説明

二次電池電極のバインダー用樹脂組成物、及びこれを用いてなるバインダー液、二次電池電極、二次電池

【課題】活物質間、導電材間及びそれらの間、さらにはこれらと金属集電体との界面の接着性に優れ、加えて電極に柔軟性を与えるのに適した、二次電池電極のバインダー用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とダイマー酸系ポリアミド樹脂(B)とを含有し、(A)100質量部に対して(B)を30〜60質量部含有する二次電池電極のバインダー用樹脂組成物であり、樹脂(B)では、ダイマー酸がジカルボン酸成分100モル%に対して50モル%以上含まれていることが好ましい。本発明では、この組成物を用いて二次電池電極用バインダー液、二次電池電極及び二次電池を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池電極のバインダー用樹脂組成物、この樹脂組成物を用いてなるバインダー液、さらにはこのバインダー液を用いてなる電極及び二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やデジタルカメラなどの携帯電子機器の小型軽量化や高機能化の要求に伴い、高性能電池の開発が積極的に進められており、充電により繰り返し使用が可能な二次電池の需要が大きく伸びている。特に、リチウムイオン電池は、携帯電話やノートパソコンなどの用途に加え、電気自動車用途への展開も進められ、その利用範囲は非常に拡大している。
【0003】
リチウムイオン電池は、正極と負極との間にセパレーターが配置された構成の電極を、電解液(リチウムイオンポリマー電池の場合は、液状電解液に代えてゲル状もしくは全固体型の電解質を使用)と共に容器内に収納した構造を有する。
【0004】
リチウムイオン電池の電極は、活物質と、必要に応じて主に炭素材料からなる導電材とが、バインダーを用いてアルミニウム箔や銅箔などの金属集電体上に層形成されたものである。正極用活物質としては、コバルト酸リチウムなどの遷移金属を含むリチウム複合酸化物などが用いられ、負極用活物質としては、炭素材料などが用いられる。このようなリチウムイオン電池の電極は、通常、活物質に、必要に応じて、導電材及びバインダーを添加し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶媒の存在下で混練・調製した電極ペーストを、金属集電体上にドクターブレードなどによりに塗布し、乾燥することによって得られる。なお、バインダーは、活物質と導電材、さらにこれらと金属集電体とを接着するために用いられる。
【0005】
また、リチウムイオン電池の電解液には、エチレンカーボネートやジエチルカーボネートのような非水溶媒が用いられ、通常、支持電解塩が添加される。
【0006】
従来、二次電池電極用のバインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂などのフッ素系樹脂が用いられ、これをNMPに溶解した溶液が多く使用されている。
【0007】
しかしながら、PVDFをバインダーとして使用した場合、活物質間、導電材間だけでなく活物質と導電材との間やそれらと金属集電体との界面の接着性にも劣り、加えて得られる電極が柔軟性に乏しいため、極板の裁断工程や捲回工程などの際に活物質や導電材の一部が金属集電体から剥離・脱落し、結果、微少短絡や電池容量のばらつきを生じることがあった。
【0008】
さらに、PVDFは電解液に対する耐膨潤性に劣るため、充放電を繰り返すことでバインダーが電解液中で膨潤し、その結果、活物質と導電材との間や活物質及び導電材と金属集電体との間で接触抵抗が増大して、電極の集電効率が低下したり、リチウムとの反応の不均一が生じたりして電池容量が次第に低下するという問題があった。
【0009】
したがって、電極形成のためのバインダーには、(1)活物質と必要に応じて添加する導電材との接着性、並びに活物質間、導電材間の接着性に優れること、(2)活物質及び導電材と金属集電体との界面の接着性に優れること、(3)柔軟性に優れる電極形成に資すること、(4)電解液に対する耐膨潤性に優れることなどが要求される。
【0010】
また、PVDFを溶解させる溶媒として用いられているNMPは、電極ペーストを金属集電体上に塗布・乾燥する際に蒸発するため、これを安全に回収する必要がある。また昨今の環境関連の法規制によって、加工場によっては環境に影響を及ぼす可能性のある有機溶媒を使用できないところも多くなっている。
【0011】
これらの問題に対し、特許文献1、2において、電気化学的に安定で一般特性に優れるオレフィン系重合体を二次電池電極用バインダーとして用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−251998号公報
【特許文献2】特開平9−251856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、これらのバインダーは、電解液に対し膨潤性が小さいという点で優れるものの、活物質、導電材及び金属集電体に対する接着性が十分でなく、しかも電極に対して柔軟性を与えることができないという点で、依然として問題が残されている。
【0014】
本発明は、上記課題を解決するものであり、活物質間、導電材間及びそれらの間、さらにはこれらと金属集電体との界面の接着性に優れ、加えて電極に柔軟性を与えるのに適した、二次電池電極のバインダー用樹脂組成物を提供することを目的とし、さらに、このバインダーを用いた電極及び二次電池を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、二次電池電極用バインダーとして、特定組成の酸変性ポリオレフィン樹脂と共に特定量のダイマー酸系ポリアミド樹脂を用いることにより、接着性に優れると共に柔軟性ある電極の形成に好適なバインダーが提供できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0016】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
