説明

二環式アリールおよびヘテロアリール受容体モジュレーター

式(I):


(I)
の化合物またはその医薬的に許容される塩は、オピオイド受容体モジュレーター、たとえばμ−オピオイド受容体拮抗剤、中性拮抗剤または逆作用剤であり、とりわけ肥満症の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肥満症の治療に有用な、オピオイド受容体モジュレーターである二環状アリールおよびヘテロアリール化合物、たとえばμ−オピオイド受容体拮抗剤を対象とする。
【背景技術】
【0002】
肥満症は、身体サイズに対して過剰な脂肪組織量によって特徴づけられている。臨床的には、体脂肪量は、体重指数(BMI;重量(kg)/身長(m)2)または胴囲によって推定する。個体は、BMIが30より高く、過体重がもたらした医学的結果が確立されている場合に肥満とみなされる。体重の増加、特に腹部体脂肪の結果としての増加が、糖尿病、高血圧、心疾患、ならびに数々の他の健康合併症、たとえば、関節炎、脳卒中、胆嚢疾患、筋肉や呼吸器の問題、背痛およびさらには特定の癌の危険性の増加に関連していることは、ここしばらくの間認められている医学的見解である。
【0003】
肥満症を治療するための薬理学的手法は、主に、エネルギーの摂取と消費のバランスを変化させることによって脂肪量を減少させることに関するものである。多くの研究により、脂肪症とエネルギー恒常性の制御に関与している脳の回路網との間に関連性が明確に確立されている。直接および間接的な証拠により、セロトニン作動性、ドーパミン作動性、アドレナリン作動性、コリン作動性、内在性カンナビノイド、オピオイド、およびヒスタミン作動性の経路、ならびに多くの神経ペプチド経路(たとえば、神経ペプチドYおよびメラノコルチン)がエネルギーの摂取および消費の中央制御と関係していることが示唆されている。また、視床下部中枢も、体重の維持および脂肪症の度合に関与している末梢ホルモン、たとえば、インスリンおよびレプチン、ならびに脂肪組織由来ペプチドを感知することができる。
【0004】
新規抗肥満剤、特に良好な耐容性を示し、有害作用が少ないものの必要性が引き続き存在する。
μ−、κ−およびδ−オピオイド受容体はいくつかの病状に関連づけられており、その調節が治療行為の潜在的な標的である。
オピオイド受容体、特にμ−オピオイド受容体の拮抗剤は、肥満症の動物モデルにおいて体重を減少させることが示されている(J. Zhang et al、European Journal of Pharmacology、454 (2006) 147-152)。
【0005】
したがって、オピオイド受容体の拮抗剤は、肥満症および関連する障害、ならびに物質乱用、アルコール乱用、強迫性賭博、鬱病、アヘン剤過量、敗血症性ショック、過敏性腸症候群、嘔気、嘔吐および脳卒中を含めた他の疾患または障害の治療に有用であると示唆されている。
【0006】
(発明の概要)
式(I):
【化1】

(I)
の化合物、またはその医薬的に許容される塩は、オピオイド受容体モジュレーター、たとえばμ−オピオイド受容体拮抗剤、中性拮抗剤または逆作用剤であり、とりわけ肥満症の治療に有用である。
【0007】
(発明の詳細な説明)
本発明は、式(I):
【化2】

(I)
[式中、
XおよびYは共にCHであるか、またはXおよびYの一方はNで他方はCHであり;
Rは(CR78n6であり;
nは、0、1、2または3であり;
nが0である場合、R6はC3−C10シクロアルキルであり;
nが、1、2または3である場合、R6は、C6−C10アリール、C5−C10ヘテロアリール、C3−C10シクロアルキル、4〜7員酸素含有ヘテロ環またはC1−C6アルキルであり;
その中で、いずれのR6基も、C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ、C1−C6ハロアルキル、C1−C6ハロアルコキシおよびハロゲンから選択される1〜3個の置換基で適宜置換されており;
1は、水素、C1−C3アルキルまたはハロゲンであり;
2は、水素、C1−C3アルキルまたはハロゲンであり;
3およびR4は独立して、水素およびC1−C3アルキルから選択され;
5は、水素、C1−C6アルキルまたは−C2−C3アルキル−O−C1−C3アルキルであり;並びに
7およびR8は独立して、水素およびC1−C3アルキルから選択されるか、またはnが、2もしくは3である場合、R7およびR8のうち一つはヒドロキシであってもよいが、但し、該ヒドロキシ基は、N−R5に隣接する炭素に結合していない]
の化合物、またはその医薬的に許容される塩に関する。
【0008】
式(I)の化合物の分子量は、好ましくは800未満、より好ましくは600未満、さらにより好ましくは500未満である。
式(I)の化合物において:
1が水素以外である場合、R1は、好ましくは該アミド基に対してオルト位で該環接合部に対してパラ位の位置で結合しない。
nが0である場合、R6は、好ましくは適宜置換されたシクロヘキシルまたはインダニルである。
nが、1、2または3である場合、R7およびR8は、好ましくは水素またはC1−C3アルキル、より好ましくは水素である。
【0009】
nが1である場合、R6は、好ましくは適宜置換されたC6−C10アリール(例えばフェニル)、C5−C10ヘテロアリール(例えばベンゾチエニル、チエニル、インダゾールもしくはインドール)、またはC3−C10シクロアルキル(例えばシクロヘキシル)である。
nが2である場合、R6は、好ましくは適宜置換されたC6−C10アリール(例えばフェニル)、C5−C10ヘテロアリール(例えばベンゾチエニル、チエニル、インダゾールもしくはインドール)、C3−C10シクロアルキル(例えばシクロペンチル、シクロヘキシルもしくはアダマンチル)、C1−C6アルキルまたは4〜7員酸素含有ヘテロ環である。
nが3である場合、R6は、好ましくは適宜置換されたC6−C10アリール(例えばフェニル)、またはC3−C10シクロアルキル(例えばシクロヘキシル)である。
2は、好ましくは水素、メチルまたはハロ、例えばフルオロである。
【0010】
言及されうる式(I)の化合物の部分集合は、XおよびYが共にCHである場合、XがNでYがCHである場合、並びにXがCHでYがNである場合の化合物である。
XがNである場合、R2は、好ましくは水素またはメチルであり、XおよびYが共にCHである場合、R2は、好ましくは水素、メチルまたはフルオロであり、並びにYがNである場合、R2は、好ましくは水素またはメチルである。
3およびR4は、好ましくは水素である。
5は、好ましくは水素またはメチルである。
7およびR8は、好ましくは独立して、水素およびC1−C3アルキルから選択される。
言及されうる式(I)の化合物の特定の部分集合は:
1がヨードであり;または
2がヨードであり;または
3およびR4のうち一つがC2−C3アルキルであるか、またはR3およびR4がC1−C3アルキルであり;または
5が−C2−C3アルキル−O−C1−C3アルキルであり;または
Rが(CR78n6(式中、nは、1、2もしくは3である)であり、かつR6がC3−C10シクロアルキルであり;または
6が、二環式アリールまたは二環式ヘテロアリールであり;または
nが、2または3である場合、R7およびR8のうち一つはヒドロキシであってもよいが、但し、該ヒドロキシ基は、N−R5に隣接する炭素に結合しておらず;または
上記のいずれの組合せである場合の化合物である。
【0011】
それぞれの変数の好ましい基を、それぞれの変数について一般に別々に上述したが、本発明の好ましい化合物には、式(I)中のいくつかのまたはそれぞれの変数が、それぞれの変数の好ましい基から選択されるものが含まれる。したがって、本発明には、好ましい記載した基のすべての組合せが含まれることを意図する。
言及し得る本発明の具体的な化合物は、実施例中に含まれるものおよびその医薬的に許容される塩である。
【0012】
別段に記述しない限りは、本明細書中で使用する「アルキル」および接頭辞「アルク」を有する他の基、たとえば、アルコキシ、アルケニル、アルキニルなどとは、直鎖状もしくは分枝鎖状またはその組合せであり得る炭素鎖を意味する。アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−およびtert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチルなどが含まれる。「アルケニル」、「アルキニル」および他の同様の用語には、少なくとも1つの不飽和の炭素−炭素結合を有する炭素鎖が含まれる。
用語「ハロアルキル」には、1つまたは複数のハロ、たとえばフルオロ原子によって置換されたアルキル基、たとえば、CH2F、CHF2およびCF3が含まれる。用語「ハロアルコキシ」は、それに応じて解釈されるべきである。
用語「ハロ」には、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素原子が含まれる。
【0013】
用語「シクロアルキル」とは、ヘテロ原子を含まない炭素環を意味し、単環の一、二、および三環状の飽和炭素環、ならびに縮合および架橋系が含まれる。そのような縮合環系には、部分的にまたは完全に不飽和である1つの環、たとえばベンゼン環が含まれて、縮合環系、たとえばベンゾ縮合炭素環を形成することができる。シクロアルキルには、スピロ縮合環系などの縮合環系が含まれる。シクロアルキル環の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびデカヒドロナフチル、アダマンチル、インダニル、1,2,3,4−テトラヒドロナフチルなどが含まれる。
【0014】
用語「アリール」には、フェニルおよびナフチル、特にフェニルが含まれる。
用語「4〜7員酸素含有ヘテロ環」には、1つの酸素原子を含有する4〜7員飽和環が含まれる。ヘテロ環の例には、オキセタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランおよびオキセパンが含まれる。
【0015】
用語「ヘテロアリール」には、N、OおよびSから選択される4個までのヘテロ原子を含む、一および二環状の5〜10員、たとえば単環の5または6員のヘテロアリール環が含まれる。そのようなヘテロアリール環の例は、フリル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニルおよびトリアジニルである。二環状のヘテロアリール基には、5または6員のヘテロアリール環が縮合してフェニルまたは別の芳香族ヘテロ環式基となっている、二環状の芳香族ヘテロ環式基が含まれる。そのような二環状の芳香族ヘテロ環の例は、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリンおよびプリンである。
【0016】
本明細書中に記載した化合物は、1つまたは複数の不斉中心を含んでいてよく、したがって、鏡像異性体、ジアステレオマーおよび光学異性体を生じ得る。本発明には、すべてのそのような可能な鏡像異性体、ジアステレオマーおよびそのラセミ混合物、その実質的に純粋な分割された鏡像異性体、すべての可能な幾何異性体、ならびにその医薬的に許容される塩が含まれる。上記式(I)は、特定の位置の明確な立体化学なしで示している。本発明には、式(I)のすべての立体異性体およびその医薬的に許容される塩が含まれる。さらに、立体異性体の混合物および単離した特定の立体異性体も含まれる。そのような化合物を調製するために使用する合成手順の過程中、または当業者に知られているラセミ化もしくはエピマー化手順を使用する際に、そのような手順の生成物は、立体異性体の混合物であることができる。
【0017】
式(I)の化合物の互変異性体が存在する場合、そうでないと具体的に描くまたは記述した場合以外は、本発明には、任意の可能な互変異性体およびその医薬的に許容される塩、ならびにその混合物が含まれる。
式(I)の化合物およびその医薬的に許容される塩が溶媒和物の形態または多型体で存在する場合、本発明には、任意の可能な溶媒和物および多型体が含まれる。溶媒和物を形成する溶媒の種類は、溶媒が薬理学的に許容される限りは、特に限定されない。たとえば、水、エタノール、プロパノール、アセトンなどを使用することができる。
【0018】
用語「医薬的に許容される塩」とは、製薬上許容される無毒性の塩基または酸から調製した塩をいう。本発明の化合物が酸性である場合、その対応する塩は、無機塩基および有機塩基を含めた製薬上許容される無毒性の塩基から、好都合に調製することができる。そのような無機塩基に由来する塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅(二価および一価)、三価鉄、二価鉄、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛などの塩が含まれる。特に好ましいのは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウムおよびナトリウムの塩である。製薬上許容される有機の無毒性の塩基に由来する塩には、第一級、第二級、および第三級アミン、ならびに環状アミンおよび置換アミン、たとえば天然に存在するおよび合成の置換アミンの塩が含まれる。それから塩を形成することができる他の製薬上許容される有機の無毒性の塩基には、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N’,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどが含まれる。
【0019】
本発明の化合物が塩基性である場合、その対応する塩は、無機および有機酸を含めた製薬上許容される無毒性の酸から、好都合に調製することができる。そのような酸には、たとえば、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、シュウ酸、パモン酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸などが含まれる。
【0020】
式(I)の化合物は医薬的使用を意図するため、これは、好ましくは、実質的に純粋な形態、たとえば少なくとも60%純粋、より適切には少なくとも75%純粋、特に少なくとも95%または98%純粋な形態で提供する(%は重量に対する重量を基準とする)。
式(I)の化合物は、以下に記載のように調製することができる。
式(I)の化合物は、スキーム1に例示した方法を用いて調製することができる:
スキーム1
【化3】

