説明

二環式スフィンゴシン1−リン酸アナログ

S1P受容体のうちの一つ以上においてアゴニスト活性を有する化合物が提供される。この化合物はスフィンゴシンンアナログであり、リン酸化後にS1P受容体におけるアゴニストとして機能しうる。構造式(I):


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願へのクロスリファレンス〕
本出願は、Provisional Application Serial No. 60/956,111(2007年8月15日出願)の優先権を主張する。なおこれらの出願が開示するところの全ては、この参照によりその全体が本開示に含まれる。
【0002】
〔米国政府の権利〕
本発明は、the National Institutes of Healthにより認定された助成金番号RO1 GM 067958による米国政府の補助の下になされたものである。米国政府は、本発明に関しての一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
スフィンゴシン1-リン酸(S1P)は、内皮細胞分化遺伝子(EDG)受容体ファミリーのうちの五種類を刺激することによって様々な細胞応答を引き起こすリゾリン脂質メディエーターである。EDG受容体はGタンパク質共役受容体(GPCR)であって、刺激を受けると、ヘテロ三量体Gタンパク質のアルファ(Gα)サブユニットおよびベータ‐ガンマ(Gβγ)二量体を活性化させることによって、セカンドメッセンジャーシグナルを伝達する。こうしたS1Pが駆動するシグナル伝達の結果として、細胞生存、細胞遊走の増加、そしてしばしば有糸分裂誘発が最終的に起きる。S1P受容体を標的とするアゴニストについての最近の研究開発により、生理的恒常性でのこうしたシグナル伝達系の果たす役割に関して知見が得られている。例えば、リン酸化にともなう免疫調節物質であるFTY-720(2-アミノ-2-[2-(4-オクチルフェニル)エチル]プロパン-1,3-ジオール)は、五種のS1P受容体のうちの四種についてのアゴニストであり、S1Pトーンの増強はリンパ球トラフィッキングに影響することを明らかにした。さらには、S1Pタイプ1受容体(S1P1)アンタゴニストは、肺毛細血管内皮の漏出を引きおこす。このことから、何らかの組織床内の内皮壁の完全性の維持に、S1Pが関わっている可能性が示唆される。
【0004】
スフィンゴシン1-リン酸(S1P)は、内皮細胞分化遺伝子(EDG)受容体ファミリーのうちの五種類を刺激することによって様々な細胞応答を引き起こすリゾリン脂質メディエーターである。
【0005】
スフィンゴシン1-リン酸(S1P)は、例えば、血小板凝集、細胞増殖、細胞形態、腫瘍細胞浸潤、内皮細胞走化性、および血管新生といった結果をもたらすものを含む、数多の細胞過程を誘導することが証明されている。こうした理由から、創傷治癒および腫瘍成長抑制などといった治療用途において、S1P受容体はよい標的となる。
【0006】
スフィンゴシン1-リン酸は、S1P1、S1P2、S1P3、S1P4、およびS1P5(以前はEDG1、EDG5、EDG3、EDG6、およびEDG8)と命名された一連のGタンパク質共役受容体を一部介して細胞にシグナルを送る。これらのEDG受容体はGタンパク質共役受容体(GPCR)であって、刺激を受けると、ヘテロ三量体Gタンパク質のアルファ(Gα)サブユニットおよびベータ‐ガンマ(Gβγ)二量体を活性化させることによって、セカンドメッセンジャーシグナルを伝達する。これらの受容体は50〜55%のアミノ酸配列同一性を共有し、構造的に関連するリゾホスファチジン酸(LPA)に対する他の三種の受容体(LPA1、LPA2、およびLPA3; 以前はEDG2、EDG4、およびEDG7)とクラスターをつくる。
【0007】
リガンドが受容体に結合すると、Gタンパク質共役受容体(GPCR)でコンフォーメーション変化が誘導され、結合したGタンパク質のα-サブユニット上でGDPがGTPに置き換えられた後、Gタンパク質は細胞質内へ放出される。その後、α-サブユニットがβγ-サブユニットから解離するので、各サブユニットはエフェクタータンパク質と結合できるようになる。こうしたエフェクタータンパク質は、細胞応答を起こすセカンドメッセンジャーを活性化する。そうしてついには、Gタンパク質上のGTPが水和されてGDPとなり、Gタンパク質のサブユニット同士が再結合し、やがては受容体にも再結合する。こういった一般的なGPCR経路においては、増幅が大きな役割を果たしている。或るリガンドが或る受容体に結合すると、多数のGタンパク質の活性化につながり、そうしたGタンパク質の各々は多数のエフェクタータンパク質と結合できるため、増幅された細胞応答につながる。
【0008】
S1P受容体は、個々の受容体が組織特異的でありかつ反応特異的であるため、優れた薬剤標的となる。或る受容体に対して選択的なアゴニストもしくはアンタゴニストを開発できれば、その受容体を内包する組織への細胞応答を局在化でき、望ましくない副作用が抑えられることから、S1P受容体の組織特異性は望ましいものであるといえる。また、S1P受容体の反応特異性も、他の反応へ影響することなく特定の細胞応答を開始もしくは抑制するようなアゴニストまたはアンタゴニストを開発できるので、重要である。例えば、S1P受容体の反応特異性は、細胞形態に影響することなく血小板凝集を引き起こすようなS1P模倣薬を可能にし得る。
【0009】
スフィンゴシン1-リン酸は、スフィンゴシンとスフィンゴシンキナーゼとの反応によって、スフィンゴシンの代謝物として生成される。また、スフィンゴシン1-リン酸は、高濃度のスフィンゴシンキナーゼが存在し、スフィンゴシンリアーゼが存在しない血小板の凝集体に大量に存在する。S1Pは血小板凝集の間に放出され、血清中に蓄積し、また悪性腹水中にも見られる。S1Pの可逆的生分解は大概、ectophosphohydrolases、特にスフィンゴシン1-リン酸ホスホヒドロラーゼによる加水分解を介して進行する。S1Pの不可逆的分解は、S1Pリアーゼにより触媒され、リン酸エタノールアミンとヘキサデセナールを生じる。
【0010】
現在、効力と選択性と経口生体利用性が高められたS1P受容体のアゴニストである、新規の強力で選択的な薬剤が求められている。さらには、そうした化合物の同定法、ひいては合成法と使用法もまた当該技術分野で求められている。本発明はこうした需要を満たすものである。
【発明の概要】
【0011】
本発明の或る態様では、S1P受容体のうちの一つ以上にアゴニスト活性を有する化合物の特異的立体異性体を提供する。こうした化合物はスフィンゴシンアナログであって、リン酸化後にS1P受容体アゴニストとして機能し得る。従って、次の構造式Iの化合物の鏡像異性体が提供される。
【0012】
【化1】

【0013】
ここで、X1、Y1、およびZ1は独立に、O、CRa、CRaRb、N、NRc、もしくはSであり、R1とR2は独立に、水素、ハロゲン、ハロ(C1-C10)アルキル基、シアノ基、-NRaRb、(C1-C20)アルキル基、(C2-C20)アルケニル基、(C2-C20)アルキニル基、(C1-C20)アルコキシ基、(C2-C26)アルコキシアルキル基、(C3-C12)シクロアルキル基、(C6-C10)アリール基、(C7-C30)アリールアルキル基、(C2-C10)複素環基、(C4-C10)ヘテロアリール基、もしくは(C4-C10)-ヘテロアリール(C1-C20)アルキル基であるか、あるいは、R2は下記の構造式II、III、IV、V、もしくはVIのいずれかを有する基であり得る。
【0014】
【化2】

【0015】
ここで、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14は独立に、O、S、C、CR15、CR16R17、C=O、N、もしくはNR18であり、R15、R16、R17は独立に、水素、ハロゲン、(C1-C10)アルキル基、ハロゲン置換(C1-C10)アルキル基、ヒドロキシル基、(C1-C10)アルコキシ基、もしくはシアノ基であり、R18は水素もしくは(C1-C10)アルキル基であり得る。
【0016】
Z2は、水素、ハロゲン、ハロ(C1-C10)アルキル基、シアノ基、-NRaRb、(C1-C20)アルキル基、(C2-C20)アルケニル基、(C2-C20)アルキニル基、(C1-C20)アルコキシ基、(C2-C26)アルコキシアルキル基、(C3-C12)シクロアルキル基、(C6-C10)アリール基、(C7-C30)アリールアルキル基、(C2-C10)複素環基、(C4-C10)ヘテロアリール基、もしくは(C4-C10)ヘテロアリール(C1-C20)アルキル基である。Z2のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基、もしくはヘテロアリール基は、任意に全フッ素置換されるか、または、1個、2個、3個、もしくは4個の置換基で任意に置換され、置換基とは独立に、ヒドロキシル基、ハロゲン、シアノ基、(C1-C10)アルコキシ基、C6-アリール基、(C7-C24)アリールアルキル基、オキソ基(=O)、もしくはイミノ基(=NRd)である。Z2のアルキル基内の炭素原子の一つ以上は、独立に、過酸化物ではない酸素、硫黄、もしくはNRcで置換され得る。
【0017】
【化3】

【0018】
は、一個以上の任意の二重結合をあらわす。Y2は、結合である(つまり存在しない)か、O、S、C=O、もしくはNRc、CH2である。W1は結合であるか、-CH2-でかつm=1、2、もしくは3であるか、または、(C=O)(CH2)1-5でかつm=1である。なお、W1には任意に、過酸化物ではないO、S、C=O、もしくはNRcが間に挟まる。
【0019】
【化4】

【0020】
の各々は任意の二重結合であり、nは0、1、2、もしくは3である。
【0021】
R3は、水素、(C1-C10)アルキル基、ヒドロキシル(C1-C10)アルキル基、もしくは(C1-C10)アルコキシ基である。R4は、ヒドロキシル基(-OH)、リン酸基(-OPO3H2)、ホスホン酸基(-CH2PO3H2)、もしくはα置換ホスホン酸基である。Rcは水素もしくは(C1-C10)アルキル基である。Ra、Rb、Rcは独立に、水素もしくは(C1-C10)アルキル基である。
【0022】
R1およびR2のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基、もしくはヘテロアリール基は独立に、任意に全フッ素置換されるか、または、1個、2個、3個、もしくは4個の置換基で任意に置換され、置換基とは独立に、ヒドロキシル基、ハロゲン、シアノ基、(C1-C10)アルコキシ基、C6-アリール基、(C7-C24)アリールアルキル基、オキソ基(=O)、もしくはイミノ基(=NRd)である。またここでR1もしくはR2のアルキル基内の炭素原子の一つ以上は、独立に、過酸化物ではない酸素、硫黄、もしくはNRcで置換され得る。R3のアルキル基は、任意に1個もしくは2個のヒドロキシル基で置換される。Rdは水素もしくは(C1-C10)アルキル基である。化合物は構造式Iの化合物の鏡像異性体である。本発明には、構造式Iの化合物の薬学的に許容可能な塩もしくはエステルも含まれる。
【0023】
構造式Iの化合物は鏡像異性的に純粋であり、一つもしくは二つの不斉中心を持ち得る。
【0024】
【化5】

が炭素の二重結合を示す場合を除き、構造式Iにおいて不斉炭素中心は“*”で示される。
【0025】
【化6】

【0026】
不斉炭素を一つ持つ化合物はR体もしくはS体のいずれかとなり得る。不斉炭素を二つ持つ化合物は、R,R体、R,S体、S,R体、もしくはS,S体となり得る。ここで一番目の文字は炭素環の立体配置をあらわし、二番目の文字は炭素鎖の立体配置をあらわす。
【0027】
本発明は別の態様にて、下記構造式VIIを持つリン酸エステルを提供する。
【化7】

