説明

二流体ノズル、基板処理装置、液体の液滴の生成方法、および基板処理方法

【課題】基板に噴霧される液体の液滴の噴霧範囲を広くすることができる二流体ノズル、基板処理装置、液体の液滴の生成方法、および基板処理方法を提供する。
【解決手段】二流体ノズル40の本体部42の下方において、ガス吐出口46bから下方に吐出される旋回流の液滴生成用ガスと液体吐出口44bから下方に吐出される液体とが混合されて液体の液滴が生成されるようになっている。また、ガス吐出口46bから下方に吐出される液滴生成用ガスにおける旋回流の内側の圧力を調整する圧力調整部が本体部42に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の液滴の噴霧を行う二流体ノズル、この二流体ノズルを備えた基板処理装置、液体の液滴の生成方法、およびこの液体の液滴の生成方法を用いた基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程において、半導体ウエハ(以下、単にウエハともいう。)にパーティクルが付着したまま様々な処理を行うと、正常な処理を行うことができず、歩留まりが悪くなる。このため、ウエハの洗浄処理を行う必要がある。
【0003】
ウエハに対して洗浄処理を行うような基板洗浄装置としては、例えばウエハをスピンチャック上で回転させながらその表面に純水や薬液からなる洗浄液をノズル等から供給することによりウエハを洗浄し、その後必要に応じてウエハに対してリンス処理を行い、最後にウエハを高速回転させることにより乾燥させるようなものが知られている。
【0004】
ここで、ウエハに洗浄液を供給するノズルとして、二流体ノズルが用いられる場合がある。二流体ノズルとは、一般的にガスと液体とを混合させることにより微小な液滴を生成し、この微小な液滴を噴霧する方式のノズルのことをいう。二流体ノズルには、純水や薬液等の洗浄液、および窒素ガスやクリーンエア等の液滴生成用ガスが別々の経路から供給され、この二流体ノズルの内部や下方で液滴生成用ガスと洗浄液とが混合することにより洗浄液の液滴が生成され、この洗浄液の液滴がウエハの一部分に対して噴霧されるようになっている。また、二流体ノズルは、ウエハの表面に沿ってこの表面とわずかに距離を隔てて水平方向に移動するようになっている。ウエハが回転しているときに二流体ノズルがウエハの表面に沿って移動することにより当該二流体ノズルからウエハの表面にまんべんなく均一に洗浄液の液滴が噴霧され、ウエハの表面に洗浄液の液膜が生成されることになる。
【0005】
また、従来の二流体ノズルとして、特許文献1には、二流体ノズルの下端部に液体吐出口が設けられるとともにそのまわりに気体吐出口が環状に設けられ、気体吐出口から下方に吐出された気体が、液体吐出口から下方に吐出された処理液流を取り囲む渦巻き気流を形成するようなものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−288390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ウエハの洗浄処理等の様々な処理を行うにあたり、二流体ノズルとして、ウエハに噴霧される処理液の液滴の径をできるだけ小さくすることに加え、処理液の液滴の噴霧範囲をできるだけ広くすることが求められている。二流体ノズルからウエハに噴霧される処理液の液滴の噴霧範囲を広くすることができると、ウエハに対してより均一に処理液の液滴を噴霧することができるようになり、また、ウエハの洗浄処理にかかる時間を短縮することができるようになる。
【0008】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、基板に噴霧される液体の液滴の噴霧範囲を広くすることができる二流体ノズル、この二流体ノズルを備えた基板処理装置、液体の液滴の生成方法、およびこの液体の液滴の生成方法を用いた基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、外部から液体および液滴生成用ガスがそれぞれ供給され、液滴生成用ガスの旋回流が内部で生成される本体部と、前記本体部の下端部に設けられ、旋回流の液滴生成用ガスが下方に吐出されるガス吐出口と、前記本体部の下端部において前記ガス吐出口よりも内側に設けられ、液体が下方に吐出される液体吐出口と、を備え、前記本体部の下方において、前記ガス吐出口から下方に吐出される旋回流の液滴生成用ガスと前記液体吐出口から下方に吐出される液体とが混合されて液体の液滴が生成されるようになっており、前記ガス吐出口から下方に吐出される液滴生成用ガスにおける旋回流の内側の圧力を調整する圧力調整部が前記本体部に設けられていることを特徴とする二流体ノズルである。
【0010】
本発明の二流体ノズルにおいては、前記圧力調整部は、前記本体部の下端部において前記液体吐出口よりも内側に設けられた前記本体部の中空部分であってもよい。
【0011】
あるいは、前記圧力調整部は、前記本体部の下端部において前記液体吐出口よりも内側に設けられた開口を介して追加のガスを下方に吐出するガス供給部であってもよい。
【0012】
あるいは、前記圧力調整部は、前記本体部の下端部において前記液体吐出口よりも内側に設けられた開口を介してガスを吸引するガス吸引部であってもよい。
【0013】
本発明の二流体ノズルにおいては、前記液体吐出口は、環状に並ぶよう配置された複数の穴からなっていてもよい。
【0014】
本発明は、上述のような二流体ノズルを備え、当該二流体ノズルから噴霧される液体の液滴により基板の処理を行うことを特徴とする基板処理装置である。
【0015】