【0021】
式(II、W=BrまたはI)のハロゲン化アルデヒド類は、市販品として入手可能であるか、または官能基の相互変換を通して容易に合成されうる(スキーム3)。ボロン酸またはエステル類(III)は、市販品として入手可能であるか、または公知の化学を用いてハロゲンをボロン酸エステルに変換することによって得られうる(スキーム4)。ジメトキシエタンおよびエタノールのような溶媒中、パラジウム触媒(例えばビス(トリフェニルホスフィノ)パラジウムジクロリド)および塩基(例えば炭酸ナトリウム水)の存在下、高温で、式(III)のボロン酸またはエステルを式(II)のハロゲン化アリールで処理することによって、式(IV)のビアリールアルデヒド類がもたらされる。メタノールのような溶媒中のアミンおよび水素化ホウ素ナトリウムのような還元剤による式(IV)のアルデヒドの還元的アミノ化によって、式(I)の化合物(式中、R3、R4およびR5はすべて水素である)が得られる。公知の方法によって後にアミド官能基に変換されうるアミドの代わりに、別の基、例えば、ニトリルを用いてもよい。
【0022】
また、式(I)の化合物を、スキーム2で説明される方法を用いて製造してもよい:
スキーム2
【化4】

【0023】
式(V、R=Hまたはアルキル)のボロン酸アルデヒド(boronate aldehyde)は、市販品として入手可能であるか、または官能基の相互変換によって製造されうる(スキーム3)。式(VI、W=BrまたはI)のハロゲン化ベンズアミドは、市販品として入手可能であるか、または公知の方法によって合成されうる。スキーム1に記載した方法を用いて、式(V)のボロン酸および式(VI)のハロゲン化アリールを式(IV)のビスアリール類に変換し、次いで式(I)の化合物(式中、R3、R4およびR5はすべて水素である)まで変換してもよい。
【0024】
例えば、THFのような溶媒中、低温で、式(VII、X1=BrまたはI)のハロゲン化前駆体をブチルリチウムで処理し、DMFでクエンチすることによって、式(VIII、W1=Br、IまたはB(OR)2)のアルデヒド類を製造してもよい。あるいは、式(VII、X1=CN、W1=Br、IまたはB(OR)2)のニトリル類を、トルエンのような溶媒中、水素化ジイソブチルアルミニウムで処理して、式(VIII)のアルデヒド類を得てもよい。
スキーム3
【化5】

【0025】
例えば、式(IX、W2=OSO2CF3、またはXI、W2=OSO2CF3、Z=CNもしくはCONH2)のアリールトリフレートまたは式(IX、W2=BrもしくはI、またはXI、W2=BrもしくはI、Z=CNもしくはCONH2)のハロゲン化アリールを、DMFのような溶媒中、ビス(ピナコラト)ジボロンのような試薬およびパラジウム触媒(例えば酢酸パラジウム)およびビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウムジクロリドで処理することによって、式(X、R1=アルキルまたはXII、R1=アルキル、Z=CNまたはCONH2)のボロン酸エステル類を製造してもよい。式(XまたはXII、R=H)のボロン酸類を、公知の方法を用いてボロン酸エステルから製造してもよい。
スキーム4
【化6】

【0026】
あるいは、式(IV)のアルデヒドを、メタノールのような溶媒中、アンモニアもしくはアンモニアと同等のものおよび水素化ホウ素ナトリウムのような還元剤で処理して、式(XIII)のベンジルアミンを得てもよく、次いでそれを、水素化ホウ素ナトリウムのような還元剤とともに、メタノールのような溶媒中、アルデヒドで処理することによって、式(I)の化合物に変換してもよい。
スキーム5
【化7】

【0027】
式(XVI)の化合物を、スキーム6で概説される手順によって製造してもよい。
スキーム6
【化8】

【0028】
式(XIV、W=BrまたはI)のケトン類は、市販品として入手可能であるか、または公知の方法によって容易に合成されうる。ジメトキシエタンおよびエタノールのような溶媒中、パラジウム触媒(例えばビス(トリフェニルホスフィノ)パラジウムジクロリド)および塩基(例えば炭酸ナトリウム水)の存在下、高温で、式(XIV)のケトンを式(III)のボロン酸で処理することによって、式(XV)のビアリールケトン類がもたらされる。メタノールのような溶媒中、アミンおよび還元剤(例えば水素化ホウ素ナトリウム)による式(XV)のケトンの還元的アミノ化によって、式(XVI)の化合物が得られる。
【0029】
式(XX)の化合物を、スキーム7で概説される手順によって製造してもよい。
スキーム7
【化9】

