二次電池の充電方法及び充電装置
【課題】定電流充電による急速充電・短時間充電の対象範囲の拡大及び充電速度の向上と重電途中での充電特性の急激な変化の防止を可能にする二次電池の充電方法及びその充電装置を提供する。
【解決手段】二次電池の充電方法は、パルス状電圧(特に、正の電位の電圧波形のパルス状電圧)が定電流充電の充電電圧に周期的に重畳されて二次電池に印加されていること、を特徴とする。
二次電池の充電装置は、定電流充電の回路手段を有する充電回路が、該充電回路のコイルへの励磁エネルギー蓄積とその放出によるパルス状電圧発生をコイルへの直流電流の供給で制御する制御手段を備えて、
該制御手段による該直流電流の供給制御により発生するパルス状電圧が、定電流充電の充電電圧に周期的に重畳させて二次電池に印加する構成にされていること、を特徴とする。
【解決手段】二次電池の充電方法は、パルス状電圧(特に、正の電位の電圧波形のパルス状電圧)が定電流充電の充電電圧に周期的に重畳されて二次電池に印加されていること、を特徴とする。
二次電池の充電装置は、定電流充電の回路手段を有する充電回路が、該充電回路のコイルへの励磁エネルギー蓄積とその放出によるパルス状電圧発生をコイルへの直流電流の供給で制御する制御手段を備えて、
該制御手段による該直流電流の供給制御により発生するパルス状電圧が、定電流充電の充電電圧に周期的に重畳させて二次電池に印加する構成にされていること、を特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定電流充電による規則的な電荷の電池内化学系への流れ(供給)が、パルス状電圧の周期的な重畳による充電電圧の影響を受けて、それによって、通常の定電流充電とは著しく相違する充電特性(例えば、急速充電・短時間充電での充電途中の突発的な急上昇の防止等)が発現して、円滑な充電の進行と充電の高速化(特に、急速充電・短時間充電の高速化)等が可能になる二次電池の充電方法及びそれの充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、少なくとも、正極・負極の電極及びイオン伝導性電解質を構成要素とし、電池の電気化学反応を介して化学的エネルギーと電気的エネルギーとの相互変換によって再充放電が可能な機構にされて、各種の産業用装置機器類(例えば、電子機器・コンピュター装置・精密機器・運輸器具等)の電源に供される。
なお、「二次電池」は、広義には、単一の二次電池及び組み電池(複数の二次電池の集合体)を含む広義の語義で使用され、狭義には、単一の二次電池を意味する語義で使用される。本特許請求の範囲及び本明細書においては、「二次電池」を広義の語義で使用し、狭義の語義の単一の二次電池若しくは組み電池の語義で使用する場合は、その旨に言及する。また、以下において、「二次電池」は、「電池」と略称し、特に必要な場合には、「二次電池」を使用する。
電池の「正極」及び「負極」は、本明細書及び本特許請求の範囲において、「正極」を放電時に電池から外部回路に電流が流出する側の電極の語義で使用し、「負極」を外部回路から電流が電池に流入する側の電極の語義で使用する。
「充電効率」は、本明細書において、アンペア/時間の効率の語義で使用する。
「充電特性」は、本明細書において、充電に際して電池内反応系の働きによって電池に現れる物理化学的・電気的な特性で、観測可能若しくは測定可能な特性(例えば、電池電圧、電池温度、電池電圧)の語義で使用する。
電池は、搭載対象となる装置機器類の多様化・高性能化・小型化(すなわち、電池搭載空間の減少)等によって、電池自体の高容量化・小型化・高性能化と、充電での時間短縮・発熱低下・安全正確な制御・装置の小型化等が希求されている。
実用電池は、鉛電池、ニッケル・カドミニウム電池、ニッケル・水素電池、リチウム電池の使用が大部分を占めて、それ以外にも、ニッケル・金属水素化物電池、二酸化マンガン・リチウム電池、ニッケル・亜鉛電池、銀・亜鉛電池等が実用に供されている。
【0003】
電池の充電は、外部電源からの電気供給により活物質を複雑な化学反応系により放電可能状態に戻すプロセスであって、その内容は、活物質(作用物質とも称される)による電極表面及びその近傍での複雑な電気化学反応、反応関与物質の電極表面への吸着・脱着、電界質でのイオン移動、反応系での発熱及び吸熱、及びガス発生・吸収等の多様な物理化学的現象が複雑に影響し合っている。
電池の充電は、電池に対する外部電源からの電流供給と電流の供給終了(一般的には、充電終了と称される)とからなる。充電終了は、理論的には、完全充電(充電容量が100%充電された状態)の状態を意味する。なお、慣用語の「満充電」は、「完全充電」の同義語として使用されている。
ただし、実用充電では、充電容量が100%未満の状態で、充電終了とする場合も多々存在する。
電池への充電は、直流若しくは間欠電流(交流とそれ以外の間欠電流)を供給する方法が提案されて、実用充電では、制御・充電量確認等が容易となる直流による充電が汎用的である。急速充電(1h以内の充電)では、直流により充電が一般的である。交流及び間欠電流による充電は、通電をオン/オフで行って、通電のオフ時間により電池に生ずる効果を得るのを主目的とする充電であって、デントライト発生を防止する充電等の限られた目的の充電に限定される(例えば、特許文献1〜4を参照)。
間欠電流をオン/オフのオンでピーク電圧値を高くしてその間の通電量を大きくし、その後のオフの時間を長くして電池の破損を防止する充電方法では、電池電圧の異常な上昇及び電池劣化が生じている(特許文献6を参照)。
【0004】
直流による充電は、一定電流値(A、mA)の直流電流を流す方法(「定電流充電」が使用されている)と一定電圧値(V)の直流電流を流す方法(「定電圧充電」が慣用的に使用されている)が基本的な充電方法で、特に、定電流充電が汎用性を有する充電方法である。なお、「定電流充電」は、成書(充電の技術書)及び辞書において、同一の語義で使用される技術用語である。
定電流充電の汎用性は、異なる形式の電池の充電に対する対応が容易で、制御及び充電量確認が容易で、充電装置の簡単化・小型化が容易になる等の工業上の便宜による。
【0005】
図12は定電流充電の充電特性を模式的に示す説明図である(例えば、非特許文献1のp413等を参照)。
定電流充電は、直流電流を一定電流値に維持して電池に供給する。一定電流値の維持は、供給する直流電流の電圧を充電進行に応じて上昇する電池電圧との電圧差を維持するように上昇させる制御を行う。そのために、一定電流維持のための充電電圧が、電池の許容上限電圧を超えると、その時点で、定電流充電を終了することになる。
なお、定電流充電は、充電時間による分類では、急速充電(1h以内の充電)、短時間充電(3〜8h以内の充電)及び普通充電(8〜18hの充電)に区別され(例えば、非特許文献3のp188の表5.9を参照)、実用充電では、急速充電及び短時間充電(特に、急速充電)の要請が高い。
【0006】
定電流充電は、汎用的ではあるが、電池の形式の相違によって充電特性が著しく相違し、設定した一定電流値により充電終了まで充電できない場合が生じる。その場合には、充電途中での設定電流値の変更による定電流充電の維持(例えば、2段階電流充電)及び充電途中での定電流充電から定電圧充電への変更(例えば、定電流定電圧充電)等が行われている。
【0007】
図13は定電圧充電の充電特性を模式的に示す説明図である(例えば、非特許文献1のp414等を参照)。定電圧充電は、制御により一定値の充電電圧(V)に設定・維持するので、充電により上昇する電池電圧と設定充電電圧値との電圧差が減少して充電電流値が減衰する。定電圧充電は、充電電圧を制御により一定値に維持するので、事故防止等のために上限電圧維持が厳格に規制され
る電池(例えば、鉛電池、亜鉛・二酸化マンガン電池、リチウム電池等)の充電には、上限電圧維持が容易になるので適している。
【0008】
定電圧充電は、充電初期には電池電圧が著しく低くなって大電流が流れるので、充電初期の大電流を制限する制限回路が必須になって、それが、充電電圧の制御を妨害することになるので、充電電圧の適正な制御が困難になる。
しかも、定電圧充電では、充電終了時の電池電圧を予め正確に予測して充電電圧を設定する必要がある。しかし、充電中の電池電圧は、充電時の電池周辺の温度変化及び電池の発熱により不規則的に大きく変化するので充電終了時の電池電圧を予め正確に予測するのが著しく難しく、定電圧充電を正確に行うのが困難である(例えば、非特許文献5のP150等を参照)。
【0009】
図14は、密閉型鉛電池を3種の設定電圧(2.70V、2.55V、2.35V)により定電圧充電で急速充電した場合の充電特性を模式的に示す説明図である(例えば、非特許文献1のp441等を参照)。
図14において、符号A、B、Cのいずれの充電においても、充電初期の2〜3分で大電流が流れて、充電前半の30分以内でほぼ充電量100%に達している。
従って、定電圧充電の急速充電では、充電初期の2〜3分に流れる大電流により充電量がほぼ100%に達するので、充電初期の大電流を可能にする高充電電圧の設定が許容される電池に限られる。一方、定電流充電は、電池形式の相違によって、充電特性が著しく相違する。
【0010】
図15は、異なる形式の電池を定電流充電(20℃)した場合の電池電圧vs充電容量%を関係を示す説明図であって、同一の充電率(0.1×C)及び近似の充電率の定電流充電(20℃)であっても、電池の形式が相違すると、充電時の電池内反応系の内容が著しく相違し、それによって、電池電圧vs充電容量%が著しく相違するデータが示されている(非特許文献1のP355を参照)。同様の図は非特許文献2、3にも示されている。
【0011】
図15の充電特性は、普通充電(8〜18hの充電)での一般的な充電率(多くは、0.1×C)による定電流充電(20℃)のデータである。なお、充電率の「C」は、容量を意味している。なお、「充電率」は、「時間率」とも称されて、共に成書及び辞書にも使用される通用語である。本特許請求の範囲及び本明細書は、「充電率」を使用する。
図15において、横軸の「容量」は、電池が含有する電気量を意味し、クーロン(C)若しくはアンペア時(Ah、mAh)の単位で表示される。
【0012】
なお、充電時の実際の容量は、理論的な容量に比較して相当に減少する。そのために、実用電池では、容量を定格容量若しくは公称容量で表示する場合が多い(例えば、非特許文献3等を参照)。
図15の横軸の「50容量%」は、完全充電時(すなわち、100容量%)を基としている、「50容量%」は、完全充電時の容量の50%が充電された状態を示している。
【0013】
普通充電(8〜18hの充電)には、約0.1〜0.3Cの充電率が一般的に採用されて、急速充電(1h以内の充電)は、普通充電の10倍(例えば、1〜3C)の充電率が一般的に採用され、短時間充電(3〜8hの充電)では、0.2〜0.4Cが採用されている(例えば、非特許文献3のp188を参照)。
図15の化学記号(例えば、Ni―Cd)は、電池の形式を化学記号で示していて、例えば、「Ni―Cd」は密閉型ニッケル・カドミニウム電池を示している。なお、密閉型は、電極からの発生ガスを反対の電極で吸収する作動方式の電池である。
図15の密閉型ニッケル・カドミニウム電池は、0.1Cの充電率の定電流充電において電池電圧が最も穏やかに変化し、電池温度も充電終期近辺で上昇する。 密閉型ニッケル・カドミニウム電池及び密閉型ニッケル・水素電池は、充電終期の正極からの発生ガスを陰極で吸収する作動方式(以下において、陰極吸収方式と略称することがある)の電池である。
陰極吸収方式の電池は、短時間充電若しくは急速充電において普通充電に比べて著しく相違する充電特性を示すことが知られている。
【0014】
図16は、密閉型ニッケル・カドミニウム電池を異なる充電率により定電流充電した場合の充電特性を示す説明図である(非特許文献1のp484を参照)。
密閉型ニッケル・カドミニウム電池は、0.1(C/10)Cの普通充電の充電率による充電では、電池温度が充電終期付近から急激に上昇し、電池電圧が充電全体で緩やかに上昇する。
他方、0.3(C/3)Cの充電率(短時間充電)では、電池温度及び電池内圧力が、完全充電のほぼ半分の充電量付近で急激に過充電領域にまで上昇する。陰極吸収方式の電池の0.1(C/10)Cの充電率(普通充電)による充電での充電終期で発生する電池温度の急激な上昇は、それに対応する電池の発熱量から、正極から発生するガスの陰極による吸収反応(発熱反応になる)のエンタルピー変化によると考えるのが一般的である。
ただし、0.3Cの短時間充電の充電率による充電において、完全充電のおおよそ半分の充電量での電池温度の急激な上昇を生じさせる電池内の化学反応系の挙動は、明らかにされていない。
【0015】
そのために、急速充電用の密閉型ニッケル・カドミニウム電池では、充電特性の急激な上昇による電池の破損・破壊を防止するために、電池構造の改善と電池内圧力・電池温度・電池電圧等の変化検出の精度を向上させてCPUの制御部を複雑な回路構成にして充電終了を高精度に判断する機構が必要になる。
電池構造の改善は、例えば、ガスを吸収する陰極面積の増大等による陰極でのガス吸収量の増大による電池内圧力の上昇抑制及び内部構造を過充電に耐える構造にする等である。
密閉型ニッケル・カドミニウム電池は、一般的は、30℃を超えると電池性能・電池寿命が低下し、過度な過充電により電池性能が低下する。また、電池温度が高くなり過ぎると充電電流値が増大して熱逸状態になって電池が損傷する。
