説明

二次電池用電解液

【課題】非水電解液、特にリチウムイオン二次電池の電解液において、難燃性能および電池特性の向上した非水電解液を提供する。
【解決の手段】リチウムの吸蔵・放出が可能な正極及び負極を組合せて使用するリチウム二次電池用の非水系電解液であって、フッ素原子を側鎖に含む難燃剤とホウ素化合物からなる添加剤を共存してなる非水系電解液を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全性と電池性能を高めた非水系の二次電池用電解液、例えばリチウムイオン二次電池用電解液に関する。詳しくは、難燃性能を有する化合物の共存により低下する電池のサイクル特性をホウ素系化合物を共存させて改善した電解液に関する。
【背景技術】
【0002】
非水系の電解液を用いた二次電池、特にリチウムイオン二次電池はその高い駆動電圧、高エネルギー密度という特長により、ノートブック型パソコン、携帯電話などの携帯用機器の蓄電装置として利用され、電動自動車や自然エネルギーの電力貯蔵など大型蓄電用途へ展開する技術が注目されている。
【0003】
これらのリチウム系の電池ではその高い作動電圧のために、基本的には水溶液は使用できず、電気化学的に安定な電位範囲(電位窓)が広い非水溶媒が使用されている。
これら非水系蓄電装置の電解液には揮発性・引火性の有機溶媒が使用されており、製造時の不具合や過度な充放電により発火するなどの危険性を有している。
【0004】
このような非水系電解液の本質的安全性を向上する方法として、電解液の難燃化・不燃化に関する研究が活発に行われている。例えば、樹脂材料等の難燃化剤に使用されているリン酸エステルを電解液に共存させる方法(例えば特許文献1、非特許文献1、2参照)では、引火点を有さず、且つ高い導電率を有する非水系電解液が提案されている。
【0005】
また、側鎖にフッ素原子を有するホスファゼン化合物や含フッ素リン酸エステル、含フッ素カーボネート、含フッ素エーテルなどの難燃溶媒を添加することで、リチウム二次電池の高い出力密度と優れた難燃性能を示すことが記されている(例えば特許文献2、3、非特許文献3参照)。
しかし、これらのフッ素原子を有する難燃剤を含む非水電解液二次電池は、難燃剤を加えない場合に較べてサイクル特性等の電池性能が低下することが知られており、更なる改善が求められていた。
【0006】
一方、難燃性ではなく高い電池性能を得る目的でホウ素系の化合物を添加する提案がなされている。
【0007】
例えば、大電流充放電特性、大電流サイクル特性を向上する目的で、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランもしくはホウ酸トリス(2H−ヘキサフルオロイソプロピル)をフルオロエチレンカーボネートもしくはジフルオロエチレンカーボネートと共存して添加することでリチウムイオン二次電池の大電流充放電特性を改善する方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0008】
一方、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランは電解質(LiPF6)中のLiFを捕捉する事でPF5を生成することが知られている。このPF5は非常に反応性が高いために電解液溶媒と反応し、結果的に電解液を劣化させる可能性があることも記載されている(例えば、非特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−22839号公報
【特許文献2】国際公開第03/005479号公報
【特許文献3】特許第3821495号公報
【特許文献4】特開2009−43597公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】シーエムシー出版、「リチウムイオン電池の高安全技術と材料」,123〜127頁、(2009年2月13日発行)
【非特許文献2】Jounal of the Electrochemical Society, 150, A161−A169, (2003).
【非特許文献3】GSユアサコーポレーション株式会社、技術レポート、第5巻、2号、32〜38頁、(2008、12月25日発行).
【非特許文献4】Jounal of Power Sources, 162, 1379−1394, (2006).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
電解液の難燃剤として提案されているフッ素原子を側鎖に持つ難燃剤(以下、フッ素系難燃剤)は燃焼時にフッ素が遊離し、酸素を補足することで、燃焼を抑制するが、これらのフッ素系難燃剤を非水系二次電池の電解液に混合した場合、サイクル特性などの電池性能が低下する課題がある。この機構は定かではないが、電極上で一部のフッ素系難燃剤の分解反応が進行することに起因するのではないかと考えられる。
一方、電池性能を向上させる効果のある添加剤としては、ホウ素化合物のほかにビニレンカーボネートやビニルエチレンカーボネート、プロパンスルトン類、フルオロエチレンカーボネート等、多数の化合物群が提案されている。
しかしながら、ホウ素化合物を除く上記の添加剤をフッ素系難燃剤と共に添加しても、難燃性と電池性能の両性能の向上を同時に達成することはできないことが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、電池性能の向上について鋭意検討した結果、ホウ素化合物については、フッ素系難燃剤との共存下においても安全性と電池特性の両方を満足する非水電解液が得られることを確認した。
ホウ素化合物の添加によりサイクル特性等の電池性能が向上した機構も定かではないが、下記に示した二つの効果のいずれか、またはその両方の効果が発現し、サイクル特性が向上したものと考えられる。
(1)ホウ素化合物が電極上で優先的に分解され、良好な皮膜を形成し、フッ素系難燃剤の分解が抑制された。
(2)電極上でフッ素系難燃剤が分解した際に副生する分解物を、ホウ素系化合物が効率的に捕捉した。
ホウ素化合物のほかにビニレンカーボネートやビニルエチレンカーボネート、プロパンスルトン類、フルオロエチレンカーボネート等、多数の化合物群が提案されているが、ホウ素化合物を用いた場合にのみフッ素系難燃剤との共存添加効果(安全性と電池性能の両立)が確認できたことは驚くべき効果であり、容易に類推することは難しい。
【0013】
即ち、本発明に係る二次電池用電解液はフッ素系難燃剤とホウ素化合物を共存添加した非水系の電解液である。
【0014】
前記ホウ素化合物としては下記の一般式化(1)で示されるものが考えられる。
【化1】