【0017】
(1)酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とダイマー酸系ポリアミド樹脂(B)とを含有し、(A)100質量部に対して(B)を30〜60質量部含有することを特徴とする二次電池電極のバインダー用樹脂組成物。
(2)ダイマー酸系ポリアミド樹脂(B)中のダイマー酸の含有量が、ジカルボン酸成分100モル%に対して50モル%以上であることを特徴とする上記(1)記載の二次電池電極のバインダー用樹脂組成物。
(3)ダイマー酸系ポリアミド樹脂(B)の酸価が、1〜20mgKOH/gであることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の二次電池電極のバインダー用樹脂組成物。
(4)酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の酸価が、3〜70mgKOH/gであることを特徴とする上記(1)〜(3)いずれかに記載の二次電池電極のバインダー用樹脂組成物。
(5)上記(1)〜(4)いずれかに記載の二次電池電極のバインダー用樹脂と、液状媒体と、塩基性化合物とを含有することを特徴とする二次電池電極用バインダー液。
(6)液状媒体が水性媒体であることを特徴とする上記(5)記載の二次電池電極用バインダー液。
(7)上記(1)〜(4)いずれかに記載の二次電池電極のバインダー用樹脂組成物を含有することを特徴とする二次電池電極。
(8)上記(5)又は(6)記載の二次電池電極用バインダー液を用いて形成された二次電池電極。
(9)上記(7)又は(8)記載の二次電池電極を用いて形成された二次電池。
【発明の効果】
【0018】
本発明の二次電池電極のバインダー用樹脂組成物を用いたバインダー液は、活物質間、導電材間だけでなく活物質と導電材との間やそれらと金属集電体との界面の接着性にも優れている。さらに、当該バインダー液を用いることで、柔軟性に優れる二次電池電極を容易に形成することができる。その結果、得られる電極は、極板の裁断時や捲回時に活物質や導電材が金属集電体から脱落し難いものとなり、かかる電極を使用することで、微少短絡や電池容量のばらつきが少ない電池を得る点で有利となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0020】
本発明の二次電池電極のバインダー用樹脂組成物(以下、バインダー用樹脂組成物と略記することがある)は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とダイマー酸系ポリアミド樹脂(B)を含有するものであり、(A)と(B)とを特定の割合で混合した樹脂を主成分とする。
【0021】
本発明のバインダー用樹脂組成物を用いることで、活物質及び導電材と金属集電体との接着性が良好で、電極に柔軟性を与えることのできる二次電池電極用バインダー(以下、バインダーと略記することがある)を得ることができる。
【0022】
本発明の組成物では、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)を用いることにより、活物質、導電材及び金属集電体に対する接着性と共に、電解液に対する耐膨潤性を高めることができる。
【0023】
本発明における酸変性ポリオレフィン樹脂(A)は、オレフィン成分を主成分とし、酸変性成分を一定量含むものである。主成分たるオレフィン成分としては、プロピレン、エチレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素数2〜6のオレフィン類などがあげられ、これらのモノマーは2種以上を用いてもよい。中でも、プロピレン、エチレン、イソブチレン、1−ブテンなどの炭素数2〜4のオレフィンが好ましく、プロピレン、エチレンがより好ましい。
【0024】
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)に含まれる酸変性成分としては、不飽和カルボン酸やその無水物が好適である。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミドなどがあげられる。中でも水性化のし易さ、ポリオレフィン樹脂への導入のし易さの観点からマレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、特に無水マレイン酸が好ましい。
【0025】
酸変性成分たる不飽和カルボン酸やその無水物は、ポリオレフィン樹脂(A)中に、例えばランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合、熱減成法などにより共重合されていれば特にその形態は限定されない。なお、樹脂中に導入された酸無水物は、樹脂の乾燥状態では隣接カルボキシル基が脱水環化した酸無水物構造を形成しているが、後述する水性媒体中に分散させる場合は、水性媒体中でその一部、または全部が開環してカルボン酸、あるいはその塩の構造をとる場合がある。
【0026】
