説明

二次胆汁酸低下剤およびその利用

【課題】二次胆汁酸に起因する各種疾病の予防・改善効果に優れる一方、安全性が高く、飲食品や医薬品に応用可能な、新規な二次胆汁酸低下剤を提供する。
【解決手段】植物由来のポリフェノールを有効成分として含有する二次胆汁酸低下剤である。植物由来のポリフェノールのなかでも、特にカフェ酸、カテキン、クルクミンおよびエラグ酸からなる群より選択された少なくとも1種を有効成分として含有することが好ましい。本二次胆汁酸低下剤は、飲食品、医薬品、動物用飼料に応用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大腸内の二次胆汁酸に起因する各種疾病の予防・改善に有用な二次胆汁酸低下剤に関するものであり、特に植物由来のポリフェノールを有効成分として含有する二次胆汁酸低下剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現代社会において、大腸炎や大腸癌などの大腸疾病が増加しつつあり、大きな問題となっている。大腸疾病の主要な要因として高脂肪、高カロリー、低食物繊維の欧米型食生活が挙げられる。大腸疾病の予防や治療には、従来から薬物治療や食物繊維などの食事療法が検討されているが、依然として有効な方法が求められている。
【0003】
大腸疾病発症の代表的機序の一つが、大腸内へ排泄される胆汁酸の増加によるものである。特に、高脂肪食は胆汁酸の排泄を増加させることにより大腸疾病を誘発すると考えられている。腸内に分泌された一次胆汁酸は、腸内細菌により二次胆汁酸であるリトコール酸やデオキシコール酸に変換され、それらの細胞毒性が疾病の発症に関与していると考えられている。大腸癌患者では、糞便中の2次胆汁酸の増加が報告されている(非特許文献1)。二次胆汁酸の細胞毒性の機序についても明らかになりつつあり、酸化ストレスやNFκB依存性の炎症性分子応答の増大の関与が報告されている(非特許文献2、3)。
【0004】
このように二次胆汁酸の大腸疾病における重要性が明確になりつつあるにも関わらず、二次胆汁酸を標的とした大腸疾病の予防・治療剤開発の試みは極めて少ない。例えば、特許文献1には、ガラクトオリゴ糖を有効成分とする二次胆汁酸低下剤が開示されている。特許文献2には、一次胆汁酸の二次胆汁酸への変換を阻害する作用を有する酵母を有効成分とする二次胆汁酸産生抑制剤が開示されている。特許文献3には、一次胆汁酸の二次胆汁酸への変換を抑制するα−結合したガラクトース含有オリゴ糖を有効成分とする二次胆汁酸の生成抑制剤が開示されている。特許文献4には、ルミノコッカス属細菌および/またはジフルクトース・ジアンヒドリド3を含有する二次胆汁酸抑制剤が開示されている。
【0005】
ポリフェノールは、複数個のフェノール性水酸基を持つ化合物の総称である。基本的には植物の二次代謝経路のうち、芳香族化合物の生合成経路である、シキミ酸経路やポリケチド経路により合成される。構造の違いにより、フェノールカルボン酸、フラボノイド、タンニンなどに分類される。ポリフェノールは、一般に抗酸化活性を持つとともに、抗変異原性、抗腫瘍作用、コレステロール低下作用、酵素活性阻害作用などを示すことから、多様な生理機能を発揮する保健成分として注目されている。
【0006】
また、ポリフェノールは、大腸癌や大腸炎などの予防効果を有することが報告されている(非特許文献4〜7)。しかしながら、大腸内容物の二次胆汁酸低下作用については、過去に報告されていない。
【特許文献1】特開平8−40913号公報
【特許文献2】特開2001−253829号公報
【特許文献3】特開2004−244365号公報
【特許文献4】特開2006−56839号公報
【非特許文献1】C.H.E.Imray,S.Radley, A. Davis, G.Barker, C.W.Hendrickse, I.A.Donovan, A.M.Lawson,P.R.Baker, J.P.Neoptolemos. Faecal uncanjugated bile acids in patients withcolorectal cancer or polyps. Gut 33:1239-1245(1992)
