説明

二色性色素、液晶組成物、及び液晶素子

【課題】高いオーダーパラメーター(S値)を保持しつつ、長波長領域に吸収極大波長を有する、新規なアゾ系二色性色素、並びに該色素を含有する液晶組成物および液晶素子を提供することを目的とする。
【解決手段】下記構造式(I)で示されるアゾ系二色性色素。


(式中、R、RおよびRはそれぞれ独立した任意の一価の基を示し、Aは水素結合性置換基を示し、環Arは置換基を有していてもよいチエノチアゾール基、置換基を有していてもよい1,4−フェニレン、または置換基を有していてもよい1,4−ナフチレン環を示し、nは2以上の整数を示す。複数の環Arは同一であっても異なっていてもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示などに用いられる新規な二色性色素、並びに該色素を含有する液晶組成物及び液晶素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子として多くの方式が提案されている。例えば、ゲストホスト方式の液晶素子とは、液晶中に二色性色素を溶解させた液晶組成物をセル中に封印し、これに電場を与え、電場による液晶の動きにあわせて二色性色素の配向を変化させ、セルの吸光状態を変化させることで表示する方式の液晶素子である。このゲストホスト方式は、バックライトを用い電力消費の少ない反射液晶素子として期待されている。
【0003】
ここで、液晶と共に液晶組成物を構成する二色性色素には、適当な光吸収特性、高い二色比のオーダーパラメーター値(S値)、ホスト液晶に対する高い溶解性および耐久性などの性質が要求される。
液晶素子に用いられる二色性色素には、アントラキノン系色素とアゾ系色素が知られている。一般的にアントラキノン系の色素は、分子構造によりイエローからシアンまで種々の色を得ることができ、耐光性に優れているとされているが、吸光係数が小さく、吸収スペクトルがシャープであるという欠点がある。これに対して、一般的にアゾ系色素は、二色比が高く、かつ吸光係数が大きい。さらに吸収スペクトルがブロードであるため、他の二色性色素と混色することにより所望のブラックの液晶組成物を構成する用途において、混色する色素の数を、アントラキノン系の色素に比べて少なくでき、かつ添加量が少なくても高コントラスト化が可能であるという利点を有する。
【0004】
特許文献1には、チエノチアゾール環を有する特定のジスアゾ系二色性色素が開示されている。
特許文献2には、特定の複素環アゾ系二色性色素が開示されており、0.80以上のオーダーパラメーター(S値)の青色二色性色素及び該色素を含む液晶組成物並びに、コントラストに優れた液晶素子が記載されている。
【0005】
特許文献3、4には、特定の構造を有するアゾ系二色性色素が開示されており、高いオーダーパラメーター(S値)を示すことについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−146960号公報
【特許文献2】特開2000−239664号公報
【特許文献3】特開2009−7486号公報
【特許文献4】特開2010−155924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の二色性色素は、上記特許文献2において比較例として挙げられているとおり、良好な表示コントラストを得るための二色性および溶解性が十分でないという問題があった。
また、特許文献2に記載の二色性色素は、本願明細書において比較例として示すとおり、吸収ピーク波長(λmax)が短波長側にあるため、長波長領域に吸収を有する二色性色素のニーズ、例えば、無彩色の液晶組成物を必要とする用途のニーズを満たすには不十
分であった。
【0008】
上記特許文献3、4は、吸収ピーク波長(λmax)が短波長側にあるため、長波長領域に吸収を有する二色性色素のニーズ、例えば、無彩色の液晶組成物を必要とする用途のニーズを満たすには不十分であった。
本発明の課題は、高いオーダーパラメーター(S値)を保持しつつ、長波長領域に吸収極大波長を有する、新規なアゾ系二色性色素を提供することを目的とする。また、本発明の課題は、新規なアゾ系二色性色素を用いることにより長波長領域までコントラストの高い表示を実現しうる、ゲストホスト方式の液晶組成物およびこれを含む液晶素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記構造式(I)で示されるアゾ系二色性色素のナフタレン環上のAの位置に特定の置換基を導入することにより、驚くべきことに、高いオーダーパラメーター(S値)を保持しつつ、アゾ系二色性色素の長波長化が実現できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて成し遂げられたものである。
すなわち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1) 下記構造式(I)で示されるアゾ系二色性色素。
【0010】
【化1】

【0011】
[式中、R、RおよびRはそれぞれ独立した任意の一価の基を示し、Aは水素結合
性置換基を示し、環Arは置換基を有していてもよいチエノチアゾール基、置換基を有していてもよい1,4−フェニレン、または置換基を有していてもよい1,4−ナフチレン環を示し、nは2以上の整数を示す。複数の環Arは同一であっても異なっていてもよい。)
(2) 構造式(I)が下記構造式(II)または(III)で表されることを特徴とするアゾ系二色性色素。
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、R21〜R23、R31〜R33はそれぞれ独立して任意の一価の基を示し、A、Aは水素結合性置換基を示す。)
(3)上記構造式(I)中のA又は(II)中のA又は(III)中のAが、ヒドロキシ基である上記(1)又は(2)に記載のアゾ系二色性色素。
(4)上記構造式(I)中のR又は(II)中のR23又は(III)中のR33が、
下記構造式(IV)で表される構造であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1に記載のアゾ系二色性色素。
【0014】
-CH2-X-R4 (IV)
[Rは任意の一価の基を示し、Xはフェニレン基またはシクロへキシレン基を示す。]
(5)吸収極大波長(λmax)が630nm以上であることを特徴とする上記(1)〜(
4)のいずれか1に記載のアゾ系二色性色素。
(6)上記(1)〜(5)のいずれか1に記載の二色性色素を含有することを特徴とする液晶組成物。
(7)上記(6)に記載の液晶組成物を含む液晶層を有することを特徴とする液晶素子。
【発明の効果】
【0015】
本発明のアゾ系二色性色素は、高いオーダーパラメーター(S値)を保持しつつ、長波長領域に吸収極大波長を有するため、長波長領域までコントラストの高い表示を実現するために必要なゲストホスト方式の液晶組成物およびこれを含む液晶素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のアゾ系二色性色素を用いて作製した液晶素子の一例を示す相転移モードゲストホスト型液晶表示素子の電圧印加状態における略示的断面図である。
【図2】本発明のアゾ系二色性色素を用いて作製した液晶素子の一例を示す相転移モードゲストホスト型液晶表示素子の電圧無印加状態における略示的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の二色性色素は、下記構造式(I)で示される。
【0018】
【化3】

