説明

二次電池用電極板、二次電池用負極板およびこれを用いた二次電池

【課題】粒状結着材を溶融結合して粗大化し面的に接続結合することで、結着材を低減した場合でも十分な結着力を得ることが可能となり、活物質の比率を高めた高容量な電池を提供することができる。
【解決手段】活物質12と結着材13を分散媒にて混練分散した合剤塗料を集電体11の上に塗着させて合剤層14を形成した二次電池用電極板2であって、前記集電体11と活物質12および活物質同士を複数の粒状結着材を溶融結合して粗大化した結着材13で面的に接続結合したことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウムイオン二次電池に代表される二次電池に関し、特に二次電池用電極板、二次電池用負極板およびこれを用いた二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯用電子機器や電気自動車の電源として利用が広がっている二次電池としてのリチウムイオン二次電池は、正極にLiCoO2等の遷移金属とリチウムの複合酸化物を活物質として用い、負極にリチウムの吸蔵および放出が可能な炭素質材料等を用いており、これによって、高電位で高放電容量のリチウムイオン二次電池を実現している。しかし、近年の電子機器の多機能化や電気自動車の商品化に伴って更なるリチウムイオン二次電池の高容量化が望まれている。
【0003】
ここで、高容量のリチウムイオン二次電池を実現するための構成要素である電極板としては、正極板および負極板ともに各々の構成材料を塗料化した合剤塗料を集電体上に塗布し、乾燥後プレス等により規定の厚みまで圧縮する方法が用いられている。この際、活物質以外の構成材料である結着材の量を低減することで一層の高容量化が可能となる。
【0004】
しかし一般的には結着材を低減すると集電体から合剤層が脱落する不具合やサイクル中に電池が膨れる問題が生じやすくなることが分かっている。
【0005】
そこで、結着材の量を削減しても合剤層と集電体が十分な密着力を得るために水溶性高分子で活物質を事前に被覆する方法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0006】
また、集電体と合剤層の密着強度を高めるために重合度が500以上のポリビニルアルコールとカルボキシメチルセルロースとラテックス系結着材を併用する方法が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−065929号公報
【特許文献2】特開2010−080297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、高電位で高放電容量の電池を実現するためには電極板の活物質比率を高くする必要があり、そのためには結着材を極限まで低減する必要がある。しかし、単純に結着材の添加量を低減すると合剤層と集電体間の密着力が不足して活物質の脱落などの不具合を生ずる。
【0009】
上述した特許文献1は水溶性高分子で活物質を事前に被覆する方法を提案しているが、水溶性高分子は塗料作製時に溶媒中へ溶解し活物質から遊離しやすいため、塗料粘度の上昇や結着力の変動といった不具合を生じやすい。
【0010】
また特許文献2で使用したポリビニルアルコールは電解液に溶けやすいため、電池内部での剥離強度の低下によってサイクル劣化やサイクル中に電池が膨れる不具合を招く可能性がある。
【0011】
本発明は、活物質同士の結着力および合剤層と集電体間の剥離強度の両方を高めて合剤層の脱落による電池特性の低下を抑制し、かつ結着材の添加量を削減して活物質比率を高めることで電池容量を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明の二次電池用電極板は、少なくとも活物質と結着材を含む電極合剤層を集電体の表面に形成してなる二次電池用電極板であって、前記集電体と活物質および活物質同士を溶融し粗大化した前記結着材を介して接続結合したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の二次電池用電極板によると、少量の結着材で高い密着力を得ることが可能となり、合剤層における活物質の比率を高めた二次電池用電極板を提供し、電池容量を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明における一実施の形態の二次電池の一例としての円筒形リチウムイオン二次電池の一部切欠斜視図
