説明

二次電池

【課題】高容量の電極材料を用いる際の充放電時の電圧差を低減し、効率よく高容量を得られる二次電池を提供する。
【解決手段】第1の電極と、非水電解質と、第2の電極とを有する二次電池において、少なくとも前記第1の電極が、少なくとも第1の活物質と、該第1の活物質よりも大きな起電力を有する第2の活物質とを含み、前記二次電池の充電時には、前記第1の活物質と前記第2の電極を電気的に接続して充電した後、引き続き前記第2の活物質と前記第2の電極を電気的に接続して充電し、放電時には、前記第2の活物質と前記第2の電極を電気的に接続して放電した後、引き続き前記第1の活物質と前記第2の電極を電気的に接続して放電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質を用いた高容量の二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルモバイル機器の発展に伴い、充電後に長時間の放電が可能な高容量の二次電池が求められており、電極に用いる活物質材料自体の高容量化や、活物質の単位体積当たりの充填率向上などが試みられている。
【0003】
近年、高容量の材料系として、正極用の活物質としてはLiNiO、Li(Ni,Co,Al)O、Li(Co,Ni,Mn)Oなどの新たな材料系(例えば、特許文献1を参照)が、また、負極用の活物質としてはSiおよびSnの合金系の材料(例えば、特許文献2を参照)が開発され、実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3550783号公報
【特許文献2】特許第4207958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの材料系は、充放電に伴う起電力の変化が大きく、二次電池として高容量化するためには、従来よりも充放電電圧の範囲を拡大する必要があった。一般に、正極では充電の進行に伴い起電力が上昇し、放電の進行に伴い起電力が低下するのに対し、負極では充電の進行に伴い起電力が低下し、放電の進行に伴い起電力が上昇するため、正極と負極の起電力の差である電池の起電力は、充電時には大きく上昇し、放電時には大きく低下する。したがって、二次電池の正極として起電力の大きい高容量系の材料を用いて電池容量を向上させようとしても、使用用途により異なるが通常なら充電終止電圧が4.2V、放電終止電圧が3.0Vでその電圧差は1.2Vのところ、たとえば充電終止電圧を4.3V、放電終止電圧2.0Vとその電圧差を2.3Vに広げるなどする必要が生じ、充電時の電圧と放電時の電圧差が大きくなり、二次電池を使用する機器の特性が不安定になるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、充放電時の電圧差を低減し、効率よく高容量を得られる二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の二次電池は、第1の電極と、非水電解質と、第2の電極とを有する二次電池において、少なくとも前記第1の電極が、少なくとも第1の活物質と、該第1の活物質よりも大きな起電力を有する第2の活物質とを含み、前記二次電池の充電時には、前記第1の活物質と前記第2の電極を電気的に接続して充電した後、引き続き前記第2の活物質と前記第2の電極を電気的に接続して充電し、放電時には、前記第2の活物質と前記第2の電極を電気的に接続して放電した後、引き続き前記第1の活物質と前記第2の電極を電気的に接続して放電することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、充放電時の電圧差を低減し、効率よく高容量を得られる二次電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態である二次電池の断面の模式図である。
【図2】充放電挙動の評価用セルの断面の模式図である。
【図3】実施例1の充放電挙動を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態について、図1を基に説明する。本実施形態の二次電池は、負極である第1の電極1と正極である第2の電極2との間にセパレータ3を有する発電要素4を、非水電解質(図示せず)を充填した電池ケース5に収納したものである。第1の電極1および第2の電極2は、構成要素として充放電に伴い起電力を生じる活物質と、活物質から電気を引き出す集電体とを有しており、必要に応じて導電剤や結着剤を含んでいてもよい。
【0011】
第1の電極1は、第1の活物質を含む第1活物質層1aと、第2の電極2との電位差が第1の活物質よりも小さい第2の活物質を含む第2活物質層1bとが、介在層1cを介して積層され、第2の活物質層1bがセパレータ3と接するように配置されている。配線6a、6bおよび6cは、それぞれ第1活物質層1a、第2活物質層1bおよび第2の電極2に接続するように設けられている。