【0019】
式中、R、RおよびRはそれぞれ独立して任意の一価の基を示し、Aは水素結合性置換基(例えば、窒素、酸素、硫黄、ハロゲンなどと水素結合を形成しうる水素を最低1つ有する置換基)、環Arは置換基を有していてもよいチエノチアゾール基、置換基を
有していてもよい1,4−フェニレンまたは置換基を有していてもよい1,4−ナフチレン環を示し、nは2以上の整数を示す。複数の環Arは同一であっても異なっていてもよい。
【0020】
1.R、R及びRについて
構造式(I)において、R、RおよびRはそれぞれ独立して、任意の一価の基を表す。
は任意の一価の基を示す。Rは、低極性で分子長を伸張する構造や、液晶分子の部分構造とすることが、液晶に溶解しやすい場合があるため好ましい。また、Rは、アルキル基またはアルコキシ基と、任意の数のフェニレン基、シクロヘキサン−ジイル基または2価の連結基とが、任意の組み合わせおよび順番で結合した基とすることが好ましい。
【0021】
2価の連結基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチレン基、エチレ
ン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、シクロへキシレン基等の炭素数1〜10の、直鎖状、分岐状、又は環状のアルキレン基;ビニレン基、プロペニレン基、イソプロペニレン基等の炭素数2〜10の、直鎖状、分岐状、又は環状のアルケニレン基;エチニレン基、プロピニレン基、イソプロピニレン基、等の炭素数2〜10の、直鎖状、分岐状、又は環状のアルキニレン基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数2〜20、好ましくは2〜10のエステル基;エーテル基;カルボニル基;それらを組み合わせた基等が挙げられる。
【0022】
上述したRが有するアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等の炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のものが好ましく、中でも、直鎖状のものが更に好ましく、炭素数3〜8の直鎖状のアルキル基が特に好ましい。
上述したRが有するアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、へキシル基、オクチル基等の炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のものが好ましく、中でも、直鎖状のものが更に好ましく、炭素数3〜8の直鎖状のアルコキシ基が特に好ましい。
【0023】
また、Rがフェニレン基および/またはシクロヘキサン-ジイル基が任意の組み合わ
せおよび任意の順番で連結した構造を有する場合、当該フェニレン基および/またはシクロヘキサン-ジイル基は、直接又は、環状構造及びアゾ結合を含まない2価の連結基を介
して連結される。
環状構造及びアゾ結合を含まない2価の連結基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基等の炭素数1〜10の、直鎖状、又は分岐状のアルキレン基;ビニレン基、プロペニレン基、イソプロペニレン基、ブテニレン基、イソブテニレン基、sec−ブテニレン基、tert−ブテニレン基、ヘキセニレン基、オクテニレン基等の炭素数2〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルケニレン基;エチニレン基、プロピニレン基、イソプロピニレン基、ブチニレン基、イソブチニレン基、sec−ブチニレン基、tert−ブチニレン基、ヘキシニレン基、オクチニレン基等の炭素数2〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキニレン基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等の炭素数2〜20、好ましくは2〜10のエステル基;エーテル基;カルボニル基;それらを組み合わせた基等が挙げられる。
【0024】
これらの中でも、結合原子数が2個のものが好ましく、−O−CO−、−CO−O−、−CH2O−、−O−CH2−等が更に好ましく、−CH2O−が特に好ましい。
を以上に述べたような構造とすることによって、高いオーダーパラメーターを達成することができる。上記構造において、アルキル基とフェニレン基、アルキル基とシクロヘキサン−ジイル基、あるいはフェニレン基とシクロヘキサン−ジイル基、アルコキシ基とフェニレン基、アルコキシ基とシクロヘキサン−ジイル基の結合位置は特に限定されないが、高いオーダーパラメーターを達成する上では、4位で結合することが特に好ましい。
【0025】
としては、例えば、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の炭素数3〜10、好ましくは炭素数3〜8の直鎖アルキル基; 4-プロ
ピルシクロヘキシル基、4-ブチルシクロヘキシル基、4-ペンチルシクロヘキシル基、4-ヘ
キシルシクロヘキシル基、4-ペプチルシクロヘキシル基等の炭素数9〜16、好ましくは炭素数9〜14の4−アルキルシクロヘキシル基;4−ブチルフェニル基、4−ペンチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル等の炭素数9〜16、好ましくは炭素数9〜14の4−アルキルフェニル基;4−(4−プロプルシクロヘキシル)フェニル基、4−(4−ブチルシクロヘキシル)フェニル基、4−(4−ペンチルシクロヘキシル)フェニル基、4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)フェニル基等の炭素数15〜22、好ましくは炭素数15〜20の4−(4−アルキルシクロヘキシル)フェニル基;4-プロポキシシクロヘキシル基、4-ブチルオキシシクロヘキシル基、4-ペンチルオキシシクロヘキシル基、4-ヘキシルオキシシクロヘキシル基、4-ペプチルオキシシクロヘキシル基等の炭素数9〜16、好ましくは炭素数9〜14の4−アルコキシシクロヘキシル基;4−ブチルオキシフェニル基、4−ペンチルオキシフェニル基、4−ヘキシルオキシフェニル等の炭素数9〜16、好ましくは炭素数9〜14の4−アルキルオキシフェニル基;4−(4−プロプルオキシシクロヘキシル)フェニル基、4−(4−ブチルオキシシクロヘキシル)フェニル基、4−(4−ペンチルオキシシクロヘキシル)フェニル基、4−(4−ヘプチルオキシシクロヘキシル)フェニル基等の炭素数15〜22、好ましくは炭素数15〜20の4−(4−アルキルオキシシクロヘキシル)フェニル基等が挙げられる。
【0026】
は任意の一価の基を示す。Rは本発明の性能を損なわない限りいかなる基でも良いが、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基などの炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基が挙げられる。中でも、水素原子、メチル基、エチル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0027】
は任意の一価の基を示す。Rは、低極性で分子長を伸張する構造や、液晶分子の部分構造とすることが、液晶に溶解しやすくなる場合があり好ましい。また、Rは、アルキル基またはアルコキシ基と、任意の数のフェニレン基、シクロヘキサン−ジイル基または2価の連結基とが、任意の組み合わせおよび順番で結合した基とすることが好ましく、その基がアルキレン基を介して窒素原子に結合した構造をとることが特に好ましい。2価の連結基は、Rで例示した2価の連結基と同義である。
【0028】
上記Rが有するアルキル基としては、前記Rが有するアルキル基として例示したメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等の炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のものが好ましく、中でも、直鎖状のものが更に好ましく、炭素数3〜8の直鎖状のアルキル基が特に好ましい。
【0029】
上記Rが有するアルコキシ基としては、前記Rが有するアルコキシ基として例示したメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、へキシル基、オクチル基等の炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のものが好ましく、中でも、直鎖状のものが更に好ましく、炭素数3〜8の直鎖状のアルコキシ基が特に好ましい。
【0030】
また、R3がフェニレン基および/またはシクロヘキサン-ジイル基が任意の組み合わせおよび任意の順番で連結した構造を有する場合、当該フェニレン基および/またはシクロヘキサン-ジイル基は、直接又は、環状構造及びアゾ結合を含まない2価の連結基を介し
て連結される。
環状構造及びアゾ結合を含まない2価の連結基としては、特に限定されるものではないが、例えば、Rが有する環状構造及びアゾ結合を含まない2価の連結基として前述した炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基;同じく前述した炭素数2〜10
の直鎖状もしくは分岐状のアルケニレン基;同じく前述した炭素数2〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキニレン基;同じく前述した炭素数2〜20、好ましくは2〜10のエステル基;エーテル基;カルボニル基;それらを組み合わせた基等が挙げられる。
【0031】
これらの中でも、結合原子数が2個のものが好ましく、−O−CO−、−CO−O−、−CH2O−、−O−CH2−等が更に好ましく、−CH2O−が特に好ましい。
を以上に述べたような構造とすることによって、高いオーダーパラメーターを達成することができる。上記構造において、アルキル基とフェニレン基、アルキル基とシクロヘキサン−ジイル基、あるいはフェニレン基とシクロヘキサン−ジイル基、アルコキシ基とフェニレン基、アルコキシ基とシクロヘキサン−ジイル基の結合位置は特に限定されないが、高いオーダーパラメーターを達成する上では、4位で結合することが特に好ましい。
【0032】
