説明

二次電池及び該二次電池に用いる電解質、電極活物質

【課題】 安全性、信頼性、電流特性に優れ、長寿命で高容量のプロトン系固体二次電池の提供。優れた特性を有する該二次電池用プロトン伝導性高分子固体電解質及び電極の提供。
【解決手段】 電極活物質が、スルホン酸側鎖を有する高分子、ポリピリジン骨格を有する高分子、ポリピリミジン骨格を有する高分子、ヒドロキノン骨格を有する高分子及び/またはマンガン酸化物であり、電解質がプロトン伝導性高分子固体電解質であることを特徴とするプロトン系固体二次電池。特定の熱及び活性光線重合性にすぐれた化合物を重合することによって得られる高分子を含むプロトン伝導性高分子固体電解質。前記電極活物質からなる電極。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プロトン挿入放出による充放電反応を行なう正極活物質及び/または負極活物質、プロトン伝導性高分子固体電解質を用いる、安全性、信頼性にすぐれ、取り出し電流が大きく、サイクル寿命に優れた二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】アイオニクス分野でのダウンサイジング、全固体化という流れの中で、従来の電解質溶液にかわる新しいイオン伝導体として、全固体一次電池や二次電池及び電気二重層コンデンサへの固体電解質の応用が盛んに試みられている。現在の電解質溶液を用いた電池では、部品外部への液漏れあるいは電極物質の溶出などが発生しやすいために長期信頼性に問題がある。それに対して、固体電解質を用いた製品はそのような問題がなく、また薄型化することも容易である。さらに固体電解質は耐熱性にも優れており、電池などの製品の作製工程においても有利である。現在の電解質溶液を用いた電池の中でリチウム一次電池やリチウム(イオン)二次電池はその高エネルギー密度という特徴から最近急速に小型携帯機器に搭載され、急激な伸びを示している。例えば、LiCoO2 、LiNiO2 、LiMnO2 、MoS2 等の金属酸化物、金属硫化物を正極に用い、リチウム、リチウム合金、リチウムイオンを吸蔵放出できる炭素材料や無機化合物を負極に用い、有機電解液を用いたリチウム二次電池が多く研究されている。「ジャーナル・オブ・エレクトロケミカル・ソサイエティ (J. Electrochem. Soc.) 、第138巻(No.3)、665頁、1991年」には、MnO2 あるいはNiO2 を正極とするリチウム電池が報告されている。
【0003】また、導電性高分子を電極活物質として用いる電池についての報告も多く、例えば、ポリアニリン類を正極に用いたリチウム二次電池は、例えば「第27回電池討論会、3A05L及び3A06L、1986年」で報告されているように、ブリヂストン社及びセイコー社により、バックアップ電源用途のコイン型電池として既に上市されている。またポリアニリンは、高容量で柔軟性の優れた正極活物質として注目されている。また、ポリアニリンはプロトンによる酸化還元も可能で、酸性水溶液を用いる電池の正極活物質として適用可能であることも提言されている(Bull.Chem.Soc.Jpn.57,2254ページ、1984年) 。しかしながら、これらリチウム系電池は水分や空気に活性で酸化されやすいリチウム及び/またはリチウム系化合物を用いているため、短絡、高温、液もれ、開封時等の安全性、信頼性が心配され、セパレータの工夫、PTC素子の組み込み、封止法等種々の方法で安全対策が講じられている。これら安全性や信頼性改善を目的として、有機電解液をリチウムイオン伝導性高分子固体電解質に変える検討が最近盛んに試みられ、一部、上市されている。高分子を主成分とした固体電解質を使用したものは、無機物に比較して、電池の柔軟性が増し、種々の形状に加工できるというメリットもある。しかしながら、これまで検討されてきたものは、高分子固体電解質のリチウムイオン伝導度が低いため、取り出し電流が小さいという問題を残していた。
【0004】これら高分子固体電解質の例として、「ブリティッシュ・ポリマー・ジャーナル(Br. Polym. J. ),第319巻、137頁、1975年」には、ポリエチレンオキサイドと無機アルカリ金属塩との複合物がイオン伝導性を示すことが記載されているが、その室温でのイオン伝導度は10-7S/cmと低い。最近、オリゴオキシエチレンを側鎖に導入した櫛型高分子が、イオン伝導性を担っているオキシエチレン鎖の熱運動性を高め、イオン伝導性が改良されることが多数報告されている。例えば、「ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリイ(J. Phys. Chem.)、第89巻、987頁、1984年」には、ポリメタクリル酸の側鎖にオリゴオキシエチレンを付加したものにアルカリ金属塩を複合化した例が記載されている。米国特許4357401号には、ヘテロ原子を含有する架橋ポリマーとイオン化可能な塩からなる高分子固体電解質が結晶性が低下し、ガラス転移点が低く、イオン伝導度が改善されることが記載されているが、10-5S/cm程度とまだ不十分であった。
【0005】一般的に検討されているリチウムイオン伝導性高分子固体電解質のイオン伝導度は、室温における値で10-4〜10-5S/cm位まで改善されたものの、液体系イオン伝導性物質に比較するとなお二桁以上低いレベルである。また、0℃以下の低温になると、一層極端にイオン伝導性が低下する。J.Appl.Electrochem.,No.5,63〜69ページ(1975年)に記載されているように、ポリアクリロニトリルやポリフッ化ビニリデンゲル等の熱可塑性高分子及び/または架橋高分子に溶媒及び電解質を加えたいわゆるリチウムイオン伝導性高分子ゲル電解質は高イオン伝導度となることが報告されている。また、特公昭58−36828号には、ポリメタクリル酸アルキルエステルに溶媒及び電解質を加えた同様の高分子ゲル電解質は高イオン伝導度となることが報告されている。しかしながらこれら高分子ゲル電解質は高イオン伝導度であるが、流動性を付与することとなるため、完全な固体としては取り扱えず、膜強度や成膜性に劣り、電池に応用すると短絡が起こり易いうえ、液体系イオン伝導性物質同様に封止上の問題が発生する。
【0006】一方、米国特許4792504号において、ポリ酸化エチレンの連続ネットワーク中に金属塩及び非プロトン性溶剤からなる電解液が含浸された架橋系高分子固体電解質を用いることにより、イオン伝導度が改善されることが提案されている。また、米国特許4830939号や特開昭58−82477号、特開昭63−94563号においても(メタ)アクリレート系モノマー、スチレン誘導体等のビニル化合物と有機電解液の混合物を適当な開始剤の存在下で活性光線で重合して高分子固体電解質とすることが報告されている。しかしながらこれら高分子固体電解質は溶剤が添加されているが、イオン伝導度は10-4S/cmとまだ不十分で溶剤が多量に添加されたため、膜強度がさらに低下するという問題が生じた。
【0007】これらの問題を解決するために、本発明者らはウレタン結合を有するオキシアルキレン基を含有する(メタ)アクリレートモノマー混合物を用いた重合体及び電解質からなる複合体を用いたイオン伝導性の高分子固体電解質(特開平6−187822号)を提案した。この高分子固体電解質のイオン伝導度は、溶媒未添加で10-4S/cm(室温)であり高いレベルであるが、さらに溶媒を添加すると、室温またはそれより低温であっても10-3S/cm以上となり、また膜質も自立膜として得られる程度に改善された。また、このモノマーは重合性が良好で、電池や電気二重層コンデンサに応用する場合、モノマー状態で電池や電気二重層コンデンサに組込んだ後に加熱や活性光線で重合固体化し、電極との密着性の良好な高分子固体電解質ができるという加工上のメリットもあった。しかしながらこれらリチウムイオン伝導性高分子固体電解質を用いた電池はイオン伝導性がまだ不十分で取り出し電流が低い。また、固体化したとはいえ、リチウム及び/またはリチウム系化合物を用いている為、上述した安全性、信頼性はまだ充分とは言えない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、安全性、信頼性、電流特性に優れ、長寿命で高容量のプロトン系固体二次電池を提供することを目的とする。また、該二次電池に適用した場合に、優れた特性を有するプロトン伝導性高分子固体電解質及び電極を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、電極活物質として、スルホン酸側鎖を有する高分子及び/またはポリピリジン骨格を有する高分子及び/またはポリピリミジン骨格を有する高分子及び/またはポリキノン骨格を有する高分子及び/またはマンガン酸化物がプロトンの挿入、放出反応容量が大きく、これらとプロトン伝導性高分子固体電解質とから得られるプロトン系固体二次電池が安全性、信頼性、電流特性に優れ、長寿命、高容量で薄型化、チップ化等が可能な形状自由性のある二次電池であることを見出した。また本発明者らは特定の熱及び活性光線重合性にすぐれた化合物を重合することによって得られる高分子を含むプロトン伝導性高分子固体電解質が加工性、機械的強度にすぐれ、高イオン伝導度で耐久性が良好であり、本発明のプロトン系固体二次電池に適していることを見出した。さらに本発明者らは該熱及び活性光線重合性にすぐれた化合物を重合することによって得られる高分子を含むプロトン伝導性高分子固体電解質とスルホン酸側鎖を有する高分子及び/またはポリピリジン骨格を有する高分子及び/またはポリピリミジン骨格を有する高分子及び/またはポリキノン骨格を有する高分子及び/またはマンガン酸化物から選ばれる電極活物質とを複合することにより、高容量、長寿命で加工性に優れた電極が得られることを見出した。
【0010】即ち本発明は以下のものを開発することにより、上記目的を達成した。
[1] 正極活物質及び/または負極活物質がプロトン挿入放出による充放電反応を行なう材料であり、電解質がプロトン伝導性高分子固体電解質であることを特徴とする二次電池。
[2] 正極活物質及び/または負極活物質に用いる材料がスルホン酸側鎖を有する高分子であることを特徴とする前記[1]記載の二次電池。
[3] 正極活物質及び/または負極活物質に用いる材料がポリピリジン骨格及び/またはポリピリミジン骨格を有する高分子であることを特徴とする前記[1]記載の二次電池。
[4] 正極活物質及び/または負極活物質に用いる材料がポリキノン骨格を有する高分子であることを特徴とする前記[1]記載の二次電池。
[5] 正極活物質及び/または負極活物質に用いる材料がマンガン酸化物であることを特徴とする前記[1]記載の二次電池。
[6] 電解質がオキシアルキレン及び/またはウレタン構造を有する高分子を含むプロトン伝導性高分子固体電解質であることを特徴とする前記[1]記載の二次電池。
【0011】[7] 一般式(1)または一般式(2)
【化3】