【0012】
集電体は、第2の電極2においては、セパレータ3と接する表面とは異なる表面に設ければよい。また、第1の電極1においては、第1活物質層1aおよび第2活物質層1bの介在層1cと接していない表面にそれぞれ互いに接触しないように設ければよい。なお、集電体の形態を網目状や有孔膜状にすることが、第1の電極1および第2の電極2を構成する各活物質と、非水電解質との接触を確保する上で好ましい。また、導電剤と活物質とを混合して電極を形成することで、電極自体に集電機能を持たせてもよい。
【0013】
なお、第1活物質層1a、第2活物質層1bおよび第2の電極2は、それぞれ2種類以上の活物質を混合したものであってもよい。
【0014】
そして、本実施形態の二次電池は、第1の電極1を負極、第2の電極2を正極とした場合、充電時には、まず、配線6aおよび6cを接続して第1活物質層1aを充電した後、引き続き配線6bおよび6cを接続して、より正極との電位差が小さい、すなわちより高い起電力を有する第2活物質層1bを充電し、また、放電時には、配線6bおよび6cを接続してより高い起電力をもつ第2活物質層1bを放電した後、引き続き配線6aおよび6cを接続して第1活物質層1aを放電する。
【0015】
このような構成とすることで、充電時には、正極の起電力が上昇するのに応じて、負極をより起電力の大きい第2の活物質に切替え、また、放電時には、正極の起電力が低下するのに応じて負極をより起電力の小さい第1の活物質に切替えることができ、より効率的に電気を充放電することが可能になる。
【0016】
また、第1の電極1を正極、第2の電極2を負極とした場合には、負極の起電力が低下するのに応じて正極をより起電力の小さい第2の活物質に切替え、また、放電時には、負極の起電力が上昇するのに応じて正極をより起電力の大きい第1の活物質に切替えることができ、同様により効率的に電気を充放電することができる。具体的には、充電時には、まず、配線6aと6cを接続して第1活物質層1aを充電した後、引き続き配線6bと6cを接続して、より負極との電位差が小さい、すなわちより低い起電力を有する第2活物質層1bを充電し、また、放電時には、配線6bと6cを接続してより低い起電力をもつ第2活物質層1bを放電した後、引き続き配線6aと6cを接続して第1活物質層1aを
放電する。
【0017】
配線6a、6bと配線6cの接続切替操作は、たとえば外部電源と回路制御システムを用いて行うことができる。たとえば、充放電による電極電流または電圧の変化を計測したり、充放電に伴う第1活物質層1aと第2活物質層1bの少なくともいずれか一方の体積変化を変位センサや圧力センサなどで検知するなどし、これらの計測値に応じて、配線6a、6bと配線6cとの接続を、充放電の電圧差が低減するように制御すればよい。この場合、電解質として固体電解質を用いてもよい。
【0018】
また、第1および第2の活物質として充放電により体積変化する材料を用い、介在層1cとして異方性導電材料を用いることにより、第1活物質層1aおよび第2活物質層1bと第2の電極2との接続切替操作をより容易に行うことができる。たとえば、第1活物質層1aおよび第2の活物質層1bを、充電により体積膨張する材料を含むものとし、介在層1cとして異方導電性のペーストまたは接着剤を用いて、発電要素の構成を、第1活物質層1a、介在層1c、第2活物質層1b、セパレータ、第2の電極2の順で重ね合わせたものとした場合、配線6aと6bを同時に6cを接続することで、まず第2の電極2との電位差がより大きい第1活物質層1aが充電される。第1活物質層1aは充電の進行に伴い膨張して介在層1cを圧縮し、第1活物質層1aと第2活物質層1b間の電気抵抗が低下して、第1活物質層1aと介在層1cを介して第2活物質層1bが第2の電極2と電気的に接続されることにより、第2活物質層1bへの充電が始まる。そして第2活物質層1bの充電の進行に伴い第2活物質層1bが膨張すると、第2活物質層1bと電池ケース5の間に存在する空間が遮蔽され、第1活物質層1aと第2の電極2の間での電解液の流通と伝導イオンの授受が遮蔽され、第1活物質層1aへの充電は停止する。放電の際は、第2活物質層1bが放電の進行に伴い収縮し、第2活物質層1bと電池ケース5との間に空間が生じて、第1活物質層1aと第2の電極2との間で電解液の流通と伝導イオンの授受が可能となり、第1活物質層1aの放電が始まる。さらに第1活物質層1aが放電して収縮すると、第1活物質層1aと第2活物質層1b間の電気抵抗が上昇し、第2活物質層1bと第2の電極2の電気的接続が遮断されて初期の状態に戻る。
【0019】