本発明において、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)は、活物質、導電材及び金属集電体との接着性、後述する水性分散体の調製性、酸やアルカリに対する耐性の点から、酸価が3〜70mgKOH/gであることが好ましく、中でも10〜70mgKOH/gが好ましく、20〜60mgKOH/gがより好ましい。酸価が3mgKOH/g未満になると、活物質及び導電材と金属集電体との接着性が低下することがあり、また、後述するように樹脂を水性媒体中に分散させる際には、その分散化が困難となる傾向にあり、好ましくない。一方、70mgKOH/gを超えると、酸及びアルカリへの耐性が低下して電解液中で樹脂が膨潤する傾向にあり、好ましくない。なお、本発明における酸価とは、1gの酸変性ポリオレフィン樹脂(A)を中和するのに必要なKOH量のことであり、JIS K0070記載の方法に準じて測定されるものである。
【0027】
また、本発明における酸変性ポリオレフィン樹脂(A)は、重量平均分子量が10000〜100000であることが好ましく、中でも10000〜90000であることが好ましく、さらには15000〜50000であることがより好ましく、20000〜50000であることが特に好ましい。重量平均分子量が10000未満であると、樹脂の接着性や耐水性が悪化する傾向にあり、一方、100000を超えると、樹脂の水性分散化が困難となる傾向にあり、いずれも好ましくない。なお、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置によって測定されるものである。
【0028】
なお、本発明では、市販の酸変性ポリオレフィン樹脂が好適に使用される。具体的には、日本ポリエチレン社製「レクスパールシリーズ」、三井・デュポンポリケミカル社製「ニュクレルシリーズ」、アルケマ社製「ボンダインシリーズ」、三洋化成社製「ユーメックスシリーズ」などが使用できる。
【0029】
次に、ダイマー酸系ポリアミド樹脂(B)について説明する。
【0030】
本発明の組成物では、ダイマー酸系ポリアミド樹脂(B)を用いることにより、電極に柔軟性を与えることができる。
【0031】
本発明におけるダイマー酸系ポリアミド樹脂(B)は、主鎖にアミド結合を有するものであり、主にジカルボン酸成分とジアミン成分を用いた脱水縮合反応によって得られるものである。そして、本発明では、ジカルボン酸成分としてダイマー酸を使用する。ここで、ダイマー酸とは、オレイン酸やリノール酸などの炭素数18の不飽和脂肪酸を二量化することによって得られるものであり、水素添加して不飽和度を低下させたものでもよい。
【0032】
ダイマー酸系ポリアミド樹脂(B)は、ポリアミド樹脂として広く使用されているナイロン6、ナイロン66、ナイロン12などの樹脂に比べて、大きな炭化水素グループを有するため柔軟性に優れている。ダイマー酸としては、例えば市販されているハリダイマーシリーズ(ハリマ化成社製)、プリポールシリーズ(クローダジャパン社製)、ツノダイムシリーズ(築野食品工業社製)などを用いることができる。
【0033】
ダイマー酸の含有量としては、ジカルボン酸成分100モル%に対して50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましい。ダイマー酸の含有量が50モル%未満であると、ダイマー酸系ポリアミド樹脂(B)の特性や効果を奏することが困難となる傾向にある。
【0034】
ダイマー酸以外の他のジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ピメリン酸、スベリン酸、ノナンジカルボン酸、フマル酸などを用いることができる。他の成分の割合量としては、ジカルボン酸成分100モル%に対して50モル%未満とすることが好ましく、25モル%以下とすることがより好ましい。これにより、樹脂の軟化点や接着性などの制御が容易となる。なお、単量体であるモノマー酸(炭素数18)、三量体であるトリマー酸(炭素数54)、炭素数20〜54の他の重合脂肪酸などは、本発明にいうダイマー酸には含まれず、上記他の成分に含むものとする。
【0035】
一方、ダイマー酸系ポリアミド樹脂(B)を構成するジアミン成分としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、m−キシレンジアミン、フェニレンジアミン、ジエチレントリアミン、ピペラジンなどを用いることができ、中でもエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、m−キシレンジアミン、ピペラジンが好ましい。
【0036】
さらに、樹脂を重合する際、ジカルボン酸成分とジアミン成分との仕込み比を調整することにより、樹脂の重合度や酸価、アミン価などを制御することができる。
【0037】
また、本発明におけるダイマー酸系ポリアミド樹脂は、酸価が1〜20mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは1〜15mgKOH/g、さらに好ましくは3〜12mgKOH/g、最も好ましくは2〜7mgKOH/gである。酸価が1mgKOH/g未満になると、活物質及び導電材と金属集電体との接着性が低下する場合があり、また後述するように樹脂を水性媒体中に分散させる際には、その分散化が困難となる傾向にあり、好ましくない。一方、20mgKOH/gを超えると、酸やアルカリに対する耐性が低下して電解液中で樹脂が膨潤する傾向にあり、好ましくない。なお、酸価とは、樹脂1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数で定義されるものであり、JIS K 2501に記載の方法に準じて測定されるものである。
【0038】
本発明の樹脂組成物は、上記樹脂(A)(B)を含有するものであり、両者の比率としては、(A)100質量部に対して(B)を30〜60質量部含有する必要がある。(B)の含有量が30質量部未満になると、二次電池電極に柔軟性を与えることができなくなる。一方、60質量部を超えると、活物質、導電材及び金属集電体に対し十分な接着性が得られなくなる。
【0039】