【0028】
ここで、R1、R2、R3、X1、Y1、Z1は上記の通りである。本発明は別の態様にて、構造式Iもしくは構造式VIIを持つ化合物の鏡像異性体を提供し、これらはRR体、RS体、SR体、もしくはSS体となる。
【0029】
本発明は別の態様にて、構造式Iの化合物の鏡像異性体プロドラッグを提供する。本発明はまた別の態様にて、薬物療法用の構造式I、構造式IVの鏡像異性体化合物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルも提供する。
【0030】
本発明は別の態様にて、腫瘍での血管新生を阻害するための方法を提供する。この方法は、構造式I、構造式IVの鏡像異性体化合物もしくはその薬学的に許容可能な塩の有効量を、癌細胞に接触させることを含む。
【0031】
本発明は別の態様にて、自己免疫疾患の処置のためもしくは同種移植片生着の延長のために、リンパ球トラフィッキングを変化させることで免疫系を調節するための方法を提供する。この方法は、少なくとも一種の構造式Iの鏡像異性体化合物の有効量を、それを必要とする被験者に投与することを含む。
【0032】
本発明は別の態様にて、神経因性疼痛を予防、抑制、もしくは処置するための方法を提供する。この方法は、少なくとも一種の構造式Iの鏡像異性体化合物の有効量を投与することを含み、あるいは、構造式Iの化合物および薬学的に許容可能なキャリアが、それを必要とする被験者へ投与される。疼痛は本来、侵害受容性もしくは神経因性である可能性がある。神経因性疼痛は、その慢性的性質、明白な直接原因(例えば組織損傷)の欠如、痛覚過敏もしくは異痛(アロディニア)を特徴とする。痛覚過敏とは、疼痛性刺激に対する過剰反応である。異痛とは、正常刺激(例として衣類の接触、温風もしくは冷気などを含む)を疼痛と知覚することである。神経因性疼痛は、腕や、より多くは脚などの四肢の神経損傷の結果となり得る。引き金となる事象は、例えば交通事故などの外傷もしくは切断(例えば幻肢痛)を含み得る。神経因性疼痛は、例えばビンクリスチンやパクリタキセル(TAXOLTM)などの薬物治療の副作用によって生じる可能性があり、あるいは、1型もしくは2型糖尿病、帯状疱疹、HIV-1感染などの疾患病状の一要素として生じ得る。通常は、神経因性疼痛はアスピリンなどの鎮静剤や非ステロイド性抗炎症薬には反応しない。
【0033】
本発明は別の態様にて、カテーテル挿入後の血管損傷を修復するための方法を提供する。この方法は、罹患血管の内腔に、構造式Iの鏡像異性体化合物の有効量を接触させることを含む。本発明は別の態様にて、留置ステントを構造式Iの鏡像異性体化合物でコーティングすることを含む。
【0034】
本発明は別の態様にて、血管損傷後の血管再狭窄を予防し抑制するために、S1Pアナログを使用するための組成物と方法を提供する。例えば、損傷はバルーン血管形成によるものであってもよい。本発明は別の態様にて、血管再狭窄を予防するために被験者を処置する方法を含む。
【0035】
本発明は別の態様にて、喘息の発作を予防するためにスフィンゴシンアナログ(S1Pプロドラッグを含む)を使用するための組成物と方法を提供する。一態様では、喘息はシステイニルロイコトリエンの過剰生産に起因し得る。本発明は別の態様にて、喘息を処置するために被験者を処置する方法を含む。
【0036】
本発明は別の態様にて、肥満を処置するために構造式Iのスフィンゴシンアナログ(S1Pプロドラッグを含む)を使用するための組成物と方法を提供する。
【0037】
本発明は別の態様にて、血中脂質組成を正常化するためにスフィンゴシンアナログ(S1Pプロドラッグを含む)を使用するための組成物と方法を提供する。一態様では、血中の低密度リポタンパク質(LDLもしくは“悪玉コレステロール”)レベルが減少し得る。別の態様では、血中トリグリセリドレベルが減少し得る。
【0038】
本発明は別の態様にて、動脈硬化の予防と処置のためにS1PアナログおよびS1Pプロドラッグを使用するための組成物と方法を提供する。
【0039】
本発明は別の態様にて、腫瘍性疾患の処置のためにS1PアナログおよびS1Pプロドラッグを使用するための組成物と方法を提供する。一態様では、この処置は抗血管新生特性のために有効なS1P受容体アンタゴニストの適用によって行われる。別の態様では、この処置は、複数基質の脂質キナーゼを阻害する構造式Iの鏡像異性体スフィンゴシンアナログの投与によって行われる。
【0040】
本発明は別の態様にて、神経変性疾患の処置のためにS1PアナログおよびS1Pプロドラッグを使用するための組成物と方法を提供する。一態様では、処置はアルツハイマー型老年性認知症のためのものである。
【0041】
本発明は別の態様にて、医療処置(例えば、新生物疾患の処置、神経因性疼痛の処置、自己免疫疾患の処置、同種移植片生着の延長など)用の構造式Iの化合物もしくはその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0042】
本発明は別の態様にて、構造式Iの鏡像異性体化合物もしくはその薬学的に許容可能な塩を用いて、哺乳類(ヒトなど)での腫瘍増殖、転移、もしくは腫瘍血管新生を阻害するための薬剤を調製する方法を提供する。
【0043】
本発明は別の態様にて、哺乳類(ヒトなど)での自己免疫疾患の処置もしくは同種移植片生着の延長のための薬剤を調製するための、構造式Iの化合物もしくはその薬学的に許容可能な塩の使用法を提供する。
【0044】
本発明は別の態様にて、哺乳類(ヒトなど)での神経因性疼痛の処置のための薬剤を調製するための、構造式Iの化合物もしくはその薬学的に許容可能な塩の使用法を提供する。
【0045】
本発明は別の態様にて、構造式Iの化合物(S1P受容体プロドラッグなど)を、スフィンゴシンキナーゼタイプ1もしくはタイプ2に対する基質として、in vitroおよびin vivoで評価するための方法を提供する。本発明は別の態様にて、指定された受容体に結合する上で有効な量の構造式Iの化合物を用いて、in vivoもしくはin vitroで、その指定された受容体部位への結合について構造式Iの化合物を評価するための方法を含む。指定されたS1P受容体部位に結合したリガンドを含む組織を用いて、特定の受容体サブタイプに対する試験化合物の選択性を測定することができる。あるいはそうした組織を道具として用いて、薬剤を上記のリガンド‐受容体複合体に接触させ、リガンドの置換もしくは薬剤の結合の程度を測定することにより、疾患の処置にとって有望な治療薬を同定することができる。
【0046】
本発明は別の態様にて、構造式Iの化合物を調製する上で有用な、本明細書に開示された新規の中間体およびプロセスを提供し、本明細書に記載された総称的(generic)中間体および特定の(specific)中間体、ならびに合成プロセスが含まれる。
【0047】
本発明は別の態様にて、構造式Iを持つ化合物ならびにそのアナログもしくは誘導体の、合成スキームおよび使用方法を提供する。本発明は別の態様にて、構造式Iの化合物のアナログおよび誘導体を調製するための合成スキームと修飾スキームを提供し、ならびに、そうしたアナログおよび誘導体を使用するための組成物と方法も提供する。
【0048】
本発明は別の態様にて、構造式Iを持つ化合物ならびにそのアナログもしくは誘導体の、合成スキームおよび使用方法を提供する。本発明は別の態様にて、鏡像異性体化合物および薬学的に許容可能なキャリアを含む、構造式Iの化合物の鏡像異性体化合物を含む医薬組成物を提供する。
【0049】
上記の発明の概要は、開示された実施形態の各々や、本発明の全実施例を説明することを意図していない。以下の記載は実施形態例をより具体的に例示する。本出願全体にわたって数か所に、実施例のリストを通してガイダンスが提供されており、そうした実施例は様々な組み合わせで使用できる。各場合において、列挙されたリストは代表グループに過ぎず、排他的なリストと解釈されるべきではない。
【0050】
本発明の一つ以上の実施形態の詳細は、下記の添付の説明の中に記載される。本発明のその他の特徴、目的、効果は、明細書、図面、および請求項から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1A】三種のS1Pアゴニスト、すなわちFTY-720、AAL151、化合物XXX、および構造式Iの追加化合物を図示する。
【図1B】三種のS1Pアゴニスト、すなわちFTY-720、AAL151、化合物XXX、および構造式Iの追加化合物を図示する。
【図2】構造式Iの化合物の合成を説明するスキームである。
【図3】構造式Iの化合物の合成を説明するスキームである。
【図4】構造式Iの化合物の合成を説明するスキームである。
【図5A】構造式Iの鏡像異性的に純粋な化合物の合成を説明するスキームである。
【図5B】構造式Iの鏡像異性的に純粋な化合物の合成を説明するスキームである。
【図5C】構造式Iの鏡像異性的に純粋な化合物の合成を説明するスキームである。
【図6】構造式VIIIの鏡像異性体の分離と、それから調製されたリン酸化化合物を説明するスキームである。
【図7】S1Pと化合物VIII-Dを試験する、ヒトS1P1受容体に対する破壊細胞GTPγ35S結合アッセイの結果を図示する。
【図8】S1Pと化合物VIII-Dに対するカルシウム動員アッセイの結果を図示する。
【図9】S1Pと化合物VIII-Cを試験する、ヒトS1P1受容体に対する破壊細胞GTPγ35S結合アッセイの結果を図示する。
【図10】S1Pと化合物VIII-Cに対するカルシウム動員アッセイの結果を図示する。
【図11】S1Pと化合物VIII-Fを試験する、ヒトS1P1受容体に対する破壊細胞GTPγ35S結合アッセイの結果を図示する。
【図12】S1Pと化合物VIII-C、VIII-F、VIII-Eを試験する、ヒトS1P1受容体に対する破壊細胞GTPγ35S結合アッセイの結果を図示する。
【図13】S1Pと化合物FTY-720P、VIII-F、VIII-Eに対するカルシウム動員アッセイの結果を図示する。
【図14】S1Pと化合物VIII-Eに対するカルシウム動員アッセイの結果を図示する。
【図15】S1Pと化合物X-Fを試験する、ヒトS1P1受容体に対する破壊細胞GTPγ35S結合アッセイの結果を図示する。
【図16】S1Pと化合物X-Fに対するCHO細胞アッセイの結果を図示する。
【図17】S1P、FTY-720P、化合物X-Eを試験する、ヒトS1P1受容体に対する破壊細胞GTPγ35S結合アッセイの結果を図示する。
【図18】S1P、FTY-720P、化合物X-Eに対するカルシウム動員アッセイの結果を図示する。
【図19】S1P、FTY-720P、化合物X-Eに対するCHOK1細胞アッセイの結果を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本明細書中では以下の略語を用いる。S1P:スフィンゴシン-1-リン酸、S1P1-5:S1P受容体タイプ、GPCR:Gタンパク質共役受容体、SAR:構造活性相関、EDG:内皮細胞分化遺伝子、EAE:実験的自己免疫性脳脊髄炎、NOD:非肥満性糖尿病、TNFα:腫瘍壊死因子アルファ、HDL:高密度リポタンパク質、RT-PCR:逆転写ポリメラーゼ連鎖反応
【0053】
本発明を説明し請求するにあたり、特に他に定義しない限り、本明細書で使用されている全ての技術用語、および、科学的用語は、この発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似しているか、もしくは均等である全ての物質および方法は、本発明の実施もしくは試験に用いられる可能性があるが、好ましい物質および方法は本明細書に記載されたものである。このセクションでは、以下の用語の各々がそれに関連する意味を有している。下に挙げた、基、置換基、および範囲についての具体的かつ好ましい値はあくまで例示のためのものである。つまりこれらの値は、他に定めた値を排除するものではないし、基および置換基について定めた範囲内の別の値を排除するものでもない。
【0054】
「或る」(“a”、“an”)、「その」(“the”)、「少なくとも一つ」(“at least one”)、および「一つ以上」(“one or more”)という語は交換可能に使用される。つまり例えば、「或る」元素を含む組成物とは、一種類の元素または複数種類の元素を含むことを意味する。
【0055】
「受容体アゴニスト」(“receptor agonists”)という語は、S1P受容体の一種以上でS1Pの作用を模倣するが、異なる効力もしくは効能を持ち得るような化合物のことである。
【0056】
「受容体アンタゴニスト」(“receptor antagonists”)という語は、1)内因性アゴニスト活性を欠く化合物、および2)(複数の)S1P受容体のアゴニスト活性(S1P活性など)を阻害する化合物であって、その阻害は、完全に克服可能かつ可逆的な形であることが多い(“競合的アンタゴニスト”)。
【0057】
「罹患細胞」(“affected cell”)という語は、疾患もしくは障害を患った被験者の細胞のことを指す。なおこうした罹患細胞の表現型は、疾患もしくは障害を患っていない被験者に比べて変化している。
【0058】
細胞または組織の表現型が、疾患もしくは障害を患っていない被験者が持つ同じ細胞または組織に比べて変化している場合、その細胞または組織は疾患もしくは障害により「罹患して」いることになる。
【0059】
疾患もしくは障害の症候の重篤度か、そうした症候を患者が経験する頻度か、またはその両方が軽減される場合、そうした疾患もしくは障害は「緩和された」(“alleviated”)ことになる。
【0060】
化学化合物の「類縁体(アナログ)」(“analog”)は、例として、他の化合物に構造が類似しているが、必ずしも異性体ではない化合物のことである(例えば、5-フルオロウラシルはチミンのアナログである)。
【0061】
「細胞」(“cell”)、「細胞株」(“cell line”)、および「細胞培地」(“cell culture”)という語は、同義のものとして使用され得る。
【0062】
「対照」(“control”)の細胞、組織、試料、もしくは被験者は、試験用の細胞、組織、試料、もしくは被験者と同じタイプの細胞、組織、試料、もしくは被験者である。対照は例えば試験用の細胞、組織、試料、もしくは被験者の試験を行うときと正確に同時に、もしくはほとんど同時に試験を行う。対照はまた、試験用の細胞、組織、試料、もしくは被験者の試験を行ったときから時間を隔てて試験されることもある。対照の試験結果は、試験用の細胞、組織、試料、もしくは被験者の試験によって得られた結果と比較できるように記録されることがある。試験を行おうとしている疾患もしくは障害にかかっている疑いがある被験者から試験用試料が採取される場合には、対照は、試験群(test group)もしくは試験被験者(test subject)とは異なる出所もしくは類似した出所から採取されることもある。
【0063】
「試験用」(“test”)の細胞、組織、試料、もしくは被験者は、試験または処置をされるものである。
【0064】
「病状を示している」(“pathoindicative”)細胞、組織、もしくは試料は、そういったものが存在する場合、その細胞、組織、もしくは試料が存在する動物(または、組織を採取した動物)が、疾患もしくは障害に罹患していることの兆候となる。一例として、動物の肺組織に一つ以上の乳腺細胞が存在する場合、それはその動物が転移性乳癌に罹患しているという兆候である。
【0065】
「鏡像異性的に純粋」(“enantiomerically pure”)という語は、約60%よりも大きい鏡像体過剰率(ee)を持つ化合物をあらわす。好ましくは、鏡像体過剰率は80%よりも大きい可能性がある。より好ましくは、鏡像体過剰率は90%よりも大きい可能性がある。さらにより好ましくは、鏡像体過剰率は90%よりも大きい可能性がある。最も好ましくは、鏡像体過剰率は95%よりも大きい可能性がある。
【0066】
疾患もしくは障害に罹患していない動物の組織に1つ以上の細胞が存在する場合、組織は細胞を「正常に含んでいる」(“normally comprises”)。
【0067】
「検出する」(“detect”)という語およびその文法上の変異形を用いたときは、化学種を定量せずに測定することを意味する。一方、「計測する」(“determine”)もしくは「測定する」(“measure”)という語およびそれらの文法上の変異形を用いたときは、化学種を定量しながら測定することを意味する。「検出する」(“detect”)という語と「同定する」(“identify”)という語は、本明細書中では同義である。
【0068】
「検出可能なマーカー」(“detectable marker”)もしくは「レポーター分子」(“reporter molecule”)は、マーカー無しの類似化合物が存在する中で、マーカーを含む化合物の特異的な検出を可能にする原子もしくは分子である。検出可能なマーカーもしくはレポーター分子には例えば、放射性同位体、抗原決定基、酵素、ハイブリダイゼーションに用いることができる核酸、発色団、フルオロフォア、化学発光分子、電気化学的に検出可能な分子、ならびに、蛍光偏光もしくは光散乱を変化させる分子が含まれる。
【0069】
「疾患」(“disease”)とは、恒常性を維持できなくなった動物の健康状態のことをいう。疾患が軽快しなければ、動物の健康は悪化しつづける。
【0070】
動物の「障害」(“disorder”)とは、動物の恒常性は維持できているが、動物の健康状態はその障害が無いとした場合よりも望ましくなくなっているような健康状態のことをいう。処置をしなくとも、障害によって動物の健康状態がさらに損なわれるとは限らない。
【0071】
「有効量」(“effective amount”)は、選択された効果をもたらすのに十分な量を意味する。例えば、S1P受容体アンタゴニストの有効量とは、S1P受容体の細胞シグナル伝達活性を下げる量のことである。
【0072】
「機能的な」(“functional”)分子とは、その分子を特徴づける特性を発揮する形態をとった分子のことをいう。一例として、機能的な酵素とは、酵素を特徴づける触媒活性を発揮する酵素のことである。
【0073】
「阻害」(“inhibit”)という語は、説明した機能を軽減もしくは妨害する、開示された化合物の能力のことを指す。機能は、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも25%、なおもより好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも75%阻害される。
【0074】
「説明書」(“instructional material”)は、本明細書で挙げた様々な疾患もしくは障害の緩和をもたらすための、キット中の開示された化合物の有用性を伝えるために使用され得る、刊行物、記録物、図解、もしくは、その他のあらゆる表現媒体を含む。任意に、もしくは別の方法として、こうした説明書には、哺乳類の細胞または組織での疾患もしくは障害を緩和させるための一種以上の方法を記載してもよい。キットの説明書は例えば、開示された化合物を収めた容器に添付してもよいし、あるいは、同定された化合物を収めた容器と一緒に出荷してもよい。あるいは別の方法として、この説明書を容器とは別に分けて、受領者がこの説明書と化合物を併せて使うことを意図して出荷してもよい。
【0075】
「非経口」(“parenteral”)という語は、消化管を通らずに、皮下、筋肉内、脊椎内、もしくは静脈内など、何か別の経路を通ることを意味する。
【0076】
「薬学的に許容可能なキャリア」(“pharmaceutically acceptable carrier”)という語には、リン酸緩衝生理食塩水、水、油/水エマルジョンもしくは水/油エマルジョンなどのエマルジョン、ならびに様々な種類の湿潤剤などの、全ての標準的な薬学的キャリアが含まれる。この語は、ヒトを含む動物での使用のために、米国連邦政府の規制当局によって認可された薬剤、あるいは米国薬局方に列挙された薬剤のうちの任意のものも含む。
【0077】
「精製された」(“purified”)という語およびその類義語は、天然環境下で通常は付随してくるような他の成分を実質的に含まない(少なくとも75%含まない、好ましくは90%含まない、最も好ましくは少なくとも95%含まない)形態の、分子もしくは化合物の単離に関する。「精製された」という語は、工程中に得られる特定の分子の完全な純度を必ずしもあらわすとは限らない。「非常に純粋」(“very pure”)な化合物とは、純度が90%よりも高い化合物のことを指す。「高純度」(“highly purified”)の化合物とは、純度が95%よりも高い化合物のことを指す。
【0078】
「試料」(“sample”)とは、好ましくは被験者から採取した生物学的試料を指し、正常組織試料、患部組織試料、生検試料、血液、唾液、排泄物、精液、涙液、および、尿が含まれるが、これらに限定されない。試料はまた、目的の細胞、組織、もしくは流体を含む、被験者から得られる任意の他の物質源であってもよい。試料は、細胞培養もしくは組織培養からも得ることができる。
【0079】
「標準」(“standard”)という語は、比較のために使用されるものを指す。例えば標準は、対照試料に投与もしくは添加される既知の標準物質もしくは標準化合物であって、その化合物を試験用試料中で測定したときの結果を比較するために使用され得る。標準とは、内部標準(“internal standard”)のことをあらわす可能性もある。そのような薬剤もしくは化合物は、既知量で試料に加えられ、目的のマーカーが測定される前に、試料が処理されるか、または精製過程もしくは抽出過程にかけられるときに、純度もしくは回収率などを計測する上で有用である。
【0080】
分析、診断、もしくは処置の「被験者」(“subject”)は動物である。そうした動物には哺乳類が含まれ、好ましくはヒトである。
【0081】
「治療上の」(“therapeutic”)処置とは、疾病の症状を示している被験者に、それらの症状を軽減し、もしくは除去する目的で施す処置である。
【0082】
「治療上有効量」(“therapeutically effective amount”)の化合物は、その化合物が投与される被験者に対して有益な効果をもたらすのに十分な量の化合物である。
【0083】
「処置」(“treating”)という語は、特定の障害もしくは状態の予防、または特定の障害もしくは状態に伴う症状の緩和、またはその症状を予防し、もしくは除去することを含む。
【0084】
開示した化合物は概して、IUPAC命名法体系もしくはCAS命名法体系に沿って命名している。当業者にとって周知である略語も使用することがあり、例えば、“Ph”はフェニル基、“Me”はメチル基、“Et”はエチル基、“h”は時間、“rt”は室温、“THF”はテトラヒドロフラン、“rac”はラセミ混合物である。
【0085】
基、置換基、および範囲について下に挙げた値はあくまで例示のためのものである。これらの値は、他に定めた値を排除するものではないし、基および置換基について定めた範囲内の別の値を排除するものでもない。開示された化合物は、本明細書に記載された値、特定の値、さらに特定の値、および好ましい値の任意の組み合わせを持つ構造式Iの化合物を含む。
【0086】
「ハロゲン」(“halogen”)もしくは「ハロ基」(“halo”)という語には、ブロモ基、クロロ基、フルオロ基、およびヨード基が含まれる。「ハロアルキル基」(“haloalkyl”)という語は、少なくとも一つのハロゲン置換基を持つアルキル基をあらわし、非限定的な例として、クロロメチル基、フルオロエチル基、もしくはトリフルオフロメチル基などを含むが、それらに限定されない。「C1-C20アルキル基」(“C1-C20alkyl”)という語は、1から20までの炭素を有する、分岐もしくは直鎖のアルキル基をあらわす。非限定的な例として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などを含むが、それらに限定されない。「C2-C20アルケニル基」(“C2-C20alkenyl”)という語は、2から20までの炭素原子と、少なくとも一つの二重結合を有する、オレフィン系不飽和の分岐もしくは直鎖の基をあらわす。典型的には、C2-C20アルケニル基は、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1,3-ブタジエニル基、1-ブテニル基、ヘキセニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基などを含むがそれらに限定されない。「C2-C20アルキニル基」(“C2-C20alkynyl”)という語は、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1-ヘキシニル基、2-ヘキシニル基、3-ヘキシニル基、4-ヘキシニル基、もしくは5-ヘキシニル基などであり得る。「(C1-C10)アルコキシ基」(“(C1-C10)alkoxy”)という語は、酸素原子を挟んで結合しているアルキル基のことをあらわす。(C1-C10)アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、ペントキシ基、3-ペントキシ基、もしくはヘキシルオキシ基などがあり得る。「C3-C12シクロアルキル基」(“C3-C12cycloalkyl”)という語は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などであり得る。
【0087】
「任意に置換された」(“optionally substituted”)という語は、0、1、2、3、もしくは4個の、それぞれ独立に選ばれた置換基をあらわす。それぞれ独立に選ばれた置換基は、他の置換基と同じであっても、異なっていてもよい。
【0088】
「C6-C10アリール基」(“C6-C10aryl”)という語は、一つもしくは二つの芳香環を有する、単環式もしくは二環式の炭素環系をあらわし、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基、インダニル基、インデニル基などを含むがそれらに限定されない。
【0089】
「アリール(C1-C20)アルキル基」(“aryl(C1-C20)alkyl”)または「アラルキル基」(“aralkyl”)という語は、一つもしくは二つの芳香環を有する単環式もしくは二環式の炭素環系(フェニル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基、インダニル基、インデニル基などの基を含む)で置換されたアルキル基をあらわす。アリールアルキル基の非限定的な例としては、ベンジル基、フェニルエチル基などを含む。
【0090】
「任意に置換されたアリール基」(“optionally substituted aryl”)という語は、0、1、2、3、もしくは4個の置換基を持つアリール化合物を含み、置換されたアリール基は、1、2、3、もしくは4個の置換基を持つアリール化合物を含む。ここでその置換基とは、例えば、アルキル置換基、ハロ置換基、もしくはアミノ置換基などの基を含む。
【0091】
「(C2-C10)複素環基」(“(C2-C10)heterocyclic group”)という語は、1、2、もしくは3個のヘテロ原子を(各環に任意に)含む、任意に置換された単環式または二環式の炭素環系をあらわす。ヘテロ原子とは酸素、硫黄、および窒素である。
【0092】
「(C4-C10)ヘテロアリール基」(“(C4-C10)heteroaryl”)という語は、1、2、もしくは3個のヘテロ原子を(各環に任意に)含む、任意に置換された単環式または二環式の炭素環系をあらわす。ヘテロ原子とは酸素、硫黄、および窒素である。ヘテロアリール基の非限定的な例としては、フリル基、チエニル基、ピリジル基などを含む。
【0093】
「二環式」(“bicyclic”)という語は、不飽和もしくは飽和の、安定な架橋した、もしくは縮合した、二環式炭素環のことをあらわす。この二環は、安定した構造を作ることができる炭素原子であればそのいずれにも結合し得る。典型的には、二環式環系はその環系の中に約7から約12の原子を持ち得る。この語は、ナフチル基、ジシクロヘキシル基、ジシクロヘキセニル基などを含むがそれらに限定されない。
【0094】
「リン酸アナログ」(“phosphate analog”)および「ホスホン酸アナログ」(“phosphonate analog”)という語は、リン原子が+5の酸化状態をとっていて、酸素原子のうちの一つ以上が非酸素部分で置換されているような、リン酸もしくはホスホン酸のアナログを含む。この語は例えば、ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、ホスホロセレノアート、ホスホロジセレノアート、ホスホロアニロチオアート(phosphoroanilothioate)、ホスホラニリダート(phosphoranilidate)、ホスホラミダート(phosphoramidate)、ボロノホスファートなどのリン酸アナログを含み、さらにH、NH4、Na、Kなどの対イオンが存在する場合には、これらの結合した対イオンを含む。
【0095】
「α置換ホスホン酸」(“alpha-substituted phosphonate”)という語には、α炭素上で置換されたホスホン酸基(-CH2PO3H2)が含まれ、例えば-CHFPO3H2、-CF2PO3H2、-CHOHPO3H2、-C=OPO3H2などがある。
【0096】
化合物の「誘導体」(“derivative”)とは、構造が類似している他の化合物から1ステップ以上で生成され得る化学化合物のことを指す。そうしたステップとは例えば、アルキル基、アシル基、もしくはアミノ基による水素の置換がある。
【0097】
「薬学的に許容可能なキャリア」(“pharmaceutically acceptable carrier”)という語には、リン酸緩衝生理食塩水、ヒドロキシプロピル-βシクロデキストリン(HO-プロピルβシクロデキストリン)、水、油/水エマルジョンもしくは水/油エマルジョンなどのエマルジョン、様々な種類の湿潤剤などの、標準的な薬学的キャリアの任意のものを含む。この語は、ヒトを含む動物での使用のために、米国連邦政府の規制当局によって認可された薬剤、あるいは米国薬局方に列挙された薬剤のうちの任意のものも含む。
【0098】
「薬学的に許容可能な塩」(“pharmaceutically-acceptable salt”)という語は、開示された化合物の生物学的有効性と特性を保持し、かつ生物学的にもしくはその他の点で好ましくないものではない塩をあらわす。多くの場合、開示された化合物は、アミノ基もしくはカルボキシル基あるいはそれらに類似する基があるおかげで、酸もしくは塩基の塩を形成することができる。
【0099】
「有効量」(“effective amount”)とは、選択された効果をもたらすのに十分な量を意味する。例えば、S1P受容体アゴニストの有効量とは、S1P受容体の細胞シグナル伝達活性を下げる量のことである。
【0100】
開示された化合物は、一つ以上の不斉中心を分子内に含むことができる。本発明の開示に従って、立体化学を指定しない任意の構造は、全ての様々な光学異性体、ならびにそれらのラセミ混合物を包含するものと理解される。
【0101】
開示された化合物は互変異性体で存在してもよく、本発明は個々の単一の互変異性体と混合物の両方を含む。例えば以下の構造
【0102】
【化8】

