説明

二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物

【課題】粘度が低く、硬化性、打ち継ぎ性に優れる二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物の提供。
【解決手段】トリレンジイソシアネートとポリオールとを反応させることによって得られるウレタンプレポリマーを含有する第1液と、特定の構造を有する基を含み活性水素を含まないエステル化合物と、トルエンジアミン構造を含むジアミン化合物と、酸触媒とを含有する第2液とを有する二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物であって、前記ジアミン化合物のアミノ基に対する前記ウレタンプレポリマーのイソシアネート基の比が、当量比でイソシアネート基/アミノ基=0.8〜5.0である二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物、およびその積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウレタン防水材の硬化を早めるために、架橋剤としてトルエンジアミン構造を含むジアミン化合物を使用することが知られている。
このようなジアミン化合物を含有するウレタン防水材用の組成物として、特許文献1〜3が提案されている。
【0003】
特許文献1には、「トリレンジイソシアネートとポリオールとの反応で得られるイソシアネート末端ウレタンプレポリマーを主成分とする主剤と、メチルチオトルエンジアミンおよび酸触媒を主成分とする硬化剤とからなり、該ウレタンプレポリマーが、トリレンジイソシアネートとポリオールとを、当量比でNCO基/OH基=1.5〜2.1の範囲で反応させてなり、該ウレタンプレポリマーのNCO%が1.5〜6.0重量%であり、該硬化剤中のメチルチオトルエンジアミンの含有量が、該ウレタンプレポリマーに対し、当量比でNCO基/NH2基=0.8〜2.1であり、酸触媒の含有量が該硬化剤の0.05〜5重量%である二液常温硬化型防水材組成物。」が記載されている。
また、特許文献1には、使用できる可塑剤として、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジラウリルフタレート(DLP)、ジブチルベンジルフタレート(BBP)、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、トリオクチルフォスフェート、トリス(クロロエチル)フォスフェート、トリス(ジクロロプロピル)フォスフェート、アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル、エポキシステアリン酸アルキル、エポキシ化大豆油が記載されている。
【0004】
特許文献2には、「トリレンジイソシアネートとポリオールとの反応で得られるイソシアネート末端ウレタンプレポリマーを主成分とする主剤と、トルエンジアミン構造を有するジアミン化合物、分子量700以下の2官能ポリプロピレングリコールおよび酸触媒を主成分とする硬化剤とからなり、該ウレタンプレポリマーが、トリレンジイソシアネートとポリオールとを、当量比でNCO基/OH基=1.5〜2.1の範囲で反応させてなり、該ウレタンプレポリマーのNCO%が1.5〜6.0重量%であり、該硬化剤中のトルエンジアミン構造を有するジアミン化合物の含有量が、該ウレタンプレポリマーに対し、当量比でNCO基/NH2基=0.8〜3.0であり、分子量700以下の2官能ポリプロピレングリコールの含有量が該ウレタンプレポリマーに対し、当量比でNCO基/OH基=1.1〜10.0であり、酸触媒の含有量が該硬化剤の0.05〜5重量%である二液常温硬化型防水材組成物。」が記載されている。特許文献2には特許文献1と同様の可塑剤が記載されている。
【0005】
特許文献3には、「建築物躯体表面に、躯体表面から順に(a)水性プライマー、(b)可塑剤を塗膜防水材全量に対して5質量%以上含有する無溶剤型ウレタン塗膜防水材、(c)水性トップコートを順次施工する防水工法において、前記可塑剤がフタル酸エステル系、脂肪族二塩基酸エステル系、リン酸エステル系、エポキシ脂肪酸エステル系、グリコールエステル系、塩素化パラフィン系、石油系から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とするウレタン系塗膜防水工法。」が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−192023号公報
【特許文献2】特開2002−20727号公報
【特許文献3】特開2002−364128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者は、ウレタンプレポリマーを含有する第1液と、イソシアネートの架橋剤としてのトルエンジアミン構造を含むジアミン化合物と、組成物の粘度を低減させるためのDOP、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジイソノニルアジペート(DINA)のような可塑剤とを含有する第2液とを有するウレタン組成物を硬化させることによって得られるウレタン防水材は、打ち継ぎ性に改善の余地があることを見出した。
また、本発明者は、可塑剤として特定のエステル化合物を添加することによって、粘度が低く打ち継ぎ性に優れる組成物が得られることを見出したが、このような組成物には硬化性に改善の余地があることをさらに見出した。
そこで、本発明は、粘度が低く、硬化性、打ち継ぎ性に優れる二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、特定のウレタンプレポリマーを含有する第1液と、特定の構造を有するエステル化合物と、特定の構造を有する特定の量のジアミン化合物と、酸触媒とを含有する第2液とを有する二液型のウレタン組成物が、粘度が低く、硬化性、打ち継ぎ性に優れる二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物となりうることことを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、下記(1)〜(7)を提供する。
(1)トリレンジイソシアネートとポリオールとを反応させることによって得られるウレタンプレポリマーを含有する第1液と、下記式(1)で表される基を含み活性水素を含まないエステル化合物と、トルエンジアミン構造を含むジアミン化合物と、酸触媒とを含有する第2液とを有する二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物であって、
前記ジアミン化合物のアミノ基に対する前記ウレタンプレポリマーのイソシアネート基の比が、当量比で前記イソシアネート基/前記アミノ基=0.8〜5.0である二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物。
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、R1は単結合または炭素原子数1〜4の炭化水素基であり、前記炭化水素基は不飽和結合を含んでもよい。)
(2)前記エステル化合物の分子量が、1000以下である上記(1)に記載の二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物。
