説明

二次電池

【課題】 電池の劣化を効果的に抑制できる二次電池を提供する。
【解決手段】 電池ケース11と、電池ケース内部に収納された電極体13と、初期添加剤を含み、電池ケース内に満たされた電解液14とを備えた二次電池1であって、電極体に初期添加剤により形成された被膜の劣化状態に応じて劣化状態を回復するための回復用添加剤を電解液に添加する添加手段(カプセル3)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車やプラグインハイブリッド自動車等の電動車両が多数実用化されている。このような電動車両に搭載されている駆動用のバッテリは、充電可能なリチウムイオン二次電池が用いられている。
【0003】
リチウムイオン二次電池は使用により、リチウムイオンと電解液(電解質)とが反応して電極の表面に固体電解質界面(SEI)を形成する。このSEIの形成が不十分であると電解質と電極とが過剰に反応して二次電池の作動が不安定となる問題があるが、SEIの形成が進みすぎると電池内の正極・負極間を移動するリチウムイオンが減少し、電池が劣化するという問題がある。
【0004】
従来、このような問題を解決するために、電解液中に添加剤として、例えばビニレンカーボネート(VC)を添加することが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、VCを添加し電極表面にVCによる被膜(以下、VC被膜という)を形成することで、SEIが形成されすぎることを抑制している。ところが、VC被膜は電極体の膨張収縮により徐々に剥がれてしまう。
【0005】
このため、特許文献1に記載の発明では、このVCをカプセルに入れて、時間経過と共に徐々に電解質中にVCを添加できるようにし、膨張収縮により剥がれたVC被膜を連続的に再生し、SEIの形成を抑制している。その結果、電池の劣化を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−501419号公報(請求項1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、カプセルが徐放性カプセルであり、時間経過により徐々にVCが放出されるため、時間経過と共に電池が劣化するような使用状態では劣化を回復することができ、効果的な面もある。
【0008】
しかしながら、徐放性カプセルにより連続的に添加剤を添加するとすれば、時間経過と共に電池が劣化していない場合でも添加剤が放出されてしまうことが考えられる。このような場合、添加剤が放出されすぎてもVC被膜が厚くなりすぎて内部抵抗が高くなるという問題がある。なお、このような問題は、VCに限らず劣化状態を回復するための他の添加剤を投入する場合に同様に生じる。
【0009】
そこで、本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決することにあり、添加剤を添加しすぎることなく電池の劣化を効果的に抑制できる二次電池を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の二次電池は、電池ケースと、前記電池ケース内部に収納された電極体と、初期添加剤を含み、前記電池ケース内に満たされた電解液とを備えた二次電池であって、前記電極体に前記初期添加剤により形成された被膜の劣化状態に応じて劣化状態を回復するための回復用添加剤を電解液に添加する添加手段を設けることを特徴とする。劣化状態に応じて劣化状態を回復するための回復用添加剤を添加することで、電池の劣化を効果的に抑制できる。なお、ここでいう劣化状態を回復とは、添加剤による被膜が膨張収縮により電極から剥がれ落ちることによる電池の劣化状態を回復することをいう。
【0011】
前記添加手段は、前記二次電池の劣化による前記電池ケース内の内圧が上昇して所定値以上となった場合に、前記添加剤を前記電解液に添加することが好ましい。即ち、電池の劣化を内圧上昇により検知して、これにより添加剤を前記電解液に添加することで、より効果的に電池の劣化を抑制できる。
【0012】
本発明の好ましい実施形態としては、前記所定値は、前記電極体の充放電時の膨張収縮による内圧変化よりも大きいことが挙げられる。
