説明

二次電池状態検出装置および二次電池状態検出方法

【課題】異なる種類の二次電池に交換された場合であっても、状態を正確に検出すること。
【解決手段】二次電池14の状態を検出する二次電池状態検出装置において、二次電池の電気的等価回路に含まれる複数の抵抗要素のそれぞれの抵抗値を取得する取得手段(I/F10d)と、取得手段によって取得された抵抗値をパラメータとして用いて、二次電池の劣化の指標としての劣化指標値を算出する算出手段(CPU10a)と、算出手段によって算出された劣化指標値の初期値を格納する格納手段(RAM10c)と、算出手段によって算出された劣化指標値の初期値からの変化率を求め、二次電池の公称容量または初期容量と当該変化率に基づいて満充電容量の劣化状態を検出する検出手段(CPU10a)と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池状態検出装置および二次電池状態検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等においては、二次電池に蓄積されている電力によって動作する電気デバイスの数が増加するとともに、例えば、電動ステアリングおよび電動ブレーキ等のように走行の安全に関連するデバイスも二次電池によって駆動されるようになっている。このため、二次電池の充電状態(例えば、SOC:State of Charge)やSOH(State of Health)を正確に知る必要性が高くなっている。
【0003】
従来、SOHを求める方法としては、例えば、特許文献1に示すように、二次電池の内部インピーダンスを求め、この内部インピーダンスから劣化度としてのSOHを求めることが行われてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−221487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の技術では、SOH等の状態を検出する対象となる二次電池としては、自動車の出荷時において標準装備されている特定の二次電池に限定されることが一般的である。詳細には、特定の二次電池の特性を予め実測して関係式やテーブルを作成し、これらの関係式やテーブルに基づいて状態を検出する。このため、検出対象となる二次電池は、特定のメーカの特定の型番に限定されることが一般的である。
【0006】
しかしながら、自動車に搭載されている二次電池は、ユーザによって任意の二次電池に交換される場合が多い。ユーザによって二次電池が標準装備されているものとは異なる二次電池に交換された場合には、前述した関係式やテーブルをそのまま使用したのでは誤差が大きくなるため、正確な検出を行うことができないという問題点がある。そこで、使用が想定される全ての二次電池についての関係式やテーブルを予め作成して記憶しておき、二次電池が交換された場合には新たに搭載された二次電池に対応する関係式やテーブルを選択して使用することも技術的には可能である。しかし、そのような方法では、多数の二次電池に対応する関係式やテーブルを事前に作成して格納しておく必要があるため、手間とコストがかかるという問題点がある。
【0007】
そこで、本発明は異なる種類の二次電池に交換された場合であっても、状態を正確に検出することが可能な二次電池状態検出装置および二次電池状態検出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、二次電池の状態を検出する二次電池状態検出装置において、前記二次電池の電気的等価回路に含まれる複数の抵抗要素のそれぞれの抵抗値を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された前記抵抗値をパラメータとして用いて、前記二次電池の劣化の指標としての劣化指標値を算出する算出手段と、前記算出手段によって算出された前記劣化指標値の初期値を格納する格納手段と、前記算出手段によって算出された前記劣化指標値の前記初期値からの変化率を求め、前記二次電池の公称容量または初期容量と当該変化率に基づいて満充電容量の劣化状態を検出する検出手段と、を有することを特徴とする。
このような構成によれば、異なる種類の二次電池に交換された場合であっても、状態を正確に検出することが可能になる。
【0009】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記複数の抵抗要素は、前記二次電池の導体抵抗および電解液抵抗に対応する抵抗要素と、前記二次電池の反応抵抗に対応する抵抗要素とを少なくとも有していることを特徴とする。
このような構成によれば、様々な原因に対応した劣化を検出することができる。