本発明では、このように樹脂(A)(B)を用いるが、(A)(B)には、本発明の効果を損なわない範囲内で他の共重合成分が含まれていてもよい。他の共重合成分としては、例えば、アクリル酸メチルやメタクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどのアクリル酸エステル類およびメタクリル酸エステル類、1−ペンテン、4−メチルー1−ペンテン、3−メチルー1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのアルケン類やジエン類、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどのマレイン酸エステル類、(メタ)アクリル酸アミド類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類、き酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどのビニルエステル類、ビニルアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、置換スチレン、ハロゲン化ビニル類、ハロゲン化ビニリデン類、一酸化炭素、二酸化硫黄及びこれらの混合物などがあげられる。
【0040】
他の共重合成分の含有量としては、樹脂(A)又は樹脂(B)100質量%に対して20質量%以下であることが好ましい。20質量%を超えると、バインダーとした際に上記したような本発明の効果を発現し難くなるため、好ましくない。
【0041】
また、本発明の樹脂組成物に占める(A)(B)の合計量としては、組成物100質量%に対して80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上がより好ましい。(A)(B)の合計量が80質量%未満であると、本発明のバインダー用樹脂組成物を用いることによる効果を奏することが困難となる傾向にある。
【0042】
ここで、本発明の樹脂組成物に含有させることのできる(A)(B)以外の成分としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−(メタ)アクリル酸−共重合体、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、変性ナイロン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂及びこれらの混合物などがあげられる。
次に、本発明の二次電池電極用バインダー液(以下、バインダー液と略記することがある)について説明する。本発明のバインダー液は、上記バインダー用樹脂組成物と、液状媒体と、塩基性化合物を含有するものである。
【0043】
液状媒体としては、水、有機溶剤など任意の液状物が使用できるが、通常は、環境への影響を考慮しつつ樹脂の水性分散化を促進する観点から、水を主体として有機溶剤を併用した水性媒体が好ましく使用できる。
【0044】
この場合の有機溶剤としては、NMP、トリメチルフォスフェート、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミドなどの他、各種親水性有機溶剤が使用でき、中でも親水性有機溶剤が好ましく用いられる。上記したように、本発明では水性媒体が好ましく使用できるため、親水性有機溶剤を用いる場合でも、当然ながら水と併用することが好ましい。親水性有機溶剤は、後述のように本発明のバインダーを製造する際に添加されることが好ましく、本発明のバインダー液が得られた後は、必要に応じて当該親水性有機溶剤を留去してもよい。
【0045】
親水性有機溶剤としては、20℃における水に対する溶解性が50g/L以上のものが好適である。具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール(以下「IPA」と略称する)等のアルコール類、テトラヒドロフラン(以下、「THF」)ジオキサンなどのエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール誘導体などがあげられ、これらを2種以上混合して使用してもよい。本発明では、これらのうち、樹脂の水性分散化をより促進する観点から、IPA、n?プロパノール、THFが好ましく用いられる。
【0046】
また、本発明では、塩基性化合物を用いることで、バインダー用樹脂組成物を水性媒体中に安定的かつ均一に分散できるようになる。塩基性化合物としては、アンモニア、有機アミンなどのアミン類などがあげられる。有機アミン化合物の具体例としては、トリエチルアミン、N、N−ジメチルエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリンなどがあげられる。中でもトリエチルアミン、N、N−ジメチルエタノールアミンが好適である。
【0047】
バインダー液における塩基性化合物の含有量としては、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とダイマー酸系ポリアミド樹脂(B)とを合わせた樹脂の固形分100質量部に対して0.01〜100質量部であることが好ましく、0.05〜40質量部が好ましく、0.1〜15質量部がより好ましい。0.01質量部未満では、塩基性化合物を添加する効果に乏しく、分散安定性に優れた水性分散体を得ることが困難となりやすい。一方、100質量部を超えると、バインダーの着色やゲル化が生じやすくなる。
【0048】
また、バインダー液における樹脂(A)(B)の合計の固形分濃度としては、1〜50質量%であることが好ましく、3〜40質量%であることがより好ましく、5〜30質量%であることが特に好ましい。固形分濃度が50質量%を超えると、バインダーの著しい粘度増加あるいは固化により取扱い性が低下する傾向がある。一方、質量%未満では、バインダー液の著しい粘度低下により取扱いづらいものとなる傾向にある。