【0030】
式(I)の化合物において、R3基がメチルである場合、式(XIV、W=BrまたはI)のケトン類を、THFのような溶媒中、有機金属試薬(例えば臭化メチルマグネシウム)で処理して、式(XVII)のアルコール類を得てもよい。式(XVII)のアルコール類を、DCMのような溶媒中、塩化チオニルのような試薬で塩素化して、式(XVIII)の塩化物を得てもよく、次いでそれを、DCMのような溶媒中の目的のアミン類およびトリエチルアミンのような塩基で処理して、式(XIX)のベンジルアミン類を得てもよい。次いでジメトキシエタンおよびエタノールのような溶媒中、パラジウム触媒(例えばビス(トリフェニルホスフィノ)パラジウムジクロリド)および塩基(例えば炭酸ナトリウム水)の存在下、高温で、ベンジルアミン類(XIX)をボロン酸で処理して、式(XX)の化合物を得てもよい。
【0031】
式(I)の化合物の調製に関するさらなる詳細は、実施例で述べる。
式(I)の化合物は、単独で、または少なくとも2、たとえば5〜1,000個の化合物、より好ましくは10〜100個の式(I)の化合物を含む化合物ライブラリとして調製し得る。化合物ライブラリは、溶液または固相化学のどちらかを用いて、当業者に知られている手順を用いて、コンビナトリアル「スプリットアンドミックス」手法によって、または複数の平行合成によって調製し得る。
【0032】
式(I)の化合物の合成中、中間体化合物中の不安定な官能基、たとえば、ヒドロキシ、カルボキシおよびアミノ基を保護し得る。保護基は、式(I)の化合物の合成中の任意の段階で除去してもよく、または、式(I)の最終化合物上に存在していてもよい。様々な不安定な官能基を保護し得る方法および生じた保護誘導体を切断する方法の包括的な記述は、たとえば、Protective Groups in Organic Chemistry、T.W. Greene and P.G.M. Wuts、(1991) Wiley-Interscience、New York、第2版に示されている。
【0033】
式(II)の化合物などの、上記定義した任意の新規中間体も、本発明の範囲内に含まれる。
式(I)の化合物について上述した優先度は、任意の中間体化合物にも適用される。
上述のように、式(I)の化合物は、たとえば肥満症を治療するための、オピオイド受容体モジュレーターとして有用である。そのような使用のためには、式(I)の化合物は、一般に、医薬組成物の形態で投与する。
本発明にはまた、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を、医薬的に許容される担体と組み合わせて含む、医薬組成物も包含される。
好ましくは、組成物は、医薬的に許容される担体と、無毒性の治療上有効な量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩とからなる。
【0034】
さらに、本発明はまた、医薬的に許容される担体と、無毒性の治療上有効な量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩とを含む、オピオイド受容体を調節することによって疾患を治療するため、たとえば肥満症の治療をもたらすための、医薬組成物も提供する。
医薬組成物は、所望により、他の治療的成分またはアジュバントを含み得る。組成物には、経口、直腸、局所的、ならびに非経口(皮下、筋肉内、および静脈内を含む)の投与に適した組成物が含まれるが、任意の場合における最適な経路は、具体的な宿主、ならびに活性成分を投与する状態の性質および重篤度に依存する。医薬組成物は、単位剤形で好都合に提示し、製薬分野で周知の方法のうちの任意のものによって調製し得る。
【0035】
実際には、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩は、活性成分として、製薬担体と密に混ざった混合物中で、慣用の製薬配合技術に従って合わせることができる。担体は、投与、たとえば経口または非経口(静脈内を含む)に所望される調製物の形態に応じて、様々な形態をとり得る。
【0036】
したがって、医薬組成物は、それぞれが事前に決定した量の活性成分を含む、カプセル、カシェ剤または錠剤などの、経口投与に適した別々の単位として提示することができる。さらに、組成物は、散剤として、顆粒として、液剤として、水性液体中の懸濁液として、非水性液体として、水中油型乳濁液として、または油中水型の液体乳濁液として、提示することができる。上述の一般的な剤形に加えて、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩はまた、徐放性手段および/またはデリバリー装置によっても投与し得る。組成物は、製薬的方法のうちの任意のものによって調製し得る。一般に、そのような方法には、活性成分を、1つまたは複数の必要な成分を構成する担体と会合させる工程が含まれる。一般に、組成物は、活性成分を液体担体もしくは微粉固体担体または両方と、均一かつ密に混合することによって調製する。その後、生成物を所望の提示形態へと好都合に形成することができる。
【0037】
式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩はまた、1つまたは複数の他の治療上活性のある化合物と組み合わせて、医薬組成物中に含めることができる。
用いる製薬担体は、たとえば、固体、液体、または気体であることができる。固体担体の例には、ラクトース、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、およびステアリン酸が含まれる。液体担体の例は、液糖、ピーナッツ油、オリーブ油、および水である。気体担体の例には、二酸化炭素および窒素が含まれる。
【0038】
経口剤形用の組成物を調製する際、任意の好都合な製薬媒体を用い得る。たとえば、水、グリコール、油、アルコール、香味料、保存料、着色料などを用いて、懸濁液、エリキシルおよび液剤などの経口液体調製物を形成し得る一方で、デンプン、糖、結晶セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などの担体を用いて、散剤、カプセルおよび錠剤などの経口固体調製物を調製し得る。その投与が容易なことから、錠剤およびカプセルが好ましい経口単位用量であり、そのために固体製薬担体を用いる。所望により、錠剤を標準の水性または非水性技術によってコーティングし得る。
【0039】
本発明の組成物を含む錠剤は、圧縮または成形によって、所望により1つまたは複数の補助成分またはアジュバントと共に調製し得る。圧縮錠剤は、適切な機械で、散剤または顆粒などの易流動形態の活性成分を、所望により結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、界面活性または分散剤と混合して圧縮することによって、調製し得る。すりこみ錠は、適切な機械で、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を成形することによって、作製し得る。それぞれの錠剤は、好ましくは約0.05mg〜約5gの活性成分を含み、それぞれのカシェ剤またはカプセルは、好ましくは約0.05mg〜約5gの活性成分を含む。
【0040】
たとえば、ヒトに経口投与することを意図した配合物は、約0.5mg〜約5gの活性剤を、全組成物の約5〜約95%で変動し得る適切かつ好都合な量の担体物質と複合して含み得る。単位剤形は、一般に約1mg〜約2g、典型的には25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、800mg、または1000mgの活性成分を含む。
【0041】
非経口投与に適した本発明の医薬組成物は、活性化合物の水中の溶液または懸濁液として調製し得る。たとえばヒドロキシプロピルセルロースなどの適切な界面活性物質を含めることができる。分散液もまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、および油中のその混合物中で調製することができる。さらに、微生物の有害な成長を防止するために、保存料を含めることができる。
【0042】
注射使用に適した本発明の医薬組成物には、無菌的な水溶液または分散液が含まれる。さらに、組成物は、そのような無菌的な注射用液剤または分散液を即時調製するための、無菌的散剤の形態であることができる。すべての場合で、最終的な注射形態は無菌的でなければならず、容易に注射できるように有効に流動でなければならない。医薬組成物は、製造および保存の条件下で安定でなければならず、したがって、好ましくは、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されているべきである。担体は、たとえば、水、エタノール、ポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)、植物油、ならびにその適切な混合物を含む、溶媒または分散媒であることができる。
【0043】
本発明の医薬組成物は、たとえば、エアロゾル、クリーム、軟膏、ローション、粉剤などの、局所的使用に適した形態であることができる。さらに、組成物は、経皮装置で使用するために適した形態であることができる。これらの配合物は、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を使用して、慣用の加工方法によって調製し得る。一例として、クリームまたは軟膏は、親水性物質および水を、約5重量%〜約10重量%の化合物と一緒に混合して、所望の粘稠度を有するクリームまたは軟膏を生成することによって、調製する。
【0044】