この場合、充電終了および放電開始時においても、第2活物質層1b内部のイオン伝導性により、第2の電極2と、第1活物質層1aおよび第2活物質層1bとが同時に電気的に接続される状態が出現し、第1活物質層1aへも若干の充放電が行われるが、第2活物質層1bの膨張時のイオン伝導性を抑制することで、第1活物質層1aへの充放電が抑制されて第2活物質層1bへの充放電が優位になる、すなわち第1の電極1の電位は主として第2活物質層1bの寄与によるものとなる。
【0020】
このように第2活物質層1bの膨張時のイオン伝導性を抑制するためには、第2活物質層1bの膨張時に第2活物質層1b内で圧縮されるバインダ量を調整するなどすればよい。
【0021】
なお、第1および第2の活物質のいずれか一方を充電により体積膨張する活物質とし、活物質の体積膨張と外部の回路制御システムとを併用して、第1活物質層1aおよび第2活物質層1bと第2の電極2との電気的接続の切替操作を行うこともできる。
【0022】
正極活物質としては、リチウム含有遷移金属酸化物が好適に用いられ、具体的にはリチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、リン酸系リチウム鉄複合酸化物、リチウムチタン複合酸化物などが挙げられる。正極を第1の電極1とする場合は、たとえば第1および第2の活物質の組合せとして、LiCoOおよびLiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiCoOおよびLiFePO、LiCo1/2Ni1/2および
LiCo1/3Ni1/3Mn1/3等の組合せを選択すればよい。また、充電時のLiイオン脱離により体積膨張するものとしては、たとえば、LiCoO、LiCo1/2Ni1/22、LiNiO等が知られており、活物質の体積変化を利用して第1活物質層1aおよび第2活物質層1bと第2の電極2との電気的接続の切替操作を行う上で好ましい。
【0023】
負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な材料が好適に用いられ、具体的には、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボンなどの炭素系材料や、スズ(Sn)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、アンチモン(Sb)、亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)などの金属やこれらの合金、またはSnOやSiOなどの酸化物が挙げられる。負極を第1の電極1とする場合は、たとえば第1および第2の活物質の組合せとして、カーボンおよびSi、SiおよびSn等の組合せを選択すればよい。SiおよびSnは、いずれも高容量で、充電時の伝導イオンの吸蔵による体積膨張が大きいことが知られており、活物質の体積変化を利用して第1活物質層1aおよび第2活物質層1bと第2の電極2との電気的接続の切替操作を行う場合、これらの材料を組合せて用いることが好ましい。
【0024】
第1の電極1および第2の電極2は、集電体となるたとえば金属箔等の表面に、活物質を含むスラリーを塗工・乾燥したり、ゾルゲル法や化学気相成長法などで成膜するなどして、集電体の表面上に活物質層を形成する方法や、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の基材フィルム上に活物質を含むシートを形成して必要に応じて熱処理や焼成を行った後、無孔、有孔の金属箔や網目状金属と接合したり、スパッタや蒸着で導電性膜を形成するなどして作製することができる。
【0025】
活物質を含むスラリーを集電体の表面上に塗工する場合は、活物質の原料粉末に必要に応じて導電剤や結着剤を添加して溶媒に混合・分散して活物質を含むスラリーを作製し、そのスラリーを集電体となる金属箔等の表面にドクターブレード等の周知の方法により塗工した後、乾燥して溶剤を揮発させ、必要に応じプレスで圧縮するなどの方法を用いればよい。導電剤としては、カーボンブラックなどの炭素材料や、金属粉末等が挙げられ、結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)や、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが挙げられる。
【0026】
集電体の表面上への成膜により活物質層を形成する場合の手法としては、ゾルゲル法、化学気相成長法の他、活物質の原料粉末のエアロゾルを集電体となる金属箔等の表面に吹きつける衝撃固化法などが挙げられる。また、活物質として金属を用いる場合はめっき法により形成してもよい。
【0027】