(式中、R1、R2、R3は同一または異なって水素、ハロゲン、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、含フッ素アルキル基、含フッ素アリール基、含フッ素アルコキシ基を示す)
【0015】
前記ホウ素化合物としては下記の一般式化(2)で示されるものが考えられる。
【化2】


(式中、R4、R5、R6は同一もしくは異なる炭素数1〜10の直鎖、または分岐した含フッ素アルキル基を示す)
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基を挙げることができる。
含フッ素アルキル基としては、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、モノフルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、オクタフルオロブチル基、ノナフルオロブチル基、ドデカフルオロヘキシル基、トリデカフルオロヘキシル基、ヘキサデカフルオロオクチル基、ヘプタデカフルオロオクチル基、エイコサフルオロデシル基等の炭素数1〜10の含フッ素アルキル基を挙げることができる。
このようなホウ酸エステルの例としては、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリノルマルプロピル、ホウ酸トリノルマルブチル、ホウ酸トリペンチル、ホウ酸トリヘキシル、ホウ酸トリヘプチル、ホウ酸トリオクチル、ホウ酸トリノニル、ホウ酸トリデシル等を挙げることができる。
また、含フッ素ホウ酸エステルの例としては、ホウ酸トリス(2−モノフルオロエチル)、ホウ酸トリス(2,2−ジフオロエチル)、ホウ酸トリス(2,2,2−トリフオロエチル)、ホウ酸トリス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)、ホウ酸トリス(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)、ホウ酸トリス(ヘキサフルオロイソプロピル)、ホウ酸トリス(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)、ホウ酸トリス(2,2,2,3,3,4,4,5,5−ノナフルオロペンチル)、ホウ酸トリス(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプチル)、ホウ酸トリス(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ヘキサデカフルオロノニル)、ホウ酸トリス(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11−エイコサデカフルオロウンデシル)等を挙げることができる。
【0016】
前記ホウ素化合物としては下記の一般式化(3)で示されるものが考えられる。
【化3】


(式中、X1~X15は各々同一または異なって水素原子またはフッ素原子を示す)これらのアリールホウ素化合物のなかで、好ましくは、全てがフッ素により置換された、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランである。
【0017】
本発明において、非水電解液二次電池の電池性能を良好なものとするため、非水系電解液におけるホウ素化合物の濃度は0.1〜50重量%、好ましくは10〜30重量%である。その理由として、50重量%を超える量を添加した場合は電解液の粘度上昇等により電気伝導度が低下する。もしくは電解質の溶解性の低下により、電池性能が低下する可能性がある。一方、0.1%未満にした場合でも効果は認められるが、その効果は少ない。
【0018】
また本発明において使用するフッ素原子を側鎖に持つ難燃剤としては、含フッ素リン酸エステルや含フッ素ホスファゼン化合物、含フッ素エーテル、含フッ素カーボネート及び含フッ素エステルなどを例示することが出来る。
【0019】
含フッ素リン酸エステルとしては、例えば下記一般式化(4)
【化4】

(式中、R7、R8、R9は同一もしくは非同一の炭素数1〜10の直鎖または分岐アルキル基あるいはフッ素原子で置換された炭素数1〜10のアルキル基を示し、R7〜R9の内、少なくとも1つはフッ素原子で置換されたアルキル基である。)で示されるフッ素化リン酸エステルを挙げることができる。
【0020】
含フッ素カーボネートとしては、例えば一般式化(5)
【化5】


