説明

二次監視レーダ

【課題】航空機の監視に加え、気象情報を容易に収集する。
【解決手段】モードS二次監視レーダは、航空機に質問信号を送信し、当該質問信号に応答して航空機から送信された応答信号を受信して航空機の飛行を監視する二次監視レーダであって、送信手段と、受信手段と、気象情報取得手段と、位置特定手段と、出力手段とを有する。送信手段は、ロールコール期間にGICBレジスタの気象情報の送信要求を含む質問信号を送信する。受信手段は、航空機から質問信号に応じて送信された応答信号を受信する。気象情報取得手段は、前記受信手段が受信した応答信号から、GICBレジスタの気象情報を取得する。位置特定手段は、前記受信信号が受信した応答信号から、航空機の位置情報を特定する。出力手段は、前記気象情報取得手段で取得された気象情報を、前記位置特定手段で算出された位置情報と関連づけて出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、航空機の飛行を監視するとともに気象情報を収集する二次監視レーダに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の飛行の監視には、モードS二次監視レーダ(SSRモードS:Secondary Surveillance Radar Mode S)等のレーダ装置が利用される。モードS二次監視レーダは、航空機に搭載されるトランスポンダに質問信号を送信し、トランスポンダから送信される応答信号を受信し、解析して航空機を監視する。トランスポンダには、多くの情報を含むGICBレジスタを有するものもあるが、このGICBレジスタに含まれる情報は有効に利用されていない現状がある。
【0003】
一方、上空における気圧、気温又は気流等の気象情報を収集するため、気圧計や高度計等で必要な気象情報を収集する気象情報収集装置を搭載した気球等を飛行させ、複数の場所で気象情報を測定することが広く行なわれている。一方、このような気象情報収集に利用する気球は無人であって、風に流され易く、測定位置を定めることが困難である。したがって、従来の気象情報収集装置では、必要な位置の気象情報を収集できないことがある。また、このような気球に搭載される気象情報収集装置は、測定後の回収が困難であるのが現状である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Michael C. Stevens “Secondary Surveillance Radar” 1988, ISBN 0-89006-292-7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来の気象情報収集装置では、必要な情報を容易に収集することが困難である。
【0006】
従って実施形態によれば、航空機の監視に加え、気象情報を容易に収集することのできる二次監視レーダを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係るモードS二次監視レーダは、航空機に質問信号を送信し、当該質問信号に応答して航空機から送信された応答信号を受信して航空機の飛行を監視する二次監視レーダであって、送信手段と、受信手段と、気象情報取得手段と、位置特定手段と、出力手段とを有する。送信手段は、ロールコール期間にGICBレジスタの気象情報の送信要求を含む質問信号を送信する。受信手段は、航空機から質問信号に応じて送信された応答信号を受信する。気象情報取得手段は、前記受信手段が受信した応答信号から、GICBレジスタの気象情報を取得する。位置特定手段は、前記受信信号が受信した応答信号から、航空機の位置情報を特定する。出力手段は、前記気象情報取得手段で取得された気象情報を、前記位置特定手段で算出された位置情報と関連づけて出力する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係るモードS二次監視レーダの構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】図1のモードS二次監視レーダで送受信する信号を説明する図である。
【図3】図1のモードS二次監視レーダでの予測位置特定方法について説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1を用いて実施形態に係るモードS二次監視レーダ1について説明する。モードS二次監視レーダ1は、地上局に設置されており、航空機に備えられるトランスポンダ2との質問応答に基づいて航空機の飛行を監視する装置である。このモードS二次監視レーダ1では、オールコール期間に一括質問を送信し、ロールコール期間に個別質問を送信し、一括質問及び個別質問からそれぞれ受信する応答を利用して航空機の飛行を監視する。
【0010】
このモードS二次監視レーダ1では、ロールコール期間において質問信号を送信する際に、定期的にGICBレジスタの気象情報の要求(GICB要求)を含む質問信号を送信し、気象情報を収集する。
【0011】
なお、オールコール期間における処理については質問信号の送信及び応答信号の受信と、受信した応答信号の解析であって、従来の処理と同一である。そのため、以下では、オールコール期間における処理については説明を省略し、ロールコール期間における処理について説明する。
【0012】
図1に示すように、モードS二次監視レーダ1は、アンテナ11と、アンテナ11を介して信号を送受信する送受信部12と、質問信号を制御するとともに受信する応答信号を処理する信号処理部13と、監視対象の航空機に関する航空機データを記憶する航空機データ記憶部14とを備えている。
