説明

二次電池用アルミニウム缶体及びその製造方法

【課題】 健全な溶融接合部を安定的に与え得る二次電池用アルミニウム缶体及びその製造方法の提供。
【解決手段】アルミニウム合金板体からなる蓋体及び外装体をレーザ溶接して組み立てた二次電池用アルミニウム缶体及びその製造方法である。少なくとも、質量比で、Siを0.30%以下とした上でBを2〜30ppmの範囲内で含むアルミニウム合金からなる合金板体を用意し、第1の合金板体の側縁端部に沿って第2の合金板体の端面を突き合わせる。第1の合金板体の端面にできる突き合わせ線に沿って連続レーザ溶接する。ここで突き合わせ線を挟んで与えられる溶融接合部の深さDに対する幅Wの比を1.5以上とするようにレーザ溶接条件が制御される。缶体には、0.35mm以上の深さDが与えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金板体からなる蓋体及び外装体をレーザ溶接して組み立てたアルミニウム缶体及びその製造方法に関し、特に、リチウムイオン二次電池の如き二次電池を収容するための二次電池用アルミニウム缶体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー密度の高いリチウムイオン二次電池は、従来の二次電池と比較して小型で軽量ながら高容量であるといった特長を有し、ノートパソコンなどの電子機器分野、携帯電話機などの携帯通信機器分野、電気自動車などの移動機分野などで広く用いられている。かかる分野では、二次電池の軽量化が特に重要とされ、鉄鋼材料に比べて比強度のより高いアルミニウム合金が電池本体を収容する缶体などで使用されるようになった。
【0003】
例えば、特許文献1では、アルミニウム板体又はアルミニウム合金板体からなる蓋体及び外装体をレーザ溶接して組み立てたリチウムイオン二次電池用アルミニウム缶体及びその製造方法が開示されている。詳細には、主としてMnが添加されたアルミニウム合金であるJIS−A3000系からなるアルミニウム合金板体を用意し、本体用合金板体の側縁端部に沿って蓋体用合金板体の端面を突き合わせ、この本体用合金板体の端面にできる突き合わせ線に沿ってYAGスラブレーザでレーザ溶接して缶体を組み立ている。かかる高密度熱源レーザによって突き合わせ線を挟んで与えられる溶融接合部は、比較的深部にまで達し、本体用合金板体と蓋体用合金板体の接合面積を広く取ることが出来て、接合強度を高め得て、すなわち継手強度を高め得る。
【0004】
また、特許文献2では、高密度熱源レーザを使用することでスパッタによる金属の飛散が生じビード厚さを減少させて、外面から窪んだ形状の溶接部となることについて述べている。これに対して、本体用合金板体及び蓋体用合金板体の突き合わせ線に沿って双方の板体から外方へ向けて凸部を形成し、該凸部でレーザ溶接することを開示している。スパッタによる金属の飛散分を新たに形成した凸部で補うとともに、溶接ビードを厚くできるので本体用合金板体と蓋体用合金板体の接合面積を広く取ることができて、接合強度をより高め得るのである。
【0005】
更に、特許文献3では、低強度ではあるが高導電率のJIS−A1000系(純アルミニウム材)が自動車用のリチウムイオン二次電池の缶体に適していることを述べた上で、かかるアルミニウム板材を高エネルギー密度のパルスレーザで溶接すると、アルミニウム板材中の不純物等の成分及び表面状態が溶融接合部の幅及び深さに大きな影響を与え、突発的にアルミニウム板材を貫通してしまうような異常深さの溶け込みを生じさせたり、ポロシティを生じるなど、溶融接合部の急激な変化をもたらしやすいといった問題点を提起している。これに対し、アルミニウム材の成分組成を調製して、液相における粘度を一定以下に調整することを開示している。A1000系アルミニウム材、特に、A1035〜A1080のアルミニウム材について、質量%で、Si:0.35%以下、Fe:0.6%以下、Cu:0.1%以下、Mn:0.05%以下、Mg:0.05%以下、Zn:0.1%以下、Ti:0.1%以下、B:6ppm以下の成分組成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−104866号公報
【特許文献2】特開2009−146645号公報
【特許文献3】特開2009−287116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
リチウムイオン二次電池等の電池の軽量化に対しては、高強度のアルミニウム合金、例えば、JIS−A3000系のうち、特に、A3003やA3005を蓋体及び外装体に使用して、これらをレーザ溶接してアルミニウム缶体に組み立てることが望まれる。ここで、上記したように、溶接の接合強度を高めるには、溶融接合部をより深く形成して接合面積を広く取ることが好ましい。一方で、高強度のアルミニウム合金の採用とともに蓋体及び/又は外装体の板厚は薄くなり、溶融接合部の幅を大きく取ることができない。つまり、溶融接合部の深さ方向だけを大きくすることが望まれ、高エネルギー密度のキーホール型溶接などが採用され得る。しかしながら、特許文献1乃至3にも開示されているように、高エネルギー密度のレーザ溶接において、ルート割れやポロシティを生じさせることなく、健全な溶融接合部を安定的に与えることは難しい。
【0008】