【0013】
前記添加手段は、前記添加剤を前記電解液から隔離する隔離手段を有し、該隔離手段が前記内圧に応じて変形することで前記添加剤を前記電解液へ放出することが好ましい。このように特に内圧を測定する測定手段を持たずに直接的に内圧により変形する部材から構成されることで、より簡易に添加剤を添加することが可能である。
【0014】
前記添加手段は、前記添加剤を内包した前記隔離手段としてのカプセルであり、前記内圧が所定値以上となると該カプセルの壁面が破れて前記添加剤を前記電解液に添加するように構成されていることが好ましい。このような添加手段を用いれば、簡易に劣化状態に応じて劣化状態を回復するための添加剤を添加することができる。
【0015】
前記添加手段は、その一端側が封止され、他端側が開放された筒状部材、及び該筒状部材の中空部に嵌合し、該中空部を前記内圧の上昇により前記一端側に移動する移動部からなる前記隔離手段と、前記筒状部材の前記移動部の初期設置位置よりも一端側に設けられた開口に連通し、前記添加剤が貯留された貯留部とを備え、前記内圧の上昇により前記移動部が移動して、前記添加剤を前記電解液に添加するように構成されていることが好ましい。このような添加手段を用いれば、簡易に劣化状態に応じて劣化状態を回復するための添加剤を添加することができる。
【0016】
前記添加手段は、前記筒状部材の前記一端側に空気溜まり部が形成されていることが好ましい。このように構成されていることで、前記電極体の充放電時の膨張収縮による内圧変化を吸収することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の二次電池によれば、劣化状態に応じて添加剤を添加することができ電池の劣化を効果的に抑制できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1にかかる二次電池の斜視図である。
【図2】実施形態1にかかる二次電池の断面図である。
【図3】実施形態2にかかる二次電池の断面図である。
【図4】実施形態3にかかる添加装置の模式図である。
【図5】別の実施形態にかかる添加装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施形態1)
本発明の第1の実施形態について、図1、2を用いて説明する。図1は、本実施形態にかかる二次電池を示す斜視図であり、図2(1)は図1のA−A’線での断面図であり、図2(2)は図1のB−B’線での断面図である。
【0020】
二次電池1は、略直方体形状のケース11と、ケース11の開口部に配されてケース11を封止する蓋部12とを備える。図2に示すように、ケース11内には電極体13が収納されている。また、ケース11内部は電解液14によって満たされており、電極体13は電解液14中に浸漬されている。電極体13は、セパレータを介して正極板及び負極板が積層されたものを巻回して形成されたものであり、積層方向は、図中横方向となっている。
【0021】
蓋部12には正極端子15と、負極端子16とが設けられている。この正極端子15には、正極集電部17が接続する。また、負極端子16には負極集電部18が接続する。正極集電部17及び負極集電部18は、それぞれ電極体13の正極板及び負極板に接続する。即ち、正極板と正極集電部17と正極端子15とは互いに電気的に接続されている。また、負極板と負極集電部18と負極端子16とは互いに電気的に接続されている。
【0022】
正極板は、通常用いられる正極材料からなる。通常用いられる正極材料としては、例えばリチウムを吸蔵および放出可能な金属酸化物、例えば層状構造型の金属酸化物、スピネル型の金属酸化物及び金属化合物、酸化酸塩型の金属酸化物などが挙げられる。層状構造型の金属酸化物としては、リチウムニッケル系複合酸化物、リチウムコバルト系複合酸化物、三元系複合酸化物(LiCo1/3Ni1/3Mn1/3)が挙げられる。リチウムニッケル系複合酸化物としては、好ましくはニッケル酸リチウム(LiNiO)が挙げられる。リチウムコバルト系複合酸化物としては、好ましくはコバルト酸リチウム(LiCoO)が挙げられる。スピネル型の金属酸化物としては、マンガン酸リチウム(LiMn)等のリチウムマンガン系複合酸化物が挙げられる。酸化酸塩型の金属酸化物としては、リン酸鉄リチウム(LiFePO)、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO)、リン酸シリコンリチウム等が挙げられる。