【図2】本発明における一実施の形態の二次電池電極板の構成を示した断面模式図
【図3】本発明における比較例の二次電池電極板の構成を示した断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1の発明においては、少なくとも活物質と結着材を含む電極合剤層を集電体の表面に形成してなる二次電池用電極板であって、前記集電体と活物質および活物質同士を溶融し粗大化した前記結着材を介して接続結合したことにより、集電体と活物質間の結着力および活物質同士の結着力を高める事が可能となる。
【0016】
本発明の第2の発明においては、溶融し粗大化した結着材は集電体および活物質と面接合したことにより、少量の結着材で結着力を確保することが可能となり、活物質の比率を高めて電池容量を高めることができる。
【0017】
本発明の第3の発明においては、接合した結着材の接続結合寸法を0.5μm〜5μmとしたことにより、十分な結着力を確保し、かつ結着材の活物質への被覆を低減しイオン透過性を確保することが可能となる。
【0018】
本発明の第4の発明においては、結着材を加熱して溶融することで、結着材は集電体および活物質と容易に面接合させることが可能となる。
【0019】
本発明の第5の発明においては、結着材のガラス転移点(Tg)を−20℃〜100℃とすることで、比較的低温で結着材を溶融し面接合することが可能となる。
【0020】
本発明の第6の発明においては、結着材の種類としてスチレンブタジエンゴム、アクリル、酢酸ビニルに代表されるラテックス系結着材から選ばれた少なくとも1種類とすることで、結着材を溶融し粗大化することが可能となる。
【0021】
本発明の第7の発明においては、結着材が極板合剤層の中に活物質100重量部に対して0.2〜2.0重量部(固形分換算)の割合で含有することで、十分な結着力と適度なイオン透過性を確保することが可能となる。
【0022】
本発明の第8の発明においては、二次電池用電極板は負極板であって、合剤層に含まれ
る活物質が天然黒鉛、人造黒鉛、チタン酸リチウムおよびシリコン合金から選ばれた少なくとも1種類を含有することで、結着力が高く電池容量を高める事が可能なリチウムイオン二次電池用の負極板とすることができる。
【0023】
本発明の第9の発明においては、少なくともリチウム含有複合酸化物よりなる正極活物質と導電材および結着材を分散媒にて混練分散した正極合剤塗料を正極集電体の上に付着させて正極合剤層を形成した正極板と少なくともリチウムを保持しうる材料よりなる負極活物質と増粘剤および結着材を分散媒にて混練分散した負極合剤塗料を負極集電体の上に付着させて負極合剤層を形成した負極板との間に多孔質絶縁体を介在させ渦巻状に巻回または積層して構成した電極群を非水電解液とともに電池ケースに封入した二次電池であって、上記第1〜7に記載の二次電池用電極板を正極板または/および負極板として用いることで、容量の高い二次電池を提供することができる。
【0024】
本発明の第10の発明においては、少なくともリチウム含有複合酸化物よりなる正極活物質と導電材および結着材を分散媒にて混練分散した正極合剤塗料を正極集電体の上に付着させて正極合剤層を形成した正極板と少なくともリチウムを保持しうる材料よりなる負極活物質と増粘剤および結着材を分散媒にて混練分散した負極合剤塗料を負極集電体の上に付着させて負極合剤層を形成した負極板との間に多孔質絶縁体を介在させ渦巻状に巻回または積層して構成した電極群を非水電解液とともに電池ケースに封入した二次電池であって、上記第8に記載の二次電池用負極板を負極板として用いたことで、容量の高い二次電池を提供することができる。
【0025】
以下、本発明の一実施の形態について円筒形のリチウムイオン二次電池を例として図面を参照しながら説明するが、本発明は、これのみに限定されることなく角形電池やコイン型電池、ラミネート型電池などでもかまわない。
【0026】
図1は、本発明の一実施の形態にかかる二次電池の構成について示す一部切欠斜視図である。
【0027】