本発明は以上のような状況に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、高強度のアルミニウム合金板体からなる蓋体及び外装体をレーザ溶接して組み立てた二次電池用アルミニウム缶体について、ルート割れやポロシティを生じさせることなく、健全な溶融接合部を安定的に与え得る二次電池用アルミニウム缶体の製造方法、及び、かかる健全な接合部を与えられてより高い継手強度を有することで、全体としてより高い機械強度を有する二次電池用アルミニウム缶体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による二次電池用アルミニウム缶体の製造方法は、アルミニウム合金板体からなる蓋体及び外装体をレーザ溶接して組み立てた二次電池用アルミニウム缶体の製造方法であって、少なくとも、質量比で、Siを0.30%以下とした上でBを2〜30ppmの範囲内で含むアルミニウム合金からなる合金板体を用意し、第1の合金板体の側縁端部に沿って第2の合金板体の端面を突き合わせる配置ステップと、前記第1の合金板体の端面にできる突き合わせ線に沿って連続レーザ溶接する溶接ステップと、を含み、前記溶接ステップは、前記突き合わせ線を挟んで与えられる溶融接合部の深さDに対する幅Wの比を1.5以上とするようにレーザ溶接条件を制御するステップを含むことを特徴とする。
【0010】
かかる発明によれば、レーザ溶接による二次電池用アルミニウム缶体の組み立てにおいて、連続レーザのエネルギー密度の制御で溶融接合部の深さDに対する幅Wの比を所定以上としつつ、アルミニウム合金板体の成分組成の調製により溶融接合部の深さDをより大とでき、しかも割れやポロシティを生じさせずに健全な溶融接合部を安定的に与え得るのである。つまり、健全な接合部を与えられてより高い機械強度を有する二次電池用アルミニウム缶体を提供できるのである。
【0011】
上記した発明において、前記配置ステップは、前記第1の合金板体若しくは前記第2の合金板体の一方若しくは双方に、質量比で、必須添加元素として、Si:0.05〜0.30%、Fe:0.05〜0.7%、Cu:0.05〜0.25%、Mn:0.8〜1.5%、B:2〜20ppm、任意添加元素として、Mg:0.05%以下、Ti:0.1%以下の範囲内で残部Al及び不可避的不純物からなる成分組成のアルミニウム合金板体を用意するステップを含むことを特徴としてもよい。かかる発明によれば、A3003材相当の機械強度を有する二次電池用アルミニウム缶体を提供できる。
【0012】
上記した発明において、前記配置ステップは、前記第1の合金板体若しくは前記第2の合金板体の一方若しくは双方に、質量比で、必須添加元素として、Si:0.05〜0.30%、Fe:0.05〜0.7%、Cu:0.05〜0.3%、Mn:0.8〜1.5%、Mg:0.2〜0.6%、B:2〜30ppm、任意添加元素として、Ti:0.1%以下の範囲内で残部Al及び不可避的不純物からなる成分組成のアルミニウム合金板体を用意するステップを含むことを特徴としてもよい。かかる発明によれば、A3005材相当の高い機械強度を有する二次電池用アルミニウム缶体を提供できる。
【0013】
上記した発明において、前記配置ステップは、前記第1の合金板体若しくは前記第2の合金板体の他方に、質量比で、必須添加元素として、B:2〜10ppm、任意添加元素として、Si:0.30%以下、Fe:0.6%以下、Cu:0.1%以下、Mn:0.05%以下、Mg:0.05%以下、Zn:0.1%以下、Ti:0.04%以下の範囲内で残部Al及び不可避的不純物からなる成分組成のアルミニウム合金板体を前記蓋体として用意するステップを更に含むことを特徴としてもよい。かかる発明によれば、要求に応じて、外装体よりも母材の機械強度を低減した蓋体を採用した場合にあっても、レーザ溶接による二次電池用アルミニウム缶体の組み立てにおいて、連続レーザのエネルギー密度の制御で溶融接合部の深さDに対する幅Wの比を所定以上としつつ、溶融接合部の深さDをより大とでき、しかも割れやポロシティを生じさせずに健全な溶融接合部を安定的に与え得るのである。
【0014】
上記した発明において、前記第1の合金板体の側縁端部に沿って切り込み部を有することを特徴としてもよい。かかる発明によれば、板体の位置合わせ及び仮固定を容易且つ精度良く行い得るので、安定的に健全な溶融接合部を与え得る。
【0015】
更に、本発明による二次電池用アルミニウム缶体は、アルミニウム合金板体からなる蓋体及び外装体をレーザ溶接して組み立てた二次電池用アルミニウム缶体であって、前記アルミニウム合金板体が、質量比で、少なくとも、Siを0.30%以下とした上でBを2〜30ppmの範囲内で含むアルミニウム合金であり、第1の合金板体の側縁端部に沿って第2の合金板体の端面を突き合わせて前記第1の合金板体の端面にできる突き合わせ線に沿って連続レーザ溶接され、前記突き合わせ線を挟んで与えられた溶融接合部の深さDに対する幅Wの比が1.5以上でありながら深さDが0.35mm以上であることを特徴とする。
【0016】
かかる発明によれば、レーザ溶接により組み立てられた二次電池用アルミニウム缶体において、連続レーザのエネルギー密度の制御で溶融接合部の深さDに対する幅Wの比を所定以上としつつ、アルミニウム合金板体の成分組成の調製により溶融接合部の深さDをより大とされ、しかも割れやポロシティを生じさせずに健全な溶融接合部を安定的に与えられるのである。つまり、健全な接合部を有しより高い機械強度を有する二次電池用アルミニウム缶体を提供できるのである。