なお、窒素原子に結合するアルキレン基としては、Rが有する環状構造及びアゾ結合を含まない2価の連結基として前述した炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基が挙げられる。
としては、例えば、(4−ブチルフェニル)メチル基、(4−ペンチルフェニル)メチル基、(4−ヘキシルフェニル)メチル基等の炭素数10〜17(4−アルキルフェニル)メチル基;(4−ブトキシフェニル)メチル基、(4−ペンチルオキシフェニル)メチル基、(4−ヘキシルオキシフェニル)メチル基等の炭素数10〜17の(4−アルコキシフェニル)メチル基;(4−プロピルシクロヘキシル)メチル基、(4−ブチルシクロヘキシル)メチル基、(4−ペンチルシクロヘキシル)メチル基、(4−ヘキシルシクロヘキシル)メチル基、(4−ヘプチルシクロヘキシル)メチル基等の炭素数10〜17の(4−アルキルシクロヘキシル)メチル基;(4−(4−プロピルシクロヘキシル)フェニル)メチル基、(4−(4−ブチルシクロヘキシル)フェニル)メチル基、(4−(4−ペンチルシクロヘキシル)フェニル)メチル基、(4−(4−ヘキシルシクロヘキシル)フェニル)メチル基、(4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)フェニル)メチル基等の炭素数16〜23の(4−(4−アルキルシクロヘキシル)フェニル)メチル基;(4−(4−プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル)メチル基、(4−(4−ブチルシクロヘキシル)シクロヘキシル)メチル基、(4−(4−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキシル)メチル基、(4−(4−ヘキシルシクロヘキシル)シクロヘキシル)メチル基、(4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキシル)メチル基等の炭素数16〜23(4−(4−アルキルシクロヘキシル)シクロヘキシル)メチル基、(4−ブチルオキシフェニル)メチル基、(4−ペンチルオキシフェニル)メチル基、(4−ヘキシルオキシフェニル)メチル基等の炭素数10〜17(4−アルキルオキシフェニル)メチル基;(4−ブトキシフェニル)メチル基、(4−ペンチルオキシフェニル)メチル基、(4−ヘキシルオキシフェニル)メチル基等の炭素数10〜17の(4−アルコキシフェニル)メチル基;(4−プロピルオキシシクロヘキシル)メチル基、(4−ブチルオキシシクロヘキシル)メチル基、(4−ペンチルオキシシクロヘキシル)メチル基、(4−ヘキシルオキシシクロヘキシル)メチル基、(4−ヘプチルオキシシクロヘキシル)メチル基等の炭素数10〜17の(4−アルキルオキシシクロヘキシル)メチル基;(4−(4−プロピルオキシシクロヘキシル)フェニル)メチル基、(4−(4−ブチルオキシシクロヘキシル)フェニル)メチル基、(4−(4−ペンチルオキシシクロヘキシル)フェニル)メチル基、(4−(4−ヘキシルオキシシクロヘキシル)フェニル)メチル基、(4−(4−ヘプチルオキシシクロヘキシル)フェニル)メチル基等の炭素数16〜23の(4−(4−アルキルオキシシクロヘキシル)フェニル)メチル基;(4−(4−プロピルオキシシクロヘキシル)シクロヘキシル)メチル基、(4−(4−ブチルオキシシクロヘキシル)シクロヘキシル)メチル基、(4−(4−ペンチルオキシシクロヘキシル)シクロヘキシル)メチル基、(4−(4−ヘキシルオキシシクロヘキシル)シクロヘキシル)メチル基、(4−(4−ヘプチルオキシシクロヘキシル)シクロヘキシル)メチル基等の炭素
数16〜23(4−(4−アルキルオキシシクロヘキシル)シクロヘキシル)メチル基等が挙げられる。
【0033】
およびRは結合して環構造を形成しても良い。具体的には、RおよびRが連結して、アルキレン基、さらに好ましくは -CHCHCHCH- 基および -CH(CH)CHCHCH- 基等を形成しても良い。
は、下記構造式(IV)であることが、高いオーダーパラメーター及び合成容易性を得るために好ましい。
【0034】
-CH2-X-R4 (IV)
は任意の一価の基を示す。Rは、下記に示す水素原子、アルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシ基及び2価の連結基が任意の組み合わせ及び順番で結合していても良い。2価の連結基は、Rで例示した2価の連結基と同義である。
が有する基の具体例としては、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの炭素数1〜10の、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基;エトキシメチル基、ブトキシメチル基、エトキシメチル基、ブトキシエチル基等の炭素数2〜10のアルコキシアルキル基;メトキシ基、ブトキシ基、へキシルオキシ基、ノニルオキシ基等の炭素数1〜10の、直鎖状または分岐状のアルコキシ基が挙げられる。
【0035】
特に、炭素数3〜7の、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数3〜7の、直鎖状又は分岐状のアルコキシ基が高いオーダーパラメーター及びホスト液晶に対する高い溶解性を実現できる場合があり好ましい。
Xは、フェニレン基またはシクロへキシレン基を示し、具体例としては、1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基等が挙げられる。
【0036】
XまたはRの少なくとも一方が、シクロへキシレン基を含むことが、高いオーダーパラメーター及びホスト液晶に対する高い溶解性を実現できる場合があり好ましい。
2.Aについて
構造式(I)において、Aは水素結合性置換基を示す。水素結合性置換基は、分子間や分子内において水素結合を形成しうる置換基であれば特に限定されないが、例えば、−NH2、−SH、−OH、−NH−C(=R)NH2(Rは酸素原子またはイミノ基を表す。)、−NH−COCF3から選ばれる置換基等を例示することができる。
【0037】
構造式(I)のAとして、例えば、窒素、酸素、硫黄、ハロゲンなどと水素結合を形成しうる水素を最低1つ有する置換基が挙げられる。Aの置換基が有する水素は、通常の脂
肪族炭素と結合している水素原子よりも電子密度が低いものであれば特に限定されないが、Aとしては、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボアミド基、スルホンアミド基などが挙げられる。中でもヒドロキシ基(−OH基)が特に好ましい。
【0038】
本発明のアゾ系二色性色素、並びに該色素を含有する液晶組成物及び液晶素子が有する技術的特徴である、吸収極大波長の長波長化と高いオーダーパラメーター(S値)の両立は、構造式(I)のナフタレン環上のAの位置に、前記の特定の置換基を導入することにより、この置換基上の水素が、近傍のアゾ基と水素結合ないし水素結合に近い状態を形成することなどによって、予想外の効果をもって実現しているものと考えられる。
【0039】
3.環Arについて
環Arは置換基を有していてもよいチエノチアゾール基、置換基を有していてもよい1
,4−フェニレンまたは1,4−ナフチレン環を示す。2以上の環Arはそれぞれ同一であっても異なっても良い。環Arが置換基を有する場合、置換基としては、例えばアルコキシ基、アルキル基等の電子供与性の置換基;あるいはシアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基などの電子吸引基があげられる。
【0040】
環Arの置換基であるアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブト
キシ基などの炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜4、中でも炭素数1〜3のアルコキシ基が挙げられる。
環Arの置換基であるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などの炭素
数1〜10、好ましくは炭素数1〜4、中でも炭素数1〜3のアルキル基が挙げられる。
【0041】
電子供与性の基としては、これらの中でもメチル基またはメトキシ基が特に好ましい。環Arの置換基であるアルキルスルホニル基としては、例えばメチルスルホニル基、エチルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、n-ブチルスルホニル基、イソブチルスルホニル基、sec-ブチルスルホニル基、tert-ブチルスルホニル基などの炭素数1〜10、好
ましくは炭素数1〜4、中でも炭素数1〜3のアルキルスルホニル基が挙げられる。
【0042】
環Arの置換基であるハロゲン化アルキル基としては、例えばトリフルオロメチル基、ペンタルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基などの炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜4、中でも炭素数1〜3の低級フルオロアルキル基が挙げられる。環Arのハロゲン原子としては、例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、好ましくはフッ素、塩素、臭素が挙げられる。
【0043】
環Arの置換基であるアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシ
カルボニル基などの炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜4、中でも炭素数1〜3のアルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0044】
電子吸引性の基としては、これらの中でもトリフルオロメチル基、フッ素原子、塩素原子、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基が特に好ましい。
4.nについて
nは2以上の整数を示す。nが5以上の分子は長波長化には有利だが、製造が困難でありまたホスト液晶に対する溶解性が低くなるため、通常4以下、2〜3がもっとも好ましい。
本発明の構造式(I)で表される二色性色素の中でも、下記構造式(II)または(III)で表されるアゾ系二色性色素が好ましい。
【0045】
【化4】