(式中、R10、R11は同一もしくは非同一の炭素数1〜10のアルキル基またはフッ素原子で置換された炭素数1〜10のアルキル基を示し、R10、R11の内、少なくとも1つはフッ素原子で置換されたアルキル基である。)で示される鎖状フッ素化カーボネートを挙げることができる。
【0021】
含フッ素エーテルとしては、例えば一般式化(6)
【化6】


(式中、R12、R13は同一もしくは非同一の炭素数2〜6のアルキル基、炭素数2〜10のアルコキシアルキル基、フッ素原子で置換された炭素数2〜6のアルキル基またはフッ素原子で置換された炭素数2〜10のアルコキシアルキル基を示し、R12、R13の内、少なくとも1つはフッ素原子を有するアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルコキシアルキル基である。)で示されるフッ素化エーテルを挙げることができる。
【0022】
含フッ素エステルとしては例えば一般式化(7)
【化7】


(式中、R14、R15は同一もしくは非同一の炭素数2〜6のアルキル基またはフッ素原子で置換された炭素数2〜6のアルキル基を示し、R14、R15の内、少なくとも1つはフッ素原子で置換されたアルキル基である。)で示されるフッ素化エステルを挙げることができる。
【0023】
含フッ素ホスファゼンとしては、例えば一般式化(8)
【化8】

(8)
(式中、R16〜R21は、同一もしくは非同一の水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の直鎖または分岐アルキル基、フッ素原子で置換された炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、フッ素原子で置換された炭素数1〜10のアルコキシ基を示し、R16〜R21の内、少なくとも一つがフッ素原子、フッ素原子で置換されたアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルコキシ基のいずれかである。)で示される含フッ素ホスファゼンを挙げることができる。
【0024】
上記に示した含フッ素難燃剤の中でも、特に含フッ素リン酸エステル、含フッ素ホスファゼン化合物が難燃性および電池性能の点で好ましい。
【0025】
本発明において、非水電解液二次電池の難燃性を良好なものとするため、非水系電解液における含フッ素難燃剤の添加量は多いほど好ましいが、電池性能とのバランスを考慮した場合、5重量%以上、50重量%以下とすることが望ましく、さらには10重量%以上、50重量%以下であることが好ましい。その理由として、5重量%以下では充分な難燃性能を発揮することが出来ない。また50重量%以上では電解液の粘度の上昇により電気伝導度が低下する。もしくは電解質の溶解性を低下させることがある。
【0026】
次に本発明の非水系電解液について説明する。
非水電解液として通常用いられる有機溶媒として代表的なものは、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート等の環状カーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、プロピオラクトン等の環状エステル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等の鎖状カーボネート、酢酸メチル、酪酸メチル等の鎖状エステル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン、メチルジグライム等のエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、ジオキソラン又はその誘導体等の単独又はそれら2種以上の混合物等を挙げることができる。
【0027】
非水系電解液を構成する電解質塩としては、非水系二次電池に使用される広電位領域において安定であるリチウム塩が使用できる。このような電解質塩として、例えば、LiBF4、LiPF6、LiClO4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22、LiC(CF3SO23等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。なお、電池の高率充放電特性を良好なものとするため、非水系電解液における電解質塩の濃度は0.1〜2.5mol/L、特に好ましくは0.5〜1.5mol/Lの範囲とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る二次電池用電解液は、安全性(難燃性)と電池特性(大電流充放電特性、大電流サイクル特性など)の両方を満足する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例および比較例に用いたラミネートセルの電池を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施例にて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
1.電解液の調製
電解液溶媒としてエチレンカーボネート(以下ECと略す)、ジメチルカーボネート(以下DMCと略す)を体積比1:1の割合で混合した溶媒を用い、これに難燃剤とホウ素化合物を所定量混合したものに、電解質として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1.0mol/L溶解させたものを電解液として用いた。
【0032】
2.非水系リチウムイオン二次電池の作成
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO2)を用い、これに導電助剤としてカーボンブラック、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)をLiCoO2:カーボンブラック:PVDF=85:7:8となるように配合し、1−メチル−2−ピロリドンを用いてスラリー化したものをアルミニウム集電体上に一定の膜厚で塗布し、乾燥させて正極を得た。
負極活物質としてはリチウム金属箔を用い、銅集電体に圧着して負極を得た。
セパレータとしてはグラスフィルターを用いた。
【0033】
以上の構成要素を用いて、図1に示した構造のラミネートパッケージを用いたリチウムイオン二次電池を作成した。リチウムイオン二次電池はセパレータ4を挟んで正極3および負極5を対向配置し、これら正極3、セパレータ4および負極5からなる積層体をラミネートパケージ6内に収納し、充電・放電はラミネートパケージ6に設けた正極リード1および負極リード2を介して行う。
【0034】
3.充放電試験
この様に作成した電池を25℃の恒温条件下、0.1Cの充電電流で上限電圧を4.2Vとして充電し、続いて0.1Cの放電電流で3.0Vとなるまで放電した。この操作を行った後に55℃の恒温条件下、1Cの充電電流で4.2Vの定電流定電圧充電を行い、1Cの放電電流で終止電圧3.0Vまで定電流放電を行った。このときの放電容量を初期放電容量とし、この操作を50回繰り返した際の放電容量を測定し、50サイクル後の放電容量/初期放電容量比を劣化率として比較を行った。
【0035】
4.難燃性(自己消火性)試験
0.25gのグラスウールに電解液0.5gを約2cmの円状に滴下した。この電解液を浸漬したグラスウールを炎にさらして引火させ、引火の有無、さらに引火した場合は消火するまでの時間を測定した。この試験を5回測定し、5回のうち上下2点を除いた、3点の平均値を1g当りの消火時間(SET、sec/g)として比較した。
【0036】
実施例1
難燃剤として、リン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)(以下、TFEPと略記)を15重量%混合し、ホウ酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)(以下、TFEBと略記)を5重量%混合した電解液を調製した。この電解液を用いて、上記2の非水系リチウムイオン二次電池を作成し、電池の理論容量にしたがって0.1Cの充放電を4回繰り返した後に、1Cの充放電を行った。その際の電池の放電容量は131mAh/gであった。
【0037】
さらに、この電池を用いて、55℃の温度条件下、1Cにおいて50回の充放電試験を実施した。その結果、電池の放電容量は118mAh/gで、50サイクル後のサイクル劣化率は90%であった。 また、この電解液を用いて上記4の難燃性試験を実施した。その結果、1g当たりの自己消火時間(SET)は10秒であった。
結果を表1に記す。
【0038】
【表1】