【化4】


[式中、R1 、R2 は水素またはアルキル基を表し、R3 は炭素数10以下の2価の基を表わす。該2価の基はヘテロ原子を含んでいてもよく、直鎖状、分岐状、環状構造のいずれからなるものでもよい。xは0または1〜10の数値を示す。但し、同一分子中の複数個の上記一般式(1)または(2)で表される重合性官能基中のR1 、R2 、R3 及びxの値は、それぞれ独立であり、同じである必要はない。]で表わされる重合性官能基を有する熱及び/または活性光線重合性化合物を重合することによって得られる少なくとも一種の高分子、少なくとも一種のプロトン酸を含むことを特徴とするプロトン伝導性高分子固体電解質。
【0012】[8] 少なくとも一種のプロトン酸が有機スルホン酸系化合物及び/またはリン酸系化合物及び/またはホウ酸系化合物であることを特徴とする前記[7]記載のプロトン伝導性高分子固体電解質。
[9] 少なくとも一種の可塑剤を含むことを特徴とする前記[7]または[8]に記載のプロトン伝導性高分子固体電解質。
[10] 少なくとも一種の可塑剤がヘテロ原子含有極性有機溶媒であることを特徴とする前記[9]記載のプロトン伝導性高分子固体電解質。
[11] 少なくとも一種の無機微粒子を含むことを特徴とする前記[7]〜[10]のいずれかに記載のプロトン伝導性高分子固体電解質。
【0013】[12] 少なくとも一種の無機微粒子がBET 比表面積10m2 以上、結晶粒子最大径1μm以下のシリカ、アルミナ、チタニア、もしくはマグネシア、またはこれらの複合酸化物であり、その含有量が1〜50wt% であることを特徴とする前記[11]記載のプロトン伝導性高分子固体電解質。
[13] 電解質が前記[7]〜[12]のいずれか記載のプロトン伝導性高分子固体電解質であることを特徴とする前記[1]記載の二次電池。
[14] 前記[7]〜[10]のいずれか記載のプロトン伝導性高分子固体電解質と、スルホン酸側鎖を有する高分子及び/またはポリピリジン骨格を有する高分子及び/またはポリピリミジン骨格を有する高分子及び/またはポリキノン骨格を有する高分子及び/またはマンガン酸化物からなる電極活物質との複合物であることを特徴とする電極。
【0014】以下に本発明を詳細に説明する。本発明のプロトン伝導性高分子固体電解質の主要構成成分である高分子は非電子伝導性で各種極性溶媒を吸液、保持できるものでなければならない。そのような高分子としては、ナフィオン、フッ素化ポリエーテル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキルイミン、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリフォスファゼン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリシロキサン等のヘテロ原子を有する極性の熱可塑性高分子や架橋高分子が挙げられる。特に架橋高分子が溶媒吸液後の強度が高く、溶媒の保持力も高く、さらに粘弾性体であることから、本発明の複合電解質用高分子として適している。ここで表す架橋には、架橋鎖が共有結合で形成されている以外に、側鎖がイオン結合や水素結合等で架橋されているもの、各種添加物を介して物理架橋されているものも含んでいる。上記高分子の中では安定性の面から、ナフィオン、フッ素化ポリエーテル、ポリフッ化ビニリデン等のフルオロカーボン基を分子構造内に有するものが好ましい。また、ポリアルキレンオキシド、ポリウレタン等のオキシアルキレンやウレタン構造を分子構造内に含むものも、各種極性溶媒との相溶性が良好で,電気化学的安定性が良好であり好ましい。
【0015】また、上記高分子の中で、一般式(1)または(2)で表わされる重合性官能基
【化5】


