説明

二次監視レーダ

【課題】航空機の監視とともに、空港付近を飛行する航空機の危険を防止する。
【解決手段】危険進路を飛行する航空機の有無を判定する判定部(134i)と、判定部によって危険進路を飛行する航空機が存在すると判定されたとき、航空機に搭載される航空機衝突防止装置に衝突の回避を促がす回避指示信号を送信するタイミングを設定する設定部(135)と、設定部で設定された回避指示信号の送信タイミングで、回避指示信号の送信用として規定される質問信号の受信周波数を送信機に出力する周波数切替部(137)と、送信タイミングで、周波数切替部から出力された質問信号の受信周波数の回避指示信号を送信させるように送信機を制御する送信制御部(131)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ACAS機能を有するトランスポンダを搭載する航空機を監視する二次監視レーダに関する。
【背景技術】
【0002】
二次監視レーダ(SSR:Secondary Surveillance Rader)は、航空機に搭載されているトランスポンダに対して質問を送信し、その質問に対する様々な情報を応答として受信して航空管制で利用する情報を取得する装置である。トランスポンダには、ATCRBSトランスポンダとモードSトランスポンダの2種類がある。モードS二次監視レーダは、このATCRBSトランスポンダとモードSトランスポンダの2種類のトランスポンダを捕捉するため、オールコール期間に一括質問応答でATCRBSトランスポンダを搭載する航空機を捕捉し、モードSトランスポンダを搭載する航空機については、オールコール期間に一括質問応答で捕捉し、その後、ロールコール期間に個別質問応答で捕捉を継続する。
【0003】
例えば、図5に示すように、モードS二次監視レーダ1aは、送信機122が各期間に対応する質問を送受切替器121およびアンテナ11を介して送信し、受信機123がアンテナ11および送受切替器121を介してトランスポンダ2からの応答を受信する。モードS二次監視レーダ1aでは、送信制御部131によって送信機122による信号の送信を制御し、受信機123が受信した信号をモードS応答処理部132またはATCRBS応答処理部133で処理し、監視処理部134aによってターゲットレポートを生成する。具体的には、モードSトランスポンダとの質問応答に関する処理はモードS応答処理部132によって実行され、ATCRBSトランスポンダとの質問応答に関する処理はATCRBS応答処理部133によって実行されるが、モードS信号とATCRBS信号の送受信については、チャネル管理部135と周波数発生器136によってタイミングや送受信される信号の周波数が管理されている。
【0004】
また、航空機の中には、地上に設置される二次監視レーダ1aと信号を送受信する機能の他、航空機同士で衝突を防止する為の信号を送受信する航空機衝突防止装置(ACAS:Airborne Collision Avoidance System)を有するものもある。図6に示すように、航空機衝突防止装置を有する航空機のトランスポンダ2a,2bには、二次監視レーダ1aと間で二次監視レーダ用の信号(モードS質問信号、モードS応答信号等)を送受信するアンテナ21及びSSR送受信部22とSSR送受信部22が送受信する信号を処理するSSR処理部23に加え、航空機衝突防止装置用の信号(ACAS信号)を送受信するアンテナ24及びACAS送受信部25とACAS送受信部25が送受信する信号を処理するACAS処理部26を有している。この航空機衝突防止装置用の信号は、航空機同士で送受信される信号であるため、地上の二次監視レーダ1aとは無関係に送受信されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Michael C. Stevens “Secondary Surveillance Radar” 1998, ISBN 0-89006-292-7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、航空機の監視は二次監視レーダで得られる情報を利用して行なわれるが、空港付近で行なわれる滑走路の使用許可や進路指示等は、安全のため、航空機の操縦者と地上の管制官が無線により直接一対一のコミュニケーションで伝達される。しかしながら操縦者と管制官の情報の伝達は無線通信を利用して口頭で行なわれる為、内容の誤認識や誤指示が生じると、滑走路進入の誤りが発生することもあり得る。
【0007】
したがって本発明は、航空機の監視とともに、空港付近を飛行する航空機の危険防止が可能な二次監視レーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る二次監視レーダは、航空機に搭載されるトランスポンダに所定の送信周波数の質問信号を送信する送信機と、当該質問信号に応じてトランスポンダから所定の受信周波数の応答信号を受信する受信機を有し、航空機の飛行状況を取得する二次監視レーダであって、危険進路を飛行する航空機の有無を判定する判定部と、判定部によって危険進路を飛行する航空機が存在すると判定されたとき、航空機に搭載される航空機衝突防止装置に衝突の回避を促がす回避指示信号を送信するタイミングを設定する設定部と、設定部で設定された回避指示信号の送信タイミングで、回避指示信号の送信用として規定される質問信号の受信周波数を送信機に出力する周波数切替部と、送信タイミングで、周波数切替部から出力された質問信号の受信周波数の回避指示信号を送信させるように送信機を制御する送信制御部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、航空機の監視とともに、空港付近を飛行する航空機の危険を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る二次監視レーダを説明する概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係る二次監視レーダの構成を示すブロック図である。