【0039】
比較例1
ホウ素化合物および難燃剤の共存しない電解液を調製した。この電解液を用いて、実施例1と同様に電池を作成し、充放電試験および難燃性試験を実施した。その結果、初期の放電容量は135mAh/gを示し、55℃、50サイクル後の放電容量は120mAh/gであった。この電池の劣化率は89%であった。また、この電解液を用いた難燃性試験結果は128秒/gであった。
【0040】
比較例2
ホウ素化合物を共存せず、難燃剤として、TFEPを15重量%混合した電解液を調製した。この電解液を用いて、実施例1と同様に電池を作成し、充放電試験を実施した。
その結果、初期の放電容量は132mAh/gを示し、55℃、50サイクル後の放電容量は66mAh/gであった。この電池の劣化率は50%であった。また、この電解液を用いた難燃性試験結果は32秒/gであった。
【0041】
実施例2
難燃剤として、リン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)(TFEPと略記)を15重量%混合し、ホウ素化合物としてホウ素化合物としてトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(以下FABと略記)を5重量%混合した電解液を調製した。この電解液を用いて実施例1と同様に電池を作成し、充放電試験を行った。その結果、初期の放電容量は126mAh/gを示し、55℃、50サイクル後の放電容量は115mAh/gであった。この電池はほとんど劣化しておらず、劣化率は91%であった。また、この電解液を用いた難燃性試験結果は12秒/gであった。
【0042】
実施例3
難燃剤として、リン酸トリス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)(TFPPと略記)を15重量%混合し、ホウ素化合物としてホウ酸トリス(2H−ヘキサフルオロイソプロピル)(以下HFPBと略記)を5重量%混合した電解液を調製した。この電解液を用いて実施例1に準じて電池を作成し、充放電試験を実施した。その結果、初期の放電容量は130mAh/gを示し、55℃、50サイクル後の放電容量は117mAh/gであった。この電池の劣化率は90%であった。また、この電解液を用いた難燃性試験結果は9秒/gであった。
【0043】
実施例4
難燃剤として、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)(E2PPと略記)を15重量%混合し、ホウ素化合物としてホウ酸トリエチル(以下、TEBと略記)を5重量%混合した電解液を調製した。この電解液を用いて実施例1に準じて電池を作成し、充放電試験を実施した。その結果、初期の放電容量は132mAh/gを示し、55℃、50サイクル後の放電容量は106mAh/gであった。この電池の劣化率は80%であった。また、この電解液を用いた難燃性試験結果は32秒/gであった。
【0044】
実施例5
難燃剤として、TFEPを15重量%混合し、ホウ素化合物としてTFEBを1重量%混合した電解液を調製した。この電解液を用いて実施例1と同様に電池を作成し、充放電試験を行った。その結果、初期の放電容量は132mAh/gを示し、55℃、50サイクル後の放電容量は104mAh/gであった。この電池の劣化率は79%であった。また、この電解液を用いた難燃性試験結果は18秒/gであった。
【0045】
実施例6
難燃剤として、TFEPを30重量%混合し、ホウ素化合物としてTFEBを11重量%混合した電解液を調製した。この電解液を用いて実施例1と同様に電池を作成し、充放電試験を行った。その結果、初期の放電容量は121mAh/gを示し、55℃、50サイクル後の放電容量は115mAh/gであった。この電池の劣化率は95%であった。また、この電解液を用いた難燃性試験では全ての試験で引火しなかった。
【0046】
実施例7
難燃剤として、TFEPを40重量%混合し、ホウ素化合物としてTFEBを15重量%混合した電解液を調製した。この電解液を用いて実施例1と同様に電池を作成し、充放電試験を行った。その結果、初期の放電容量は115mAh/gを示し、55℃、50サイクル後の放電容量は113mAh/gであった。この電池の劣化率は98%であった。また、この電解液を用いた難燃性試験では全ての試験で引火しなかった。
【0047】
実施例8
難燃剤として、TFPPを10重量%混合し、ホウ素化合物としてTFEBを30重量%混合した電解液を調製した。この電解液を用いて実施例1と同様に電池を作成し、充放電試験を行った。その結果、初期の放電容量は129mAh/gを示し、55℃、50サイクル後の放電容量は125mAh/gであった。この電池の劣化率は97%であった。また、この電解液を用いた難燃性試験結果は13秒/gであった。
【0048】
実施例9
難燃剤として、2−エトキシ−2,4,4,6,6−ペンタフルオロ−1,3,5,2λ5,4λ5,6λ5−トリアザトリホスフィニン(以下、PFPN)を10重量%混合し、ホウ素化合物としてTFEBを5重量%混合した電解液を調製した。この電解液を用いて実施例1と同様に電池を作成し、充放電試験を行った。その結果、初期の放電容量は120mAh/gを示し、55℃、50サイクル後の放電容量は110mAh/gであった。この電池の劣化率は92%であった。また、この電解液を用いた難燃性試験結果は35秒/gであった。
【符号の説明】
【0049】
1 正極リード
2 負極リード
3 正極
4 セパレータ
5 負極
6 ラミネートパッケージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンの吸蔵・放出が可能な正極及び負極を組合せて使用する非水系の二次電池用電解液であって、フッ素系難燃剤とホウ素化合物を共存添加することを特徴とする二次電池用電解液。
【請求項2】
上記ホウ素化合物が下記一般式化(1)
【化1】