【0017】
上記した発明において、前記第1の合金板体若しくは前記第2の合金板体の一方若しくは双方が、質量比で、必須添加元素として、Si:0.05〜0.30%、Fe:0.05〜0.7%、Cu:0.05〜0.25%、Mn:0.8〜1.5%、B:2〜20ppm、任意添加元素として、Mg:0.05%以下、Ti:0.1%以下の範囲内で残部Al及び不可避的不純物からなる成分組成を有することを特徴としてもよい。かかる発明によれば、A3003材相当の機械強度を有する缶体を得られるのである。
【0018】
上記した発明において、前記第1の合金板体若しくは前記第2の合金板体の一方若しくは双方が、質量比で、必須添加元素として、Si:0.05〜0.30%、Fe:0.05〜0.7%、Cu:0.05〜0.3%、Mn:0.8〜1.5%、Mg:0.2〜0.6%、B:2〜30ppm、任意添加元素として、Ti:0.1%以下の範囲内で残部Al及び不可避的不純物からなる成分組成を有することを特徴としてもよい。かかる発明によれば、A3005材相当の高い機械強度を有する缶体を得られるのである。
【0019】
上記した発明において、前記第1の合金板体若しくは前記第2の合金板体の他方が、前記蓋体であり、且つ、質量比で、必須添加元素として、B:2〜10ppm、任意添加元素として、Si:0.30%以下、Fe:0.6%以下、Cu:0.1%以下、Mn:0.05%以下、Mg:0.05%以下、Zn:0.1%以下、Ti:0.04%以下の範囲内で残部Al及び不可避的不純物からなる成分組成を有することを特徴としてもよい。かかる発明によれば、外装体よりも機械強度を低減した蓋体を採用する場合にあっても、溶融接合部の深さDに対する幅Wの比を所定以上としつつ溶融接合部の深さDが大であり、二次電池用アルミニウム缶体は割れやポロシティの少ない健全な溶融接合部を有し得て高い機械強度を有するのである。
【0020】
上記した発明において、前記第1の合金板体の側縁端部に沿って切り込み部を与えた上で溶接されたことを特徴としてもよい。かかる発明によれば、板体の位置合わせ及び仮固定を容易且つ精度良く行い得るので、安定的に健全な溶融接合部を与え得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】溶接試験における溶接継手の斜視図及び断面図である。
【図2】溶接試験における溶接継手の合金成分の代表値である。
【図3】溶接試験における溶接継手の合金成分及び試験結果を示す図である。
【図4】溶接試験における溶接継手の合金成分及び試験結果を示す図である。
【図5】溶接試験におけるポロシティ良否判定のための写真である。
【図6】溶接試験における割れ良否判定のための写真である。
【図7】引張試験における試験体の斜視図である。
【図8】他の溶接継手の断面図である。
【図9】更に他の溶接継手の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
二次電池用アルミニウム缶体をレーザ溶接で組み立てるにあたり、溶融接合部での更なる高い機械強度を得るには、溶融接合部を深く形成することが必要である。しかしながら、溶融接合部を深く形成できるとされる高密度レーザによるキーホール型溶接では、ルート割れやポロシティといった欠陥や溶融接合部の乱れが発生しやすい。本発明者は、二次電池用アルミニウム缶体のように溶融接合部の外観も含めて安定して健全な溶接を要求される用途において、かかる溶接の適用は困難であると結論付けた。そこで、エネルギー密度を下げてキーホールを生じない熱伝導型レーザ溶接で健全な溶融接合部を得ながら、なおかつ溶融接合部を深くできるよう、被溶接対象である二次電池用アルミニウム缶体の製造に使用される高強度アルミニウム合金板体の成分組成を変更することを鋭意検討した。その結果、高強度アルミニウム合金に含有される成分のうち、特に、Si及びBの含有量を調整することで、二次電池用アルミニウム缶体として必要とされる機械的強度を与えるような溶融接合部の深さを得られ、しかも安定して健全な溶融接合部を得られることを見出した。Mgの添加されているアルミニウム合金においても、Mgの添加量も併せて調整することで、Mgの添加されていないアルミニウム合金と同等の溶融接合部を得られることを見出した。
【0023】
以上に関して、深さを有しつつしかも健全な溶融接合部を安定的に得ることを目的として、本発明者は溶接試験を行っている。かかる溶接試験について、図1乃至図7を用いてその詳細を説明する。
【0024】
図1に示すように、溶接試験では、二次電池用缶体の外装体に相当する筐体板2と蓋体に相当する蓋体板3との2つのアルミニウム合金平板の突き合わせ部を連続レーザ溶接して、溶接長を200mmとするL字型の溶接継手1を作製して各種試験を行っている。なお、筐体板2は、板厚0.5mm、幅50mm、長さ200mmの後述する成分組成のアルミニウム合金板であり、蓋体板3は、板厚1.0mm、幅50mm、長さ200mmのやはり後述する成分組成のアルミニウム合金板である。
【0025】
図1(b)を参照すると、溶接継手1の作製において、筐体板2の端面2a近傍、すなわち筐体板2の側縁端部に蓋体板3の端面3aを突き合わせて配置、仮固定した。ここで突き合わせ面である端面3aの外側縁線とこれに沿って位置する端面2aの縁線とを突き合わせ線5とする。