【0013】
航空機データ記憶部14では、ロールコール期間における監視対象の航空機から取得した情報(モードSアドレス、位置情報等)を含む航空機データを記憶している。
【0014】
送受信部12は、送受切替器121、送信機122及び受信機123を有し、アンテナ11を介して質問信号を送信するとともに、アンテナ11で受信する応答信号を信号処理部13に出力している。
【0015】
信号処理部13は、質問信号の送信を制御する送信制御部131、送信する質問信号を生成する質問生成部132、受信した応答信号を処理する応答処理部133、受信した応答信号を利用してレポートを生成するレポート生成部134、受信した応答信号を利用して航空機データを更新する更新部135、GICBレジスタの気象情報の送信を要求するタイミングを判定する判定部136及び取得した気象情報を処理する気象情報処理部137を備えている。
【0016】
具体的には、送信制御部131は、質問生成部132から入力する質問信号を送受信部12に出力し、送信機122にアンテナ11を介して送信させる。ここで、送信制御部131がロールコール期間に送信する質問信号は、通常のロールコール期間の質問信号又はGICBレジスタの気象情報を含む応答を要求する質問信号のいずれかである。
【0017】
応答処理部133は、送受信部12がアンテナ11を介して受信した信号を入力すると、入力した信号を解析して信号に含まれるモードSアドレスが送信した質問に含まれるモードSアドレスと一致する信号を送信制御部131が送信した質問信号に対する応答信号として選択する。応答処理部133は、モードSアドレスが一致しない信号を質問信号に対する応答信号でないとして破棄する。
【0018】
また、応答処理部133は、受信した応答信号がショート応答(通常のロールコール期間の応答信号)であるかロング応答(GICBレジスタの気象情報を含む応答信号)であるかを判定する。ショート応答は、送信制御部131が通常の質問信号を送信した場合に応答される信号である。具体的には、ショート応答とは、図2(a)に示すような、5ビットのDFフィールドと、3ビットのFSフィールドと、5ビットのDRフィールドと、6ビットのUMフィールドと、13ビットのACフィールド又はIDフィールドと、24ビットのAPフィールドとを有する56ビットのデータである。ロング応答は、送信制御部131がGICBレジスタの気象情報を要求する質問信号を送信した場合に応答される信号である。具体的には、ロング応答は、図2(b)に示すような、ショート応答で含むデータに加え、56ビットのMBフィールドを有する112ビットのデータである。
【0019】
さらに、応答処理部133は、応答信号を解析し、この解析結果を判定結果とともにレポート生成部134、更新部135及び気象情報処理部137に出力する。
【0020】
レポート生成部134は、応答処理部133から入力する応答信号の解析結果を利用して航空機の飛行状況に関するレポートを生成する。具体的には、レポートには、航空機のモードSアドレス、位置情報等を含んでいる。生成されたレポートは、管制塔等の受信装置に送信され、航空管制に利用される。
【0021】
更新部135は、応答処理部133から入力する応答信号の解析結果を利用して航空機データ記憶部14で記憶される航空機データを更新する。
【0022】
判定部136は、ロールコール期間において、質問信号の送信の際、GICBレジスタの気象情報は要求しない通常の質問信号を送信するのか、または、GICBレジスタの気象情報を要求する質問信号を送信するのかを判定する。すなわち、図2を用いて上述したように、GICBレジスタの気象情報を含まない通常の応答信号はショート応答であるが、GICBレジスタの気象情報を含む応答信号はロング応答であり、ロング応答を多く受信する場合、ショート応答のみを受信する場合と比較して、受信することのできる応答信号の数が少なくなる。このように、受信することのできる応答信号が減少した場合、モードS二次監視レーダ1では必要な航空機の情報まで取得できなくなり、本来の航空機の監視が十分に実施できなくなるおそれがある。したがって、モードS二次監視レーダ1では、航空機から応答信号を受信する際には定期的なタイミングで気象情報を取得する。
【0023】
例えば、判定部136は、モードSアドレスと質問信号の送信履歴とを関連付けてメモリに記憶しており、質問信号を送信する際、10回のうち1回だけGICBレジスタの気象情報を要求する質問信号を送信し、残りの9回は通常の質問信号を送信するようにすることができる。航空機への質問信号の送信は頻繁に繰り返されるとともに、気象情報の取得には、航空機の監視と比べて頻繁である必要がないため、このようにGICBレジスタの気象情報を取得するタイミングを制限しても気象情報の生成に十分なデータを収集することができる。
【0024】
気象情報処理部137は、図1に示すように、気象情報取得手段137a、位置取得手段137b及び出力手段137cを有している。気象情報取得手段137aは、入力した応答信号のうちロング応答に含まれる気象情報を取得して出力手段137cに出力する。また、位置取得手段137bは、入力した応答信号のうちロング応答に含まれる位置情報を取得して出力手段137cに出力する。
【0025】
出力手段137cは、気象情報取得手段137aでロング応答から取得された気象情報と、位置取得手段137bでこのロング応答から取得された位置情報とを関連づけて、接続される気象情報を必要とする装置に出力する。例えば、出力手段137cと接続される装置は、航空機の飛行を監視制御するためにこのモードS二次監視レーダ1の監視空域の気象情報を管理する装置であってもいし、広い範囲の気象情報を集めて天気予報等に利用する天気図等を作成する装置であってもよい。