【0010】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記劣化指標値は、各抵抗値を相互に乗算することによって算出することを特徴とする。
このような構成によれば、抵抗値を乗算することにより、簡単に劣化指標値を算出することが可能になる。
【0011】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記劣化指標値は、各抵抗値に所定の定数を乗算し、所定の定数を加算して得た値を相互に乗算することによって算出することを特徴とする。
このような構成によれば、定数の値を調整することにより、二次電池の容量または種類が変わった場合であっても、劣化指標値を正確に算出することができる。
【0012】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記検出手段は、前記算出手段によって算出された前記劣化指標値と前記初期値とを所定の関数に代入することで、前記劣化指標値の前記初期値からの変化率を求めることを特徴とする。
このような構成によれば、関数自体や関数に含まれているパラメータを調整することにより、二次電池の劣化を正確に検出することが可能になる。
【0013】
また、本発明は、二次電池の状態を検出する二次電池状態検出方法において、前記二次電池の電気的等価回路に含まれる複数の抵抗要素のそれぞれの抵抗値を取得する取得ステップと、前記取得ステップにおいて取得された前記抵抗値をパラメータとして用いて、前記二次電池の劣化の指標としての劣化指標値を算出する算出ステップと、前記算出ステップにおいて算出された前記劣化指標値の初期値を格納する格納ステップと、前記算出ステップによって算出された前記劣化指標値の前記初期値からの変化率を求め、前記二次電池の公称容量または初期容量と当該変化率に基づいて満充電容量の劣化状態を検出する検出ステップと、を有することを特徴とする。
このような方法によれば、異なる種類の二次電池に交換された場合であっても、状態を正確に検出することが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、異なる種類の二次電池に交換された場合であっても、状態を正確に検出することが可能な二次電池状態検出装置および二次電池状態検出方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る二次電池状態検出装置の構成例を示す図である。
【図2】図1の制御部の詳細な構成例を示すブロック図である。
【図3】二次電池の等価回路の一例を示す図である。
【図4】図1に示す実施形態において実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【図5】二次電池の等価回路の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
(A)実施形態の構成の説明
図1は、本発明の実施形態に係る二次電池状態検出装置を有する車両の電源系統を示す図である。この図において、二次電池状態検出装置1は、制御部10、電圧センサ11、電流センサ12、温度センサ13、および、放電回路15を主要な構成要素としており、二次電池14の状態を検出する。
【0018】
ここで、制御部10は、放電回路15を制御するとともに、電圧センサ11、電流センサ12、および、温度センサ13からの出力を参照し、二次電池14の状態を検出する。電圧センサ11は、二次電池14の端子電圧を検出し、制御部10に通知する。電流センサ12は、二次電池14に流れる電流を検出し、制御部10に通知する。温度センサ13は、二次電池14自体または周囲の環境温度を検出し、制御部10に通知する。放電回路15は、例えば、直列接続された半導体スイッチと抵抗素子等によって構成され、制御部10によって半導体スイッチがオン/オフ制御されることにより二次電池14を間欠的に放電させる。
【0019】
二次電池14は、例えば、正極(陽極板)に二酸化鉛、負極(陰極板)に海綿状の鉛、電解液として希硫酸を用いた鉛蓄電池によって構成され、オルタネータ16によって充電され、スタータモータ18を駆動してエンジン17を始動するとともに、負荷19に電力を供給する。オルタネータ16は、エンジン17によって駆動され、交流電力を発生して整流回路によって直流電力に変換し、二次電池14を充電する。
【0020】