【0026】
次に、マルチモードのCW(連続発振)ファイバーレーザを用い、突き合わせ線5に沿って端面2aの直上からレーザ光6を照射し、溶接速度を5m/分、前進角を10°とし、シールドガスとして窒素を20リットル/分で溶接部に供給しながらレーザ溶接した。溶融接合部4は、突き合わせ線5を挟んで筐体板2及び蓋体板3の両者に跨って形成され、筐体板2及び蓋体板3が接合され、溶接継手1が得られる。
【0027】
なお、レーザは、加工点と焦点との距離を0とし、集光ビーム径を0.8mm、その出力は2500〜3200Wで調整した。ここで、図1(c)を参照すると、かかる熱伝導型となるレーザ出力密度の溶接では、溶融接合部4の深さDに対する幅Wの比が1.5以上となるが、後述する実施例において、いずれもかかる出力範囲程度で溶融接合部4の深さDを0.35mm以上とすることが出来ることを確認できたため、溶融接合部4の深さDが0.4mm(±0.01mm)となるようにレーザ出力を調整した。
【0028】
また、後述する比較例では、溶融接合部4にキーホールを形成するようなキーホール型溶接をしているが、ここではレーザは、加工点と焦点との距離を0とし、集光ビーム径を0.2mmに絞り、その出力は600〜800Wで調整して、上記と同様に溶接を行っている。
【0029】
溶接継手1の作製に用いたアルミニウム合金板の成分組成はJIS−H4000に規定される合金番号3003、3005及び1050の成分組成を変更したもので、それぞれ以下において3003系、3005系、1050系と呼ぶ。これらの成分組成のアルミニウム合金板体を筐体板2及び蓋体板3の双方に使用した。図2には、3003系、3005系及び1050系のそれぞれの代表成分を示した。また、図3には、実施例1〜15及び比較例1〜21の溶接継手1に使用したアルミニウム合金の成分組成のうち、Si、Mg、Bだけについて示した。すなわち、これ以外の成分組成については、図2の3003系及び3005系の代表成分と同じである。さらに、蓋体板3に1050系を使用し、筐体板2に3003系又は3005系を使用した場合についての実施例16〜21及び比較例22〜30についても、同様に図4に示した。ここで、各成分の含有量はいずれも質量比であり、以下、単に%又はppmで表記する。
【0030】
図3及び図4に試験結果を示した。なお、レーザ溶接条件の欄において、「K」はキーホール型溶接となるレーザ出力及び溶接速度の条件、「H」は熱伝導型溶接となるレーザ出力及び溶接速度の条件で溶接を行ったことを示している。
【0031】
「外観」は、得られた各溶接継手1の溶接長200mmの全体を外観目視観察して判定を行った。溶融接合部4の乱れがなく安定した外観を得られた場合を良好と判定し、図3及び図4において「○」で示した。局所的に溶融接合部4の幅が変化したりアンダーカットが発生したりして外観の乱れた部分を1カ所だけ有する場合を可と判定し、図3及び図4において「△」で示した。それ以上の数の外観の乱れがある場合を不可と判定し、図3及び図4において「×」で示した。
【0032】
「ポロシティ」及び「割れ」は、溶接継手1の溶接長200mmから20mmの長さの試料を任意の2カ所から切り出して研磨し、光学顕微鏡観察をして判定を行った。なお、観察は、溶接継手1の長手方向に沿った溶接線方向の断面で溶融接合部4の中心部を観察した。「ポロシティ」の判定では、図5(a)に示すように、直径50μm以上のポロシティが観察されないものを良好と判定し、図3及び図4において「○」で示した。図5(b)に示すように、直径100μmまでのポロシティが溶接長10mmに対し5個以下のものを可と判定し、図3及び図4において「△」で示した。図5(c)に示すように、それ以上の大きさのポロシティが観察されたものを不可と判定し、図3及び図4において「×」で示した。また、「割れ」の判定では、図6(a)に示すように、割れの観察されなかったものを良好と判定し、図3及び図4において「○」で示した。図6(b)に示すように、割れの観察されたものを不可と判定し、図3及び図4において「×」で示した。
【0033】
「継手強度」は、3005系に対応する実施例5〜12、比較例5〜16について、引張試験により判定を行った。詳細には、図7に示すように、各溶接継手1の溶接長200mmから任意の位置で20mmの長さに切り出した試験体1bでその筐体板2bをジグ20に固定して引張試験を行っている。図示しない引張試験機の一方のチャックに取付けられたL型ジグ21の上面に筐体板2bの主面を当接させて、筐体板2bを押さえ板22で上から押さえてボルト23及びナット24で固定する。さらに、試験体1bの蓋体板3bの中心を図示しない引張試験機の引張りの中心軸Mに重ねるように、蓋体板3bを図示しないチャックに取付ける。これにより、試験体1bを、その突き合わせ面を境にして上下に分断するように引っ張る。引張り強度を試験体1bの蓋体板3bの断面積で割った値が3003系の標準的な継手強度である110N/mmよりも10%高い121N/mm以上の場合に良好と判定し、121N/mm未満であった場合を不可と判定することとし、それぞれを図3及び図4において「○」「×」で示した。
【0034】
「評価」は、上記した「外観」、「ポロシティ」、「割れ」及び「継手強度」の各判定結果により、各溶接継手1の溶接試験結果を判定した。つまり、図3及び図4において、上記した判定結果が全て良好のものを「良好」、判定結果に可が含まれて不可のないものを「可」、判定結果に不可が含まれているものを「不可」で示した。