本発明の二次電池としては例えば、図1に示したように複合リチウム酸化物を正極活物質とする正極板1とリチウムを保持しうる材料を負極活物質とする負極板2とを多孔質絶縁体としてのセパレータ3を介して渦巻状に巻回して電極群4が構成されている。この電極群4を有底円筒形の電池ケース5の内部に絶縁板6と共に収容し、電極群4の下部より導出した負極リード7を電池ケース5の底部に接続し、次いで電極群4の上部より導出した正極リード8を封口板9に接続し、電池ケース5に所定量の非水溶媒からなる非水電解液(図示せず)を注液した後、電池ケース5の開口部に封口ガスケット10を周縁に取り付けた封口板9を挿入し電池ケース5の開口部を内方向に折り曲げてかしめ封口して構成することができる。
【0028】
以下に、本発明の一実施の形態にかかる二次電池を構成する負極板2の構成について図2を参照しながら説明する。図2は、本発明の一実施の形態にかかる負極板2の要部拡大断面図である。
【0029】
まず、本発明の望ましい負極板2の構成としては、特に限定されないが集電体11として厚みが5μm〜25μmを有する銅または銅合金製の銅箔を用いることができる。活物質12と結着材13を分散媒中に双腕式練合機等の分散機により混合分散させて負極合剤塗料が作製され、集電体11の上に塗布される。そして、負極板を乾燥した後にプレスにて所定の厚みまで圧縮した後に加熱することで、前記集電体と活物質および活物質同士を溶融し粗大化した前記結着材を介して接続結合した負極板2が得られる。ここで、溶融し粗大化した前記結着材は、前記集電体および前記活物質と面接合しており、接合長さは0
.5〜5μmであることが望ましい。接合長さを0.5〜5μmとすることで結着力を高めることが可能となり、かつ結着材が活物質を被覆することによって起こるイオン透過性の低下を回避することができる。
【0030】
活物質12としては、天然黒鉛、人造黒鉛、チタン酸リチウムおよびシリコン合金から選ばれた少なくとも1種類から選ばれた少なくとも1種類を含有していることが望ましい。
【0031】
結着材13としては、スチレンブタジエンゴム、アクリル、酢酸ビニルに代表されるラテックス系結着材から選ばれた少なくとも1種類、あるいは複数種を組み合わせて用いても良い。
【0032】
結着材13の添加量は正極活物質100重量部に対して0.2〜2.0重量部であることが望ましい。結着材13の添加量が正極活物質100重量部に対して0.2重量部未満の場合は合剤層14と集電体11との接着強度が低下して合剤層の脱落が起こり、2.0重量部を超えると合剤層14に含まれる活物質の比率が減少し電池容量が低下するためである。
【0033】
なお結着材13のガラス転位点(Tg)は−20℃〜100℃であることが望ましい。結着材13のガラス転位点が−20℃未満の場合は、常温で結着材の溶融結合が起こり取り扱いが困難になる。また100℃以上の場合は加熱による溶融が困難になる。
【0034】
一方、正極板1については特に限定されないが、正極集電体として厚みが5μm〜30μmを有するアルミニウムやアルミニウム合金またはニッケルやニッケル合金製の金属箔を用いることができる。この正極集電体の上に塗布する正極合剤塗料としては、正極活物質、導電材、結着材を分散媒中に双腕式練合機等の分散機により混合分散させて正極合剤塗料が作製され、集電体11の上に塗布される。そして、正極板を乾燥した後にプレスにて所定の厚みまで圧縮した後に加熱することで、前記集電体と活物質および活物質同士を溶融し粗大化した前記結着材を介して接続結合した正極板1が得られる。ここで、溶融し粗大化した前記結着材は、前記集電体および前記活物質と面接合しており、接合長さは0.5〜5μmである。
【0035】
正極活物質としては、リチウム含有複合酸化物からなり、前記リチウム含有複合酸化物が、Co、Mg、Mn、Ni、およびAlからなる群から選ばれた少なくとも1種類を含有するものを用いることができる。
【0036】
このときの正極用結着材としてはPVDFおよびその変性体をはじめ各種結着材を用いることができる。
【0037】
上記のように作製した正極合剤塗料を、ダイコーターなどを用いてアルミ箔からなる正極集電体の上に塗布し、次いで乾燥した後にプレスにて所定の厚みまで圧縮することで正極板1が得られる。
【0038】
非水電解液については、電解質塩としてLiPFおよびLIBFなどの各種リチウム化合物を用いることができる。また溶媒としてエチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(EMC)、プロピレンカーボネイト(PC)を単独および組み合わせて用いることができる。また正負極上に良好な皮膜を形成させることや過充電時の安定性を保証するために、ビニレンカーボネート(VC)やシクロヘキシルベンゼン(CHB)およびその変性体を用いることも好ましい。