(3)前記エステル化合物の含有量が、前記第2液全量の1〜8質量%である上記(1)または(2)に記載の二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物。
(4)前記ジアミン化合物が、ジメチルチオトルエンジアミンである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物。
(5)前記酸触媒の含有量が、前記第2液全量の0.05〜5質量%である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物。
(6)コンクリートまたはシートと、前記コンクリートまたは前記シートの上にある上記(1)〜(5)のいずれかに記載の二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物から得られる塗膜とを具備する積層体。
(7)前記塗膜の上に、ウレタンプレポリマーと4,4−メチレンビス(2−クロロアニリン)とを含有するウレタン組成物から得られる塗膜を具備する上記(6)に記載の積層体。
【発明の効果】
【0012】
本発明の二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物は、粘度が低く、硬化性、打ち継ぎ性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明について以下詳細に説明する。
まず、本発明の二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物について説明する。
本発明の二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物は、
トリレンジイソシアネートとポリオールとを反応させることによって得られるウレタンプレポリマーを含有する第1液と、下記式(1)で表される基を含み活性水素を含まないエステル化合物と、トルエンジアミン構造を含むジアミン化合物と、酸触媒とを含有する第2液とを有する二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物であって、
前記ジアミン化合物のアミノ基に対する前記ウレタンプレポリマーのイソシアネート基の比が、当量比でイソシアネート基/アミノ基=0.8〜5.0である組成物である(以下、これを「本発明の組成物」という。)。
【0014】
【化2】

【0015】
式中、R1は単結合または炭素原子数1〜4の炭化水素基であり、前記炭化水素基は不飽和結合を含んでもよい。
【0016】
本発明の組成物において、第1液は、ウレタンプレポリマーを含有する。
第1液に含有されるウレタンプレポリマーは、トリレンジイソシアネート(TDI)とポリオールとを反応させることによって得られるものである。
【0017】
ウレタンプレポリマーを製造する際に使用されるTDIとしては、例えば、2,4−TDI、2,6−TDIが挙げられる。
TDIは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
可使時間を長くすることを目的として、2,4−TDIの含有率が、TDI全量中の65〜100質量%であるのが好ましく、80〜100質量%であるのがより好ましい。
【0018】
ウレタンプレポリマーを製造する際に使用されるポリオールは、特に制限されない。例えば、多価アルコール類、アミン類、アルカノールアミン類、多価フェノール類等が挙げられる。
多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、グリセリン、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
アミン類としては、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
アルカノールアミン類としては、例えば、エタノールアミン、プロパノールアミン等が挙げられる。
多価フェノール類としては、例えば、レゾルシン、ビスフェノール類等が挙げられる。
【0019】
具体的には、例えば、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシブチレングリコール等のポリエーテル系ポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等のポリオレフィン系ポリオール、その他アジペート系ポリオール、ラクトン系ポリオール、ヒマシ油等のポリエステル系ポリオール等が挙げられる。
これらの中でも、ポリプロピレングリコール(PPG)が好ましい。
また、ウレタンプレポリマーを適度な粘度とすることができ、得られる硬化物が機械的強度に優れるという観点から、ポリオールは平均分子量400〜8000程度のものが好ましい。
ポリオールは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
ウレタンプレポリマーを製造の際に使用されるTDIとポリオールの量比は、TDI中のイソシアネート基と、ポリオール中のヒドロキシル基との当量比が、NCO/OH=1.5〜2.1であるのが好ましい。NCO/OHが1.5以上である場合、得られるウレタンプレポリマーの粘度が高くなりすぎない。また、NCO/OHが2.1以下である場合、未反応のイソシアネート基を少なくすることができる。このような効果により優れることから、NCO/OH=1.8〜2.0であるのがより好ましい。
【0021】
ウレタンプレポリマーは、トリレンジイソシアネート(TDI)とポリオールとを反応させるものであれば、その製造について、特に制限されない。例えば、TDIとポリオールとを反応温度50〜130℃程度で、常圧下で反応させる方法が挙げられる。
【0022】
ウレタンプレポリマーのイソシアネート含有率は、1.5〜6.0質量%であるのが好ましい。ウレタンプレポリマーのイソシアネート含有率が1.5質量%以上である場合、本発明の組成物は、JIS A 6021に定める防水材の有するべき耐熱性、機械的強度(破断強度、破断伸び、引裂強さ)を有する硬化物となりうる。また、イソシアネート含有率が6.0質量%以下の場合、可使時間を十分な長さとすることができる。このような効果により優れることから、ウレタンプレポリマーのイソシアネート含有率は、2.0〜4.0質量%であるのがより好ましい。
ウレタンプレポリマーは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
本発明の組成物において、第2液は、式(1)で表される基を含み活性水素を含まないエステル化合物と、トルエンジアミン構造を含むジアミン化合物と、酸触媒とを含有する第2液とを有し、前記ジアミン化合物のアミノ基に対する前記ウレタンプレポリマーのイソシアネート基の比が、当量比でイソシアネート基/アミノ基=0.8〜5.0である。
【0024】
エステル化合物について以下に説明する。
第2液に含有されるエステル化合物は、下記式(1)で表される基を含み活性水素を含まない化合物である。
【0025】
【化3】

【0026】
式中、R1は単結合または炭素原子数1〜4の炭化水素基であり、前記炭化水素基は不飽和結合を含んでもよい。
【0027】
本発明において、活性水素は、イソシアネート基と反応しうる水素原子をいう。イソシアネート基と反応しうる活性水素を含有する官能基としては、例えば、アミノ基、イミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基が挙げられる。本発明においてエステル化合物は、アミノ基、イミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基を含まない。