【0035】
図3の試験結果について述べる。まず、レーザ溶接条件を「K」とした3003系の比較例1〜4、3005系の比較例10〜16、1050系の比較例18〜21については、いずれも「外観」において「不可」となり、溶接試験の「評価」がいずれも「不可」となっている。また、「ポロシティ」においても「良好」との結果は得られていない。つまり、キーホール型溶接によっては溶融接合部4を健全に得ることは困難である。
【0036】
次に、3003系の実施例1及び2では、溶接試験の「評価」は「良好」であり、実施例3及び4では、溶接試験結果の「評価」は「可」であった。この熱伝導型溶接による実施例は、必要な深さDとともに健全な溶融接合部4を得られた。なお、実施例3及び4については、溶融接合部4の一部にわずかに乱れが観察され、「外観」において「可」であった。考察するに、Bの含有量において、実施例1及び2の5.7ppm及び9.7ppmに比べ、実施例3及び4では11.0ppm及び17.3ppmと高く、10ppmを超えている。詳細は後述するが、これが溶融接合部4の乱れの原因であると考える。よって、3003系においてBの含有量の上限は20ppmではあるが、より好ましい含有量の上限は10ppmである。
【0037】
また、3005系の実施例5及び6では、溶接試験結果の「評価」は「良好」であり、実施例7及び8では、溶接試験結果の「評価」は「可」であった。この熱伝導型溶接による実施例では、必要な深さDとともに健全な溶融接合部4を得られた。なお、実施例7及び8については、溶融接合部4の一部にわずかに乱れが観察され、「外観」において「可」であった。考察するに、Bの含有量において、実施例5及び6の9.8ppm及び16.3ppmに比べ、実施例7及び8では20.9ppm及び26.7ppmと高く、20ppmを超えている。詳細は後述するが、これが溶融接合部4の乱れの原因であると考える。よって、3005系においてBの含有量の上限は30ppmであるが、より好ましい含有量の上限は20ppmである。
【0038】
さらに、1050系の実施例13及び14では、溶接試験結果の「評価」は「良好」であり、実施例15では、溶接試験結果の「評価」は「可」であった。この熱伝導型溶接による実施例では、必要な深さDとともに健全な溶融接合部4を得られた。なお、実施例15については、溶融接合部4の一部にわずかに乱れが観察され、「外観」において「可」であった。考察するに、Bの含有量において、実施例13及び14の2.7ppm及び5.3ppmに比べ、実施例15では9.2ppmと高く、6ppmを超えている。詳細は後述するが、これが溶融接合部4の乱れの原因であると考える。また、比較例17ではBの含有量が13.4ppmと高く、10ppmを超えている。その結果、溶融接合部4に乱れが観察され「外観」において「不可」、すなわち溶接試験結果の「評価」は「不可」であった。よって、1050系においてBの含有量の上限は10ppmであり、より好ましい含有量の上限は6ppmである。
【0039】
次に、3005系の実施例9、比較例5及び6では、Siの含有量を順に0.25%、0.32%及び0.45%としている。その結果、Siの含有量を0.25%とした実施例9では、溶接試験結果の「評価」は「良好」であったが、Siの含有量を0.30%よりも多くした比較例5及び6において「割れ」が「不可」となり、「ポロシティ」においても「良好」との結果を得られておらず、溶接試験結果の「評価」は「不可」であった。詳細は後述するが、Siの含有量の高いことが割れの原因であると考えられ、3005系においてSiの含有量の上限は0.30%である。
【0040】
次に、3005系の比較例7、実施例10〜12、比較例8及び9では、Mgの含有量を順に0.11%、0.21%、0.39%、0.52%、0.64%及び0.78%としている。その結果、Mgの含有量を0.2%未満とした比較例7では、「継手強度」が「不可」となり、Mg含有量を0.6%より多くした比較例8及び9では、「割れ」が「不可」となったが、実施例10〜12においては溶接試験結果の「評価」で「良好」であった。詳細は後述するが、Mgの含有量を少なくしたことが強度低下の原因であり、Mgの含有量を多くしたことが割れの原因であると考えられる。よって、3005系においてMgの含有量は0.2〜0.6%の範囲内である。
【0041】
以上において、レーザ溶接による二次電池用アルミニウム缶体の組み立てでは、連続レーザのエネルギー密度や溶接速度などを調整して、溶融接合部4の深さDに対する幅Wの比を1.5以上とする溶接、すなわち熱伝導型溶接としながら、一般的な二次電池用アルミニウム缶体の板体厚さに対して必要な機械強度を与える溶融接合部4の深さ0.35mm以上の深さ0.4mm(±0.01mm)を得られるのである。その上で、3003系に対応する成分組成ではSi及びBの含有量を調整することで、3005系に対応する成分組成ではSi、B及びMgの含有量を調整することで、1050系に対応する成分組成ではBの含有量を調整することで、それぞれ健全な溶融接合部4を得ることができる。つまり、健全な接合部を有し、より高い機械的強度を有する二次電池用アルミニウム缶体を得ることができる。
【0042】