図17は、密閉型ニッケル・カドミニウム電池の充放電での電池周囲温度と電池寿命との関係を示す説明図であって(非特許文献2のP218を参照)、密閉型ニッケル・カドミニウム電池が30℃近辺の温度に曝されても電池寿命が減少し、曝される温度が高くなると、電池寿命減少が著しくなることを示している。 しかし、充放電(特に、充電)での電池周囲温度の上昇を防止する有効な案は、提案されていない。
【0016】
図15の密閉型ニッケル・水素電池は、密閉型ニッケル・カドミニウム電池と同様の作動原理の電池で、定電流充電による急速充電が可能である。しかし、ニッケル・水素電池においても、急速充電によって電池電圧・電池温度・電池内圧力の著しい変化が生じる。それに対する回避手段は、陰極面積の増大等による陰極でのガス吸収面積の増大、電池構造の耐温度性の向上及び充電終了の精度向上等である。
図15に示す形式の電池の多くは、電池電圧・電池温度・電池内圧力が急激に上昇して許容上限値を超えるので、急速充電及び短時間充電による実用充電が実質的に不可能とされる電池の形式が多種存在する。
【0017】
【特許文献1】特開平06−36803号公報
【特許文献2】特許第4039771号公報
【特許文献3】特許第4016200号公報
【特許文献4】特許第3700288号公報
【特許文献5】特許第3438340号公報
【特許文献6】特許第4079590号公報
【0018】
【非特許文献1】ダブィッド・リンデン⋯編・高村勉⋯監修訳:〔最新二次電池ハンドブック〕朝倉書店 1996年12月20日 初版第版1刷発行
【非特許文献2】丸善株式会社編:〔電池便覧第3版〕丸善株式会社 平成12年2月20日 発行
【非特許文献3】日本二次電池株式会社:編〔最新実用二次電池―第2版―その選び方と使い方〕日刊工業新聞社 2001年5月31日 第2版2刷発行
【非特許文献4】トランジスタ技術編集部:編〔二次電池応用ハンドブック〕 CQ出版株式会社 2005年4月1日 第2版発行
【非特許文献5】西村 昭義:著〔改訂版 電池の本〕 CQ出版株式会社 1996年7月15日 改訂1版発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
定電流充電(特に、急速充電・短時間充電)には、下記(A)〜(G)等の様々な問題点が存在する。
(A)定電流充電では、普通充電(8〜18hの充電)においても充電特性が充電途中で急激に変化する形式の電池が多く存在し(図17を参照)、そのために、急速充電・短時間充電を工業的に行うことができない形式の電池が多く存在する。
(B)定電流充電による急速充電及び短時間充電では、電池温度が完全充電量のおおよそ半分量の段階で急激に上昇し、電池温度が繰り返し充電の度に30℃近辺の温度領域を超えて電池寿命が減少する(図17を参照)。
(C)定電流充電による急速充電及び短時間充電では、充電途中での電池温度・電池内圧力等の急激な上昇に耐える構造にするために、電池(特に、陰極吸収方式等の電池)及び電極の強度を大きくする等の改造を必要とする。
(D)定電流充電による急速充電及び短時間充電では、電池電圧・電池温度・電池内圧力の急激な上昇による暴走を回避するために充電終了に結び付く充電特性の僅かな変化を正確に捕捉して充電終了することが不可欠になる。特に、陰極吸収方式等の電池では、急激な暴走に対する耐性が低いので、充電終了時点の判断の精密性が要求される。
そのために、急速充電及び短時間充電を行う充電装置は、充電終了を精密に観測・予測・判断する複雑で特別な制御回路が必須になって、充電装置の小型化が困難になって、充電装置の価格が上昇する。
(E)電池を搭載する装置機器類が、用途の多様化・ICの急激な進歩等により構造の複雑化・小型化が急激に進行し、電池搭載空間が著しく減少傾向にあって、電池温度の少しの上昇で蓄熱効果によって電池及びその周囲温度が急激な上昇する。
(F)電池の形式によって、普通充電(8〜18hの充電)であっても、充電特性が著しく相違するので(図17を参照)、充電終了の時点を精密に予測・判断するのが簡単な機構の手段により実現するのが困難になるので、急速充電及び短時間充電の実施が困難な形式の電池が多々存在する。
(G)従来にあっては、定電流充電(特に、急速充電及び短時間充電)での充電途中で発生する電池電圧・電池温度・電池内圧力の急激な上昇を回避する手段が提案されていない。
かかる状況において、定電流充電による充電での電荷供給時の変化と電池内化学系の反応と充電特性との相関が詳細に実験主体に検討されて、充電での電荷供給の変化によっては、定電流充電の問題点を解決できることが本発明で見出された。
【0020】
次に、請求項1〜6の充電方法及び請求項7及び8の充電装置の発明の目的について記述する。ただし、請求項2〜6の充電方法は、請求項1の充電方法の技術思想に包含される態様としての技術思想であるので、請求項1の充電方法と同等の目的を有して、かつ、請求項2〜6の個々の目的を併有することになる。
請求項1に記載の本発明は、代表的には、下記(1)〜(9)を目的とする。
(1)パルス状電圧を充電電圧に周期的に重畳して、通常の定電流充電のとは著しく相違する充電特性(例えば、急速充電・短時間充電での充電途中の突発的な急上昇が生じない充電特性等)になる充電方法を提供すること、を目的とする。
(2)パルス状電圧を定電流充電の充電電圧に周期的に重畳して、定電流充電の利点を維持して、かつ、定電流充電に生ずる欠点(特に、不可避的に生ずる欠点)が防止・回避できる充電方法を提供すること、を目的とする。
(3)定電流充電を利用する急速充電若しくは短時間充電において、電池温度、電池電圧若しくは電池内圧力の急激な変化を抑制する充電方法を提供すること、をも目的とする。
(4)定電流充電を利用する(すなわち、定電流充電の電荷供給方式を維持する)急速充電若しくは短時間充電において、充電時間の短縮を可能にする充電方法を提供すること、を目的とする。
(5)定電流充電を利用する急速充電若しくは短時間充電において、従来の定電流充電では不可避的であった充電途中での電池温度の急上昇を防止・回避する充電方法を提供すること、をも目的とする。
(6)定電流充電を利用する急速充電若しくは短時間充電において、従来の定電流充電では不可避的であった電池電圧の異常な上昇及び電池劣化を防止・回避する充電方法を提供すること、をも目的とする。
(7)定電流充電を利用する急速充電若しくは短時間充電において、従来の定電流充電では不可避的であった電池・電極の改造及び充電終了の正確な判断のための複雑な制御回路の設置を不要化すること、をも目的とする。
(8)急速充電及び短時間充電が可能な電池の形式の範囲を拡大すること、をも目的とする。
(9)急速充電及び短時間充電が可能な電池の小型化を容易にし、かつ、電池価格の上昇を抑制すること、をも目的とする。
【0021】
請求項2の本発明は、パルス状電圧がコイルに蓄積された励磁エネルギー放出の発生することで得られる効果の享受をも目的とする。
請求項3の本発明は、パルス状電圧を発生するコイルが直列共振回路を構成することで得られる効果の享受をも目的とする。
請求項4の本発明は、パルス状電圧を発生するコイルを含む直列共振回路のコンデンサが二次電池の電極であることで得られる効果の享受をも目的とする。
請求項5の本発明は、合成されたパルス状電圧を充電回路に発生させることで得られる効果の享受をも目的とする。
請求項6の本発明は、パルス状電圧が周期的に重畳される定電流充電の充電電圧の定電流を充電回路に発生させることで得られる効果の享受をも目的とする。
【0022】
請求項7の本発明は、請求項1〜3の本発明の充電方法の実施を容易にする充電装置を提供することを目的とする。
請求項8の本発明は、請求項4の本発明の充電方法の実施を容易にする充電装置を提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
請求項1の充電方法は、パルス状電圧が、定電流充電の充電電圧に周期的に重畳されて二次電池に印加されていること、を特徴とする。
請求項2の充電方法は、請求項1の充電方法のパルス状電圧が、コイルに蓄積された励磁エネルギーの放出により発生すること、を特徴とする
請求項3の充電方法は、請求項1の充電方法のパルス状電圧が、直列共振回路のコイルに蓄積される励磁エネルギーの放出により発生すること、を特徴とする。
請求項4の充電方法は、請求項3の充電方法のパルス状電圧が、充電対象の二次電池の電極をコンデンサとする直列共振回路のコイルに蓄積される励磁エネルギーの放出により発生すること、を特徴とする。
請求項5に記載の本発明は、請求項1の充電方法のパルス状電圧が、電圧波形のアナログ情報をデジタル情報化して、デジタル情報によって充電回路で発生すること、を特徴とする。
請求項6に記載の充電方法は、充電回路にその充電電流の検出手段を設けて、該検出手段で検出される充電電流の情報と予め内蔵するパルス状電圧の情報とから波形発生器によりパルス状電圧が充電電圧に周期的に重畳された定電流を生成して二次電池に供給すること、を特徴とする。
【0024】
請求項7の充電装置は、定電流充電の回路手段を有する充電回路が、充電回路のコイルへの励磁エネルギー蓄積とその放出によるパルス状電圧発生をコイルへの直流電流の供給を制御する制御手段を備えて、
制御手段による直流電流の供給制御により発生するパルス状電圧が、定電流充電の充電電圧に周期的に重畳させて二次電池に印加する構成にされていること、を特徴とする。
請求項8の充電装置は、請求項7の充電装置のパルス状電圧を発生するコイルが、直列共振回路のコイルになること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
次に、請求項1〜6による充電方法と請求項7及び8による充電装置の効果について記述する。ただし、請求項2〜6の充電方法は、請求項1の充電方法の技術思想に包含される態様としての技術思想であるので、請求項1の充電方法と同
等の効果を有して、かつ、個々の特有の効果を有する。
(A)請求項1に記載の充電方法によれば、代表的には、下記(1)〜(9)の効果が得られる。
(1)定電流充電を利用する充電でありながら、定電流充電とは著しく相違する充電特性(例えば、急速充電・短時間充電での充電途中の突発的な急上昇の防止・消滅等)が表れる。
(2)急速充電及び短時間充電において、通常の定電流充電の場合よりも充電時間が短縮される。
(3)急速充電及び短時間充電において、従来の定電流充電では不可避であった充電途中での電池温度の急上昇の発生が防止・回避される。
(4)急速充電及び短時間充電において、充電途中での電池電圧の異常な上昇及び電池劣化が防止・回避される。
(5)急速充電及び短時間充電において、従来では必須となる電池・電極の改造及び充電終了の正確な判断のための複雑な制御回路の設置が不要になる。
(6)通常の定電流充電のための有効な公知技術(例えば、充電終了技術)が使用可能になる。
(7)従来では、急速充電及び短時間充電が困難とされた形式の電池にも急速充電及び短時間充電の採用の機会が広がる。
(8)パルス状電圧の設定変更による発明の効果の向上が可能になる。
(9)搭載空間減少化の傾向に合させて電池及び充電装置を小型化することができる。
【0026】
(B)請求項2の充電方法によれば、パルス状電圧の発生がコイルの励磁エネルギー放出によるので、請求項1と同等の効果を有して、かつ、例えば、下記(i)〜(iv)等の効果が得られる。
(i)コイルの励磁エネルギー蓄積の制御によりパルス状電圧発生が制御できるので、直流電流の供給時間の制御によってパルス状電圧を精密に制御可能になる。
(ii)コイルの励磁エネルギー蓄積が、直流電流の供給時間で決まり、かつ、その供給時間が1/数百(秒)の短時間で完了するので、励磁エネルギー蓄積の高速かつ容易になる。
(iii)充電回路のシステムが著しく簡単化できる。
(iv)励磁エネルギー放出によるパルス状電圧は、充電時の電池内反応系に与える影響が大きいことが本発明で見いだされている。
(C)請求項3の充電方法によれば、パルス状電圧の発生に直列共振回路のコイルを使用するので、請求項1と同等の効果を有して、かつ、請求項2の充電方法による特有の効果に加えて、例えば、直列共振回路で共振電圧を発生させて、励磁エネルギー放出に発生する急激に立ち上がる電圧と共振電圧とが連続するパルス状電圧にすることができる。
また、共振電圧を含むパルス状電圧が、本発明の充電方法の効果を享受するのに有効であることが、本発明で見いだされている。
(D)請求項4の充電方法によれば、直列共振回路のコンデンサとして充電対象の二次電池の電極が使用されるので、請求項1と同等の効果を有して、かつ、請求項2及び3の特有の効果に加えて、例えば、充電の進行に応じて変化する二次電池との共振電圧を含むパルス状電圧にしてそれを充電電圧に重畳して、パルス状電圧の効果をより向上させる。
(E)請求項5の充電方法によれば、デジタル情報によって充電回路で発生させたパルス状電圧であっても、正確に元のパルス状電圧の波形を再現できるので、高確率で、請求項1と同等の効果を得ることが可能になる。
(F)請求項6の充電方法によれば、検出情報とデジタル情報化技術によってパルス状電圧を重畳した充電電流それ自体が再現されるので、ある程度の確率で、請求項1と同等の効果を得ることが可能になる。
【0027】
(G)請求項7の充電装置によれば、請求項1〜3の充電方法の容易かつ正確な実施が可能になる。