【化6】


[式中、R1 、R2 は水素またはアルキル基を表し、R3 は炭素数10以下の2価の基を表わす。該2価の基はヘテロ原子を含んでいてもよく、直鎖状、分岐状、環状構造のいずれからなるものでもよい。xは0または1〜10の数値を示す。但し、同一分子中の複数個の上記一般式(1)または(2)で表される重合性官能基中のR1 、R2 、R3 及びxの値は、それぞれ独立であり、同じである必要はない。]を有する少なくとも一種の重合性化合物を加熱及び/または活性光線照射により硬化させて得られる高分子が、溶媒を含んだ状態で成膜しやすく、膜強度が良好であり好ましい。
【0016】その中でも、下記一般式(3)または(4)
【化7】


【化8】


[式中、R1 、R2 、R3 、xは、一般式(1)または(2)と同じ。R4 、R5 は、オキシアルキレン基及び/またはフルオロカーボン、オキシフルオロカーボンを含む2価の基である。]で表される重合性官能基を有する少なくとも一種の重合性化合物を加熱及び/または活性光線照射により硬化させて得られる高分子が特に好ましい。
【0017】本発明のプロトン伝導性高分子固体電解質に用いられる一般式(1)で表される官能基を有する化合物を合成する方法に特に限定はないが、例えば、酸クロライドと末端にヒドロキシル基を有する化合物、例えばオリゴオキシアルキレンオールとを反応させることにより容易に得られる。例えば、一般式(1)で表される官能基を1つ有する化合物は、酸クロライドとモノアルキルオリゴオキシアルキレングリコールとを以下の様な反応式で、1:1のモル比で反応させることにより、容易に得られる。
CH2 =C(R1 )COCl + HO( CH2 CH( R6)O)m7→ CH2 =C(R1 )COO( CH2 CH( R6)O)m7[ただし、式中R1 は一般式(1)と同じ。R6 はH、または炭素数10以下のアルキル基。R7 は炭素数10以下のアルキル基。]
【0018】例えば、一般式(1)で表わされる官能基を2つ有する化合物は、酸クロライドとオリゴオキシアルキレングリコールとを以下の様な反応式で、2:1のモル比で反応させることにより、容易に得られる。
2CH2 =C(R1 )COCl + HO( CH2 CH( R6)O)mH→CH2 =C(R1 )COO( CH2 CH( R6)O)mCO(R1 )C=CH2[ただし、式中R1 は一般式(1)と同じ。R6 はH、または炭素数10以下のアルキル基。]
【0019】本発明のプロトン伝導性高分子固体電解質に用いられる一般式(2)で表される重合性官能基を有する化合物を合成する方法には特に限定はないが、例えば、CH2=C(R2 )CO[OR3x NCOとオリゴアルキレングリコールとの反応により得ることができる(ただし、式中R2 、R3 、xはそれぞれ一般式(2)と同じ。)。具体的方法として一つのエチレン性不飽和基を有する化合物は、例えば、メタクリロイルイソシアナート系化合物(以下MI類と略記する。)あるいはアクリロイルイソシアナート系化合物(以下AI類と略記する。)とモノアルキルオリゴアルキレングリコールとを、下記の反応式CH2 =C(R2 )CO[OR3x NCO+HO( CH2 CH( R6)O)m7→CH2 =C(R2 )CO[OR3x NHCOO( CH2 CH( R6)O)m7[ただし、式中R2 、R3 、xは一般式(2)と同じ。R6 はH、または炭素数10以下のアルキル基、R7 は炭素数10以下のアルキル基である。]のようにして1:1のモル比で反応させることにより、容易に得られる。
【0020】また二つのエチレン性不飽和基を有する化合物は、例えば、MI類あるいはAI類とオリゴアルキレングリコールとを、2:1のモル比で反応させることにより、容易に得られる。また、三つのエチレン性不飽和基を有する化合物は、例えばMI類及び/またはAI類と、グリセリン等の3価アルコールにアルキレンオキサイドを付加重合させたトリオールとを、3:1のモル比で反応させることにより、容易に得られる。また、四つのエチレン性不飽和基を有する化合物は、例えばMI類及び/またはAI類と、ペンタエリスリトール等の4価アルコールにアルキレンオキサイドを付加重合させたテトラオールとを4:1のモル比で反応させることにより、容易に得られる。
【0021】また、五つのエチレン性不飽和基を有する化合物は、例えばMI類及び/またはAI類と、α−D−グルコピラノースにアルキレンオキサイドを付加重合させたペンタオールとを、5:1のモル比で反応させることにより、容易に得られる。また、六つのエチレン性不飽和基を有する化合物は、例えばMI類及び/またはAI類と、マンニットにアルキレンオキサイドを付加重合させたヘキサオールとを6:1のモル比で反応させることにより、容易に得られる。フルオロカーボン基及び/またはオキシフルオロカーボン基を有する一般式(1)及び/または(2)で表される重合性官能基を有する化合物を合成する方法に特に限定はないが、例えば、具体的方法として重合性官能基を一つ有する化合物は、MI類あるいはAI類と2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1- ブタノールのようなモノオールとを以下の様な反応式で1:1のモル比で反応させることにより、容易に得られる。
CH2=C(R1 )COO( CH2)2 NCO + CF3(CF2)2 CH2 OH→ CH2=C(R1 )COO( CH2)2 NHCOOCH2(CF2)2 CF3
【0022】また重合性官能基を2つ有する化合物は、例えば、MI類あるいはAI類と2,2,3,3-テトラフルオロ-1,4- ブタンジオールのようなジオールとを以下の様な反応式で、2:1のモル比で反応させることにより、容易に得られる。
2CH2=C(R1 )COO( CH2)2 NCO+HOCH2(CF2)2 CH2 OH→ {CH2=C(R1 )COO( CH2)2 NHCOOCH2 CF2 −}2
【0023】一般式(1)あるいは(2)で表される重合性官能基を1つしか有さない化合物を重合してできる高分子は、架橋構造を有しておらず、膜強度不足のため、薄膜にすると短絡する危険が大きく、単独では用いない方がよい。従って、一般式(1)あるいは(2)で表される重合性官能基を2つ以上有する化合物と共重合し、架橋させた方が好ましい。プロトン伝導性高分子固体電解質の薄膜強度を考慮すると、1分子中に含まれる一般式(1)あるいは(2)で表される重合性官能基の数は、3つ以上がより好ましい。また前記一般式(1)で表される重合性官能基を有する化合物の中で、一般式(2)で表される重合性官能基を有する化合物から得られる高分子がウレタン基を含んでおり、重合性が良好で、薄膜にしたときの膜強度も大きいので好ましい。