【0023】
負極板は、通常用いられる負極活物質からなる。負極活物質としては、通常用いられる活物質、例えば金属リチウム、リチウム合金、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、および黒鉛等の炭素材料等を挙げることができる。金属酸化物としては、例えばスズ酸化物やケイ素酸化物などの不可逆性容量をもつものが挙げられる。炭素系材料としての黒鉛としては、人造黒鉛であっても天然黒鉛であっても良く、本実施形態では、負極の活物質としてはグラファイトを用いている。
【0024】
正極板及び負極板にはそれぞれさらにバインダーが含有されていてもよく、例えばポリフッ化ビニリデンを用いることができる。なお、活物質層にはアセチレンブラック等の導電性向上剤、電解質(例えば、リチウム塩(支持電解質)、イオン伝導性ポリマー等)が含まれていてもよい。また、イオン伝導性ポリマーが含まれる場合には、前記ポリマーを重合させるための重合開始剤が含まれてもよい。
【0025】
電解液14は、通常用いられる電解質、例えば環状炭酸エステルであるエチレンカーボネートやプロピレンカーボネートと、また、鎖状炭酸エステルでありジメチルカーボネートやエチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートとの混合溶液にLiPFを1モル濃度程度溶解した有機電解液が挙げられる。また、この電解液14には初期添加剤としてビニレンカーボネート(VC)が添加されている。
【0026】
また、本実施形態では、電解液14には電極表面の被膜を回復するための回復用添加剤(以下、単に添加剤ともいう)が封入されたカプセル3、3Aが含有されている。本実施形態では、このカプセル3、3Aからそれぞれ所定の内圧以上となると内部に封入された添加剤が放出されることで、電池の劣化を抑制することができる。
【0027】
カプセル3、3Aは、電解質に不溶である樹脂から構成され、所定の圧力が印加された場合に破れるようにそれぞれその厚みが設定されて構成されている。本実施形態では、カプセル3よりもカプセル3Aの方が厚みが厚く、破れにくく構成されている。二次電池が使用により劣化すると、ケース11の内圧が上昇するので、このケース11の内圧によりカプセル3、3Aが破けて封入された添加剤が放出されることにより、劣化状態に応じて必要量の添加剤を電解質に投入することができ、これにより劣化を抑制しているのである。
【0028】
以下、この内圧と劣化状態との関係について具体的に説明する。二次電池は使用されることで、リチウムイオンが炭素電極にインターカレートする際にリチウムイオンと電解質とが反応してガスが発生し、これにより電極の表面に固体電解質界面層(SEI)が形成される。SEIは二次電池の初期作動時において安定的に充放電するためには必要であるが、それ以降もSEIが形成され続けてしまうような状態であると、正極―負極間を移動できるリチウムイオンが不足して電池容量が減少した状態(劣化状態)となりやすい。即ち、SEIが形成されてしまう状態では、SEI形成による正極―負極間を移動できるリチウムイオンの減少による電池容量の減少という二次電池の劣化が引き起こされやすく、この劣化と同時にSEI形成時のガスの放出による内圧の上昇により電池の外形が変化するという問題が進行する。
【0029】
他方で、通常は二次電池内にSEIの形成を抑制するための初期添加剤としてビニレンカーボネート(VC)を予め電解液中に添加している。これにより、電極表面にVC被膜を形成してSEIの形成を抑制し、その結果電池容量の減少を抑制し、同時に内圧の上昇を抑制している。しかしながら、二次電池を使用することにより電極が膨張・収縮することでVC被膜は電極表面から剥がれてしまう。そうすると、この剥がれた部分でSEIが形成されやすく、その結果、正極―負極間を移動できるリチウムイオンが減少して電池容量を減少させることがあった。この場合に、二次電池内に予め過剰にVCを添加しておくと、VC被膜が厚くなりすぎて内部抵抗が増大することがあった。