【0039】
セパレータ3については、リチウムイオン二次電池の使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の微多孔フィルムを、単一あるいは複合して用いるのが一般的でありまた態様として好ましい。このセパレータ3の厚みは特に限定されないが、10〜25μmとすれば良い。
【0040】
以上のように構成することで、少量の結着材で高い密着力を得ることが可能となり、合剤層における活物質の比率を高めた二次電池用電極板を提供し、電池容量を高めることが可能となる。
【0041】
以下、具体的な実施例と比較例についてさらに詳しく説明する。なお下記実施例では負極板にのみ溶融結合により粗大化した結着材を用いる記述だけであるが正極板に粗大化した結着材を用いても同様の効果が得られる。
(実施例1)
本発明の一実施例について図面を参照しながら説明する。まず、負極活物質として人造黒鉛を100重量部、結着材としてガラス転位点(Tg)が+20℃のスチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子分散体(固形分40重量%)を負極活物質100重量部に対して2.5重量部(結着材の固形分換算で1重量部)、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを負極活物質100重量部に対して1重量部、および適量の水とともに双腕式練合機にて攪拌し、負極合剤塗料を作製した。
【0042】
次いで、上述の負極合剤塗料を厚みが10μmの銅箔よりなる負極集電体に間欠的に塗布し、乾燥を両面実施した後にプレスすることで片面側の合剤厚みが80μmで活物質密度が1.60g/ccの負極板2を作製した。その後、負極板2を窒素雰囲気にて加熱することで結着材を溶融結合し接合寸法を2.0μmとした上で円筒形のリチウムイオン二次電池の規定されている幅にスリッタ加工して負極板2を作製した。
【0043】
さらに、この負極板2の負極集電体が露出した部分に負極リード7を接続し、この負極リード7を被覆するように負極保護テープを貼り付けることで負極板2を構成した。
【0044】
一方正極板1は、まず導電材として比表面積が70m/gのアセチレンブラックを適量のN−メチル−2−ピロリドンを分散媒としてビーズミルにて分散した後に分散剤としてのポリビニルピロリドンを添加して攪拌し、導電材ペーストを作製した。次に、正極活物質として粒径が10μmのニッケル酸リチウムを100重量部、アセチレンブラックを正極活物質を100重量部に対して0.6重量部となる量の導電材ペースト、結着材として分子量が100万のポリフッ化ビニリデンを正極活物質を100重量部に対して0.8重量部とを適量のN−メチル−2−ピロリドンと共に双腕式練合機にて攪拌し混練することで、正極合剤塗料を作製した。
【0045】
次いで、上述の正極合剤塗料を厚みが15μmのアルミニウム箔よりなる正極集電体に間欠的に塗布、乾燥を両面実施した後にプレスすることで片面側の合剤厚みが70μmの正極板1を作製した。その後、円筒形のリチウムイオン二次電池の規定されている幅にスリッタ加工して正極板1を作製した。
【0046】
さらに、この正極板1の正極集電体が露出した部分に正極リード8を接続し、この正極リード8を被覆するように正極保護テープを貼り付けることで正極板1を構成した。
【0047】
以上のようにして作製した正極板1と負極板2とを用いて、図1に示したように20μm厚みのポリエチレン微多孔フィルムをセパレータ3とし巻回して渦巻状の電極群4を構成した。この電極群4を図1に示した有底円筒形の電池ケース5の内部に絶縁板6と共に
収容し、電極群4の下部より導出した負極リード7を電池ケース5の底部に接続した。次いで、電極群4の上部より導出した正極リード8を封口板9に接続し、電池ケース5に所定量のEC、DMC、EMC混合溶媒にLiPFを1MとVCを3重量部溶解させた非水電解液(図示せず)を注液した。その後、電池ケース5の開口部に封口ガスケット10を周縁に取り付けた封口板9を挿入し、電池ケース5の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口することにより作製した円筒形のリチウムイオン二次電池を実施例1とした。