(H)請求項8の充電装置によれば、請求項4の充電方法の容易かつ正確な実施が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
請求項1〜6の充電方法及び請求項7〜8の充電装置の実施の最良形態を以下に具体的に説明する。
なお、請求項2〜6の充電方法は、請求項1の充電方法の技術思想に包含される態様としての技術思想であるので、請求項1と共通する事項は、請求項1の説明で言及する。
<請求項1の充電方法>:
【0029】
請求項1の充電方法は、パルス状電圧が定電流充電の充電電圧に周期的に重畳されて二次電池に印加されていることを特徴とし、パルス状電圧の充電電圧への重畳により定電流充電の内容を好適な方向に制御可能にする。
【0030】
<パルス状電圧>:
定電流充電の充電電圧にパルス状電圧が周期的に重畳されている状態にして電荷が電池に供給されて、請求項1〜7の充電方法について特異的な発明の効果が享受される。パルス状電圧は、その電圧波形に制約がないが、電圧波形が正の電位領域で連続的に動く軌跡であることによって発明の効果享受に有効である。パルス状電圧が正の電位領域で連続的に動くとは、第一に、電圧が常時に正の電位領域に存在し、第二に、電圧が変化し、第三に、電圧変化が連続的であることである。
また、「パルス状電圧」の用語は、パルス状電圧の発生から終了までの全体の意味で使用している。
図1〜図6は、請求項1〜6のパルス状電圧の電圧波形の好適な実施形態の例示である。
図1は、コイルの励磁エネルギー放出により発生するパルス状電圧の電圧波形の説明図で、請求項2の充電方法により発生する。図1のパルス状電圧は、定電流充電の充電電圧(横方向の矢印で示す符号Vdで示すレベル)から少し立ち下がってから急激に立ち上がってピーク電圧Vtに達してから充電電圧のレベルに戻っている。図1の下方のOVの符号を付した横線はゼロボルトのレベルを示している。なお、電圧波形が、最初に電圧Vdのレベルから少し立ち下がってから立ち上がるのは、パルス状電圧の発生方法に起因する。
図2のパルス状電圧は、励磁エネルギー放出で高く立ち上がる高電圧と共振電圧とが連続するパルス状電圧の電圧波形の説明図で、請求項3及び4の充電方法により発生することが可能である。
図2のパルス状電圧は、高電圧の電圧波形が最初に発生し、その高電圧との共振で共振電圧が発生して、高電圧と共振電圧とが連続し、共振電圧が減衰的に小さくなる電圧波形になっている。図2のパルス状電圧は、共振条件に該当して、比較的に大きな共振電圧が発生する場合である。
図3のパルス状電圧は、励磁エネルギー放出で立ち上がる高電圧と弱い共振電圧とが連続する電圧波形の説明図である。図3のパルス状電圧は、コイルと回路の寄生容量との間で発生する弱い共振電圧が発生する場合である。
図4のパルス状電圧は、励磁エネルギー放出で立ち上がる高電圧と弱い共振電圧とが連続する電圧波形の説明図である。図4は、弱い共振電圧が発生している場合である。
図5のパルス状電圧は、最初に立ち上がる電圧が弱く、連続する共振電圧も弱い場合であって、このような場合であっても、請求項1〜6の充電方法の発明の効果の享受に有効である。
図6のパルス状電圧は、連続電圧波形からなる場合で、請求項5の充電方法では容易に発生可能である。
<パルス状電圧のデューティ比>:
【0031】
パルス状電圧のデューティ比が、パルス状電圧の発生から終了(消滅)までの時間(図9のTb)と パルス状電圧の重畳周期の時間(図9のTd)との比率(Tb/Td)とすると、デューティ比(Tb/Td)は、Tb をTdよりも小さくして、本発明の充電方法の効果の増大が可能である。デューティ比(Tb/Td)は、例えば、1/50〜1/3000(好ましくは、1/80〜1/2500、特に好ましくは、1/100〜1/2000)であれば、本発明の充電方法の効果の享受が容易になる。
デューティ比(Tb/Td)が、1/50より大きくなると前述の電池に発現する効果が低下し、1/3000より小さくなっても前述の電池に発現する効果が低下する。
<パルス状電圧の発生及び周期的な重畳>:
【0032】
パルス状電圧は、定電流充電の充電電圧への周期的な重畳によって、本発明の充電方法による効果が享受可能であれば、前述した発生方法以外の任意の方法によることが可能である。
パルス状電圧の「周期的に重畳する」の「周期的」とは、規則的な周期(例えば、一定周期)で代表的ではあるが、規則的でない周期が含まれていてもよいことを意味している。パルス状電圧を重畳する充電電圧は、定電流充電の充電電圧であれば、急速充電・短時間充電・普通充電のいずれの充電率の充電での充電電圧であってもよい。
定電流充電は、定電流充電方式と称される一定電流値の直流電流を電池に供給する方式である。
定電流充電での一定電流値にする制御方式は任意であって、公知の制御方式であっても良く、新たに創作する制御方式であっても良い。
<請求項1〜6の充電方法の特徴>:
【0033】
請求項1〜6の充電方法の特徴は、実験主体の検討での観察・測定・確認によれば、例えば、下記(1)〜(6)等である。
(1)定電流充電(一定電流値の直流電流による充電)には、生じない充電効率・充電特性が生ずる。
(2)従来の交流・間欠電流による充電では、電池の上限電圧を超える充電電圧による充電では直ちに事故が発生した。しかし、請求項1〜6の充電方法では、パルス状電圧のピーク電圧が電池の上限電圧を超えても、事故の発生に直ちに繋がらない。
(3)従来の交流・間欠電流による充電では、充電途中の不可避的に発生する電池電圧の上昇を解決するのが困難であった。
(4)従来の交流・間欠電流による充電では、電流をオン/オフで流して、かつ、長いオフ時間を採用することでデントライト発生を防止できた。しかし、請求項1〜6の充電方法では、パルス状電圧の周期的な重畳によってデントライト発生防止の効果が得られた。
(5)定電流充電(特に、定電流充電による急速充電若しくは短時間充電)では、条件を変えても、充電途中での突発的な電池温度の上昇防止が困難であった。しかし、請求項1〜6の充電方法では、防止可能になる。
(6)請求項1〜6の充電方法では、従来の急速充電の場合よりも、大きい充電率での充電及びは短時間での充電が可能になる。
<請求項2の充電方法>:
【0034】
請求項2の充電方法は、請求項1の充電方法のパルス状電圧が、コイルに蓄積された励磁エネルギーの放出により発生すること、を特徴とする発明である。図7は、請求項2の充電方法の実施の形態としての充電回路の一例を示す説明
図である。図7において、定電流充電の充電回路は、回路手段として、特に、コイルを設けて、電源からの直流電流を充電パルス制御・出力制御回路のオン/オフ制御が可能な高速スイッチ(例えば、MOSFET)の短時間(実質的に、瞬時)オンでコイルに電源の直流電流を供給する。高速スイッチのオフでコイルに蓄積した励磁エネルギーを放出させてパルス状電圧を発生させて、定充電回路から供給される定電流(すなわち、一定値の直流電流)の充電電圧に重畳して電池に充電する。
電池保護・充電制御回路は、定電流充電の充電回路に使用される公知の制御回路をであることが可能である。ダイオードは、パルス状電圧を通過させるのに適する応答速度が速いダイオード(例えば、ファストリカバリダイオード及びショットキーバリヤダイオード等)が適している。
充電パルス制御・出力制御回路は、スイッチによるコイルに供給する直流電流のオン/オフの時間制御によって励磁エネルギーの蓄積を制御し、放出により発生するパルス状電圧までも制御する。また、パルス状電圧を重畳する周期の時間制御も制御する。
<請求項3及び4の充電方法>:
【0035】
請求項3及び4の充電方法は、コイルを使用して請求項2の充電方法のコイルとして直列共振回路のコイルが使用される場合である。
図8は、請求項3及び4の充電方法の実施の形態としての充電回路の一例を示
す説明図である。図8において、充電回路は、直列共振回路を通じて定電流充
電の定電流を流す閉ループAと、直列共振回路のコイルに励磁エネルギー蓄積のための直流電流を流す閉ループBとから構成される点は、図7と同様である。
図9は、図8の充電回路により発生するパルス状電圧が重畳された充電電圧の電圧波形の説明図である。なお、図9の電圧波形は、電池14の正の電極側と接地との間にシンクロスコープ等の信号波形測定装置を接続して観測・測定している。
以下において、図8の充電回路及び図9の電圧波形の説明図に基いて、充電
回路の機能とパルス状電圧の発生との関係を説明する。
【0036】
なお、図8の充電回路において、直列共振回路20は、コイル12と逆流防止
用の高速型ダイオード13と電池14(正負電極を直列共振回路のキャパシタ
(コンデンサ)として利用)との直列接続から構成され、充電時には、電池1
4との間で共振電圧が発生して、電極情報を含むパルス状電圧が重畳される構
成にされている。
スイッチ16は、高速(例えば、100〜0.00001μS(好ましくは10〜0.0001
μS))でのオン/オフ制御が可能なスイッチ(例えば、MOSFET)であれば使用可能である。また、パルス状電圧の発生から終了までの時間(図9のTb)を、定電流回路15の制御の応答時間よりも早くすることで、パルス状電圧を重畳した充電電圧が電池14に印加するに際して、パルス状電圧に対する定電流回路15の制御による影響を緩和させることが望ましい。緩和によって、電池14に対するパルス状電圧が与える効果(電気学的反応に対する制御効果)が大きくなるからである。なお、影響の緩和とは、定電流回路15の制御によりパルス状電圧の立ち上った電圧の抑制を意味している。
【0037】
充電回路10は、電源11の電源電流が直接に直列共振回路20のコイル12に流れるので、瞬時の短時間でもコイル12に励磁エネルギーが蓄積可能になる。
スイッチ16は、オン/オフ制御によってパルス状電圧の発生から終了まで
の時間の制御をするので、オン/オフ制御の時間を定電流回路15の制御の応答時間よりも小さくすることが望ましい。
ダイオード13は、変化するパルス状電圧を通過させるのに適する応答速度が速いダイオード(例えば、ファストリカバリダイオード及びショットキーバリヤダイオード等)が適している。
定電流回路15は、定電流(一定値の直流電流)が制御可能であれば、公知の定電流回路、創作した定電流回路若しくは新たな定電流供給方法(図10を参照)であってもよい。図10は、新たな定電流供給方法の一例の説明図である。
【0038】
充電回路10は、スイッチ16がオフでは、閉ループA(図8の矢印Aで示す流れ)に定電流が定電流回路15から供給されて、直列共振回路20で電池14を充電する。この定電流充電の時間は、図9の電圧波形では、符号Taで示す時間及びその波形になる。
符号Taの時間が終わると、充電回路10のスイッチ16がオフからオンに切替わって、電源11の直流電流が閉ループBに流れて直列共振回路20のコイル12に励磁エネルギーが蓄積される。スイッチ16のオン時間は、極く短時間(例えば、100〜0.00001μS)である。このスイッチ16のオン時間は、図9の電圧波形では、符号Tcで示す時間及びその波形になる。T3とT4の間の時間は、電源11とコイル12との間の閉ループBに電源電流が流れるために、定電流充電の定電流が、コイル12と電池14との間には流れない状態になるからである。
次に、スイッチ16が、極く短時間のオンからオフに切替わった直後(実質的に、瞬時)には、コイル12に蓄積された励磁エネルギーが放出されて、パルス状電圧の最初の立ち上がり電圧が発生する。図9の電圧波形では、T4の時点で、パルス状電圧の最初の立ち上がり電圧が発生し、同時に、定電流充電の定電流が流れる。そして、スイッチ16のオフ時間が続くので、発生したパルス状電圧が定電流の充電電圧に重畳される。
そして、励磁エネルギー放出で発生する最初の立ち上がり電圧が、共振の条件を満たす場合には、共振電圧が発生して、最初の立ち上がり電圧と共振電圧とが連続する電圧波形を有するパルス状電圧になる。図9の電圧波形では、符号T4の時点でパルス状電圧が発生し、符号T1の時点でパルス状電圧が終了する。パルス状電圧は、符号Tbの時間を有する電圧波形になる。
パルス状電圧が、符号T1の時点でパルス状電圧が終了すると、符号Taの時間にわたって定電流充電が行われる。そして、これらの繰り返しで充電が行われる。
【0039】
請求項3及び4の充電方法については、いくつかの特徴が観測・測定・確認されている。例えば、下記(1)〜(7)等の特徴である。
(1)パルス状電圧は、コイル12の影響を受けて、電圧と電流の最大値との間には「ずれ」が生ずるので、電池に対する負担を軽減して電流量を最大にして電池14に供給することが可能になる。
(2)充電時の電極状態が共振波形に反映する場合には、発明の効果(例えば、充電効率、充電特性及び充電速度)の向上が観察されている。
(3)信号波形測定装置による観察では、パルス状電圧により電池14に対する電荷の供給量が増えている。
(4)定電流回路15の制御の応答時間とパルス状電圧の存続時間とに時間差がある場合には、パルス状電圧での電池14への給電荷量が増大することが観察されている。
(5)コイル12に供給する直流電流専用の直流電源を設けることが可能である。専用の直流電源であれば、電源電圧を高くして、励磁エネルギー蓄積のレベルを上げて、第二の本発明の効果をより向上させることが可能になる。
(6)コイルまたは/及びコンデンサの条件を変えて、共振電圧を生じ易くすることが可能である。
(7)浮遊容量との共振電圧を含むパルス状電圧であっても、発明の効果の享受が可能である。