本発明は、二流体ノズルにおいて液体の液滴を生成する方法であって、二流体ノズルに液体および液滴生成用ガスをそれぞれ外部から供給する工程と、前記二流体ノズルの本体部の内部で液滴生成用ガスの旋回流を生成する工程と、前記本体部の下端部に設けられたガス吐出口により旋回流の液滴生成用ガスを下方に吐出するとともに、前記本体部の下端部に設けられた液体吐出口により液体を下方に吐出し、前記本体部の下方において旋回流の液滴生成用ガスと液体とを混合して液体の液滴を生成する工程と、前記ガス吐出口から下方に吐出される液滴生成用ガスにおける旋回流の内側の圧力を調整する工程と、を備えたことを特徴とする液体の液滴の生成方法である。
【0016】
本発明の液体の液滴の生成方法においては、前記本体部の下端部における前記液体吐出口よりも内側の位置において前記本体部に中空部分が設けられていることにより、前記ガス吐出口から下方に吐出される液滴生成用ガスにおける旋回流の内側の圧力を調整するようになっていてもよい。
【0017】
あるいは、前記ガス吐出口から下方に吐出される液滴生成用ガスにおける旋回流の内側の圧力を調整する際に、前記本体部の下端部において前記液体吐出口よりも内側に設けられた開口を介して追加のガスを下方に吐出するようになっていてもよい。
【0018】
あるいは、前記ガス吐出口から下方に吐出される液滴生成用ガスにおける旋回流の内側の圧力を調整する際に、前記本体部の下端部において前記液体吐出口よりも内側に設けられた開口を介してガスを吸引するようになっていてもよい。
【0019】
本発明は、基板の処理を行う基板処理方法であって、上述のような液体の液滴の生成方法により、二流体ノズルにおいて液体の液滴を生成する工程と、前記二流体ノズルにおいて生成された液体の液滴を基板に噴霧する工程と、を備えたことを特徴とする基板処理方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の二流体ノズル、基板処理装置、液体の液滴の生成方法、および基板処理方法によれば、基板に噴霧される液体の液滴の噴霧範囲を広くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一の実施の形態における基板洗浄装置の構成を示す概略構成図である。
【図2】図1に示す基板洗浄装置における二流体ノズルの構成の詳細を示す縦断面図である。
【図3】図2に示す二流体ノズルのA−A矢視による横断面図である。
【図4】図2に示す二流体ノズルのB−B矢視による横断面図である。
【図5】図2に示す二流体ノズルにおける旋回流生成部を上方から見たときの上面図である。
【図6】図2等に示す二流体ノズルの本体部の下端部から下方に吐出される窒素ガスの旋回流を上方から見たときの図である。
【図7】図2等に示す二流体ノズルの本体部の下端部から下方に吐出される窒素ガスの旋回流を概略的に示す斜視図である。
【図8】図2等に示す二流体ノズルの本体部の下端部から下方に吐出される窒素ガスおよび洗浄液の流れを模式的に示す図である。
【図9】図1に示す基板洗浄装置における二流体ノズルの他の構成の詳細を示す縦断面図である。
【図10】図9に示す二流体ノズルのC−C矢視による横断面図である。
【図11】図1に示す基板洗浄装置における二流体ノズルの更に他の構成の詳細を示す縦断面図である。
【図12】図1に示す基板洗浄装置における二流体ノズルの更に他の構成の詳細を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の一の実施の形態について説明する。図1乃至図5は、本発明による二流体ノズルおよびこの二流体ノズルを備えた基板洗浄装置の一の実施の形態を示す図である。
このうち、図1は、本実施の形態における基板洗浄装置の構成を示す概略構成図であり、図2乃至5は、図1に示す基板洗浄装置における二流体ノズルの構成の詳細を示す図である。
【0023】
まず、基板洗浄装置1の全体的な構成について図1を用いて説明する。この基板洗浄装置1は、被処理基板としての半導体ウエハ(以下、単にウエハともいう)Wを洗浄するためのものである。
【0024】
基板洗浄装置1は、チャンバー10と、このチャンバー10内に設置された、ウエハWを保持するためのスピンチャック12と、を備えている。また、チャンバー10内には、スピンチャック12により保持されるウエハWを覆うよう設けられた外筒16と、スピンチャック12により保持されるウエハWに洗浄液の液滴を噴霧する二流体ノズル40とが設けられている。以下、このような基板洗浄装置1の各構成要素の詳細について説明する。
【0025】
スピンチャック12は、ウエハWをほぼ水平に保持しながら回転するものであり、具体的には、鉛直方向に延びるよう配置された回転軸部と、この回転軸部の上端に取り付けられた円板状のスピンベースとを有している。スピンチャック12によりウエハWを保持する際に、当該ウエハWはスピンベースの上面に載置されるようになっている。回転軸部にはモータ等のスピンチャック駆動機構(図示せず)が取り付けられており、このスピンチャック駆動機構は回転軸部をその中心軸のまわりに回転させることができるようになっている。このことにより、スピンチャック12に保持されたウエハWを水平面上で回転させることができるようになっている。また、スピンチャック12はスピンチャック昇降機構(図示せず)により鉛直方向にも往復移動することができるようになっている。このことにより、ウエハWをチャンバー10内に搬入してスピンチャック12に保持させるときや、スピンチャック12上にあるウエハWをチャンバー10の外部に搬出するときには、スピンチャック12の上端を外筒16の上端よりも高くすることができる。一方、スピンチャック12に保持されたウエハWに対して二流体ノズル40から洗浄液を供給するときには、スピンチャック12に保持されたウエハWの側方に外筒16の側壁が位置するようにすることができる。