(比較例1)
負極板2の作製において窒素雰囲気での加熱処理を除いた以外は実施例1と同様に負極板2を作製した。このときの結着材の接続寸法は0.1μm、活物質密度は1.59g/ccであった。
【0048】
以上のようにして作製した負極板2と実施例1に記載の正極板1を用いて、実施例1と同様の方法で円筒形のリチウムイオン二次電池を作製し比較例1とした。
【0049】
実施例1と比較例1の結果を(表1)に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
(表1)から明らかなように、負極板2を加熱処理しない比較例1の場合は図3に示すように結着材13が溶融結合しないために密着力が低下した。
【0052】
以上のように、負極板2を加熱処理して結着材13を溶融結合させることが密着力の増加に有効であることが確認された。
【0053】
次に溶融結合した結着材の接続結合した寸法と溶融温度が適正範囲内で上下限の場合を実施例2、3に記し、適正範囲を超える場合を比較例2,3に記す。
(実施例2)
負極板2の加熱条件を変更し結着材の接続寸法を0.5μmに変更した以外は実施例1と同様に負極板2を作製した。このときの活物質密度は1.60g/ccであった。
【0054】
次いで実施例1と同様に正極板1を作製し、上記負極板2を用いて実施例1と同様の方法で円筒形のリチウムイオン二次電池を作製し実施例2とした。
(実施例3)
負極板2の加熱条件を変更し結着材の接続寸法を5.0μmに変更した以外は実施例1と同様に負極板2を作製した。このときの活物質密度は1.61g/ccであった。
【0055】
次いで実施例1と同様に正極板1を作製し、上記負極板2を用いて実施例1と同様の方法で円筒形のリチウムイオン二次電池を作製し実施例2とした。
(比較例2)
負極板2の加熱条件を変更し結着材の接続寸法を0.4μmに変更した以外は実施例1
と同様に負極板2を作製した。このときの活物質密度は1.60g/ccであった。
【0056】
次いで実施例1と同様に正極板1を作製し、上記負極板2を用いて実施例1と同様の方法で円筒形のリチウムイオン二次電池を作製し比較例2とした。
(比較例3)
負極板2の加熱条件を変更し結着材の接続寸法を6.0μmに変更した以外は実施例1と同様に負極板2を作製した。このときの活物質密度は1.60g/ccであった。
【0057】
次いで実施例1と同様に正極板1を作製し、上記負極板2を用いて実施例1と同様の方法で円筒形のリチウムイオン二次電池を作製し比較例3とした。
【0058】
実施例2、3と比較例2,3の結果を(表2)に示す。
【0059】
【表2】

【0060】
(表2)から明らかなように、負極板2の結着材の接続寸法が0.5〜5.0μmの下限から外れて0.3μmである比較例2の場合は結着材の接続寸法が短く密着力が低い。また負極板2の結着材の接続寸法が適正温度の0.5〜5.0μmの上限から外れて6.2μmである比較例3の場合は結着材の接続寸法が長く活物質への樹脂の被覆が多いため、リチウムイオンの挿入・離脱を阻害し電池容量が低いことが分かる。
【0061】
従って、負極板2の結着材の接続寸法は0.5〜5.0μmが適正範囲であると考えられる。
【0062】
次に結着材13のガラス転位点(Tg)が適正範囲内で上下限の場合を実施例4、5に記し、適正範囲を超える場合を比較例4,5に記す。
(実施例4)
負極板2に用いる結着材のガラス転位点(Tg)を−20℃に変更した以外は実施例1と同様に負極板2を作製した。このときの結着材の接続寸法は4.0μm、活物質密度は1.60g/ccであった。
【0063】
次いで実施例1と同様に正極板1を作製し、上記負極板2を用いて実施例1と同様の方法で円筒形のリチウムイオン二次電池を作製し実施例4とした。
(実施例5)
負極板2に用いる結着材のガラス転位点(Tg)を100℃に変更した以外は実施例1と同様に負極板2を作製した。このときの結着材の接続寸法は0.7μm、活物質密度は1.61g/ccであった。
【0064】
次いで実施例1と同様に正極板1を作製し、上記負極板2を用いて実施例1と同様の方法で円筒形のリチウムイオン二次電池を作製し実施例5とした。
(比較例4)
負極板2に用いる結着材のガラス転位点(Tg)を−30℃に変更した以外は実施例1と同様に負極板2を作製した。このときの結着材の接続寸法は5.5μm、活物質密度は1.60g/ccであった。