【非特許文献2】S.Lechner,U.Muller-Ladner, K.Schlottmann, B.Jung, M.Maclelland, J.Ruschoff, J.Welsh,J.Scholmerich, and F.Kullmann. Bile acids mimic oxidative stress inducedupregulation of thioredoxin reductase in colon cancer cell lines.Carcinogenesis 23:1281-1288(2002)
【非特許文献3】C.M.Payne,C.Weber, C.Crowley-Skillicorn, K.Dvorak, H.Bernstein, C.Bernstein, H.Holubec,B.Dvorakova and H.Garewal. Deoxycholate induces mitochondrial oxidative stressand activates NF-kB through multiple mechanisms in HCT-116 colon epithelialcells. Carcinogenesis 28:215-222(2007)
【非特許文献4】M. Huang, Y.Lou, W. Ma, H.L. Newmark, K.R. Reuhl, A.H. Conney. Inhibitory effects ofdietary curcumin on forestomach, duodenal, and colon carcinogenesis in mice. CancerResearch 54: 5841-5847 (1994).
【非特許文献5】B. Salh, K.Assi, V. Templeman, K. Parhar, D. Owen, A. Gomez-Munoz, K. Jacobson. Curcuminattenuates DNB-induced murine colitis. Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol285: G235-G243 (2003).
【非特許文献6】J.H.Weisburger, A. Rivenson, C. Aliaga, J. Reinhardt, G.J. Kelloff, C.W. Boone,V.E. Steele, D.A. Balentine, B. Pittman, E. Zang. Effect of tea extracts,polyphenols, and epigallocatechin gallate on azoxymethane-induced colon cancer.Proceedings of the Society for Experimental Biology and Medicine, 217: 104-108(1998).
【非特許文献7】M. Mochizuki,N. Hasegawa. Protective effect of (-)-epigallocatechin gallate on acuteexperimental colitis. Journal of Halth Science 51: 362-364 (2005).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、二次胆汁酸を標的とした大腸疾病の予防・治療剤開発の試みは極めて少なく、新規な二次胆汁酸低下剤が探索されているのが現状である。そこで、本発明は、二次胆汁酸に起因する各種疾病の予防・改善効果に優れる一方、安全性が高く、飲食品や医薬品に応用可能な、新規な二次胆汁酸低下剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記の目的を達成すべく鋭意努力した結果、植物由来のポリフェノールであるカフェ酸、カテキン、クルクミンおよびエラグ酸が大腸内容物の二次胆汁酸低下作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
(1)植物由来のポリフェノールを有効成分として含有することを特徴とする二次胆汁酸低下剤。