【0030】
そこで、本実施形態では、二次電池1には、二次電池1の劣化状態に応じて、即ち内圧上昇に応じて添加剤を添加する添加手段としてのカプセル3、3Aが電解液14内に含有されているのである。内圧が上昇している状態とは、上述のように使用によりVC被膜が剥がれ落ちてSEIが形成されやすい劣化状態に一致するので、内圧上昇に応じて添加剤を放出すれば、劣化状態に応じて電極表面の被膜を回復することができるのである。
【0031】
カプセル3が破れて添加剤が放出されることで、電極表面のVC被膜が剥がれてしまった領域に再度VC被膜を形成することができ(即ちVC被膜を回復することができ)、SEIの生成を抑制、即ち正極―負極間を移動できるリチウムイオンの減少による容量低下という電池の劣化を抑制することができる。さらに、劣化した状態、即ち電極表面のVC被膜が剥がれてしまった領域がある状態で添加剤を添加することから、VC被膜自体が厚くなって電池の抵抗が上昇することも抑制できる。例えば、一定の時間を経過した後にカプセルが溶解するように形成するとすれば、使用回数が少なく劣化が生じていない状態でも添加剤をカプセルから放出してしまい、これによりVC被膜が厚くなってしまうことが考えられるので好ましくない。従って、本実施形態のように劣化した状態で添加剤を添加できるように構成することが好ましく、これによって添加剤を添加しすぎることなく電池の劣化を効果的に抑制できる。
【0032】
なお、内圧は充放電時の電極の膨張・収縮によっても変化するが、この電極の膨張・収縮による内圧変化は劣化による内圧変化と比較すると小さい。従って、カプセル3が破れる所定の内圧値をこれらの充放電時の電極の膨張・収縮による内圧変化量よりも大きく設定することとで、カプセル3が充放電時の電極の膨張・収縮により破れることはない。
【0033】
このように添加剤が添加されることで、内圧が減少に転じることはないと考えられるが、VC被膜が再度形成されることで、内圧の上昇は一定期間抑制できる。これは同時に電池の劣化を抑制している。そして、その後再度電極が膨張収縮を繰り返すことより電極表面のVC被膜が剥がれてしまうと、再度、徐々に内圧が上昇する。そうすると、低い内圧で破れたカプセル3とは別のカプセル3Aが破れて添加剤を放出する。このように、複数の厚さの異なるカプセルを含有させることで(本実施形態では二つの厚みの異なるカプセルを含有させているがこれに限定されない)、それぞれ所定の内圧で破れてVC被膜を形成することができる。
【0034】
なお、カプセルは添加剤の添加量に応じて複数含有させていてもよい。即ち、カプセル3、3Aをそれぞれ複数含有させていてもよいし、添加量に応じてそれぞれ異なる個数を含有させていてもよい。もちろん厚みの異なるカプセルを3個以上含有させてもよい。
【0035】
カプセル3、3Aを構成する電解質に不溶である樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン、ナイロン、ポリカプロラクトン、ポリアミド、セルロース等が挙げられる。
【0036】
本実施形態では、VC被膜を再度形成することができる添加剤を添加したが、添加剤は上述したVCに限定されない。添加剤としては、上述したように電極の膨張収縮により剥がれ落ちてしまった被膜を回復することができるものであればよく、例えばビニレンエチレンカーボネート、フルオロ−エチレンカーボネート、無水コハク酸、ラクチド、カプロラクタム、エチレンサルファイト、プロパンスルトン(PS)、プロペンスルトン、ビニルスルホン、及びそれらの誘導体及びハロゲン置換された化合物、が挙げられる。さらに、添加剤としては、例えばエチレンジアミンテトラ酢酸、テトラメチルエチレンジアミン、ピリジン、ジピリジル、エチレンビス(ジフェニルホスフィン)、ブチロニトリル、スクシノニトリル、ヨウ素及びアンモニウムハロゲン化物、例えばヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメトキシシクロトリホスファゼン、ヘキサメチルホスホルアミド、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、ジメチルピロール、およびそれらの誘導体を含んでいてもよい。これらの添加剤から、一種又は複数を選択してカプセル3、3A内に含有させればよい。初期添加剤も、上述した添加剤と同一のものを用いてもよい。