(式中、R1、R2、R3は同一または異なって水素、ハロゲン、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、含フッ素アルキル基、含フッ素アリール基、含フッ素アルコキシ基を示す)で示されるホウ素化合物である請求項1に記載の二次電池用電解液。
【請求項3】
上記ホウ素化合物が下記一般式化(2)
【化2】


(式中、R4、R5、R6は同一もしくは異なる炭素数1〜10の直鎖、または分岐した含フッ素アルキル基を示す)で示される含フッ素ホウ酸エステルである請求項1記載の二次電池用電解液。
【請求項4】
上記ホウ素化合物が下記一般式化(3)
【化3】


(式中、X1〜X15は各々同一もしくは異なる水素原子またはフッ素原子を示す)で示されるアリールボランである請求項1記載の二次電池用電解液。
【請求項5】
上記ホウ素化合物がホウ酸トリス(トリフルオロエチル)である請求項1〜3のいずれかに記載の二次電池用電解液。
【請求項6】
上記フッ素系難燃剤がフッ素原子を含有するリン酸エステルである、請求項1に記載の二次電池用電解液。
【請求項7】
上記フッ素系難燃剤がフッ素原子を含有するホスファゼン類であることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用電解液。
【請求項8】
上記二次電池がリチウムイオン二次電池である請求項1〜7のいずれかに記載の二次電池用電解液。

【図1】
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【公開番号】特開2011−222431(P2011−222431A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92713(P2010−92713)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(301005614)東ソー・ファインケム株式会社 (38)
【出願人】(591180358)東ソ−・エフテック株式会社 (91)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】