説明

二段階ピペット

本発明は、二段階の電気ピペットに関し、ピストンを基本の位置からより下の下方の位置まで移動可能にして、基本の位置とより下の下方の位置の間の距離を変更可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モーターを用いて操作されるピストンを含む、液体投与用のピペットに関する。本発明は、特に、このピストンを移動させる操作に関する。
【背景技術】
【0002】
実験室等で液体を投与するためにピペットが用いられているが、このピペットは、シリンダー内にピストンを備えて、電気モーターを用いてピストンを移動可能にしており、このピストンによって、選択されたピペット機能に従って液体を吸引して、シリンダーと接続された先端の中に入れたり、外に出している。液体の容量は、通常、調整可能となっている。また、ピペットには、制御システムとこのユーザーインターフェースを備えて、例えば、容量の設定や他の必要な調整を行ったり、操作を実行するための指示を与えるようにしている。この目的のため、ユーザーインターフェースには必要なプッシュボタンが備えられている。また、ユーザーインターフェースにはディスプレイ(画像表示装置)が備えられており、これによって、例えば、容量や他の必要なデータを表示できるようにしている。また、ディスプレイはメニューを表示することができ、これによって、プッシュボタンを用いて、機能を選択したり、設定できるようにしている。
【0003】
用いられているピペットの機能には、例えば、ダイレクト、リバース及びステップのピペット操作(ピペティング)がある。ダイレクトピペット操作では、所望の容量をピペット内に吸引してから、この容量を吐出している。リバースピペット操作では、必要以上の容量をピペット内に吸引してから、必要とされる容量を吐出している。ステップピペット操作では、ピペット内に容量を吸引してから、複数の小部分に分けてこの容量を吐出(分注)している。
【0004】
ピストンには基本の位置があり、ここから上方の位置に向って上方に移動できる。これら位置の間の距離が、投与可能な量を定めている。さらに、ピストンには下方の位置があり、この位置に向って、基本の位置から下方に移動できるが、この長さは、所謂第二移動とされている。ダイレクトピペット操作では、ピストンは、液体を吸引する時に、基本の位置から上方の位置まで移動し、液体を吐出す時に、上方の位置から下方の位置まで移動している。従って、第二移動が、出来る限り完全に液体を吐出すことを確保している。リバースピペット操作では、ピストンは、液体を吸引する時に、下方の位置から上方の位置まで移動し、液体を吐出す時に、上方の位置から基本の位置まで移動している。ステップピペット操作では、ピストンは、液体を吸引する時に、下方の位置から上方の位置まで移動し、液体を吐出す時に、上方の位置からステップ状に基本の位置まで移動している。ステップピペット操作では、特に、第二移動によって、吸引される過度の容量が、吐出される最後の投与も十分となることを確保している。リバースピペット操作とステップピペット操作では、第二移動に相当する容量は、通常、ピペット後に処分されている。従来公知の電気ピペットでは、この第二移動の長さは一定であった。
【0005】
米国特許第3 343 539号公報を参照すると、手動操作されるピペットに相当する投与装置について開示しているが、これは、第二移動の長さを調整可能にしている。
フィンランド国特許第44 070号公報を参照すると、同様に第二移動の長さを調整可能にした、手動操作されるピペットについて開示しているが、特に、第一の移動と同じ距離にして、第一の移動と合わせて、同期させている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上に鑑み、本発明は、第二移動の長さを調整可能にする。これによって、ユーザーが、ピペット操作ごとに出来る限り最適となるように、第二移動の長さを変更できるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、添付した請求の範囲の請求項1に記載の電気駆動ピペットを発明した。
【0008】
本発明に従うピペットでは、ピストンは、モーターによって移動される。ピストンには基本の位置があり、この位置から上方の位置まで上方に移動できる。これら位置の間の距離が、投与可能な量を定める。さらに、ピストンには、下方の位置があり、この位置に向って、ピストンは基本の位置から下方に移動できるが、この長さは、所謂第二移動の長さである。本発明では、この第二移動の長さを調整可能にする。このため、ユーザーは、ピペット操作ごとに、第二移動の長さを出来る限り最適なように変更できる。
【0009】
ダイレクトピペット操作では、第二移動によって、出来る限り完全に吐出することを確保している。第二移動の長さは、本発明に従って、該当するピペット操作に基づいて、適切なように設定できる。これは、例えば、液体内に投与する時や、この投与を行う時に液体内にエアーが混入することが望ましくない時に利点がある。従って、調整によって、吐出しを最適化できるので、先端をほとんど丁度空にして、先端から液体内にエアーが混入しないようにできる。