本発明の医薬組成物は、直腸投与に適した形態であることができ、担体は固体である。混合物が単位用量の坐薬を形成することが好ましい。適切な担体には、カカオ脂および当分野で一般的に使用される他の物質が含まれる。坐薬は、最初に組成物を軟化または融解した担体(複数可)と混合し、続いて、鋳型内で冷却および成形することによって、好都合に形成し得る。
前述の担体成分に加えて、上述の製薬配合物には、必要に応じて、希釈剤、バッファー、香味料、結合剤、表面活性剤、シックナー、潤滑剤、保存料(抗酸化剤を含む)などの1つまたは複数の追加の担体成分を含み得る。さらに、配合物を意図するレシピエントの血液と等張にするために、他のアジュバントを含めることができる。
【0045】
式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む組成物はまた、粉末または液体濃縮物の形態でも調製し得る。
一般に、0.01mg/kg〜約150mg/kgの体重/日の桁の用量レベル、あるいは約0.5mg〜約7g/患者/日が、上述した状態の治療に有用である。たとえば、肥満症は、約0.01〜50mgの化合物/体重1キログラム/日、あるいは約0.5mg〜約3.5g/患者/日を投与することによって、有効に治療し得る。
【0046】
しかし、任意の特定の患者の具体的な用量レベルは、年齢、体重、全体的な健康、性別、食習慣、投与時間、投与経路、排泄速度、薬物の組合せおよび治療を受ける特定の疾患の重篤度を含めた、様々な要素に依存することを理解されたい。
式(I)の化合物は、オピオイド受容体が役割を果たす疾患または症状の治療で使用し得る。
【0047】
したがって、本発明はまた、治療が必要な患者に、有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を投与する工程を含む、オピオイド受容体が役割を果たす疾患または症状を治療する方法も提供する。
オピオイド受容体が役割を果たす疾患または症状には、肥満症が含まれる。本出願のコンテキストでは、肥満症の治療とは、肥満症および過剰な食物摂取に関連する他の摂食障害などの疾患または症状を、たとえば食欲および体重の減少、減量の維持ならびにリバウンドの防止によって治療することを包含することを意図する。
【0048】
本発明の化合物はまた、代謝性疾患、たとえば、II型糖尿病、代謝症候群(症候群X)、耐糖能異常、異常脂質血症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDLレベルおよび高血圧などの代謝性疾患を含めた、肥満症に関連する他の疾患の治療にも使用し得る。
オピオイド受容体が役割を果たす他の疾患または症状には、物質乱用、アルコール乱用、強迫性賭博、鬱病、アヘン剤過量、敗血症性ショック、過敏性腸症候群、嘔気、嘔吐および脳卒中が含まれる。
本発明はまた、治療が必要な患者に、有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を投与する工程を含む、摂食および/または満腹感を制御する方法も提供する。
【0049】
本発明はまた、治療が必要な患者に、有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を投与する工程を含む、肥満症を治療する方法も提供する。
本発明はまた、治療が必要な患者に、有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を投与する工程を含む、II型糖尿病、代謝症候群(症候群X)、耐糖能異常、異常脂質血症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDLレベルおよび高血圧から選択される代謝性疾患を治療する方法も提供する。
本発明はまた、上に定義した状態の治療における、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩の使用も提供する。
【0050】
本発明はまた、上に定義した状態を治療する医薬品の製造における、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩の使用も提供する。
本発明の方法では、用語「治療」には、治療的および予防的処置がどちらも含まれる。
式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩は、単独で、または1つもしくは複数の他の治療上活性のある化合物を組み合わせて投与し得る。他の治療上活性のある化合物は、式(I)の化合物と同じ疾患もしくは状態、または異なる疾患もしくは状態を治療するためのものであり得る。治療上活性のある化合物は、同時に、逐次的にまたは別々に投与し得る。
【0051】
式(I)の化合物は、肥満症および/または糖尿病を治療するための他の活性化合物、たとえば、インスリンおよびインスリン類似体、胃リパーゼ阻害剤、膵臓リパーゼ阻害剤、スルホニル尿素および類似体、ビグアニド、α2作用剤、グリタゾン、PPAR−γ作用剤、RXR作用剤、脂肪酸酸化阻害剤、α−グルコシダーゼ阻害剤、β−作用剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤、抗高脂血症剤、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤、MCH−1拮抗剤、CB−1拮抗剤、GPR119作用剤、セロトニンおよびノルアドレナリン再取り込み阻害剤、アミリン拮抗剤、リポキシゲナーゼ阻害剤、ソモスタチン類似体、グルコキナーゼ活性化剤、グルカゴン拮抗剤、インスリンシグナル伝達作用剤、PTP1B阻害剤、糖新生阻害剤、抗脂肪分解剤、GSK阻害剤、ガラニン受容体作用剤、食欲抑制剤、CCK受容体作用剤、レプチン、セロトニン作動性/ドーパミン作動性抗肥満症薬、CRF拮抗剤、CRF結合タンパク質、甲状腺ホルモン様化合物、アルドースレダクターゼ阻害剤、糖質コルチコイド受容体拮抗剤、GLP−1作用剤、DPIV阻害剤、NHE−1阻害剤またはソルビトールデヒドロゲナーゼ阻害剤と共に投与し得る。
【0052】
それだけには限定されないが本明細書中で引用した特許および特許出願を含めたすべての出版物は、それぞれの個々の出版物を具体的かつ個別に、本明細書中に参考として組み込まれていると完全に記載した場合と同じように、本明細書中に参考として組み込まれている。
以下に、例示目的であり、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきでない以下の実施例を参照して、本発明を記載する。
【0053】
(実施例)
物質および方法:
SiO2(40〜63メッシュ)カラムクロマトグラフィを行った。0.1% HCO2Hを含有する(5% MeCNのH2O溶液)−MeCN溶液で6分かけて溶離するWaters Symmetry 3.5μ C18カラム(2.1×30.0mm、流速=0.8mL/分)および220nmでのUV検出を用いて、LCMSデータを得た。グラジエント情報:0.0〜1.2分:100%(5% MeCNのH2O溶液);1.2〜3.8分:10%(5% MeCNのH2O溶液)−90% MeCNまでの勾配;3.8〜4.4分:10%(5% MeCNのH2O溶液)−90% MeCNで保持;4.4〜5.5分:100% MeCNまでの勾配;5.5〜6.0分:100%(5% MeCNのH2O溶液)に戻す。陽(ES+)または陰(ESI-)イオンモードにおいてエレクトロスプレーイオン化源を用いて、質量スペクトルを得た。分子中に塩素が存在する場合、質量は35Clを用い、臭素が存在する場合、79Brを用いた。0.1容積%(% v/v) アンモニアを含有するH2O−MeCNグラジエントで12分かけて溶離するWaters Xterra MS C18、5μm(4.6×50mm、流速1.5mL/分)を215および254nmでのUV検出とともに用いて、別のLCMSデータ(LCMS法2)を得た。グラジエント情報:0.0〜8.0分:95% H2O−5% MeCNから5% H2O−95% MeCNまでの勾配;8.0〜9.9分:5% H2O−95% MeCNで保持;9.9〜10.0分:95% H2O−5% MeCNに戻す;10.0〜12.0分:95% H2O−5% MeCNで保持。陽(ESI+)または陰(ESI-)モードにおいてエレクトロスプレーイオン化源を用いて、質量スペクトルを得た。溶媒A(10% MeCN、90% 水)および溶媒B(90% MeCN、10% 水)で溶離するLunar 10μ ODS2(250×21.2mm;流速=20mL/分)および215nmでのUV検出を用いて、分取HPLC精製を行った。グラジエント情報:0.0〜0.2分:90% A、10% B;0.2〜10.0分:10% A、90% Bまでの勾配;10.0〜15.0分:10% A、90% B;15.0〜16.0分:90% A、10% Bに戻す。
【0054】
略語および頭字語:AcOH:酢酸;MeCN:アセトニトリル;NH3:アンモニア;DCM:ジクロロメタン;DAST:三フッ化ジエチルアミノ硫黄;DIBAL:水素化ジイソブチルアルミニウム;DIPEA:N,N−ジイソプロピルエチルアミン;DME:ジメトキシエタン;DMSO:ジメチルスルホキシド;DMF:N,N−ジメチルホルムアミド;Ether:ジエチルエーテル;EtOH:エタノール;EtOAc:酢酸エチル;HCl:塩化水素;MgSO4:硫酸マグネシウム;MeOH:メタノール;K2CO3:炭酸カリウム;rt:室温;RT:保持時間;Na2CO3:炭酸ナトリウム;NaHCO3:炭酸水素ナトリウム;NaOH:水酸化ナトリウム;THF:テトラヒドロフラン;TMEDA:テトラメチルエチレンジアミン;TFA:トリフルオロ酢酸;Et3N:トリエチルアミン
【0055】
製造1:4'−ホルミルビフェニル−3−カルボン酸アミド
【化10】