<請求項5の充電方法>:
【0040】
請求項5の充電方法は、電圧波形のアナログ情報をデジタル情報化して、デジタル情報による制御でパルス状電圧を充電回路で発生させる場合である。
例えば、スイッチング制御回路、波形発生器及びDSPを使用することが可能で、それら以外の方法であることも可能である。
<スイッチング制御回路によるパルス状電圧の発生>:
スイッチング制御回路を用いる方法は、例えば、パルス状電圧の電圧波形の基本情報を内蔵する発信器の波形情報をカウンタに送って、そこで、波形の選別等を行って、選別された波形情報がスイッチング時間生成用コード変換器に送られて、変換情報(デジタル情報)がドライバに送られて、ドライバによって、例えば、図7若しくは図8のスイッチが操作されてパルス状電圧が充電回路に発生させる。図10は、スイッチング制御回路を用いてパルス状電圧を発生させる回路図である。
<波形発生器によるパルス状電圧の発生>:
波形発生器は、波形の構成要素となる任意の波形エレメント作成と、波形エレメント作成からの任意の波形までも作成可能な装置である。複数の装置メーカ(例えば、横河電機株式会社)で市販の波形発生器の使用が可能である。波形発生器によるパルス状電圧の発生では、予めアナログのパルス状電圧の電圧波形を用意して、それを波形発生器によりデジタル情報に変換して、変換情報によりドライバによって充電回路のスイッチを操作してパルス状電圧を充電回路に発生させる。
<DSPによるパルス状電圧の発生>:
DSP(Digital Signal
Procesor)は、デジタルデータに対してデジタル演算等のデジタル演算処理を高速及び高精度で施して、異なる造形データを生成するための専用のプロセッサあって、複数の装置メーカで市販されている。DSPを利用する場合にも、予めアナログのパルス状電圧の電圧波形を用意して、デジタル情報に変換して、変換情報によりドライバによって充電回路のスイッチを操作してパルス状電圧を充電回路に発生させる。
<請求項6の充電方法>:
【0041】
請求項6の充電方法は、例えば、波形発生器若しくはDSPの機能によりパルス状電圧が充電電圧に周期的に重畳された定電流の全体を充電回路に出力する方法である。
図11は、請求項6の充電方法の説明図であって、充電回路の充電電流の検出手段を設けて、検出センサにより充電回路の充電電流(定電流)の情報を検出して、予め内蔵するパルス状電圧の情報とから波形発生器若しくはDSPによりパルス状電圧のデジタル情報を作成して、増幅器で性能を増強して充電回路に出力して電池の充電に供される。
<請求項7の充電装置>:
【0042】
請求項7の充電装置は、請求項2の技術思想を充電装置の視点から把握した発明である。
図7は、請求項7の充電装置の内容を示す説明図でもある。請求項7の充電装置は、充電回路が、定電流充電の回路手段と、コイルに供給する直流電流の制御手段とから構成されて、供給する直流電流の制御によって、コイルへの励磁エネルギー蓄積とその放出によるパルス状電圧発生が制御されることを特徴としている。
従って、回路構成の簡略化、エネルギー蓄積制御の容易化・正確化とパルス状電圧発生の制御の容易化・正確化とが可能になっている。また、図7の充電方法で生じる発明の効果は、請求項7の充電装置についても発明の効果として享受される。
<請求項8の充電装置>:
図8は、請求項8の充電装置の内容を示す説明図でもある。請求項8の充電装置は、定電流充電の回路手段が直列共振回路含む構成にされて、パルス状電圧が直列共振回路のコイルで発生する構成にされ、それによって、パルス状電圧が共振電圧を含むことが可能な構成にされている。
そして、請求項8の充電装置によって、本来的な欠点を克服する定電流充電が簡単な構造であって、簡単で正確な制御による急速充電も可能な充電装置が得られている。また、図8の充電方法で生じる発明の効果は、請求項8の充電装置についても発明の効果として享受される。
<本発明の充電法の対象>:
【0043】
本発明による充電方法及び充電装置での充電対象となる電池は、普通充電・急速充電・短時間充電のいずれの充電方法による場合であってもよく、電池の形式においても制約がなく、従来において、急速充電・短時間充電の実行が不可能であった電池であっても、請求項1〜8の本発明が実施可能であれば、急速充電・短時間充電が可能な電池となり得る。
また、電池は、実用・非実用に関係なく本発明での充電対象となる。さらに、電池の汎用性・非汎用性に関係なく本発明での充電対象となる。汎用性のある電池としては、例えば、ニッケル・カドミニウム電池(特に、密閉型)、ニッケル・水素電池(特に、密閉型)、リチウムイオン電池、ニッケル・亜鉛、酸化銀・亜鉛電池及びレドックスフロー電池であって、いずれも、本発明の充電対象となる。
【0044】
なお、本発明においては、本発明の目的に沿うものであって、本発明の効果を特に害さない限りにおいては、改変あるいは部分的な変更及び付加は任意であって、いずれも本発明の範囲である。次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、実施例は例示であって本発明を拘束するものではない。
【実施例】
【0045】
ニッケル水素電池を定電流放電して実験用の電池に供した。実施例1及び2は、定電流充電の直流電流にパルス状電圧を周期的に重畳した充電電流を電池に流して、パルス状電圧が定電流充電の直流電流により進行する電池内反応系に対する作用効果を電池内反応系の変化の投影である充電特性から観察した。
また、比較例1及び2は、実施例1及び2での定電流充電の直流電流のみを電池に流して、実施例1及び2でのパルス状電圧による作用効果を確認した。
なお、実施例1及び比較例1は、定電流充電の直流電流を極く短時間の急速時間で完全充電付近の充電率になる条件にした。実施例2及び比較例2は、定電流充電の直流電流を急速時間の範囲で完全充電付近の充電率になる条件にした。
<実施例1>
【0046】
ニッケル水素電池(GPI製GP110AAAHC、容量1100
mAh)を直列に4本接続したものを用いて図6に示す充電回路で充電し、その充電特性を測定した。ここで使用した電池は、充電開 始前に1Aの定電流放電を行い、電池電圧
を1Vとして充電を開始 し、充電終了は、−△V5mVを検出した時点とした。
充電電源には12V電源を用い、充電電流が3.7Aとなるよ う定電流回路で制御した。また、 回路中のインダクタは100マイ クロヘンリーのものを使用し、スイッチングは39kH周期で、デューティ比は1/256とした。また、充電後の電池は、1Aの
定電流放電を行い、その放電時間を測定し放電量を算出して充電率 を求めた。
その結果を示す表1によれば、約10分で電池温度が17.1℃上昇した。 しかし、比較例1の場合には、実施例1と同じ定電流充電の直流電流のみを 実施例1と条件で流して、電池温度が30℃上昇した(表3を参照)。
【0047】
【表1】
<実施例2>
【0048】
定電流回路を制御して定電流充電の直流電流を1Aにした。パルス状電圧を実施例1と同じ条件で、定電流充電の直流電流に重畳して充電電流にした。充電時間は、一般的な急速充電の範囲にして充電特性を求めた。その結果を示す表2によれば、一般的な急速充電の時間では、電池温度が10.5℃上昇した。しかし、比較例2の場合には、実施例2と同じ定電流充電の直流電流のみを実施例2と条件で流して、電池温度が10.5℃上昇した(表4を参照)。
【0049】
【表2】
<比較例1>
【0050】
実施例1と同じ図6に示す充電回路を用い、定電流回路により直流電流が実施例1と同様に3.7Aになる様に制御した。スイッチング制御回路を用いないで、定電流回路からの直流電流3.7Aを電池に流して充電した。その結果を表3に示す。
【0051】
【表3】
<比較例2>
【0052】
実施例1及び2と同じ図6に示す充電回路を用い、定電流回路による直流電流が実施例2と同様に1Aになる様に制御した。スイッチング制御回路を用いないで、定電流回路による直流電流1Aを電池に流して充電した。その結果を表4に示す。
【0053】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明による充電方法及び充電装置は、定電流充電主体の充電方式でありながら従来の定電流充電ではない生じ得ない充電特性及び充電速度等での充電を可能にするので、電池の工業的利便性の向上を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】パルス状電圧の電圧波形の実施形態例の説明図である。
【図2】パルス状電圧の電圧波形の他の実施形態例の説明図である。
【図3】パルス状電圧の電圧波形の他の実施形態例の説明図である。
【図4】パルス状電圧の電圧波形の他の実施形態例の説明図である。
【図5】パルス状電圧の電圧波形の他の実施形態例の説明図である。
【図6】パルス状電圧の電圧波形の他の実施形態例の説明図である。
【図7】請求項2の充電方法の充電回路の説明図である。
【図8】請求項4の充電方法の充電回路の説明図である。
【図9】、請求項4のパルス状電圧が重畳された充電電圧の電圧波形の説明図である。
【図10】スイッチング制御回路によるパルス状電圧発生のための回路図である。
【図11】請求項6の充電方法の説明図である。
【図12】定電流充電の充電特性を模式的に示す説明図である。
【図13】定電圧充電の充電特性を模式的に示す説明図である。
【図14】密閉型鉛電池を定電圧充電により急速充電する場合の充電特性を模式的に示す説明図である。
【図15】異なる形式の電池の定電流充電(20℃)による充電特性を示す説明図である。
【図16】密閉型ニッケル・カドミニウム電池を異なる充電率により定電流充電した場合の充電特性を示す説明図である。
【図17】密閉型ニッケル・カドミニウム電池の充放電での電池周囲温度と電池寿命との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0056】
10 充電回路
11 直流電源
12 コイル
13 高速型ダイオード
14 電池
15 定電流回路
16 スイッチ
20 直列共振回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、定電流充電による規則的な電荷の電池内化学系への流れ(供給)が、パルス状電圧の周期的な重畳による充電電圧の影響を受けて、それによって、通常の定電流充電とは著しく相違する充電特性(例えば、急速充電・短時間充電での充電途中の突発的な急上昇の防止等)が発現して、円滑な充電の進行と充電の高速化(特に、急速充電・短時間充電の高速化)等が可能になる二次電池の充電方法及びそれの充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、少なくとも、正極・負極の電極及びイオン伝導性電解質を構成要素とし、電池の電気化学反応を介して化学的エネルギーと電気的エネルギーとの相互変換によって再充放電が可能な機構にされて、各種の産業用装置機器類(例えば、電子機器・コンピュター装置・精密機器・運輸器具等)の電源に供される。
なお、「二次電池」は、広義には、単一の二次電池及び組み電池(複数の二次電池の集合体)を含む広義の語義で使用され、狭義には、単一の二次電池を意味する語義で使用される。本特許請求の範囲及び本明細書においては、「二次電池」を広義の語義で使用し、狭義の語義の単一の二次電池若しくは組み電池の語義で使用する場合は、その旨に言及する。また、以下において、「二次電池」は、「電池」と略称し、特に必要な場合には、「二次電池」を使用する。
電池の「正極」及び「負極」は、本明細書及び本特許請求の範囲において、「正極」を放電時に電池から外部回路に電流が流出する側の電極の語義で使用し、「負極」を外部回路から電流が電池に流入する側の電極の語義で使用する。
「充電効率」は、本明細書において、アンペア/時間の効率の語義で使用する。
「充電特性」は、本明細書において、充電に際して電池内反応系の働きによって電池に現れる物理化学的・電気的な特性で、観測可能若しくは測定可能な特性(例えば、電池電圧、電池温度、電池電圧)の語義で使用する。
電池は、搭載対象となる装置機器類の多様化・高性能化・小型化(すなわち、電池搭載空間の減少)等によって、電池自体の高容量化・小型化・高性能化と、充電での時間短縮・発熱低下・安全正確な制御・装置の小型化等が希求されている。
実用電池は、鉛電池、ニッケル・カドミニウム電池、ニッケル・水素電池、リチウム電池の使用が大部分を占めて、それ以外にも、ニッケル・金属水素化物電池、二酸化マンガン・リチウム電池、ニッケル・亜鉛電池、銀・亜鉛電池等が実用に供されている。
【0003】
電池の充電は、外部電源からの電気供給により活物質を複雑な化学反応系により放電可能状態に戻すプロセスであって、その内容は、活物質(作用物質とも称される)による電極表面及びその近傍での複雑な電気化学反応、反応関与物質の電極表面への吸着・脱着、電界質でのイオン移動、反応系での発熱及び吸熱、及びガス発生・吸収等の多様な物理化学的現象が複雑に影響し合っている。
電池の充電は、電池に対する外部電源からの電流供給と電流の供給終了(一般的には、充電終了と称される)とからなる。充電終了は、理論的には、完全充電(充電容量が100%充電された状態)の状態を意味する。なお、慣用語の「満充電」は、「完全充電」の同義語として使用されている。
ただし、実用充電では、充電容量が100%未満の状態で、充電終了とする場合も多々存在する。