【0024】本発明のプロトン伝導性高分子固体電解質の構成成分として好ましい高分子は、一般式(1)または一般式(2)で表される重合性官能基を有する化合物の少なくとも一種を重合し、あるいは該化合物を共重合成分として重合することにより得られる。本発明のプロトン伝導性高分子固体電解質に用いる高分子は、前記一般式(1)または一般式(2)で表される重合性官能基を有する化合物の単独重合体であっても、該カテゴリーに属する2種以上の共重合体であっても、あるいは該化合物の少なくとも一種と他の重合性化合物との共重合体であってもよい。
【0025】前記一般式(1)または一般式(2)で表される重合性官能基を有する化合物と共重合可能な他の重合性化合物としては、特に制限はない。例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、アクリロイルモルホリン、メタクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系化合物、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系化合物、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド等のN−ビニルアミド系化合物、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテルを挙げることができる。重合は、重合性化合物中のアクリロイル基もしくはメタクリロイル基の重合性を利用した一般的な方法を採用することができる。即ち、これらモノマー単独、あるいはこれらモノマーと他の前記の共重合可能な重合性化合物の混合物に、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド等のラジカル重合触媒、CF3 COOH等のプロトン酸、BF3 、AlCl3 等のルイス酸等のカチオン重合触媒、あるいはブチルリチウム、ナトリウムナフタレン、リチウムアルコキシド等のアニオン重合触媒を用いて、ラジカル重合、カチオン重合あるいはアニオン重合させることができる。また、重合性化合物によっては無酸素状態で、加熱のみでラジカル重合することもできる。
【0026】本発明のプロトン伝導性高分子固体電解質に用いられる高分子はオキシアルキレン、オキシフルオロカーボン構造を含んでいるものが好ましいが、その場合のオキシアルキレン鎖数、オキシフルオロカーボン鎖数(すなわち前記一般式(3)におけるR4 中、あるいは前記一般式(4)におけるR5 中に含まれるオキシアルキレン基、オキシフルオロカーボン基の繰返し数nは1〜1000の範囲が好ましく、5〜100の範囲が特に好ましい。
【0027】本発明のプロトン伝導性高分子固体電解質に用いる高分子は、前記のように、一般式(1)または(2)で表される官能基を有する化合物の単独重合体であっても、該カテゴリーに属する2種以上の共重合体であっても、あるいは該化合物の少なくとも一種と他の重合性化合物との共重合体であってもよい。また、本発明のプロトン伝導性高分子固体電解質に用いる高分子は、前記一般式(1)または(2)で表される官能基を有する化合物の少なくとも一種から得られる重合体及び/または該化合物を共重合成分とする共重合体と他の高分子との混合物であってもよい。例えば、前記一般式(1)または(2)で表される官能基を有する化合物の少なくとも一種から得られる重合体及び/または該化合物を共重合成分とする共重合体と、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリメタクリル(またはアクリル)酸エステル類、ポリスチレン、ポリホスファゼン類、ポリシロキサンあるいはポリシラン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のポリマーとの混合物を本発明のプロトン伝導性高分子固体電解質に用いてもよい。
【0028】本発明のプロトン伝導性高分子固体電解質に少なくとも一種の極性溶媒が含浸されることにより、イオン伝導度が向上し好ましい。使用できる極性溶媒としては、本発明のプロトン伝導性高分子固体電解質に用いる高分子との相溶性が良好で、沸点が高く、電解質塩の溶解性が高く、使用する電池に悪影響を与えないものが良い。即ち、誘電率が大きく、沸点が60℃以上であり、電気化学的安定範囲が広い化合物が適しており、水やアルコール等のヒドロキシ含有化合物は電気化学的安定範囲が狭く、水素や酸素が発生しやすいので好ましくない。従って、非水系極性有機溶媒が好ましく、そのような溶媒としては、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のオリゴエーテル類、ベンゾニトリル、トルニトリル、アセトニトリル等のニトリル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、N−ビニルピロリドン等の含窒素極性溶媒、スルホラン等の含硫黄極性溶媒、リン酸エステル類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類等が挙げられる。この中で、オリゴエーテル類及びニトリル類、含窒素極性溶媒がプロトン酸塩の溶解性が高く、電気化学的安定範囲が広く好ましく、含窒素極性溶媒が特に好ましい。
【0029】プロトン伝導性高分子固体電解質中の溶媒の含有量が多いほど、プロトン酸塩の解離またはイオンの拡散が容易で、またその場合のイオン伝導度は高くなるが、機械的強度が低下する。好ましい添加量としては、本発明のプロトン伝導性高分子固体電解質中の高分子重量の0.5倍から12倍量以下で、1倍量から8倍量以下が特に好ましい。本発明のプロトン伝導性高分子固体電解質に用いるプロトン酸塩の複合比は、高分子の重量に対し、0.1〜50重量%が好ましく、1〜30重量%が特に好ましい。複合に用いる電解質塩が50重量%以上の比率で存在すると、プロトンの移動が大きく阻害され、逆に0.1重量%以下の比率では、プロトンの絶対量が不足となってイオン伝導度が小さくなる。複合に用いるプロトン酸塩の種類は特に限定されるものではないが、上記非水系極性有機溶媒や高分子への溶解性が良好で、解離度の高いものが好ましい。そのような例としてパラトルエンスルホン酸等の有機酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等の含フッ素有機酸、ホウ酸類、リン酸類が挙げられる。