【0046】
(式中、R21〜R23およびR31〜R33はそれぞれ独立して任意の一価の基を示し、A2
は水素結合性置換基を示す。)
5.R21〜R23およびR31〜R33について
構造式(II)、(III)のR21〜R23およびR31〜R33はそれぞれ独立して、任意の一価の基を表す。
【0047】
構造式(II)のR21及び(III)のR31は上述した構造式(I)のRと同義であり、構造式(II)のR22及び(III)のR32は上述した構造式(I)のR2と同義で
ある。
また、構造式(II)のR23及び(III)のR33は上述した構造式(I)のR3で示
した例示の基,と同義であり、R23及びR33は、下記構造式(IV)であることが、高い
オーダーパラメーター及び合成容易性を得るために好ましい。
【0048】
-CH2-X-R4 (IV)
は任意の一価の基を示す。Rは、下記に示す水素原子、アルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシ基及び2価の連結基が任意の組み合わせ及び順番で結合していても良い。2価の連結基は、Rで例示した2価の連結基と同義である。
が有する基の具体例としては、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基;エトキシメチル基、ブトキシメチル基、エトキシメチル基、ブトキシエチル基等の総炭素数2〜10のアルコキシアルキル基;メトキシ基、ブトキシ基、へキシルオキシ基、ノニルオキシ基等の炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルコキシ基が挙げられる。
【0049】
特に、炭素数3〜7の直鎖状又は分岐状のアルキル基、炭素数3〜7の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基が高いオーダーパラメーター及びホスト液晶に対する高い溶解性を実現できる場合があり好ましい。
Xは、フェニレン基またはシクロへキシレン基を示し、具体例としては、1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基等が挙げられる。
XまたはRの少なくとも一方が、シクロへキシレン基を含むことが、高いオーダーパラメーター及びホスト液晶に対する高い溶解性を実現できる場合があり好ましい。
【0050】
6.A及びA3について
構造式(II)、(III)においてA2及びA3は、水素結合性置換基を表し、上述した構造式(I)のAと同義である。
本発明の構造式(I)、(II)または(III)で表される二色性色素の中でも、下記構造式(V)または(VI)で表されるアゾ系二色性色素が好ましい。
【0051】
【化5】