【0026】
チャンバー10内において、スピンチャック12の側方を取り囲むように略円筒状の外筒16が設けられている。外筒16の中心軸はスピンチャック12の回転軸部の中心軸と略一致しており、この外筒16は、下端に底板が設けられているとともに上端は開口している。
【0027】
外筒16の底板には洗浄液排出管50の一端が接続されている。ここで、ウエハWに対する洗浄等に用いられ外筒16の底板に送られた洗浄液は洗浄液排出管50を介して排出される。
【0028】
チャンバー10内においてスピンチャック12により保持されたときのウエハWの上方の位置に、二流体ノズル40が下向きに設けられている。この二流体ノズル40は、アーム22を介して回転軸部24に連結されている。回転軸部24には、当該回転軸部24を正逆両方向に回転させるアーム駆動機構(図示せず)が設けられている。このアーム駆動機構が、回転軸部24を中心としてアーム22を水平方向に回転させることにより、二流体ノズル40を、ウエハWの中心部の上方の位置からウエハWの周縁部の外方の位置までの範囲内で水平面に沿って往復移動させるようになっている。また、アーム駆動機構は、回転軸部24を鉛直方向に往復移動させることができるようになっている。このことにより、二流体ノズル40の先端と、スピンチャック12に保持されるウエハWとの間隔を調整することができるようになっている。
【0029】
図1に示すように、二流体ノズル40には洗浄液供給管26が接続されており、この洗浄液供給管26により二流体ノズル40に対して洗浄液が供給されるようになっている。洗浄液供給管26の上流側端部には洗浄液タンク30が設けられており、この洗浄液タンク30には純水や薬液からなる洗浄液が貯留されている。そして、ポンプ等の図示しない圧送手段により、洗浄液タンク30から洗浄液が洗浄液供給管26に送られるようになっている。また、洗浄液供給管26には、開度調整が可能なバルブ34、およびパーティクル除去用のフィルタ38が介設されている。
【0030】
また、二流体ノズル40には窒素ガス供給管28が接続されており、この窒素ガス供給管28により二流体ノズル40に対して液滴生成用ガスとしての窒素ガスが供給されるようになっている。なお、液滴生成用ガスとして、窒素ガスの代わりにクリーンエアを用いてもよい。窒素ガス供給管28の上流側端部には窒素ガス供給機構32が設けられており、この窒素ガス供給機構32は高圧の窒素ガスを窒素ガス供給管28に供給することができるようになっている。また、窒素ガス供給管28にはバルブ36が介設されている。このバルブ36の開度を変え、二流体ノズル40に送られる窒素ガスの圧力(流量)を変えることにより、二流体ノズル40において生成される洗浄液の液滴の粒子径を変化させることができる。このことにより、洗浄液の液滴によるウエハWの洗浄処理性能を変化させることができる。
【0031】
次に、二流体ノズル40の構成について、図2乃至図5を参照して具体的に説明する。ここで、図3および図4は、それぞれ図2に示す二流体ノズル40のA−A矢視、B−B矢視による横断面図である。また、図5は、図2に示す二流体ノズル40における旋回流生成部46aを上方から見たときの上面図である。
【0032】
二流体ノズルとは、前述のように、一般的にガスと液体とを混合させることにより微小な液滴を生成し、この微小な液滴を噴霧する方式のノズルのことをいう。本実施の形態においては、二流体ノズル40には、洗浄液供給管26から純水や薬液からなる洗浄液が供給されるとともに、窒素ガス供給管28から窒素ガスが供給されるようになっている。二流体ノズル40は、例えばフッ素樹脂から形成された略円柱形状の本体部42を有しており、この本体部42の内部には、洗浄液供給管26から送られた洗浄液が通過する洗浄液通路44が設けられている。また、本体部42の内部には、窒素ガス供給管28から送られた窒素ガスが通過するガス通路46が設けられている。
【0033】
図2に示すように、洗浄液通路44は、洗浄液供給管26から本体部42内に送られた洗浄液が通過する第1通路44aと、第1通路44aの下流側に設けられた第2通路44cとを有している。より詳細には、洗浄液供給管26から本体部42内に送られた洗浄液は洗浄液通路44に沿って二流体ノズル40の下方に向かって流れるようになっており、第2通路44cは第1通路44aの下方に位置している。第1通路44aの断面は円形となっており、第2通路44cの断面は図4に示すように環状形状となっている。また、第2通路44cの下流側には、環状に並ぶよう配置された複数の穴44bが本体部42の下端部に設けられており(図3参照)、これらの穴44bを介して二流体ノズル40の本体部42から洗浄液が下方に吐出されるようになっている。これらの穴44bは、洗浄液を本体部42から下方に吐出する液体吐出口として機能するようになっている。
【0034】
図2に示すように、ガス通路46には、窒素ガス供給管28から送られた窒素ガスを本体部42内で旋回させて窒素ガスの旋回流を生成する旋回流生成部46aが設けられている。この旋回流生成部46aの構成の詳細について図5を用いて説明する。旋回流生成部46aには、螺旋形状の複数(例えば6つ)のガス流路46dが設けられている。そして、窒素ガス供給管28から本体部42内に送られた窒素ガスは各ガス流路46dを通過することにより旋回させられて、この旋回流生成部46aの下流側に配置されたガス通路46cでは窒素ガスの旋回流が生成されるようになっている。
【0035】