は、
【0103】
【化9】

だけでなく
【0104】
【化10】

の構造の混合物をあらわすものと理解される。
【0105】
16:0、18:0、18:1、20:4、もしくは22:6の炭化水素という語は、分岐もしくは直鎖であるアルキル基またはアルケニル基をあらわし、最初の整数はその基中の炭素の総数をあらわし、第二の整数はその基中の二重結合の数をあらわしている。
【0106】
「S1P調節剤」とは、in vivoもしくはin vitroでS1P受容体活性の検出可能な変化(例えば、実施例で説明されたバイオアッセイなどの当該技術分野で既知の所定のアッセイによって測定される、S1P活性の少なくとも10%の増加もしくは減少)を引き起こすことができる化合物もしくは組成物をあらわす。「S1P受容体」とは、特定のサブタイプが示されない限り、全てのS1P受容体サブタイプをあらわす(例えば、S1P受容体S1P1、S1P2、S1P3、S1P4、およびS1P5)。
【0107】
当業者には当然のことながら、不斉中心を持つ開示された化合物は、光学活性なラセミ体で存在し、分離されてもよい。当然のことながら、開示された化合物は、本明細書に記載された有用な特性を有する化合物の、任意のラセミ体、光学活性体、もしくは立体異性体、またはそれらの混合物(S,R; S,S; R,R;もしくはR,Sジアステレオマーなど)を包含する。そのような光学活性体を調製する方法(例えば、再結晶化技術によるラセミ体の光学分割、光学活性な出発物質からの合成、キラル合成、もしくはキラル固定相を用いるクロマトグラフィー分離によるもの)、ならびに、本明細書で記載される標準検査を用いて、もしくは当該技術分野で周知の他の同様の検査を用いて、S1Pアゴニスト活性を計測する方法は、当該技術分野で周知である。さらに、いくつかの化合物は多形を示すこともある。
【0108】
S1P受容体アゴニストプロドラッグ(S1P1受容体型選択性のアゴニストが好ましい)の利用可能性は、ブドウ膜炎、I型糖尿病、関節リウマチ、炎症性腸疾患、また特に多発性硬化症などの自己免疫病変のための処置方法として、リンパ球トラフィッキングを変化させることを含むが、これに限定されない。多発性硬化症の“処置”は、再発寛解型、慢性進行型、などを含む様々な疾患の種類を含み、S1P受容体アゴニストは、予防的に使用するだけでなく、疾病の兆候および症状を緩和するために、単独で使用することもできるし、あるいはその他の薬剤と併用することもできる。
【0109】
さらに、開示された化合物は、同種移植片生着の延長(例えば固形臓器移植、移植片対宿主病の処置、骨髄移植など)のための方法として、リンパ球トラフィッキングを変化させるために使用することができる。
【0110】
さらに、開示された化合物はオートタキシン(autotaxin)を抑制するのに使用することができる。オートタキシンは血漿ホスホジエステラーゼであり、最終生成物阻害を受けることがわかっている。オートタキシンはいくつかの基質を加水分解してリゾホスファチジン酸とスフィンゴシン1-リン酸を生じ、癌の進行と血管新生に関係している。従って、開示された化合物のS1P受容体アゴニストプロドラッグはオートタキシンを阻害するために使用することができる。この活性は、S1P受容体における受容体活性化作用(アゴニズム)と組み合わされることもあるし、あるいはそのような作用とは独立していることもある。
【0111】
さらに、開示された化合物はS1Pリアーゼの阻害に有用となり得る。S1PリアーゼはS1Pを不可逆的に分解する細胞内酵素である。S1Pリアーゼの阻害は、リンパ球減少を併発してリンパ球トラフィッキングを妨害する。従って、S1Pリアーゼ阻害剤は免疫系機能の調節に有用となり得る。そのため、開示された化合物はS1Pリアーゼを抑制するために使用することができる。この抑制は、S1P受容体活性と協働することもあるし、あるいはいずれのS1P受容体における活性からも独立していることがある。
【0112】
さらに、開示された化合物はカンナビノイドCB1受容体のアンタゴニストとして有用となり得る。CB1拮抗作用(アンタゴニズム)は、体重の減少と血中脂質プロファイルの改善に関係がある。CB1拮抗作用はS1P受容体活性と協働することもあるし、あるいはいずれのS1P受容体における活性からも独立していることがある。
【0113】
さらに、開示された化合物はグループIVA細胞質PLA2(cPLA2)の阻害に有用となり得る。cPLA2はエイコサン酸(例えばアラキドン酸)の放出を触媒する。エイコサン酸は、プロスタグランジンやロイコトリエンなどの炎症性エイコサノイドに変化する。従って、開示された化合物は抗炎症薬として有用となり得る。この抑制は、S1P受容体活性と協働することもあるし、あるいはいずれのS1P受容体における活性からも独立していることがある。
【0114】
さらに、開示された化合物は複数基質脂質キナーゼ(MuLK)の抑制のために有用となり得る。MuLKは多くのヒト腫瘍細胞に高度に発現するので、その抑制は腫瘍の成長もしくは拡大を遅らせる可能性がある。
【0115】
多発性硬化症の“処置”は、再発寛解型、慢性進行型などを含む様々な疾病の種類を含み、S1P受容体アゴニストは、予防的に用いるだけでなく、疾病の兆候および症状を緩和するために、単独で使用することもできるし、あるいはその他の薬剤と併用することもできる。
【0116】
本発明はまた、構造式Iの化合物を含む薬学的組成物も含む。より具体的には、そのような化合物は、当業者に既知の標準的な薬学的に許容可能なキャリア、充填剤、可溶化剤、安定剤を用いて、薬学的組成物として処方され得る。例えば、構造式Iの化合物、またはそのアナログ、誘導体、もしくは改良体を含む薬学的組成物が、本明細書で記載されるように、被験者に適切な化合物を投与するために使用される。
【0117】
構造式Iの化合物は、構造式Iの化合物の治療的に許容可能な量、または、構造式Iの化合物の治療有効量および薬学的に許容可能なキャリアを含む薬学的組成物を、それらを必要とする被験者に投与することを含む、疾患もしくは障害の処置のために有用である。
【0118】
開示された化合物と方法は、一つ以上のS1P受容体(特にS1P1、S1P4、S1P5受容体型)において受容体アゴニストもしくはアンタゴニストとしての活性を持つスフィンゴシン1-リン酸(S1P)アナログを対象とする。開示された化合物と方法は、リン酸部分を持つ化合物、ならびにホスホン酸、α置換ホスホン酸(特にα置換がハロゲンとホスホチオン酸(phosphothionates)であるもの)などの耐加水分解性のリン酸サロゲート(surrogate)を持つ化合物の両方を含む。
【0119】
基、置換基、範囲について下記に列挙した値は一例に過ぎず、基および置換基の規定範囲内のその他の値もしくはその他の規定値を除外するものではない。
【0120】
X1、Y1、およびZ1は独立に、O、CH、CH2、CHCF3、N、NH、もしくはSである。
【0121】
X1、Y1、およびZ1の別の値は、CH2である。
【0122】
R1は、水素、フッ素、塩素、臭素、トリフルオロメチル基、メトキシ基、(C1-C6)アルキル基、(C1-C6)ハロアルキル基、または、アルコキシ基もしくはシアノ基で置換された(C1-C6)アルキル基であり得る。
【0123】
R1のさらなる値としては、水素、トリフルオロメチル基、もしくは-CH2CF3がある。
【0124】
R1のなおもさらなる値としては、アルキル置換アリール基、アリール置換アルキル基、もしくはアリール置換アリールアルキル基がある。
【0125】
R1のなおもさらなる値としては、ベンジル基、フェニルエチル基、もしくはメチルベンジル基がある。
【0126】
構造式Iを持つ化合物は、-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-の構造を持つ鎖を含むR2基を持ち得る。
【0127】
R2の値は以下を含む。
【0128】
【化11】

【0129】
W1の例示的な値は、結合、-CH2-CH2-CH2-、もしくは-(C=O)(CH2)1-5である。
【0130】
構造式IIを持つR2のさらなる値は以下の通りである。
【0131】
【化12】

【0132】
ここでY3は、(CH3)3C-、CH3CH2(CH3)2C-、CH3CH2CH2-、CH3(CH2)2CH2-、CH3(CH2)4CH2-、(CH3)2CHCH2-、(CH3)3CCH2-、CH3CH2O-、(CH3)2CHO-もしくはCF3CH2CH2-、または、下記の構造式を持つ基である。
【0133】
【化13】

【0134】
構造式II(パラ置換3,5-ジフェニル-(1,2,4)-オキサジアゾール)を持つR2のさらなる値は以下の通りである。
【0135】
【化14】

【0136】
構造式IIを持つR2の別の値は、以下の通りである。
【0137】
【化15】

【0138】
構造式IIを持つR2の別の値は、以下の通りである。
【0139】
【化16】

【0140】
構造式IIIを持つR2のさらなる値は、以下の通りである。
【0141】
【化17】

【0142】
構造式IIIを持つR2の別の値は、以下の通りである。
【0143】
【化18】

【0144】
構造式Vを持つR2の別の値は、以下の通りである。
【0145】
【化19】

【0146】
R2のさらなる値としては、(C1-C20)アルキル基、(C1-C20)アルコキシ基、もしくは(C2-C26)アルコキシアルキル基がある。
【0147】
R2のなおもさらなる値としては、(C1-C10)アルキル基、(C2-C10)アルケニル基、ならびに、カルボニル基(C=O)もしくはオキシム基(C=NRd)で任意に置換された(C2-C14)アルキニル基または(C1-C10)アルコキシ基、が含まれる。
【0148】
R2のさらなる値としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロエトキシ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘプトキシ基、もしくはオクトキシ基が含まれる。
【0149】
R3の別の値としては、メチル基、ヒドロキシメチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、プロピル基、ヒドロキシプロピル基、もしくはイソプロピル基がある。
【0150】
R3の別の値は、メチル基、ヒドロキシメチル基、エチル基、もしくはヒドロキシエチル基である。
【0151】
R4の値としては、ヒドロキシル基、もしくはリン酸基(-OPO3H2)がある。
【0152】
特定の化合物は以下の構造式を持つ。
【0153】
【化20】

【0154】
さらなる化合物は以下の構造式を持つ。
【化21】






【0155】
構造式Iを持つさらなる化合物は、ヒドロキシル基から水素原子のうち一つ以上がリン酸基-OP(=O)(OH)2で置換された、上記もしくは図1の化合物、ならびにその全ての鏡像異性体を含む。
【0156】
構造式Iのさらなる化合物は以下の表1に例示される。
【0157】
【表1】

【0158】
構造式XXからXXVもしくはXXXIを持つ化合物は、以下のようなそれらの全ての鏡像異性体も含み、これらは表1のRe基の各々を有する。
【0159】
【化22】