【0052】
上記式中、R51、R52、R61、R62及びR4はそれぞれ独立した任意の一価の基
を示し、Xはフェニレン基またはシクロへキシレン基を示す。
構造式(V)のR51及び(VI)のR61は上述した構造式(I)のRと同義であり、構造式(V)のR52及び(VI)のR62は上述した構造式(I)のR2と同義である。
また、X及びR4は、上述した構造式(IV)の、X及びR4と同義である。
【0053】
7.分子量
以上に説明した構造式(I)で表される本発明の二色性色素は、ホスト液晶への溶解性および応答速度の点から通常分子量3000以下、中でも1500以下であることが好ましい。
8.具体例
構造式(I)で表わされる二色性色素の具体例を以下に例示するが、本発明はその要旨をこえない限りこれらに限定されるものではない。
【0054】
【化6】

【0055】
9.合成方法
以上の本発明の二色性色素は、中間体(VII)と中間体(VIII)でアゾカップリング反
応を行うことにより合成できる。中間体(VII)は、公知の方法により合成でき、例えば
特開昭58−38756号公報に記載の方法や実施例の方法により合成できる。中間体(VIII)は、Aがヒドロキシ基の場合は例えば実施例に記載の方法で合成できる。
【0056】
【化7】

【0057】
10.液晶組成物
本発明の二色性色素の1種又は2種以上を、日本学術振興会第142委員会編「液晶デバイスハンドブック」(日刊工業新聞社、1989年発行)の第154〜192頁及び第715〜722頁記載のネマチック或いはスメクチック相を示すビフェニル系、フェニルシクロヘキサン系、フェニルピリミジン系、シクロヘキシルシクロヘキサン系等の各種のホスト液晶化合物、又はそれらの化合物を含有するホスト液晶組成物に公知の方法で混合することにより、容易に液晶組成物を調製することができる。
【0058】
このような液晶化合物の例としては、特開平3−14892号公報などに記載の化合物があげられる。好ましいホスト液晶の種類は駆動方式により異なるが、例えばアクティブマトリックス系である場合はフッ素系液晶が好ましい。
前記液晶組成物における本発明の前記二色性色素の含有割合は、特に限定されるものではないが、2種以上を含有する場合も含めて、通常0.05〜15重量%であり、0.1〜5重量%であるのが好ましい。
【0059】
その際のホスト液晶化合物としては、例えば、下記構造式(IX) 〜(XIII)で表されるNp型液晶化合物、Nn型液晶化合物が挙げられる。
【0060】
【化8】