【0049】
本発明のバインダー液では、上記のように液状媒体として水性媒体を用いることが好ましいことから、バインダー液の形態を水性溶液又は水性分散体とするのが好ましく、中でも実用上の点から水性分散体とするのが好ましい。
【0050】
バインダー液の形態を水性分散体とする場合、水性分散体中では、樹脂(A)(B)が均一に混合・分散されていることが好ましい。このような水性分散体を得るには、例えば、それぞれ予め調製された酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体と、ダイマー酸系ポリアミド樹脂(B)の水性分散体とを混合する方法や、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とダイマー酸系ポリアミド樹脂(B)とを混合した混練樹脂を得た後、水や親水性有機溶剤と共に加熱・攪拌して水性分散体を得る方法などがあげられ、特に前者の方法が好ましく採用される。
【0051】
ただし、本発明では、いずれの方法においても、不揮発性水性分散化助剤を用いないで水性分散体を調製することが好ましい。
【0052】
不揮発性水性分散化助剤とは、水性分散化において、水性分散化促進や水性分散体の安定化の目的で添加される薬剤や化合物を指す。不揮発性水性分散化助剤を含むバインダー液を用いた場合、不揮発性水性分散化助剤は電極形成後にも残存し、バインダー用樹脂を可塑化することにより、電極の特性、例えば耐電解液特性を悪化させる。不揮発性とは、常圧での沸点を有さないか、もしくは、常圧で高沸点(例えば300℃以上)であることをいう。
【0053】
不揮発性水性分散化助剤としては、乳化剤などがあげられる。具体的には、カチオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、あるいは両性乳化剤があげられ、一般に乳化重合に用いられるものの他、界面活性剤類も含まれる。例えば、アニオン性乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネートなどがあげられる。ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体などのポリオキシエチレン構造を有する化合物やポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのソルビタン誘導体などがあげられる。両性乳化剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイドなどがあげられる。
【0054】
なお、本発明では、バインダー液を調製する際に不揮発性水性分散化助剤を用いないことが好ましいというだけで、バインダー液を調製した後は、必要に応じて不揮発性水性分散化助剤を使用することを妨げるものではない。
【0055】
本発明では、さらに上記バインダー液に、活物質と必要に応じて導電材とを含有させることにより、二次電池電極用ペーストを得ることができる。
【0056】
正極用活物質としては、リチウムイオンを可逆的に放出、吸蔵でき、電子伝導度が高い材料が好ましく、例えば、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウムなどの遷移金属酸化物があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
負極用活物質としては、例えばグラファイトなどの材料があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
導電材としては、主に炭素材料が使用でき、必要に応じて金属もしくはその化合物も使用できる。炭素材料としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、グラファイト、炭素繊維などがあげられ、金属もしくはその化合物としては、ニッケル、コバルト、チタン、酸化コバルト、酸化チタンなどがあげられるが、これらに限定されるものでない。
【0059】
二次電池電極用ペーストにおける樹脂(A)(B)の合計の含有量としては、0.01〜8質量%であることが好ましい。8質量%を超えると、得られる電極における電気抵抗値が高くなる傾向がある。一方、0.01質量%未満では、活物質と導電材及び金属集電体とを強く接着させることが困難となりやすい。
【0060】
また、二次電池電極用ペーストには、本発明の効果を損なわない範囲内で、樹脂(A)(B)以外に水溶性ポリマーを含有させてもよい。水溶性ポリマーの具体例としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系ポリマー、ポリアクリル酸ナトリウムなどのポリアクリル酸塩、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、アクリル酸又はアクリル酸塩とビニルアルコールの共重合体、無水マレイン酸又はマレイン酸もしくはフマル酸とビニルアルコールの共重合体、変性ポリビニルアルコール、変性ポリアクリル酸などがあげられる。
【0061】
中でも、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体が効果的である。これらのセルロース類は、金属集電体、活物質、導電材の各材料間の濡れ性を向上させると共に、いわゆる増粘剤としての役割を担う。
【0062】
水溶性ポリマーの含有量としては、樹脂(A)(B)、活物質及び導電材の合計100質量部に対して0.01〜5質量部が好ましく、より好ましくは0.01〜3質量部、さらに好ましくは0.01〜1.5質量部である。
【0063】