【0030】本発明のプロトン伝導性高分子固体電解質には各種無機微粒子が添加された方が好ましい。そうすることにより強度、膜厚均一性が改善するばかりでなく、無機微粒子と高分子間に微細な空孔が生じることになり、電解液中に浸漬した場合には空孔を通じてセパレーター内にフリーの電解液が分散することになり、強度アップを損ねることなく、逆にイオン伝導度、移動度を増加させることもできる。また、無機微粒子を添加することにより、重合性組成物の粘度が上昇し、高分子と溶媒の相溶性が不十分な場合にもその分離を抑える効果も現われる。使用する無機微粒子としては非電子伝導性、電気化学的に安定なものが選ばれる。また、イオン伝導性であればさらに好ましい。具体的にはα、β、γ−アルミナ、シリカ、チタニア、マグネシア、及びこれらの複合酸化物、ゼオライト等のイオン伝導性または非電導性セラミックス微粒子が挙げられる。プロトン伝導性高分子固体電解質の強度アップ、電解液保液量増加の観点から、無機微粒子は一次粒子が凝集した二次粒子構造をもつものが好ましく、このような構造を持つ無機微粒子の具体例としてはエアロジル(日本エアロジル製)のようなシリカ超微粒子、アルミナ超微粒子、スーパータイタニア(昭和電工製)のようなチタニア超微粒子、協栄社製のマグネシア超微粒子が挙げられ、安定性、複合効率からアルミナ超微粒子、シリカ超微粒子が特に好ましい。
【0031】イオン伝導性、移動度を増加させるという目的で、無機微粒子の比表面積はできるだけ大きいことが好ましく、BET法で10m2/g以上が好ましく50m2/g以上がさらに好ましい。このような無機微粒子のサイズとしては、重合性組成物と混合できれば特に限定はないが、結晶粒子径としては0.001μm 〜10μm が好ましく、0.001μm 〜1μm が特に好ましい。また、形状としては球形、卵形、立方体状、直方体状、円筒ないし棒状等の種々の形状のものを用いることができる。無機微粒子の添加量は多すぎると逆にプロトン伝導性高分子固体電解質の強度やイオン伝導性を低下させたり、成膜がしづらくなるという問題を生じる。従って好ましい添加量としては、複合電解質に対して50wt%以下が好ましく、0.1から30wt%の範囲が特に好ましい。
【0032】本発明のプロトン伝導性高分子固体電解質を製造する場合には、一般式(1)または(2)で表される重合性官能基を有する(メタ)アクリロイル系化合物の少なくとも一種に、少なくとも一種の電解質塩、またはさらに少なくとも一種の無機微粒子、またはさらに少なくとも一種の極性溶媒を添加した重合性組成物を、またはこれにさらに少なくとも一種の重合開始剤を添加した重合性組成物を各種基材上に成膜、塗布後、かかる(メタ)アクリロイル系化合物を、加熱及び/または活性光線照射により重合し、硬化する方法が、均一に成膜でき、膜厚制御が簡便であり、推奨できる。重合させる温度としては、前記一般式(1)または(2)で表される重合性官能基を有する重合性化合物の種類や開始剤の種類によるが、重合が起こる温度であれば良く、通常は、0℃から200℃の範囲で行えばよい。活性光線照射により重合させる場合にも、前記一般式(1)または(2)で表される重合性官能基を有する重合性化合物の種類等によるが、例えば、ベンジルメチルケタール、ベンゾフェノン等の活性光線開始剤を使用して、数mW以上の紫外光または電子線、γ線等を照射して重合させることができる。
【0033】本発明のプロトン伝導性高分子固体電解質は他の多孔性高分子フィルムと複合して使用することにより強度改善等を行うことも可能である。但し、使用する高分子の種類、フィルム形状、複合割合によってはイオン伝導度の低下や安定性の悪化を招くので、適したものを選ぶ必要がある。使用する多孔性高分子フィルムとしてはポリプロピレン製不織布やポリエチレン製ネットのような網状ポリオレフィンシート等の多孔性ポリオレフィンフィルム、セルガード(商品名)等のポリオレフィン製マイクロポーラスフィルム、ナイロン不織布、ポリエステル製ネット等が挙げられるが、ポリオレフィン製多孔性フィルムが安定性の面で好ましい。また、その空孔率としては、10〜90%程度あればよいが、強度の許す限りできるだけ空孔率の大きいものが良いので、好ましい空孔率の範囲としては40〜90%の範囲である。複合方法としては特に制限がないが、例えば、一般式(1)または(2)で表される重合性官能基を有する(メタ)アクリロイル系化合物の少なくとも一種に、少なくとも一種の電解質塩、またはさらに少なくとも一種の無機微粒子、またはさらに少なくとも一種の極性溶媒を添加した重合性組成物を、またはこれにさらに少なくとも一種の重合開始剤を添加した重合性組成物を、多孔性ポリマーフィルムに含浸後、かかる(メタ)アクリロイル系化合物を重合する方法が、均一に複合でき、膜厚制御が簡便であり、推奨できる。
【0034】本発明のプロトン伝導性高分子固体電解質を電池に応用した場合、本プロトン伝導性高分子固体電解質の電解液保持性が高く、また孔が無い為、液もれ、短絡が起りにくく、サイクル寿命が長く、取り出し電流が大きく、安全性及び信頼性が高い電池が得られる。また、液もれや短絡が起りにくいことから、薄型にでき、パッケージの簡単な電池が得られる。このようにして製造される電池として、薄膜電池の一例の概略断面図を図1R>1に示す。図中、1は正極、2は本発明のプロトン伝導性高分子固体電解質からなるセパレーター用フィルム、3は負極、4は集電体、5は絶縁性樹脂封止剤である。
【0035】本発明の電池に用いる電極活物質はプロトンの挿入放出による充放電反応が可能なものでなければならない。そのような化合物としては、導電性高分子、遷移金属酸化物、グラファイト、活性炭等の各種炭素材料、各種有機金属錯体等が挙げられる。この中で導電性高分子は柔軟で、薄膜にし易いという点で好ましい。導電性高分子の例としてはポリアニリン及びその誘導体、ポリパラフェニレン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリキノン及びその誘導体、ポリチエニレン及びその誘導体、ポリピリジンジイル及びその誘導体、ポリイソチアナフテニレン及びその誘導体、ポリフリレン及びその誘導体、ポリセレノフェン及びその誘導体、ポリパラフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリフリレンビニレン、ポリナフテニレンビニレン、ポリセレノフェンビニレン、ポリピリジンジイルビニレン等のポリアリーレンビニレン及びそれらの誘導体等が挙げられる。この中でポリアニリン及びその誘導体は酸性水溶液中でプロトンのドーピング/アンドーピング反応による充放電反応効率が優れているが、容量的にまだ不十分である。
【0036】これら導電性高分子側鎖にスルホン酸を導入することにより、プロトンのドーピング/アンドーピング反応容量が向上し好ましい。このような高分子の例としてはポリアニリンを硫酸中で処理したスルホン化ポリアニリン(日東電工)、スルホン化チオフェン、スルホン化イソチアナフテンの酸化重合体(昭和電工)が挙げられる。含窒素芳香族系導電性高分子はその窒素とプロトン酸との特異的反応により、プロトンのドーピング/アンドーピング反応容量が向上し好ましい。その中で下記の一般式
【化9】