【0028】
1において炭化水素基は、炭素原子数1〜4であり、2価のものであれば特に制限されず、不飽和結合を含んでもよい。また、炭化水素基は分岐することができる。
炭化水素基は、炭素原子数が2(コハク酸、フマル酸等に相当)であるのが好ましい。
不飽和結合は特に制限されず、例えば、二重結合、三重結合が挙げられる。
【0029】
炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ペンチレン基、ビニレン基、プロペニレン基、エチニレン基が挙げられる。
なかでも、エステル化合物の粘度の最適化という観点から、エチレン基、ビニレン基が好ましい。
【0030】
エステル化合物としては、例えば、下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0031】
【化4】

【0032】
式中、Rは2価カルボン酸由来の単結合又は炭素数1〜4の炭化水素基であって不飽和結合を含んでいてもよく、Rは2価アルコール残基であり、Rは1価アルコール残基であり、nは0または1以上の整数を示す。
なお、2価アルコール残基は2価アルコールから2個のヒドロキシ基を除いた残りの基をいう。
また、1価アルコール残基は1価アルコールからヒドロキシ基を除いた残りの基をいう。
【0033】
本発明の組成物に使用されるエステル化合物は、例えば、(1)(a)2価カルボン酸成分及び(c)末端停止剤としての1価アルコール成分のエステル化反応、または(2)(a)2価カルボン酸成分、(b)2価アルコール成分及び(c)末端停止剤としての1価アルコール成分のエステル化反応及びエステル交換反応によって得ることができる。
【0034】
(b)2価アルコール成分を用いない(1)の場合得られるエステル化合物はモノマー組成となり、(b)2価アルコール成分を用いる(2)の場合得られるエステル化合物はオリゴマー組成となる。
即ち、(b)2価アルコール成分は、エステル化合物の平均分子量を調整するために用いられる。
【0035】
エステル化合物を製造する際に使用することができる(a)2価カルボン酸成分としては、炭素数2〜6の脂肪族カルボン酸が挙げられる。
なかでも、炭素数は、4(コハク酸、フマル酸等に相当)であるのが好ましい。
【0036】
具体的には、例えば、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、フマル酸、マレイン酸;これらのエステル化物(例えば、コハク酸ジメチル);これらの酸無水物(例えば、無水コハク酸)が挙げられる。
なかでも、コハク酸、フマル酸が最も好ましい。
2価カルボン酸成分は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
エステル化合物を製造する際に使用することができる(b)2価アルコール成分は、ヒドロキシ基を2個有する化合物であれば特に制限されない。
例えば、オキシエチレングリコール、オキシプロピレングリコールのほか、アルキレングリコールが挙げられる。
具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
また、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン/オキシプロピレン共重合グリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールのような長鎖ポリエーテルポリオールを用いることができる。
なかでも、好ましくはオキシエチレングリコールであり、最も好ましいのはジエチレングリコール、トリエチレングリコールである。
2価アルコール成分は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
エステル化合物を製造する際に使用することができる(c)末端停止剤は1価アルコールであれば特に制限されない。
1価アルコールは、ヒドロキシ基を1個有する化合物であればよい。
1価アルコールとしては、例えば、炭素数1〜18の脂肪族1価アルコールが用いられる。なかでも炭素数4〜12の脂肪族1価アルコールであるのが好ましい。
炭素数1〜18の脂肪族1価アルコールとしては、例えば、メタノール、ブタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルのようなエーテル結合を有する1価アルコールが挙げられる。
なかでも、2−エチルヘキサノール、イソノニルアルコールが最も好ましい。
1価アルコールは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
エステル化合物は、その製造について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
エステル化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
エステル化合物の含有量は、第2液全量の1〜8質量%であるのが好ましい。1質量%以上の場合、粘度を低くすることができ、8質量%以下の場合、可使時間が長く、機械的物性に優れる。また、粘度がより低減でき、可使時間がより長く、機械的物性により優れるという観点から、エステル化合物の含有量は、第2液全量の1〜7質量%であるのがより好ましく、1〜6質量%であるのがさらに好ましい。
【0041】
ジアミン化合物について以下に説明する。
ジアミン化合物は、トルエンジアミン構造を含むものであれば特に制限されない。
トルエンジアミン構造は、トルエンに2個のアミノ基が置換している構造をいう。アミノ基の置換位置は、ベンゼン環上であるのが好ましい態様として挙げられる。
【0042】
ジアミン化合物としては、例えば、2,3−ジエチルトルエンジアミン(2,3−DETDA)、2,6−ジエチルトルエンジアミン(2,6−DETDA)、5−tert−ブチル−2,4−トルエンジアミン、3−tert−ブチル−2,6−トルエンジアミン、5−tert−アミル−2,4−トルエンジアミン、3−tert−アミル−2,6−トルエンジアミン、クロロトルエンジアミンが挙げられる。
【0043】
また、ジアミン化合物は、さらに、アルキルチオ基を含むのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
アルキルチオ基のアルキル基は、特に制限されない。例えば、メチル基、エチル基が挙げられる。
アルキルチオ基は、ジアミン化合物のベンゼン環に結合するのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
アルキルチオ基の数は2個以上であるのが好ましい。
【0044】
アルキルチオ基を含むジアミン化合物としては、例えば、メチルチオトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミンが挙げられる。
ジメチルチオトルエンジアミンとしては、例えば、3,5−ジメチルチオ−2,4−トルエンジアミン、3,5−ジメチルチオ−2,6−トルエンジアミンが挙げられる。
【0045】
これらの中でも、硬化性により優れるという観点から、2,3−DETDA、2,6−DETDA、ジメチルチオトルエンジアミンが好ましい。
ジアミン化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0046】