【0160】
別の態様では、本発明は構造式Iの一般構造を持つS1P受容体プロドラッグ化合物を提供し、これは、構造式VIIを持つ一置換テトラリン環系を持つ化合物によって提供される。構造式Iのいくつかの実施形態では、構造(例えばVIIIおよびIX)はただ一つの不斉中心しか持たないので、アミノ炭素はプロキラルであり、例えば酵素触媒リン酸化を受けてキラルとなる。
【0161】
いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、本明細書に記載された化合物は、例えば第一級アルコールのリン酸化によって活性化されてモノリン酸化アナログを形成するプロドラッグであることが想定される。さらに、活性薬剤はS1Pタイプ1受容体のアゴニストであることが想定される。
【0162】
構造式Iの化合物が、安定な非毒性の酸もしくは塩基の塩を作るのに十分に塩基性もしくは酸性である場合、化合物を薬学的に許容可能な塩として調製および投与することが適切となり得る。薬学的に許容可能な塩の例は、生理学的に許容可能なアニオンを形成する酸で形成された有機酸付加塩(例えばトシル酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、α-ケトグルタル酸塩、α-グリセロリン酸塩)である。塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、重炭酸塩、炭酸塩を含む無機塩もまた形成され得る。
【0163】
薬学的に許容可能な塩は当該技術分野で周知の標準的な手順を用いて得られる。例えば、生理学的に許容可能なアニオンをもたらす適切な酸と、アミンなどの十分に塩基性の化合物との反応によって、得ることができる。アルカリ金属(例えばナトリウム、カリウム、もしくはリチウム)またはアルカリ土類金属(例えばカルシウム)のカルボン酸塩もまた作ることができる。
【0164】
薬学的に許容可能な塩基付加塩は、無機塩基および有機塩基から調製できる。無機塩基からの塩には、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、およびマグネシウムの塩が含まれるが、これらに限定されない。有機塩基から得られる塩には、一級アミン、二級アミン、三級アミンの塩が含まれるがこれらに限定はされず、例えば、アルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、置換アルキルアミン、ジ(置換アルキル)アミン、トリ(置換アルキル)アミン、アルケニルアミン、ジアルケニルアミン、トリアルケニルアミン、置換アルケニルアミン、ジ(置換アルケニル)アミン、トリ(置換アルケニル)アミン、シクロアルキルアミン、ジ(シクロアルキル)アミン、トリ(シクロアルキル)アミン、置換シクロアルキルアミン、ジ置換シクロアルキルアミン、トリ置換シクロアルキルアミン、シクロアルケニルアミン、ジ(シクロアルケニル)アミン、トリ(シクロアルケニル)アミン、置換シクロアルケニルアミン、ジ置換シクロアルケニルアミン、トリ置換シクロアルケニルアミン、アリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ヘテロアリールアミン、ジへテロアリールアミン、トリへテロアリールアミン、複素環アミン、ジ複素環アミン、トリ複素環アミン、アミン上の置換基のうち少なくとも二つが異なり、かつその置換基が、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、もしくは複素環基などであるような、混合ジ-アミンおよびトリ-アミンなどの、1級アミン、2級アミン、3級アミンの塩が含まれる。また、二つもしくは三つの置換基が、アミノ窒素と共に複素環もしくはヘテロアリール基を形成するアミンも含まれる。アミンの非限定的な例としては、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリ(イソプロピル)アミン、トリ(n-プロピル)アミン、エタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、トロメタミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、N-アルキルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、モルフォリン、N-エチルピペリジンなどを含む。また当然のことながら、その他のカルボン酸誘導体も有用であろう(例えばカルボキサミド、低級アルキルカルボキサミド、ジアルキルカルボキサミドなどを含むカルボン酸アミド)。
【0165】
構造式Iの化合物は薬学的組成物として処方することができ、ヒトの患者などの哺乳類の宿主に、選択された投与経路(例えば、経口もしくは非経口、静脈内、筋肉内、局所もしくは皮下の経路)に適した様々な形で投与することができる。
【0166】
従って、本発明の化合物は、不活性希釈剤もしくは吸収可能な可食性のキャリアなどの、薬学的に許容可能な媒体と併せて、例えば経口で全身投与されてもよい。化合物は、ハードシェルゼラチンカプセルもしくはソフトシェルゼラチンカプセルに入れてもよいし、タブレットに圧縮してもよいし、あるいは患者の食事の食べ物に直接混ぜてもよい。治療用経口投与のために、活性化合物は一つ以上の賦形剤と合わせてもよいし、摂取可能なタブレット、口腔錠、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウェハースなどの形で使用されてもよい。そのような組成物と製剤は、少なくとも約0.1%の活性化合物を含むべきである。組成物と製剤のパーセンテージは勿論異なってもよく、好都合に所定の単位剤形の質量の約2%〜約60%の間であってもよい。そのような治療上有用な組成物における活性化合物の量は、効果的な投与量レベルが得られるような量である。
【0167】
タブレット、トローチ、ピル、カプセルなどは、以下のものも含んでもよい。:トラガカント・ゴム、アラビアゴム、コーンスターチもしくはゼラチンなどの結合剤、第二リン酸カルシウムなどの賦形剤、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、スクロース、フルクトース、ラクトース、もしくはアスパルテームなどの甘味料、またはペパーミント、冬緑油、もしくはチェリーフレーバーなどの香料が加えられてもよい。単位剤形がカプセルの際は、上述の種類の材料に加えて、植物油もしくはポリエチレングリコールなどの液体キャリアを含んでもよい。様々な他の材料がコーティングとして存在してもよく、あるいはそうでなければ固形単位剤形の物理的形状を修正するように存在してもよい。例えば、タブレット、ピル、もしくはカプセルは、ゼラチン、ワックス、セラック、もしくは糖などでコーティングされてもよい。シロップもしくはエリキシル剤は、活性化合物、甘味料としてスクロースもしくはフルクトース、保存料としてメチルパラベンおよびプロピルパラベン、着色料、チェリーもしくはオレンジフレーバーなどの香料を含んでもよい。勿論、任意の単位剤形を調製するために使用される任意の材料は、使用される量において、薬学的に許容可能で、かつ実質的に非毒性であるべきである。さらに、活性化合物は徐放性製剤および装置に組み込まれてもよい。
【0168】
また、活性化合物は、輸液もしくは注射によって、静脈内もしくは腹腔内に投与されてもよい。活性化合物もしくはその塩の溶液は、非毒性の界面活性剤と随意に混合して、水に調製することができる。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチン、およびそれらの混合物、ならびに油分に調製することもできる。通常の保存条件と使用条件において、これらの製剤は微生物の繁殖を防ぐために保存料を含む。
【0169】
注射もしくは輸液用の例示的な薬の剤形としては、滅菌した注射可能もしくは注入可能な溶液もしくは分散液の即時調製のために適した、随意にリポソームに封入された、有効成分を含む滅菌水溶液もしくは分散液もしくは滅菌粉末を含むことができる。全ての場合において、最終的な剤形は、製造条件および保存条件下において、滅菌、流体、かつ安定であるべきである。液体キャリアもしくは媒体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、非毒性グリセリルエステル、およびそれらの混合物を含む溶媒もしくは液体分散媒質であり得る。適切な流動性は、例えばリポソームの形成、分散液の場合には必要な粒子サイズの維持、もしくは界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の抑制は、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどの様々な抗菌剤および抗真菌薬によってもたらすことができる。多くの場合、例えば糖、バッファーもしくは塩化ナトリウムといった等張剤を含むことが好ましい。例えばモノステアリン酸アルミニウムとゼラチンといった吸収遅延剤を組成物中で使用することによって、注射可能な組成物の持続的吸収をもたらすことができる。
【0170】
滅菌した注射可能な溶液は、必要な量の活性化合物を、上記に列挙された様々なその他の成分と共に適切な溶媒に合わせ、必要に応じてその後ろ過滅菌することによって調製される。滅菌した注射可能な溶液の調製用の滅菌粉末の場合は、真空乾燥と凍結乾燥技術が調製方法として好ましい。これらの方法では、前もってろ過滅菌した溶液に存在する任意の所望の追加成分を含む有効成分の粉末を生じる。
【0171】
局所投与のために、本発明の化合物は、純粋な形(例えば液体)で適用されてもよい。しかしながら、化合物は、固体もしくは液体であってもよい皮膚科学的に許容可能なキャリアと併用して、組成物もしくは製剤として皮膚に投与することが一般的に好ましい。
【0172】
固形キャリアの例としては、タルク、粘土、微結晶セルロース、シリカ、アルミナなどの微粉固体を含む。有用な液体キャリアは、水、アルコール、もしくはグリコール、もしくは水‐アルコール/グリコール混合物を含み、その中に本発明の化合物が、随意に非毒性の界面活性剤を用いて、効果的なレベルで溶解もしくは分散され得る。香料および追加の抗菌剤などのアジュバントを、所定の用途のために特性を最適化するために付加することができる。得られる液体組成物は、吸収パッドから適用することができ、包帯およびその他の包帯剤に浸透させるために使用することができ、あるいは、ポンプタイプもしくはエアロゾルスプレーを用いて患部上にスプレーすることができる。
【0173】
合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩、および脂肪酸エステル、脂肪アルコール、変性セルロース、もしくは変性無機材料などの増粘剤も、使用者の皮膚に直接適用するために、塗布可能な(spreadable)ペースト、ゲル、軟膏、石鹸などを形成するために、液体キャリアと共に利用することが出来る。
【0174】
構造式Iの化合物を皮膚に供給するために使用できる有用な皮膚用組成物の例は、当該技術分野で既知である。例えば、Jacquet et al. (U.S.Pat. No. 4,608,392)、Geria (U.S. Pat. No. 4,992,478)、Smith et al. (U.S. Pat. No. 4,559,157)およびWortzman (U.S. Pat. No. 4,820,508)を参照のこと。
【0175】
構造式Iの化合物の有用な投与量は、そのin vitro活性、および動物モデルにおけるin vivo活性の比較によって決定できる。マウスおよびその他の動物における有効投与量のヒトへの外挿法は当該技術分野で既知であり、例えばU.S. Pat. No. 4,938,949を参照のこと。
【0176】
一般的に、ローションなどの液組成における構造式Iの化合物(群)の濃度は、約0.1〜約25 wt%であり、約0.5〜10 wt%が好ましい。ゲルもしくは粉末などの半固体もしくは固体組成における濃度は、約0.1〜5 wt%であり、組成物の総重量に基づいて約0.5〜2.5 wt%が好ましい。
【0177】
処置での使用のために必要な化合物、もしくはその活性塩もしくは誘導体の量は、選択される特定の塩によって異なるだけでなく、投与経路、処置される疾病の特性、および患者の年齢と状態によっても異なり、最終的にはかかりつけの医師もしくは臨床医の判断による。しかしながら一般的には、投与量は一日当たり体重の約0.1から約10 mg/kgの範囲であろう。
【0178】
化合物は単位剤形で都合よく投与される。例えば、5〜1000 mg、好都合には10〜750 mg、最も好都合には50〜500 mgの有効成分を単位剤形あたりに含む。
【0179】
理想的には、有効成分は約0.5〜約75μMの活性化合物のピーク血漿濃度に達するように投与されるべきであり、約1〜50μMが好ましく、約2〜約30μMが最も好ましい。これは、例えば有効成分の0.05〜5%溶液の静脈内注射(随意に食塩水に入れて)によって、あるいは約1〜100 mgの有効成分を含むボーラス(bolus)として経口投与することによって実現されてもよい。好ましい血中レベルは、約0.01〜5.0 mg/kg/hrを供給する持続注入、もしくは約0.4〜15 mg/kgの有効成分(群)を含む間欠的注入によって維持されてもよい。
【0180】
所望の投与量は、好都合に単回投与で示されてもよいし、あるいは、例えば一日あたり2、3、4、もしくはそれ以上のsub-dosesとして、適切な間隔で投与される分割投与として示されてもよい。sub-dose自体も、例えば吸入器からの複数回吸入、もしくは眼への複数滴の点眼など、複数の個別の大まかに間隔をあけた投与にさらに分割されてもよい。
【0181】
開示された方法は、構造式Iの阻害化合物と、その阻害化合物もしくはその阻害化合物を含む組成物の、細胞もしくは被験者への投与を説明する教材を含んだキットを含む。これは、その化合物もしくは組成物を細胞もしくは被験者に投与する前に、その阻害化合物もしくは組成物を溶解もしくは懸濁するための(好ましくは滅菌の)溶媒を含むキットなど、当業者に既知のキットのその他の実施形態を含むと解釈されるべきである。被験者はヒトであることが好ましい。
【0182】
開示された化合物および方法に従って、上述したように、または以下の実施例で説明するように、当業者に知られた従来の化学、細胞学、組織化学、生化学、分子生物学、微生物学、およびin vivoの技術を利用できる。これらの技術は文献にて完全に説明されているものである。
【0183】
さらなる説明無しに、当業者は前述の説明と以下の実施形態例を用いて、開示された化合物を作成し利用することができると考えられる。
【0184】
構造式Iの化合物の調製、もしくは構造式Iの化合物の調製に有用な中間体の調製のためのプロセスは、さらなる実施形態として提供される。構造式Iの化合物の調製に有用な中間体もまた、さらなる実施形態として提供される。そのプロセスはさらなる実施形態として提供され、本明細書においてスキームで図解される。他に限定されない限り、総称的な基の意味は上述した通りである。
【0185】
いくつかの開示された化合物の合成の実施例をスキーム1(図2)に図示する。試薬と条件は次の通りである。a)Tf2O、2,6-ルチジン、CH2Cl2、0℃、2h、93%;b)1-オクテン、9-BBN、K3PO4、KBr、H2O、Pd(PPh3)4、65℃、2h、82%;c)CuBr2、EtOAc、CHCl3、還流 6h、80%;d)NaH、N-アセトアミド-マロン酸ジエチル、DMF、0℃-rt、一晩、75%;e)Et3SH、TiCl4、CH2Cl2、rt、12h、65%;f)LiBH4、rt、THF、48h、33%;g)LiOH、H2O、MeOH、THF、50℃、5h、75%;h)P2O5、H3PO4、100℃、2h、37%;i)12M HCL、MeOH、還流、2h;j)LiAlH4、THF、還流、12h、21%、二段階;k)P2O5、H3PO4、100℃、2h、50%
【0186】
光学活性である、開示された化合物の合成の実施例を、スキーム4とスキーム5(図5A、図5B、図5C)および以下の実施例で説明する。
【0187】
本発明の化合物はクロマトグラフィーを用いて鏡像異性体に分離された。いくつかはリン酸化もされ、リン酸化化合物もまた、キラルクロマトグラフィーを用いて単一ジアステレオマーへと分離された。これはスキーム6(図6)に図示される。
【0188】
これより、以下の実施例および実施形態を参照して本発明を説明してゆく。説明を追加するまでもなく、当業者は、前述の記載と後述する実施例を用いて、開示された化合物を作成し利用できると考えられる。使用される化学薬品は例えばSigma-Aldrichなどの民間供給業者から容易に調達できる。従って以下の実施例は、例示目的に提供されたに過ぎず、特に好ましい実施形態を指摘し、本開示の残りを何らかの形で限定するものと解釈されるものではない。従って、実施例は、本明細書で提供される教示の結果として明らかとなる、いかなる全ての変更をも包含するものと解釈されるべきである。
【0189】
【実施例】
【0190】
〔実施例1:トリフルオロメタンスルホン酸5-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル エステル(2)〕
【0191】
【化23】

【0192】
0℃に冷却した6-ヒドロキシ-1-テトラロン(1.62 g、10 mmol)と2,6-ルチジン(1.28 mL、10 mmol)の乾燥ジクロロメタン(10 mL)溶液に、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(1.7 mL、10 mmol)を1時間かけてゆっくりと加えた。1時間後、溶液をジクロロメタン(10 mL)で希釈し、1M 塩酸(20 mL)で洗った。水層をジクロロメタン(50 mL)で再抽出し、あわせた有機物を1M 塩酸(10 mL)で洗った。有機物を硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、CH2Cl2)で精製し、2.7 gの化合物2を得た(93%)。
【0193】
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 2.13 (p, 2H, J = 6.22Hz), 2.63(t, 2H, J = 6.95Hz), 2.98 (t, 2H, J = 6.22Hz), 7.15 (m, 2H), 8.07 (m, 1H); 13C NMR δ23.08, 29.88, 38.92, 116.74, 119.81, 121.56, 130.14, 132.58, 147.38, 152.52, 196.53
【0194】
〔実施例2:6-オクチル-3,4-ジヒドロ-2H-ナフタレン-1-オン(3)〕
【0195】
【化24】

【0196】
9-BBN(0.5 MのTHF溶液、20.2 mL、10.1 mmol)を1-オクテン(1.6 mL、10.1 mmol)に室温で加えた。溶液を室温で一晩攪拌した。この後、K3PO4(2.93 g、13.8 mmol)、Pd(Ph3P)4(191 mg、0.17 mmol、1.8 mol%)、KBr(1.2 g、10.1 mmol)および脱気H2O(0.18 mL、10 mmol)を加えた。この後、化合物2(2.7 g、9.2 mmol)の乾燥脱気THF(10 mL)溶液を加えた。反応混合物をアルゴン下で65℃で2時間加熱した。冷却後、溶液をpH 1に酸性化し、EtOAc(100 mL)に抽出した。水層をEtOAc(50 mL)で再抽出し、あわせた有機物をH2O(20 mL)と塩水(40 mL)で洗った。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン中5% EtOAc)で精製し、1.93 gの化合物3を得た(82%)。
【0197】
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 0.85 (t, 3H, J = 6.95Hz), 1.24 (bs, 10H), 1.58 (p, 2H, J = 6.95Hz), 2.06 (p, 2H, J = 5.85Hz), 2.57 (t, 4H, J = 6.95Hz), 2.87 (t, 2H, J = 6.22Hz), 7.01 (s, 1H), 7.06 (d, 1H, J = 8.05 Hz), 7.91 (d, 1H, J = 8.06Hz); 13C NMR δ 14.32, 22.88, 23.61, 29.44, 29.55, 29.66, 29.96, 31.32, 32.08, 36.31, 39.33, 127.12, 127.45, 128.73, 130.75, 144.70, 149.28, 198.09
【0198】
〔実施例3:2-ブロモ-6-オクチル-3,4-ジヒドロ-2H-ナフタレン-1-オン(4)〕
【0199】
【化25】

【0200】
臭化銅(II)(3.34 g、15.0 mmol)を、攪拌しながら酢酸エチル(10 mL)で加熱還流した。これにクロロホルム(10 mL)中の化合物3(1.93 g、7.5 mmol)を加えた。反応物をさらに6時間加熱還流し、冷却した。臭化銅(I)と臭化銅(II)の残留物をろ過し、ろ液を活性炭で脱色し、Celiteベッドを通してろ過し、酢酸エチル(4×50 mL)で洗った。溶媒を減圧下で除去し、残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン中2% EtOAc)で精製し、2.02 gの化合物4を得た(80%)。
【0201】
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 0.87 (t, 3H, J = 6.95Hz), 1.26 (bs, 10H), 1.61 (p, 2H, J = 6.96Hz), 2.46 (m, 2H), 2.62 (t, 2H, J = 7.69Hz), 2.86 (dt, 1H, J = 16.34Hz, 4.39Hz), 3.27 (dt, 1H, J = 16.83Hz, 4.39Hz), 4.69 (t, 1H, J = 4.02Hz), 7.07 (s, 1H), 7.14 (d, 1H, J = 8.05 Hz), 7.99 (d, 1H, J = 8.05Hz); 13C NMR δ 14.34, 22.88, 26.42, 29.44, 29.57, 29.64, 31.25, 32.08, 32.32, 36.39, 127.75, 128.00, 128.73, 129.00, 144.30, 150.39, 190.54
【0202】
〔実施例4:2-アセチルアミノ-2-(6-オクチル-1-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-マロン酸ジエチルエステル(5)〕
【0203】
【化26】

