説明

二次電池システム

【課題】 電池のケース外に排出された有色物質粒子により視界が狭窄されることが抑えられた二次電池システムを提供すること。
【解決手段】 本発明の二次電池システムは、正極および負極が電解液とともにケースに封入された二次電池10と、二次電池10のケース120内の内圧が所定値以上となったときにケース120の外部に放出された有色物質粒子を除去する有色物質除去手段20と、を有することを特徴とする。本発明の二次電池システムは、二次電池から排出された有色ガスから有色物質除去手段で有色物質粒子を除去して二次電池から外部に放出されるガスが無色透明とする。この結果、二次電池システムの外部に放出されるガスが視野の狭窄を生じさせなくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池システムに関し、詳しくは、異常時に二次電池から発せられた有色物質による視界の減少が抑えられた二次電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境汚染が地球規模で大きな問題となっており、特に、ガソリン自動車の排気ガスは大気汚染の汚染源の一つとなっている。このため、排気ガスの排出量を低減させた自動車や排気ガスを出さない自動車の開発が進められている。排気ガスの排出量を低減させた自動車の一つとして、内燃機関と電気モータとを組み合わせたハイブリッド自動車がある。また、排気ガスを出さない自動車の一つとして、電気自動車がある。これらの自動車には二次電池が搭載されており、この二次電池として、鉛電池、Ni−Cd電池、Ni−MH電池、リチウム電池などの二次電池が開発されてきた。中でもリチウム電池は、単電池電圧が4V程度有り、他の電池よりエネルギー密度が高いことが特徴であり、次世代の自動車用の二次電池として注目されている。しかし、リチウム電池は、電池電圧が4V程度あることから電解液には電気分解されないように、他の電池と異なり有機系の電解液が用いられている。
【0003】
リチウム電池は、エネルギー密度が高い為に、過充電、短絡などの誤った使用をすると電解液が分解してガスが発生するとともにこのガス中に正・負極活物質粉塵などからなる有色物質粒子が含まれる有色ガスが電池(ケース)内部から外部に排出されることがある。誤使用時に発生した有色ガスをそのまま車外に放出されるという問題があった。
【0004】
このような課題に対して、たとえば、特許文献1〜3が開示されている。
【0005】
特許文献1は、電池の内部の安全弁と電池蓋の間に吸着材を配設することを提案している。特許文献2は、電池から発生したガスを電池外の酸素が存在しない空間に移動させることを提案している。特許文献3は、イオン交換樹脂を使用して、電池から放出される電解液の酸およびアルカリ成分を補足することを提案している。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、電池内部の限られた空間内部に吸着材を配することから、吸着材を配置するための容積に限界があった。また、吸着材を有効活用する為の空間自由度が限られてしまう為に、吸着可能なガス量に限界があった。
【0007】
また、特許文献2に記載の発明は、定常使用状態では、酸素が存在しない密閉空間の体積を小さくし、ガス発生時に酸素が存在しない密閉空間が圧力によって膨らみガスを移動させるというものであり、結局空間が膨張する為の体積を事前に用意しておく必要があった。すなわち、全体の体格が粗大化するため、自動車等の車両への搭載には問題があった。
【0008】
特許文献3に記載の発明は、リチウム電池から放出されるガスの温度が、500℃以上の高温であるために、イオン交換樹脂では耐熱性が足りずにガス成分を補足しきれないのみならず、放出されるガスの物質が電解液の酸、アルカリ成分だけではなく、正・負極活物質粉塵や正極の集電箔であるアルミニウム、負極の集電箔である銅の粉塵および酸・アルカリでない電解液の分解ガス成分も含まれるため、イオン交換樹脂では補足しきれないという問題があった。
【特許文献1】特開平7−192775号公報
【特許文献2】特開2000−12082号公報