【0061】
式(IX) 〜(XIII)中、環Eは、シクロヘキサン環、ベンゼン環、ジオキサン環、又はピ
リミジン環を示し、q は1〜3の整数を示す。Zは、単結合、−CO−O−、−CH2CH2 −、−CH=CH−、又は−C≡C−を示す。D1及びD3は各々独立して、水素原子、又は弗素原子、塩素原子等のハロゲン原子を示し、D2 は弗素原子、塩素原子等のハロゲ
ン原子、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を置換基として有する炭素数1〜7のアルキル基、同じくアルケニル基、同じくアルコキシ基、これらの置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルコキシ基を置換基として有するシクロヘキシル基、又はこれらの置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルコキシ基を置換基として有するフェニル基を示す。D7 及びD8 は各々独立して、シアノ基、又はフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を示す。D11及びD13はシアノ基を示す。D4 、D5 、D6 、D9 、D10、D12、及びD14は各
々独立して、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、又は炭素数2〜10のアルコキシアルキル基を示す。
【0062】
尚、本発明の液晶組成物としては、本発明の前記二色性色素以外の二色性色素、及び、コレテリルノナノエート等の、液晶相を示しても示さなくてもよい光学活性物質や、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤を含有していてもよい。
本発明の二色性色素またはこれを含有する液晶組成物は、好ましくは630nm以上、より好ましくは650nm以上、さらに好ましくは680nm以上、最も好ましくは690nm以上の長波長領域に吸収極大波長を有する。また、本発明の二色性色素またはこれを含有する液晶組成物は、好ましくは0.78以上、さらに好ましくは0.80以上、最も好ましくは0.81以上の高いオーダーパラメーターを有する。本発明の液晶組成物は、コンピューター、時計、電卓用等の表示素子、電子光学シャッター、電子光学絞り、光通信光路切替スイッチ、光変調器等の種々の電子光学デバイスとして好適に利用することができる。
【0063】
尚、色素のオーダーパラメーター(S値)は、分光学的な測定に基づき、前述の日本学術振興会第142委員会編「液晶デバイスハンドブック」に記載の次式から求めることができる。
S=(A//−A⊥)/(2A⊥+A//)
ここで、「A//」及び「A⊥」は、それぞれ、液晶の配向方向に対して平行及び垂直に偏光した光に対する色素の吸光度であり、S値は、理論上は0〜1の範囲の値をとり、その値が1に近づく程、ゲストホスト型液晶素子としてのコントラストが向上することとなる。
【0064】
11.液晶素子
本発明の前記二色性色素を含有する前記液晶組成物を含む液晶層を、少なくとも一方が透明な2枚の電極付基板間に挟持することにより、松本正一、角田市良著「液晶の最新技術」(工業調査会、1983年発行)第34頁、J.L.Fergason,SID85Digest,68(1985)、日本学術振興会第142委員会編「液晶デバイスハンドブック」(日刊工業新聞社、1989発行)第315〜329頁、等に記載されているHeilmeier型ゲストホスト、相転移型ゲストホスト等のゲストホスト効果を利用した。このように、本発明では、液晶素子のモードは種々のものが使用可能であるが、ネマチック液晶組成物中に光学活性物質を加えることにより得られる相転移モードでは、偏光板を用いなくてもコントラストが高く表示が明るいため、反射型液晶表示素子として特に好ましい。
【0065】
本発明の液晶素子の一例として、図1及び図2にアクティブ駆動方式の相転移モードゲストホスト型液晶表示素子の略示的断面図を示す。図1は液晶表示素子の電圧印加状態を表し、図2は電圧無印加状態を表す。図中、1は入射光、3は透明ガラス板、4は透明電極、5は配向膜、6は液晶化合物分子、7は二色性色素分子、9は反射層、10は反射光を示す。
【0066】
電圧無印加時(図2)では、液晶化合物分子6はコレステリック相を示し、二色性色素分子7も液晶化合物分子6と共にコレステリック構造を示すので、入射光1は自然光であっても、偏光板を用いることなく二色性色素分子7に吸収される。電圧を印加すると(図1)、液晶化合物分子6と二色性色素分子7は電界方向に配列するため、光は透過し反射層9によって反射される。このように、液晶素子では、電界の有無によって、光の透過、吸収を制御することができる。
【実施例】
【0067】
<中間体M03の合成>
【0068】
【化9】

【0069】
中間体M01 (TCI, .96 g, 50 mmol)及び中間体M02(TCI, 8.91 g, 50 mmol)のメタノール
(100 ml) の混合物を30分間加熱還流した。酢酸 (25 ml) を加え70℃で30分間攪拌して
氷冷し、Na(CN)BH3 (2.51 g, 40 mmol) を少量ずつ添加し (内部温度35℃以下)、室温で
終夜反応させた。減圧濃縮し、水を加え、トルエンおよび酢酸エチルを加え、不溶物をセライト濾過で除き、有機層と水層を分離した。有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。有機相を減圧濃縮 し、得られた油状の残渣をカラムクロマトグラ
フィー (Merck7734, 500 g, ヘキサン/酢酸エチル 4/1〜3/1)にて生成し、M03を (9.87 g, 収率 61%)得た。
<中間体M006の合成>
【0070】
【化10】

【0071】
中間体M04(2.57g, 15.1mmol)を塩化メチレン(30ml, 11.7VRm)に希釈し、トリエチ
ルアミン(2.1ml, 15.1mmol)を添加し、氷浴にて冷却後、クロロギ酸エチル(2.1ml, 15.1mmol)を滴下した。30分攪拌後、中間体M01 (2.40g, 15.1mmol)、4-ジメチルアミノ
ピリジン(10mg)を添加し、室温に戻して12時間攪拌した。析出した結晶をろ過、乾燥して白色固体として中間体M05 を(3.81g, 収率81%)得た。
【0072】
テトラヒドロホウ酸ナトリウム(990mg, 26.2mmol)をテトラヒドロフラン(THF) (22ml, 6VR)に希釈し、氷浴にて冷却後、THF (5.6ml)に希釈したヨウ素(3.17g, 12.5mmol)を30分かけてゆっくり滴下した。さらに30分攪拌後、中間体M05 (3.70g, 11.9mmol)を添加
し、過熱還流下40分攪拌した。反応液を冷却後、3N塩酸(60ml)に反応液を添加し、析出した固体をろ過、乾燥して白色固体として中間体M06を(3.13g, 収率73%)得た。
<中間体M09の合成>
【0073】
【化11】

【0074】
中間体M07(11.9g, 60.2mmol)を塩化メチレン(120ml, 10VR)に希釈し、トリエチル
アミン(8.34ml, 60.2mmol)を添加し、氷浴にて冷却後、クロロギ酸エチル(5.94ml, 60.2mmol)を滴下した。30分攪拌後、中間体M01 (9.60g, 60.2mmol)、4-ジメチルアミノ
ピリジン(10mg)を添加し、室温に戻して2日間攪拌した。析出した結晶をろ過、乾燥し
て白色固体として中間体M08 を8.4g(収率90%)取得した。
【0075】
テトラヒドロホウ酸ナトリウム(4.90g, 130mmol)をTHF(120ml, 6VR)に希釈し、氷浴
にて冷却後、THF(30ml)に希釈したヨウ素(15.7g, 61.9mmol)を30分かけてゆっくり滴下した。さらに30分攪拌後、中間体M08 (20.0g, 58.9mmol)を添加し、過熱還流下4時間攪拌した。反応液を冷却後、1N塩酸(100ml)に反応液を添加し、酢酸エチルにて抽出し、硫酸マグネシウムにて乾燥し、ろ過したろ液を濃縮して粗体23.7gを取得した。この粗体をシリカゲルカラム(SiO2:300ml、へキサン:酢酸エチル=1:20〜1:10にて精製し、中間体M09を(9.7g, 収率50%)得た。
<中間体M15の合成>
【0076】
【化12】