活物質を含むシートを作製する場合には、たとえば活物質を含むスラリーに、集電体の表面上に塗工する場合よりも多くの結着剤と、必要に応じ導電剤を混合し、そのスラリーをポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどの基材上にドクターブレード等の周知の方法で塗工した後、乾燥して溶剤を揮発させ、必要に応じプレス圧縮するなどの方法が用いられる。また、得られた活物質を含むシートに、さらに加熱や焼成処理を施してもよい。なお、導電剤を含むシート状に電極を成形することにより、活物質自体は導電性を有さない場合でも、シート自体に導電性が付与され集電機能を兼ね備えた電極とすることができるため、電極表面に別途集電体を設けなくても、電極の一部を配線や回路に接続することにより十分な電池特性を得ることが可能である。同様に、活物質として導電性の材料を用いる場合も電極の一部を配線や回路に接続すればよい。
【0028】
第1の電極は、上述のように作製した第1活物質層1aと第2活物質層1bを、介在層1cを介して積層することで形成される。なお、第1活物質層1aと第2活物質層1bの集電体と接していない側同士が介在層1cを介して対向するように配置することが、それ
ぞれの集電体同士の接触を防止する上で好ましい。介在層1cの材料としては、外部圧力により電子伝導性が変化し、かつ、リチウムイオン伝導性が低いものを用いる。このような材料としては、絶縁性の樹脂等に導電性粒子を均一分散させた異方導電性を有するペーストやフィルムを用いることが好ましい。異方導電性を有するペーストやフィルムは、圧力の印加により絶縁性の樹脂が圧縮されて、樹脂中に分散している導電性粒子同士が接触・導通し、圧力印加方向に導電性が生じるものである。また、導電性を有する粒子又はフィラーを、弾性を有するポリマーの粒子と混合したものや、多孔質材料あるいは電解液を含むゲル状物質に分散させたものを介在層1cとして用いてもよい。
【0029】
なお、リチウムイオン伝導性が高い材料を用いると、第1活物質層1aと第2活物質層1bとの間でリチウムイオン伝導が発生し、第1活物質層1aおよび第2活物質層1bと第2の電極2との接続切替操作の制御が困難となる可能性がある。
【0030】
このような材料を第1活物質層1aと第2活物質層1bとの間に介在させることで、第1活物質層1aおよび第2活物質層1bと第2の電極2との電気的接続の切替操作を、第1活物質層1aと第2活物質層1bの体積変化により制御することが可能になり、第1活物質層1aと第2活物質層1bとの間でのリチウムイオン伝導を抑制することも可能となる。
【0031】
集電体としては、導電性を有する金属箔が好適に用いられ、その材料としては、正極側ではアルミニウム(Al)、白金(Pt)、金(Au)等を用いることが好ましく、負極側では、銅(Cu)、白金(Pt)、金(Au)等を用いることが好ましい。
【0032】
第1の電極1においては、第1活物質層1aのみに集電体が設けられていてもよいが、第1活物質層1aおよび第2活物質層1bにそれぞれ集電体が設けられていることが、それぞれの活物質層と第2の電極2との電気的接続を独立して制御できることから好ましい。
【0033】
非水電解質としては、リチウムイオン伝導性を有する固体電解質、有機電解液、イオン液体等を用いればよい。固体電解質を用いる場合は、セパレータ3に替えて固体電解質を配置する。なお、外部の回路制御システムによらず、第1活物質層1aおよび第2活物質層1bの体積変化を利用して第1活物質層1aおよび第2活物質層1bと第2の電極2との電気的接続の切替操作を行う場合には、第1の電極1と第2の電極2との間にセパレータ3を配し、有機電解液またはイオン液体を用いることが好ましい。有機電解液やイオン液体は、イオン伝導性が高く、第1の電極1および第2の電極2に存在する細孔内に浸透して、高い電池性能を実現できる。
【0034】
有機電解液は、有機溶媒と電解質塩によって構成され、必要に応じて、電極表面への固体電解質層の形成抑制、過充電防止、難燃性の付与等を目的とした添加剤を加えてもよい。
【0035】
有機溶媒としては、高誘電率を有し、低粘性、低蒸気圧のものが好適に用いられ、このような材料としては、たとえば、エチレンカーボネイト、プロピレンカーボネイト、ブチレンカーボネイト、γ−ブチロラクトン、スルホラン、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、メチルエチルカーボネイト、ジメチルカーボネイト、ジエチルカーボネイトなどから選ばれる1種もしくは2種以上を混合した溶媒が挙げられる。
【0036】
電解質塩としては、例えばLiClO、LiBF、LiPF、LiCFSO
、LiN(CFSO)、LiN(CSO)などのリチウム塩があげられる。
【0037】