【特許文献3】特開平11−339747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記実状に鑑みてなされたものであり、電池のケース外に排出された有色物質粒子により視界が狭窄されることが抑えられた二次電池システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明者らは二次電池をもつ二次電池システムについて検討を重ねた結果、二次電池から発生した有色物質粒子を除去する有色物質除去手段をもつ二次電池システムとすることで上記課題を解決できることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明の二次電池システムは、正極および負極が電解液とともにケースに封入された二次電池と、二次電池のケース内の内圧が所定値以上となったときにケースの外部に放出された有色物質粒子を除去する有色物質除去手段を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の二次電池システムは、有色物質除去手段を有することで、二次電池から排出される有色物質粒子を除去することができる。なお、本発明の二次電池システムにおいて、有色物質粒子とは二次電池のケースの内部から外部にガスとともに排出される粒子を示す。具体的には、有色物質粒子は、電解液の分解生成物、正・負極活物質粉塵等の物質よりなる粒子を示す。
【0013】
本発明の二次電池システムは、ケースの外部に放出された有色物質粒子を有色物質除去手段に移送する管路をもつことが好ましい。管路をもつことで、二次電池が排出した有色物質粒子を有色物質除去手段に移送することができ、これにより、もれなく有色物質を除去できるようになる。また、二次電池と有色物質除去手段とを管路で接続することで、二次電池と有色物質除去手段とを離して設置できる。すなわち、二次電池と有色物質除去手段を隣接させたり一体にもうける必要がなくなり、本発明の二次電池システムの設計の自由度が向上する。
【0014】
管路は、少なくとも有色物質粒子が放出されるケースの開口部を一端が気密的に被覆することが好ましい。管路の一端が開口部を被覆することで、二次電池が有色物質粒子を排出してもすべての有色物質粒子が管路により有色物質除去手段に移送されることとなり、二次電池システムの外部に有色物質粒子が排出されなくなる。なお、有色物質粒子が放出されるケースの開口部とは、有色物質粒子がケースから放出される部分であればどこでもよい。具体的には、二次電池においてケースにもうけられたガス排出口や、ケースの内圧が上昇してケースが破損して発生した穴をあげることができる。
【0015】
また、管路は、その一端がケースの開口部を気密的に被覆できるのであればその被覆の形態は特に限定されるものではない。すなわち、管路の一端が、その内部に開口部が位置するように周縁部に接続されていても、ケースの全体を収納した状態であっても特に限定されるものではない。
【0016】
ケースの開口部は、ケースにもうけられたガス排出口であることがより好ましい。ガス排出口は、ケースの内圧が所定の値以上に上昇したときに開放され、ケースの破損を抑えるための開口部である。ガス排出口は、安全弁等の安全装置を備えたことが好ましい。ケースにあらかじめガス排出口をもうけておくことで、有色物質粒子を含む有色ガスが発生してケース内の圧力が高くなってもガス排出口が開放されることで、ガス排出口以外の部分から有色物質粒子を含む有色ガスが排出されなくなる。内圧の上昇時にケースの破損を抑えることができる。そして、ケースの開口部がガス排出口となることで、二次電池から排出される有色物質粒子を含む有色ガスのすべてが管路を通って有色物質除去手段に移送されることとなる。
【0017】
有色物質除去手段は、有色ガスから有色物質粒子を除去できる手段であれば特に限定されるものではない。有色物質除去手段は、有色物質粒子を吸着する吸着材をもつ吸着手段、有色物質粒子を濾別するフィルタ、有色物質粒子を捕捉するトラップ、から選ばれる少なくともひとつよりなることが好ましい。
【0018】
吸着手段は、有色物質粒子を吸着する吸着材を有する。すなわち、吸着材の配置された部分に有色物質粒子を含む有色ガスを通過させ、有色物質粒子を吸着材に吸着させ、外部に排出されたときに視界の妨げとなる有色物質粒子の拡散を抑える。吸着手段において吸着材は、有色物質粒子を吸着することができれば特に限定されるものではない。たとえば、活性炭、ゼオライト等の多孔質材や、カーボン、セラミックス、金属等の粒子を用いることができる。吸着材を構成する多孔質材の細孔容積、細孔径等の特性については、吸着すべき有色物質により異なるため一概に決定できるものではない。
【0019】
フィルタは、有色物質粒子を濾別する。すなわち、フィルタに有色物質粒子を含む有色ガスを通過させることで有色物質粒子をフィルタで濾別して除去し、有色ガスから有色物質粒子を取り除く。フィルタは、有色物質粒子を濾別できるものであれば特に限定されるものではない。たとえば、メッシュ状エアフィルタ、DPF等の部材をあげることができる。
【0020】