より詳細には、図5に示すように、旋回流生成部46aを上方から見たときに、旋回流生成部46aにおける各ガス流路46dの入口部分46eと出口部分46fは周方向にずれた箇所に位置しており、各ガス流路46dを通過する窒素ガスは、旋回流生成部46aを上方から見たときに図5における矢印方向に流れるようになっている。このように、旋回流生成部46aで窒素ガスが渦巻き状に流れることにより、旋回流生成部46aの下流側に配置されたガス通路46cでは窒素ガスの渦巻き気流が生成されることとなる。図2および図3に示すように、ガス通路46cの下流側には、その断面が環状であるガス吐出口46bが本体部42の下端部に設けられており、このガス吐出口46bを介して二流体ノズル40の本体部42から旋回流の窒素ガスが下方に吐出されるようになっている(図7参照)。
【0036】
また、図2に示すように、本体部42の下端部において、各穴44bよりも内側(二流体ノズル40の中心側)の位置には中空部分48が形成されている。この中空部分48は、本体部42の下端面から上方に空洞部分が延びるよう形成されている。中空部分48は、ガス吐出口46bから下方に吐出される窒素ガスにおける旋回流(図7参照)の内側の圧力を調整する圧力調整部として機能するようになっている。このような圧力調整部による作用効果の詳細については後述する。
【0037】
次に、このような構成からなる基板洗浄装置1の動作について説明する。
【0038】
まず、スピンチャック昇降機構によりスピンチャック12を上方に移動させた状態においてウエハWをチャンバー10内に搬入し、このスピンチャック12にウエハWを保持させる。そして、スピンチャック12を降下させ、このスピンチャック12の側方に外筒16の側壁が位置するようにする。
【0039】
次に、チャンバー10内においてスピンチャック12に保持されて回転するウエハWに対して洗浄液を供給する。具体的には、バルブ34、36を開状態とし、二流体ノズル40に洗浄液および窒素ガスを供給し、この二流体ノズル40により洗浄液の液滴を生成し、回転するスピンチャック12上のウエハWに対して二流体ノズル40により洗浄液の液滴を噴霧するようにする。
【0040】
二流体ノズル40における、洗浄液および窒素ガスが本体部42に送られてからウエハWに洗浄液の液滴を噴霧するまでの動作について説明する。
【0041】
まず、洗浄液タンク30から洗浄液供給管26を介して本体部42内の洗浄液通路44に洗浄液が送られるとともに、窒素ガス供給機構32から窒素ガス供給管28を介して本体部42内のガス通路46に窒素ガスが送られる。本体部42内の洗浄液通路44に送られた洗浄液は、第1通路44a、第2通路44cを通過して、各穴44bを介して二流体ノズル40の本体部42から下方に吐出される。また、本体部42内のガス通路46に送られた窒素ガスは、旋回流生成部46aにより旋回流とされ、ガス通路46cを通過した後、ガス吐出口46bを介して二流体ノズル40の本体部42から下方に吐出される。そして、本体部42の下方において、ガス吐出口46bから下方に吐出される旋回流の窒素ガスと、各穴44bから下方に吐出される液体とが混合されて洗浄液の液滴が生成される。洗浄液の液滴は、図2における二点鎖線の内側の範囲で二流体ノズル40から下方に噴霧される。このようにして、ウエハWに洗浄液の液滴が噴霧されるようになる。
【0042】
二流体ノズル40が洗浄液の液滴をウエハWに噴霧している間、アーム駆動機構により回転軸部24を中心としてアーム22を水平方向に回転させる。そうすると、このアーム22はウエハWの上方で、ウエハWの略中心から周縁に向かって水平方向に移動することとなり、当該アーム22に取り付けられた二流体ノズル40が水平方向に移動することとなる。このように、アーム駆動機構によってウエハWの上方でアーム22を水平方向に移動させることにより、このアーム22に取り付けられた二流体ノズル40がウエハWの上面に対してまんべんなく均一に洗浄液の液滴を噴霧し、このウエハWの上面に洗浄液の液膜が形成されることとなる。
【0043】
その後、二流体ノズル40がウエハWの外方に移動し、二流体ノズル40からの洗浄液の噴霧を停止し、スピンチャック駆動機構がスピンチャック12を高速回転させる。このことにより、スピンチャック12に保持されたウエハWも高速回転させられ、ウエハWの乾燥が行われる。このようにして、基板洗浄装置1による一連のウエハWの洗浄処理の動作が終了する。
【0044】
次に、圧力調整部として、本体部42の下端部において洗浄液吐出用の各穴44bよりも内側に中空部分48を設けることにより、ガス吐出口46bから下方に吐出される窒素ガスにおける旋回流の内側の圧力が調整されるという原理について図6乃至図8を用いて説明する。図6は、二流体ノズル40の本体部42の下端部から下方に吐出される窒素ガスの旋回流を上方から見たときの図であり、図7は、二流体ノズル40の本体部42の下端部から下方に吐出される窒素ガスの旋回流を概略的に示す斜視図である。また、図8は、二流体ノズル40の本体部42の下端部から下方に吐出される窒素ガスおよび洗浄液の流れを模式的に示す図である。
【0045】
二流体ノズル40の本体部42の下端部からガス吐出口46bを介して下方に吐出された窒素ガスは旋回流であるため、図6に示すように、この吐出された窒素ガスは上方から見て二流体ノズル40の中心線に向かって渦巻き形状を描くようになる。この際に、ガス吐出口46bから吐出された直後の窒素ガスの圧力Pは、二流体ノズル40の中心線(図7の二点鎖線参照)に達したときの窒素ガスの圧力Pよりも大きくなっている(P>P)。すなわち、ガス吐出口46bを介して下方に吐出された窒素ガスは、二流体ノズル40の中心線に向かうに従ってその圧力が低下するようになっている。圧力Pと圧力Pとの差である圧力低下量△Pと、窒素ガスにおける旋回流の内側の体積Vとの関係は、
△P×V=一定
の式で表される。