4−ブロモベンズアルデヒド(1.02g、5.6mmol)のトルエン(13mL)およびエタノール(13mL)溶液に、アルゴン下、(3−アミノカルボニルベンゼン)ボロン酸(1.0g、6.1mmol)を加え、続いてパラジウムテトラキストリフェニルホスフィン(0.64g、0.6mmol)およびNa2CO3(2M、13mL)を加えた。混合物を3時間90℃に加熱し、次いで室温に冷却した。EtOAc(175mL)およびTHF(175mL)を加え、有機物を、水(3×40mL)、食塩水(30mL)で洗浄し、乾燥した(MgSO4)。溶媒を減圧留去した。カラムクロマトグラフィ(0.4%NH3:4%MeOH:DCM)による精製によって、標題の化合物を得た:
RT = 3.07分; m/z (ES+) = 226.0 [M + H]+.
【0056】
製造2:ベンジル(4−イソプロピルシクロヘキシル)アミン
【化11】

実施例1で概説した手順を用いて、4−イソプロピルシクロヘキサノンおよびベンジルアミンを標題の化合物に変換した:
RT = 2.52分; m/z (ES+) = 232.1 [M + H]+.
【0057】
製造3:4−イソプロピルシクロヘキシルアミン塩酸塩
【化12】

ベンジル(4−イソプロピルシクロヘキシル)アミン(2.39g、10.7mmol)のTHF溶液(10mL)に、アルゴン下、パラジウム炭素(10%、1.14g、1.1mmol)を加えた。反応液を次いで水素雰囲気下で16時間撹拌した。セライトを通して混合物を濾過し、THF(50mL)で洗浄し、溶媒を減圧留去した。残渣をEtOAc(10mL)に溶解し、1M HClのエーテル溶液(5.3mL)を加えた。沈澱を濾去して、標題の化合物を得た:
RT = 2.25分; m/z (ES+) = 142.1 [M + H]+.
【0058】
製造4:ベンジル(4,4−ジメチルシクロヘキサ−2−エニル)アミン
【化13】

実施例1で概説した手順を用いて、4,4−ジメチル−2−シクロヘキセン−1−オンおよびベンジルアミンを標題の化合物に変換した:
RT = 2.39分; m/z (ES+) = 216.1 [M + H]+.
【0059】
製造5:4,4−ジメチルシクロヘキシルアミン塩酸塩
【化14】

製造3で概説した手順を用いて、ベンジル(4,4−ジメチルシクロヘキサ−2−エニル)アミンを標題の化合物に変換した:
RT = 1.75分; m/z (ES+) = 128.1 [M + H]+.
【0060】
製造6:3'−クロロ−4'−ホルミルビフェニル−3−カルボン酸アミド
【化15】

4−ブロモ−2−クロロベンゾニトリル(2.0g、9.2mmol)のトルエン溶液(50mL)に、アルゴン下−78℃で、DIBAL(1M トルエン溶液、13.9mL、13.9mmol)を加えた。混合物を4時間かけて−50℃に加温した。MeOH(4.5mL)および水(4.5mL)を加え、混合物を−50℃で10分間撹拌した。混合物を室温に加温し、HCl(2N)で酸性化し(pH<7)、EtOAc(200mL)および水(100mL)で抽出した。水相をEtOAc(2×50mL)でさらに抽出し、有機物を合わせて、次いで食塩水で洗浄し、乾燥した(MgSO4)。溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィ(25%DCM:イソヘキサン)によって精製して、4−ブロモ−2−クロロベンズアルデヒドを得た。4−ブロモ−2−クロロベンズアルデヒド(750mg、3.4mmol)のDME(22mL)およびEtOH(15mL)溶液に、3−カルボキシアミドベンゼンボロン酸(676mg、4.1mmol)およびNa2CO3溶液(2M、15mL)を加えた。混合物を通してアルゴンを15分間バブリングした。ビス(トリフェニルホスフィノ)パラジウムジクロリド(120mg、0.17mmol)を加え、反応液を6.5時間75℃に加熱し、次いで室温に冷却した。混合物を水(200mL)とEtOAc(200mL)の間で分液し、水相をEtOAc(2×50mL)で抽出し、有機物を合わせて、乾燥した(MgSO4)。溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィ(50%EtOAc:イソヘキサン〜100%EtOAc)によって精製して、標題の化合物を得た:
RT = 3.19分; m/z (ES+) = 301.0 [M + H + MeCN]+.
【0061】
製造7:3'−フルオロ−4'−ホルミルビフェニル−3−カルボン酸アミド
【化16】

製造6で概説した方法を用いて、4−ブロモ−2−フルオロベンズアルデヒドおよび3−カルボキシアミドベンゼンボロン酸を標題の化合物に変換し、それをさらに評価することなく用いた。
【0062】
製造8:3−(6−ホルミルピリジン−3−イル)ベンズアミド
【化17】

製造1で概説した方法を用いて、5−ブロモピリジン−2−カルボキシアルデヒドおよび3−カルボキシアミドベンゼンボロン酸を標題の化合物に変換した:
RT = 2.53分; m/z (ES+) = 227.0 [M + H]+.
【0063】
製造9:2'−フルオロ−4'−ホルミルビフェニル−3−カルボン酸アミド
【化18】

製造1で概説した方法を用いて、4−ブロモ−3−フルオロベンズアルデヒドおよび3−カルボキシアミドベンゼンボロン酸を標題の化合物に変換し、それをさらに評価することなく用いた。
【0064】
製造10:4'−ホルミル−2'−メチルビフェニル−3−カルボン酸アミド
【化19】

製造6で概説した方法を用いて、4−ブロモ−3−メチルベンゾニトリルおよび3−カルボキシアミドベンゼンボロン酸を標題の化合物に変換した:
RT = 3.01分; m/z (ES+) = 281.0 [M + H + MeCN]+.
【0065】
製造11:4'−ホルミル−3'−メチルビフェニル−3−カルボン酸アミド
【化20】

製造6で概説した方法を用いて、4−ブロモ−2−メチルベンゾニトリルおよび3−カルボキシアミドベンゼンボロン酸を標題の化合物に変換した:
RT = 3.11分; m/z (ES+) = 240.0 [M + H]+.
【0066】
製造12:3−(5−ホルミルピリジン−2−イル)ベンズアミド
【化21】

6−ブロモピリジン−3−カルボアルデヒド(1.41g、7.6mmol)のトルエン溶液(25mL)に、アルゴン下、パラジウムテトラキストリフェニルホスフィン(0.88g、0.8mmol)を加え、続いてNa2CO3(2M、13mL)、(3−アミノカルボニルベンゼン)ボロン酸(1.5g、9.1mmol)およびEtOH(13mL)を加えた。混合物を16時間75℃に加熱した。冷却した後、EtOAc(75mL)およびTHF(75mL)を加え、有機物を、水(3×50mL)、食塩水(50mL)で洗浄し、乾燥した(MgSO4)。溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィ(0.5%NH3:5%MeOH:DCM)によって精製して、標題の化合物を得た:
RT = 2.53分; m/z (ES+) = 227.0 [M + H]+.
【0067】
製造13:4−フルオロ−3−(5−ホルミルピリジン−2−イル)ベンズアミド
【化22】

6−ブロモ−3−ピリジンカルボキシアルデヒド(336mg、1.80mmol)のDME(8mL)およびEtOH(4mL)溶液に、アルゴン下、(5−カルバモイル−2−フルオロフェニル)ボロン酸(300mg、1.64mmol)を加え、続いてパラジウムテトラキストリフェニルホスフィン(190mg、0.16mmol)およびNa2CO3(2M、4mL)を加えた。混合物を16時間80℃に加熱し、次いで室温に冷却した。混合物を、EtOAc(50mL)、THF(50mL)およびNa2CO3(20mL)の間で分液した。水相をEtOAc(50mL)で抽出し、有機物を合わせて、食塩水(30mL)で洗浄し、乾燥した(MgSO4)。溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィ(0.4%NH3:4%MeOH:DCM)によって精製して、標題の化合物を得た:
RT = 2.50分; m/z (ES+) = 245.0 [M + H]+.
【0068】
製造14:3−(5−ホルミル−3−メチルピリジン−2−イル)ベンズアミド
【化23】