トラップは、有色物質粒子をトラップすることで有色物質粒子を有色ガスから除去する。トラップは、有色ガス中の有色物質粒子をトラップすることができる手段であれば特に限定されるものではない。たとえば、有色物質粒子を含む有色ガスを液体に透過させてこの液体に有色物質粒子を溶解させたり分散沈降させるトラップや、有色物質粒子を含む有色ガスに遠心力を付与して有色物質粒子を分離捕捉するトラップ等のトラップをあげることができる。
【0021】
有色物質除去手段は、円筒状や角柱状のカラムに充填された吸着材であり、カラムの長さLとカラムの内径Dとの比L/Dが0.5〜20であることが好ましい。有色物質除去手段が活性炭よりなる吸着材をもつカラムよりなり、L/Dが0.5〜20となることで、二次電池からの有色物質粒子を取り除くことができる。特に、L/Dが11以上となると、有色物質粒子を含む有色ガスがカラムを透過するときの圧損が大きくなり、二次電池のケースの内圧が上昇するようになり、場合によってはさらにケースが破裂する。カラムの長さLとカラムの内径Dとの比L/Dは、0.9〜11であることがより好ましい。
【0022】
本発明の二次電池システムを構成する二次電池は、充放電を繰り返すことが可能な二次電池であればその種類が特に限定されるものではなく従来公知の二次電池を用いることができる。たとえば、鉛電池、Ni−Cd電池、Ni−水素電池などの電解液に水溶液を用いた二次電池や、リチウム電池などの電解液に有機電解液を用いた二次電池をあげることができる。エネルギー密度が高いことから、二次電池は非水系二次電池であることが好ましい。
【0023】
また、本発明の二次電池システムを構成する二次電池は、単電池であっても複数の単電池よりなる組電池であってもいずれでもよい。また、一つの電極体がケースに収容された単セル電池であっても、複数の電極体が一つに収容された複数セル電池であってもいずれでもよい。
【0024】
本発明の二次電池システムは、二次電池からの有色物質粒子を含む有色ガスの有色物質粒子を取り除くことで有色ガスを無色透明化できる。ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両へ搭載したときに運転者の視界を有色ガスに含まれる有色物質粒子が妨げなくなっている。すなわち、本発明の二次電池システムは、車載用二次電池システムに用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の二次電池システムは、二次電池から排出された有色ガスから有色物質除去手段で有色物質粒子を除去する。これにより、二次電池から外部に放出されるガスが無色透明となる。この結果、二次電池システムの外部に放出されるガスが視野の狭窄を生じさせなくなっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。本形態の二次電池システムは車両に搭載される二次電池システムであり、二次電池として非水電解液二次電池を、有色物質除去手段にガソリン蒸気を回収する為のキャニスターを利用した。本形態の二次電池システムの構成を図1に示した。なお、以下の本実施形態の二次電池システムの説明は、本発明の二次電池システムと関与しない装置については特に言及しない。特に、ガスが流れる流路にもうけられたバルブ等に関してもその機能が明らかであり、説明しない。
【0027】
本実施形態の二次電池システムは、複数の電池11を組み合わせてなる電池パック10(本発明の二次電池に相当)とキャニスター20とをもつ。
【0028】
電池パック10は、複数の電池11を有している。本形態を示した図1においては、4つの電池11が描かれているが、本発明においては、4つの電池に限定されるものではない。また、電池パック10内には、電池11から排出される有色ガスをまとめる為の排出ガス回収室12がある。排出ガス回収室12は、電池パック10全体がこの機能を果たしてもよい。排出ガス回収室12は、図1には電池パック10内を2分して描かれてあるが、この排出ガス回収室12の数も2分されることに限定されるわけではない。排出ガス回収室12に集まった有色ガスは、排出ガスダクト30を通りキャニスター20に導入される。キャニスター20内には、フィルタ21、トラップ材(活性炭)22が備えられており、有色ガスがキャニスター20を透過すると、有色ガス中に含まれる有色物質粒子がフィルタ21およびトラップ材22に吸着される。そして、有色ガスから有色物質粒子が取り除かれて車外ガス排出口33から車体40の外部に排出される。
【0029】
本実施形態の二次電池システムは、万が一電池パック10の電池11から有色物質粒子を含む有色ガスが発生しても、キャニスター20によって有色物質粒子を除去して車外に放出できるため、視界が遮られることがなくなり安全性が確保できる。
【0030】