セパレータには、有機樹脂繊維の不織布や、無機繊維の不織布、セラミックの多孔質材料などを用いることができるが、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンを主成分とした有機多孔質膜にセラミック粒子を混合したものや、セラミックフィラーを含む多孔質膜を接着したもの、無機繊維の不織布、有機材料と無機材料の複合多孔質膜、セラミックの多孔質材料を用いることが好ましい。これらは耐熱性が高く、特に、第1および第2の電極の活物質としていずれも高容量の材料を用いて二次電池を形成する場合に、二次電池の熱暴走に対する安全性をより高めることができる。
【0038】
電池ケースの材料としては、金属、樹脂、セラミック、もしくはそれらを複合した材料等が用いられるが、特に第1活物質層1aおよび第2活物質層1bの体積変化を利用して第1活物質層1aおよび第2活物質層1bと第2の電極2との電気的接続の切替操作を制御する場合には、セラミックやガラス等の絶縁性を有する変形の少ない材料を用いることにより、第1活物質層1aおよび第2活物質層1bの体積が膨張して電池ケースと接触しても、発電要素4がショートすることなく、第1活物質層1aおよび第2活物質層1bと第2の電極2との電気的接続の切替操作を再現性良く行うことができ、充放電挙動が安定した二次電池となる。
【0039】
なお、本発明の電池の形状は、角型、円筒型、ボタン型、コイン型、扁平型等のいずれでもよく、特に限定するものではない。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明する。
【0041】
まず、正極用活物質として、LiCoOおよびLiCo1/3Ni1/3Mn1/3
、負極用活物質として黒鉛、Si、Snを用い、集電体付きの活物質含有シートを作製した。
【0042】
LiCoOおよびLiCo1/3Ni1/3Mn1/3は、LiCO粉末、Co
O粉末、NiO粉末、MnO粉末を用いて、それぞれの組成比となるよう調合し、アルコールを溶媒としてボールミルにて混合し、大気中、LiCoOは600℃、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3は900℃でそれぞれ熱処理することにより、平均粒径5μ
mの原料粉末を得た。得られた原料粉末は、X線回折(XRD)測定によりそれぞれLiCoOおよびLiCo1/3Ni1/3Mn1/3の結晶相が形成されていることを
確認した。
【0043】
得られたLiCoO原料粉末、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3原料粉末、お
よび平均粒径1μmのSi原料粉末、平均粒径1μmのSn原料粉末を用い、それぞれ原料粉末90質量%に、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を5質量%、導電剤としてカーボンブラックを5質量%、さらにN−メチルピロリドン(NMP)溶媒を加えて混練し、銅箔に厚さ塗工、乾燥したのち、プレスを行い、集電体付きの活物質含有シート(厚さ20μmおよび40μm)を作製し、直径15mmの電極サイズに切断した。
【0044】
黒鉛の場合は、原料粉末として、平均粒径10μmの黒鉛粉末95質量%に、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を5質量%、さらにN−メチルピロリドン(NMP)溶媒を加えて混練し、銅箔に塗工、乾燥したのち、プレスを行い、集電体付きの黒鉛含有シート(厚さ40μmおよび80μm)を作製し、同様に直径15mmの電極サイズに切断した。
【0045】
作製したこれらの電極材料を用いて、第1活物質層1a、第2活物質層1b、第2の電極2として表1のような組合せの発電要素4を構成し、電池容量と充放電特性の評価を行った。なお、第1活物質層1aと第2活物質層1bの間に位置する介在層1cとしては、表1に示すものを用いた。
【0046】
評価用セルは、図2に示すように、内径15mm、長さ10mmのガラス管7の一方の開口部を白金箔8に接着したものを用いた。評価用セルのガラス管7の内部に、白金箔8、第1活物質層1a、介在層1c、第2活物質層1b、セパレータ3および第2の電極2をこの順になるように配置し、電解液を注入して発電要素を構成した後、さらに第2の電極2上にSUS製の重石9を載せて、発電要素4全体を白金箔8に押し付ける形とした。このとき、第1活物質層1aは集電体である銅箔が白金箔8に面するように、第2活物質層1bは銅箔が介在層1cに面するように配置し、第2の電極2は銅箔が重石9と接するように配置した。なお、評価用セル全体はアルゴン置換した容器内に設置して充放電挙動の評価を行った。
【0047】