ジアミン化合物は、硬化性により優れるという観点から、3,5−ジメチルチオ−2,4−トルエンジアミンと3,5−ジメチルチオ−2,6−トルエンジアミンとの混合物であるのが好ましい。
このような混合物において、3,5−ジメチルチオ−2,4−トルエンジアミンと3,5−ジメチルチオ−2,6−トルエンジアミンとの比は、3,5−ジメチルチオ−2,4−トルエンジアミン80質量%:3,5−ジメチルチオ−2,6−トルエンジアミン20質量%であるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0047】
ジアミン化合物として、市販品を使用することができる。ジアミン化合物の市販品としては、例えば、エチルコーポレーション社製のエタキュア−300(ジメチルチオトルエンジアミン)等が挙げられる。
【0048】
本発明の組成物において、ジアミン化合物のアミノ基に対するウレタンプレポリマーのイソシアネート基の比は、当量比でイソシアネート基/アミノ基=0.8〜5.0である。
ジアミン化合物のアミノ基に対する前記ウレタンプレポリマーのイソシアネート基の比が0.8以上の場合、可使時間が十分であり硬化性に優れる。また、5.0以下の場合、硬化速度が適度なものとなり硬化性に優れる。
ジアミン化合物のアミノ基に対するウレタンプレポリマーのイソシアネート基の比は、硬化性により優れるという観点から、好ましくはNCO/NH2=1.0〜2.9である。
【0049】
酸触媒について以下に説明する。
本発明の組成物において、第2液が含有する酸触媒は、有機酸触媒であるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
酸触媒としては、例えば、ステアリン酸、フタル酸、カプリル酸、ラウリル酸、オレイン酸、ナフテン酸、オクテン酸、オクチル酸(2−エチルヘキサン酸)等が挙げられる。
これらの中でも、硬化性により優れるという観点から、オクチル酸が好ましい。
酸触媒は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
酸触媒の含有量は、硬化性により優れるという観点から、第2液全量の0.05〜5質量%であるのが好ましい。0.05質量%以上の場合、硬化性により優れ、特に低温、例えば5℃での硬化性に優れる。5質量%以下の場合、可使時間が十分であり、JIS A 6021に定める防水材の有するべき耐熱性の劣化が小さく、破断伸びに優れる。
【0051】
また、上記範囲内で酸触媒の含有量を3質量%以上とする場合、可使時間を十分に短縮することができる。また、含有量を0.1質量%以下と小さくする場合、可使時間を長くすることができる。上記範囲内であればいずれの場合も、低温ではもちろん、常温においても、十分な可使時間を確保できる。
また、酸触媒の含有量が第2液全量の0.05〜5質量%である場合、5℃といった低温において、二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物を塗布した翌日には塗布面に次の工程を施工可能な程度にまで硬化させられ、次の施工工程に移ることが可能である。すなわち、年間をとおして、可使時間と硬化性のバランスが良好で、次工程にすみやかに移行できる二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物とすることができる。
【0052】
酸触媒の含有量は、低温においても30分以上の可使時間を採ることができるという観点から、0.08〜2.5質量%であるのが好ましい。
【0053】
本発明の組成物は、第2液が、さらにポリプロピレンエーテルポリオールを含むのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0054】
ポリプロピレンエーテルポリオールについて以下に説明する。
ポリプロピレンエーテルポリオールは、ヒドロキシ基を2個以上有するポリプロピレンエーテルであれば特に制限されない。
ポリプロピレンエーテルポリオールの分子量は、反応性、物性の観点から、150〜13,000であるのが好ましく、300〜10,000であるのがより好ましい。
【0055】
ポリプロピレンエーテルポリオールとしては、例えば、プロピレンジオール、ジプロピレンジオール、プロピレントリオール及びプロピレンテトラオールからなる群から選ばれる少なくとも1種に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド及びポリオキシテトラメチレンオキサイドからなる群から選ばれる少なくとも1種を付加させて得られうるポリオールが挙げられる。
ポリプロピレンエーテルポリオールは、その製造について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0056】
また、組成物のレベリング性、作業性に優れるという観点から、ポリプロピレンエーテルポリオールの少なくとも一部が、エチレンオキシドが付加されているポリプロピレンエーテルポリオールであるのが好ましい。
【0057】
エチレンオキシドが付加されているポリプロピレンエーテルポリオールについて以下に説明する。
エチレンオキシドが付加されているポリプロピレンエーテルポリオールは、ポリプロピレンエーテルポリオールにエチレンオキシドを付加させることにより得られうる化合物であれば特に制限されない。
【0058】
エチレンオキシドが付加されているポリプロピレンエーテルポリオールの製造の際に使用されるポリプロピレンエーテルポリオールは特に制限されない。上記のポリプロピレンエーテルポリオールと同義である。
また、エチレンオキシドが付加されているポリプロピレンエーテルポリオールの製造の際に使用されるエチレンオキシドは特に制限されない。
エチレンオキシドが付加されているポリプロピレンエーテルポリオールはその製造について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0059】
エチレンオキシドが原料のポリプロピレンエーテルポリオールの少なくとも1つの末端に付加することにより、エチレンオキシドが付加されているポリプロピレンエーテルポリオールは、少なくとも1つの末端にヒドロキシエチル基を含有することができる。
【0060】
エチレンオキシドが付加されたポリプロピレンエーテルポリオールの末端のヒドロキシエチル基を含む部分は、例えば、下記式(6)のように表される。
【0061】
−CH2−CH(CH3)−O−CH2−CH2−OH (6)
【0062】
式(6)において、−CH2−CH(CH3)−O−は、原料のポリプロピレンエーテルポリオールの末端であった部分を示す。
【0063】
また、エチレンオキシドを原料のポリプロピレンエーテルポリオールの主鎖にランダムに付加させ、主鎖中に−CH2CH2O−を有するポリプロピレンエーテルポリオールとすることができる。
エチレンオキシドは、原料のポリプロピレンエーテルポリオールの末端及び/又は主鎖に付加することができる。
エチレンオキシドの付加率は、特に制限されない。−CH2CH2O−の含有量が、質量換算でエチレンオキシドが付加されているポリプロピレンエーテルポリオールの3%以上であるのが好ましい態様として挙げられる。
【0064】
また、エチレンオキシドが付加されているポリプロピレンエーテルポリオールとしては、例えば、エチレンオキシドが付加されているポリプロピレンエーテルジオール、エチレンオキシドが付加されているポリプロピレンエーテルトリオール、エチレンオキシドが付加されているポリプロピレンエーテルテトラオールが挙げられる。