【0065】
次いで実施例1と同様に正極板1を作製し、上記負極板2を用いて実施例1と同様の方法で円筒形のリチウムイオン二次電池を作製し比較例4とした。
(比較例5)
負極板2に用いる結着材のガラス転位点(Tg)を110℃に変更した以外は実施例1と同様に負極板2を作製した。このときの結着材の接続寸法は0.4μm、活物質密度は1.60g/ccであった。
【0066】
次いで実施例1と同様に正極板1を作製し、上記負極板2を用いて実施例1と同様の方法で円筒形のリチウムイオン二次電池を作製し比較例5とした。
【0067】
実施例4、5と比較例4,5の結果を(表3)に示す。
【0068】
【表3】

【0069】
(表3)から明らかなように、負極板2に用いる結着材のガラス転位点(Tg)が適正温度の−20〜100℃の下限から外れて−30℃である比較例4の場合は結着材の接続寸法が長く活物質への樹脂の被覆が多いため、リチウムイオンの挿入・離脱を阻害し電池容量が低いことが分かる。また負極板2に用いる結着材のガラス転位点(Tg)が適正温度の−20〜100℃の上限から外れて110℃である比較例5の場合は結着材の接続寸法が短く密着力が低いことが分かる。
【0070】
従って、負極板2に用いる結着材のガラス転位点(Tg)をは−20〜100℃が適正範囲であると考えられる。
【0071】
次に結着材13の添加量が適正範囲内で上下限の場合を実施例6、7に記し、適正範囲を超える場合を比較例6,7に記す。
(実施例6)
負極板2に用いる結着材の添加量を人造黒鉛100重量部に対して固形分換算で0.2重量部に変更した以外は実施例1と同様に負極板2を作製した。このときの結着材の接続寸法は0.6μm、活物質密度は1.65g/ccであった。
【0072】
次いで実施例1と同様に正極板1を作製し、上記負極板2を用いて実施例1と同様の方法で円筒形のリチウムイオン二次電池を作製し実施例6とした。
(実施例7)
負極板2に用いる結着材の添加量を人造黒鉛100重量部に対して固形分換算で2.0重量部に変更した以外は実施例1と同様に負極板2を作製した。このときの結着材の接続寸法は4.5μm、活物質密度は1.58g/ccであった。
【0073】
次いで実施例1と同様に正極板1を作製し、上記負極板2を用いて実施例1と同様の方法で円筒形のリチウムイオン二次電池を作製し実施例7とした。
(比較例6)
負極板2に用いる結着材の添加量を人造黒鉛100重量部に対して固形分換算で0.1重量部に変更した以外は実施例1と同様に負極板2を作製した。このときの結着材の接続寸法は0.2μm、活物質密度は1.69g/ccであった。
【0074】
次いで実施例1と同様に正極板1を作製し、上記負極板2を用いて実施例1と同様の方法で円筒形のリチウムイオン二次電池を作製し比較例6とした。
(比較例7)
負極板2に用いる結着材の添加量を人造黒鉛100重量部に対して固形分換算で2.1重量部に変更した以外は実施例1と同様に負極板2を作製した。このときの結着材の接続寸法は5.3μm、活物質密度は1.55g/ccであった。
【0075】
次いで実施例1と同様に正極板1を作製し、上記負極板2を用いて実施例1と同様の方法で円筒形のリチウムイオン二次電池を作製し比較例7とした。
【0076】
実施例6、7と比較例6,7の結果を(表4)に示す。
【0077】
【表4】

【0078】
(表4)から明らかなように、負極板2に用いる結着材の添加量が適正範囲の0.2〜2.0重量部(固形分換算)の下限から外れて0.1重量部である比較例6の場合は結着材の接続寸法が短く密着力が低いことが分かる。また負極板2に用いる結着材の結着材の添加量が適正範囲の0.2〜2.0重量部(固形分換算)の上限から外れて2.1重量部である比較例7の場合は結着材の接続寸法が長く活物質への樹脂の被覆が多くリチウムイオンの挿入・離脱を阻害し、かつ活物質密度が低いために電池容量が低いことが分かる。
【0079】
従って、負極板2に用いる結着材の添加量が適正範囲の0.2〜2.0重量部(固形分換算)が適正範囲であると考えられる。
【0080】
ここで、密着力の測定はJIS−C6481−1995に準拠した90度剥離強度試験