【0026】
続いて、図3に示すフローチャートを用いてモードS二次監視レーダ1におけるロールコール期間における処理の流れを説明する。
【0027】
モードS二次監視レーダ1では、ロールコール期間には、判定部136は、気象情報の取得タイミングであるか否かを判定する(S1)。
【0028】
判定部136に気象情報の取得タイミングであると判定された場合(S1でYES)、質問生成部132は、GICBレジスタの気象情報を要求する質問信号を生成する(S2)。一方、判定部136に気象情報の取得タイミングでないと判定された場合(S1でNO)、質問生成部132は、通常の質問信号を生成する(S3)。
【0029】
その後、送信制御部131は、ステップS2又はS3で質問生成部136が生成した質問信号を送信する(S4)。
【0030】
応答処理部133は、ステップS4で送信制御部131が送信した質問信号に応答する応答信号を受信すると(S5)、応答信号に含まれるモードSアドレスが受信を予測していたモードSアドレスと一致するか否かを判定する(S6)。すなわち、質問信号を送信した航空機からの応答信号であるか否かを判定する。
【0031】
ここで、モードSアドレスが一致しないとき(S6でNO)、応答処理部133は、不要な信号であるため破棄するが(S7)、モードSアドレスが一致するとき(S6でYES)、応答処理部133は、送信制御部131が送信した質問応答に対する応答信号であるとして、ショート応答であるか否かを判定する(S8)。
【0032】
ショート応答であると判定した場合(S8でYES)、応答処理部133は、応答信号を解析する(S9)。その後、更新部135は、ステップS9の解析結果に基づいて航空機データ記憶部14の航空機データを更新する(S10)。また、レポート生成部134は、ステップS9の解析結果に基づいてレポートを生成するとともに出力した後(S11)、ステップS1の処理に戻る。なお、ステップS10及びS11の処理順序は逆に実行されてもよいし、同時に実行されてもよい。
【0033】
一方、ショート応答でなくロング応答であると判定した場合(S8でNO)、ステップS9〜S11と同様に、応答処理部132で、応答信号が解析され(S12)、更新部135によって航空機データが更新され(S13)、レポート生成部134によってレポートが生成及び出力される(S14)。ここでも、ステップS13及びS14の処理順序は逆であってもよいし、同時に実行されてもよい。
【0034】
また、気象情報取得手段137aによって気象情報が取得されるとともに位置取得手段137bによって位置が取得され(S15)、出力手段137cによって気象情報及び位置が出力される(S16)。なお、ステップS12〜S14の処理と、S15及びS16の処理は同時に実行されてもよい。
【0035】
上述したように、実施形態に係るモードS二次監視レーダでは、ロールコール期間でGICBレジスタの気象情報を取得することで、航空機を監視するとともに、監視空域の気象情報も取得することができる。したがって、気象情報取得の為に気象情報収集装置を単独で気球等に搭載する必要なく、容易に気象情報の収集が可能になる。
【0036】
また、気球を利用する場合には、風等の事前の条件に応じて気象情報を取得することのできる位置が定められるため、特定の場所に関する気象情報の収集を継続することは困難であった。これに対し、GICBレジスタを有するトランスポンダが搭載される航空機の航路は定まっていることが多いため、気象情報が取得できる位置はこの航路によって定められる。したがって、異なる時間に略同一の位置で測定された気象情報を収集することができるため、データの収集の観点からも好ましい。
【0037】
上記のように、本発明を実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例および運用技術が明らかとなる。また、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0038】
1…二次監視レーダ
11…アンテナ
12…送受信部
121…送受切替器
122…送信機(送信手段)
123…受信機(受信手段)
13…信号処理部
131…送信制御部
132…応答処理部
133…算出部
134…更新部
135…判定部
136…質問生成部
14…航空機データ記憶部
15…回数記憶部
2…トランスポンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機に質問信号を送信し、当該質問信号に応答して航空機から送信された応答信号を受信して航空機の飛行を監視する二次監視レーダであって、
ロールコール期間にGICBレジスタの気象情報の送信要求を含む質問信号を送信する送信手段と、
航空機から質問信号に応じて送信された応答信号を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した応答信号から、GICBレジスタの気象情報を取得する気象情報取得手段と、
前記受信信号が受信した応答信号から、航空機の位置情報を特定する位置特定手段と、
前記気象情報取得手段で取得された気象情報を、前記位置特定手段で算出された位置情報と関連づけて出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする二次監視レーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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