なお、溶融接合部の健全性について、一般的なアルミニウム合金溶接部材の中でより厳しい要求のあるリチウムイオン二次電池用アルミニウム缶体を得る場合は、上記した溶接試験の「評価」を「可」とするだけではなく、「良好」とする必要に基づいて成分組成の範囲が定められる。すなわち、Bの含有量の上限は、3003系に対応する成分組成において10ppm、3005系に対応する成分組成において20ppm、1050系に対応する成分組成において6ppmである。
【0043】
続いて図4の試験結果について述べる。まず、レーザ溶接条件を「K」とし、筐体板2を3003系とした比較例24及び25、筐体板2を3005系とした比較例29及び30については、いずれも「ポロシティ」において「不可」となり、溶接試験の「評価」がいずれも「不可」となっている。つまり、キーホール型溶接によっては溶融接合部4を健全に得ることは困難である。
【0044】
さらに、筐体板2を3003系とした実施例16〜18、比較例22では、蓋体板3に使用した1050系の成分組成において、Bの含有量を順に2.7ppm、5.3ppm、9.2ppm、13.4ppmとしており、上記した実施例13〜15、比較例17と蓋体板3について同様である。溶接試験結果も、実施例16及び17では実施例13及び14と同様に「評価」が「良好」であり、実施例18では実施例15と同様に「外観」が「可」であるため「評価」も「可」であり、比較例22では比較例17と同様に「外観」が「不可」であるため「評価」も「不可」であった。これらの結果の違いは蓋体板3についてのBの含有量の違いによるものであると考えられる。すなわち、上記した実施例13〜15、比較例17と同様の考察を与えられる。
【0045】
また、筐体板2を3005系とした実施例19〜21、比較例26についても、上記した実施例16〜18及び比較例22と同様の溶接試験結果である。これらの結果についても、上記した実施例13〜15、比較例17と同様の考察を与えられる。
【0046】
さらに、筐体板2を3003系とした比較例23においては、筐体板2のBの含有量が27.2ppmと高く、溶融接合部4に乱れが観察され、「外観」において「不可」、すなわち溶接試験結果の「評価」は「不可」であった。3003系の成分組成においてBの含有量の上限が20ppmであることを上記したが、その裏付けとなる結果であった。
【0047】
次に、比較例27においては、筐体板2に使用した3005系の成分組成において、Siを0.45%と高くしている。上記した比較例6と同様に、Siの含有量を0.30%よりも多くした結果「割れ」が「不可」となり、溶接試験結果の「評価」は「不可」であった。上記した比較例6と同様に、Siの含有量の高いことが割れの原因であると考えられる。
【0048】
また、比較例28においては、筐体板2に使用した3005系の成分組成において、Mgを0.78%と高くしている。上記した比較例9と同様に、Mgの含有量を0.6%より多くした結果「割れ」が「不可」となり、溶接試験結果の「評価」は「不可」であった。比較例9と同様に、Mgの含有量を多くしたことが割れの原因であると考えられる。
【0049】
次に、上記した実施例と同等の溶融接合部を得るにあたり、二次電池用アルミニウム缶体の組み立てに用いられる3003系及び3005系のアルミニウム合金板体としての必須添加元素の成分範囲を定めた理由について説明する。
【0050】
Siは、母相内に固溶してアルミニウム合金板体として必要とされる機械的強度を向上させ、組み立て後の二次電池用アルミニウム缶体として必要とされる耐圧強度を向上させる。また、Al−Fe−Mn−Si系金属間化合物を形成し、アルミニウム合金板体の成形加工時の成形性を向上させる。一方で過剰に添加すると、割れの起点となりやすい粗大な金属間化合物を増加させアルミニウム合金板体の成形性を低下させて、溶接割れを生じさせやすくなる。そこで、上記した溶接試験の結果も踏まえ、Siの添加量は、0.05〜0.30%の範囲内である。
【0051】
Feは、Al−Fe−Mn系金属間化合物やAl−Fe−Mn−Si系金属間化合物を形成し、かかる金属間化合物を微細に析出させて、アルミニウム合金板体の成形加工時の潤滑効果を向上させて成形性を向上させる。一方で過剰に添加すると、割れの起点となりやすい粗大な金属間化合物を増加させ、アルミニウム合金板体の成形性を低下させる。そこで、Feの添加量は、0.05〜0.7%の範囲内である。
【0052】
Cuは、母相内に固溶してアルミニウム合金板体として必要とされる機械的強度を向上させる。一方で過剰に添加すると、溶接割れが生じやすくなる。そこで、Cuの添加量は、3003系に対応するアルミニウム合金において0.05〜0.25%の範囲内、3005系に対応するアルミニウム合金において0.05〜0.3%の範囲内である。
【0053】
Mnは、母相内に固溶してアルミニウム合金板体として必要とされる機械的強度をその添加量の増加に伴って向上させ得て、組み立て後の二次電池用アルミニウム缶体として必要とされる耐圧強度を向上させる。Al−Fe−Mn系金属間化合物やAl−Fe−Mn−Si系金属間化合物を形成し、かかる金属間化合物を微細に析出させることでアルミニウム合金板体の成形加工時に潤滑効果を向上させて成形性を向上させる。一方で過剰に添加すると、割れの起点となりやすい粗大な金属間化合物を増加させ、アルミニウム合金板体の成形性を低下させる。そこで、Mnの添加量は、0.8〜1.5%の範囲内である。
【0054】