電池への充電は、直流若しくは間欠電流(交流とそれ以外の間欠電流)を供給する方法が提案されて、実用充電では、制御・充電量確認等が容易となる直流による充電が汎用的である。急速充電(1h以内の充電)では、直流により充電が一般的である。交流及び間欠電流による充電は、通電をオン/オフで行って、通電のオフ時間により電池に生ずる効果を得るのを主目的とする充電であって、デントライト発生を防止する充電等の限られた目的の充電に限定される(例えば、特許文献1〜4を参照)。
間欠電流をオン/オフのオンでピーク電圧値を高くしてその間の通電量を大きくし、その後のオフの時間を長くして電池の破損を防止する充電方法では、電池電圧の異常な上昇及び電池劣化が生じている(特許文献6を参照)。
【0004】
直流による充電は、一定電流値(A、mA)の直流電流を流す方法(「定電流充電」が使用されている)と一定電圧値(V)の直流電流を流す方法(「定電圧充電」が慣用的に使用されている)が基本的な充電方法で、特に、定電流充電が汎用性を有する充電方法である。なお、「定電流充電」は、成書(充電の技術書)及び辞書において、同一の語義で使用される技術用語である。
定電流充電の汎用性は、異なる形式の電池の充電に対する対応が容易で、制御及び充電量確認が容易で、充電装置の簡単化・小型化が容易になる等の工業上の便宜による。
【0005】
図12は定電流充電の充電特性を模式的に示す説明図である(例えば、非特許文献1のp413等を参照)。
定電流充電は、直流電流を一定電流値に維持して電池に供給する。一定電流値の維持は、供給する直流電流の電圧を充電進行に応じて上昇する電池電圧との電圧差を維持するように上昇させる制御を行う。そのために、一定電流維持のための充電電圧が、電池の許容上限電圧を超えると、その時点で、定電流充電を終了することになる。
なお、定電流充電は、充電時間による分類では、急速充電(1h以内の充電)、短時間充電(3〜8h以内の充電)及び普通充電(8〜18hの充電)に区別され(例えば、非特許文献3のp188の表5.9を参照)、実用充電では、急速充電及び短時間充電(特に、急速充電)の要請が高い。
【0006】
定電流充電は、汎用的ではあるが、電池の形式の相違によって充電特性が著しく相違し、設定した一定電流値により充電終了まで充電できない場合が生じる。その場合には、充電途中での設定電流値の変更による定電流充電の維持(例えば、2段階電流充電)及び充電途中での定電流充電から定電圧充電への変更(例えば、定電流定電圧充電)等が行われている。
【0007】
図13は定電圧充電の充電特性を模式的に示す説明図である(例えば、非特許文献1のp414等を参照)。定電圧充電は、制御により一定値の充電電圧(V)に設定・維持するので、充電により上昇する電池電圧と設定充電電圧値との電圧差が減少して充電電流値が減衰する。定電圧充電は、充電電圧を制御により一定値に維持するので、事故防止等のために上限電圧維持が厳格に規制され
る電池(例えば、鉛電池、亜鉛・二酸化マンガン電池、リチウム電池等)の充電には、上限電圧維持が容易になるので適している。
【0008】
定電圧充電は、充電初期には電池電圧が著しく低くなって大電流が流れるので、充電初期の大電流を制限する制限回路が必須になって、それが、充電電圧の制御を妨害することになるので、充電電圧の適正な制御が困難になる。
しかも、定電圧充電では、充電終了時の電池電圧を予め正確に予測して充電電圧を設定する必要がある。しかし、充電中の電池電圧は、充電時の電池周辺の温度変化及び電池の発熱により不規則的に大きく変化するので充電終了時の電池電圧を予め正確に予測するのが著しく難しく、定電圧充電を正確に行うのが困難である(例えば、非特許文献5のP150等を参照)。
【0009】
図14は、密閉型鉛電池を3種の設定電圧(2.70V、2.55V、2.35V)により定電圧充電で急速充電した場合の充電特性を模式的に示す説明図である(例えば、非特許文献1のp441等を参照)。
図14において、符号A、B、Cのいずれの充電においても、充電初期の2〜3分で大電流が流れて、充電前半の30分以内でほぼ充電量100%に達している。
従って、定電圧充電の急速充電では、充電初期の2〜3分に流れる大電流により充電量がほぼ100%に達するので、充電初期の大電流を可能にする高充電電圧の設定が許容される電池に限られる。一方、定電流充電は、電池形式の相違によって、充電特性が著しく相違する。
【0010】
図15は、異なる形式の電池を定電流充電(20℃)した場合の電池電圧vs充電容量%を関係を示す説明図であって、同一の充電率(0.1×C)及び近似の充電率の定電流充電(20℃)であっても、電池の形式が相違すると、充電時の電池内反応系の内容が著しく相違し、それによって、電池電圧vs充電容量%が著しく相違するデータが示されている(非特許文献1のP355を参照)。同様の図は非特許文献2、3にも示されている。
【0011】
図15の充電特性は、普通充電(8〜18hの充電)での一般的な充電率(多くは、0.1×C)による定電流充電(20℃)のデータである。なお、充電率の「C」は、容量を意味している。なお、「充電率」は、「時間率」とも称されて、共に成書及び辞書にも使用される通用語である。本特許請求の範囲及び本明細書は、「充電率」を使用する。
図15において、横軸の「容量」は、電池が含有する電気量を意味し、クーロン(C)若しくはアンペア時(Ah、mAh)の単位で表示される。
【0012】
なお、充電時の実際の容量は、理論的な容量に比較して相当に減少する。そのために、実用電池では、容量を定格容量若しくは公称容量で表示する場合が多い(例えば、非特許文献3等を参照)。
図15の横軸の「50容量%」は、完全充電時(すなわち、100容量%)を基としている、「50容量%」は、完全充電時の容量の50%が充電された状態を示している。
【0013】
普通充電(8〜18hの充電)には、約0.1〜0.3Cの充電率が一般的に採用されて、急速充電(1h以内の充電)は、普通充電の10倍(例えば、1〜3C)の充電率が一般的に採用され、短時間充電(3〜8hの充電)では、0.2〜0.4Cが採用されている(例えば、非特許文献3のp188を参照)。
図15の化学記号(例えば、Ni―Cd)は、電池の形式を化学記号で示していて、例えば、「Ni―Cd」は密閉型ニッケル・カドミニウム電池を示している。なお、密閉型は、電極からの発生ガスを反対の電極で吸収する作動方式の電池である。
図15の密閉型ニッケル・カドミニウム電池は、0.1Cの充電率の定電流充電において電池電圧が最も穏やかに変化し、電池温度も充電終期近辺で上昇する。 密閉型ニッケル・カドミニウム電池及び密閉型ニッケル・水素電池は、充電終期の正極からの発生ガスを陰極で吸収する作動方式(以下において、陰極吸収方式と略称することがある)の電池である。
陰極吸収方式の電池は、短時間充電若しくは急速充電において普通充電に比べて著しく相違する充電特性を示すことが知られている。
【0014】
図16は、密閉型ニッケル・カドミニウム電池を異なる充電率により定電流充電した場合の充電特性を示す説明図である(非特許文献1のp484を参照)。
密閉型ニッケル・カドミニウム電池は、0.1(C/10)Cの普通充電の充電率による充電では、電池温度が充電終期付近から急激に上昇し、電池電圧が充電全体で緩やかに上昇する。
他方、0.3(C/3)Cの充電率(短時間充電)では、電池温度及び電池内圧力が、完全充電のほぼ半分の充電量付近で急激に過充電領域にまで上昇する。陰極吸収方式の電池の0.1(C/10)Cの充電率(普通充電)による充電での充電終期で発生する電池温度の急激な上昇は、それに対応する電池の発熱量から、正極から発生するガスの陰極による吸収反応(発熱反応になる)のエンタルピー変化によると考えるのが一般的である。
ただし、0.3Cの短時間充電の充電率による充電において、完全充電のおおよそ半分の充電量での電池温度の急激な上昇を生じさせる電池内の化学反応系の挙動は、明らかにされていない。
【0015】
そのために、急速充電用の密閉型ニッケル・カドミニウム電池では、充電特性の急激な上昇による電池の破損・破壊を防止するために、電池構造の改善と電池内圧力・電池温度・電池電圧等の変化検出の精度を向上させてCPUの制御部を複雑な回路構成にして充電終了を高精度に判断する機構が必要になる。
電池構造の改善は、例えば、ガスを吸収する陰極面積の増大等による陰極でのガス吸収量の増大による電池内圧力の上昇抑制及び内部構造を過充電に耐える構造にする等である。
密閉型ニッケル・カドミニウム電池は、一般的は、30℃を超えると電池性能・電池寿命が低下し、過度な過充電により電池性能が低下する。また、電池温度が高くなり過ぎると充電電流値が増大して熱逸状態になって電池が損傷する。
図17は、密閉型ニッケル・カドミニウム電池の充放電での電池周囲温度と電池寿命との関係を示す説明図であって(非特許文献2のP218を参照)、密閉型ニッケル・カドミニウム電池が30℃近辺の温度に曝されても電池寿命が減少し、曝される温度が高くなると、電池寿命減少が著しくなることを示している。 しかし、充放電(特に、充電)での電池周囲温度の上昇を防止する有効な案は、提案されていない。
【0016】
図15の密閉型ニッケル・水素電池は、密閉型ニッケル・カドミニウム電池と同様の作動原理の電池で、定電流充電による急速充電が可能である。しかし、ニッケル・水素電池においても、急速充電によって電池電圧・電池温度・電池内圧力の著しい変化が生じる。それに対する回避手段は、陰極面積の増大等による陰極でのガス吸収面積の増大、電池構造の耐温度性の向上及び充電終了の精度向上等である。
図15に示す形式の電池の多くは、電池電圧・電池温度・電池内圧力が急激に上昇して許容上限値を超えるので、急速充電及び短時間充電による実用充電が実質的に不可能とされる電池の形式が多種存在する。
【0017】
【特許文献1】特開平06−36803号公報
【特許文献2】特許第4039771号公報
【特許文献3】特許第4016200号公報
【特許文献4】特許第3700288号公報
【特許文献5】特許第3438340号公報
【特許文献6】特許第4079590号公報
【0018】
【非特許文献1】ダブィッド・リンデン⋯編・高村勉⋯監修訳:〔最新二次電池ハンドブック〕朝倉書店 1996年12月20日 初版第版1刷発行
【非特許文献2】丸善株式会社編:〔電池便覧第3版〕丸善株式会社 平成12年2月20日 発行
【非特許文献3】日本二次電池株式会社:編〔最新実用二次電池―第2版―その選び方と使い方〕日刊工業新聞社 2001年5月31日 第2版2刷発行
【非特許文献4】トランジスタ技術編集部:編〔二次電池応用ハンドブック〕 CQ出版株式会社 2005年4月1日 第2版発行
【非特許文献5】西村 昭義:著〔改訂版 電池の本〕 CQ出版株式会社 1996年7月15日 改訂1版発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
定電流充電(特に、急速充電・短時間充電)には、下記(A)〜(G)等の様々な問題点が存在する。
(A)定電流充電では、普通充電(8〜18hの充電)においても充電特性が充電途中で急激に変化する形式の電池が多く存在し(図17を参照)、そのために、急速充電・短時間充電を工業的に行うことができない形式の電池が多く存在する。
(B)定電流充電による急速充電及び短時間充電では、電池温度が完全充電量のおおよそ半分量の段階で急激に上昇し、電池温度が繰り返し充電の度に30℃近辺の温度領域を超えて電池寿命が減少する(図17を参照)。
(C)定電流充電による急速充電及び短時間充電では、充電途中での電池温度・電池内圧力等の急激な上昇に耐える構造にするために、電池(特に、陰極吸収方式等の電池)及び電極の強度を大きくする等の改造を必要とする。
(D)定電流充電による急速充電及び短時間充電では、電池電圧・電池温度・電池内圧力の急激な上昇による暴走を回避するために充電終了に結び付く充電特性の僅かな変化を正確に捕捉して充電終了することが不可欠になる。特に、陰極吸収方式等の電池では、急激な暴走に対する耐性が低いので、充電終了時点の判断の精密性が要求される。
そのために、急速充電及び短時間充電を行う充電装置は、充電終了を精密に観測・予測・判断する複雑で特別な制御回路が必須になって、充電装置の小型化が困難になって、充電装置の価格が上昇する。
(E)電池を搭載する装置機器類が、用途の多様化・ICの急激な進歩等により構造の複雑化・小型化が急激に進行し、電池搭載空間が著しく減少傾向にあって、電池温度の少しの上昇で蓄熱効果によって電池及びその周囲温度が急激な上昇する。
(F)電池の形式によって、普通充電(8〜18hの充電)であっても、充電特性が著しく相違するので(図17を参照)、充電終了の時点を精密に予測・判断するのが簡単な機構の手段により実現するのが困難になるので、急速充電及び短時間充電の実施が困難な形式の電池が多々存在する。
(G)従来にあっては、定電流充電(特に、急速充電及び短時間充電)での充電途中で発生する電池電圧・電池温度・電池内圧力の急激な上昇を回避する手段が提案されていない。
かかる状況において、定電流充電による充電での電荷供給時の変化と電池内化学系の反応と充電特性との相関が詳細に実験主体に検討されて、充電での電荷供給の変化によっては、定電流充電の問題点を解決できることが本発明で見出された。
【0020】
次に、請求項1〜6の充電方法及び請求項7及び8の充電装置の発明の目的について記述する。ただし、請求項2〜6の充電方法は、請求項1の充電方法の技術思想に包含される態様としての技術思想であるので、請求項1の充電方法と同等の目的を有して、かつ、請求項2〜6の個々の目的を併有することになる。