【0204】
鉱油中の水素化ナトリウム(720 mg、18.0 mmol)60%を乾燥DMF(10 mL)に懸濁し、アセトアミドマロン酸ジエチル(3.26 g、15 mmol)の乾燥DMF(10 mL)溶液を加えた。溶液を、アニオンが形成するまで0℃で3時間攪拌した。化合物4(2.02 g、6.0 mmol)の乾燥DMF(10 mL)溶液を加え、溶液を室温まで暖め、一晩攪拌した。混合物を蒸留水(50 mL)に注ぎ、氷浴中で、1M 塩酸でpH 3に酸性化し、酢酸エチル(3×50 mL)で抽出した。有機相を塩水(2×30 mL)で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン中40% EtOAc)で精製し、2.12 gの化合物5を得た(75%)。
【0205】
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 0.85 (t, 3H, J = 6.22Hz), 1.24 (m, 16H), 1.58 (p, 2H, J = 6.95Hz), 1.97 (s, 3H), 2.59 (t, 2H, J = 7.32Hz), 2.83-3.21 (m, 4H), 3.88 (dd, 1H, J = 14.00Hz, 3.68Hz), 4.14-4.32 (m, 4H), 6.86 (s, 1H), 7.03 (s, 1H), 7.07 (d, 1H, J = 8.69Hz), 7.84 (d, 1H, J = 8.36Hz); 13C NMR δ 14.05, 14.16,14.30, 22.85, 23.31, 26.98, 29.40, 29.49, 29.61, 29.98, 31.28, 32.05, 36.32, 56.16, 62.40, 63.13, 66.33, 127.16, 127.63, 128.78, 144.84, 150.07, 166.38, 168.70, 169.83, 197.63
【0206】
〔実施例5:2-アセチルアミノ-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-マロン酸ジエチルエステル(6)〕
【0207】
【化27】

【0208】
5 mlのCH2Cl2中のトリエチルシラン(1.3 ml、8.2 mmol)の溶液に、5 mlのCH2Cl2中の化合物5(1 g、2.1 mmol)を加えた。反応混合物を室温でAr下で攪拌し、TiCl4(0.09 ml、8.2 mmol)を滴加した。得られた溶液を12時間攪拌し、0℃に冷却して、10 mlの飽和NaHCO3をゆっくりと加えてクエンチした。水層をCH2Cl2(3×30 mL)で抽出した。あわせた有機層を塩水(2×30 mL)で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン中20% EtOAc)で精製し、630 mgの化合物6を得た(65%)。
【0209】
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 0.87 (t, 3H, J = 6.46Hz), 1.26 (m, 16H), 1.58 (p, 2H, J = 6.79Hz), 2.03 (s, 3H), 2.28 (b, 1H), 2.49-2.68 (m, 4H), 2.82-2.92 (m, 2H), 4.20-4.34 (m, 4H), 6.69 (s, 1H), 6.89-7.05 (m, 3H); 13C NMR δ 14.21, 14.25, 14.37, 22.92, 23.37, 25.48, 29.50, 29.63, 29.72, 29.76, 30.39, 31.93, 32.13, 35.78, 40.33, 62.46, 62.79, 68.80, 126.04, 128.81, 129.30, 132.85, 136.28, 140.66, 150.07, 167.63, 168.32, 169.42
【0210】
〔実施例6:N-[2-ヒドロキシ-l-ヒドロキシメチル-l-(6-オクチル-l,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-エチル]-アセトアミド(7)〕
【0211】
【化28】

【0212】
水素化ホウ素リチウム(2M THF溶液、0.88 ml、1.76 mmol)を、0℃で5 mlのTHF中の化合物6(200 mg、0.44 mmol)に加えた。反応混合物を室温で48時間攪拌し、40 mlの酢酸エチルで希釈した。溶液を塩水(2×20 mL)で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、CH2Cl2中4% MeOH)で精製し、55 mgの化合物7を得た(33%)。
【0213】
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 0.88 (t, 3H, J = 6.56Hz), 1.29 (m, 10H), 1.57 (p, 2H, J = 6.25Hz), 1.94-1.98 (m, 2H), 2.05 (s, 3H), 2.33 (m, 1H), 2.51 (t, 2H, J = 7.32), 2.60-2.85 (m, 4H), 3.69 (d, 2H, J = 11.61), 3.89 (dd, 2H, J = 11.61Hz, 7.25Hz), 6.22 (s, 1H), 6.88-6.99 (m, 3H); 13C NMR δ14.38, 22.92, 24.20, 24.35, 29.52, 29.66, 29.73, 29.95, 30.32, 31.94, 32.14, 35.78, 38.26, 63.55, 64.34, 64.46, 126.18, 128.85, 129.30, 133.06, 136.22, 140.75, 172.40
【0214】
〔実施例7:2-アミノ-2-(6-オクチル-l,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-プロパン-l,3-ジオール(VPC104061)〕
【0215】
【化29】

【0216】
MeOH(3 ml)、THF(1.5 ml)、水(3 ml)中の化合物7(53 mg、0.14 mmol)とLiOH.H2O(45 mg、1.1 mmol)の溶液を50℃で5時間攪拌し、酢酸エチル(20 ml)で希釈した。溶液を塩水(2×10 mL)で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、CH2Cl2中50% MeOH)で精製し、35 mgの化合物 VPC104061 を得た(75%)。
【0217】
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 0.88 (t, 3H, J = 6.17Hz), 1.29 (m, 10H), 1.56 (p, 2H, J = 6.17Hz), 1.82-1.98 (m, 2H), 2.51 (t, 2H, J = 6.95), 2.58-2.88 (m, 5H), 3.19 (b, 4H), 3.61 (d, 2H, J = 10.98), 3.73 (d, 2H, J = 10.61Hz), 6.87-6.98 (m, 3H); 13C NMR δ 14.37, 22.93, 24.02, 29.32, 29.53, 29.70, 29.75, 29.85, 30.26, 31.94, 32.14, 35.08, 39.58, 57.74, 66.13, 66.19, 126.09, 128.81, 129.39, 133.28, 136.26, 140.64. MS (ESI) m/z 334.1 [M+H]+
【0218】
〔実施例8:リン酸モノ-[2-アミノ-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-3-ホスホノオキシプロピル]エステル(VPC104081)〕
【0219】
【化30】

【0220】
リン酸(水中85%、2 ml、29 mmol)中の五酸化リン(2.0 mg、14 mmol)をVPC104061(25 mg、0.07 mmol)に加えた。混合物を100℃で2時間攪拌し、0℃に冷却した。水を加えて生成物を沈殿させた(14 mg、37%)。MS (ESI) m/z 494.4 [M+H]+
【0221】
〔実施例9:アミノ-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-酢酸(8)〕
【0222】
【化31】

【0223】
化合物6(300 mg、0.65 mmol)を12M HCl(10 ml)に加えた。混合物を加熱還流し、混合物が均質になるまでMeOH(5 ml)を加えた。還流は、出発物質が消費されるまで(薄層クロマトグラフィー(TLC)によって決定される)、2時間続けた。反応混合物を減圧下で濃縮し、MeOHとジエチルエーテルとともに複数回共蒸発(co-evaporated)させた。所望の化合物8はジエチルエーテルとヘキサンから再結晶して薄茶色の固体を生じ、これは次の反応に直接使用した。
【0224】
〔実施例10:2-アミノ-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-エタノール(VPC104059)〕
【0225】
【化32】

【0226】
実施例9で調製したアミノ酸8を、THF(10 ml)中の水素化アルミニウムリチウム(62 mg、1.63 mmol)の還流溶液に加えた。反応混合物を12時間加熱還流した後、0℃に冷却し、10M NaOHを加えて20分間攪拌した。酢酸エチル(20 ml)を加え、混合物をCeliteと硫酸マグネシウムを通してろ過した。ろ液を真空下で濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、CH2Cl2中50% MeOH)で精製して、41 mgの生成物、VPC104059を得た(21%、二段階)。
【0227】
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 0.88 (t, 3H, J = 6.39Hz), 1.28 (m, 10H), 1.55 (p, 2H, J = 7.16Hz), 1.67-2.11 (m, 3H), 2.48 (t, 2H, J = 7.69), 2.56-2.83 (m, 5H), 3.19 (b, 4H), 3.47-3.75 (m, 2H), 6.82-6.96 (m, 3H); 13C NMR δ 13.34, 22.58, 26.45, 29.14, 29.21, 29.29, 29.47, 31.70 31.90, 32.26, 35.40, 47.56, 125.64, 128.36, 128.86, 128.93, 133.19, 139.93, MS (ESI) m/z 303.9 [M+H]+
【0228】
〔実施例11:リン酸モノ-[2-アミノ-2-(6-オクチル-l,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-エチル]エステル(VPC104127)〕
【0229】
【化33】

【0230】
リン酸(水中85%、1.5 ml、22 mmol)中の五酸化リン(1.5 g 、10.5 mmol)をVPC104059(25 mg、0.08 mmol)に加えた。混合物を100℃で2時間攪拌し、0℃に冷却した。水を加えて生成物を沈殿させた(10 mg、50%)。MS (ESI) m/z 384.2 [M+H]+
【0231】
〔実施例12:構造(X)の合成〕
スキーム2(図3)に図示された構造式IXを持つエーテル含有化合物の合成。ケト-アルコール1Aは標準的な試薬と技法を用いてケト-エーテル1Bに変換される。ケト-エーテルは実施例3と同様にハロゲン化されてハロ-エーテル1Cを生じる。ハロ-エーテルは実施例4に記載された手順と同様にアルキル化されてジエステル-エーテル1Dを生じる。ジエステルは当該技術分野で既知の標準的な還元剤を用いてエーテル-トリオール1Eに変換される。トリオールは当該技術分野で既知の標準的な方法を用いてジオールに変換され、脱保護され、化合物IXを生じる。
【0232】
〔実施例13:2-アセチルアミノ-2-(6-オクチル-1-ヒドロキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-マロン酸ジエチルエステル(A)
【0233】
【化34】

【0234】
水素化ホウ素ナトリウム(75 mg、2.00 mmol)の5 mlのエタノール溶液に、5 mlのエタノール中の2-アセチルアミノ-2-(6-オクチル-1-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-マロン酸ジエチルエステル(化合物5)(1.00 g、2.1 mmol)を室温で加えた。反応混合物を室温でアルゴン下でさらに1時間攪拌し、水(20 mL)と塩化メチレン(20 mL)を加えてクエンチした。有機層を除去し、水層を塩化メチレン(2×20 mL)で抽出した。あわせた有機層を塩水(2×20 mL)で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン中20%酢酸エチル)で精製し、755 mgの化合物Aを得た(75%)。
【0235】
〔実施例14:2-アセチルアミノ-2-(6-オクチル-3,4-ジヒドロ-ナフタレン-2-イル)-マロン酸ジエチルエステル(B)〕
【0236】
【化35】