なお、この体積Vは、もし本体部42の下端部に中空部分48が設けられていない場合には、概ね、本体部42の下端面と、窒素ガスにおける旋回流との間に形成される空間の体積となる。すなわち、体積Vは、概ね、図7における点線で描く三角錐の体積となる。
【0046】
図8において、横方向に延びる点線aは二流体ノズル40の本体部42の下端面を示しており、縦方向に延びる点線bは二流体ノズル40の中心線を示している。図8において、本体部42の下端部に中空部分48が設けられていない場合における、当該本体部42の下端部からガス吐出口46bを介して下方に吐出された窒素ガスの流れを点線cで示す。図8に示すように、ガス吐出口46bから吐出された直後の窒素ガス(点線a上にある窒素ガス)の圧力は圧力Pであり、二流体ノズル40の中心線に達したときの窒素ガス(点線b上にある窒素ガス)の圧力はPである。
【0047】
また、各穴44bを介して二流体ノズル40の下方に吐出される洗浄液の流れは図8における二点鎖線dで示される。二流体ノズル40の下方に吐出される洗浄液について、その周囲にある旋回流の窒素ガスの圧力が所定の値より大きい場合には、この洗浄液は窒素ガスの旋回流に沿って二流体ノズル40の中心線に向かうような渦巻き形状を描くよう流れる(図8の二点鎖線d参照)。しかし、洗浄液の周囲にある旋回流の窒素ガスの圧力が所定の値より小さくなった場合には、洗浄液の流れはもはや窒素ガスの旋回流に沿うことはなく、図8の点線eに示すように外方に拡散するようになる。このように、ガス吐出口46bから吐出された直後の窒素ガスの圧力Pが二流体ノズル40の中心線bに向かうに従って徐々に低下することにより、ある程度まで窒素ガスが二流体ノズル40の中心線bに近づくと、洗浄液の流れは窒素ガスの旋回流に沿うことはなくなり、洗浄液の液滴が外方に拡散するようになる。このときに、点線eの範囲内の箇所に、洗浄液の液滴が噴霧されるようになる。ここで、図8に示すように、洗浄液の液滴が外方に拡散され始める箇所fは、窒素ガスの流れcおよび洗浄液の流れdに基づいて定めることができるようになっている。
【0048】
また、洗浄液の液滴の質量をmとしたときに、この液滴にかかる遠心力Fは、F=mrωで表される。ここで、rは、二流体ノズル40の中心線bからの液滴の距離であり、ωは液滴の角速度である。また、遠心力の大きさFは一定となっている。
【0049】
ところで、二流体ノズル40の本体部42の下端部において洗浄液吐出用の各穴44bよりも内側(二流体ノズル40の中心側)に中空部分48を設けた場合には、窒素ガスにおける旋回流の内側の体積Vは、この中空部分48の体積分だけ大きくなる。ここで、前述のように△P×V=一定であるため、体積Vが増加すると、圧力低下量△Pが減少する。この場合には、ガス吐出口46bから吐出された直後の窒素ガスの圧力は圧力Pで一定であるため、二流体ノズル40の中心線bに達したときの窒素ガスの圧力Pは、中空部分48が設けられていない場合の圧力Pよりも大きくなり、窒素ガスは図8における実線gに沿って流れるようになる。この場合には、図8に示すように、洗浄液の液滴が外方に拡散され始める箇所hは、中空部分48を設けない場合の箇所fよりも上方に位置するようになる。このため、中空部分48を設けた場合における洗浄液の液滴の噴霧範囲iは、中空部分48を設けない場合における噴霧範囲eよりも大きくなる。
【0050】
このように、本体部42の下端部において洗浄液吐出用の各穴44bよりも内側(二流体ノズル40の中心側)に中空部分48を設けることにより、ガス吐出口46bから下方に吐出される窒素ガスにおける旋回流の内側の圧力が調整されるようになる。具体的には、二流体ノズル40の中心線bに達したときの窒素ガスの圧力Pが、中空部分48が設けられていない場合の圧力Pよりも大きくなる。そして、このことにより、ウエハWからの距離を従来技術の二流体ノズルと同じにして比較したときに、本願発明の二流体ノズル40では、洗浄液の液滴が外方に拡散され始める箇所hが、中空部分48を設けない場合の箇所fよりも上方に位置するようになるので、洗浄液の液滴の噴霧範囲iを、中空部分48を設けない場合の液滴の噴霧範囲eよりも大きくすることができる。
【0051】
また、本体部42の下端部において洗浄液吐出用の各穴44bよりも内側に中空部分48を設けることにより、洗浄液吐出用の各穴44bから吐出された洗浄液が本体部42の下端面の中心に向かって流れることを抑制することができる。より詳細には、中空部分48が設けられていない場合には、洗浄液吐出用の各穴44bよりも内側における本体部42の下端面は平坦な面となるので、表面張力により各穴44bから吐出された洗浄液が本体部42の下端面の中心に向かって流れ込むおそれがある。しかしながら、本体部42の下端部に中空部分48を設けることにより、このような表面張力が発生しなくなり、洗浄液吐出用の各穴44bから吐出された洗浄液はこれらの各穴44b近くで窒素ガスと接触することができるようになる。このため、洗浄液吐出用の各穴44bから吐出された洗浄液についてより迅速に微粒子化が図られるようになり、洗浄液の液滴の噴霧範囲をより大きくすることができる。
【0052】
以上のように、本実施の形態の二流体ノズル40および液体の液滴の生成方法によれば、圧力調整部(具体的には中空部分48)により、ガス吐出口46bから吐出される窒素ガスにおける旋回流の内側の圧力を調整することにより、洗浄液の液滴が外方に拡散され始める箇所をより上方に位置させることができるので、二流体ノズル40からウエハWに噴霧される洗浄液の液滴の噴霧範囲を広くすることができる。このことにより、ウエハWに対してより均一に洗浄液の液滴を噴霧することができるようになり、また、ウエハWの洗浄処理にかかる時間を短縮することができるようになる。