【図3】図2の二次監視レーダにおける処理を説明するフローチャートである。
【図4】図2の二次監視レーダによる航空機の飛行について説明する図である。
【図5】従来の二次監視レーダの構成を示すブロック図である。
【図6】従来の二次監視レーダと航空機衝突防止装置を有する航空機を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示すように、本発明に係る二次監視レーダ1は、図5及び図6を用いて上述した二次監視レーダ1aと同様に航空機との間で監視のための信号の送受信が行われるが、これに加え、航空機に搭載される航空機衝突防止装置で利用されるACAS信号である回避指示(RA)の信号を送信することができる。この二次監視レーダ1は、オールコール期間には、一括質問応答によって航空機を捕捉し、ロールコール期間になると、個別質問応答によって航空機を捕捉する他、危険進路を飛行しているため進路を変更する必要がある航空機を検知すると、該当する航空機に衝突防止を喚起する回避指示の信号(回避指示信号)を送信し、航空機の飛行進路を変更させて飛行や着陸の安全を図る。
【0012】
図1に示す二次監視レーダ1は、オールコール期間には一括質問応答によって主にATCRBSトランスポンダを備える航空機の捕捉と、モードSトランスポンダを備える航空機の初期捕捉を実行し、ロールコール期間には個別質問応答によってモードSトランスポンダを備える航空機の捕捉を実行するモードS二次監視レーダ(SSRモードS)である。この二次監視レーダ1は、航空機衝突防止装置で利用される信号の送受信を可能とするため、図2に示すように、アンテナ11と、信号の送受信を行う送信部12と、送受信する信号を処理する処理部13を有している。送信部12は、送信及び受信を切り替える送受切替器121と、送受切替器121およびアンテナ11を介して信号を送信する送信機122と、アンテナ11および送受切替器121を介して信号を受信する受信機123とを備えている。また処理部13は、送信機122による信号の送信を制御する送信制御部131と、受信機123が受信したモードS信号を処理するモードS応答処理部132と、受信機123が受信したモードA/C信号を処理するATCRBS応答処理部133と、ターゲットレポートを生成する監視処理部134と、信号の送信又は受信に利用する周波数を発生する周波数発生器136に加え、回避指示信号を送信するタイミングで、送信機121が送信する信号の周波数を回避指示信号で規定される周波数に切り替える周波数切替部137を備えている。
【0013】
具体的には、監視処理部134は、判定手段134iと操作手段134iiを有している。判定手段134iは、危険進路を飛行する航空機を検知した信号を入力の有無により、危険進路を飛行する航空機の有無を判定しており、危険進路を飛行する航空機を検知した信号を入力すると、回避指示信号の送信が必要であるため、ACASモードに設定する。また、操作手段134iiは、ACASモードに設定されると、回避指示信号の送信を操作する信号を送信制御部131、チャネル管理部135、周波数切替部137に出力する。監視処理部134が入力する検知信号は、入力装置(図示せず)を介して管制官等から入力されてもよいし、二次監視レーダ1の内部又は外部の検知機能から入力してもよい。ここで、ACASモードとは、二次監視レーダ1が通常のモードS信号やモードA/C信号を送信する質問応答を一時的に停止して、危険進路を飛行する航空機の進路の変更のために回避指示信号を送信するモードである。
【0014】
チャネル管理部135は、監視処理部134から操作信号を入力すると、回避指示信号の送信タイミングを設定(スケジュール)し、送信制御部131に設定した送信タイミングを出力する。送信制御部131は、監視処理部134から操作信号を入力すると、回避指示信号を生成し、チャネル管理部135で設定されたタイミングで送信機122に回避指示信号を送信させる。
【0015】
また、監視処理部134から操作信号を入力すると、周波数切替部137は、周波数発生器136で発生されたACAS用(回避指示信号用)に規定される周波数で信号を送信するように送信機122に出力する。図1に示すような航空機衝突防止装置に対応するトランスポンダ2a,2bでは、ACAS用の送信周波数及び受信周波数が、モードS信号又はATCRBS用の送信周波数及び受信周波数と逆の関係になっている。すなわち、ACAS送受信部25が送信するACAS信号の周波数はSSR送受信部22が受信するモードS信号(又はATCRBS信号)の周波数であって、ACAS送受信部25が受信するACAS信号の周波数はSSR送受信部22が送信するモードS信号(又はATCRBS信号)の周波数である。したがって、周波数替部137は、ACASモードに設定されている場合、送信周波数と受信周波数を逆にすればよい。
【0016】
なお、送信機122が回避指示信号を送信後は、新たに危険進路を検知した信号を入力するまでは回避指示信号を送信する必要はないため、ACASモードを終了し、通常のロールコールの処理を実行する。
【0017】