【0065】
エチレンオキシドが付加されているポリプロピレンエーテルポリオールの数平均分子量は、反応性、物性の観点から、500〜8000であることが好ましい。
【0066】
エチレンオキシドが付加されているポリプロピレンエーテルポリオールは、その原料であるポリプロピレンエーテルポリオールとの混合物として使用することができる。
【0067】
ポリプロピレンエーテルポリオールは、作業性の観点から、エチレンオキシドが付加されているポリプロピレンエーテルポリオール、ポリプロピレンエーテルジオール、ポリプロピレンエーテルトリオールであるのが好ましい。
ポリプロピレンエーテルポリオールは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
ポリプロピレンエーテルポリオールは、エチレンオキシドが付加されているポリプロピレンエーテルポリオールと、ポリプロピレンエーテルジオールおよび/またはポリプロピレンエーテルトリオールとの組合せが好ましい態様として挙げられる。
【0068】
ポリプロピレンエーテルポリオールの量は、ジアミン化合物のアミノ基とポリプロピレンエーテルポリオールのヒドロキシ基との合計に対するウレタンプレポリマーのイソシアネート基の比が、当量比でイソシアネート基/(アミノ基+ヒドロキシ基)=0.8〜5.0となるのが、作業性、硬化性の観点から好ましい。
【0069】
また、第2液は、さらに、ポリプロピレンエーテルポリオール以外のポリオールを含むことができる。
ポリプロピレンエーテルポリオール以外のポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール;ポリマーポリオール;ポリカーボネートポリオール;ポリブタジエンポリオール;水素添加されたポリブタジエンポリオール;アクリルポリオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールのような低分子量のポリオールが挙げられる。
【0070】
なかでも、反応性、物性の観点から、ポリブタジエンポリオール、水素添加されたポリブタジエンポリオールが好ましい。
ポリプロピレンエーテルポリオール以外のポリオールは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0071】
本発明の組成物は、上記化合物のほかに、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに添加剤を含有することができる。
添加剤としては、例えば、金属触媒、本発明の組成物において含有されるエステル化合物以外の可塑剤、充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、顔料、分散剤、溶剤が挙げられる。
添加剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0072】
金属触媒としては、例えば、ジブチルチンジマレエート、オクテン酸鉛等が挙げられる。
金属触媒の使用量は、硬化剤中で0.05〜2質量%が好ましい。この範囲である場合得られる本発明の組成物の耐熱性、層間接着性、接着性を劣化させることはない。
【0073】
本発明の組成物において含有されるエステル化合物以外の可塑剤は、ジアミン化合物が常温で液状の場合特に必要はなく、例えば、第1液の粘度の調節や、第2液と第1液とを量的にバランスさせるために用いることができる。
このような可塑剤としては、例えば、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジイソノニルアジペート(DINA)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジラウリルフタレート(DLP)、ジブチルベンジルフタレート(BBP)、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、トリオクチルフォスフェート、トリス(クロロエチル)フォスフェート、トリス(ジクロロプロピル)フォスフェート、アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル、エポキシステアリン酸アルキル、エポキシ化大豆油等が挙げられる。
本発明の組成物において含有されるエステル化合物以外の可塑剤の使用量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対し、0〜15質量部が好ましい。
【0074】
充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、カーボンブラック、バルーン、クレー、タルク、酸化チタン、生石灰、カオリン、ゼオライト、けいそう土、微粉末シリカ、疎水性シリカ等が挙げられる。
バルーンは、特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
充填剤の使用量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対し、10〜70質量部が好ましい。
【0075】
酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシトルエンアニソール(BHA)、ジフェニルアミン、フェニレンジアミン、亜リン酸トリフェニル等を挙げることができる。
分散剤としては、例えば、共栄社化学社製フローレンG700が挙げられる。
溶剤としては、例えば、新日本石油社製ミネラルスピリットが挙げられる。
【0076】
本発明の組成物は、その製造について特に制限されない。例えば、ウレタンプレポリマーを含有する第1液を調製し、一方、第2液については、エステル化合物とジアミン化合物と酸触媒とを用いて、ジアミン化合物のアミノ基に対するウレタンプレポリマーのイソシアネート基の比が、当量比でイソシアネート基/アミノ基=0.8〜5.0となるように調製することによって製造することができる。添加剤は、必要に応じて第1液および/または第2液に加えることができる。
なお、第2液に含有される酸触媒は、ジアミン化合物と共に第2液に配合してもよいし、第1液と第2液の混合時に添加してもよい。
【0077】
本発明の組成物は、二液型なので施工現場にて第1液と第2液との混合を行い、得られた組成物を、例えば、金ごて、ローラー等を用いて塗装することができる。
本発明の組成物を適用することができる被着体としては、例えば、コンクリート、シート、鉄板、ウレタン塗膜等が挙げられる。
【0078】
本発明の組成物は、例えば、0℃以上の環境下で硬化することができる。
本発明の組成物は、硬化後、JIS A硬度が10以上の硬化物(塗膜)となるのが好ましい。硬化物のJIS A硬度は、20以上であるのがより好ましい。
本発明の組成物を0℃以上の環境下でJIS A硬度が10以上の硬化物となるのに必要な時間は、48時間以内であるのが好ましい。
本発明の組成物は、その可使時間が15分以上であるのが好ましく、20分以上であるのがより好ましい。
本発明の組成物は、第1液と第2液とを混合した直後の混合物についてB型粘度計を用いて測定した20℃における粘度が、10Pa・s以下であるのが好ましく、1〜9Pa・sであるのがより好ましい。
また、本発明の組成物を20℃の環境下で7日間硬化させて平均膜厚2.0mmの塗膜とし、得られた塗膜を用いてJIS A 6021:2000に準じて測定した際の引裂強度は、14N/mm以上であるのが好ましい。