【0053】
また、本実施の形態の二流体ノズル40および液体の液滴の生成方法においては、洗浄液の吐出口は、環状に並ぶよう配置された複数の穴44bから構成されている。このことにより、複数の穴44bから吐出された洗浄液について、窒素ガスとの接触面積を増加させることができ、このため、二流体ノズル40から吐出される洗浄液の液滴をより微粒化することができる。洗浄液の液滴が微粒化されると、前述のように液滴の遠心力Fの大きさは一定であるので、液滴の角速度ωが大きくなり、洗浄液の液滴はより一層外方に拡散されるようになる。
【0054】
なお、本発明による二流体ノズルおよび液体の液滴の生成方法は、上記の態様に限定されるものではなく、様々の変更を加えることができる。
【0055】
例えば、洗浄液の吐出口として、図3に示すように複数の穴44bを設ける代わりに、スリット形状の穴を環状に設けてもよい。
【0056】
また、図2乃至図5に示すような二流体ノズル40の代わりに、図9および図10に示すような二流体ノズル40aを用いてもよい。図9は、図1に示す基板洗浄装置1における二流体ノズルの他の構成の詳細を示す縦断面図であり、図10は、図9に示す二流体ノズルのC−C矢視による横断面図である。また、図9および図10に示すような二流体ノズル40aにおいて、図2乃至図5に示すような二流体ノズル40と同じ構成要素については同じ参照符号を付してその説明を省略する。
【0057】
図9および図10に示すような二流体ノズル40aにおいては、中空部分48は二流体ノズル40aを貫通して延び、その上端部は二流体ノズル40aの上方に開放されている。このような中空部分48を本体部42に設けた場合でも、図2等に示すような二流体ノズル40に中空部分48を設けた場合と同様に、中空部分48は、ガス吐出口46bから吐出される窒素ガスにおける旋回流の内側の圧力を調整する圧力調整部として機能することができるようになる。このことにより、ウエハWからの距離を従来技術の二流体ノズルと同じにして比較したときに、図9および図10に示すような二流体ノズル40aでは、洗浄液の液滴が外方に拡散され始める箇所をより上方に位置させることができるようになり、二流体ノズル40aからウエハWに噴霧される洗浄液の液滴の噴霧範囲を広くすることができる。
【0058】
また、図2乃至図5に示すような二流体ノズル40の代わりに、図11に示すような二流体ノズル40bを用いてもよい。図11に示す二流体ノズル40bにおいては、ガス吐出口46bから下方に吐出される窒素ガスにおける旋回流の内側の圧力を調整する圧力調整部として、二流体ノズルの本体部42に設けられた中空部分48を用いる代わりに、二流体ノズル40bに追加の窒素ガスを供給するガス供給部を設けている。図11に示すような二流体ノズル40bにおいて、図2乃至図5に示すような二流体ノズル40と同じ構成要素については同じ参照符号を付してその説明を省略する。
【0059】
図11に示すような二流体ノズル40bにおいては、本体部42の内部における中心近傍に追加のガス通路62が設けられており、この追加のガス通路62の下端には開口62aが形成されている。この開口62aは、本体部42の下端面において洗浄液吐出用の各穴44bの内側に配置されている。また、追加のガス通路62は本体部42を長手方向(図11における上下方向)に貫通するよう設けられている。また、ガス通路62の上端には窒素ガス供給管61が接続されており、この窒素ガス供給管61には窒素ガス供給機構60が接続されている。窒素ガス供給機構60は高圧の窒素ガスを窒素ガス供給管61に供給することができるようになっており、窒素ガス供給管61から二流体ノズル40bのガス通路62に窒素ガスが送られるようになっている。
【0060】
次に、図11に示すような二流体ノズル40bにおける、洗浄液および窒素ガスが本体部42に送られてからウエハWに洗浄液の液滴を噴霧するまでの動作について説明する。
【0061】
まず、洗浄液タンク30から洗浄液供給管26を介して本体部42内の洗浄液通路44に洗浄液が送られるとともに、窒素ガス供給機構32から窒素ガス供給管28を介して本体部42内のガス通路46に窒素ガスが送られる。さらに、窒素ガス供給機構60から窒素ガス供給管61を介して本体部42内のガス通路62に窒素ガスが送られる。本体部42内の洗浄液通路44に送られた洗浄液は、第1通路44a、第2通路44cを通過して、各穴44bを介して二流体ノズル40bの本体部42から下方に吐出される。また、本体部42内のガス通路46に送られた窒素ガスは、旋回流生成部46aにより旋回流とされ、ガス通路46cを通過した後、ガス吐出口46bを介して二流体ノズル40bの本体部42から下方に吐出される。さらに、本体部42内のガス通路62に送られた窒素ガスは、当該ガス通路62を通って本体部42内を流れ、開口62aから下方に吐出される。
【0062】
このように、図11に示すような二流体ノズル40bによれば、洗浄液吐出用の各穴44bの内側に配置された開口62aから下方に窒素ガスが追加的に吐出されるようになっているので、ガス吐出口46bから下方に吐出される窒素ガスにおける旋回流の内側の圧力が増加する。すなわち、前述のように、ガス吐出口46bから下方に吐出された窒素ガスは、二流体ノズル40bの中心線に向かうに従ってその圧力が低下するが、その圧力低下の度合いが小さくなる。このことにより、ウエハWからの距離を従来技術の二流体ノズルと同じにして比較したときに、上述のような二流体ノズル40bでも、洗浄液の液滴が外方に拡散され始める箇所を、開口62aから窒素ガスを下方に吐出しない場合の箇所よりも上方に位置させることができるようになる。このため、洗浄液の液滴の噴霧範囲は、開口62aから窒素ガスを下方に吐出しない場合の噴霧範囲よりも大きくなる。