2,5−ジブロモ−3−メチルピリジン(2.5g、10.0mmol)のトルエン(120mL)およびTMEDA(1.95mL、13mmol)溶液に、アルゴン下−78℃で、2.5M n−BuLiのヘキサン溶液(4.9mL、12mmol)を滴下して加えた。混合物を−78℃で2時間撹拌し、次いでDMF(1mL、13mmol)を加えた。45分後、AcOH(10mL)を加え、混合物を室温に加温した。EtOAc(60mL)およびHCL(1N、50mL)を加え、混合物を16時間撹拌した。有機相を分離し、水相をEtOAc(2×60mL)で洗浄した。有機相を合わせて、NaHCO3(50mL)、食塩水(100mL)で洗浄し、乾燥し(MgSO4)、溶媒を減圧留去した。残渣をメタノール(50mL)に溶解し、1時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィ(15% EtOAc:イソヘキサン)によって精製して、2−ブロモ−5−ジメトキシメチル−3−メチルピリジンを得た。2−ブロモ−5−ジメトキシメチル−3−メチルピリジン(2.61g、10.8mmol)のDME(60mL)およびエタノール(40mL)溶液に、3−カルボキシアミドベンゼンボロン酸(1.94g、12.9mmol)およびNa2CO3(2M、40mL)を加えた。混合物を通してアルゴンを15分間バブリングした。ビス(トリフェニルホスフィノ)パラジウムジクロリド(0.76g、1.1mmol)を加え、反応液を6.5時間75℃に加熱した。反応液を冷却し、混合物を水(200mL)とEtOAc(200mL)の間で分液した。水相をEtOAc(2×50mL)で抽出し、有機相を合わせて、乾燥した(MgSO4)。溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィ(0.5%NH3:3%MeOH:DCM〜0.5%NH3:5%MeOH:DCM)によって精製して、3−(5−ジメトキシメチル−3−メチルピリジン−2−イル)ベンズアミドを得た。3−(5−ジメトキシメチル−3−メチルピリジン−2−イル)ベンズアミド(2.2g、7.7mmol)のDCM溶液(25mL)に、TFA(15mL)を加えた。10分後、水(15mL)を加え、混合物を64時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、残渣をEtOAc(100mL)とNaHCO3(50mL)の間で分液した。有機相を、水(50mL)、食塩水(50mL)で洗浄し、乾燥した(MgSO4)。溶媒を減圧留去して、標題の化合物を得た:
RT = 2.42分; m/z (ES+) = 241.0 [M + H]+.
【0069】
製造15:(6−ブロモピリジン−3−イルメチル)−(2−シクロヘキシルエチル)アミン
【化24】

実施例60で概説した手順を用いて、6−ブロモ−3−ピリジンカルボキシアルデヒドおよびシクロヘキシルアミンを標題の化合物に変換した:
RT = 2.49分; m/z (ES+) = 297.0 [M + H]+.
【0070】
製造16:4−クロロ−3−{5−[(2−シクロヘキシルエチルアミノ)メチル]ピリジン−2−イル}ベンゾニトリル
【化25】

製造13で概説した手順を用いて、(6−ブロモピリジン−3−イルメチル)−(2−シクロヘキシルエチル)アミンおよび2−クロロ−5−シアノフェニルボロン酸を標題の化合物に変換した:
RT = 2.79分; m/z (ES+) = 354.1 [M + H]+.
【0071】
製造17:3−ブロモ−4−メチルベンズアミド
【化26】

3−ブロモ−4−メチル安息香酸(1.5g、7.0mmol)の塩化チオニル溶液(10mL)を1時間80℃に加熱した。溶媒を減圧留去し、残渣をアルゴン下0℃でDCM(16mL)に溶解し、次いで塩化アンモニウム(410mg、7.7mmol)およびEt3N(2.43mL、17.4mmol)を加えた。反応液を0℃で15分間撹拌し、次いで16時間かけて室温に加温した。溶媒を減圧留去し、混合物をEtOAc(120mL)とNaOH(1M、60mL)の間で分液した。有機相を、NaOH(1M、60mL)、食塩水(60mL)で洗浄し、乾燥した(MgSO4)。溶媒を減圧留去した。エーテル、次いでMeOHでトリチュレートして、標題の化合物を得た:
RT = 2.78分; m/z (ES+) = 214.0 [M + H]+.
【0072】
製造18:4−メチル−3−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)ベンズアミド
【化27】

3−ブロモ−4−メチルベンズアミド(300mg、1.4mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(463mg、1.82mmol)、ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウムジクロリド(114mg、0.14mmol)および酢酸パラジウム(481mg、4.91mmol)を封管中10分間アルゴンでパージした。DMF(4.5mL)を加え、混合物を16時間70℃に加熱した。混合物を室温に冷却し、溶媒を減圧留去した。残渣をEtOAc(100mL)に溶解し、水(3×60mL)、食塩水(60mL)で洗浄し、乾燥した(MgSO4)。溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィ(5%MeOH:DCM)によって精製して、エーテル/イソヘキサンでトリチュレートした後、標題の化合物を得た:
RT = 3.16分; m/z (ES+) = 262.1 [M + H]+.
【0073】
実施例1:4'−[(4−メチルシクロヘキシルアミノ)メチル]ビフェニル−3−カルボン酸アミド
【化28】

4'−ホルミルビフェニル−3−カルボン酸アミド(700mg、3.1mmol)のメタノール溶液(15mL)に、モレキュラ・シーブス(4Å、700mg)および4−メチルシクロヘキシルアミン(421mg、3.7mmol)を加えた。混合物を16時間撹拌し、次いで水素化ホウ素ナトリウム(588mg、15.5mmol)を加えた。1時間後、水(10mL)を加え、セライトを通して混合物を濾過し、溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィ(0.5%NH3:6%MeOH:DCM)で精製することによって、標題の化合物を得た:
RT = 2.53分; m/z (ES+) = 323.0 [M + H]+.
【0074】
実施例1に記載した手順を用いて、4'−ホルミルビフェニル−3−カルボン酸アミド(製造1)および適当なアミンから実施例2〜33を製造した:
表1
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

*LCMS法2
【0075】
実施例34:4'−{[2−(4,4−ジフルオロシクロヘキシル)エチルアミノ]メチル}ビフェニル−3−カルボン酸アミド
【化29】

4'−ホルミルビフェニル−3−カルボン酸アミド(製造1、200mg、0.89mmol)のメタノール溶液(4mL)に、2−(1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカ−8−イル)エチルアミン(181mg、0.98mmol)を加えた。混合物をアルゴン下で16時間撹拌し、次いで水素化ホウ素ナトリウム(40mg、1.07mmol)を加えた。1時間後、水(0.5mL)を加え、溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィ(0.5%NH3:5%MeOH:DCM)に供して、4'−{[2−(1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカ−8−イル)エチルアミノ]メチル}ビフェニル−3−カルボン酸アミドおよび4'−{[2−(4−オキソシクロヘキシル)エチルアミノ]メチル}ビフェニル−3−カルボン酸アミドの分離できない混合物を得た。このクルードの混合物をアセトン(10mL)に溶解し、HCl(2M、5mL)を加え、混合物を室温で64時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、次いで混合物を水(50mL)で希釈し、EtOAc(2×40mL)で抽出した。有機物を合わせて、水(15mL)で洗浄し、水性画分を合わせて、NaOH(2M)を加えることによってpH 14に塩基性化した。水相をEtOAc(3×30mL)で抽出し、有機物を合わせて、食塩水(20mL)で洗浄し、乾燥した(MgSO4)。溶媒を減圧留去して、4'−{[2−(4−オキソ−シクロヘキシル)エチルアミノ]メチル}ビフェニル−3−カルボン酸アミドを得た。
【0076】
4'−{[2−(4−オキソシクロヘキシル)エチルアミノ]メチル}ビフェニル−3−カルボン酸アミド(50mg、0.14mmol)のDCM溶液(5mL)に、アルゴン下、DAST(187μL、1.4mmol)を加えた。4時間後、飽和NaHCO3(20mL)を加え、続いてDCM(30mL)を加え、混合物を15分間勢いよく撹拌した。層を分離し、水相をDCM(3×20mL)で抽出し、有機物を合わせて、食塩水で洗浄し、乾燥した(MgSO4)。溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィ(0.5%NH3:5%MeOH:DCM)によって精製して、標題の化合物を得た:
RT = 2.52分; m/z (ES+) = 373.1 [M + H]+.
【0077】
実施例1に記載した手順を用いて、3'−フルオロ−4'−ホルミルビフェニル−3−カルボン酸アミド(製造7)もしくは3'−クロロ−4'−ホルミルビフェニル−3−カルボン酸アミド(製造6)および適当なアミンから実施例35〜38を製造した:
表2
【表2】

【0078】
実施例1に記載した手順を用いて、3−(6−ホルミルピリジン−3−イル)ベンズアミド(製造8)および適当なアミンから実施例39〜42を製造した:
表3
【表3】

【0079】
実施例1に記載した手順を用いて、2'−フルオロ−4'−ホルミルビフェニル−3−カルボン酸アミド(製造9)および適当なアミンから実施例43〜45を製造した:
表4
【表4】