エンジン17は、例えば、ガソリンエンジンおよびディーゼルエンジン等のレシプロエンジンまたはロータリーエンジン等によって構成され、スタータモータ18によって始動され、トランスミッションを介して駆動輪を駆動し車両に推進力を与えるとともに、オルタネータ16を駆動して電力を発生させる。スタータモータ18は、例えば、直流電動機によって構成され、二次電池14から供給される電力によって回転力を発生し、エンジン17を始動する。負荷19は、例えば、電動ステアリングモータ、デフォッガ、ライト、イグニッションコイル、カーオーディオ、および、カーナビゲーション等によって構成され、二次電池14およびオルタネータ16からの電力によって動作する。
【0021】
図2は、図1に示す制御部10の詳細な構成例を示す図である。この図に示すように、制御部10は、CPU(Central Processing Unit)10a、ROM(Read Only Memory)10b、RAM(Random Access Memory)10c、I/F(Interface)10d、バス10e、および、通信部10fを有している。ここで、CPU10aは、ROM10bに格納されているプログラム10baに基づいて各部を制御する。ROM10bは、半導体メモリ等によって構成され、プログラム10ba等を格納している。RAM10cは、半導体メモリ等によって構成され、プログラム10baを実行する際に生成されるパラメータ10caを格納する。I/F10dは、電圧センサ11、電流センサ12、および、温度センサ13から供給される信号をデジタル信号に変換して取り込むとともに、放電回路15に駆動信号を供給してこれを制御する。バス10eは、CPU10a、ROM10b、RAM10c、および、I/F10dを相互に電気的に接続し、これらの間で情報の授受を可能にするための信号線群である。通信部10fは、他の装置(例えば、図示しないECU(Engine Control Unit))等に通信線を介して接続され、他の装置との間で情報を授受する。
【0022】
(B)実施形態の概略の動作の説明
つぎに、本実施形態の動作について説明する。以下では、本実施形態の動作の概略について説明した後に、詳細な動作について説明する。
【0023】
本実施形態では、二次電池14を、例えば、図3に示すような等価回路として表す。図3の例では、二次電池14の等価回路は、抵抗要素R0,R1、および、コンデンサ要素Cを有し、抵抗要素R1とコンデンサ要素Cが並列接続され、これらに抵抗要素R0が直列接続されている。なお、抵抗要素R0は、二次電池14の集電体の導体抵抗および電解液抵抗等に起因する抵抗である。また、抵抗要素R1は、電極反応における電子授受の速度に起因する抵抗(電荷移動抵抗)や化学反応に起因する抵抗(化学反応抵抗)である。さらに、コンデンサ要素Cは、電気二重層容量である。
【0024】
二次電池14が工場で搭載された場合またはユーザ(または作業員)によって交換された場合、制御部10は、新たに搭載された二次電池14の初期容量値を測定し、得られた初期容量値を初期値SOH_INIとして記憶する。なお、初期容量値を測定するのではなく、新たに搭載された二次電池14の公称容量値をユーザ等が入力するようにしてもよい。
【0025】
つぎに、抵抗要素R0,R1の実測を行う。抵抗要素R0については、放電回路15により、二次電池14に対して所定の周期で矩形波のパルス放電を行わせ、その際の電圧と電流の時間的変化をサンプリングしてフーリエ展開し、基本周波数成分を抽出する。そして、電圧の基本周波数成分を電流の基本周波数成分で除算することで抵抗要素R0の値を得ることができる。なお、フーリエ展開を行うのではなく、電圧を直交する矩形波成分に展開し、矩形波成分の基本周波数成分を電流値によって除算して擬似的な抵抗成分を求め、これを補正することでも求めることができる。すなわち、フーリエ展開で得られる値と、矩形波成分に展開して得られる値との間には、一定の比例関係が存在するので、この比例関係に基づいて矩形波成分に展開して得られた値を、フーリエ展開の値に補正することで、より正確な値を得ることができる。
【0026】
一方、抵抗要素R1については、放電開始前の二次電池14の端子電圧V1を求めた後に、放電回路15により、100Hz以上の周波数による電流値I0のパルス放電を所定回数繰り返し実行する。そして、パルス放電終了後の電圧V2を測定し、放電前後の電圧降下量ΔV=V1−V2を求める。そして、ΔVをI0で除算することにより抵抗要素R1の値を求めることができる。
【0027】
なお、以上のようにして求めた抵抗要素R0,R1の値は、温度センサ13の出力を参照して温度による補正を行う。なお、これ以外にも、例えば、充電率SOCに基づいて各要素を補正したり、あるいは、分極の値に基づいて補正したりしてもよい。
【0028】
つぎに、抵抗要素R0,R1を、例えば、以下の式(1)に適用し、二次的な劣化指標Degの初期値Deg_INIを算出する。