【0063】
また、洗浄液吐出用の各穴44bの内側に配置された開口62aから下方に窒素ガスを追加的に吐出させることにより、各穴44bから吐出された洗浄液について、窒素ガスとの接触面積を増加させることができ、このため、洗浄液の液滴をより微粒化することができる。洗浄液の液滴が微粒化されると、前述のように液滴の遠心力Fの大きさは一定であるので、液滴の角速度ωが大きくなり、洗浄液の液滴はより一層外方に拡散されるようになる。
【0064】
以上のように、ガス吐出口46bから下方に吐出される窒素ガスにおける旋回流の内側の圧力を調整する圧力調整部として、本体部42の下端部において洗浄液吐出用の各穴44bよりも内側に設けられた開口62aを介して追加のガスを下方に供給するガス供給部を用いることもできる。具体的には、窒素ガス供給機構60、窒素ガス供給管61、および本体部42内のガス通路62によりガス供給部が構成されることとなる。そして、このようなガス供給部を用いた場合でも、本体部42に中空部分48を設けた場合と同様に、二流体ノズル40bからウエハWに噴霧される洗浄液の液滴の噴霧範囲を広くすることができる。このことにより、ウエハWに対してより均一に洗浄液の液滴を噴霧することができるようになり、また、ウエハWの洗浄処理にかかる時間を短縮することができるようになる。
【0065】
また、図2乃至図5に示すような二流体ノズル40の代わりに、図12に示すような二流体ノズル40cを用いてもよい。図12に示す二流体ノズル40cにおいては、ガス吐出口46bから下方に吐出される窒素ガスにおける旋回流の内側の圧力を調整する圧力調整部として、二流体ノズルの本体部42に設けられた中空部分48を用いる代わりに、本体部42の下端面において洗浄液吐出用の各穴44bよりも内側に設けられた開口を介してガスを吸引するガス吸引部を設けている。図12に示すような二流体ノズル40cにおいて、図2乃至図5に示すような二流体ノズル40と同じ構成要素については同じ参照符号を付してその説明を省略する。
【0066】
図12に示すような二流体ノズル40cにおいては、本体部42の内部における中心近傍に追加のガス通路72が設けられており、この追加のガス通路72の下端には開口72aが形成されている。この開口72aは、本体部42の下端面において洗浄液吐出用の各穴44bの内側に配置されている。また、追加のガス通路72は本体部42を長手方向(図12における上下方向)に貫通するよう設けられている。また、ガス通路72の上端にはガス吸引管71が接続されており、このガス吸引管71にはガス吸引機構70が接続されている。ガス吸引機構70はガス吸引管71を介してガス通路72からガスを吸引するようになっている。
【0067】
次に、図12に示すような二流体ノズル40cにおける、洗浄液および窒素ガスが本体部42に送られてからウエハWに洗浄液の液滴を噴霧するまでの動作について説明する。
【0068】
まず、洗浄液タンク30から洗浄液供給管26を介して本体部42内の洗浄液通路44に洗浄液が送られるとともに、窒素ガス供給機構32から窒素ガス供給管28を介して本体部42内のガス通路46に窒素ガスが送られる。本体部42内の洗浄液通路44に送られた洗浄液は、第1通路44a、第2通路44cを通過して、各穴44bを介して二流体ノズル40cの本体部42から下方に吐出される。また、本体部42内のガス通路46に送られた窒素ガスは、旋回流生成部46aにより旋回流とされ、ガス通路46cを通過した後、ガス吐出口46bを介して二流体ノズル40cの本体部42から下方に吐出される。
【0069】
また、図12に示すような二流体ノズル40cにおいては、窒素ガス吸引機構70により窒素ガス吸引管71およびガス通路72を介して本体部42の下端面に設けられた開口72aからガスが吸引されるようになっている。このことにより、ガス吐出口46bから下方に吐出される窒素ガスにおける旋回流の内側において、開口72a近傍の空気圧が低下することにより、この開口72aに向かうような上向きの追加の渦巻き流を生成することができるようになる。そして、このような上向きの追加の渦巻き流により、各穴44bから吐出された洗浄液について、窒素ガスとの接触面積を増加させることができ、このため、各穴44bから下方に吐出される洗浄液の液滴を微粒化することができる。洗浄液の液滴が微粒化されると、前述のように液滴の遠心力Fの大きさは一定であるので、液滴の角速度ωが大きくなる。このことにより、ウエハWからの距離を従来技術の二流体ノズルと同じにして比較したときに、上述のような二流体ノズル40cでは、洗浄液の液滴はより一層外方に拡散されるようになる。
【0070】
以上のように、ガス吐出口46bから下方に吐出される窒素ガスにおける旋回流の内側の圧力を調整する圧力調整部として、本体部42の下端部において洗浄液吐出用の各穴44bよりも内側に設けられた開口72aを介してガスを吸引するガス吸引部を用いることもできる。具体的には、ガス吸引機構70、ガス吸引管71、および本体部42内のガス通路72によりガス吸引部が構成されることとなる。そして、このようなガス吸引部を用いた場合でも、本体部42に中空部分48を設けた場合と同様に、二流体ノズル40cからウエハWに噴霧される洗浄液の液滴の噴霧範囲を広くすることができる。このことにより、ウエハWに対してより均一に洗浄液の液滴を噴霧することができるようになり、また、ウエハWの洗浄処理にかかる時間を短縮することができるようになる。
【0071】
また、本発明による二流体ノズル、および液体の液滴の生成方法においては、純水や薬液からなる洗浄液の液滴をウエハWに噴霧するようなウエハWの洗浄処理に用いられることに限定されることはない。ウエハWのエッチング処理やレジストマスクの現像処理等の、他の種類のウエハWの処理に、本発明による二流体ノズル、および液体の液滴の生成方法を用いてもよい。