(2)ポリフェノールが、カフェ酸、カテキン、クルクミンおよびエラグ酸からなる群より選択された少なくとも1種であることを特徴とする上記(1)に記載の二次胆汁酸低下剤。
(3)上記(1)または(2)に記載の二次胆汁酸低下剤を含む飲食品。
(4)上記(1)または(2)に記載の二次胆汁酸低下剤を含む医薬品。
(5)上記(1)または(2)に記載の二次胆汁酸低下剤を含む動物用飼料。
【発明の効果】
【0009】
本発明の二次胆汁酸低下剤は、大腸の二次胆汁酸低下作用に優れている一方で、既に安全性が確認されている天然物由来の物質を有効成分として使用するため、副作用の心配がなく、日常の食生活に適宜取り入れて無理なく摂取することができる。また、本発明は、本発明の二次胆汁酸低下剤を含む飲食品、医薬品および動物用飼料をも提供し、これらは、安全性に優れるとともに、大腸内の二次胆汁酸に起因する各種疾病の予防・改善に優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、植物由来のポリフェノールを有効成分として含有する二次胆汁酸低下剤である。植物由来のポリフェノールは、二次胆汁酸低下作用を有するものであれば特に限定されないが、カフェ酸、カテキン、クルクミンおよびエラグ酸が好適である。したがって、本発明の二次胆汁酸低下剤は、カフェ酸、カテキン、クルクミンおよびエラグ酸からなる群より選択された少なくとも1種を有効成分として含有するものが好ましい。
【0011】
本発明に用いられるカフェ酸、カテキン、クルクミン、エラグ酸は、植物の葉、茎、根、果実から抽出して取得することができる。また、化学合成により工業的に製造することもできる。
【0012】
カフェ酸は、コーヒー豆等に含まれているポリフェノールの一種であり、カフェ酸とキナ酸とのエステルであるクロロゲン酸が分解することにより生じる。カフェ酸およびクロロゲン酸を含有する植物としては、例えば、コーヒー豆、キャベツ、レタス、アーチチョーク、トマト、ナス、ジャガイモ、ゴボウ、ニンジン、リンゴ、ナシ、プラム、モモ、アプリコット、チェリー、ヒマワリ、モロヘイヤ、カンショ、南天、ブルーベリー、小麦などが挙げられる。本明細書において「カフェ酸」は、カフェ酸またはその誘導体類を意味する。カフェ酸誘導体としては、例えば、クロロゲン酸、ネオクロロゲン酸、クリプトクロロゲン酸、イソクロロゲン酸、トリカフェオイルキナ酸、ロスマリン酸等が挙げられる。
【0013】
カテキンは、主としてお茶に含まれるポリフェノールの一種である。本明細書において「カテキン」は、カテキン類の総称であり、カテキン、カテキンガレート、ガロカテキンおよびガロカテキンガレート等の非エピ体カテキン類、並びに、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレートおよびエピガロカテキンガレート等のエピ体カテキン類が含まれる。
【0014】
クルクミンは、ウコンに含まれるポリフェノールの一種であり、ウコンの黄色色素である。本明細書において「クルクミン」は、クルクミン類の総称であり、クルクミンの他、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン等が挙げられる。
エラグ酸は、ベリー類(例えば、ラズベリー、ボイセンベリー、ストロベリー、ブラックベリー等)の葉や果実、ざくろの種子に高含有されるポリフェノールの一種である。本明細書において「エラグ酸」は、エラグ酸(ellagic acid)またはその誘導体を意味する。エラグ酸誘導体としては、例えば、エラグ酸の基本骨格に糖・脂質・アミノ酸・タンニン等が結合した化合物、エラグ酸の金属塩、エラグ酸のメチル化物あるいはアセチル化物、エラグ酸の配糖体・エステル等が挙げられる。エラグ酸誘導体の一例は、植物に多く含まれるエラジタンニンである。エラジタンニンを摂取すると生体内の加水分解反応によってエラグ酸を生成する。生体内における化学反応により、エラグ酸あるいはエラグ酸誘導体を生成可能な化合物も、エラグ酸に含まれる。
【0015】