ここで、図1に示した形態において、キャニスター20の活性炭が充填された部分の長さLと径Dの比L/Dは、3.5であった。そして、長さLと径Dの比L/Dが0.5〜20の範囲内であれば、この電池パック10を用いたシステムにおける有色物質粒子の除去を行うことができる。これにより、本実施形態の二次電池システムは、電池11から有色ガスが発生しても、キャニスター20を通って有色ガスが排出されることで、電池パック10の内圧の上昇が抑えられ、電池缶の耐圧限度以下となり、電池缶の破裂が防止可能となる効果も発揮する。
【0031】
図1に示した形態では、現在多くの車両で使用されているキャニスター20を有色物質粒子の除去に用いている。ここで、有色物質粒子の除去に用いられる装置は、キャニスター20などの車両に取り付けられている装置ではなく、有色物質粒子を取り除くことができる装置を新たに車両に取り付けて用いてもよい。
【実施例】
【0032】
以下、実施例を用いて本発明を説明する。
【0033】
本発明の実施例として、車両に搭載された、二次電池10と有色物質除去手段20とを排出ガスダクトで接続した二次電池システムを作製した。
【0034】
(実施例1)
本実施例の二次電池システムは、図2にその構成が示された二次電池システムである。
【0035】
二次電池10は、12Ah級のリチウムイオン電池11と、リチウムイオン電池11の一部を被覆するとともに内部に排出ガス回収室12を区画するケース120と、をもつ。なお、リチウムイオン電池11のケースは、耐圧限界が3Mpaであった。
【0036】
有色物質除去手段20は、愛三工業社製ORVRキャニスターである。このキャニスターは、略円筒状の通路内に活性炭22を充填し両端を通気性を持つフィルタ21で封止した構成を有している。活性炭22の充填量は2.1リットルであり、活性炭22が充填された部分の長さL=320mm、内径はD=90mmであり、その比L/Dは、およそ3.5であった。充填された活性炭22は長さ5mm、径2mmの円柱状の造粒炭(MeadWestVaco杜製BAX1500)を用いた。
【0037】
そして、ケース120に区画された排出ガス回収室12と有色物質除去手段20とを排出ガスダクト30で接続した。なお、有色物質除去手段20から排出されるガスは、排出ガスダクト31を通って、車体40の外部に排出される。
【0038】
(実施例2)
本実施例は、活性炭22を粒径約2mmの破砕炭(MeadWestVaco杜製WVA1500)を用いた以外は、実施例1と同様な構成の二次電池システムである。
【0039】
(実施例3)
本実施例は、有色物質除去手段20が、活性炭22の充填量が2.1リットルであり、活性炭22が充填された部分の長さL=460mm、内径はD=73mmとした以外は、実施例1と同様な構成の二次電池システムである。なお、本実施例の有色物質除去手段20のL/Dの比は、6.3である。
【0040】
(実施例4)
本実施例は、活性炭22を粒径約2mmの破砕炭(MeadWestVaco杜製WVA1500)を用いた以外は、実施例3と同様な構成の二次電池システムである。
【0041】
(実施例5)
本実施例は、有色物質除去手段20が、活性炭22の充填量が1リットルであり、活性炭22が充填された部分の長さL=230mm、内径はD=73mmとした以外は、実施例1と同様な構成の二次電池システムである。なお、本実施例の有色物質除去手段20のL/Dの比は、3.2である。
【0042】
(実施例6)
本実施例は、活性炭22を粒径約2mmの破砕炭(MeadWestVaco杜製WVA1500)を用いた以外は、実施例5と同様な構成の二次電池システムである。
【0043】
(実施例7)
本実施例は、有色物質除去手段20が、活性炭22の充填量が1リットルであり、活性炭22が充填された部分の長さL=330mm、内径はD=62mmとした以外は、実施例1と同様な構成の二次電池システムである。なお、本実施例の有色物質除去手段20のL/Dの比は、5.3である。
【0044】
(実施例8)
本実施例は、活性炭22を粒径約2mmの破砕炭(MeadWestVaco杜製WVA1500)を用いた以外は、実施例7と同様な構成の二次電池システムである。
【0045】
(実施例9)
本実施例は、有色物質除去手段20が、活性炭22の充填量が1リットルであり、活性炭22が充填された部分の長さL=520mm、内径はD=50mmとした以外は、実施例1と同様な構成の二次電池システムである。なお、本実施例の有色物質除去手段20のL/Dの比は、10.5である。
【0046】
(実施例10)
本実施例は、活性炭22を粒径約2mmの破砕炭(MeadWestVaco杜製WVA1500)を用いた以外は、実施例9と同様な構成の二次電池システムである。
【0047】
(実施例11)