【0037】
一回の添加で放出される添加剤の総量は、電解液量に対して0.5〜1.0重量%程度とされていればよい。
【0038】
初期添加剤と回復用添加剤とは、本実施形態のように同一のものであってもよく、異なるものであってもよい。初期添加剤と回復用添加剤とが異なったとしても、電極を保護しSEIの形成を抑制することで正極―負極間を移動できるリチウムイオンの減少を抑制することができればよい。
【0039】
(実施形態2)
本実施形態では、添加手段としてカプセルの代わりに図3に示す添加装置4を用いている点が実施形態1とは異なる。
【0040】
添加装置4は、例えば二次電池1の蓋部12の裏面側に設置され、内圧の変化に応じて添加剤を電解液14中に添加するものである。添加装置4は、筒状部41と、筒状部41の一端側に設けられ、筒状部41よりも径が大きい大径部42とを有する。筒状部41の他端側は開放されている。筒状部41には、その長手方向に沿って開口43が複数列設されている。各開口43にはそれぞれに貯留部44が連通している。貯留部44は有底筒状であり、それぞれ添加剤45が貯留されている。また、筒状部41には、筒状部41の内径に略一致して内壁に嵌合する栓部46が設けられている。栓部46は、例えばゴム等の物質から構成されている。栓部46は、筒状部41内を移動可能であるように構成されている。栓部46は、初期状態としては筒状部41の他端側に設置されている。栓部46が筒状部41の他端側に設置され嵌合することで、添加装置4において栓部46よりも大径部42側は空気が入った状態で圧力が外圧と同一であるように構成されている。
【0041】
かかる添加装置4では、電池の劣化、即ち内圧の上昇が生じると、栓部46が内圧により押圧されて筒状部41の長手方向を一端側、即ち大径部42側へ徐々に移動する。そして、図3(2)に示すように栓部46が移動していき、筒状部41の最も開口側に近い貯留部44を越えると、貯留部44に貯留されていた添加剤45が開口43を通過して電解液14内に放出される。従って、内圧上昇が生じるにつれて栓部46が筒状部41を移動して、これにより各貯留部44内の添加剤45が電解液14内に放出される。
【0042】
即ち、本実施形態においても二次電池1の劣化、即ちVC被膜が除去されて内圧の上昇が所定値以上となると添加剤45が電解液14内に放出するように構成されている。これにより、電極でのVC被膜が剥がれた状態になったときにVCが添加されることから、電極のVC被膜が剥がれた領域に再度VC被膜を形成することができ、二次電池を回復させることが可能である。
【0043】
この場合において、大径部42を設けていることから、充放電時における内圧変化を吸収できる。即ち、充放電時における内圧変化があったとしても、大径部42内に含まれた空気が外側へ押圧することで、検知圧を下げることができる。これにより、通常の充放電による内圧変化ではなく劣化による内圧変化により栓部46が移動する。なお、かかる添加装置4は、蓋部12の裏面側に設けられていることから、電極体13の膨張収縮の影響を受けにくい。電極体13は、その積層方向に膨張収縮するからである。
【0044】
(実施形態3)
本実施形態では、図4に示す添加装置5の栓部46が弾性体により外部へ押圧されている点が実施形態2とは異なる。
【0045】
本実施形態にかかる添加装置5も、添加装置4(図3参照)と同様に例えば蓋部12の裏面側に設置され、内圧の変化に応じて添加剤を電解質中に添加するものである。添加装置5にはバネ51が設けられ、バネ51はその一端が大径部42に設けられたバネ座52に接続され、他端側が栓部46に接続されている。筒状部41の入口付近に設置された栓部46は、バネ51により外部側へ押圧されているが、劣化により二次電池1内の内圧が大きくなるにつれてバネ51の弾性力よりも内圧が大きくなり、栓部46が内側に移動する。このように構成されていることで、より栓部46を内圧に応じて精密に制御することができる。
【0046】