本発明において、二次電池電極用ペーストを製造する際の方法、条件は特に限定されず、二次電池電極用バインダー液と、活物質と、導電材とを常温もしくは適当に制御された温度で混合した後、機械的分散処理、超音波分散処理するなどすれば、容易に得ることが使用できる。混合順序についても特に限定されない。また、その際、必要に応じて上述した他の成分や任意の溶媒などを併用してもよい。
【0064】
本発明の二次電池電極は、本発明の二次電池電極用バインダー液を用いて形成されたものであるが、例えば上記のようにして製造した二次電池電極用ペーストを集電体上に塗布、乾燥することにより、二次電池電極を形成することができる。
【0065】
集電体としては、導電性を有する物質であればよく、例えば、アルミニウム、ニッケル、銅などがあげられる。集電体の厚みとしては、特に制限されないが、通常は5〜50μm程度とするのがよい。
【0066】
ペーストを集電体上に塗布する方法としては、例えばドクターブレードを用いる方法が好ましく、水性媒体を除去する方法としては、例えば60〜150℃、好ましくは70〜130℃で5〜120分間乾燥し、さらに例えば120℃で12時間減圧乾燥する方法があげられる。塗布、乾燥後の電極の厚みは30〜150μmが好ましい。電極の厚みや密度を制御するために、例えばロールプレス機によってプレスすることが好ましい。
【0067】
本発明の二次電池は、本発明の二次電池電極を用いて形成されたものであるが、例えば、上記のようにして製造した二次電池電極を、セパレーター及び電解液と共に常法に基づいて容器に封入することにより、二次電池を形成することができる。
【0068】
二次電池を構成するセパレーターとしては、ポリエチレン微多孔膜、ポリプロピレン微多孔膜、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ポリアミド不織布、ガラス繊維などがあげられ、電解液としては、エチレンカーボネートやジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートなどの非水溶媒を単独または二種以上の混合溶媒に、六フッ化リン酸リチウム、過塩素酸リチウムなどの支持電解塩を含有させたものがあげられる。
【0069】
また、セパレーターに代えて固体電解質あるいはゲル電解質を用いてもよい。電解質としては、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート、トリエチルモノメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラエチルアンモニウムヘキサフルオロフォスフェート、イオン性液体、硫酸水溶液、水酸化カリウム水溶液などがあげられる。電解質を溶解させる溶媒(電解液溶媒)も、一般的に電解液溶媒として用いられるものであれば特に限定されない。具体的には、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどのカーボネート類、γ−ブチロラクトンなどのラクトン類、スルホラン類、アセトニトリルなどのニトリル類、イオン性液体などがあげられ、これらは単独または二種以上の混合溶媒として使用することができる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。なお、後述する各種の特性は、以下の方法によって測定又は評価した。
【0071】
(1)酸変性ポリオレフィン樹脂の特性値
〔酸価〕
酸変性ポリオレフィン樹脂の酸価をJIS K0070記載の方法に準じて求めた。
〔酸変性ポリオレフィン樹脂の構成〕
オルトジクロロベンゼン(d4)中で、120℃下でH−NMR分析(バリアン社製、300MHz)することで解析した。
〔酸変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量〕
GPC分析(東ソー社製HLC−8020、カラムはTSK−GEL)を用いて、試料をテトラヒドロフランに溶解して40℃下で測定した。このとき、ポリスチレン標準試料で作成した検量線から重量平均分子量を求めた。なお、試料がテトラヒドロフランに溶解し難い場合は、オルトジクロロベンゼンを用いた。
【0072】
(2)ダイマー酸系ポリアミド樹脂の特性値
〔酸価、アミン価〕
JIS K 2501に記載の方法により測定した。
〔軟化点温度〕
樹脂10mgをサンプルとし、顕微鏡用加熱(冷却)装置ヒートステージ(リンカム社製、Heating−Freezing ATAGE TH−600型)を備えた顕微鏡を用いて、昇温速度20℃/分の条件で測定し、樹脂が溶融したときの温度を軟化点とした。
〔溶融粘度〕
ブルックフィールド溶融粘度計DV−II+PRO型にて、樹脂温度200℃、ずり速度1.25/秒で測定した。溶融開始後、約25分間回転させ、粘度がほぼ経過時間で安定した時点での溶融粘度の値を読み取った。
【0073】
(3)電極接着性(負極)
負極活物質として黒鉛粉末(日本黒鉛工業社製「CGC−20」)と、導電材としてアセチレンブラック(電気化学工業社製「デンカブラック」)と、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)(第一工業製薬社製「セロゲンBSH−6」)水溶液と、得られた二次電池電極用バインダー液とを配合して、各材料に含まれる固形分が、得られるペースト中で全固形分100質量%に対し順に92.2質量%、4質量%、0.8質量%、3質量%含まれるペーストとなし、さらに、ペーストの固形分濃度が45質量%になるように蒸留水で希釈した後、十分に混練することによって二次電池負極用ペーストを調製した。
【0074】
得られたペーストを厚さ18μmの銅箔の片面に、乾燥後の厚さが約80μmになるようフィルムアプリケーターを用いて塗布し、80℃で30分熱風乾燥した後、さらに水分を除去するために120℃で15時間真空乾燥して、銅箔上に活物質層を形成して二次電池正極電極を作製した。