[Rは、水素、アルキル基、アルコキシ基、エステル基、カルボキシル基、ニトリル基、ニトロ基、ハロゲン基、またはスルホン酸基を表す。nは1以上の整数を表す。]で表されるポリピリジンジイル及びその誘導体、下記の一般式
【化10】


[Rは、水素、アルキル基、アルコキシ基、エステル基、カルボキシル基、ニトリル基、ニトロ基、ハロゲン基、またはスルホン酸基を表す。nは1以上の整数を表す。]で表されるポリピリミジンジイル及びその誘導体等のポリピリジン骨格、ポリピリミジン骨格を有する高分子が好ましい。
【0037】下記の一般式
【化11】


または
【化12】


で表されるポリキノン等のポリキノン骨格を有する高分子はキンヒドロン酸化還元反応でのプロトンの挿入放出容量が大きく好ましい。
【0038】また、遷移金属酸化物は、充填密度が高くなり、体積容量密度が高くなるという点で本発明の電極活物質として好ましい。その例としては、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化バナジウム、酸化ニッケル、酸化モリブデン等が挙げられ、特に酸化マンガン、酸化ニッケルが高容量、高電圧という点から好ましい。また炭素材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、気相法黒鉛、石油コークス、石炭コークス、フッ化黒鉛、ピッチ系炭素、ポリアセン等が挙げられる。集電体は電子伝導性で電気化学的に耐食性があり、できるだけ比表面積の大きい材料を用いることが好ましい。例えば、各種金属及びその燒結体、電子伝導性高分子、カーボンシート等を挙げることができる。
【0039】
【実施例】以下に本発明について代表的な例を示しさらに具体的に説明する。なお、これらは説明のための単なる例示であって、本発明はこれらに何等制限されるものではない。
【0040】[実施例1]
<化合物■の合成>
【化13】


化合物■(KOH価 34.0mg /g 、m/n=7/3)50.0g 及び化合物■(メタクリロイルオキシエチルイソシアネート) 4.6g を窒素雰囲気中でよく精製したTHF100ml に溶解した後、0.44g のジブチルチンジラウレートを添加する。その後、25℃で約15時間反応させることにより、無色の粘稠液体を得た。その1H-NMR、IR及び元素分析の結果から、化合物■と化合物■は1対3で反応し、さらに、化合物■のイソシアナート基が消失し、ウレタン結合が生成しており、化合物■が生成していることがわかった。
【0041】[実施例2]化合物■ 1.0g 、ジメチルホルムアミド(DMF)3.0g、パラトルエンスルホン酸(PTS)0.6g及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(商品名ルシリンTPO、BASF社製)0.004gをアルゴン雰囲気中でよく混合し、光重合性組成物溶液を得た。上記光重合性組成物溶液をアルゴン雰囲気下、PET フィルム上に塗布後、ケミカル蛍光ランプ(三共電気社製 FL20S.BL)を10分照射したところ、溶媒、プロトン酸を含浸した化合物■重合体フィルムが約30μm の自立フィルムとして得られた。このフィルムの25℃、−10℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ、それぞれ、6.0 ×10-32.0×10-3S/cmであった。
【0042】[実施例3]実施例2で調製したと同様の光重合性組成物溶液にアルゴン雰囲気下、無機微粒子としてアルミニウムオキサイドC(日本アエロジル製、比表面積約100m2/g )を0.20g 添加し、攪拌することにより、乳白色の溶液とした。この乳白色光重合性組成物溶液を実施例2と同様に塗布、光照射することにより、溶媒を含浸した化合物■重合体/アルミニウムオキサイドC複合フィルムが約30μm の白濁色自立フィルムとして得られた。このフィルムの25℃、−10℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ、それぞれ、7.0 ×10-32.2×10-3S/cmであった。
【0043】[実施例4]パラトルエンスルホン酸の代わりにオルトリン酸を0.3g用いた以外は実施例3と同様にして、溶媒を含浸した化合物■重合体/アルミニウムオキサイドC複合フィルム、約30μm を自立フィルムとして得た。このフィルムの25℃、−10℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ、それぞれ、7.3 ×10-32.4×10-3S/cmであった。
【0044】[実施例5]アルミニウムオキサイドCの代わりに、無機微粒子としてシリカ微粒子(日本アエロジル製、比表面積約200m2/g)0.20g を用いた以外は、実施例3と同様にして、溶媒を含浸した化合物■重合体/シリカ微粒子複合フィルム、約30μm を自立フィルムとして得た。このフィルムの25℃、−10℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ、それぞれ、6.8 ×10-32.1×10-3S/cmであった。
【0045】[実施例6]
<化合物■の合成>

化合物■(平均分子量Mn=550)55g 、化合物■ 15.5gを窒素雰囲気中でよく精製したTHF100ml に溶解した後、0.66g のジブチルチンジラウレートを添加した。その後、25℃で約15時間反応させることにより、無色の粘稠液体を得た。その1H-NMR、IR及び元素分析の結果から、化合物■と化合物■は1対1で反応し、さらに、化合物■のイソシアナート基が消失し、ウレタン結合が生成しており、化合物■が生成していることがわかった。
【0046】[実施例7]化合物■ 0.3g 、実施例1で合成した化合物■ 0.7g 、ジメチルスルホキサイド(DMSO)3.0g、オルトリン酸0.3g、アルミニウムオキサイドC0.20g 、ルシリンTPO0.004g をアルゴン雰囲気中でよく混合し、光重合性組成物溶液を得た。上記光重合性組成物溶液をアルゴン雰囲気下、PET フィルム上に塗布後、ケミカル蛍光ランプ(三共電気社製 FL20S.BL)を10分照射したところ、溶媒、プロトン酸を含浸した化合物■+■重合体フィルムが約30μm の自立フィルムとして得られた。このフィルムの25℃、−10℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ、それぞれ、7.5 ×10-32.3×10-3S/cmであった。
【0047】[実施例8]
<化合物■の合成>

化合物■(2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ−1−ブタノール、アルドリッチ製)20g 、化合物■ 15.5gを窒素雰囲気中でよく精製したTHF100ml に混合した後、0.66g のジブチルチンジラウレートを添加する。その後、25℃で約15時間反応させることにより、無色の粘稠液体として化合物■を得た。その1H-NMR、IR及び元素分析の結果から、化合物■と化合物■は1対1で反応し、さらに、化合物■のイソシアナート基が消失し、ウレタン結合が生成してしていることがわかった。
【0048】[実施例9]
<化合物(10)の合成>
【化14】