Bは、アルミニウム合金のスラブ造塊時において、鋳造組織を微細化し均質化することで圧延用スラブの鋳造割れを防止し得る。一方で過剰に添加すると、溶接時の溶融ビード中にポロシティを発生させやすく、さらに溶融ビード中の溶融金属の対流によりポロシティを凝集させることで溶融接合部の乱れを生じさせやすくする。なお、後述するMgの添加によりポロシティの発生に対するBの影響を小さくし得るため、Mgの含有量に伴いその添加量を調整され得る。そこで、上記した溶接試験の結果も踏まえ、Bの添加量は、3003系に対応するアルミニウム合金おいて2〜20ppmの範囲内、より好ましくは2〜10ppmの範囲内、3005系において2〜30ppmの範囲内、より好ましくは2〜20ppmの範囲内である。
【0055】
Mgは、3005系において必須添加元素であるが、3003系においては任意添加元素である。Mgは、母相内に固溶してアルミニウム合金板体として必要とされる機械的強度をその添加量の増加に伴って向上させ得て、組み立て後の二次電池用アルミニウム缶体として必要とされる耐圧強度を向上させる。また、MgSiやS’相(AlCuMg)を微細に析出させ、転移の移動を抑制させることで応力緩和を抑制し、アルミニウム合金板体として必要とされる耐応力緩和性を向上させる。一方で過剰に含有すると、加工硬化を促進させ、アルミニウム合金板体として必要とされる成形性を損なう。また、溶接時に割れやポロシティを発生させやすくなる。かかる観点から、そして上記した溶接試験の結果も踏まえ、Mgの含有量は、3003系に対応するアルミニウム合金において0.05%以下の範囲内、3005系に対応するアルミニウム合金において0.2〜0.6%の範囲内である。
【0056】
さらに、二次電池用アルミニウム缶体の組み立てに用いられる3003系及び3005系のアルミニウム合金板体としての任意添加元素の成分範囲を定めた理由について説明する。
【0057】
Tiは、アルミニウム合金のスラブ造塊時において、鋳造組織を微細化し均質化することで圧延用スラブの鋳造割れを防止し得る。一方で過剰に含有すると、溶接時に溶融金属の対流を不安定にさせ、溶融接合部にポロシティを残留させやすくさせてしまう。かかる観点から、Tiの含有量は0.1%以下の範囲内である。
【0058】
その他の不純物元素として、Zn、Zr、Cr、Ga、V、Ni等が挙げられるが、いずれも0.05%以下の含有量とし、Ti及びBを加えた合計を0.15%以下の含有量とすることで上記した物理的特性に大きな影響を与えない。
【0059】
なお、外装体及び蓋体の両者に同一の成分組成のアルミニウム合金板体を使用すれば、機械的強度や溶接性において有利であり、組立て後のリサイクル性において有利である。
【0060】
さらに、外装体に比べて要求される機械的強度が低い蓋体には、純アルミニウムを使用することもできる。特に、高い導電性を要求される蓋体においては純アルミニウムであることが好ましい。純アルミニウムの成分組成は、例えば、JIS H4000に規定される合金番号1050、1060、1070、1080、1085などの化学成分の範囲から適宜選択できる。この場合においても、上記した1050系のアルミニウム合金板体を用いた実施例と同様に、必須添加元素としてBを2〜10ppmの範囲内、より好ましくは2〜6ppmの範囲内とし、任意添加元素としてTiを0.04%以下として溶融接合部の乱れを低減させ得る。さらに、他の任意添加元素として、Siは0.30%以下、Feは0.6%以下、Cuは0.1%以下、Mnは0.05%以下、Mgは0.05%以下、Znは0.1%以下の範囲内とすることが好ましい。
【0061】
また、上記した溶接試験においては、筐体板2の側縁端部に蓋体板3の端面3aを突き合わせて溶接したが、筐体板2と蓋体板3との突き合わせの関係を他の関係としても同様である。例えば、図8(a)に示すように、蓋体板3の端面3a近傍、すなわち蓋体板3の側縁端部に筐体板2の端面2aを突き合わせ、筐体板2に蓋体板3を乗せるように配置してもよい。この場合、突き合わせ面である端面2aの外側縁線とこれに沿って位置する端面3aの縁線とを突き合わせ線5とするように配置され、図8(b)に示すように突き合わせ線5の位置に溶融接合部4を形成するよう溶接される。
【0062】
さらに、例えば、図9(a)に示すように、蓋体板3の側縁端部に筐体板2の板厚とほぼ同寸の深さの切り込み部3bを与え、これに筐体板2をはめ込むようにして蓋体板3の側縁端部に端面2aを突き合わせても同様である。すなわち、この場合も突き合わせ面である端面2aの外側縁線とこれに沿って位置する端面3aの縁線とを突き合わせ線5とするように配置され、図9(b)に示すように突き合わせ線5の位置に溶融接合部4を形成するよう溶接される。
【0063】
以上、本発明による実施例及びこれに基づく変形例を説明したが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の主旨又は添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、様々な代替実施例及び改変例を見出すことができるであろう。
【符号の説明】
【0064】
1 溶接継手
2 筐体板
3 蓋体板
4 溶融接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金板体からなる蓋体及び外装体をレーザ溶接して組み立てた二次電池用アルミニウム缶体の製造方法であって、