【0079】
本発明の組成物は、塗膜防水材、塗り床材等に用いることができる。
本発明の組成物は、粘度が低く、硬化性、打ち継ぎ性、耐熱性、機械的強度に優れ、防水効果に優れる。
本発明の組成物は、ビルディングの屋上、ベランダ、廊下等のコンクリート面などの防水効果に優れる防水用積層物を与える。
【0080】
次に、本発明の積層体について以下に説明する。
本発明の積層体は、
コンクリートまたはシートと、前記コンクリートまたは前記シートの上にある本発明の二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物から得られる塗膜とを具備するものである。
【0081】
本発明の積層体に使用されるコンクリートは特に制限されない。
本発明の積層体に使用されるシートは特に制限されない。例えば、上記と同様のものが挙げられる。シートはコンクリートの上に敷いて使用することができる。
本発明の積層体に使用される二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物は、本発明の二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物であれば特に制限されない。
【0082】
本発明の積層体は、二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物の第1液と第2液とを混合し、得られた組成物を、例えば、金ごて、ローラー等を用いて、コンクリートまたはシートの上に塗装し、組成物を硬化させ塗膜とすることによって得ることができる。
本発明の積層物において、二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物から得られる塗膜の厚さは、1〜2mmで十分である。このような厚さでも、二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物から得られる塗膜は十分に防水性に優れる。
【0083】
本発明の積層体に使用される二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物は、例えば、0℃以上の環境下で硬化し塗膜となることができる。
本発明の積層体に使用される二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物は、硬化後、JIS A硬度が10以上の硬化物(塗膜)となるのが好ましい。硬化物のJIS A硬度は、20以上であるのがより好ましい。
本発明の積層体に使用される二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物は、0℃以上の環境下で48時間以内で硬化し、JIS A硬度が10以上の硬化物となりうる。
本発明の積層体に使用される二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物は、その可使時間が15分以上であるのが好ましく、20分以上であるのがより好ましい。
本発明の積層体に使用される二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物は、第1液と第2液とを混合した直後の混合物についてB型粘度計を用いて測定した20℃における粘度が、10Pa・s以下であるのが好ましく、1〜9Pa・sであるのがより好ましい。
また、本発明の積層体に使用される二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物を20℃の環境下で7日間硬化させて平均膜厚2.0mmの塗膜とし、得られた塗膜を用いてJIS A 6021:2000に準じて測定した際の引裂強度は、14N/mm以上であるのが好ましい。
【0084】
本発明の積層体は、二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物から得られる塗膜の上に、さらに、ウレタンプレポリマーとMOCAとを含有するウレタン組成物から得られる塗膜を具備することができる。
【0085】
ウレタンプレポリマーとMOCAとを含有するウレタン組成物は、特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
ウレタン組成物に含有されるウレタンプレポリマーは、特に制限されない。例えば、上記と同様のものが挙げられる。
ウレタン組成物を二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物から得られる塗膜の上に施工する方法は、特に制限されない。例えば、上記と同様のものが挙げられる。
【0086】
ウレタン組成物を硬化させることによって、二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物から得られる塗膜の上にウレタン組成物の塗膜を設けることができる。
【0087】
本発明において、二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物から得られる塗膜とウレタン組成物から得られる塗膜とのはく離強度は、次のように測定した。
まず、コンクリートの表面の縦30cm、横30cmの範囲内にクシ目ゴテで1層目ウレタン塗膜として、二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物を塗布し(塗装厚み約2mm)、20℃、55%RHの条件下で15時間養生させ、養生後、1層目ウレタン塗膜の上に、さらに、ウレタンプレポリマーとMOCAとを含有するウレタン組成物(2層目ウレタン塗膜となる。)を塗布し(塗装厚み約2mm)、20℃、55%RHの恒温槽に入れて168時間養生させ、養生後、2層目ウレタン塗膜を1層目ウレタン塗膜から180°の角度ではく離させて、はく離強度をオートグラフを用いて引張速度50mm/分で測定した。
【0088】
二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物から得られる塗膜とウレタン組成物から得られる塗膜とのはく離強度は、3N/cm以上であるのが好ましく、5N/cm以上であるのがより好ましい。二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物から得られる塗膜とウレタン組成物から得られる塗膜とのはく離強度が3N/cm以上である場合、打ち継ぎ性に優れると言い得る。
【0089】
本発明の積層体は、二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物から得られる塗膜、またはウレタン組成物から得られる塗膜の上に、さらに、塗装面に光沢等を与えるためのトップコートを塗装して防水塗膜層を形成することができる。
トップコートは特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
また、補強のために、ガラスクロスを塗膜間または塗膜上に貼ることができる。
本発明の積層体は、打ち継ぎ性、耐熱性、機械的強度、防水効果に優れる。
【0090】
本発明者は、イソシアネートの架橋剤としてのトルエンジアミン構造を含むジアミン化合物と、組成物の粘度を低減させるための、DOP、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジイソノニルアジペート(DINA)のような可塑剤とを含有する第2液とを有するウレタン組成物を硬化させることによって得られるウレタン防水材は、打ち継ぎ性に改善の余地があることを見出した。