Deg_INI=(α・R0+β)×(γ・R1+δ) ・・・(1)
【0029】
ここで、α、β、γ、δは、定数であり、例えば、実験等によって求めることができる。このようにして求めたDeg_INIはRAM10cにパラメータ10caとして格納される。
【0030】
そして、一定の時間が経過すると、前述の場合と同様に、制御部10は、図3の等価回路の抵抗要素R0,R1を求め、温度センサ13の出力に基づいて補正を行う。そして、制御部10は、得られた抵抗要素R0,R1を、例えば、以下の式(2)に適用し、劣化指標Degを算出する。なお、α、β、γ、δは、式(1)と同様である。
Deg=(α・R0+β)×(γ・R1+δ) ・・・(2)
【0031】
劣化指標値が得られると、以下の式(3)に基づいてSOHを算出する。
SOH=SOH_INI×Deg_INI/Deg ・・・(3)
【0032】
式(3)では、劣化指標の初期値Deg_INIと、現在値Degとの比を計算する。抵抗要素の絶対値は、二次電池14の容量、型番、メーカ等によって異なるが、その比は、これらの相違に拘わらず、SOHの変化に伴って一定の割合で減少していく。このため、式(3)に基づいてSOHを計算することにより、二次電池14の容量、型番、メーカ等に拘わらず、正確な値を得ることができる。
【0033】
また、SOHが低下する原因としては、例えば、二次電池14のサルフェーションや電解液の比重の低下、極板の故障等の様々な要因がある。本実施形態では、式(2)に示すように、劣化指標Degを求めるために2つの抵抗要素R0,R1をパラメータとして用いている。ここで、抵抗要素R0は二次電池14の集電体の導体抵抗および電解液抵抗等に起因する抵抗であり、抵抗要素R1は電極反応における電子授受の速度に起因する電荷移動抵抗や化学反応に起因する化学反応抵抗である。抵抗要素R1は、例えば、サルフェーションの進行に伴って値が増加する。また、抵抗要素R0は、例えば、電解液の比重の低下に伴って増加する。したがって、これら2種類の抵抗要素をパラメータとして用いて劣化指標を求めることにより、サルフェーションや電解液の比重低下等に起因する劣化を正確に求めることができるので、劣化の原因によらずSOHを正確に求めることができる。もちろん、前述した以外の原因についても、これら2つの抵抗要素R0,R1の変化として現れることから、前述した以外の原因についても劣化指数に反映させることができる。
【0034】
以上に説明したように、本実施形態によれば、抵抗要素から求めた劣化指標値の変化率に応じてSOHを求めるようにしたので、相対的な変化に基づくことで、二次電池14の容量、型番、メーカ等の相違によらず正確にSOHを求めることができる。また、本実施形態では、抵抗要素R0,R1の2種類の抵抗要素に基づいて劣化指標値を求め、得られた劣化指標値に基づいてSOHを求めるようにしたので、劣化の原因によらずSOHを正確に求めることができる。
【0035】
なお、以上の説明では、劣化指標Degおよび初期値Deg_INIについては、式(1),(2)に基づいて算出するようにしたが、これ以外の式を用いることも可能である。例えば、抵抗要素R0,R1同士の和や商を含む式を用いたり、抵抗要素R0,R1以外の項(例えば、他の抵抗要素)を含む式を用いたり、あるいは、二次電池14の温度係数を各要素に乗算する式を用いることも可能である。より詳細には、DegおよびDeg_INIを求める式として、(α・R0+β)+(γ・R1+δ)を用いたり、(α・R0+β)/(γ・R1+δ)もしくは(γ・R1+δ)/(α・R0+β)を用いたりすることも可能である。もちろん、α,β,γ,δ以外のパラメータを含んでいてもよい。また、抵抗要素R0,R1以外に、抵抗要素R2,・・・,Rn(n>2)を含むようにすることも可能である。さらに、抵抗要素R0,R1に対して二次電池14の温度に対応した温度係数a,bを乗算するようにしてもよい。
【0036】
(C)実施形態の詳細な動作の説明
つぎに、本実施形態の詳細な動作について説明する。図4は図2に示す制御部10において実行される処理の流れを説明するためのフローチャートである。このフローチャートの処理が実行されると、以下のステップが実行される。
【0037】
ステップS10では、CPU10aは、温度センサ13から二次電池14自体またはその周辺の温度を取得する。
【0038】
ステップS11では、CPU10aは、充電率SOCの値を取得する。なお、充電率SOCは回路開放電圧OCV(Open Circuit Voltage)より求めたり、あるいは、二次電池14の内部抵抗から求めたりして、RAM10cに格納しておくことができる。ステップS11では、CPU10aは、RAM10cに格納した充電率SOCを取得する。