少なくとも、質量比で、Siを0.30%以下とした上でBを2〜30ppmの範囲内で含むアルミニウム合金からなる合金板体を用意し、第1の合金板体の側縁端部に沿って第2の合金板体の端面を突き合わせる配置ステップと、
前記第1の合金板体の端面にできる突き合わせ線に沿って連続レーザ溶接する溶接ステップと、を含み、
前記溶接ステップは、前記突き合わせ線を挟んで与えられる溶融接合部の深さDに対する幅Wの比を1.5以上とするようにレーザ溶接条件を制御するステップを含むことを特徴とする二次電池用アルミニウム缶体の製造方法。
【請求項2】
前記配置ステップは、前記第1の合金板体若しくは前記第2の合金板体の一方若しくは双方に、質量比で、必須添加元素として、Si:0.05〜0.30%、Fe:0.05〜0.7%、Cu:0.05〜0.20%、Mn:0.8〜1.5%、B:2〜20ppm、任意添加元素として、Mg:0.05%以下、Ti:0.1%以下の範囲内で残部Al及び不可避的不純物からなる成分組成のアルミニウム合金板体を用意するステップを含むことを特徴とする請求項1記載の二次電池用アルミニウム缶体の製造方法。
【請求項3】
前記配置ステップは、前記第1の合金板体若しくは前記第2の合金板体の一方若しくは双方に、質量比で、必須添加元素として、Si:0.05〜0.30%、Fe:0.05〜0.7%、Cu:0.05〜0.3%、Mn:0.8〜1.5%、Mg:0.2〜0.6%、B:2〜30ppm、任意添加元素として、Ti:0.1%以下の範囲内で残部Al及び不可避的不純物からなる成分組成のアルミニウム合金板体を用意するステップを含むことを特徴とする請求項1記載の二次電池用アルミニウム缶体の製造方法。
【請求項4】
前記配置ステップは、前記第1の合金板体若しくは前記第2の合金板体の他方に、質量比で、必須添加元素として、B:2〜10ppm、任意添加元素として、Si:0.30%以下、Fe:0.6%以下、Cu:0.1%以下、Mn:0.05%以下、Mg:0.05%以下、Zn:0.1%以下、Ti:0.04%以下の範囲内で残部Al及び不可避的不純物からなる成分組成のアルミニウム合金板体を前記蓋体として用意するステップを更に含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の二次電池用アルミニウム缶体の製造方法。
【請求項5】
前記第1の合金板体の側縁端部に沿って切り込み部を有することを特徴とする請求項1乃至4のうちの1つに記載の二次電池用アルミニウム缶体の製造方法。
【請求項6】
アルミニウム合金板体からなる蓋体及び外装体をレーザ溶接して組み立てた二次電池用アルミニウム缶体であって、
前記アルミニウム合金板体が、質量比で、少なくとも、Siを0.30%以下とした上でBを2〜30ppmの範囲内で含むアルミニウム合金であり、
第1の合金板体の側縁端部に沿って第2の合金板体の端面を突き合わせて前記第1の合金板体の端面にできる突き合わせ線に沿って連続レーザ溶接され、前記突き合わせ線を挟んで与えられた溶融接合部の深さDに対する幅Wの比が1.5以上でありながら深さDが0.35mm以上であることを特徴とする二次電池用アルミニウム缶体。
【請求項7】
前記第1の合金板体若しくは前記第2の合金板体の一方若しくは双方が、
質量比で、必須添加元素として、Si:0.05〜0.30%、Fe:0.05〜0.7%、Cu:0.05〜0.25%、Mn:0.8〜1.5%、B:2〜20ppm、任意添加元素として、Mg:0.05%以下、Ti:0.1%以下の範囲内で残部Al及び不可避的不純物からなる成分組成を有することを特徴とする請求項6記載の二次電池用アルミニウム缶体。
【請求項8】
前記第1の合金板体若しくは前記第2の合金板体の一方若しくは双方が、
質量比で、必須添加元素として、Si:0.05〜0.30%、Fe:0.05〜0.7%、Cu:0.05〜0.3%、Mn:0.8〜1.5%、Mg:0.2〜0.6%、B:2〜30ppm、任意添加元素として、Ti:0.1%以下の範囲内で残部Al及び不可避的不純物からなる成分組成を有することを特徴とする請求項6記載の二次電池用アルミニウム缶体。
【請求項9】
前記第1の合金板体若しくは前記第2の合金板体の他方が、
前記蓋体であり、且つ、
質量比で、必須添加元素として、B:2〜10ppm、任意添加元素として、Si:0.30%以下、Fe:0.6%以下、Cu:0.1%以下、Mn:0.05%以下、Mg:0.05%以下、Zn:0.1%以下、Ti:0.04%以下の範囲内で残部Al及び不可避的不純物からなる成分組成を有することを特徴とする請求項7又は8に記載の二次電池用アルミニウム缶体。
【請求項10】
前記第1の合金板体の側縁端部に沿って切り込み部を与えた上で溶接されたことを特徴とする請求項6乃至9のうちの1つに記載の二次電池用アルミニウム缶体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図9】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−97900(P2013−97900A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237258(P2011−237258)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】