入力されている点などが、上記第1の実施形態と異なっている。
【0028】
空中線装置11にて受信された各RF信号(和パターン、差パターン、オムニパターン)は各々の受信機12,16,18にて図5に示すようなΣビデオ信号、Δビデオ信号、Ωビデオ信号として出力される。Σビデオ信号及びΔビデオ信号はレベル比較器15にて振幅レベルが比較され(Σ>α・Δ)、Σビデオ信号及びΩビデオ信号はレベル比較器19にて振幅レベルが比較され(Σ>β・Ω)、Σ>α・ΔかつΣ>β・Ωを満足するゲート信号が出力される。
【0029】
モノパルス測角処理部13ではΣビデオ信号、Δビデオ信号、ゲート信号を入力し、Σ>α・ΔかつΣ>β・Ωを満足するΣビデオ信号について測角処理を行いモノパルス値を出力する。また、Σビデオ信号はデコード処理部14にてデコード処理されデコード結果を出力する。両データはスイープ相関処理部17により受信した信号について相関の有/無が判定され、その判定結果をもとにターゲット情報が出力される。
【0030】
なお、レベル比較器15およびレベル比較器19の処理は、デジタル処理であっても実現可能である。
【0031】
以上のように上記第2の実施形態は、RSLS(Receiver Side Lobe Suppression)に適用した場合であり、上記第1の実施形態と同様にスイープ相関処理にて使用するデータ数(ヒット数)が減少されることなく、ターゲットの検出率の向上を図ることが可能となる。
【0032】
(その他の実施形態)
なお、本発明を各実施形態に基づき説明したが、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、各実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明の第1の実施形態に係わる二次監視レーダ装置の構成を示すブロック図。
【図2】同第1の実施形態におけるΣビデオ信号とΔビデオ信号との関係を示す図。
【図3】以前に考えられていた二次監視レーダ装置の構成を示すブロック図。
【図4】この発明の第2の実施形態に係わる二次監視レーダ装置の構成を示すブロック図。
【図5】同第2の実施形態におけるΣビデオ信号とΔビデオ信号とΩビデオ信号との関係を示す図。
【符号の説明】
【0034】
11…空中線装置、12,16,18…受信機、13…モノパルス測角処理部、14…デコード処理部、15,19…レベル比較器、17…スイープ相関処理部、20…AND回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標対象物からの信号を受信部にて受信し、前記受信部の複数個所で得られる各受信信号の和信号が各受信信号の差信号より信号レベルが大きい時に、測角処理部にて前記和信号及び前記差信号を入力してモノパルス測角処理を実行すると共に、デコード処理部にて前記和信号を復号処理し、相関処理部にて測角処理データとデコード処理データとを入力して相関処理を実行し、この処理結果から前記目標対象物に関する目標情報を得る二次監視レーダ装置において、
前記測角処理部に設けられ、前記モノパルス測角処理のオン・オフを選択的に切り替える切替手段と、
前記和信号の信号レベルと前記差信号の信号レベルとを比較し、この比較結果から前記和信号の信号レベルが前記差信号の信号レベルより大きい時に、前記切替手段をオンさせ、前記和信号の信号レベルが前記差信号の信号レベル以下の時に、前記切替手段をオフさせる切替制御手段と、
前記切替手段をバイパスさせて前記和信号を前記デコード処理部に供給する信号供給手段とを具備したことを特徴とする二次監視レーダ装置。
【請求項2】
前記信号供給手段は、前記切替手段の前段と前記デコード処理部との間を接続するバイパス経路を備えたことを特徴とする請求項1記載の二次監視レーダ装置。
【請求項3】
前記切替制御手段は、前記和信号及び前記差信号とは異なるオムニパターン信号を用いるとき、前記和信号の信号レベルが前記差信号の信号レベルより大きく、かつ和信号の信号レベルが前記オムニパターン信号の信号レベルより大きい場合に、前記切替手段をオンさせることを特徴とする請求項1記載の二次監視レーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−218621(P2007−218621A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−36733(P2006−36733)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】