【0039】
ステップS12では、CPU10aは、分極値を取得する。ここで、分極とは、電流が流れているときの電極電位が、電流の流れていないときの電位(平衡電位)と異なる値になることをいう。具体的には、二次電池14は充電と放電を繰り返すことから、充電分極または放電分極が生じる。そこで、CPU10aは、このような分極の状態を示す値(分極値)を、例えば、電流の積算値から推定してRAM10cに格納しておき、ステップS12では、RAM10cに格納された分極値をRAM10cから取得する。なお、ステップS10〜S12において取得した温度、充電率、および、分極値については、ステップS17,S21において抵抗要素R0,R1の値を補正する際に用いる。
【0040】
ステップS13では、CPU10aは、二次電池14が交換されたか否かを判定し、交換されたと判定した場合(ステップS13:Yes)にはステップS14に進み、それ以外の場合(ステップS13:No)にはステップS19に進む。例えば、電圧センサ21の検出値が「0V」になる時間が一定時間(例えば、10秒)以上継続し、その後に12V以上になった場合には二次電池14が交換されたと判定することができるので、その場合にはステップS14に進む。なお、制御部10が二次電池14から給電されている場合には、例えば、制御部10が再起動された場合には、二次電池14が交換されたと判定することができる。
【0041】
ステップS14では、CPU10aは、二次電池14の初期容量値Xを取得する。具体的には、CPU10aは、例えば、通信部10fを介して、新たに装着された二次電池14の公称容量値の入力をユーザ等から受けることにより初期容量値Xを取得することができる。なお、これ以外にも、例えば、放電回路15によって二次電池14を放電させ、そのときの電圧の変化、または、内部インピーダンスの変化から二次電池14の初期容量値を実測してもよい。
【0042】
ステップS15では、CPU10aは、ステップS14で取得した二次電池14の初期容量値Xを、SOHの初期値を保持する変数SOH_INIに代入する。これにより、変数SOH_INIには、二次電池14の初期容量値が保持される。
【0043】
ステップS16では、CPU10aは、抵抗要素R0,R1を測定によって求める。具体的には、抵抗要素R0については、放電回路15により、二次電池14に対して所定の周期で矩形波のパルス放電を行わせ、その際の電圧と電流をサンプリングしてフーリエ展開して基本周波数成分を抽出する。そして、電圧の基本周波数成分を電流の基本周波数成分で除算することで抵抗要素R0の値を得ることができる。なお、フーリエ展開を行うのではなく、電圧を直交する矩形波成分に展開し、矩形波成分の基本周波数成分を電流値によって除算して擬似的な抵抗成分を求め、これを補正することでも求めることができる。なお、補正の方法については、前述の場合と同様である。
【0044】
一方、抵抗要素R1については、放電開始前の電圧V1を求めた後に、放電回路15により、100Hz以上の周波数による電流値I0のパルス放電を所定回数繰り返し実行する。そして、パルス放電終了後の電圧V2を測定し、放電前後の電圧降下量ΔV=V1−V2を求める。そして、ΔVをI0で除算することにより抵抗要素R1の値を求めることができる。
【0045】
なお、これ以外にも、例えば、一定以上の周波数領域に渡って二次電池14のインピーダンススペクトルを取得し、抵抗要素R0,R1を含んだ等価回路モデルの定数フィッティングによって抵抗要素R0,R1の値を求めることができる。あるいは、図3に示す等価回路を用いて所定の電流を流した場合の電圧を予測し、予測した電圧と、実測値との差分値を求め、この差分値に基づいて等価回路の構成要素について学習処理を実行することで、抵抗要素R0,R1の値を求めることができる。
【0046】
ステップS17では、CPU10aは、ステップS16で求めた抵抗要素R0,R1の値を、ステップS10〜S12において求めた温度、充電率、および、分極値に基づいて補正する。なお、これら全てに対する補正をするのではなく、これらの一部に基づいて補正を行うようにしてもよい。
【0047】
ステップS18では、CPU10aは、劣化指標の初期値を格納する変数Deg_INIに、例えば、以下の式によって求めた値を格納する。なお、α,β,γ,δは、所定の定数であり、例えば、実験等によって求めることができる。
Deg_INI=(α・R0+β)×(γ・R1+δ) ・・・(4)
【0048】