請求項1に記載の本発明は、代表的には、下記(1)〜(9)を目的とする。
(1)パルス状電圧を充電電圧に周期的に重畳して、通常の定電流充電のとは著しく相違する充電特性(例えば、急速充電・短時間充電での充電途中の突発的な急上昇が生じない充電特性等)になる充電方法を提供すること、を目的とする。
(2)パルス状電圧を定電流充電の充電電圧に周期的に重畳して、定電流充電の利点を維持して、かつ、定電流充電に生ずる欠点(特に、不可避的に生ずる欠点)が防止・回避できる充電方法を提供すること、を目的とする。
(3)定電流充電を利用する急速充電若しくは短時間充電において、電池温度、電池電圧若しくは電池内圧力の急激な変化を抑制する充電方法を提供すること、をも目的とする。
(4)定電流充電を利用する(すなわち、定電流充電の電荷供給方式を維持する)急速充電若しくは短時間充電において、充電時間の短縮を可能にする充電方法を提供すること、を目的とする。
(5)定電流充電を利用する急速充電若しくは短時間充電において、従来の定電流充電では不可避的であった充電途中での電池温度の急上昇を防止・回避する充電方法を提供すること、をも目的とする。
(6)定電流充電を利用する急速充電若しくは短時間充電において、従来の定電流充電では不可避的であった電池電圧の異常な上昇及び電池劣化を防止・回避する充電方法を提供すること、をも目的とする。
(7)定電流充電を利用する急速充電若しくは短時間充電において、従来の定電流充電では不可避的であった電池・電極の改造及び充電終了の正確な判断のための複雑な制御回路の設置を不要化すること、をも目的とする。
(8)急速充電及び短時間充電が可能な電池の形式の範囲を拡大すること、をも目的とする。
(9)急速充電及び短時間充電が可能な電池の小型化を容易にし、かつ、電池価格の上昇を抑制すること、をも目的とする。
【0021】
請求項2の本発明は、パルス状電圧がコイルに蓄積された励磁エネルギー放出の発生することで得られる効果の享受をも目的とする。
請求項3の本発明は、パルス状電圧を発生するコイルが直列共振回路を構成することで得られる効果の享受をも目的とする。
請求項4の本発明は、パルス状電圧を発生するコイルを含む直列共振回路のコンデンサが二次電池の電極であることで得られる効果の享受をも目的とする。
請求項5の本発明は、合成されたパルス状電圧を充電回路に発生させることで得られる効果の享受をも目的とする。
請求項6の本発明は、パルス状電圧が周期的に重畳される定電流充電の充電電圧の定電流を充電回路に発生させることで得られる効果の享受をも目的とする。
【0022】
請求項7の本発明は、請求項1〜3の本発明の充電方法の実施を容易にする充電装置を提供することを目的とする。
請求項8の本発明は、請求項4の本発明の充電方法の実施を容易にする充電装置を提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
請求項1の充電方法は、パルス状電圧が、定電流充電の充電電圧に周期的に重畳されて二次電池に印加されていること、を特徴とする。
請求項2の充電方法は、請求項1の充電方法のパルス状電圧が、コイルに蓄積された励磁エネルギーの放出により発生すること、を特徴とする
請求項3の充電方法は、請求項1の充電方法のパルス状電圧が、直列共振回路のコイルに蓄積される励磁エネルギーの放出により発生すること、を特徴とする。
請求項4の充電方法は、請求項3の充電方法のパルス状電圧が、充電対象の二次電池の電極をコンデンサとする直列共振回路のコイルに蓄積される励磁エネルギーの放出により発生すること、を特徴とする。
請求項5に記載の本発明は、請求項1の充電方法のパルス状電圧が、電圧波形のアナログ情報をデジタル情報化して、デジタル情報によって充電回路で発生すること、を特徴とする。
請求項6に記載の充電方法は、充電回路にその充電電流の検出手段を設けて、該検出手段で検出される充電電流の情報と予め内蔵するパルス状電圧の情報とから波形発生器によりパルス状電圧が充電電圧に周期的に重畳された定電流を生成して二次電池に供給すること、を特徴とする。
【0024】
請求項7の充電装置は、定電流充電の回路手段を有する充電回路が、充電回路のコイルへの励磁エネルギー蓄積とその放出によるパルス状電圧発生をコイルへの直流電流の供給を制御する制御手段を備えて、
制御手段による直流電流の供給制御により発生するパルス状電圧が、定電流充電の充電電圧に周期的に重畳させて二次電池に印加する構成にされていること、を特徴とする。
請求項8の充電装置は、請求項7の充電装置のパルス状電圧を発生するコイルが、直列共振回路のコイルになること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
次に、請求項1〜6による充電方法と請求項7及び8による充電装置の効果について記述する。ただし、請求項2〜6の充電方法は、請求項1の充電方法の技術思想に包含される態様としての技術思想であるので、請求項1の充電方法と同
等の効果を有して、かつ、個々の特有の効果を有する。
(A)請求項1に記載の充電方法によれば、代表的には、下記(1)〜(9)の効果が得られる。
(1)定電流充電を利用する充電でありながら、定電流充電とは著しく相違する充電特性(例えば、急速充電・短時間充電での充電途中の突発的な急上昇の防止・消滅等)が表れる。
(2)急速充電及び短時間充電において、通常の定電流充電の場合よりも充電時間が短縮される。
(3)急速充電及び短時間充電において、従来の定電流充電では不可避であった充電途中での電池温度の急上昇の発生が防止・回避される。
(4)急速充電及び短時間充電において、充電途中での電池電圧の異常な上昇及び電池劣化が防止・回避される。
(5)急速充電及び短時間充電において、従来では必須となる電池・電極の改造及び充電終了の正確な判断のための複雑な制御回路の設置が不要になる。
(6)通常の定電流充電のための有効な公知技術(例えば、充電終了技術)が使用可能になる。
(7)従来では、急速充電及び短時間充電が困難とされた形式の電池にも急速充電及び短時間充電の採用の機会が広がる。
(8)パルス状電圧の設定変更による発明の効果の向上が可能になる。
(9)搭載空間減少化の傾向に合させて電池及び充電装置を小型化することができる。
【0026】
(B)請求項2の充電方法によれば、パルス状電圧の発生がコイルの励磁エネルギー放出によるので、請求項1と同等の効果を有して、かつ、例えば、下記(i)〜(iv)等の効果が得られる。
(i)コイルの励磁エネルギー蓄積の制御によりパルス状電圧発生が制御できるので、直流電流の供給時間の制御によってパルス状電圧を精密に制御可能になる。
(ii)コイルの励磁エネルギー蓄積が、直流電流の供給時間で決まり、かつ、その供給時間が1/数百(秒)の短時間で完了するので、励磁エネルギー蓄積の高速かつ容易になる。
(iii)充電回路のシステムが著しく簡単化できる。
(iv)励磁エネルギー放出によるパルス状電圧は、充電時の電池内反応系に与える影響が大きいことが本発明で見いだされている。
(C)請求項3の充電方法によれば、パルス状電圧の発生に直列共振回路のコイルを使用するので、請求項1と同等の効果を有して、かつ、請求項2の充電方法による特有の効果に加えて、例えば、直列共振回路で共振電圧を発生させて、励磁エネルギー放出に発生する急激に立ち上がる電圧と共振電圧とが連続するパルス状電圧にすることができる。
また、共振電圧を含むパルス状電圧が、本発明の充電方法の効果を享受するのに有効であることが、本発明で見いだされている。
(D)請求項4の充電方法によれば、直列共振回路のコンデンサとして充電対象の二次電池の電極が使用されるので、請求項1と同等の効果を有して、かつ、請求項2及び3の特有の効果に加えて、例えば、充電の進行に応じて変化する二次電池との共振電圧を含むパルス状電圧にしてそれを充電電圧に重畳して、パルス状電圧の効果をより向上させる。
(E)請求項5の充電方法によれば、デジタル情報によって充電回路で発生させたパルス状電圧であっても、正確に元のパルス状電圧の波形を再現できるので、高確率で、請求項1と同等の効果を得ることが可能になる。
(F)請求項6の充電方法によれば、検出情報とデジタル情報化技術によってパルス状電圧を重畳した充電電流それ自体が再現されるので、ある程度の確率で、請求項1と同等の効果を得ることが可能になる。
【0027】
(G)請求項7の充電装置によれば、請求項1〜3の充電方法の容易かつ正確な実施が可能になる。
(H)請求項8の充電装置によれば、請求項4の充電方法の容易かつ正確な実施が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
請求項1〜6の充電方法及び請求項7〜8の充電装置の実施の最良形態を以下に具体的に説明する。
なお、請求項2〜6の充電方法は、請求項1の充電方法の技術思想に包含される態様としての技術思想であるので、請求項1と共通する事項は、請求項1の説明で言及する。
<請求項1の充電方法>:
【0029】
請求項1の充電方法は、パルス状電圧が定電流充電の充電電圧に周期的に重畳されて二次電池に印加されていることを特徴とし、パルス状電圧の充電電圧への重畳により定電流充電の内容を好適な方向に制御可能にする。
【0030】
<パルス状電圧>:
定電流充電の充電電圧にパルス状電圧が周期的に重畳されている状態にして電荷が電池に供給されて、請求項1〜7の充電方法について特異的な発明の効果が享受される。パルス状電圧は、その電圧波形に制約がないが、電圧波形が正の電位領域で連続的に動く軌跡であることによって発明の効果享受に有効である。パルス状電圧が正の電位領域で連続的に動くとは、第一に、電圧が常時に正の電位領域に存在し、第二に、電圧が変化し、第三に、電圧変化が連続的であることである。
また、「パルス状電圧」の用語は、パルス状電圧の発生から終了までの全体の意味で使用している。
図1〜図6は、請求項1〜6のパルス状電圧の電圧波形の好適な実施形態の例示である。
図1は、コイルの励磁エネルギー放出により発生するパルス状電圧の電圧波形の説明図で、請求項2の充電方法により発生する。図1のパルス状電圧は、定電流充電の充電電圧(横方向の矢印で示す符号Vdで示すレベル)から少し立ち下がってから急激に立ち上がってピーク電圧Vtに達してから充電電圧のレベルに戻っている。図1の下方のOVの符号を付した横線はゼロボルトのレベルを示している。なお、電圧波形が、最初に電圧Vdのレベルから少し立ち下がってから立ち上がるのは、パルス状電圧の発生方法に起因する。
図2のパルス状電圧は、励磁エネルギー放出で高く立ち上がる高電圧と共振電圧とが連続するパルス状電圧の電圧波形の説明図で、請求項3及び4の充電方法により発生することが可能である。
図2のパルス状電圧は、高電圧の電圧波形が最初に発生し、その高電圧との共振で共振電圧が発生して、高電圧と共振電圧とが連続し、共振電圧が減衰的に小さくなる電圧波形になっている。図2のパルス状電圧は、共振条件に該当して、比較的に大きな共振電圧が発生する場合である。
図3のパルス状電圧は、励磁エネルギー放出で立ち上がる高電圧と弱い共振電圧とが連続する電圧波形の説明図である。図3のパルス状電圧は、コイルと回路の寄生容量との間で発生する弱い共振電圧が発生する場合である。
図4のパルス状電圧は、励磁エネルギー放出で立ち上がる高電圧と弱い共振電圧とが連続する電圧波形の説明図である。図4は、弱い共振電圧が発生している場合である。
図5のパルス状電圧は、最初に立ち上がる電圧が弱く、連続する共振電圧も弱い場合であって、このような場合であっても、請求項1〜6の充電方法の発明の効果の享受に有効である。
図6のパルス状電圧は、連続電圧波形からなる場合で、請求項5の充電方法では容易に発生可能である。
<パルス状電圧のデューティ比>:
【0031】
パルス状電圧のデューティ比が、パルス状電圧の発生から終了(消滅)までの時間(図9のTb)と パルス状電圧の重畳周期の時間(図9のTd)との比率(Tb/Td)とすると、デューティ比(Tb/Td)は、Tb をTdよりも小さくして、本発明の充電方法の効果の増大が可能である。デューティ比(Tb/Td)は、例えば、1/50〜1/3000(好ましくは、1/80〜1/2500、特に好ましくは、1/100〜1/2000)であれば、本発明の充電方法の効果の享受が容易になる。
デューティ比(Tb/Td)が、1/50より大きくなると前述の電池に発現する効果が低下し、1/3000より小さくなっても前述の電池に発現する効果が低下する。
<パルス状電圧の発生及び周期的な重畳>:
【0032】
パルス状電圧は、定電流充電の充電電圧への周期的な重畳によって、本発明の充電方法による効果が享受可能であれば、前述した発生方法以外の任意の方法によることが可能である。
パルス状電圧の「周期的に重畳する」の「周期的」とは、規則的な周期(例えば、一定周期)で代表的ではあるが、規則的でない周期が含まれていてもよいことを意味している。パルス状電圧を重畳する充電電圧は、定電流充電の充電電圧であれば、急速充電・短時間充電・普通充電のいずれの充電率の充電での充電電圧であってもよい。
定電流充電は、定電流充電方式と称される一定電流値の直流電流を電池に供給する方式である。
定電流充電での一定電流値にする制御方式は任意であって、公知の制御方式であっても良く、新たに創作する制御方式であっても良い。