また、本発明者は、可塑剤として特定のエステル化合物を添加することによって、粘度が低く打ち継ぎ性に優れる組成物が得られることを見出したが、このような組成物には硬化性に改善の余地があることをさらに見出した。
そこで、本発明者は、ジアミン化合物の量を特定することによって、エステル化合物の添加により生じる硬化性の低下を防ぎ、組成物の硬化性が従来よりも優れたものとなることを見出して、本発明を完成させたのである。
【実施例】
【0091】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
【0092】
1.成分の調製
(1)ウレタンプレポリマー
数平均分子量4000のポリプロピレントリオール100g(T4000、旭硝子社製)と、数平均分子量2000のポリプロピレンジオール150g(D2000、旭硝子社製)とを反応容器に入れて、粘度調節のために可塑剤としてフタル酸ジイソノニル15g(DINP、ジェイ・プラス社製)を加え、110℃に加熱し、6時間脱水処理した。次いで、ここにトリレンジイソシアネート(コスモネートT80、三井武田ケミカル社製)をNCO基/OH基の当量比が1.98となるように加え、これを80℃に加熱し、窒素雰囲気下で12時間混合、かくはんし、ウレタンプレポリマーを調製した。得られたウレタンプレポリマーのNCO基の含有量は、ウレタンプレポリマー全量中、3.0質量%であった。
【0093】
(2)エステル化合物2〜4
(i)エステル化合物2
撹拌機、還流冷却機、温度計、圧力計、加熱装置などを装備した、容量が2リットルのガラス製反応器に、フマル酸585g、トリエチレングリコール568g、2−エチルヘキサノール493gを仕込み、反応器の空間部を窒素ガスで置換した後、反応器内容物の加熱を開始した。反応器内温が150℃に達した時点で、副生水の留出が始まった。その後、3時間かけて内温を200℃に昇温した後、触媒としてテトライソプロピルチタネート0.3gを反応器内に添加して、反応終了までこの温度を保持した。一方、反応器内の圧力は、内温が150℃の時点から内温が200℃に達するまでは、93.3kPaに維持した。その後、3時間かけて徐々に減圧して、13.3kPaとし、さらに4時間かけて徐々に減圧して、4.0kPaとし、未反応の2−エチルヘキサノールを抜き出しつつ、エステル化反応が終了するまでこの圧力を保持した。反応の進行に伴い、反応混合物は均一な溶液になることが目視観察された。反応進行中に、反応混合物の一部を反応器から抜き出して、抜き出した試料につき、酸価を測定してエステル化反応の進行状況確認の指標とした。エステル化反応の終了は、酸価が3.0程度となり、かつ反応混合物が均一な溶液となった時点とした。エステル化反応終了後、1時間かけて0.7kPaまで減圧し、未反応の2−エチルヘキサノールの留去を行った後に加熱を停止して100℃付近まで冷却し、反応生成物を抜き出した。得られた反応生成物をエステル化合物2とする。
【0094】
(ii)エステル化合物3
仕込原料において、フマル酸をコハク酸534gと、トリエチレングリコールを340gと、2−エチルヘキサノールを884gと代える他は、エステル化合物2と同様に反応を行い、反応生成物を得た。得られた反応生成物をエステル化合物3とする。
【0095】
(iii)エステル化合物4
仕込原料において、フマル酸をコハク酸682gと、トリエチレングリコールを650gと、2−エチルヘキサノールを564gと代える他は、エステル化合物2と同様に反応を行い、反応生成物を得た。得られた反応生成物をエステル化合物4とする。
【0096】
2.評価
得られた二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物を用いて、硬化性、可使時間、粘度、打ち継ぎ性および引裂強度を以下のとおり評価した。結果を第1表に示す。
【0097】
(1)硬化性
得られた組成物を100ccのポリカップに厚さ1cm〜2cmになるように流し込み、5℃で16時間硬化させて塗膜を得た。得られた塗膜のJIS A硬度を測定した。
硬化性の評価基準は、JIS A硬度が10以上である場合硬化性に優れるとした。
【0098】
(2)可使時間
20℃において、第1液と第2液とを混合した後、得られた混合物の粘度が30Pa・sとなるまでの時間(単位:分)を測定した。
可使時間の評価基準は、可使時間が15分以上である場合十分な長さの可使時間であるとした。
【0099】
(3)粘度
第1液と第2液とを混合し、混合開始から3分後の20℃における粘度を、B型粘度計を用いて測定した。
粘度の評価基準は、10Pa・s以下の場合を良好とする。
【0100】
(4)打ち継ぎ性
コンクリートの表面の縦30cm、横30cmの範囲内にクシ目ゴテで1層目ウレタン塗膜として、得られた二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物を塗布し(塗装厚み約2mm)、20℃、55%RHの条件下で15時間養生させた。養生後、1層目ウレタン塗膜の上に、さらに、第2液にMOCAを含有する二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物(商品名:U−8000、横浜ゴム社製。2層目ウレタン塗膜となる。)180gを塗布し(塗装厚み約2mm)、20℃、55%RHの恒温槽に入れて168時間養生させた。
養生後、2層目ウレタン塗膜を1層目ウレタン塗膜の面から180°の角度ではく離させて、はく離強度をオートグラフを用いて引張速度50mm/分で測定した。
なお、1層目ウレタン塗膜の上に2層目ウレタン塗膜用の組成物を塗布する際、1層目ウレタン塗膜の端部に離型紙を置いて2層目ウレタン塗膜用の組成物を塗布し、はく離の際2層目ウレタン塗膜端部をつかんで1層目ウレタン塗膜と2層目ウレタン塗膜とをはく離させた。
打ち継ぎ性の評価基準は、はく離強度が3N/cm以上またはCF(凝集破壊)である場合を打ち継ぎ性が良好であるとした。
【0101】
(5)引裂強度
ガラス板に離型剤を塗り、その上に得られた組成物を2mm厚となるように塗布し、20℃の環境下で7日間硬化させて塗膜とし、得られた塗膜を用いてJIS A 6021:2000に準じて引裂強度を測定した。
引裂強度の評価基準は、14N/mm以上の場合を良好とした。
【0102】
3.実施例
(1)第2液がエステル化合物1または2を含む二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物の調製
下記第1表に示す成分を第1表に示す量比(質量部)で使用し、これらを電動かくはん機等を用いて十分に混合して第2液を調製した。
第1液として上記のとおり調製したウレタンプレポリマー100質量部と、上記のとおり調製した第2液の100質量部とを電動かくはん機等を用いて十分に混合することにより二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物を得た。
【0103】
【表1】

【0104】
【表2】

【0105】
第1表に示されている各成分は、以下のとおりである。
・ポリプロピレンエーテルポリオール1:エチレンオキシドが質量換算で13〜14%付加された、数平均分子量が約5000のポリプロピレンエーテルポリオール(サンニックスFA703、三洋化成工業社製。以下同様。)
・ポリプロピレンエーテルポリオール2:数平均分子量が約2000のポリプロピレンジオール(EXCENOL 2020、旭硝子社製。以下同様。)