本発明に用いられるポリフェノールを、植物から抽出する場合、例えば以下のように行うことができる。すなわち、原料を熱水あるいは20〜100%含水アルコール(例えばエタノール)溶液で処理することにより溶出させる。このとき、必要に応じて酸、アルカリまたは酵素を併用してもよい。次いで、減圧濃縮することによりアルコールを留去し、遠心分離および濾過を行い、清澄抽出液を得ることができる。
【0016】
また、得られた清澄抽出液は、例えば以下の方法により精製することができる。すなわち、先ず、ポリフェノール類を選択的に吸着かつ溶離できる吸着剤を充填したカラムに上記の清澄抽出液を通し、ポリフェノール画分を吸着させる。カラムに充填する吸着剤としては、例えば、スチレン−ジビニルベンゼン系の合成吸着剤、陰イオン交換樹脂、オクタデシル基化学結合型シリカゲル(ODS)等を好適に用いることができる。次に、水を通してカラム内を洗浄した後、20〜100%含水アルコール(例えばエタノール)溶液、好ましくは50%含水アルコール溶液をカラムに通すことによりポリフェノール画分を溶出、回収できる。得られたポリフェノール溶液を減圧濃縮することによりアルコールを留去し、ポリフェノール濃縮液を得ることができる。さらに、この濃縮液をそのまま、もしくはデキストリン等の粉末助剤を添加し、噴霧乾燥または凍結乾燥などの処理に付して乾燥させ、固体としてもよい。
【0017】
このようにして得られた、ポリフェノール(カフェ酸、カテキン、クルクミン、エラグ酸)は、易水溶性であり、水溶液として安定な性状を維持することができる。このため、飲食品および医薬品に通常添加されうる成分との混和性に優れている。また、カフェ酸、カテキン、クルクミン、エラグ酸は、いずれも食品中に含まれる成分であるため無毒である。例えば、エラグ酸は、FDAよりGRAS認証を受けている。したがって、これらを有効成分とする二次胆汁酸低下剤は安全性に優れており、副作用の心配がなく、日常の食生活に適宜取り入れて無理なく摂取することができる。
【0018】
本発明の二次胆汁酸低下剤は、上記のカフェ酸、カテキン、クルクミンおよびエラグ酸からなる群より選択された少なくとも1種を有効成分とする。二次胆汁酸低下効果を得るための1日あたりの有効成分摂取量は、100mg〜1000mgの量、好ましくは300〜500mgの量を1日に1回ないしは数回投与し、十分にその効果を奏し得るものである。
【0019】
本発明の二次胆汁酸低下剤は、それ単独でも使用することができるが、飲食品、医薬品、動物用飼料などの種々の組成物に添加剤として含有させることができる。得られた組成物は、二次胆汁酸を低下させる作用を有するため、二次胆汁酸低下に起因する各種疾病の予防・改善に使用することができる。
【0020】
本発明の飲食品は、上記本発明の二次胆汁酸低下剤を種々の飲食品に添加することにより製造することができる。飲食品は、溶液、懸濁液、乳濁液、粉末、固体成形物など、経口摂取可能な形態であればよく、特に限定されない。具体的には、例えば、即席麺、レトルト食品、缶詰、電子レンジ食品、即席スープ・みそ汁類、フリーズドライ食品などの即席食品類、清涼飲料、果汁飲料、野菜飲料、豆乳飲料、コーヒー飲料、茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、栄養飲料、アルコール飲料などの飲料類、パン、パスタ、麺、ケーキミックス、唐揚げ粉、パン粉などの小麦粉製品、飴、キャラメル、チューイングガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、デザート菓子などの菓子類、ソース、トマト加工調味料、風味調味料、調理ミックス、たれ類、ドレッシング類、つゆ類、カレー・シチューの素類などの調味料、加工油脂、バター、マーガリン、マヨネーズなどの油脂類、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料、アイスクリーム類、クリーム類などの乳製品、卵加工品、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品などの水産加工品、畜肉ハム・ソーセージなどの畜産加工品、農産缶詰、ジャム・マーマレード類、漬け物、煮豆、シリアルなどの農産加工品、冷凍食品、栄養食品などを挙げることができる。
【0021】