【0077】
中間体M14は国際公開2005/49023号パンフレットに記載の手法で合成した。
中間体M14 (6.10g, 35.2mmol)をテトラヒドロフラン(13ml)に溶解し、炭酸カルシウム(14.8g, 140mmol)、1,4-ジブロモブタン(7.98g,37.0mmol)を添加し、10時間過熱還流下で攪拌した。反応液を室温に冷却し、水(50ml)を添加し、酢酸エチル(100ml)に
て抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、ろ過後のろ液を濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(60N関東科学, ヘキサン/酢酸エチル 20/1〜15/1) で精製し、茶色オイルとして中間体M15を(4.03g, 収率50%)得た。
<中間体M17の合成>
【0078】
【化13】

【0079】
中間体M15 (5.0g, 22.0mmol)を酢酸(20ml)に希釈し、48%臭素酸(20ml)を添加し、120℃で19時間加熱還流した。反応液を室温に戻し、氷冷下で10%水酸化ナトリウム水溶液(100ml)に滴下し、クロロホルム(60ml)で2回抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで
乾燥し、ろ過して得られた溶液を濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(60N関東科学 150ml, ヘキサン/酢酸エチル 10/1〜3/1) で精製し、中間体M17を
(3.90g, 収率83%)得た。
【0080】
〔実施例1〕
<化合物1の合成 >
【0081】
【化14】

【0082】
中間体M10は特開2010-155924号公報に記載の手法で合成した。
中間体M10(1.89 g, 3.0 mmol) にN-メチル-2-ピロリドン(100 ml) を加え氷冷し、濃塩酸 (0.875 ml, 10.5 mmol) および亜硝酸ナトリウム (0.217 g, 3.15 mmol) の水 (1 ml)
溶液を加え、1時間攪拌しジアゾ液を得た。中間体M03(0.964 g, 3.0 mmol) の N-メチル-2-ピロリドン (10 ml) 溶液を氷冷し、ジアゾ液を滴下した。酢酸ナトリウム (2 g, 24 mmol) を加え、室温で1時間攪拌後、メタノール (50 ml) を加え、吸引濾過した。得られたケーキをメタノールおよび水でかけ洗浄して、得られた粉末をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (吸着法, シリカゲル60N関東科学, ヘキサン/クロロホルム 1/2〜1/3〜0/1) で精製し、得られた粉末をTHF/エタノール 5/2 約100mlで洗浄し、エタノールでふりかけ洗浄した。さらに粉末を取ってエタノールで洗浄して、化合物1(0.67 g, 収率 23%)
を得た。
【0083】
〔実施例2〕
<化合物2の合成>
【0084】
【化15】

【0085】
中間体M11は特開2010-155924号公報に記載の手法で合成した。
中間体M11(1.69g, 3.0 mmol) にN-メチル-2-ピロリドン(30ml)、35%塩酸水(845mg)を加え氷冷し、亜硝酸ナトリウム(217mg, 3.15mmol)を添加し、30分攪拌しジアゾ液を得
た。別容器で中間体M06(892mg, 3.0 mmol) の THF(20 ml) 溶液を氷冷し、ジアゾ液を滴
下した。酢酸ナトリウム (3.0 g, 36mmol) を加え、30分攪拌後、室温に昇温した。水(100ml)を添加し、析出した固体を吸引ろ過し、さらにn-へキサン/クロロホルム=3/1の溶液で洗浄した。得られたケーキをシリカゲルカラムクロマトグラフィー (吸着法, シリカゲル60N関東科学500ml: n-へキサン/クロロホルム 2/1〜1/2) で精製し、得られた粉末
をクロロホルム/酢酸エチル 1/1で懸洗し、化合物2を(160mg, 収率3%)得た。
【0086】
〔実施例3〕
<化合物3の合成>
【0087】
【化16】

【0088】
中間体M12は特開平1-146960号公報に記載の手法で合成した。
中間体M12 (948mg, 3.0 mmol) に酢酸:プロピオン酸=17:8(29ml) を加え氷冷し、40%二トロシル硫酸(1.05g, 3.15mmol)を滴下し、30分攪拌しジアゾ液を得た。別容器で中間体M06(892mg, 3.0 mmol) の THF (20 ml) 溶液を氷冷し、ジアゾ液を滴下した。酢酸ナトリ
ウム (2.0 g, 24mmol) を加え、30分攪拌後、室温に昇温した。水(100ml)を添加し、析出した固体を吸引濾過した。得られたケーキをメタノールおよび水でかけ洗浄して、得られた粉末をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (吸着法, シリカゲル60N関東科学300ml: n-へキサン/クロロホルム 1/1〜1/2) で精製し、得られた粉末を酢酸エチル(10ml)に
て懸洗し、ろ過、乾燥し化合物3を (88mg,収率 4.7%) 得た。
【0089】
〔実施例4〕
<化合物4の合成>
【0090】
【化17】

【0091】
中間体M12(948mg, 3.0 mmol) に酢酸:プロピオン酸=17:8(30ml) を加え氷冷し、40%二
トロシル硫酸(1.05g, 3.3mmol)を滴下し、30分攪拌しジアゾ液を得た。別容器で中間体M09 (976mg, 3.0 mmol) の THF (30 ml) 溶液を氷冷し、ジアゾ液を滴下した。酢酸ナトリ
ウム (2.0 g, 24mmol) を加え、30分攪拌後、室温に昇温した。水(100ml)を添加し、析出した固体を吸引濾過した。得られたケーキをメタノールおよび水でかけ洗浄して、得られた粉末をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (吸着法, シリカゲル60N関東科学350ml: n-へキサン/クロロホルム 1/1〜1/2) で精製し、得られた粉末を酢酸エチル(20ml)に
て懸洗し、ろ過、乾燥し化合物4を(82m g, 収率 4.2%) 得た。
【0092】
〔実施例5〕
<化合物5の合成>
【0093】
【化18】