以上のステップS13〜S18の処理により、二次電池14が交換された場合には、二次電池14の初期容量値が取得されてSOH_INIに格納されるとともに、抵抗要素R0,R1が測定され、これらに基づいて劣化指標の初期値が計算されてDeg_INIに格納される。なお、二次電池14が交換されない場合には、ステップS13〜S18の処理は実行されない。
【0049】
ステップS19では、CPU10aは、所定時間が経過したか否かを判定し、所定の時間が経過したと判定した場合(ステップS19:Yes)にはステップS20に進み、それ以外の場合(ステップS19:No)には所定の時間が経過するまで同様の処理を繰り返す。例えば、所定の時間として10分が経過した場合には、ステップS20に進み、それ以外の場合にはステップS19の処理を繰り返す。なお、10分は一例であって、用途に応じた適切な時間(例えば、数時間)を設定することができる。
【0050】
ステップS20では、CPU10aは、抵抗要素R0,R1の値を測定する。なお、ステップS20の処理は、ステップS16の場合と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0051】
ステップS21では、CPU10aは、抵抗要素R0,R1の値が補正される。なお、ステップS21の処理は、ステップS17の場合と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0052】
ステップS22では、CPU10aは、例えば、以下の式(5)に基づいて劣化指標Degを求める。なお、α,β,γ,δは、ステップS18の場合と同様である。
Deg=(α・R0+β)×(γ・R1+δ) ・・・(5)
【0053】
ステップS23では、CPU10aは、SOHの値を以下の式(6)に基づいて求める。ここで、Deg_INI/Degは、劣化指標の初期値と現在値(ステップS22で求めた値)との比である。また、SOH_INIは、SOHの初期値である。このように、劣化指標の初期値と現在値との比を用いて、抵抗要素の相対的な変化に基づいてSOHを計算するので、例えば、メーカや型番による抵抗値の相違(絶対値の相違)による影響を抑えることができる。また、SOH_INIとして新たに搭載された二次電池14の公称値、または、測定値を用いることで、どのような容量の二次電池14に交換された場合でも対応することができる。
SOH=SOH_INI×Deg_INI/Deg ・・・(6)
【0054】
ステップS24では、CPU10aは、ステップS23で求めたSOHの値を、例えば、通信部10fを介して、例えば、ECU(Engine Control Unit)に出力する。これにより、ECUは、二次電池14のSOHに基づいて、例えば、充電制御やアイドリングストップ等の制御を適切に実行することができる。
【0055】
以上の処理によれば、前述したように、二次電池14の容量、型番、メーカ等によらず、SOHを正確に求めることが可能になる。
【0056】
(D)変形実施形態の説明
以上の実施形態は一例であって、本発明が上述したような場合のみに限定されるものでないことはいうまでもない。例えば、以上の実施形態では、図3に示す2つの抵抗要素を有する等価回路に基づいてSOHを計算するようにしたが、例えば、図4に示すように、3つ以上の抵抗を有する等価回路に基づいて計算をするようにしてもよい。その場合、例えば、以下の式(7)によって劣化指標値を求めるようにしてもよい。また、各構成要素の学習処理については、例えば、カルマンフィルタ等の演算処理に基づいて求めることができる。

【0057】
また、以上の実施形態の式(1),(2),(4),(5),(7)では、抵抗要素の値に定数を乗算して得られた値に他の定数を加算し、その結果得られた値を相互に乗算して劣化指標を求めるようにしたが、例えば、これらの定数については除外するようにしてもよい。例えば、抵抗要素の値を相互に乗算することで劣化指標を求めるようにしたり、あるいは、乗算する定数、または、加算する定数の一方のみを用いるようにしたりしてもよい。さらに、定数として二次電池14の温度に対応した定数を乗算するようにしてもよい。
【0058】
また、以上の実施形態では、劣化指標Degおよび初期値Deg_INIを、式(1),(2),(4),(5)に基づいて算出するようにしたが、これ以外の式を用いることも可能である。例えば、抵抗要素R0,R1同士の和または商を含む式として、(α・R0+β)+(γ・R1+δ)または(α・R0+β)/(γ・R1+δ)もしくは(γ・R1+δ)/(α・R0+β)を用いることも可能である。もちろん、α,β,γ,δ以外のパラメータを含んでいてもよい。また、前述した式(7)のように、抵抗要素R0,R1以外の抵抗要素を含む式を用いるだけでなく、二次電池14の温度係数を各要素に乗算する式を用いることも可能である。具体的には、抵抗要素Rに対して二次電池14の温度に対応した温度係数aをそれぞれ乗算してもよい。