【0080】
実施例1に記載した手順を用いて、4'−ホルミル−2'−メチルビフェニル−3−カルボン酸アミド(製造10)および適当なアミンから実施例46〜53を製造した:
表5
【表5】

【0081】
実施例1に記載した手順を用いて、4'−ホルミル−3'−メチルビフェニル−3−カルボン酸アミド(製造11)および適当なアミンから実施例54および55を製造した:
表6
【表6】

【0082】
実施例56:cis−4'−[(4−tert−ブチルシクロヘキシルアミノ)メチル]−2'−フルオロビフェニル−3−カルボン酸アミド
【化30】

【0083】
実施例57:trans−4'−[(4−tert−ブチルシクロヘキシルアミノ)メチル]−2'−フルオロビフェニル−3−カルボン酸アミド
【化31】

2'−フルオロ−4'−ホルミルビフェニル−3−カルボン酸アミド(製造9、252mg、1.0mmol)のDCM懸濁溶液(100mL)に、4−tert−ブチルシクロヘキシルアミン(500μL、3.2mmol)、酢酸(200μL、3.5mmol)およびトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(648mg、3.1mmol)を加えた。混合物を室温で16時間撹拌した。EtOAc(100mL)を加え、有機物を、NaHCO3水(30mL)、食塩水(30mL)で洗浄し、乾燥した(MgSO4)。溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィ(17%EtOH:トルエン)によって精製して、cis−4'−[(4−tert−ブチルシクロヘキシルアミノ)メチル]−2'−フルオロビフェニル−3−カルボン酸アミド:RT = 2.84分; m/z (ES+) = 383.0 [M + H]+、およびtrans−4'−[(4−tert−ブチルシクロヘキシルアミノ)メチル]−2'−フルオロビフェニル−3−カルボン酸アミド:RT = 2.87分; m/z (ES+) = 383.0 [M + H]+を得た。
【0084】
実施例56/57に記載した手順を用いて、4'−ホルミルビフェニル−3−カルボン酸アミド(製造1)および適当なアミンから実施例58および59を製造した:
表7
【表7】

【0085】
実施例60:3−[5−(フェネチルアミノメチル)ピリジン−2−イル]ベンズアミド
【化32】

3−(5−ホルミルピリジン−2−イル)ベンズアミド(40mg、0.18mmol)のMeOH溶液(2.5mL)に、フェネチルアミン(27μL、0.21mmol)を加えた。混合物を16時間撹拌し、次いで水素化ホウ素ナトリウム(33mg、0.88mmol)を加えた。16時間後、水(1mL)を加え、溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィ(0.5%NH3:5%MeOH:DCM)で精製することによって、標題の化合物を得た:
RT = 2.32分; m/z (ES+) = 332.1 [M + H]+.
【0086】
実施例60に記載した手順を用いて、3−(5−ホルミルピリジン−2−イル)ベンズアミド(製造12)および適当なアミンから実施例61〜72を製造した:
表8
【表8−1】

【表8−2】

【0087】
実施例73:4−フルオロ−3−[5−(フェネチルアミノメチル)ピリジン−2−イル]ベンズアミド
【化33】

実施例60で概説した方法を用いて、4−フルオロ−3−(5−ホルミルピリジン−2−イル)ベンズアミド(製造13)およびフェネチルアミンを標題の化合物に変換した:
RT = 2.30分; m/z (ES+) = 350.0 [M + H]+.
【0088】
実施例60に記載した手順を用いて、3−(5−ホルミル−3−メチルピリジン−2−イル)ベンズアミド(製造14)および適当なアミンから実施例74〜79を製造した:
表9
【表9】

【0089】
実施例80:3−{5−[(2−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イルエチルアミノ)メチル]ピリジン−2−イル}ベンズアミド
【化34】

3−(5−ホルミルピリジン−2−イル)ベンズアミド(製造12、108mg、0.48mmol)のDCM懸濁溶液(75mL)に、2−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イルエチルアミン(333mg、2.39mmol)、AcOH(80μL、1.4mmol)およびトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(302mg、1.42mmol)を加えた。混合物を室温で16時間撹拌した。EtOAc(100mL)を加え、有機相を、NaHCO3水(30mL)、食塩水(30mL)で洗浄し、乾燥した(MgSO4)。溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィ(10%MeOH:DCM〜20%MeOH:DCM)によって精製して、標題の化合物を得た:
RT = 2.62分; m/z (ES+) = 350.0 [M + H]+.
【0090】
実施例80に記載した手順を用いて、3−(5−ホルミルピリジン−2−イル)ベンズアミド(製造12)もしくは3−(5−ホルミル−3−メチルピリジン−2−イル)ベンズアミド(製造14)および適当なアミンから実施例81〜89を製造した:
表10
【表10】

【0091】
実施例90:4−クロロ−3−{5−[(2−シクロヘキシルエチルアミノ)メチル]ピリジン−2−イル}ベンズアミド
【化35】

4−クロロ−3−{5−[(2−シクロヘキシルエチルアミノ)メチル]ピリジン−2−イル}ベンゾニトリル(170mg、0.48mmol)のDMSO溶液(4mL)に、K2CO3(66mg、0.48mmol)および過酸化水素(70%、0.5mL、4.8mmol)を加えた。混合物を室温で5時間撹拌し、次いで水(5mL)を加え、混合物をEtOAc(20mL)と水(20mL)の間で分液した。有機相を水(3×20mL)、食塩水(20mL)で洗浄し、乾燥した(MgSO4)。溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィ(0.4%NH3:4%MeOH:DCM)によって精製して、標題の化合物を得た:
RT = 2.57分; m/z (ES+) = 372.2 [M + H]+.
【0092】
実施例91:3−{5−[(2−シクロヘキシルエチルアミノ)メチル]ピリジン−2−イル}−4−メチルベンズアミド
【化36】

4−メチル−3−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)ベンズアミド(製造18、150mg、0.57mmol)および(6−ブロモピリジン−3−イルメチル)−(2−シクロヘキシルエチル)アミン(製造15、188mg、0.63mmol)のジオキサン溶液(3mL)に、Na2CO3(2M、1mL)およびビス(ジフェニルホスフィノフェロセン)−パラジウムジクロリド(47mg、0.06mmol)を加えた。混合物を10分間アルゴンでパージし、混合物を6時間70℃に加熱した。室温に冷却して、EtOAc(50mL)を加え、有機相を、水(2×30mL)、食塩水(30mL)で洗浄し、乾燥した(MgSO4)。溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィ(0.4%NH3:4%MeOH:DCM)によって精製して、標題の化合物を得た:
RT = 2.53分; m/z (ES+) = 352.2 [M + H]+.
【0093】
製造13で概説した手順を用いて、(6−ブロモピリジン−3−イルメチル)−(2−シクロヘキシルエチル)アミン(製造15)および適当なボロン酸から実施例92および93を製造した。
表11
【表11】