第1活物質層1aおよび第2活物質層1bには、厚さ40μmの活物質含有シートを用い、第2の電極2には、厚さ80μmの活物質含有シートを用いた。なお、試料No.5〜7については第1の電極として、厚さ80μmの活物質含有シート1種類のみを用いた。また、電極材料単独の容量は、評価用セルのガラス管7の内部に白金箔8、金属リチウム箔、セパレータ、活物質含有シートの順になるように配置して評価した。
【0048】
表1に記載したいずれの組合せについても、セパレータ3には、ガラス繊維の不織布を用い、電解液には、エチレンカーボネイトとジメチルカーボネイトとを3:7の体積比で混合した有機溶媒に1mol/LのLiPFを溶解したものを用いた。
【0049】
第1活物質層1aには白金箔8を介して配線6aを接続し、第2活物質層1bには介在層1cに接する集電体に配線6bを接続し、第2の電極2にはSUS製の重石9を介して配線6cを接続した。配線6a、6bおよび6cは、配線6aと6bの接続を切替可能な手動スイッチを有する外部電源に接続した。
【0050】
電池特性の評価は、第2の電極2の容量を基準として、0.1Cのレートで充放電試験を行った。第1の電極1と第2の電極2とを組合せた発電要素4について、第1活物質層1a、第2活物質層1bおよび第2の電極2に用いた電極材料単独での容量と、発電要素4の測定条件である充電終止電圧、放電終止電圧、および電池容量を表1に示す。なお、試料No.2については、充放電試験中の電池電圧を計測し、その値をもとに手動スイッチを用いて第2の電極2と、第1活物質層1aおよび第2活物質層1bとの電気的接続の切替操作を行った。
【0051】
【表1】

【0052】
図3は、試料No.1における充放電曲線を示す。充電時には、より電位の低い第1活物質層1aの充電が進み、第1活物質層1aの電位がさらに低下したところで、より電位の高い第2活物質層1bの充電が始まり、放電時には、より電位の高い第2活物質層1bの電位がさらに上昇したところで、より電位の低い第1活物質層1aの放電が始まることにより、電池全体としては充放電の電圧差が小さいものとなっている。
【0053】
このように、試料No.1〜4では、充放電の電圧差が小さいままでも高容量を得ることができた。一方、第1の電極1として1種類の活物質のみを用いた試料No.5〜7では、充放電の電圧差が小さい場合は容量が小さく、充放電の電圧差を拡大することで高容量が得られるものであった。
【符号の説明】
【0054】
1・・・・第1の電極
1a・・・第1活物質層
1b・・・第2活物質層
1c・・・介在層
2・・・・第2の電極
3・・・・セパレータ
4・・・・発電要素
5・・・・電池ケース
6a・・・第1活物質層に接続する配線
6b・・・第2活物質層に接続する配線
6c・・・第2の電極に接続する配線
7・・・・ガラス管
8・・・・白金箔
9・・・・SUS製重石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、非水電解質と、第2の電極とを有する二次電池において、少なくとも前記第1の電極が、少なくとも第1の活物質と、第2の電極との電位差が前記第1の活物質よりも小さい第2の活物質とを含み、
前記二次電池の充電時には、前記第1の活物質と前記第2の電極を電気的に接続して充電した後、引き続き前記第2の活物質と前記第2の電極を電気的に接続して充電し、
放電時には、前記第2の活物質と前記第2の電極を電気的に接続して放電した後、引き続き前記第1の活物質と前記第2の電極を電気的に接続して放電することを特徴とする二次電池。
【請求項2】
前記第1の活物質および前記第2の活物質のうち少なくともいずれか一方が、充電により体積膨張することを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記第1の電極が、前記第1の活物質を含む第1活物質層と、前記第2の活物質を含む第2活物質層とを有することを特徴とする請求項1または2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記第1活物質層と前記第2活物質層とが、異方性導電材料を介して積層されていることを特徴とする請求項3に記載の二次電池。
【請求項5】
前記第1活物質層、前記第2活物質層、セパレータ、前記第2の電極がこの順で積層されていることを特徴とする請求項3または4に記載の二次電池。
【請求項6】
前記第1の電極が負極であり、前記第2の活物質として、SiおよびSnのいずれかを含む金属または合金を用いることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−114858(P2013−114858A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259098(P2011−259098)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】