【0094】
中間体M18は特開昭62-555号公報に記載の手法で合成した。
中間体M18(2.37g,4mmol)をN-メチル-2-ピロリドン:ジメチルホルムアミド=3:1(71ml
)に希釈し、氷冷化で35%塩酸水溶液(1.0ml)、亜硝酸ナトリウム(290mg, 4.2mmol)を5℃以下を保って順次ゆっくり滴下し、30分攪拌しジアゾ液を得た。別容器で中間体M17(853mg, 4.0 mmol) の THF (40 ml) 溶液を氷冷し、ここにジアゾ液を滴下した。30分攪拌
後、室温に昇温し、水(60ml)、メタノール(60ml)を添加し、析出した固体を吸引濾過した。得られたケーキをメタノールおよび水でかけ洗浄して、得られた粉末をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (吸着法, シリカゲル60N関東科学300ml: n-へキサン/クロロホルム 3/1〜0/1) で精製し、得られた個体を酢酸エチル(20ml)、クロロホルム(10ml
)を添加して懸洗した。ろ過して得られた個体を乾燥し、化合物5を(100m g, 収率 0.3%) 得た。
【0095】
〔比較例1〕
<比較化合物1の合成>
【0096】
【化19】

【0097】
比較化合物1は特開平1-146960号公報に記載の手法で合成した。
〔比較例2〕
<比較化合物2>
【0098】
【化20】

【0099】
中間体M16は特開平10−231437号公報に記載の方法に準じて合成した。
中間体M16(2.06 g, 4.5 mmol) にN-メチル-2-ピロリドン (48ml) 及びジメチルホルム
アミド(12ml)を加え氷冷し、濃塩酸 (1.27ml, 12.1mmol) および亜硝酸ナトリウム (326mg, 4.71 mmol) の水 (1 ml) 溶液を加え、1時間攪拌しジアゾ液を得た。中間体M15(1.02 g, 4.5 mmol) の メタノール(10 ml)及びTHF(10ml)の溶液を氷冷し、ジアゾ液を滴下した。酢酸ナトリウム (5 g, 60mmol) を加え、室温で1時間攪拌後、水(100 ml) を加え、
吸引濾過した。得られたケーキをメタノールおよび水でかけ洗浄して、得られた粉末をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (吸着法, シリカゲル60N関東科学, ヘキサン/酢酸エチル 3/1〜1/1) で精製し、得られた粉末をTHF/酢酸エチル 1/3 約50mlで洗浄し、比較化合物2を (0.27 g, 収率 9%) 得た。
【0100】
〔二色性色素のλmaxおよびオーダーパラメーター(S値)の評価〕
得られた二色性色素「化合物1〜5」および「比較化合物1〜2」を商品名MCL−2039(Merck社製品)として市販されているフッ素系液晶混合物にそれぞれ0.1重量%の濃度で溶解させ、ゲストホスト液晶組成物を調整した。これを、ポリイミド系樹脂を塗布、硬化、ラビング処理した透明電極付きガラス基板を対向させ、液晶が平行配向となるように構成したギャップ50μmのセルに封入した。この着色したセルの配向方向に
平行な直線偏光に対する吸光度(A//)及び配向方向に垂直な偏光に対する吸光度(A⊥)を測定し、その吸収ピーク(λmax)におけるオーダーパラメーター(S値)を下記
の式から求めた。
【0101】
S=(A//−A⊥)/(2A⊥+A//)
この結果を表1に示した。
【0102】
【表1】

【0103】
表1から、本発明の構造式(I)で表されるアゾ系色素化合物1〜5(実施例1〜5)は、いずれも吸収極大波長(λmax)が630nm以上であって、比較例1、2に比べて著しく長波長化が実現されていることがわかる。そして、本発明の構造式(I)で表されるアゾ系色素化合物1〜5(実施例1〜5)は、いずれも長波長化を実現すると同時に、高いオーダーパラメータ(S値)を示しており、長波長化と高コントラストの両立を実現できることがわかる。
【符号の説明】
【0104】
1;入射光
3;透明ガラス基板
4;透明電極
5;配向膜
6;液晶化合物分子
7;二色性色素分子
9;反射層
10;反射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式(I)で示されるアゾ系二色性色素。
【化1】

(式中、R、RおよびRはそれぞれ独立した任意の一価の基を示し、Aは水素結合性置換基を示し、環Arは置換基を有していてもよいチエノチアゾール基、置換基を有していてもよい1,4−フェニレン、または置換基を有していてもよい1,4−ナフチレン環を示し、nは2以上の整数を示す。複数の環Arは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
構造式(I)が下記構造式(II)または(III)で表されることを特徴とするアゾ系二色性色素。
【化2】

(式中、R21〜R23、R31〜R33はそれぞれ独立して任意の一価の基を示し、A、Aは水素結合性置換基を示す。)
【請求項3】
上記構造式(I)中のA又は(II)中のA又は(III)中のAが、ヒドロキシ基である請求項1又は2に記載のアゾ系二色性色素。
【請求項4】
上記構造式(I)中のR又は(II)中のR23又は(III)中のR33が、下記構造式(IV)で表される構造であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記
載のアゾ系二色性色素。
-CH2-X-R4 (IV)
[Rは任意の一価の基を示し、Xはフェニレン基またはシクロへキシレン基を示す。]
【請求項5】
吸収極大波長(λmax)が630nm以上であることを特徴とする請求項1〜4のいず
れか1項に記載のアゾ系二色性色素。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の二色性色素を含有することを特徴とする液晶組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の液晶組成物を含む液晶層を有することを特徴とする液晶素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−82400(P2012−82400A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198639(P2011−198639)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】