本発明の医薬品は、上記本発明の二次胆汁酸低下剤を、定法に従って、薬学的に許容される担体とともに経口製剤または非経口製剤として種々の剤形に調製することにより製造することができる。経口製剤の場合には、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、徐放剤などの固形製剤、溶液、懸濁液、乳濁液などの液状製剤の形態をとることができる。また、非経口製剤の場合には、注射剤や座剤の形態をとることができる。簡易性の点からは、経口製剤であることが好ましい。製剤化のために許容されうる添加剤としては、例えば、賦形剤、安定剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、滑沢剤、甘味料、着色料、香料、緩衝剤、酸化防止剤、pH調整剤などを挙げることができる。これらの添加剤は、当該分野で一般的に使用されているものを好適に用いることができる。
【0022】
本発明の動物用飼料は、例えば市販の動物用飼料に上、記本発明の二次胆汁酸低下剤を加混合することにより製造することができる。
【0023】
飲食品、医薬品、動物用飼料などの組成物中における二次胆汁酸低下剤の含有量は、組成物の形態や、予防・改善の対象となる疾病の状態などによって異なるが、少なくとも二次胆汁酸低下効果を得るために必要な1日あたりの有効成分量が摂取できるように、1日あたりの組成物の摂取量を考慮し、組成物中の含有量を適宜設定すればよい。
【実施例】
【0024】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
〔実施例1:二次胆汁酸抑制作用〕
(1)実験方法
Sprague−Dawly系雄性ラットを株式会社広島実験動物研究所より3週齢で購入し、約1週間の予備飼育を行った。予備飼育期間中は、各個体をステンレス製の個別ケージに収容し、温度23℃の飼育室で飼育した。飼料はオリエンタル酵母社製の固形飼料(MF)を、水は脱イオン水を与えた。飼料および水は自由に摂取させた。予備飼育終了後、体重層別無作為化法により各群の平均体重がほぼ均一となるように群分けした。対照群、カフェ酸摂取群、カテキン摂取群、クルクミン摂取群およびエラグ酸摂取群の5群を設け、1群の匹数は、対照群のみ8匹、他の群は7匹とした。
【0026】
各群のラットに摂取させた飼料の組成を表1に示した。
【0027】
【表1】

【0028】
試験期間は21日間とした。飼育条件は予備飼育期間と同様とし、飼料のみを表1に示した飼料に変更した。飼料に添加したカフェ酸、カテキン(D−(+)−カテキン)およびクルクミンはナカライテスク製、エラグ酸は和光純薬製のものを使用した。飼料は毎日一定量を与え、翌日に残量を測定して摂取量を求めた。また、毎日体重を測定した。試験終了の3日前から、各個体ごとに全ての糞を採取した。
【0029】
試験終了日に、動物をジエチルエーテル麻酔下で屠殺し、血液および肝臓を採取した。各動物は、屠殺の5時間前から絶食させた。
参考文献(H.
Tomotake, I. Shimaoka, J. Kayashita, F. Yokoyama, M. Nakajoh, N. Kato. Stronger
suppression of plasma cholesterol and enhancement of the fecal xecretion of
sterolids by a buckwheat protein product than by a soy protein isolate in rats
fed on a cholesterol-free diet. Biosci Biotech Biochem. 65: 1412-1414 (2001).)に記載の方法に従い、糞からガスクロマトグラフィー用のサンプルを調製し、ガスクロマトグラフィーを用いて胆汁酸成分を分析した。
【0030】
血液は、氷冷後凝結させ、遠心分離により血清を採取した。肝臓は、Folchの方法(J. Folch, M. Lees, G.H. Sloane-Stanley. A simple method for the
isolation and purification of total lipids from animal tissues. J. Biol. Chem.