【0059】
また、以上の実施形態では、劣化指標の初期値と現在値の比(Deg_INI/Deg)をSOHの初期値であるSOH_INIに乗算してSOHを求めるようにしたが、これ以外にも、例えば、Deg_INIおよびDegをパラメータとする関数f(Deg_INI,Deg)を用い、この関数にSOH_INIを乗算することで、SOHを求めるようにすることも可能である。具体的には、例えば、関数fを両者の対数値の引き算として表してもよく、f(Deg_INI,Deg)=log(Deg_INI)−log(Deg)によって求めることも可能である。
【0060】
また、以上の実施形態では、二次電池14が交換されると直ちに初期容量値、抵抗要素の値、および、劣化指標値を求めるようにしたが、例えば、一定期間(例えば、1分、1時間、あるいは、1日、1週間)程度が経過したときに、これらの値を測定するようにしてもよい。すなわち、本実施形態において、「初期値」とは交換された直後の値のみならず、一定期間を経過した後の値も含むものである。
【符号の説明】
【0061】
1 二次電池状態検出装置
10 制御部
10a CPU(算出手段、検出手段)
10b ROM
10c RAM(格納手段)
10d 通信部
10e バス
10f I/F(取得手段)
11 電圧センサ
12 電流センサ
13 温度センサ
14 二次電池
15 放電回路
16 オルタネータ
17 エンジン
18 スタータモータ
19 負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の状態を検出する二次電池状態検出装置において、
前記二次電池の電気的等価回路に含まれる複数の抵抗要素のそれぞれの抵抗値を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された前記抵抗値をパラメータとして用いて、前記二次電池の劣化の指標としての劣化指標値を算出する算出手段と、
前記算出手段によって算出された前記劣化指標値の初期値を格納する格納手段と、
前記算出手段によって算出された前記劣化指標値の前記初期値からの変化率を求め、前記二次電池の公称容量または初期容量と当該変化率に基づいて満充電容量の劣化状態を検出する検出手段と、
を有することを特徴とする二次電池状態検出装置。
【請求項2】
前記複数の抵抗要素は、前記二次電池の導体抵抗および電解液抵抗に対応する抵抗要素と、前記二次電池の反応抵抗に対応する抵抗要素とを少なくとも有していることを特徴とする請求項1に記載の二次電池状態検出装置。
【請求項3】
前記劣化指標値は、各抵抗値を相互に乗算することによって算出することを特徴とする請求項1または2に記載の二次電池状態検出装置。
【請求項4】
前記劣化指標値は、各抵抗値に所定の定数を乗算し、所定の定数を加算して得た値を相互に乗算することによって算出することを特徴とする請求項1または2に記載の二次電池状態検出装置。
【請求項5】
前記検出手段は、前記算出手段によって算出された前記劣化指標値と前記初期値とを所定の関数に代入することで、前記劣化指標値の前記初期値からの変化率を求めることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の二次電池状態検出装置。
【請求項6】
二次電池の状態を検出する二次電池状態検出方法において、
前記二次電池の電気的等価回路に含まれる複数の抵抗要素のそれぞれの抵抗値を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにおいて取得された前記抵抗値をパラメータとして用いて、前記二次電池の劣化の指標としての劣化指標値を算出する算出ステップと、
前記算出ステップにおいて算出された前記劣化指標値の初期値を格納する格納ステップと、
前記算出ステップによって算出された前記劣化指標値の前記初期値からの変化率を求め、前記二次電池の公称容量または初期容量と当該変化率に基づいて満充電容量の劣化状態を検出する検出ステップと、
を有することを特徴とする二次電池状態検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−88156(P2013−88156A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226493(P2011−226493)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】