化合物■(日本アオジムント製、Zdol平均分子量2000)100g、化合物■ 15.5gを窒素雰囲気中でよく精製したTHF100ml に混合した後、0.66g のジブチルチンジラウレートを添加する。その後、25℃で約15時間反応させることにより、無色の粘稠液体として化合物(10)を得た。その1H-NMR、IR及び元素分析の結果から、化合物■と化合物■は1対2で反応し、さらに、化合物■のイソシアナート基が消失し、ウレタン結合が生成していることがわかった。
【0049】[実施例10]化合物■ 0.3g 、化合物(10) 0.7g 、アセトニトリル3.0g、オルトリン酸0.3g、シリカ微粒子(日本アエロジル製、比表面積約200m2/g)0.20g 及びルシリンTPO 0.004g をアルゴン雰囲気中でよく混合し、光重合性組成物溶液を得た。上記光重合性組成物溶液をアルゴン雰囲気下、ガラス上に塗布後、ケミカル蛍光ランプ(三共電気社製 FL20S.BL)を10分照射したところ、溶媒、プロトン酸を含浸した化合物■+(10)重合体フィルムが約30μm の自立フィルムとして得られた。このフィルムの25℃、−10℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ、それぞれ、3.0 ×10-31.2×10-3S/cmであった。
【0050】[実施例11 ]
<ポリアニリン電極の製造>特開昭62−108459号公報記載の方法に従い、過硫酸アンモニウムで塩酸中でアニリンを酸化重合後、アンモニア水溶液で中和し、下記の一般式で表される塩基型ポリアニリン粉末を得た。
【化15】


このポリアニリン粉末とアセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデンの重量比8.5 : 0.7 : 0.8の混合物に過剰のN−メチルピロリドン溶液を加え、ゲル状組成物を得た。この組成物を約15μmのSUS箔上に10mm×10mm、約200μmの厚さに塗布成型した。さらに、約100℃で24時間加熱真空乾燥することにより、ポリアニリン電極(15mg)を得た。
【0051】[実施例12]
<プロトン系二次電池の製造>化合物■ 1.0g 、ジメチルホルムアミド(DMF)3.0g、パラトルエンスルホン酸(PTS)0.6g、及びベンゾイルパーオキサイド(BPO)0.04g をアルゴン雰囲気中でよく混合し、熱重合性組成物溶液を得た。アルゴン雰囲気グローブボックス内で、実施例11で製造したポリアニリン電極(15mg)10mm×10mmに該熱重合性組成物溶液を含浸させた電極を二個用意した。次に、実施例3で製造した溶媒含浸化合物■重合体/アルミニウムオキサイド複合フィルム(10mm×10mm)を一方の電極に貼り合わせ、さらにもう一枚の電極をはり合わせ、電池端部をエポキシ樹脂で封止後、100℃で1時間加熱することにより、図1に示すようなポリアニリン/ポリアニリン系二次電池を製造した。この電池を、作動電圧0〜0.7V、電流0.1mAで充放電を行なったところ、最大容量は1.8mAhであった。また、この条件で充放電を50回繰り返しても容量変化は殆どなかった。
【0052】[実施例13]
<スルホン化ポリアニリン電極の製造>特公平8−9662号公報記載の方法に従い、ポリアニリンを無水硫酸中で熱処理することにより、下記の一般式で表されるスルホン化ポリアニリンを製造した。元素分析からこのスルホン化率はアニリンユニットに対して約50mol%であることを確認した。
【化16】


このスルホン化ポリアニリン粉末とアセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデンの重量比 8.5 : 0.7 : 0.8の混合物に過剰のN−メチルピロリドン溶液を加え、ゲル状組成物を得た。この組成物を約15μmのSUS箔上に10mm×10mm、約200μmの厚さに塗布成型した。さらに、約100℃で24時間加熱真空乾燥することにより、ポリアニリン電極(18mg)を得た。
【0053】[実施例14]
<プロトン系二次電池の製造>アルゴン雰囲気グローブボックス内で、実施例13で製造したスルホン化ポリアニリン電極(18mg)10mm×10mmに、該熱重合性組成物溶液を含浸させた電極を用意した。次に、実施例3で製造した溶媒含浸化合物■重合体/アルミニウムオキサイド複合フィルム(10mm×10mm)をこのスルホン化ポリアニリン電極に貼り合わせ、さらに実施例12で製造したものと同様の熱重合性組成物溶液含浸ポリアニリン電極をはり合わせ、電池端部をエポキシ樹脂で封止後、100℃で1時間加熱することにより、図1に示すようなスルホン化ポリアニリン/ポリアニリン二次電池を製造した。この電池を、作動電圧0〜1.0V、電流0.1mAで充放電を行なったところ、最大容量は2.0mAhであった。また、この条件で充放電を50回繰り返しても容量変化は殆どなかった。
【0054】[実施例15]
<ポリピリジン電極の製造>Synth. Metals 25 103 (1988) に記載の方法に従い、Ni(0価)法で下記の一般式で表されるポリピリジン粉末を得た。
【化17】


このポリピリジン粉末とアセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデンの重量比8.5 : 0.7 : 0.8の混合物に過剰のN−メチルピロリドン溶液を加え、ゲル状組成物を得た。この組成物を約15μmのSUS箔上に10mm×10mm、約200μmの厚さに塗布成型した。さらに、約100℃で24時間加熱真空乾燥することにより、ポリピリジン電極(18mg)を得た。
【0055】[実施例16]
<プロトン系二次電池の製造>ポリアニリン電極(15mg)の代りに、実施例15で製造したポリピリジン電極(18mg)を用いた以外は、実施例14と同様の方法で図1R>1に示すようなスルホン化ポリアニリン/ポリピリジン二次電池を製造した。 この電池を、作動電圧0〜1.2V、電流0.1mAで充放電を行なったところ、最大容量は2.3mAhであった。また、この条件で充放電を50回繰り返しても容量変化は殆どなかった。
【0056】[実施例17]
<ポリキノン電極の製造>Chem. Lett., 461 (1994) に記載の方法に従い、ポリキノン粉末を得た。
【化18】