図3に示すフローチャートを用いて、本発明に係る二次監視レーダ1のロールコール期間における処理を説明する。二次監視レーダ1では、ロールコール期間には、送信制御部131の制御によって送信機122が質問信号を送信する(S1)。受信機123が信号を受信すると(S2)、受信した信号はモードS応答処理部132を介して監視処理部134において、受信信号のAPフィールドとモードSアドレスを比較する(S3)。受信信号のAPフィールドとモードSアドレスが一致した場合(S3でYES)、監視処理部134は、ステップ2で受信した信号がステップS1で送信した質問信号に対する応答信号であると決定し、応答信号を受信した場合の処理を実行する(S4)。すなわち、受信信号に含まれる情報をターゲットレポートとして出力する。一方、受信信号のAPフィールドがモードSアドレスと一致しない場合(S3でNO)、監視処理部134は、ステップS2で受信した信号は、他の装置に送信された信号であると判定し、破棄する(S5)。
【0018】
また、二次監視レーダ1では、このような過程で危険進路を飛行する航空機が存在しないとき、すなわち、危険進路を飛行する航空機を検知した信号を入力しないときには(S6でNO)、ステップS1〜S5で上述したようなロールコールの処理が継続される(S7)。一方、監視処理部134は、危険進路を飛行する航空機を検知した信号を入力したとき(S6でYES)、この航空機に回避指示信号を送信するため、ACASモードに設定し、送信制御部131、チャネル管理部135及び周波数切替部137に回避指示信号の送信を操作する信号を出力する(S8)。その後、チャネル管理部135は、回避指示信号を送信するスケジュールを生成する(S9)。また、送信制御部131は、危険進路を飛行する航空機に送信する回避指示の信号を生成する。周波数切替部137は、チャネル管理部135で設定された回避指示の信号の送信タイミングで、送信機122に出力する信号周波数をACAS用の送信周波数に切り替える(S10)。続いて、送信機122は、送信制御部131の制御によって、チャネル管理部135で設定された回避指示信号の送信タイミングで回避指示信号を送信する(S11)。
【0019】
例えば、図4に示すように、ある航空機4aが、着陸が禁止されている滑走路に着陸しようとしているときには、二次監視レーダ1は、この航空機4aが危険進路を飛行する航空機であると検知された信号を入力し、ACAS信号である回避指示信号を送信し、衝突の回避を促がす。航空機4aでは、二次監視レーダ1から送信された回避指示信号を受信すると、この信号によって危険な飛行状態であると把握することができるため、危険を回避することができる。一方、着陸が禁止されていない滑走路に着陸しようとしている航空機4bには、回避指示信号は送信されないため、この航空機4bは進路を変更することなく着陸することができる。ここで、二次監視レーダ1によって回避指示信号の送信対象となる航空機は、実際に着陸が禁止されている滑走路に着陸しようとしている航空機の他、着陸予定の滑走路に前に着陸する航空機との間隔が所定の間隔より短い航空機等が挙げられる。
【0020】
上述したように、本発明に係る二次監視レーダ1は、航空機衝突防止装置用の信号を送信することができるため、危険進路を飛行する航空機が存在する場合、航空機に衝突防止装置に対して信号を送信し、危険を喚起することができる。このように二次監視レーダ1がACAS信号である回避指示の信号を利用することで、航空機の操縦士は、衝突防止装置によって、衝突の恐れが喚起された場合と同様に危険である状況を把握し、適切な操縦が可能となる。例えば、空港等のように航空機が多く飛行し、滑走路へ着陸する航空機の数が多い場合の航空機同士の衝突を防止にも有用である。
【符号の説明】
【0021】
1…二次監視レーダ
11…アンテナ
12…送信部
121…送受切替器
122…送信機
123…受信機
13…処理部
131…送信制御部
132…応答処理部
133…ATCRBS応答処理部
134…監視処理部
134i…判定手段(判定部)
134ii…出力手段
135…チャネル管理部(設定部)
136…周波数発生器
137…周波数切替部
2(2a,2b)…トランスポンダ
21…アンテナ
22…SSR送受信部
23…SSR処理部
24…アンテナ
25…ACAS送受信部
26…ACAS処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機に搭載されるトランスポンダに所定の送信周波数の質問信号を送信する送信機と、当該質問信号に応じて前記トランスポンダから所定の受信周波数の応答信号を受信する受信機を有し、航空機の飛行状況を取得する二次監視レーダであって、
危険進路を飛行する航空機の有無を判定する判定部と、
前記判定部によって危険進路を飛行する航空機が存在すると判定されたとき、前記航空機に搭載される航空機衝突防止装置に衝突の回避を促がす回避指示信号を送信するタイミングを設定する設定部と、
前記設定部で設定された回避指示信号の送信タイミングで、回避指示信号の送信用として規定される質問信号の受信周波数を前記送信機に出力する周波数切替部と、
前記送信タイミングで、前記周波数切替部から出力された質問信号の受信周波数の回避指示信号を送信させるように前記送信機を制御する送信制御部と、
を備えることを特徴とする二次監視レーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−117904(P2011−117904A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277615(P2009−277615)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】