即ち、本実施形態においても二次電池1の容量の低下、即ちVC被膜が剥がれ落ちて内圧の上昇が所定値以上となると添加剤45が電解液14内に放出するように構成されている。これにより、電極でのVC被膜が剥がれた状態になったときにVCが添加されることから、電極のVC被膜が剥がれた領域に再度VC被膜を形成することができ、二次電池1を回復させることが可能である。
【0047】
添加手段は、上述したカプセル3、3A及び添加装置4、5に限定されない。劣化状態に応じて添加剤45を添加できればよい。添加剤45を電解液から隔離する隔離手段を有し、該隔離手段が前記内圧に応じて変形するように構成されていれば、特に測定手段等を設けることなく内圧変化に応じて簡易に添加剤45を効果的に添加することができる。
【0048】
添加装置4、5の形状は上述した各実施形態に限定されない。例えば、図5に示すように、大径部を持たない形状であってもよい。さらに、図5に示すように、筒状部41の太さが一定でなく、他端側(開放側)から一端側(底側)へいくにつれて徐々にその太さが細くなるように構成してもよい。この場合には、栓部46が一端側に移動するにつれて、筒状部41の内壁によりはまっていく形態となる。
【0049】
各実施形態では、添加手段は電解液内に配されたが、これに限定されない。例えば、内圧の変化により栓部46が押圧されることができれば、電解液中に配されることに限定されない。
【符号の説明】
【0050】
1 二次電池
3、3A カプセル
4、5 添加装置(添加手段)
5 添加手段
11 ケース
12 蓋部
13 電極体
14 電解液
15 正極端子
16 負極端子
17 正極集電部
18 負極集電部
41 筒状部
42 大径部
43 開口
44 貯留部
45 添加剤
46 栓部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池ケースと、前記電池ケース内部に収納された電極体と、初期添加剤を含み、前記電池ケース内に満たされた電解液とを備えた二次電池であって、
前記電極体に前記初期添加剤により形成された被膜の劣化状態に応じて劣化状態を回復するための回復用添加剤を電解液に添加する添加手段を設けることを特徴とする二次電池。
【請求項2】
前記添加手段は、前記二次電池の劣化による前記電池ケース内の内圧が上昇して所定値以上となった場合に、前記添加剤を前記電解液に添加することを特徴とする請求項1記載の二次電池。
【請求項3】
前記所定値は、前記電極体の充放電時の膨張収縮による内圧変化よりも大きいことを特徴とする請求項2記載の二次電池。
【請求項4】
前記添加手段は、前記添加剤を前記電解液から隔離する隔離手段を有し、該隔離手段が前記内圧に応じて変形することで前記添加剤を前記電解液へ放出することを特徴とする請求項2又は3記載の二次電池。
【請求項5】
前記添加手段は、前記添加剤を内包した前記隔離手段としてのカプセルであり、前記内圧が所定値以上となると該カプセルの壁面が破れて前記添加剤を前記電解液に添加するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の二次電池。
【請求項6】
前記添加手段は、その一端側が封止され、他端側が開放された筒状部材、及び該筒状部材の中空部に嵌合し、該中空部を前記内圧の上昇により前記一端側に移動する移動部からなる前記隔離手段と、前記筒状部材の前記移動部の初期設置位置よりも一端側に設けられた開口に連通し、前記添加剤が貯留された貯留部とを備え、前記内圧の上昇により前記移動部が移動して、前記添加剤を前記電解液に添加するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の二次電池。
【請求項7】
前記添加手段は、前記筒状部材の前記一端側に空気溜まり部が形成されていることを特徴とする請求項6記載の二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−105544(P2013−105544A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246871(P2011−246871)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【Fターム(参考)】