行った。集電体11への合剤層14の密着力は、合剤層14を両面テープで固定し、集電体11を合剤層14に対して垂直になる方向に引張り、毎分50mmの速さで連続的に約30mm剥がして、この間での荷重の平均値を剥離強度として集電体11への合剤層14の密着力の評価に用いた。本検討の合剤層14の剥離強度が低いと、正極板1もしくは負極板2の加工(例えば、スリット、プレス)にて合剤層14が脱落する危険性がある。
【0081】
また電池容量は、25℃の環境下で0.3Cレートでの定電流充電後に4.2Vでの定電圧充電にて電流値が60mAになるまで充電した後、0.2Cレートの定電流で電圧が2.5Vに低下するまで放電した際の放電容量を測定した。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明にかかる二次電池用負極板を用いた二次電池は電池特性に優れたポータブル機器や電気自動車の電源として有用である。
【符号の説明】
【0083】
1 正極板
2 負極板
3 セパレータ
4 電極群
5 電池ケース
6 絶縁板
7 負極リード
8 正極リード
9 封口板
10 封口ガスケット
11 集電体
12 活物質
13 結着材
14 合剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも活物質と結着材を含む電極合剤層を集電体の表面に形成してなる二次電池用電極板であって、前記集電体と活物質および活物質同士を溶融し粗大化した前記結着材を介して接続結合したことを特徴とする二次電池用電極板。
【請求項2】
溶融し粗大化した前記結着材は、前記集電体および前記活物質と面接合したことを特徴とする請求項1に記載の二次電池用電極板。
【請求項3】
前記面接合した結着材の接続結合寸法を0.5μm〜5μmとした請求項1に記載の二次電池用電極板。
【請求項4】
前記結着材を加熱して溶融し面接合させることを特徴とした請求項1に記載の二次電池用電極板。
【請求項5】
前記結着材のガラス転移点(Tg)が−20℃〜100℃であることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用電極板。
【請求項6】
前記結着材の種類として、スチレンブタジエンゴム、アクリル、酢酸ビニルに代表されるラテックス系結着材から選ばれた少なくとも1種類からなる請求項1に記載の二次電池用電極板。
【請求項7】
前記結着材が極板合剤層の中に活物質100重量部に対して0.2〜2.0重量部(固形分換算)の割合で含有したことを特徴とする請求項1に記載の二次電池用電極板。
【請求項8】
前記二次電池用電極板は負極板であって、前記合剤層に含まれる活物質が天然黒鉛、人造黒鉛、チタン酸リチウムおよびシリコン合金から選ばれた少なくとも1種類からなる請求項1に記載の二次電池用負極板。
【請求項9】
少なくともリチウム含有複合酸化物よりなる正極活物質と導電材および結着材を分散媒にて混練分散した正極合剤塗料を正極集電体の上に付着させて正極合剤層を形成した正極板と少なくともリチウムを保持しうる材料よりなる負極活物質と増粘剤および結着材を分散媒にて混練分散した負極合剤塗料を負極集電体の上に付着させて負極合剤層を形成した負極板との間に多孔質絶縁体を介在させ渦巻状に巻回または積層して構成した電極群を非水電解液とともに電池ケースに封入した二次電池であって、前記請求項1から請求項7に記載の二次電池用電極板を正極板または/および負極板として用いたことを特徴とする二次電池。
【請求項10】
少なくともリチウム含有複合酸化物よりなる正極活物質と導電材および結着材を分散媒にて混練分散した正極合剤塗料を正極集電体の上に付着させて正極合剤層を形成した正極板と少なくともリチウムを保持しうる材料よりなる負極活物質と増粘剤および結着材を分散媒にて混練分散した負極合剤塗料を負極集電体の上に付着させて負極合剤層を形成した負極板との間に多孔質絶縁体を介在させ渦巻状に巻回または積層して構成した電極群を非水電解液とともに電池ケースに封入した二次電池であって、前記請求項8に記載の二次電池用負極板を負極板として用いたことを特徴とする二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−84356(P2013−84356A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221639(P2011−221639)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】