本実施例は、有色物質除去手段20が、活性炭22の充填量が0.25リットルであり、活性炭22が充填された部分の長さL=300mm、内径はD=29mmとした以外は、実施例1と同様な構成の二次電池システムである。なお、本実施例の有色物質除去手段20のL/Dの比は、12.4である。
【0048】
(評価)
上記各実施例の二次電池システムの評価を行った。具体的には、リチウムイオン電池の誤使用を想定して、リチウムイオン電池11に50Aの電流を連続通電して過充電をすることで発煙させて、この時に発生する有色物質粒子を含む有色ガスを有色物質除去手段20に透過させ、車体40の外部に排出されるガスを観察し評価した。排出されるガスの観察は、カメラモニターを通して目視により効果の程度を確認した。
【0049】
このとき、圧カセンサーを二次電池10と排出ガスダクト30の接続部に取り付け、二次電池10の内圧を測定した。このときの有色物質除去手段20のL/D比とケース12内の内圧の関係を図3に示した。
【0050】
また、比較例として、有色物質除去手段20を持たない以外は実施例1と同様な構成の二次電池システムも作製し、同様な評価を行った。比較例の二次電池システムに上記過充電をすると、有色物質粒子を含む有色ガスが多量に排出された。
【0051】
実施例1の二次電池システムに上記過充電をすると、比較例において見られたような多量の有色ガス及び有色物質粒子は視認されず、有色物質粒子を吸着し、かなりのトラップ効果が見出せた。但し、全くの無煙では無く僅かばかりの煙は確認された。
【0052】
実施例2の二次電池システムにおいては、有色物質除去手段20からは全く有色ガス及び有色物質粒子の排出が認められなかった。つまり、実施例1よりも高いトラップ効果があることがわかる。
【0053】
実施例3の二次電池システムにおいては、有色物質除去手段20からは全く有色ガス及び有色物質粒子の排出が認められなかった。また、排出ガス回収室120の内圧は、0.044Mpaとなり、つまり、実施例1よりも高いトラップ効果があることがわかる。
【0054】
実施例4の二次電池システムにおいては、有色物質除去手段20からは全く有色ガス及び有色物質粒子の排出が認められなかった。また、排出ガス回収室120の内圧は、0.068Mpaとなり、つまり、実施例1よりも高いトラップ効果があることがわかる。
【0055】
実施例5の二次電池システムにおいては、有色物質除去手段20からは全くの無煙では無く僅かばかりの煙(有色物質粒子を含む有色ガス)は確認された。また、排出ガス回収室120の内圧は、0.070Mpaとなり、つまり、実施例1よりもかなり高いトラップ効果があることがわかる。
【0056】
実施例6の二次電池システムにおいては、有色物質除去手段20からは全くの無煙では無く僅かばかりの煙(有色物質粒子を含む有色ガス)は確認された。また、排出ガス回収室120の内圧は、0.280Mpaとなり、つまり、実施例1よりもかなり高いトラップ効果があることがわかる。
【0057】
実施例7の二次電池システムにおいては、有色物質除去手段20からは全くの無煙では無く僅かばかりの煙(有色物質粒子を含む有色ガス)は確認された。それでも、実施例5より煙の排出量は少なかった。また、排出ガス回収室120の内圧は、0.486Mpaとなり、つまり、実施例1よりもかなり高いトラップ効果があることがわかる。
【0058】
実施例8の二次電池システムにおいては、有色物質除去手段20からは全くの無煙では無く僅かばかりの煙(有色物質粒子を含む有色ガス)は確認された。また、排出ガス回収室120の内圧は、0.378Mpaとなり、つまり、実施例1よりもかなり高いトラップ効果があることがわかる。
【0059】
実施例9の二次電池システムにおいては、有色物質除去手段20からは全くの無煙では無く僅かばかりの煙(有色物質粒子を含む有色ガス)は確認された。それでも、実施例7より煙の排出量は少なかった。しかし、有色物質除去手段20の内圧があがり、二次電池10と排出ガスダクト30の接合部から若干の煙が漏出した。また、排出ガス回収室120の内圧は、0.468Mpaとなり、つまり、実施例1よりもかなり高いトラップ効果があることがわかる。
【0060】
実施例10の二次電池システムにおいては、有色物質除去手段20からは全くの無煙では無く僅かばかりの煙(有色物質粒子を含む有色ガス)は確認された。また、排出ガス回収室120の内圧は、0.470Mpaとなり、つまり、実施例1よりもかなり高いトラップ効果があることがわかる。
【0061】
実施例11の二次電池システムに上記過充電をすると、リチウムイオン電池11のケース内の内圧は3Mpa以上と電池缶の耐圧限度以上の圧力となり電池11の缶が破裂した。しかしながら、リチウムイオン電池11のケースが破裂する前には、有色物質除去手段20からは全くの無煙では無く僅かばかりの煙(有色物質粒子を含む有色ガス)は確認された。つまり、トラップ効果をもつことがわかる。