【0075】
次に、得られた電極を幅2.5cm、長さ10cmで切り出し、これを測定サンプルとした。そして、十分な厚みを有する鋼板に、サンプルの銅箔側を両面テープで貼り合わせた。次いで、測定サンプルの活物質層に幅18mmのセロハンテープ(ニチバン社製「CT−18」)を貼り付け、その一辺から180°の方向に50mm/分の速度で引き剥がしたときの剥離状態を目視で確認し、下記の基準に基づいて負極電極の接着性を評価した。
【0076】
○:電極の内部で剥離する。
×:銅箔と電極層の界面で剥離する。
【0077】
(4)電極接着性(正極)
正極活物質としてコバルト酸リチウム(日本化学工業社製「セルシードC−10N」)と、導電材としてアセチレンブラック(電気化学工業社製「デンカブラック」)と、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)(第一工業製薬社製「セロゲンBSH−6」)水溶液と、得られた二次電池電極用バインダー液とを配合して、各材料に含まれる固形分が、得られるペースト中で全固形分100質量%に対し順に92質量%、4質量%、1質量%、3質量%含まれるペーストとなし、さらに、ペーストの固形分濃度が55質量%になるように蒸留水で希釈した後、十分に混練することによって二次電池正極用ペーストを調製した。
【0078】
そして、得られたペーストを厚さ18μmのアルミ箔の片面に、乾燥後の厚さが約80μmになるようフィルムアプリケーターを用いて塗布し、以降は、上記負極電極の場合と同様にして電極を作製し、同様の条件にて正極電極の接着性を評価した。
【0079】
(5)電極柔軟性
得られた各電極を幅2.5cm、長さ10cmで5枚切り出し、これを測定サンプルとした。そして、サンプルの金属箔側中央付近に、直径1.5mmの円柱状ステンレス棒をサンプル短辺と平行となるようにして置き、後に棒の側面に接触させながら電極を折り曲げたとき、途中で活物質層にヒビが入ったり、活物質層が集電体から剥離したりしたサンプルの枚数が0〜1枚の場合を○、2枚以上の場合を×と評価した。
【0080】
(参考例1)
撹拌機とヒーターを備えた密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器に、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)として、三洋化成社製「ユーメックス1010」(酸価52mgKOH/g、重量平均分子量30000)を120g、塩基性化合物(B)としてN,N−ジメチルエタノールアミン(和光純薬社製)を12.6g、有機溶剤としてIPA(和光純薬社製)を120g、蒸留水を347g仕込み、密閉した後、300rpmで撹拌しながら160℃(内温)まで加熱した。そして、撹拌下、160℃で1時間保持した後、ヒーターの電源を切り室温まで撹拌下で自然冷却し、やや黄色で半透明の均一な分散体(固形分濃度20質量%)を得た。
【0081】
次に、得られた水性分散体295g、蒸留水50gを1Lのナスフラスコに入れ、80℃に加熱した湯浴につけながらエバポレーターを用いて減圧し、IPA及び水を合計で約100gを留去し、乳白色の均一な水性分散体E−1(固形分濃度25質量%)を得た。
【0082】
(参考例2)
撹拌機とヒーターを備えた密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器に、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)として、三洋化成社製「ユーメックス1001」(酸価26mgKOH/g、重量平均分子量40000)を90g、塩基性化合物(B)としてN,N−ジメチルエタノールアミン(和光純薬社製)を8g、有機溶剤としてTHF(和光純薬社製)を240g、蒸留水を260g仕込み、密閉した後、300rpmで撹拌しながら130℃(内温)まで加熱した。そして、撹拌下、130℃で1時間保持した後、ヒーターの電源を切り60℃まで自然冷却し、乳白色の均一な分散体(固形分濃度15質量%)を得た。
【0083】
次に、得られた水性分散体295g、蒸留水40gを1Lのナスフラスコに入れ、80℃に加熱した湯浴につけながらエバポレーターを用いて減圧し、THF及び水を合計で約160gを留去し、乳白色の均一な水性分散体E−2(固形分濃度25質量%)を得た。
【0084】
(参考例3)
撹拌機、留去管を取り付けた1リットルの4口フラスコ中に、ダイマー酸(築野食品工業社製「ツノダイム395」、ダイマー酸を94質量%、モノマー酸及びトリマー酸をそれぞれ3質量%含有)504.0g、アゼライン酸18.8g、エチレンジアミン18.0g、ピペラジン60.3g、ステアリン酸5.7gを仕込み、窒素雰囲気下において、200℃まで昇温し30分間反応させた。さらに、所望の酸価、アミン価になるように反応時間を調整し、ポリアミド樹脂P−1を得た。得られたポリアミド樹脂は、ダイマー酸をジカルボン酸成分全体の90モル%含むダイマー酸系ポリアミド樹脂であり、酸価5.0mgKOH/g、アミン価0.1mgKOH/g、軟化点140℃、200℃における溶融粘度は23000mPa・sであった。
【0085】
次に、撹拌機とヒーターを備えた密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器に、ポリアミド樹脂P−1を75.0g、IPA(和光純薬社製)を75.0g、THF(和光純薬社製)を75.0g、N,N−ジメチルエタノールアミン(和光純薬社製)を6.0g、トルエン(和光純薬社製)を7.5g、蒸留水を136.5g仕込み、密閉した後、300rpmで撹拌しながら系内を加熱し、130℃で60分間加熱攪拌した。その後、撹拌しながら室温付近(約30℃)まで冷却し、蒸留水を230g追加した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)でごくわずかに加圧しながらろ過した。