・炭酸カルシウム:重質炭酸カルシウム、商品名スーパーSS、丸尾カルシウム社製。以下同様。
・ジアミン化合物:3,5−ジメチルチオ−2,4−トルエンジアミン80質量%と3,5−ジメチルチオ−2,6−トルエンジアミン20質量%との混合物(エタキュアー300、エチルコーポレーション社製。以下同様。)
【0106】
・酸化チタン:石原産業社製。以下同様。
・カーボンブラック:三菱カーボンブラックMA220、三菱化学社製。以下同様。
・疎水性シリカ:AEROSIL R972、日本アエロジル社製。以下同様。
・酸触媒:オクチル酸、日本化学産業社製。以下同様。
・ポリブタジエンポリオール:R45HT、出光石油化学社製。以下同様。
・分散剤:フローレンG700、共栄社化学社製。以下同様。
・溶剤:ミネラルスピリット、新日本石油社製。以下同様。
【0107】
・バルーン:平均粒子径13.6μm、比重0.05のアクリロニトリル共重合体をシェルとするバルーン。以下同様。
・表面改質剤:フローレンNAF−850(特殊ポリメタクリレート:3−メチル−3−メトキシブタノール=40:30)、共栄社化学社製。以下同様。
・エステル化合物1:下記式(3)で表されるフマル酸−ジ−2−エチルヘキシル(フマル酸ジオクチル)(MW340、MAXIMOL FOK−670、川崎化成工業社製)
・エステル化合物2:上述のようにして得たエステル化合物2。エステル化合物2は下記式(4)で表される化合物(式中、m=3、n=3、なおm、nの値は平均組成である。MW1030、フマル酸/トリエチレングリコール/2−エチルヘキサノールから得られるエステル化合物)である。
【0108】
【化5】

【0109】
第1表に示す結果から明らかなように、比較例1の組成物(イソシアネート基/アミノ基が5.0より大きい:5.05)は、JIS A硬度が10未満で硬化性が悪かった。
比較例2の組成物(イソシアネート基/アミノ基が0.8より小さい:0.77)は、可使時間が15分未満であり硬化性が悪かった。
比較例3の組成物(イソシアネート基/アミノ基が0.8より小さく:0.76、エステル化合物の量が比較例2より多い。)は、機械的強度が低かった。
これらに対して、本発明の組成物(実施例1−1〜1−9)は、可使時間が長く、短時間で高い硬度を有する塗膜となり、組成物の粘度が低く、機械的強度が高かった。
また、本発明の積層体(実施例1−1〜1−9)は、打ち継ぎ性に優れた。
【0110】
(2)第2液がエステル化合物3または4を含む二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物の調製
エステル化合物をエステル化合物3または4に代えるほかは、第2液がエステル化合物1または2を含む二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物と同様にして第2液を調製した。第2液に使用した成分およびその量を第2表に示す。
また、二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物の調製およびその評価を上記と同様にして行った。評価の結果を第2表に示す。
【0111】
【表3】

【0112】
【表4】

【0113】
第2表において示される成分の詳細は次のとおりである。
・エステル化合物3:上述のようにして得たエステル化合物3。エステル化合物3は下記式(5)で表される化合物(式中、m=1、n=3、なおm、nの値は平均組成である。MW570、コハク酸/トリエチレングリコール/2−エチルヘキサノールから得られるエステル化合物)である。
・エステル化合物4:上述のようにして得たエステル化合物4。エステル化合物4は下記式(5)で表される化合物(式中、m=3、n=3、なおm、nの値は平均組成である。MW1040、コハク酸/トリエチレングリコール/2−エチルヘキサノールから得られるエステル化合物)である。
なお、エステル化合物3、4以外の成分は上記第1表と同様である。
【0114】
【化6】

【0115】
第2表に示す結果から明らかなように、比較例4の組成物(イソシアネート基/アミノ基が5.0より大きい)は、JIS A硬度が10未満で硬化性が悪かった。
比較例5の組成物(イソシアネート基/アミノ基が0.8より小さい:0.77)は、可使時間が15分未満であり硬化性が悪かった。
比較例6の組成物(イソシアネート基/アミノ基が0.8より小さく:0.76、エステル化合物の量が比較例5より多い。)は、機械的強度が低かった。
これらに対して、本発明の組成物(実施例2−1〜2−8)は、可使時間が長く、短時間で高い硬度を有する塗膜となり、組成物の粘度が低く、機械的強度が高かった。
また、本発明の積層体(実施例2−1〜2−8)は、打ち継ぎ性に優れた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリレンジイソシアネートとポリオールとを反応させることによって得られるウレタンプレポリマーを含有する第1液と、下記式(1)で表される基を含み活性水素を含まないエステル化合物と、トルエンジアミン構造を含むジアミン化合物と、酸触媒とを含有する第2液とを有する二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物であって、
前記ジアミン化合物のアミノ基に対する前記ウレタンプレポリマーのイソシアネート基の比が、当量比で前記イソシアネート基/前記アミノ基=0.8〜5.0である二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物。
【化1】


(式中、R1は単結合または炭素原子数1〜4の炭化水素基であり、前記炭化水素基は不飽和結合を含んでもよい。)
【請求項2】
前記エステル化合物の分子量が、1000以下である請求項1に記載の二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物。
【請求項3】
前記エステル化合物の含有量が、前記第2液全量の1〜8質量%である請求項1または2に記載の二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物。
【請求項4】
前記ジアミン化合物が、ジメチルチオトルエンジアミンである請求項1〜3のいずれかに記載の二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物。
【請求項5】
前記酸触媒の含有量が、前記第2液全量の0.05〜5質量%である請求項1〜4のいずれかに記載の二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物。
【請求項6】
コンクリートまたはシートと、前記コンクリートまたは前記シートの上にある請求項1〜5のいずれかに記載の二液常温硬化型ウレタン塗膜防水材組成物から得られる塗膜とを具備する積層体。
【請求項7】
前記塗膜の上に、ウレタンプレポリマーと4,4−メチレンビス(2−クロロアニリン)とを含有するウレタン組成物から得られる塗膜を具備する請求項6に記載の積層体。

【公開番号】特開2008−144106(P2008−144106A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−335705(P2006−335705)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【出願人】(000199795)川崎化成工業株式会社 (133)
【Fターム(参考)】