【0237】
2-アセチルアミノ-2-(6-オクチル-1-ヒドロキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-マロン酸ジエチルエステル(化合物A、755 mg、1.58 mmol)を無水酢酸(5 mL)に溶解した後、0℃で触媒量の塩化第二鉄(66 mg、0.4 mmol)を加えた。反応物を0℃でさらに2時間攪拌し、20 mLのジエチルエーテルを加えた。反応物を注意深く50 mLの氷水に注ぎ、有機層を素早く分離した。有機層を塩化メチレン(2×20 mL)で再抽出し、あわせた有機層を塩水(20 mL)で一度洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機層を真空下で濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン中10%酢酸エチル)で精製し、458 mgの化合物Bを得た(60%)。完全な合成はスキーム3(図4)に図示される。
【0238】
〔実施例15:トリフルオロ-メタンスルホン酸5-オキソ-5,6,7,8,-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イルエステル〕
0℃で塩化メチレン(200 mL、Acros)中に6-ヒドロキシ-3,4-ジヒドロ-2H-ナフタレン-1-オン(25.45 g、0.1569 mol、Aldrich)と2,6-ルチジン(19 mL、0.16 mol、Aldrich)を含む溶液に、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(28 mL、0.17 mol、Aldrich)をゆっくりと加えた。その後さらに2,6-ルチジン(2 mL、0.02 mol、Aldrich)を加え、反応物を室温で三日間攪拌した。反応物を塩化メチレンで希釈し、1N HClで一度洗った。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した。粗生成物はそれ以上精製せずに実施例16で使用した。MS: m/z=295.24 M+H
【0239】
〔実施例16:6-オクチル-3,4-ジヒドロ-2H-ナフタレン-1-オン〕
9-ボラビシクロ[3.3.1]ノナン(168 mmol、0.168 mol、Aldrich)をテトラヒドロフラン(350 mL、Acros)に溶解し、1-オクテン(28 mL、0.18 mol、Aldrich)を加えた。反応物を室温で2.5時間攪拌した。100 mLのTHF中の、臭化カリウム(20.5 g、0.172 mol、Aldrich)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(9.1 g、0.0078 mol、Strem)、リン酸カリウム(50.0 g、0.235 mol、Aldrich)、水(3.1 mL、0.17 mol、Fisher)、およびトリフルオロ-メタンスルホン酸5-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イルエステル(46.17 g、0.1569 mol)を加えた。反応物をアルゴンのベッド(a bed of argon)で覆い、65℃で3時間加熱した。反応が完了した後、混合物を酢酸エチルで希釈し、飽和重炭酸塩で洗い、5%クエン酸で洗い、塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させて濃縮した。0-5%酢酸エチル/ヘキサンを溶離液として用いて残留物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、表題化合物を22.75 g(56%、二段階にわたる)の収率で得た。MS: m/z=259.41 M+H
【0240】
〔実施例17:(±)-2-ブロモ-6-オクチル-3,4-ジヒドロ-2H-ナフタレン-1-オン〕
臭化銅(II)(20.6 g、0.0924 mol、Aldrich)、6-オクチル-3,4-ジヒドロ-2H-ナフタレン-1-オン(12.00 g、0.04644 mol)、酢酸エチル(60. mL、Fisher)およびクロロホルム(60. mL、Aldrich)を丸底フラスコに加えた。反応物を攪拌し、一晩加熱還流した。溶液を活性炭でろ過、脱色し、Celiteを通してろ過し、酢酸エチルで洗って濃縮した。ヘキサン中2-5%の酢酸エチルを溶離液として用いて残留物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、11.69 gの表題化合物(75%)を油として得た。MS: m/z=337.33 M+H
【0241】
〔実施例18:(±)-2-アセチルアミノ-2-(6-オクチル-1-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-マロン酸ジエチルエステル〕
水素化ナトリウム(鉱油中60%、4.16 g、0.104 mol、Aldrich)とN,N-ジメチルホルムアミド(61 mL、Acros)を丸底フラスコ内でスラリーにした。混合物を0℃で冷却し、N,N-ジメチルホルムアミド(61 mL、Acros)中の2-アセチルアミノ-マロン酸ジエチルエステル(18.80 g、0.08654 mol、Acros)をゆっくりと加えた。反応物を0℃で3時間攪拌し、その時点で、(±)-2-ブロモ-6-オクチル-3,4-ジヒドロ-2H-ナフタレン-1-オン(11.69 g、0.03466 mol)のN,N-ジメチルホルムアミド(71 mL、Acros)溶液を加えた。反応物を室温で16時間攪拌した。混合物を蒸留水で希釈し、氷浴中で冷却し、1M HClでpH 3に酸性化した。反応物を酢酸エチルで抽出し、飽和塩化ナトリウムで洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過して濃縮した。ヘキサン中0-50%の酢酸エチルを溶離液として用いて残留物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、表題化合物を12.88 g(78%)の収率で得た。MS: m/z=474.77 M+H
【0242】
〔実施例19:(±)-2-アセチルアミノ-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-マロン酸ジエチルエステル〕
トリエチルシラン(17 mL、0.11 mol、Aldrich)を丸底フラスコで塩化メチレン(65 mL、Acros)に溶解した。塩化メチレン(65 mL、Acros)中の2-アセチルアミノ-2-(6-オクチル-1-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-マロン酸ジエチルエステル(12.88 g、0.02720 mol)を追加漏斗でフラスコに加えた。混合物を0℃でアルゴン雰囲気下で攪拌し、四塩化チタン(12 mL、0.11 mol、Aldrich)を追加漏斗でゆっくりと加えた。反応物を攪拌し、室温に温めた後、室温で一晩攪拌した。反応物を0℃で冷却し、飽和重炭酸ナトリウムをゆっくりと加えてクエンチした。混合物を塩化メチレンで抽出し、飽和塩化ナトリウムで洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過して濃縮した。0-10%のメタノール/ジクロロメタンを溶離液として用いて残留物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、0.994 g(8%)の表題化合物を得た。MS: m/z=460.85 M+H
【0243】
不純画分(9.88 g、1H NMRで生成物対出発物質の比が1:1.1)を濃縮し、トルエンと共沸混合し、トリエチルシラン/塩化チタン条件に再度かけ、今回は塩化チタンの1/4を室温で加え、その後残りを0℃で加えた。前述同様、単離/精製により、1H NMRで生成物:出発物質の比が20:1の混合物として、9.07 g(73%)の表題化合物が得られる。MS: m/z=460.51 M+H
【0244】
〔実施例20:(+)-2-アセチルアミノ-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-マロン酸ジエチルエステルおよび(-)-2-アセチルアミノ-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-マロン酸ジエチルエステル〕
ヘキサン/イソプロパノール(84:16)を溶離液として、CHIRALPAK AZカラムを用いて、ラセミ(±)-2-アセチルアミノ-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-マロン酸ジエチルエステル(8.56 g、18.6 mmol)を分離した。次の二つの鏡像異性体が単離され、次の処理に進めた(carried forward)。(+)-鏡像異性体1(ピーク1;4.11g、収率48%;99.0% ee)が分析用HPLC(CHIRALPAK AD-Hカラム、4.6 mm ID x 250 mm 85:15 ヘキサン/IPA 1 mL/min、RT=4.758 min @ 205 nmを与える)で同定された。MS: m/z=460.62 M+H;比旋光度 +13.5 deg (0.5、エタノール)。(-)-鏡像異性体2(ピーク2;3.98 g、収率46%;99.6% ee)が分析用HPLC(CHIRALPAK AD-Hカラム、4.6 mm ID x 250 mm 85:15 ヘキサン/IPA 1 mL/min、RT=6.088 min @ 205 nmを与える)で同定された。MS: m/z=460.57 M+H;比旋光度 -14.7 deg (0.5、エタノール)。
【0245】
〔実施例21:N-[2-ヒドロキシ-1-ヒドロキシメチル-1-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-エチル]-アセトアミド(鏡像異性体1)〕
テトラヒドロフラン(42.2 mL、Aldrich)中の水素化アルミニウムリチウムの1.00 M溶液をテトラヒドロフラン(75 ml、Aldrich)に加え、0℃で保持した。テトラヒドフラン(50 mL、Aldrich)中の(+)-2-アセチルアミノ-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-マロン酸ジエチルエステル(鏡像異性体1)(6.47 g、14.1 mmol)を溶液に滴加した。反応混合物を室温で2時間攪拌した。混合物を氷/水浴で冷却し、1N HClをゆっくりと加えてクエンチした。反応混合物を酢酸エチルで抽出し、飽和塩化ナトリウムで洗い、硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過して蒸発させ、粗生成物を得た。残留物は、ジクロロメタン中0-10%のメタノールを溶離液として用いてシリカゲルクロマトグラフィーで精製した(5%メタノール/塩化メチレンでRf=0.16、PMA可視化)。生成物は、1H NMRによって、生成物と副生成物N-[2-ヒドロキシ-1-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)-エチル]-アセトアミドの6:1混合物として、収率3.133 g(59%)で単離された。MS: m/z=376.48 M+H(生成物)、346.44 M+H(副生成物)。
【0246】
〔実施例22:(+)-2-アミノ-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-プロパン-1,3-ジオール(VIII-A)〕
N-[2-ヒドロキシ-1-ヒドロキシメチル-1-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-エチル]-アセトアミド(鏡像異性体1)(4 mg、0.00111 mol)、メタノール(24 mL、Fisher)中の水酸化リチウム(221 mg、0.00923 mol、Fisher)、THF(12 mL、Acros)および水(24 mL、Fisher)をバイアルに溶解した。出発物質は、出発物質と副生成物N-[2-ヒドロキシ-1-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-エチル]アセトアミドの4:1混合物、計416 mgであった。反応物を5時間攪拌還流した。反応物を冷却し、酢酸エチルで希釈し、飽和塩化ナトリウムで洗い、硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過して蒸発させた。物質をDMFに溶解し、分取用HPLCで精製した。適当な画分をあわせて蒸発させ、表題化合物をHCO2H塩として250 mgの収率(59%)で得た。MS: m/z=334.52 M+H;比旋光度 +58.0 deg(0.1, エタノール);1H NMR (500MHz, DMSO-d6) δ ppm 8.322 (s, 1H) 6.918 (d, J = 8.1Hz, 1H) 6.859 (d, J = 8.1Hz, 1H) 6.840 (s, 1H) 3.537-3.406 (m, 4H) 2.774-2.674 (m, 2H) 2.674-2.570 (m, 2H) 2.454 (t, J = 7.7Hz, 2H) 1.979-1.864 (m, 2H) 1.542-1.451 (m, 2H) 1.352 (dddd, J = 12.8Hz, 12.8Hz, 12.8Hz, 4.9Hz, 1H) 1.294-1.158 (m, 10H) 0.840 (t, J = 6.9Hz, 3H)
【0247】
〔実施例23:(-)-2-アミノ-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-プロパン-1,3-ジオール(VIII-B)〕
表題化合物は、実施例21、(+)-2-アミノ-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-プロパン-1,3-ジオール(鏡像異性体1)の通り、(-)-2-アセチルアミノ-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-マロン酸ジエチルエステル(鏡像異性体2)をジエステル出発物質として用いて合成した。MS: m/z=334.37 M+H;比旋光度 -59.0 deg(0.1、エタノール);1H NMR (500MHz, DMSO-d6) δ ppm 8.301 (s, 1H) 6.918 (d, J = 7.8Hz, 1H) 6.860 (d, J = 8.2Hz, 1H) 6.840 (s, 1H) 3.527-3.408 (m, 4H) 2.771-2.672 (m, 2H) 2.672-2.580 (m, 2H) 2.454 (t, J = 7.6Hz, 2H) 1.976-1.862 (m, 2H) 1.539-1.449 (m, 2H) 1.351 (dddd, J = 12.4Hz, 12.4Hz, 12.4Hz, 4.8Hz, 1H) 1.296-1.159 (m, 10H) 0.840 (t, J = 6.8Hz, 3H)
【0248】
〔実施例24:[2-ヒドロキシ-1-ヒドロキシメチル-1-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-エチル]-カルバミン酸ベンジルエステル(鏡像異性体1より)〕
(+)-2-アミノ-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-プロパン-1,3-ジオールギ酸塩(鏡像異性体1)(397 mg、1.05 mmol)と重炭酸カリウム(314 mg、3.14 mmol、Fisher)を、1-ネック丸底フラスコで酢酸エチル(20 mL、Fisher)と水(20 mL、Fisher)に溶解した。クロロギ酸ベンジル(164μL、1.15 mmol、Aldrich)を混合物に加えた。反応混合物を室温で1.5時間攪拌した。有機層を分離し、飽和塩化ナトリウムで洗い、硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過して蒸発させた。生成物は、塩化メチレン中0-20%のメタノールを溶離液として用いて、シリカゲルクロマトグラフィーで精製し、表題化合物を450 mgの収率(92%)で得た。MS: m/z=468.87 M+H
【0249】
〔実施例25:リン酸ジベンジルエステル4-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-2-オキソ-オキサゾリジン-4-イル メチル エステル ジアステレオ異性体混合物〕
テトラヘキシルアンモニウムヨージド(1.50 g、3.11 mmol、Acros)を、[2-ヒドロキシ-1-ヒドロキシメチル-1-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-エチル]-カルバミン酸ベンジルエステル(鏡像異性体1;718 mg、1.54 mmol)、ピロリン酸テトラベンジル(1650 mg、3.07 mmol、Aldrich)、および酸化銀(I)(720 mg、3.11 mmol、Aldrich)の塩化メチレン(32 mL、Acros)溶液に加えた。反応物を、アルゴン雰囲気下においてフォイルの下で室温で三日間攪拌した。固体をWhatman 0.45 um PTFEフィルターでろ過し、溶媒を蒸発させた。残留物を、ヘキサン中0-100%の酢酸エチルを溶離液として用いてシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、生成物を二つのジアステレオマーの混合物として416 mgの収率(44%)で得た(1:1酢酸エチル‐ヘキサンでRf=0.27、PMA可視化)。MS: m/z=620.81 M+H
【0250】
〔実施例26:リン酸ジベンジルエステル4-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-2-オキソ-オキサゾリジン-4-イル メチル エステル ジアステレオマー1およびリン酸ジベンジルエステル4-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-2-オキソ-オキサゾリジン-4-イル メチル エステル ジアステレオマー2〕
アセトニトリル/メタノール(75:25)を溶離液として、CHIRALPAK AZカラムを用いて、リン酸ジベンジルエステル4-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-2-オキソ-オキサゾリジン-4-イル メチル エステル ジアステレオ異性体混合物(0.40 g、0.65 mmol)を分離した。次の二つのジアステレオ異性体が単離された。ジアステレオマー1(166.3 mg、収率42%、>99.9% ee)が分析用HPLC(CHIRALPAK AZカラム、4.6 mm ID x 250 mm 75:25 アセトニトリル/メタノール 1 mL/min、RT=5.558 min @ 210 nmを与える)で同定された。ジアステレオマー2(203.7 mg、収率51%;99.8% ee)が分析用HPLC(CHIRALPAK AZカラム、4.6 mm ID x 250 mm 75:25 アセトニトリル/メタノール 1 mL/min、RT=8.137 min @ 210 nmを与える)で同定された。
【0251】
〔実施例27:リン酸モノ-[4-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-2-オキソ-オキサゾリジン-4-イル メチル]エステル ジアステレオマー1〕
リン酸ジベンジルエステル4-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-2-オキソ-オキソゾリジン-4-イル メチル エステル ジアステレオマー1(166 mg、0.268 mmol)を丸底フラスコでメタノール(10 mL、Fisher)に溶解した。10%パラジウム炭素(28 mg、Aldrich)を溶液に加えた。反応物を室温で水素(バルーン圧)雰囲気下で2時間攪拌した。触媒をWhatman PTFE膜フィルターを用いてろ過した。溶媒を濃縮し、生成物(107 mg、収率91%)はそれ以上精製せずに実施例28で使用した。
【0252】
〔実施例28:リン酸モノ-[2-アミノ-3-ヒドロキシ-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-プロピル]エステル ジアステレオマー1〕
リン酸モノ-[4-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-2-オキソ-オキサゾリジン-4-イル メチル]エステル(ジアステレオマー1;107 mg、0.243 mmol)をバイアルでエタノール(2.5 mL、Fisher)に溶解した。含水水酸化リチウム(4.2 M、2.5 mL)を溶液に加え、反応物を一晩加熱還流した。反応物を冷却し、11 mLの1N HClを加えて中和した。反応物を蒸発させた。残留物をDMFに溶解し、分取用HPLCで精製して、表題化合物を49.4 mgの収率(49%)で得た。MS: m/z=414.30 M+H;1H NMR (400MHz, DMSO-d6) δ ppm 6.936 (d, J = 7.9Hz 1H) 6.881 (d, J = 8.9Hz, 1H) 6.864 (s, 1H) 3.942-3.801 (m, 2H) 3.646-3.551 (m, 2H) 2.814-2.409 (m, 6H) 2.081-1.943 (m, 2H) 1.547-1.458 (m, 2H) 1.430 (m, 1H) 1.289-1.167 (m, 10H) 0.840 (t, J = 6.9Hz, 3H)
【0253】
〔実施例29:リン酸モノ-[2-アミノ-3-ヒドロキシ-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-プロピル]エステル ジアステレオマー2〕
表題化合物は、リン酸モノ-[2-アミノ-3-ヒドロキシ-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-プロピル]エステル ジアステレオマー1の通り、リン酸ジベンジルエステル4-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-2-オキソ-オキサゾリジン-4-イル メチル エステル ジアステレオマー2をリン酸ジベンジルエステル出発物質として用いて合成した。MS: m/z=414.43 M+H;1H NMR (400MHz, DMSO-d6) δ ppm 6.916 (d, J = 7.9Hz, 1H) 6.872 (d, J = 8.6Hz, 1H) 6.852 (s, 1H) 3.900 (d, J = 9.5Hz, 2H) 3.582 (s, 2H) 2.811-2.622 (m, 4H) 2.468-2.416 (m, 2H) 2.062 (m, 1H) 1.971 (m, 1H) 1.551-1.452 (m, 2H) 1.387 (dddd, J = 12.4Hz, 12.4Hz, 12.4Hz, 5.0Hz, 1H) 1.296-1.175 (m, 10H) 0.840 (t, J = 7.0Hz, 3H)
【0254】
〔実施例30:2-メチル-2-(6-オクチル-1-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)マロン酸ジエチルの合成〕
1-ネック丸底フラスコ中で、鉱油中水素化ナトリウム(60:40、水素化ナトリウム:鉱油、8.00 g;Aldrich)をN,N-ジメチルホルムアミド(100 mL、1.4 mol;Acros)に溶解した。混合物を0℃で冷却し、N,N-ジメチルホルムアミド(100 mL、1.4 mol;Acros)中のメチルプロパン二酸、ジエチルエステル(25.24 mL、0.1481 mol;Aldrich)をゆっくりと加えた。反応物を0℃で3時間攪拌し、この時点で、化合物4、2-ブロモ-6-オクチル-3,4,-ジヒドロ-2H-ナフタレン-1-オン(20.00g、0.05930 mol;WUXI)(トルエンと共沸混合)のN,N-ジメチルホルムアミド(100 mL、1.4 mmol;Acros)溶液を加えた。残留物を10 mLのDMFと反応させて洗った。反応物を室温で24時間攪拌した。混合物を氷中にゆっくりと注ぎ、1M HClでpH 3に酸性化した。反応物を酢酸エチルで抽出し、飽和塩化ナトリウムで洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過して濃縮した。残留物を、ヘキサン中0-30%の酢酸エチルを溶離液として用いてシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、2-メチル-2-(6-オクチル-1-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)マロン酸ジエチル(17.63 g、収率69.1%)を得た。LCMS(RT=2.58 min, m/z=431.72 [M+H])
【0255】
〔実施例31:2-メチル-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)マロン酸ジエチルの合成〕
2-メチル-2-(6-オクチル-1-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-マロン酸ジエチルエスエル(22.70 g、0.05272 mol)を塩化メチレン(200 mL、3 mol;Acros)に溶解し、トリエチルシラン(33.7 mL、0.211 mol;Aldrich)を加えた。溶液を0℃に冷却した後、四塩化チタン(23.2 mL、0.211 mol;Aldrich)をゆっくりと加えた。反応物を24時間攪拌し、LC/MSをとったところ、生成物へのよい変換を示した。反応物を氷冷飽和重炭酸ナトリウムにゆっくりと注いでクエンチした。その後反応物を分液漏斗へ移し、塩化メチレンで抽出した後、乾燥させて濃縮した。その後粗生成物を、0-30%の勾配を用いてcombiflashで精製し、2-メチル-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)マロン酸ジエチル(12.45 g、収率56.7%)を得た。LCMS(RT=2.83 min, m/z=417.78 [M+H])
【0256】
〔実施例32:3-エトキシ-2-メチル-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)-3-オキソプロパン酸の合成〕
2-メチル-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-マロン酸ジエチルエステル(6.50 g、0.0156 mol)をエタノール(22.3 mL、0.382 mol;Aldrich)に溶解し、水酸化カリウム(0.99 g、0.018 mol;Fisher)のEtOH(2 ml)溶液を加えた。反応物を65℃に加熱し、24時間攪拌した。反応物を室温に冷却し、EtOHを真空下で除去した。10 mlの水を加え、1N HClでpH 1に酸性化した。その後水分をCHCl3で抽出し、有機層を塩水で一度洗い(確実に全ての固体がCHCl3に溶解するよう、塩水層はpH 1に酸性化した)、その後硫酸ナトリウムで乾燥させた。濃縮した残留物をHE中EA/0.1%HOAc勾配(0-10%、10-20%、20-30%)でクロマトグラフィーにかけ、所望の酸、3-エトキシ-2-メチル-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)-3-オキソプロパン酸(3.13 g、収率52%)を得た。LCMS(RT=2.47 min, m/z=389.35 [M+H])
【0257】
〔実施例33:2-アミノ-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)プロパン酸エチルの合成〕
2-メチル-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-マロン酸モノエチルエステル(4.88 g、0.0126 mol)をトルエン(126 mL、1.18 mol)に溶解し、トリエチルアミン(2.1 mL、0.015 mol;Aldrich)とジフェニルホスホン酸アジド(2.7 mL、0.012 mol)を加え、2.5時間加熱還流した。反応物を0℃に冷却し、THF(25 mL)中1Mのトリメチルシラノール酸ナトリウムを加え、25℃で1時間攪拌した。反応物を5%クエン酸でクエンチし、蒸発させてTHFとトルエンを除去し、Et2O(2X)で洗った。残った水溶液を1N NaOHでpH 13に塩基性化し、CH2Cl2で抽出した。あわせたCH2Cl2溶液を塩水で洗い、乾燥させて濃縮した。残留物にISCO combiflash(EtOAc:ヘキサン(0.1% TEA) 0-70%)でクロマトグラフィーを行い、2-アミノ-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)プロパン酸エチルをジアステレオマーの混合物として得た(3.20 g、収率70.9%、LCMS RT=1.83 min、m/z=360.67 [M+H])。
【0258】
2-アミノ-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)プロパン酸エチルのジアステレオマー(15)(0.96 g)を二段階で分離した。第一段階はACN/MeOH(75/25)を溶離液として、室温でUV 230 nm検出下でCHIRALPAK AD-H(4.6 mm ID x 250 mm)を用いた。次の二つのジアステレオマーが単離された。異性体15a(0.215g、98% d.e.、収率98%、室温=10.947 min)、LCMS室温=1.83 min、m/z=360 [M+1];異性体15b(0.238g、97.6% d.e.、収率94.4%、室温=8.726 min)、LCMS室温=1.78 min、m/z=360 [M+1];および15cと15dの混合物(0.456g、収率93.4%、室温=5.707 min)。第二段階はHex/IPA(85/15)を溶離液として、室温でUV 230 nm検出下でCHIRALPAK AY(4.6 mm ID x 250 mm)を用いた。0.389gの上記混合物から、他の二つのジアステレオマーが単離された。異性体15c(0.143g、99% d.e.、収率88.5%、室温=4.511 min)、LCMS室温=1.78 min、m/z=360 [M+1];異性体15d(0.175g、96.4% d.e.、収率79%、室温=5.919 min)、LCMS室温=1.78 min、m/z=360 [M+1]。
【0259】
〔実施例34:(R)-2-アミノ-2-((R)-6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)プロパン-1-オール、異性体1(16a)の合成〕
1-ネック丸底フラスコに15a(215.0 mg、0.0005980 mol)を加え、テトラヒドロフラン(6.0 mL、0.074 mol;Acros)を加えた後、THF(1.8 mL)中の1M水素化アルミニウム
リチウムを加えた。混合物を2時間加熱還流した。反応混合物を0℃で冷却し、飽和ロッシェル塩溶液でクエンチした。混合物をEtOAc(3X5ml)で抽出し、塩水で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥させた。TLCモニタリングにより出発物質が全く残っていないことが示された。LCMSでは単一のピークを得た。濃縮した残留物にMeOH/CH2Cl2(0-50%)でクロマトグラフィーを行い、161.2 mg(収率84.9%)の16aを白色粉末として得た。LCMS RT=1.68 min、m/z=318.67 [M+1]。1H NMR (CD3OD, 400MHz) 0.90 (t, J = 6.8Hz, 3H), 1.19 (s, 3H), 1.31 (m, 11H), 1.49 (dd, J = 12.6, 5.2Hz, 1H), 1.59 (dd, J = 12.6, 5.8Hz, 1H), 2.04 (m, 2H), 2.52 (t, 7.7Hz, 2H), 2.62 (dd, J = 15.5, 12.6Hz, 1H), 2.75-2.90 (m, 3H) 3.54 (d, J = 11.3Hz, 1H), 3.69 (d, J = 11.3Hz, 1H), 6.89 (s, 1H), 6.90 (d, J = 7.6Hz, 1H), 6.98 (d, J = 7.6Hz, 1H)。2-アミノ-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-プロパン-1,3-ジオールの鏡像異性体との比較により立体化学を決定した。
【0260】
〔実施例35:(R)-2-アミノ-2-((S)-6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)プロパン-1-オール、異性体2(16b)の合成〕
1-ネック丸底フラスコに15b(240.4 mg、0.0006619 mol)を加え、テトラヒドロフラン(6.0 mL、0.074 mol;Acros)を加えた後、THF(1.8 mL)中の1M水素化アルミニウムリチウムを加えた。混合物を2時間加熱還流した。反応混合物を0℃で冷却し、飽和ロッシェル塩溶液でクエンチした。混合物をEtOAc(3X5 mL)で抽出し、塩水で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥させた。TLCモニタリングにより出発物質が全く残っていないことが示された。LCMSでは単一のピークを得た。濃縮した残留物にMeOH/CH2Cl2(0-50%)でクロマトグラフィーを行い、150.8 mg(収率71.8%)の16bを白色粉末として得た。LCMS RT=1.68 min、m/z=318.67 [M+1]。1H NMR (CD3OD, 400MHz) 0.90 (t, J = 7.0Hz, 3H), 1.17 (s, 3H), 1.31 (m, 11H), 1.44 (m, 1H), 1.58 (m, 1H), 2.00 (m, 2H), 2.52 (t, J = 7.0Hz, 3H), 2.66 (dd, J = 15.8, 12.4Hz, 1H), 2.74-2.92 (m, 3H) 3.54 (d, J = 11.2Hz, 1H), 3.63 (d, J = 11.2Hz, 1H), 6.87 (s, 1H), 6.89 (d, J = 7.7Hz, 1H), 7.00 (d, J = 7.7Hz, 1H)。2-アミノ-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-プロパン-1,3-ジオールの鏡像異性体との比較により立体化学を決定した。
【0261】
〔実施例36:(S)-2-アミノ-2-((S)-6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)プロパン-1-オール、異性体3(16c)の合成〕
1-ネック丸底フラスコに15c(120.2 mg、0.0003310 mol)を加え、テトラヒドロフラン(3.3 mL、0.041 mol;Acros)を加えた後、THF(0.99 mL)中の1M水素化アルミニウムリチウムを加えた。混合物を2時間加熱還流した。反応混合物を0℃で冷却し、飽和ロッシェル塩溶液でクエンチした。混合物をEtOAc(3X5 mL)で抽出し、塩水で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥させた。TLCモニタリングにより出発物質が全く残っていないことが示された。LCMSでは単一のピークを得た。濃縮した残留物にMeOH/CH2Cl2(0-50%)でクロマトグラフィーを行い、43.0 mg(収率40.9%)の16cを白色粉末として得た。LCMS RT=1.68 min、m/z=318.67 [M+1]。1H NMR (CD3OD, 400MHz)は16aと同じであり、特徴的なピーク3.54 (d, J = 11.3Hz, 1H)、3.69 (d, J = 11.3Hz, 1H)を示す。これは16aの鏡像異性体であることが同定された。
【0262】
〔実施例37:(S)-2-アミノ-2-((R)-6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)プロパン-1-オール、異性体4(16d)の合成〕
1-ネック丸底フラスコに15d(175.0 mg、0.0004818 mol)を加え、テトラヒドロフラン(4.9 mL、0.060 mol;Acros)を加えた後、THF(1.4 mL)中の1M水素化アルミニウムリチウムを加えた。混合物を2時間加熱還流した。反応混合物を0℃で冷却し、飽和ロッシェル塩溶液でクエンチした。混合物をEtOAc(3X5 mL)で抽出し、塩水で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥させた。TLCモニタリングにより出発物質が全く残っていないことが示された。LCMSでは単一のピークを得た。濃縮した残留物にMeOH/CH2Cl2(0-50%)でクロマトグラフィーを行い、77.4 mg(収率50.6%)の16dを白色粉末として得た。LCMS RT=1.68 min、m/z=318.67 [M+1]。1H NMR (CD3OD, 400MHz)は16bと同じであり、特徴的なピーク3.54 (d, J = 11.2Hz, 1H)、3.63 (d, J = 11.2Hz, 1H)を示す。これは16bの鏡像異性体であることが同定された。
【0263】
〔実施例38:(R)-1-ヒドロキシ-2-((R)-6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)プロパン-2-イル カルバミン酸tert-ブチル(17)の合成〕
2-アミノ-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-プロパン-1-オール(16a)(40.7 mg、0.000128 mol)をクロロホルム(2.3 mL、0.029 mol)に溶解し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(1.5 mL、0.015 mol)と二炭酸ジ-tert-ブチル(33.6 mg、0.000154 mol)を加え、混合物を室温で24時間攪拌した。TLCは完全反応を示した。有機層の分離後、水層をCHCl3で抽出した。有機層を塩水で洗い、無水Na2SO4で乾燥させた。濃縮した残留物にMeOH/CH2Cl2(0-55%)でクロマトグラフィーを行い、化合物17を白色固体として得た(45.8 mg、収率85.5%)。1H NMRにより化合物の同一性が示された。
【0264】
〔実施例39:(R)-[1-メチル-1-((R)-6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-2-(1,5-ジヒドロベンゾ[e][1,3,2]ジオキサホスフェピン-3-イル オキシ)-エチル]-カルバミン酸tert-ブチルエステル(18)の合成〕
[2-ヒドロキシ-1-メチル-1-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-エチル]カルバミン酸tert-ブチルエステル(17)(44.8 mg、0.000107 mol)と1H-テトラゾール(22.6 mg、0.000323 mol)のテトラヒドロフラン(1.1 mL、0.014mol)溶液に、o-キシリレンN,N-ジエチルホスホラミダイト(34.8 uL、0.000161 mol)を室温で加えた。得られた混合物を室温で一晩攪拌した。TLCにより出発物質が全く残っていないことが示された。過酸化水素(240 uL、0.0024 mol)を加え、混合物を室温で1時間攪拌した。反応物を飽和NaS2O3でクエンチした後、EtOAcで抽出し、Na2SO4で乾燥させた。残留物にMeOH/CH2Cl2(0-100%)でクロマトグラフィーを行い、化合物18を得た(47.3 mg、収率73.5%)。1H NMRにより化合物の同一性が示された。
【0265】
〔実施例40:(R)-2-((R)-6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)-1-(ホスホノオキシ)プロパン-2-イル カルバミン酸tert-ブチル(19)の合成〕
[1-メチル-1-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-2-(1,5-ジヒドロベンゾ[e][1,3,2]ジオキサホスフェピン-3-イル オキシ)-エチル]-カルバミン酸tert-ブチルエステル(18)(47.3 mg、0.0000789 mol)をメタノール(1.0 mL、0.025 mol)に溶解し、10%パラジウム炭素(1:9、パラジウム:カーボンブラック、4.8 mg)を加えた。混合物を水素(2L、0.07 mol)下で2時間攪拌し、celiteを通してろ過し、MeOHで洗った。濃縮した残留物をCH2Cl2に溶解し、MeOH/CH2Cl2(0-50%)でクロマトグラフィーを行い、化合物19を得た(23.2 mg、収率59.1%)。1H NMRにより化合物の同一性が示された。
【0266】
〔実施例41:(R)-2-アミノ-2-((R)-6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)プロピル リン酸二水素塩(110)の合成〕
(R)-2-((R)-6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)-1-(ホスホノオキシ)プロパン-2-イル カルバミン酸tert-ブチル(19)(23.3 mg、0.0000466 mol)を酢酸(2.0 mL、0.034 mol)に溶解し、水(0.5 mL)中の10Mの塩化水素を加え、混合物を一日攪拌した。Lypholyzingにより、化合物110を白色固体(16.0 mg、収率86.3%)として得た。LCMSでは単一のピーク、室温=1.58 minを得た。m/z=398, [M]+。1H NMR (CD3OD, 400MHz) 0.89 (t, J = 7.0Hz, 3H), 1.32 (s, 3H), 1.24-1.36 (m, 14H), 1.52-1.56 (m, 1H), 2.52 (t, 7.6Hz, 2H), 2.65 (dd, J = 15.5, 12.0Hz, 1H), 2.78-2.94 (m, 3H), 3.93 (d, J = 11.2, 3.8Hz, 1H), 4.11 (dd, J = 11.2, 4.5Hz, 1H), 6.88 (s, 1H), 6.90 (d, J = 7.4Hz, 1H), 6.99 (d, J = 7.4Hz, 1H)
【0267】
〔実施例42:臭化1,3-ジヒドロキシ-2-[(2S)-6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル]プロパン-2-アミニウム一水和物〕
(-)-2-アミノ-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-プロパン-1,3-ジオール(50.0 mg、0.000150 mol)をメタノール(5.0 mL、0.12 mol)に部分的に溶解した。ろ液に臭化水素(5.0 mL、0.046 mol;48%溶液)をゆっくりと加えたところ、HBrを最初に1 ml加えた後、沈殿が徐々に形成した。2時間後に固体をろ過し、水とEt2Oで洗った。Lyophylizingにより40.2 mgの白色針状結晶を得た。M.P. 158-159℃。LCMSでは単一のピークRT=1.63 minを得た(m/z=335, parent [M+1]+)。X線により、この化合物は下記の立体配置(2S)を持つHBr塩一水和物であることが示された。
【0268】
【化36】