【0010】
リバースとステップのピペット操作では、第二移動によって、過度の投与分が吸引されている。この場合、第二移動によって、ピペット内に吸引される過度の液体は、通常、ピペット操作後に処分されなくてはならないため、第二移動の調整が特に利点となる。本発明では、この過度の容量を出来る限り小さく設定できるので、各ピペット操作に必要とされる精度を十分にして、試験を節約し、無駄を減らすことができる。
【0011】
リバースとステップの操作では、さらなる吐出し移動を行うこともでき、この場合、ピストンを、液体を吸引する時よりも下方に駆動できる。これによって、先端の吐出しを出来る限り完全に行えるようにする。実際には、これは三段階ピペットとなり、この場合、ピストンは二つの下方位置、即ち、吸引用の下方位置と、これより下の、吐出し用の下方位置を有する。同様に、吐出し移動も調整できる。本発明では、さらに、吸引用の下方位置を一定にして、これより下の、吐出し用の位置を調整可能にした特別な構成も可能である。
【0012】
さらに、ピペットの制御システムに関連してユーザーインターフェースを設けるが、このインターフェースには、設定キー、操作スイッチ、及びディスプレイが含まれる。
ディスプレイは、例えば、容量や、可能な他の必要とされるデータを表示する。また、ディスプレイは、メニューを表示して、設定キーを用いて、制御システムにデータの入力を行えるようにするが、このデータは、例えば、所望なピペット操作の選択や、これに用いる設定に関する。
【0013】
さらに他の面では、例えば、2004年に市場に投入されたフィンピペット(登録商標)ノーバス(Finnpipette Novus)ピペット(製造者:サーモ エレクトロン オイ、フィンランド)や、フィンランド国特許第96007号(欧州特許第576967号に相当)の公報に開示されたものと同じ技術に基づいて、ピペット機構や制御システムを構成してもよい。
以下、本発明の幾つかの実施形態について例示する。
添付した図は、本発明についての明細書の記載に関し、後述する本発明の詳細な説明に関係して示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1を参照すると、電気モーターを用いて操作されるピペットが示されている。この制御システムのユーザーインターフェースには、操作スイッチ1、設定キーボード2及びディスプレイ3が含まれている。
【0015】
操作スイッチ1は、本体に対して回転自在のホイール4に設けられている。このため、ユーザーは、操作スイッチの位置を調整することができる。ピペットの本体上で、先端の着脱自在のスリーブ5のプッシュボタン6が、スイッチと反対側に設けられている。この先端は、手動の力によって取り外すことができる。これは、好ましくは、レバー機構によって解放されるが、特に、フィンランド国特許第92374号(欧州特許第566939号に相当)の公報に開示されたもののように、ピペットの本体に対してホイールを用いて、先端の着脱部(リムーバー)の移動を強制させてもよい。
【0016】
ピペットの上部にはディスプレイ3を設けるが、突出部の上面に設けられた先端の着脱スリーブのプッシュボタン6から離れるように、斜め上方の位置に置く。この突出部内には電源が置かれる。また、突出部の上面には設定キーボード2を設けて、この端部を本体の側部に置くようにする。ディスプレイは、利用される設定について必要な情報を、その都度、表示するが、例えば、ピペット容量や、利用される操作や、現在行われている操作段階について表示する。また、ディスプレイは、設定を変更できるように、各状況で異なるメニューを表示する。
【0017】
ピペットの設定は、設定キーボード2を用いて変更することができる。この設定キーボード2には、右手側の選択キー7、左手側の選択キー8及び二股状のスキャンキー(アローキー)9が含まれる。任意のキーを押すことで、状況を変えることができる。設定段階に基づいて、ユーザーは、選択キーによって、メニューの階層内で前後に移動したり、選択された操作を開始できる。設定段階に基づいて、ユーザーは、スキャンキーによって、ディスプレイ上でオプションに移動したり、ディスプレイ上で記号(例えば、数字や文字)を変更してもよい。ユーザーは、選択機能によって、メニュー内の所望の位置に移動して、選択キーによって実行を行うことができる。変更機能によって、選択された所望の記号の、記号列がスキャンされる。この記号は、機能(例えば、量や、ピストンのストローク速度)の設定に関して作用したり、情報を提供できる。
【0018】