このポリキノン粉末とアセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデンの重量比 8.5 : 0.7 : 0.8の混合物に過剰のN−メチルピロリドン溶液を加え、ゲル状組成物を得た。この組成物を約15μmのSUS箔上に10mm×10mm、約200μmの厚さに塗布成型した。さらに、約100℃で24時間加熱真空乾燥することにより、ポリキノン電極(15mg)を得た。
【0057】[実施例18]
<プロトン系二次電池の製造>化合物■ 0.3g 、化合物(10) 0.7g 、アセトニトリル3.0g、オルトリン酸0.3g、シリカ微粒子(日本アエロジル製、比表面積約200m2/g)0.20g 及びBPO0.04g をアルゴン雰囲気中でよく混合し、熱重合性組成物溶液を得た。アルゴン雰囲気グローブボックス内で、実施例17で製造したポリキノン電極(15mg)10mm×10mmに、該熱重合性組成物溶液を含浸させた電極に、実施例10で製造した溶媒含浸化合物■+(10)重合体/シリカ複合フィルム(10mm×10mm)を貼り合わせ、さらに実施例15で製造したポリピリジン電極に該熱重合性組成物溶液を含浸した電極をはり合わせ、電池端部をエポキシ樹脂で封止後、100℃で1時間加熱することにより、図1に示すようなポリキノン/ポリピリジン系二次電池を製造した。この電池を、作動電圧0〜1.0V、電流0.1mAで充放電を行なったところ、最大容量は2.1mAhであった。また、この条件で充放電を50回繰り返しても容量変化は殆どなかった。
【0058】[実施例19]
<二酸化マンガン電極の製造>電解二酸化マンガン粉末とアセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデンの重量比 8.8 : 0.7 : 0.5の混合物に過剰のN−メチルピロリドン溶液を加え、ゲル状組成物を得た。この組成物を約15μmのSUS箔上に10mm×10mm、約100μmの厚さに塗布成型した。さらに、約100℃で24時間加熱真空乾燥することにより、二酸化マンガン電極(23mg)を得た。
【0059】[実施例20]
<プロトン系二次電池の製造>スルホン化ポリアニリン電極(18mg)の代りに、実施例19で製造した二酸化マンガン電極(23mg)を用いた以外は、実施例14と同様の方法で図1に示すような二酸化マンガン/ポリアニリン二次電池を製造した。この電池を、作動電圧0〜1.0V、電流0.1mAで充放電を行なったところ、最大容量は2.5mAhであった。
【0060】
【発明の効果】本発明の二次電池は、プロトンの挿入、放出反応容量が大きい、スルホン酸側鎖を有する高分子及び/またはポリピリジン骨格を有する高分子及び/またはポリピリミジン骨格を有する高分子及び/またはヒドロキノン骨格を有する高分子及び/またはマンガン酸化物からなる電極活物質とプロトン伝導性高分子固体電解質とから得られるプロトン系固体二次電池である為、安全性、信頼性、電流特性に優れ、長寿命、高容量で薄型化、チップ化等が可能な形状自由性のある二次電池である。また本発明のプロトン伝導性高分子固体電解質は、特定の熱及び活性光線重合性にすぐれた化合物を重合することによって得られる高分子からなる加工性、機械的強度にすぐれ、高イオン伝導度で耐久性が良好なプロトン伝導性高分子固体電解質であり、プロトン系固体二次電池に適している。また本発明の電極は、該熱及び活性光線重合性にすぐれた化合物を重合することによって得られる高分子からなるプロトン伝導性高分子固体電解質とスルホン酸側鎖を有する高分子及び/またはポリピリジン骨格を有する高分子及び/またはポリピリミジン骨格を有する高分子及び/またはヒドロキノン骨格を有する高分子及び/またはマンガン酸化物から選ばれる電極活物質とを複合することにより得られ、高容量、長寿命で加工性に優れた電極である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例中に作製した電池の概略断面図である。
【符号の説明】
1 正極
2 セパレーター用フィルム
3 負極
4 集電体
5 絶縁性樹脂封止剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】 正極活物質及び/または負極活物質がプロトン挿入放出による充放電反応を行なう材料であり、電解質がプロトン伝導性高分子固体電解質であることを特徴とする二次電池。
【請求項2】 正極活物質及び/または負極活物質に用いる材料がスルホン酸側鎖を有する高分子であることを特徴とする請求項1記載の二次電池。
【請求項3】 正極活物質及び/または負極活物質に用いる材料がポリピリジン骨格及び/またはポリピリミジン骨格を有する高分子であることを特徴とする請求項1記載の二次電池。
【請求項4】 正極活物質及び/または負極活物質に用いる材料がポリキノン骨格を有する高分子であることを特徴とする請求項1記載の二次電池。
【請求項5】 正極活物質及び/または負極活物質に用いる材料がマンガン酸化物であることを特徴とする請求項1記載の二次電池。
【請求項6】 電解質がオキシアルキレン及び/またはウレタン構造を有する高分子を含むプロトン伝導性高分子固体電解質であることを特徴とする請求項1記載の二次電池。
【請求項7】 一般式(1)または一般式(2)
【化1】


【化2】


[式中、R1 、R2 は水素またはアルキル基を表し、R3 は炭素数10以下の2価の基を表わす。該2価の基はヘテロ原子を含んでいてもよく、直鎖状、分岐状、環状構造のいずれからなるものでもよい。xは0または1〜10の数値を示す。但し、同一分子中の複数個の上記一般式(1)または(2)で表される重合性官能基中のR1 、R2 、R3 及びxの値は、それぞれ独立であり、同じである必要はない。]で表わされる重合性官能基を有する熱及び/または活性光線重合性化合物を重合することによって得られる少なくとも一種の高分子、少なくとも一種のプロトン酸を含むことを特徴とするプロトン伝導性高分子固体電解質。
【請求項8】 少なくとも一種のプロトン酸が有機スルホン酸系化合物及び/またはリン酸系化合物及び/またはホウ酸系化合物であることを特徴とする請求項7記載のプロトン伝導性高分子固体電解質。
【請求項9】 少なくとも一種の可塑剤を含むことを特徴とする請求項7または8に記載のプロトン伝導性高分子固体電解質。
【請求項10】 少なくとも一種の可塑剤がヘテロ原子含有極性有機溶媒であることを特徴とする請求項9記載のプロトン伝導性高分子固体電解質。
【請求項11】 少なくとも一種の無機微粒子を含むことを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載のプロトン伝導性高分子固体電解質。
【請求項12】 少なくとも一種の無機微粒子がBET 比表面積10m2 以上、結晶粒子最大径1μm以下のシリカ、アルミナ、チタニア、もしくはマグネシア、またはこれらの複合酸化物であり、その含有量が1〜50wt% であることを特徴とする請求項11記載のプロトン伝導性高分子固体電解質。
【請求項13】 電解質が請求項7〜12のいずれか記載のプロトン伝導性高分子固体電解質であることを特徴とする請求項1記載の二次電池。
【請求項14】 請求項7〜10のいずれか記載のプロトン伝導性高分子固体電解質と、スルホン酸側鎖を有する高分子及び/またはポリピリジン骨格を有する高分子及び/またはポリピリミジン骨格を有する高分子及び/またはポリキノン骨格を有する高分子及び/またはマンガン酸化物からなる電極活物質との複合物であることを特徴とする電極。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開平10−289617
【公開日】平成10年(1998)10月27日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−97435
【出願日】平成9年(1997)4月15日
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)