【0086】
そして、得られた水性分散体を1Lナスフラスコに入れ、80℃に加熱した湯浴につけながらエバポレーターを用いて減圧し、IPA、THF、トルエン及び水を合計で約230g留去し、乳白色の均一な水性分散体E−3(固形分濃度20質量%)を得た。
【0087】
(参考例4)
仕込み量を、ダイマー酸476.0g、アゼライン酸28.2g、エチレンジアミン30.1g、ピペラジン43.1g、ステアリン酸5.7gに変更する以外は、参考例3と同様にしてポリアミド樹脂P−2を得た。得られたポリアミド樹脂は、ダイマー酸をジカルボン酸成分全体の85モル%含むダイマー酸系ポリアミド樹脂であり、酸価10.0mgKOH/g、アミン価0.1mgKOH/g、軟化点158℃、200℃における溶融粘度は10,000mPa・sであった。
【0088】
次に、撹拌機とヒーターを備えた密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器に、ポリアミド樹脂P−2を75.0g、IPA(和光純薬社製)を93.8g、N,N−ジメチルエタノールアミン(和光純薬社製)を6.0g、蒸留水を200.3g仕込み、密閉した後、300rpmで撹拌しながら系内を加熱し、120℃で60分間加熱攪拌した。その後、撹拌しながら室温付近(約30℃)まで冷却し、蒸留水を130g追加した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)でごくわずかに加圧しながらろ過した。
【0089】
そして、得られた水性分散体を1Lナスフラスコに入れ、80℃に加熱した湯浴につけながらエバポレーターを用いて減圧し、IPA及び水を合計で約130g留去し、乳白色の均一な水性分散体E−4(固形分濃度20質量%)を得た。
【0090】
(実施例1)
酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1と、ダイマー酸系ポリアミド樹脂水性分散体E−3を用い、酸変性ポリオレフィン樹脂(固形分)100質量部に対してダイマー酸系ポリアミド樹脂(固形分)が30質量部となるように配合し、室温で5分間、混合攪拌し、二次電池電極用バインダー液T−1を得た。
【0091】
次に、得られた二次電池電極用バインダー液T−1を使用して、上記に基づき二次電池電極用ペーストを調製し、電極の接着性及び柔軟性を評価した。
【0092】
(実施例2〜5、比較例1〜3)
酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体及びダイマー酸系ポリアミド樹脂水性分散体、並びにそれらの配合量を表1記載のように変更した以外は、実施例1と同様にして二次電池電極用バインダー液T−2〜T−7を得、さらに、二次電池電極用ペーストを調製し、同様の条件で電極の接着性及び柔軟性を評価した。なお、T−8は、E−1をそのまま使用したものであり、T−2〜T−7の場合と同様、T−8を用いて二次電池電極用ペーストを調製し、同条件にて電極の接着性及び柔軟性を評価した。
【0093】
【表1】

【0094】
表1から明らかのように、実施例1〜5にかかる二次電池電極は、接着性と共に柔軟性に優れるものであった。
【0095】
これに対し、比較例1、3にかかる二次電池電極では、バインダー液におけるダイマー酸系ポリアミド樹脂の含有比率が所定範囲に満たなかったため、柔軟性に劣るものとなり、比較例2では、逆に所定範囲を超えたため、電極は接着性に劣るものとなった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とダイマー酸系ポリアミド樹脂(B)とを含有し、(A)100質量部に対して(B)を30〜60質量部含有することを特徴とする二次電池電極のバインダー用樹脂組成物。
【請求項2】
ダイマー酸系ポリアミド樹脂(B)中のダイマー酸の含有量が、ジカルボン酸成分100モル%に対して50モル%以上であることを特徴とする請求項1記載の二次電池電極のバインダー用樹脂組成物。
【請求項3】
ダイマー酸系ポリアミド樹脂(B)の酸価が、1〜20mgKOH/gであることを特徴とする請求項1又は2記載の二次電池電極のバインダー用樹脂組成物。
【請求項4】
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の酸価が、3〜70mgKOH/gであることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の二次電池電極のバインダー用樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかに記載の二次電池電極のバインダー用樹脂と、液状媒体と、塩基性化合物とを含有することを特徴とする二次電池電極用バインダー液。
【請求項6】
液状媒体が水性媒体であることを特徴とする請求項5記載の二次電池電極用バインダー液。
【請求項7】
請求項1〜4いずれかに記載の二次電池電極のバインダー用樹脂組成物を含有することを特徴とする二次電池電極。
【請求項8】
請求項5又は6記載の二次電池電極用バインダー液を用いて形成された二次電池電極。
【請求項9】
請求項7又は8記載の二次電池電極を用いて形成された二次電池。


【公開番号】特開2012−234707(P2012−234707A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102511(P2011−102511)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】