【0062】
(実施例12)
本実施例の二次電池システムは、図4にその構成が示された二次電池システムである。
【0063】
二次電池10は、実施例1と同様に、12Ah級のリチウムイオン電池11と、リチウムイオン電池11の一部を被覆するとともに内部に排出ガス回収室120を区画するケース12と、をもつ。なお、リチウムイオン電池11のケースは、耐圧限界が3Mpaであった。
【0064】
有色物質除去手段20は、8リットルの水24を貯留したタンク23と、吸着材を持つ吸着手段25と、をもつ。
【0065】
排出ガスダクト30は、その先端部が水24に浸漬した状態で配置されている。つまり、タンク23に導入されるガスは、水24内に導入される。そして、水24を通過したガスは、排出ガスダクト32を通って吸着手段25に導入される。タンク23は、排出ガスダクト30,32を通過する以外でガスが移動しないように密閉されている。
【0066】
吸着手段25は、筒状の通路内に吸着材26を充填し両端を通気性を持つフィルタ21で封止した構成を有している。この吸着材26は、活性炭(BC−9、キャタラー製)を14mlとモレキュラーシーブ13X、関東化学製を18m1を混合して製造された。吸着手段25の吸着材26が充填された部分の長さL=29mm、内径はD=32mmであり、その比L/Dは、0.90であった。
【0067】
そして、吸着手段25を透過したガスは、排出ガスダクト31を通って車体40の外部に排出される。
【0068】
本実施例の二次電池システムに上記した過充電による発煙を生じさせたところ、有色物質除去手段20からは全くの無煙では無く僅かばかりの煙(有色物質粒子を含む有色ガス)は確認された。そして、実施例1と同等程度の高いトラップ効果があることがわかる。
【0069】
上記各実施例のように、有色物質除去手段20をもつことで、リチウムイオン電池11から有色物質粒子を含む有色ガスが発生しても、有色物質除去手段20によって有色物質粒子を除去して車外に放出できるため、視界が遮られることがなくなるため安全性の高い二次電池システムを新たに提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の二次電池システムの形態例の構成を示した図である。
【図2】実施例1の二次電池システムの構成を示した図である。
【図3】実施例1〜11の二次電池システムのL/D比と内圧の関係を示した図である。
【図4】実施例12の二次電池システムの構成を示した図である。
【符号の説明】
【0071】
10:電池パック 11:電池、リチウム二次電池
12:排出ガス回収室 120:ケース
20:有色物質除去手段、キャニスター
21:フィルタ 22:活性炭
23:タンク 24:水
25:吸着手段
30,31,32:排出ガスダクト
33:車外ガス排出口
40:車体 41:燃料タンク
42:エンジン 43:空気吸入口
44:バキュームスイッチングバルブ
45:エアフィルタ
50:バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極が電解液とともにケースに封入された二次電池と、
該二次電池の該ケース内の内圧が所定値以上となったときに該ケースの外部に放出された有色物質粒子を除去する有色物質除去手段と、
を有することを特徴とする二次電池システム。
【請求項2】
前記ケースの外部に放出された前記有色物質粒子を前記有色物質除去手段に移送する管路をもつ請求項1記載の二次電池システム。
【請求項3】
前記管路は、少なくとも前記有色物質粒子が放出される前記ケースの開口部を一端が気密的に被覆する請求項2記載の二次電池システム。
【請求項4】
前記ケースの前記開口部は、該ケースにもうけられたガス排出口である請求項3記載の二次電池システム。
【請求項5】
前記有色物質除去手段は、前記有色物質を吸着する吸着材をもつ吸着手段、該有色物質を濾別するフィルタ、該有色物質を捕捉するトラップ、から選ばれる少なくともひとつよりなる請求項1記載の二次電池システム。
【請求項6】
前記二次電池は、非水系二次電池である請求項1記載の二次電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−18983(P2007−18983A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−201872(P2005−201872)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】