226: 497-509 (1957).)に従って総脂質を抽出し、その中のコレステールを測定した。血清については、総胆汁酸、総コレステロールを測定した。肝臓については、総コレステロールを測定した。これらの測定には、コレステロールE−テストワコー(和光純薬)および総胆汁酸−テストワコー(和光純薬)を用いた。
【0031】
得られた測定値は平均値±標準誤差(SE)で表した。統計的有意性は、ダネットの多重比較検定により評価し、P<0.05の場合有意差有りとした。
【0032】
(2)結果
最終体重および3日間の糞重量については群間で差はなかった。糞中の胆汁酸成分の測定結果を表2に示した。
【0033】
【表2】

【0034】
表2から明らかなように、二次胆汁酸であるトリコール酸量およびデオキシコール酸量がいずれのポリフェノール摂取群でも減少していた。具体的には、リトコール酸量については、カフェ酸摂取群、カテキン摂取群およびエラグ酸摂取群で有意な減少が認められ、デオキシコール酸量については、クルクミン摂取群で有意な減少が認められた。リトコール酸とデオキシコール酸の合計量については、すべてのポリフェノール摂取群(カフェ酸摂取群、カテキン摂取群、クルクミン摂取群およびエラグ酸摂取群)で有意な減少が認められた。
【0035】
一方、表3に示したように、肝臓および血清のコレステロール値は変動が見られず、血清総胆汁酸濃度についても、各群間に特に変化は見られなかった。
【0036】
【表3】

【0037】
〔実施例2:果汁飲料〕
濃縮果汁 6.0g
グラニュー糖 4.0g
異性化液糖 5.0g
クエン酸 0.1g
香料 0.1g
水 84.7g
本発明の二次胆汁酸低下剤 0.1g
合計 100.0g
上記、各重量部を混合し、常法に従って果汁飲料を製造した。
【0038】
〔実施例3:錠剤、カプセル剤〕
ラフィノース 10.0g
乳糖 50.0g
ステアリン酸マグネシウム 15.0g
本発明の二次胆汁酸低下剤 25.0g
合計 100.0g
上記、各重量部を混合し、常法に従って錠剤、カプセル剤を製造した。
【0039】
〔実施例4:中華風即席スープ〕
椎茸 3.0g
エノキ茸 2.0g
しめじ 2.0g
醤油 1.0g
デキストリン 1.0g
食塩 0.2g
上白糖 0.3g
酵母エキス 0.2g
チキンエキス 0.5g
昆布エキス 0.2g
ゴマ油 0.2g
黒コショウ 0.02g
水 89.13g
本発明の二次胆汁酸低下剤 0.25g
合計 100.0g
上記、各重量部を混合し、常法に従って中華風即席スープを製造した。
【0040】
〔実施例5:金平牛蒡〕
ゴボウ 50.0g
ニンジン 12.0g
白ゴマ 0.3g
サラダ油 3.0g
ゴマ油 0.3g
グラニュー糖 12.0g
食塩 0.6g
濃口醤油 10.0g
味醂 6.0g
グリシン 0.5g
水 4.8g
本発明の二次胆汁酸低下剤 0.5g
合計 100.0g
上記、各重量部を混合し、常法に従って金平牛蒡を製造した。
【0041】
〔実施例6:飼料〕
飼料
トウモロコシ 68.45g
大豆油かす 15.0g
魚粉 10.0g
米ぬか 5.0g
食塩 1.0g
炭酸カルシウム 0.5g
本発明の二次胆汁酸低下剤 0.05g
合計 100.0g
上記、各重量部を混合し、常法に従って飼料を製造した。
【0042】
なお本発明は上述した各実施形態および実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の二次胆汁酸抑制剤は、大腸内容物中の2次胆汁酸を減少させるものであり、大腸疾病の予防・改善に極めて有用である。したがって、医薬品産業、食品産業、飼料産業等に寄与することが期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物由来のポリフェノールを有効成分として含有することを特徴とする二次胆汁酸低下剤。
【請求項2】
前記ポリフェノールが、カフェ酸、カテキン、クルクミンおよびエラグ酸からなる群より選択された少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の二次胆汁酸低下剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の二次胆汁酸低下剤を含む飲食品。
【請求項4】
請求項1または2に記載の二次胆汁酸低下剤を含む医薬品。
【請求項5】
請求項1または2に記載の二次胆汁酸低下剤を含む動物用飼料。

【公開番号】特開2009−227609(P2009−227609A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74915(P2008−74915)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(508088177)学校法人高松学園飯田女子短期大学 (1)
【出願人】(591096303)株式会社ブルボン (13)
【出願人】(000125912)株式会社あじかん (12)
【Fターム(参考)】