【0094】
本発明の化合物の生物活性を、以下のアッセイ系で試験してもよい:
競合結合アッセイ
μ−、κ−またはδ−オピオイド受容体を発現する膜(5〜15μg/ウェル)を、5mMのMgCl2を含む50mMのトリスバッファー、pH7.6に懸濁させ、96ウェルプレート上で、試験化合物またはベヒクル(1%のDMSO)およびそれぞれ0.5nMの3H−DAMGO、0.8nMの3H−U−69,595または1.1nMの3H−DPDPEのいずれかと共に、合計容量200μLで、90分間、室温(22℃)でインキュベーションした。ウェルの内容物を濾過し、H2Oに事前に浸したGF/Bフィルターを通して、Perkin Elmer Filtermateを用いて、冷却した50mMのトリスバッファー、pH7.6で5回洗浄した。フィルターを乾燥させ、シンチレーションを施用した後、それぞれのウェルの結合した放射性含有量を、Wallac TriLux Microbetaシンチレーションカウンターでのシンチレーション計数によって決定した。非特異的結合は、2μMのナロキソンの存在下で決定した。IC50値は、対数濃度の試験化合物を特異的結合に対してプロットすることによって決定し、続いてKi値を計算した。
【0095】
本発明の化合物は、競合結合アッセイにおいて、μ−オピオイド受容体について<10000nMのKi値を実証し、実施例46および84などの好ましい化合物は、μ−オピオイド受容体で<100nMのKiを有する。
【0096】
GTPγS機能的結合アッセイ
μ−、κ−またはδ−オピオイド受容体を発現する膜(5〜20μg/ウェル)を、3mMのMgCl2、120mMのNaCl、150pMのGTPγS、10μg/mLのサポニンおよび3μMのGDP(μ−オピオイド受容体アッセイ)または5μMのGDP(κ−およびδ−オピオイド受容体アッセイ)を含む50mMのHEPESバッファー、pH7.6に懸濁させ、96ウェルプレート上で、試験化合物またはベヒクル(1%のDMSO)と共に、合計容量160μLで、10分間、室温(22℃)でプレインキュベーションした。特異的作用剤DAMGO(10nMの最終濃度)、U−50,488(30nMの最終濃度)またはSNC−80(10nMの最終濃度)をそれぞれ加え、プレートを、15分間、室温(22℃)でさらにプレインキュベーションした。その後、アッセイ中で150pMの最終濃度の35S−GTPγSを加えて、1個のウェルあたりの合計容量200μLをもたらし、プレートを、45分間、30℃でインキュベーションした。ウェルの内容物を濾過し、H2Oに事前に浸したGF/Bフィルターを通して、Perkin Elmer Filtermateを用いて、冷却した50mMのトリスバッファー、pH7.6で5回洗浄した。フィルターを乾燥させ、シンチレーションを施用した後、それぞれのウェルの結合した放射性含有量を、Wallac TriLux Microbetaシンチレーションカウンターでのシンチレーション計数によって決定した。非特異的結合は、10μMのGTPγSの存在下で決定した。IC50値は、対数濃度の試験化合物を、刺激していない35S−GTPγSの結合と比較した%増に対してプロットすることによって、決定した。
【0097】
本発明の化合物は、GTPγSアッセイにおいて、μ−オピオイド受容体について<10000nMのIC50値を実証し、実施例46および84などの好ましい化合物は、μ−オピオイド受容体で<100nMのIC50を有する。
本発明の化合物は、好ましくは、κ−およびδ−オピオイド受容体と比較した、μ−オピオイド受容体の調節に対する選択性の度合を実証する。
【0098】
インビボ摂食研究
体重ならびに食物および水の摂取に対する本発明の化合物の効果を、逆相照明で維持した自由に摂食する雄のスプラーグドーリーラットで検査した。試験化合物および参照化合物(例えばシブトラミン)を、適当な投与経路(例えば腹腔内または経口)によって投薬し、続く24時間にわたって測定を行った。ラットは、金属格子床を備えたポリプロピレン製ケージ内に、21±4℃の温度および55±20%の湿度で、個々に飼育した。食物のこぼれを検出するために、ケージパッドを備えたポリプロピレン製トレイをそれぞれのケージの下に配置した。動物を逆相の明−暗サイクル(09.30〜17.30時の8時間の消灯)で維持し、その間、室内を赤色光によって照明した。動物は、2週間の馴化期間の間、標準の粉末ラット飼料および水道水に自由に利用できた。飼料はアルミニウム製蓋を備えたガラス製給餌ジャーに入れた。それぞれの蓋は3〜4cmの穴を備えており、これにより食物が利用可能であった。暗期間の開始時に動物、給餌ジャーおよび水ボトルを秤量した(0.1g単位まで)。続いて、動物に本発明の化合物を投薬した1、2、4、6および24時間後に給餌ジャーおよび水ボトルを測定し、ベースラインの治療群との任意の有意な差異を、ベヒクルで治療した対照と比較した。本発明の化合物は、≦100mg/kg(経口)の用量で、24時間かけて、摂食の阻害を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(I)
[式中、
XおよびYは共にCHであるか、またはXおよびYの一方はNで他方はCHであり;
Rは(CR78n6であり;
nは、0、1、2または3であり;
nが0である場合、R6はC3−C10シクロアルキルであり;
nが、1、2または3である場合、R6は、C6−C10アリール、C5−C10ヘテロアリール、C3−C10シクロアルキル、4〜7員酸素含有ヘテロ環またはC1−C6アルキルであり;
その中で、いずれのR6基も、C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ、C1−C6ハロアルキル、C1−C6ハロアルコキシおよびハロゲンから選択される1〜3個の置換基で適宜置換されており;
1は、水素、C1−C3アルキルまたはハロゲンであり;
2は、水素、C1−C3アルキルまたはハロゲンであり;
3およびR4は独立して、水素およびC1−C3アルキルから選択され;
5は、水素、C1−C6アルキルまたは−C2−C3アルキル−O−C1−C3アルキルであり;並びに
7およびR8は独立して、水素およびC1−C3アルキルから選択されるか、またはnが、2もしくは3である場合、R7およびR8のうち一つはヒドロキシであってもよいが、但し、該ヒドロキシ基は、N−R5に隣接する炭素に結合していない]
の化合物、またはその医薬的に許容される塩。
【請求項2】
XおよびYが共にCHである、請求項1の化合物、またはその医薬的に許容される塩。
【請求項3】
2が、水素、メチルまたはフルオロである、請求項2の化合物、またはその医薬的に許容される塩。
【請求項4】
XがNである、請求項1の化合物、またはその医薬的に許容される塩。
【請求項5】
YがNである、請求項1の化合物、またはその医薬的に許容される塩。
【請求項6】
2が、水素またはメチルである、請求項4もしくは5の化合物、またはその医薬的に許容される塩。
【請求項7】
1が水素以外である場合、R1は該アミド基に対してオルト位で該環接合部に対してパラ位の位置で結合しない、請求項1〜6のいずれか一つの化合物、またはその医薬的に許容される塩。
【請求項8】
nが0であり、かつR6が、適宜置換されたシクロヘキシルもしくはインダニルである、請求項1〜7のいずれか一つの化合物、またはその医薬的に許容される塩。
【請求項9】
nが、1、2もしくは3であり、かつR7およびR8が水素である、請求項1〜7のいずれか一つの化合物、またはその医薬的に許容される塩。
【請求項10】
nが1であり、かつR6が、適宜置換されたC6−C10アリール、C5−C10ヘテロアリールもしくはC3−C10シクロアルキルである、請求項1〜7もしくは9のいずれか一つの化合物、またはその医薬的に許容される塩。
【請求項11】
nが2であり、かつR6が、適宜置換されたC6−C10アリール、C5−C10ヘテロアリール、C3−C10シクロアルキルまたは4〜7員酸素含有ヘテロ環である、請求項1〜7もしくは9のいずれか一つの化合物、またはその医薬的に許容される塩。
【請求項12】
nが3であり、かつR6が、適宜置換されたC6−C10アリールもしくはC3−C10シクロアルキルである、請求項1〜7もしくは9のいずれか一つの化合物、またはその医薬的に許容される塩。
【請求項13】
3およびR4が水素である、請求項1〜12のいずれか一つの化合物、またはその医薬的に許容される塩。
【請求項14】
5が、水素またはメチルである、請求項1〜13のいずれか一つの化合物、またはその医薬的に許容される塩。
【請求項15】
実施例1〜93のいずれか一つの式(I)の化合物、またはその医薬的に許容される塩。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一つの化合物、またはその医薬的に許容される塩、並びに医薬的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項17】
有効量の請求項1〜15のいずれか一つの化合物、またはその医薬的に許容される塩を治療が必要な患者に投与する段階を含むことを特徴とする、オピオイド受容体が役割を果たす疾患もしくは障害の治療方法。
【請求項18】
有効量の請求項1〜15のいずれか一つの化合物、またはその医薬的に許容される塩を治療が必要な患者に投与する段階を含むことを特徴とする、食物摂取および/または満腹の調節方法。
【請求項19】
有効量の請求項1〜15のいずれか一つの化合物、またはその医薬的に許容される塩を治療が必要な患者に投与する段階を含むことを特徴とする、肥満症の治療方法。
【請求項20】
有効量の請求項1〜15のいずれか一つの化合物、またはその医薬的に許容される塩を治療が必要な患者に投与する段階を含むことを特徴とする、代謝疾患、例えば、II型糖尿病、代謝症候群(シンドロームX)、耐糖能障害、脂質異常症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDLレベルまたは高血圧症の治療方法。
【請求項21】
有効量の請求項1〜15のいずれか一つの化合物、またはその医薬的に許容される塩を治療が必要な患者に投与する段階を含むことを特徴とする、物質乱用、アルコール乱用、強迫性賭博、鬱病、アヘン剤過量、敗血症性ショック、過敏性腸症候群、嘔気、嘔吐または脳卒中の治療方法。

【公表番号】特表2010−538055(P2010−538055A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523598(P2010−523598)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【国際出願番号】PCT/GB2008/050801
【国際公開番号】WO2009/030962
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(504326837)プロシディオン・リミテッド (53)
【氏名又は名称原語表記】Prosidion Limited
【Fターム(参考)】