【0269】
〔実施例43:臭化1,3-ジヒドロキシ-2-[(2S)-6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル]プロパン-2-アミニウム一水和物のX線分析〕
化合物は上述のように成長した微小な無色の細い針状結晶として得られた。サイズが0.002 mm x 0.025 mm x 0.125 mmの針状結晶を選択し、Paratone-Nオイルでナイロンループにマウントし、Oxford Cryosystems 700 Series Cryostream CoolerとMo Kα線(λ = 0.71073 Å)を備えたBruker SMART APEX II diffractometerに移した。針状結晶からの回折は弱過ぎたので、部分データセット(1.1Åの分解能に対して91.8%完全)を用いた予備的研究のみを目標とした。結晶は1.1Åの分解能を超える有意なデータを全く示さなかったので、標準的な0.76961Åの分解能(θmax=27.5°)のデータセットは保証されず、先に進めなかった。APEX2 suiteソフトウェア(Bruker AXS, 2006a)を用いて、90 s/フレームの露光時間、0.5°/フレームのω振動幅で、θmax=18.85°に対し193(2)Kで全部で585フレームを収集した。観察された全ての反射に対する単位格子精密化、およびLpと崩壊に対する補正を伴うデータ整理を、SAINT(Bruker AXS, 2006b)を用いて行った。スケーリングと数値吸収補正はSADABS(Bruker AXS, 2004)を用いて行った。最小透過率と最大透過率はそれぞれ0.85628と0.96587であった。全部で3188の反射が収集され、2757が固有(Rint=0.0378)、1982がI > 2σ(I)であった。系統的な欠如がないことから、化合物が三斜晶系空間群P1(No. 1)で結晶化したことが示唆された。実測平均|E2-1|値は0.718であった(中心データと非中心データの各期待値0.968と0.736と対比)。
【0270】
構造は直接法によって解かれ、SHELXTL(Bruker AXS, 2001)を用いてF2に対するフルマトリックスの最小二乗法によって精密化した。非対称単位は、二つのアミニウムカチオン、二つの臭化物アニオン、二つの水分子を含むことがわかった。利用可能なデータの分解能が低いために、二つの臭素原子しか異方性変位係数(anisotropic displacement coefficients)で精密化されなかった。その他の非水素原子は全て等方的に精密化された。水素原子は等方性変位係数(isotropic displacement coefficients)U(H)=1.2U(C)、1.5U(Cメチル)、1.5U(N)もしくは1.5U(O)を割り当てられ、その座標(coordinates)は結合相手の原子上にのることができる。水分子の水素原子は観察されず、最小二乗法のサイクルには含まれなかった。精密化は次のように収束した。I > 2σ(I)である1982の反射ではR(F) = 0.0554、wR(F2) = 0.0927、S = 0.958、および2757の固有の反射ではR(F) = 0.0929、wR(F2) = 0.1045、S = 0.958、225のパラメータと3つの原点決定制約条件(origin-defining restraints)。最小二乗法の最終サイクルにおける最大|Δ/σ|は0.001未満であり、最終差フーリエマップ上の残留ピークは-0.302〜0.384 eÅ-3の範囲であった。散乱因子はthe International Tables for Crystallography, Volume C. (Maslen et al., 1992, and Creagh & McAuley, 1992)からとった。
【0271】
0.03(3)に精密化されたFlackパラメータ[正しいハンド(hand)の場合0、間違ったハンドの場合1の期待値と対比]は、下記の立体配置が分子カチオンの正しいハンドのものであることを示す。従って、二つの結晶学的に独立なカチオンの各々の不斉中心における絶対立体配置は(2S)であり、異常分散法(Flack、1983)により、化合物が臭化1,3-ジヒドロキシ-2-[(2S)-6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル]プロパン-2-アミニウム一水和物であることが明白に決定された。
【0272】
〔実施例44:スフィンゴシンキナーゼアッセイ〕
組換え体スフィンゴシンキナーゼタイプ2(SPHK2)は、関連プラスミドDNAをHEK293T細胞に導入することによって、マウスもしくはヒトの組み換え酵素の発現を強制することによって調製される。約60時間後、細胞を採取し、破壊して、非ミクロソーム(例えば溶解性の)画分を保持する。組み換え酵素を含む破壊細胞の上澄みを、試験化合物(例えばFTY-720、AA151、VIII、およびXVIII)(5〜50μM)とγ-32P-ATPと混合し、37℃で0.5〜2.0時間インキュベートする。反応混合物中の脂質を有機溶媒に抽出し、順相薄層クロマトグラフィーで示す。放射性標識したバンドをオートラジオグラフィーで検出し、プレートから擦り取ってシンチレーション計数で定量化する。
【0273】
〔実施例45:GTPγS-35結合アッセイ〕
このアッセイは、単独でのGタンパク質共役受容体(GPCR)のアゴニスト活性を説明する。このアッセイは、各タンパク質をコードする四つのプラスミドDNAを細胞に導入することによって、HEK293T細胞における、組み換えGPCR(例えばS1P1-5受容体)、およびヘテロ三量体Gタンパク質の三つのサブユニット(典型的にはα-2、β-1、もしくはγ-2)の各々の発現を同時に強制する。導入から約60時間後、細胞を採取し、開いて核を除去する。粗ミクロソームを残留物から調製する。ミクロソーム上の受容体-Gタンパク質複合体のアゴニスト(例えばS1P)刺激は、用量依存的なやり方でα-サブユニット上のGTPからGDPへの交換をもたらす。GTP結合α-サブユニットは、GDPに加水分解されない放射性核種(硫黄35)標識ホスホチオン酸である、GTPアナログ(GTPγS-35)を用いて検出される。Gタンパク質が付着したミクロソームはろ過によって回収され、結合したGTPγS-35が液体シンチレーションカウンターで定量化される。アッセイは相対効力(relative potency:EC50値)と最大効果(maximum effect:有効性、Emax)を与える。アンタゴニスト活性は、一定量のアンタゴニストの存在下で、アゴニストの用量‐反応曲線の右方向のシフトとして検出される。アンタゴニストが競合的に作用する場合、受容体/アンタゴニストの対の親和性(Ki)を決定できる。
【0274】
化合物VIII-AとVIII-B、化合物VIII-CとVIII-Dのリン酸化体は、効力が弱い、S1P3受容体の部分的アゴニストである(図8と図10を参照)。化合物VIII-C、VIII-D、VIII-E、VIII-F、およびX-Eは、S1Pと比較して、S1P1でより強く作用し、S1P3でより弱く作用する(図7、図9、図11、図12、図15、図17を参照)。このアッセイは、Davis, M.D., J.J. Clemens, T.L. Macdonald and K.R. Lynch (2005) "S1P Analogs as Receptor Antagonists" Journal of Biological Chemistry, vol. 280, pp. 9833-9841に記載されている。
【0275】
化合物VIII(+)(VIII-C;一リン酸化異性体の混合物)、VIII(-)(VIII-D;一リン酸化異性体の混合物)、化合物VIII-Fおよび分離化合物VIII-Eのリン酸化体をDavisのアッセイで試験した。結果を図12に示す。
【0276】
〔実施例46:立体異性体でのリンパ球減少アッセイ〕
一投与量あたり3マウス8投与量を用いて、リンパ球減少アッセイにおいて上記のように立体特異的化合物VIII-AとVIII-Bを評価したところ、化合物VIII-Aは0.2 mg/kgのED50を持ち、化合物VIII-Bは2 mg/kgのED50を持つことがわかった。
【0277】
〔実施例47:リンパ球減少アッセイ〕
化合物(例えば化合物VIIIなどの一級アルコール)を2%ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンに溶解し、体重あたり0.01、1.0および10 mg/kgの投与量で強制経口投与によってマウス群に導入する。24時間後と48時間後に、マウスを軽度麻酔して、ca. 0.1 mlの血液を眼窩静脈叢(orbital sinus)から採取する。リンパ球の数(マイクロリットルの血液あたり1000単位で;通常は4-11)を、Hemavet blood analyzerを用いて計測した。マウスは1群あたり3匹とし、系統はsv129 x C57BL/6の混合とした。活性化合物(例えば化合物VIII-Cと化合物VIII-D)を20 mMの酸性DMSOに溶解し、水中の2%ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンに混合しながら1:20に希釈する。この溶液を体重あたり0.01、1.0および10 mg/kgの投与量で腹腔内(i.p.)注射によってマウスに導入する。
【0278】
〔実施例48:カルシウム動員〕
ヒトS1P3受容体でのアゴニスト活性とアンタゴニスト活性を計測するために、開示された化合物をカルシウム動員アッセイで試験した。手順はDavis et al. (2005) Journal of Biological Chemistry, vol. 280, pp. 9833-9841に記載の通りである。試験化合物VIII-C、VIII-D、VIII-E、VIII-F、リン酸化FTY-720(FTY-720 P)、X-EおよびX-Fを単独で試験し(例えばアゴニスト活性)、一部はスフィンゴシン1-リン酸と衝突させた(アンタゴニスト活性)。結果を図8、図10、図13、図14、図16、図18、図19に示す。
【0279】
本発明は、本明細書に記載されているアッセイと方法のみに限定されるものと解釈されるべきではなく、他の方法とアッセイも同様に含むものと解釈されるべきである。使用されたものの本明細書に記載されていない他の方法は、周知であり、化学、生化学、分子生物学、臨床医学の当業者の能力の範囲内にある。本明細書に記載されている手順を実行する上で他のアッセイと方法を利用できることが、当業者にはわかるだろう。
【0280】
本明細書で使用される略語は、臨床、化学、および生物学の分野でのその従来の意味を有する。何らかの不整合があった場合には、本開示(そのうちの全ての定義を含む)が優先する。
【0281】
本発明は、本明細書に記載されているアッセイと方法のみに限定されるものと解釈されるべきではなく、他の方法とアッセイも同様に含むものと解釈されるべきである。使用されたものの本明細書に記載されていない他の方法は、周知であり、化学、生化学、分子生物学、臨床医学の当業者の能力の範囲内にある。本明細書に記載されている手順を実行する上で他のアッセイと方法を利用できることが、当業者にはわかるだろう。
【0282】
本明細書で使用される略語は、臨床、化学、および生物学の分野でのその従来の意味を有する。何らかの不整合があった場合には、本開示(そのうちの全ての定義を含む)が優先する。
【0283】
本明細書で参照した全ての特許、特許出願、および刊行物の各々が開示するところは、この参照によりその全体が本開示に明確に組み込まれる。本開示の例示的な実施形態について述べており、本開示の範囲内である可能な変形例が参照されている。本開示における、これらおよびその他の変形例と改変例は、本開示の範囲から逸脱することなく、当業者にとって自明なものである。本開示および以下に示される請求項は、本明細書に提示した例示的な実施形態には限定されない、ということを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式Iの鏡像異性的に純粋な化合物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルであって、
【化37】