<請求項1〜6の充電方法の特徴>:
【0033】
請求項1〜6の充電方法の特徴は、実験主体の検討での観察・測定・確認によれば、例えば、下記(1)〜(6)等である。
(1)定電流充電(一定電流値の直流電流による充電)には、生じない充電効率・充電特性が生ずる。
(2)従来の交流・間欠電流による充電では、電池の上限電圧を超える充電電圧による充電では直ちに事故が発生した。しかし、請求項1〜6の充電方法では、パルス状電圧のピーク電圧が電池の上限電圧を超えても、事故の発生に直ちに繋がらない。
(3)従来の交流・間欠電流による充電では、充電途中の不可避的に発生する電池電圧の上昇を解決するのが困難であった。
(4)従来の交流・間欠電流による充電では、電流をオン/オフで流して、かつ、長いオフ時間を採用することでデントライト発生を防止できた。しかし、請求項1〜6の充電方法では、パルス状電圧の周期的な重畳によってデントライト発生防止の効果が得られた。
(5)定電流充電(特に、定電流充電による急速充電若しくは短時間充電)では、条件を変えても、充電途中での突発的な電池温度の上昇防止が困難であった。しかし、請求項1〜6の充電方法では、防止可能になる。
(6)請求項1〜6の充電方法では、従来の急速充電の場合よりも、大きい充電率での充電及びは短時間での充電が可能になる。
<請求項2の充電方法>:
【0034】
請求項2の充電方法は、請求項1の充電方法のパルス状電圧が、コイルに蓄積された励磁エネルギーの放出により発生すること、を特徴とする発明である。図7は、請求項2の充電方法の実施の形態としての充電回路の一例を示す説明
図である。図7において、定電流充電の充電回路は、回路手段として、特に、コイルを設けて、電源からの直流電流を充電パルス制御・出力制御回路のオン/オフ制御が可能な高速スイッチ(例えば、MOSFET)の短時間(実質的に、瞬時)オンでコイルに電源の直流電流を供給する。高速スイッチのオフでコイルに蓄積した励磁エネルギーを放出させてパルス状電圧を発生させて、定充電回路から供給される定電流(すなわち、一定値の直流電流)の充電電圧に重畳して電池に充電する。
電池保護・充電制御回路は、定電流充電の充電回路に使用される公知の制御回路をであることが可能である。ダイオードは、パルス状電圧を通過させるのに適する応答速度が速いダイオード(例えば、ファストリカバリダイオード及びショットキーバリヤダイオード等)が適している。
充電パルス制御・出力制御回路は、スイッチによるコイルに供給する直流電流のオン/オフの時間制御によって励磁エネルギーの蓄積を制御し、放出により発生するパルス状電圧までも制御する。また、パルス状電圧を重畳する周期の時間制御も制御する。
<請求項3及び4の充電方法>:
【0035】
請求項3及び4の充電方法は、コイルを使用して請求項2の充電方法のコイルとして直列共振回路のコイルが使用される場合である。
図8は、請求項3及び4の充電方法の実施の形態としての充電回路の一例を示
す説明図である。図8において、充電回路は、直列共振回路を通じて定電流充
電の定電流を流す閉ループAと、直列共振回路のコイルに励磁エネルギー蓄積のための直流電流を流す閉ループBとから構成される点は、図7と同様である。
図9は、図8の充電回路により発生するパルス状電圧が重畳された充電電圧の電圧波形の説明図である。なお、図9の電圧波形は、電池14の正の電極側と接地との間にシンクロスコープ等の信号波形測定装置を接続して観測・測定している。
以下において、図8の充電回路及び図9の電圧波形の説明図に基いて、充電
回路の機能とパルス状電圧の発生との関係を説明する。
【0036】
なお、図8の充電回路において、直列共振回路20は、コイル12と逆流防止
用の高速型ダイオード13と電池14(正負電極を直列共振回路のキャパシタ
(コンデンサ)として利用)との直列接続から構成され、充電時には、電池1
4との間で共振電圧が発生して、電極情報を含むパルス状電圧が重畳される構
成にされている。
スイッチ16は、高速(例えば、100〜0.00001μS(好ましくは10〜0.0001
μS))でのオン/オフ制御が可能なスイッチ(例えば、MOSFET)であれば使用可能である。また、パルス状電圧の発生から終了までの時間(図9のTb)を、定電流回路15の制御の応答時間よりも早くすることで、パルス状電圧を重畳した充電電圧が電池14に印加するに際して、パルス状電圧に対する定電流回路15の制御による影響を緩和させることが望ましい。緩和によって、電池14に対するパルス状電圧が与える効果(電気学的反応に対する制御効果)が大きくなるからである。なお、影響の緩和とは、定電流回路15の制御によりパルス状電圧の立ち上った電圧の抑制を意味している。
【0037】
充電回路10は、電源11の電源電流が直接に直列共振回路20のコイル12に流れるので、瞬時の短時間でもコイル12に励磁エネルギーが蓄積可能になる。
スイッチ16は、オン/オフ制御によってパルス状電圧の発生から終了まで
の時間の制御をするので、オン/オフ制御の時間を定電流回路15の制御の応答時間よりも小さくすることが望ましい。
ダイオード13は、変化するパルス状電圧を通過させるのに適する応答速度が速いダイオード(例えば、ファストリカバリダイオード及びショットキーバリヤダイオード等)が適している。
定電流回路15は、定電流(一定値の直流電流)が制御可能であれば、公知の定電流回路、創作した定電流回路若しくは新たな定電流供給方法(図10を参照)であってもよい。図10は、新たな定電流供給方法の一例の説明図である。
【0038】
充電回路10は、スイッチ16がオフでは、閉ループA(図8の矢印Aで示す流れ)に定電流が定電流回路15から供給されて、直列共振回路20で電池14を充電する。この定電流充電の時間は、図9の電圧波形では、符号Taで示す時間及びその波形になる。
符号Taの時間が終わると、充電回路10のスイッチ16がオフからオンに切替わって、電源11の直流電流が閉ループBに流れて直列共振回路20のコイル12に励磁エネルギーが蓄積される。スイッチ16のオン時間は、極く短時間(例えば、100〜0.00001μS)である。このスイッチ16のオン時間は、図9の電圧波形では、符号Tcで示す時間及びその波形になる。T3とT4の間の時間は、電源11とコイル12との間の閉ループBに電源電流が流れるために、定電流充電の定電流が、コイル12と電池14との間には流れない状態になるからである。
次に、スイッチ16が、極く短時間のオンからオフに切替わった直後(実質的に、瞬時)には、コイル12に蓄積された励磁エネルギーが放出されて、パルス状電圧の最初の立ち上がり電圧が発生する。図9の電圧波形では、T4の時点で、パルス状電圧の最初の立ち上がり電圧が発生し、同時に、定電流充電の定電流が流れる。そして、スイッチ16のオフ時間が続くので、発生したパルス状電圧が定電流の充電電圧に重畳される。
そして、励磁エネルギー放出で発生する最初の立ち上がり電圧が、共振の条件を満たす場合には、共振電圧が発生して、最初の立ち上がり電圧と共振電圧とが連続する電圧波形を有するパルス状電圧になる。図9の電圧波形では、符号T4の時点でパルス状電圧が発生し、符号T1の時点でパルス状電圧が終了する。パルス状電圧は、符号Tbの時間を有する電圧波形になる。
パルス状電圧が、符号T1の時点でパルス状電圧が終了すると、符号Taの時間にわたって定電流充電が行われる。そして、これらの繰り返しで充電が行われる。
【0039】
請求項3及び4の充電方法については、いくつかの特徴が観測・測定・確認されている。例えば、下記(1)〜(7)等の特徴である。
(1)パルス状電圧は、コイル12の影響を受けて、電圧と電流の最大値との間には「ずれ」が生ずるので、電池に対する負担を軽減して電流量を最大にして電池14に供給することが可能になる。
(2)充電時の電極状態が共振波形に反映する場合には、発明の効果(例えば、充電効率、充電特性及び充電速度)の向上が観察されている。
(3)信号波形測定装置による観察では、パルス状電圧により電池14に対する電荷の供給量が増えている。
(4)定電流回路15の制御の応答時間とパルス状電圧の存続時間とに時間差がある場合には、パルス状電圧での電池14への給電荷量が増大することが観察されている。
(5)コイル12に供給する直流電流専用の直流電源を設けることが可能である。専用の直流電源であれば、電源電圧を高くして、励磁エネルギー蓄積のレベルを上げて、第二の本発明の効果をより向上させることが可能になる。
(6)コイルまたは/及びコンデンサの条件を変えて、共振電圧を生じ易くすることが可能である。
(7)浮遊容量との共振電圧を含むパルス状電圧であっても、発明の効果の享受が可能である。
<請求項5の充電方法>:
【0040】
請求項5の充電方法は、電圧波形のアナログ情報をデジタル情報化して、デジタル情報による制御でパルス状電圧を充電回路で発生させる場合である。
例えば、スイッチング制御回路、波形発生器及びDSPを使用することが可能で、それら以外の方法であることも可能である。
<スイッチング制御回路によるパルス状電圧の発生>:
スイッチング制御回路を用いる方法は、例えば、パルス状電圧の電圧波形の基本情報を内蔵する発信器の波形情報をカウンタに送って、そこで、波形の選別等を行って、選別された波形情報がスイッチング時間生成用コード変換器に送られて、変換情報(デジタル情報)がドライバに送られて、ドライバによって、例えば、図7若しくは図8のスイッチが操作されてパルス状電圧が充電回路に発生させる。図10は、スイッチング制御回路を用いてパルス状電圧を発生させる回路図である。
<波形発生器によるパルス状電圧の発生>:
波形発生器は、波形の構成要素となる任意の波形エレメント作成と、波形エレメント作成からの任意の波形までも作成可能な装置である。複数の装置メーカ(例えば、横河電機株式会社)で市販の波形発生器の使用が可能である。波形発生器によるパルス状電圧の発生では、予めアナログのパルス状電圧の電圧波形を用意して、それを波形発生器によりデジタル情報に変換して、変換情報によりドライバによって充電回路のスイッチを操作してパルス状電圧を充電回路に発生させる。
<DSPによるパルス状電圧の発生>:
DSP(Digital Signal
Procesor)は、デジタルデータに対してデジタル演算等のデジタル演算処理を高速及び高精度で施して、異なる造形データを生成するための専用のプロセッサあって、複数の装置メーカで市販されている。DSPを利用する場合にも、予めアナログのパルス状電圧の電圧波形を用意して、デジタル情報に変換して、変換情報によりドライバによって充電回路のスイッチを操作してパルス状電圧を充電回路に発生させる。
<請求項6の充電方法>:
【0041】
請求項6の充電方法は、例えば、波形発生器若しくはDSPの機能によりパルス状電圧が充電電圧に周期的に重畳された定電流の全体を充電回路に出力する方法である。
図11は、請求項6の充電方法の説明図であって、充電回路の充電電流の検出手段を設けて、検出センサにより充電回路の充電電流(定電流)の情報を検出して、予め内蔵するパルス状電圧の情報とから波形発生器若しくはDSPによりパルス状電圧のデジタル情報を作成して、増幅器で性能を増強して充電回路に出力して電池の充電に供される。
<請求項7の充電装置>:
【0042】
請求項7の充電装置は、請求項2の技術思想を充電装置の視点から把握した発明である。
図7は、請求項7の充電装置の内容を示す説明図でもある。請求項7の充電装置は、充電回路が、定電流充電の回路手段と、コイルに供給する直流電流の制御手段とから構成されて、供給する直流電流の制御によって、コイルへの励磁エネルギー蓄積とその放出によるパルス状電圧発生が制御されることを特徴としている。
従って、回路構成の簡略化、エネルギー蓄積制御の容易化・正確化とパルス状電圧発生の制御の容易化・正確化とが可能になっている。また、図7の充電方法で生じる発明の効果は、請求項7の充電装置についても発明の効果として享受される。
<請求項8の充電装置>:
図8は、請求項8の充電装置の内容を示す説明図でもある。請求項8の充電装置は、定電流充電の回路手段が直列共振回路含む構成にされて、パルス状電圧が直列共振回路のコイルで発生する構成にされ、それによって、パルス状電圧が共振電圧を含むことが可能な構成にされている。
そして、請求項8の充電装置によって、本来的な欠点を克服する定電流充電が簡単な構造であって、簡単で正確な制御による急速充電も可能な充電装置が得られている。また、図8の充電方法で生じる発明の効果は、請求項8の充電装置についても発明の効果として享受される。
<本発明の充電法の対象>:
【0043】
本発明による充電方法及び充電装置での充電対象となる電池は、普通充電・急速充電・短時間充電のいずれの充電方法による場合であってもよく、電池の形式においても制約がなく、従来において、急速充電・短時間充電の実行が不可能であった電池であっても、請求項1〜8の本発明が実施可能であれば、急速充電・短時間充電が可能な電池となり得る。
また、電池は、実用・非実用に関係なく本発明での充電対象となる。さらに、電池の汎用性・非汎用性に関係なく本発明での充電対象となる。汎用性のある電池としては、例えば、ニッケル・カドミニウム電池(特に、密閉型)、ニッケル・水素電池(特に、密閉型)、リチウムイオン電池、ニッケル・亜鉛、酸化銀・亜鉛電池及びレドックスフロー電池であって、いずれも、本発明の充電対象となる。
【0044】