図2を参照すると、ピペット機能について概略的に示している。制御システムの中心は中央処理装置(CPU)10であって、これにはメモリー11が接続されている。CPUは、操作キー、つまり、操作スイッチ1と設定キーボード2を用いて操作される。CPUには、位置センサ12によって、ピストンの位置の情報が伝えられる。CPUは、ピストンを作動するのに必要な指示を駆動部13に伝えて、これによってステップモーター14を制御する。ディスプレイ(液晶ディスプレイ:LCD)3上には、機能(操作)が表示される。幾つかの機能は、音響信号と関連しており、ブザー15によって示される。さらに、CPUは、CPUへのデータの入出力を可能にするシリアルインターフェース16と接続されている。また、チャージ可能な3.7Vのリチウムイオン二次電池(バッテリー)17が電圧源として用いられている。二次電池には、電圧制御部と充電用回路18が含まれる。この二次電池は、スタンド21内の充電器(チャージャー)20を用いて、ターミナル19を介して充電できる。この充電器も、CPUによって制御されている。
【0019】
図3を参照すると、ダイレクトピペット操作において、第二移動の量を変更する例について示している。即ち、同図では、選択キー7と8及びスキャンキー9を用いて、メインメニュー内のメニューから、(ダイレクトピペット操作用の)ピペット機能が選択されて、量(1000μl)が設定されている。ダイレクトピペット操作では、液体を吸引する時に、ピストンを基本の位置から、設定量によって定められた上方の位置まで移動させて、液体を吐出す時に、所謂第二移動の長さで、基本の位置より下の下方の位置まで移動させる。ピストンのストローク速度や第二移動の長さ(段階3と4)は、メニュー内で変更できる(図3の段階2参照)。同図では、ディスプレイには、第二移動に相当する量(BLOWOUT VOLUME)が直接的に示されており、図3の段階3と4では、200μlから300μlに変更されている。
【0020】
図4を参照すると、ステップピペット操作において、過度の量を変更する例について示している。即ち、同図では、第一の段階で、選択キー7と8及びスキャンキー9を用いて、(ステップ機能として)ステッパー機能が選択されており、50μlを20回に分けて分注することが設定されている。この場合、液体を吸引する時に、ピストンを下方のインテーク位置から基本の位置まで移動させ、さらに投与可能な量の総量によって定められた上方の位置まで移動させる。投与が完了すると、ピストンは基本の位置になる。ピペット内に残された過度の液体は、ピストンを下方の吐出し位置まで移動させることで吐出される。ピストンのストローク速度や吸引される過度の量(EXCESS VOLUME)や吐出し移動に相当する量(BLOWOUT VOLUME)(段階3と4)は、メインメニュー内のメニューを介して変更することができる。図3の段階3と4では、過度の量は、200μlから100μlに変更されている。
尚、リバースピペット操作においても、ステップ機能を行う場合と同様に、過度の量や吐出し量を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に関わるピペットについて例示した図である。
【図2】ピペットの機能をチャート状に例示した図である。
【図3】ダイレクトピペット操作で、第二移動に相当する吐出し量を変更する場合について例示した図である。
【図4】ステップ操作で、過度の量を変更する場合について例示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部から開口して、内部にピストンを収容して、該ピストンをモーターによって移動可能にしたシリンダーを備えて、前記ピストンを基本の位置から前記シリンダーの開口端部から離れるように上方の位置に移動可能にするとともに、前記シリンダーの開口端部に向って下方の位置に移動可能にして、前記基本の位置と前記上方の位置との間の距離によって、ピペットから吐出される投与量を定め、
さらに前記ピストンを移動可能にする制御システムを備えた二段階ピペットであって、
前記制御システムに、前記基本の位置と前記下方の位置との間の距離を変更可能にする調整機能を備えたことを特徴とするピペット。
【請求項2】
前記ピストンを前記下方の位置から前記上方の位置まで移動させることで、所望の投与量よりも大きな量を前記ピペット内に吸引して、前記ピストンを前記上方の位置から前記基本の位置まで移動させることで、所望の投与量を吐出すことを特徴とする請求項1に記載のピペット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−541032(P2008−541032A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−509462(P2008−509462)
【出願日】平成18年5月5日(2006.5.5)
【国際出願番号】PCT/FI2006/000146
【国際公開番号】WO2006/120284
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(501286093)サーモ フィッシャー サイエンティフィック オイ (13)
【Fターム(参考)】