X1、Y1、およびZ1が独立に、O、CRa、CRaRb、N、NRc、もしくはSであり、
R1およびR2が独立に、水素、ハロゲン、ハロ(C1-C10)アルキル基、シアノ基、-NRaRb、(C1-C20)アルキル基、(C2-C20)アルケニル基、(C2-C20)アルキニル基、(C1-C20)アルコキシ基、(C2-C26)アルコキシアルキル基、(C3-C12)シクロアルキル基、(C6-C10)アリール基、(C7-C30)アリールアルキル基、(C2-C10)複素環基、(C4-C10)ヘテロアリール基、もしくは(C4-C10)ヘテロアリール(C1-C20)アルキル基であり、あるいは、
R2が、下記の構造式II、III、IV、V、もしくはVIを持つ基であってもよく、
【化38】

ここでR7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、およびR14が独立に、O、S、C、CR15、CR16R17、C=O、N、もしくはNR18であり、
R15、R16、およびR17が独立に、水素、ハロゲン、(C1-C10)アルキル基、ハロゲン置換(C1-C10)アルキル基、ヒドロキシル基、(C1-C10)アルコキシ基、もしくはシアノ基であって、R18は水素もしくは(C1-C10)アルキル基であってよく、
Z2が、水素、ハロゲン、ハロ(C1-C10)アルキル基、シアノ基、-NRaRb、(C1-C20)アルキル基、(C2-C20)アルケニル基、(C2-C20)アルキニル基、(C1-C20)アルコキシ基、(C2-C26)アルコキシアルキル基、(C3-C12)シクロアルキル基、(C6-C10)アリール基、(C7-C30)アリールアルキル基、(C2-C10)複素環基、(C4-C10)ヘテロアリール基、もしくは(C4-C10)ヘテロアリール(C1-C20)アルキル基であって、ここでZ2のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基、もしくはヘテロアリール基は、任意に全フッ素置換されるか、または、1個、2個、3個、もしくは4個の置換基で任意に置換され、ここで前記置換基は独立に、ヒドロキシル基、ハロゲン、シアノ基、(C1-C10)アルコキシ基、C6-アリール基、(C7-C24)アリールアルキル基、オキソ基(=O)、もしくはイミノ基(=NRd)であって、ここでZ2のアルキル基内の炭素原子の一つ以上が独立に、過酸化物ではない酸素、硫黄、もしくはNRcで置換されてもよく、
【化39】

は、一個以上の任意の二重結合をあらわし、
Y2が、結合であるか、O、S、C=O、もしくはNRc、CH2であって、W1が、結合であるか、-CH2-でかつm=1、2、もしくは3であるか、または、(C=O)(CH2)1-5でかつm=1であり、ここでW1には任意に、過酸化物ではないO、S、C=O、もしくはNRcが間に挟まり、
【化40】

の各々が任意の二重結合をあらわし、
R3が、水素、(C1-C10)アルキル基、ヒドロキシル(C1-C10)アルキル基、もしくは(C1-C10)アルコキシ基であり、
R4が、ヒドロキシル基(-OH)、リン酸基(-OPO3H2)、ホスホン酸基(-CH2PO3H2)、もしくはα置換ホスホン酸基であり、
Ra、Rb、およびRcが独立に、水素もしくは(C1-C10)アルキル基であり、
R1およびR2のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基、もしくはヘテロアリール基が独立に、任意に全フッ素置換されるか、または、1個、2個、3個、もしくは4個の置換基で任意に置換され、ここで前記置換基は独立に、ヒドロキシル基、ハロゲン、シアノ基、(C1-C10)アルコキシ基、C6-アリール基、(C7-C24)アリールアルキル基、オキソ基(=O)、もしくはイミノ基(=NRd)であって、ここでR1もしくはR2のアルキル基内の炭素原子の一つ以上が独立に、過酸化物ではない酸素、硫黄、もしくはNRcで置換されてもよく、
R3のアルキル基が、任意に1個もしくは2個のヒドロキシル基で置換され、
Rdは水素もしくは(C1-C10)アルキル基である、
化合物。
【請求項2】
立体配置がRR、RS、SR、もしくはSSである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R1が、水素、フッ素、塩素、臭素、トリフルオロメチル基、メトキシ基、(C1-C6)アルキル基、(C1-C6)ハロアルキル基、アルコキシ基もしくはシアノ基で置換された(C1-C6)アルキル基、アルキル置換アリール基、アリール置換アルキル基、または、アリール置換アリールアルキル基である、請求項1もしくは2に記載の化合物。
【請求項4】
R1が、水素、トリフルオロメチル基、もしくは-CH2CF3である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
R1が、ベンジル基、フェニルエチル基、もしくはメチルベンジル基である、請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
R2が-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
R2が下記の構造式である、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【化41】

【請求項8】
R2が下記の構造式であり、
【化42】

ここで、Y3が、(CH3)3C-、CH3CH2(CH3)2C-、CH3CH2CH2-、CH3(CH2)2CH2-、CH3(CH2)4CH2-、(CH3)2CHCH2-、(CH3)3CCH2-、CH3CH2O-、(CH3)2CHO-、もしくはCF3CH2CH2-、または、下記の構造式を持つ基である、請求項7に記載の化合物。
【化43】

【請求項9】
R2が下記の構造式である、請求項8に記載の化合物。
【化44】

【請求項10】
R2が下記の構造式である、請求項9に記載の化合物。
【化45】

【請求項11】
R2が下記の構造式である、請求項7に記載の化合物。
【化46】

【請求項12】
R2が下記の構造式である、請求項11に記載の化合物。
【化47】

【請求項13】
R2が下記の構造式IVを持つ、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【化48】

【請求項14】
R2が下記の構造式である、請求項13に記載の化合物。
【化49】

【請求項15】
R2が、(C1-C10)アルキル基、(C2-C10)アルケニル基、および(C2-C14)アルキニル基、(C1-C10)アルコキシ基、もしくは(C2-C16)アルコキシアルキル基である、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
R2が、(C1-C10)アルキル基、(C1-C10)アルコキシ基、もしくは(C2-C12)アルコキシアルキル基である、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
R2が、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロエトキシ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘプトキシ基、もしくはオクトキシ基である、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
X1、Y1、およびZ1の各々がCH2である、請求項1から17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
R3が、水素、メチル基、ヒドロキシメチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、プロピル基、もしくはイソプロピル基である、請求項1から18のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項20】
R3が、水素、メチル基、ヒドロキシメチル基、エチル基、もしくはヒドロキシエチル基である、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
下記の構造式を持つ、請求項1から20のいずれか一項に記載の化合物。
【化50】


【請求項22】
少なくとも90%の鏡像体過剰率を持つ、請求項1から21のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項23】
請求項1から22のいずれか一項に記載の構造式Iの鏡像異性的に純粋な化合物の有効量を含む、薬学的組成物。
【請求項24】
請求項1に記載の化合物の鏡像異性体を合成するための方法であって、
前記鏡像異性的に純粋な異性体を得るために、下記の構造式の化合物の異性体を分離するステップを含み、
【化51】

R5は、水素、(C1-C10)アルキル基、ヒドロキシル(C1-C10)アルキル基、(C1-C10)アルコキシ基、もしくは-CO2Rdであり、
R6は、ヒドロキシル基(-OH)もしくは-CO2Rdであり、
X1、Y1、およびZ1は独立に、O、CRa、CRaRb、N、NRc、もしくはSであり、
R1とR2は独立に、水素、ハロゲン、ハロ(C1-C10)アルキル基、シアノ基、-NRaRb、(C1-C20)アルキル基、(C2-C20)アルケニル基、(C2-C20)アルキニル基、(C1-C20)アルコキシ基、(C2-C26)アルコキシアルキル基、(C3-C12)シクロアルキル基、(C6-C10)アリール基、(C7-C30)アリールアルキル基、(C2-C10)複素環基、(C4-C10)ヘテロアリール基、もしくは(C4-C10)ヘテロアリール(C1-C20)アルキル基であり、あるいは、
R2が、下記の構造式II、III、IV、V、もしくはVIを持つ基であってもよく、
【化52】


ここでR7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、およびR14が独立に、O、S、C、CR15、CR16R17、C=O、N、もしくはNR18であり、
R15、R16、およびR17が独立に、水素、ハロゲン、(C1-C10)アルキル基、ハロゲン置換(C1-C10)アルキル基、ヒドロキシル基、(C1-C10)アルコキシ基、もしくはシアノ基であって、R18は水素もしくは(C1-C10)アルキル基であってよく、
Z2が、水素、ハロゲン、ハロ(C1-C10)アルキル基、シアノ基、-NRaRb、(C1-C20)アルキル基、(C2-C20)アルケニル基、(C2-C20)アルキニル基、(C1-C20)アルコキシ基、(C2-C26)アルコキシアルキル基、(C3-C12)シクロアルキル基、(C6-C10)アリール基、(C7-C30)アリールアルキル基、(C2-C10)複素環基、(C4-C10)ヘテロアリール基、もしくは(C4-C10)ヘテロアリール(C1-C20)アルキル基であって、ここでZ2のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基、もしくはヘテロアリール基は、任意に全フッ素置換されるか、または、1個、2個、3個、もしくは4個の置換基で任意に置換され、ここで前記置換基は独立に、ヒドロキシル基、ハロゲン、シアノ基、(C1-C10)アルコキシ基、C6-アリール基、(C7-C24)アリールアルキル基、オキソ基(=O)、もしくはイミノ基(=NRd)であって、ここでZ2のアルキル基内の炭素原子の一つ以上が独立に、過酸化物ではない酸素、硫黄、もしくはNRcで置換されてもよく、
【化53】

は、一個以上の任意の二重結合をあらわし、
Y2が、結合であるか、O、S、C=O、もしくはNRc、CH2であって、W1が、結合であるか、-CH2-でかつm=1、2、もしくは3であるか、または、(C=O)(CH2)1-5でかつm=1であり、ここでW1には任意に、過酸化物ではないO、S、C=O、もしくはNRcが間に挟まり、
【化54】

の各々が任意の二重結合をあらわし、
Ra、Rb、RcおよびRdが独立に、水素もしくは(C1-C10)アルキル基であり、
R1およびR2のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基、もしくはヘテロアリール基が独立に、任意に全フッ素置換されるか、または、1個、2個、3個、もしくは4個の置換基で任意に置換され、ここで前記置換基は独立に、ヒドロキシル基、ハロゲン、シアノ基、(C1-C10)アルコキシ基、C6-アリール基、(C7-C24)アリールアルキル基、オキソ基(=O)、もしくはイミノ基(=NRd)であって、ここでR1もしくはR2のアルキル基内の炭素原子の一つ以上が独立に、過酸化物ではない酸素、硫黄、もしくはNRcで置換されてもよく、
R3のアルキル基が、任意に1個もしくは2個のヒドロキシル基で置換され、
Rdは水素もしくは(C1-C10)アルキル基であり、
かつ、前記異性体を構造式(I)を持つ化合物に変換するステップを含む、方法。
【請求項25】
スフィンゴシン1-リン酸受容体の活性が関与し、前記活性のアゴニズムが望まれる、哺乳類の症状もしくは症候を予防もしくは処置するための方法であって、
前記哺乳類に、請求項1から23のいずれか一項に記載の化合物の有効量を投与することを含む、方法。
【請求項26】
前記症状が、自己免疫疾患である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記自己免疫疾患が、ブドウ膜炎、I型糖尿病、慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患、もしくは多発性硬化症である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記自己免疫疾患が、多発性硬化症である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記症状の予防もしくは処置が、リンパ球トラフィッキングを変化させる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
リンパ球トラフィッキングを変化させることが、同種移植片生着の延長をもたらす、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記同種移植片が、移植のためのものである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
S1Pリアーゼ活性が関与し、前記S1Pリアーゼの阻害が望まれる、哺乳類の症状もしくは症候を予防もしくは処置するための方法であって、
前記哺乳類に、請求項1から23のいずれか一項に記載の化合物の有効量を投与することを含む、方法。
【請求項33】
医療に用いるための、請求項1から23のいずれか一項に記載の化合物の使用方法。
【請求項34】
スフィンゴシン1-リン酸受容体の活性が関与する哺乳類の症状もしくは症候の予防もしくは処置に有用な医薬を調製するための、請求項1から23のいずれか一項に記載の化合物の使用方法。
【請求項35】
前記医薬が液体キャリアを含む、請求項34に記載の使用方法。

【図1B】
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【図14】
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【図1A】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2010−536791(P2010−536791A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521211(P2010−521211)
【出願日】平成20年8月15日(2008.8.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/073378
【国際公開番号】WO2009/023854
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(501038296)ユニバーシティ オブ バージニア パテント ファンデーション (17)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF VIRGINIA PATENT FOUNDATION
【出願人】(504274170)バイオゲン アイデック エムエー インク. (3)
【氏名又は名称原語表記】Biogen Idec MA Inc.
【住所又は居所原語表記】14 Cambridge Center, Cambridge, MA 02142 (US)
【Fターム(参考)】