なお、本発明においては、本発明の目的に沿うものであって、本発明の効果を特に害さない限りにおいては、改変あるいは部分的な変更及び付加は任意であって、いずれも本発明の範囲である。次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、実施例は例示であって本発明を拘束するものではない。
【実施例】
【0045】
ニッケル水素電池を定電流放電して実験用の電池に供した。実施例1及び2は、定電流充電の直流電流にパルス状電圧を周期的に重畳した充電電流を電池に流して、パルス状電圧が定電流充電の直流電流により進行する電池内反応系に対する作用効果を電池内反応系の変化の投影である充電特性から観察した。
また、比較例1及び2は、実施例1及び2での定電流充電の直流電流のみを電池に流して、実施例1及び2でのパルス状電圧による作用効果を確認した。
なお、実施例1及び比較例1は、定電流充電の直流電流を極く短時間の急速時間で完全充電付近の充電率になる条件にした。実施例2及び比較例2は、定電流充電の直流電流を急速時間の範囲で完全充電付近の充電率になる条件にした。
<実施例1>
【0046】
ニッケル水素電池(GPI製GP110AAAHC、容量1100
mAh)を直列に4本接続したものを用いて図6に示す充電回路で充電し、その充電特性を測定した。ここで使用した電池は、充電開 始前に1Aの定電流放電を行い、電池電圧
を1Vとして充電を開始 し、充電終了は、−△V5mVを検出した時点とした。
充電電源には12V電源を用い、充電電流が3.7Aとなるよ う定電流回路で制御した。また、 回路中のインダクタは100マイ クロヘンリーのものを使用し、スイッチングは39kH周期で、デューティ比は1/256とした。また、充電後の電池は、1Aの
定電流放電を行い、その放電時間を測定し放電量を算出して充電率 を求めた。
その結果を示す表1によれば、約10分で電池温度が17.1℃上昇した。 しかし、比較例1の場合には、実施例1と同じ定電流充電の直流電流のみを 実施例1と条件で流して、電池温度が30℃上昇した(表3を参照)。
【0047】
【表1】
<実施例2>
【0048】
定電流回路を制御して定電流充電の直流電流を1Aにした。パルス状電圧を実施例1と同じ条件で、定電流充電の直流電流に重畳して充電電流にした。充電時間は、一般的な急速充電の範囲にして充電特性を求めた。その結果を示す表2によれば、一般的な急速充電の時間では、電池温度が10.5℃上昇した。しかし、比較例2の場合には、実施例2と同じ定電流充電の直流電流のみを実施例2と条件で流して、電池温度が10.5℃上昇した(表4を参照)。
【0049】
【表2】
<比較例1>
【0050】
実施例1と同じ図6に示す充電回路を用い、定電流回路により直流電流が実施例1と同様に3.7Aになる様に制御した。スイッチング制御回路を用いないで、定電流回路からの直流電流3.7Aを電池に流して充電した。その結果を表3に示す。
【0051】
【表3】
<比較例2>
【0052】
実施例1及び2と同じ図6に示す充電回路を用い、定電流回路による直流電流が実施例2と同様に1Aになる様に制御した。スイッチング制御回路を用いないで、定電流回路による直流電流1Aを電池に流して充電した。その結果を表4に示す。
【0053】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明による充電方法及び充電装置は、定電流充電主体の充電方式でありながら従来の定電流充電ではない生じ得ない充電特性及び充電速度等での充電を可能にするので、電池の工業的利便性の向上を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】パルス状電圧の電圧波形の実施形態例の説明図である。
【図2】パルス状電圧の電圧波形の他の実施形態例の説明図である。
【図3】パルス状電圧の電圧波形の他の実施形態例の説明図である。
【図4】パルス状電圧の電圧波形の他の実施形態例の説明図である。
【図5】パルス状電圧の電圧波形の他の実施形態例の説明図である。
【図6】パルス状電圧の電圧波形の他の実施形態例の説明図である。
【図7】請求項2の充電方法の充電回路の説明図である。
【図8】請求項4の充電方法の充電回路の説明図である。
【図9】、請求項4のパルス状電圧が重畳された充電電圧の電圧波形の説明図である。
【図10】スイッチング制御回路によるパルス状電圧発生のための回路図である。
【図11】請求項6の充電方法の説明図である。
【図12】定電流充電の充電特性を模式的に示す説明図である。
【図13】定電圧充電の充電特性を模式的に示す説明図である。
【図14】密閉型鉛電池を定電圧充電により急速充電する場合の充電特性を模式的に示す説明図である。
【図15】異なる形式の電池の定電流充電(20℃)による充電特性を示す説明図である。
【図16】密閉型ニッケル・カドミニウム電池を異なる充電率により定電流充電した場合の充電特性を示す説明図である。
【図17】密閉型ニッケル・カドミニウム電池の充放電での電池周囲温度と電池寿命との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0056】
10 充電回路
11 直流電源
12 コイル
13 高速型ダイオード
14 電池
15 定電流回路
16 スイッチ
20 直列共振回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス状電圧が、定電流充電の充電電圧に周期的に重畳されて二次電池に印加されていること、を特徴とする二次電池の充電方法。
【請求項2】
コイルに蓄積された励磁エネルギーの放出により発生するパルス状電圧が、定電流充電の充電電圧に周期的に重畳されて二次電池に印加されていること、を特徴とする二次電池の充電方法。
【請求項3】
直列共振回路のコイルに蓄積された励磁エネルギー放出により発生するパルス状電圧が、定電流充電の充電電圧に周期的に重畳されて二次電池に印加されていること、を特徴とする二次電池の充電方法。
【請求項4】
充電対象の二次電池の電極をコンデンサとする直列共振回路のコイルに蓄積された励磁エネルギー放出により発生するパルス状電圧が、定電流充電の充電電圧に周期的に重畳されて二次電池に印加されていること、を特徴とする二次電池の充電方法。
【請求項5】
電圧波形のアナログ情報をデジタル情報化し、そのデジタル情報によって充電回路で発生させたパルス状電圧が、定電流充電の充電電圧に周期的に重畳されて二次電池に印加されていること、を特徴とする二次電池の充電方法。
【請求項6】
充電回路に充電電流の検出手段を設けて、該検出手段で検出される充電電流の情報と予め内蔵するパルス状電圧の情報とから波形発生器によりパルス状電圧が充電電圧に周期的に重畳された定電流を生成して二次電池に供給すること、を特徴とする二次電池の充電方法。
【請求項7】
定電流充電の回路手段を有する充電回路が、該充電回路のコイルへの励磁エネルギー蓄積とその放出によるパルス状電圧発生をコイルへの直流電流の供給で制御する制御手段を備えて、
該制御手段による該直流電流の供給制御により発生するパルス状電圧が、定電流充電の充電電圧に周期的に重畳させて二次電池に印加する構成にされていること、を特徴とする二次電池の充電装置。
【請求項8】
直列共振回路を通じて定電流充電する回路手段を有する充電回路が、該直列共振回路のコイルへの励磁エネルギー蓄積とその放出によるパルス状電圧発生をコイルへの直流電流の供給で制御する制御手段を備えて、
該制御手段による該コイルへの直流電流の供給の制御によって発生するパルス状電圧が、定電流充電の充電電圧に周期的に重畳させて二次電池に印加する構成にされていること、を特徴とする二次電池の充電装置。
【請求項9】
前記直列共振回路が、コンデンサとして充電対象の二次電池の電極が用いられている こと、を特徴とする請求項8に記載の二次電池の充電装置。
【請求項10】
前記パルス状電圧が、正の電位の電圧波形の軌跡を有して、少なくとも、重畳対象の充電電圧よりも高い電圧に立ち上がる電圧波形を備えること、を特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の二次電池の充電方法。
【請求項11】
前記充電対象の二次電池が、急速充電若しくは短時間充電が可能な二次電池であること、を特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の二次電池の充電方法。
【請求項12】
前記充電対象の二次電池が、ニッケル・カドミウム電池、ニッケル・水素電池、リチウムイオン電池、ニッケル・鉄及びレドックスフロー電池であること、を特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の二次電池の充電方法。
【請求項13】
前記充電対象の二次電池が、単一の二次電池、複数の単一二次電池の組み合わせから組電池であること、を特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の二次電池の充電方法。
【請求項1】
パルス状電圧が、定電流充電の充電電圧に周期的に重畳されて二次電池に印加されていること、を特徴とする二次電池の充電方法。
【請求項2】
コイルに蓄積された励磁エネルギーの放出により発生するパルス状電圧が、定電流充電の充電電圧に周期的に重畳されて二次電池に印加されていること、を特徴とする二次電池の充電方法。
【請求項3】
直列共振回路のコイルに蓄積された励磁エネルギー放出により発生するパルス状電圧が、定電流充電の充電電圧に周期的に重畳されて二次電池に印加されていること、を特徴とする二次電池の充電方法。
【請求項4】
充電対象の二次電池の電極をコンデンサとする直列共振回路のコイルに蓄積された励磁エネルギー放出により発生するパルス状電圧が、定電流充電の充電電圧に周期的に重畳されて二次電池に印加されていること、を特徴とする二次電池の充電方法。
【請求項5】
電圧波形のアナログ情報をデジタル情報化し、そのデジタル情報によって充電回路で発生させたパルス状電圧が、定電流充電の充電電圧に周期的に重畳されて二次電池に印加されていること、を特徴とする二次電池の充電方法。
【請求項6】
充電回路に充電電流の検出手段を設けて、該検出手段で検出される充電電流の情報と予め内蔵するパルス状電圧の情報とから波形発生器によりパルス状電圧が充電電圧に周期的に重畳された定電流を生成して二次電池に供給すること、を特徴とする二次電池の充電方法。
【請求項7】
定電流充電の回路手段を有する充電回路が、該充電回路のコイルへの励磁エネルギー蓄積とその放出によるパルス状電圧発生をコイルへの直流電流の供給で制御する制御手段を備えて、
該制御手段による該直流電流の供給制御により発生するパルス状電圧が、定電流充電の充電電圧に周期的に重畳させて二次電池に印加する構成にされていること、を特徴とする二次電池の充電装置。
【請求項8】
直列共振回路を通じて定電流充電する回路手段を有する充電回路が、該直列共振回路のコイルへの励磁エネルギー蓄積とその放出によるパルス状電圧発生をコイルへの直流電流の供給で制御する制御手段を備えて、
該制御手段による該コイルへの直流電流の供給の制御によって発生するパルス状電圧が、定電流充電の充電電圧に周期的に重畳させて二次電池に印加する構成にされていること、を特徴とする二次電池の充電装置。
【請求項9】
前記直列共振回路が、コンデンサとして充電対象の二次電池の電極が用いられている こと、を特徴とする請求項8に記載の二次電池の充電装置。
【請求項10】
前記パルス状電圧が、正の電位の電圧波形の軌跡を有して、少なくとも、重畳対象の充電電圧よりも高い電圧に立ち上がる電圧波形を備えること、を特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の二次電池の充電方法。
【請求項11】
前記充電対象の二次電池が、急速充電若しくは短時間充電が可能な二次電池であること、を特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の二次電池の充電方法。
【請求項12】
前記充電対象の二次電池が、ニッケル・カドミウム電池、ニッケル・水素電池、リチウムイオン電池、ニッケル・鉄及びレドックスフロー電池であること、を特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の二次電池の充電方法。
【請求項13】
前記充電対象の二次電池が、単一の二次電池、複数の単一二次電池の組み合わせから組電池であること、を特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の二次電池の充電方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−158129(P2010−158129A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335601(P2008−335601)
【出願日】平成20年12月28日(2008.12.28)
【出願人】(000107619)スターライト工業株式会社 (62)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月28日(2008.12.28)
【出願人】(000107619)スターライト工業株式会社 (62)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]