【0072】
また、本発明による基板処理装置、および基板処理方法においては、純水や薬液からなる洗浄液の液滴をウエハWに噴霧するようなウエハWの洗浄処理を行うものに限定されることはない。ウエハWのエッチング処理やレジストマスクの現像処理等の、他の種類のウエハWの処理に、本発明による基板処理装置、および基板処理方法を用いてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 基板洗浄装置
10 チャンバー
12 スピンチャック
16 外筒
22 アーム
24 回転軸部
26 洗浄液供給管
28 窒素ガス供給管
30 洗浄液タンク
32 窒素ガス供給機構
34 バルブ
36 バルブ
38 フィルタ
40、40a、40b、40c 二流体ノズル
42 本体部
44 洗浄液通路
44a 第1通路
44b 穴
44c 第2通路
46 ガス通路
46a 旋回流生成部
46b ガス吐出口
46c ガス通路
46d ガス流路
46e 入口部分
46f 出口部分
48 中空部分
50 洗浄液排出管
60 窒素ガス供給機構
61 窒素ガス供給管
62 ガス通路
62a 開口
70 ガス吸引機構
71 ガス吸引管
72 ガス通路
72a 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から液体および液滴生成用ガスがそれぞれ供給され、液滴生成用ガスの旋回流が内部で生成される本体部と、
前記本体部の下端部に設けられ、旋回流の液滴生成用ガスが下方に吐出されるガス吐出口と、
前記本体部の下端部において前記ガス吐出口よりも内側に設けられ、液体が下方に吐出される液体吐出口と、
を備え、
前記本体部の下方において、前記ガス吐出口から下方に吐出される旋回流の液滴生成用ガスと前記液体吐出口から下方に吐出される液体とが混合されて液体の液滴が生成されるようになっており、
前記ガス吐出口から下方に吐出される液滴生成用ガスにおける旋回流の内側の圧力を調整する圧力調整部が前記本体部に設けられていることを特徴とする二流体ノズル。
【請求項2】
前記圧力調整部は、前記本体部の下端部において前記液体吐出口よりも内側に設けられた前記本体部の中空部分であることを特徴とする請求項1記載の二流体ノズル。
【請求項3】
前記圧力調整部は、前記本体部の下端部において前記液体吐出口よりも内側に設けられた開口を介して追加のガスを下方に吐出するガス供給部であることを特徴とする請求項1記載の二流体ノズル。
【請求項4】
前記圧力調整部は、前記本体部の下端部において前記液体吐出口よりも内側に設けられた開口を介してガスを吸引するガス吸引部であることを特徴とする請求項1記載の二流体ノズル。
【請求項5】
前記液体吐出口は、環状に並ぶよう配置された複数の穴からなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の二流体ノズル。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の二流体ノズルを備え、
当該二流体ノズルから噴霧される液体の液滴により基板の処理を行うことを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
二流体ノズルにおいて液体の液滴を生成する方法であって、
二流体ノズルに液体および液滴生成用ガスをそれぞれ外部から供給する工程と、
前記二流体ノズルの本体部の内部で液滴生成用ガスの旋回流を生成する工程と、
前記本体部の下端部に設けられたガス吐出口により旋回流の液滴生成用ガスを下方に吐出するとともに、前記本体部の下端部に設けられた液体吐出口により液体を下方に吐出し、前記本体部の下方において旋回流の液滴生成用ガスと液体とを混合して液体の液滴を生成する工程と、
前記ガス吐出口から下方に吐出される液滴生成用ガスにおける旋回流の内側の圧力を調整する工程と、
を備えたことを特徴とする液体の液滴の生成方法。
【請求項8】
前記本体部の下端部における前記液体吐出口よりも内側の位置において前記本体部に中空部分が設けられていることにより、前記ガス吐出口から下方に吐出される液滴生成用ガスにおける旋回流の内側の圧力を調整することを特徴とする請求項7記載の液体の液滴の生成方法。
【請求項9】
前記ガス吐出口から下方に吐出される液滴生成用ガスにおける旋回流の内側の圧力を調整する際に、前記本体部の下端部において前記液体吐出口よりも内側に設けられた開口を介して追加のガスを下方に吐出することを特徴とする請求項7記載の液体の液滴の生成方法。
【請求項10】
前記ガス吐出口から下方に吐出される液滴生成用ガスにおける旋回流の内側の圧力を調整する際に、前記本体部の下端部において前記液体吐出口よりも内側に設けられた開口を介してガスを吸引することを特徴とする請求項7記載の液体の液滴の生成方法。
【請求項11】
基板の処理を行う基板処理方法であって、
請求項7乃至10のいずれか一項の液体の液滴の生成方法により、二流体ノズルにおいて液体の液滴を生成する工程と、
前記二流体ノズルにおいて生成された液体の液滴を基板に噴霧する工程と、
を備えたことを特徴とする基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−15180(P2012−15180A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147848(P2010−147848)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】