説明

二色性色素、該色素を含む液晶組成物、及び液晶素子

【課題】高いオーダーパラメーター(S値)を保持しつつ、長波長領域に吸収極大波長を有する、新規なアゾ系二色性色素、並びに該色素を含有する液晶組成物及び液晶素子を提供する。
【解決手段】下記構造式(I)で表されることを特徴とするアゾ系二色性色素。


(式中、R、R、及びRはそれぞれ独立して一価の置換基を示し、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又は一価の置換基を示す。環Arは置換基を有してもよいチエノチアゾール環、置換基を有してもよい1,4−フェニレン環、又は置換基を有してもよい1,4−ナフチレン環を示す。複数の環Arは同一であっても異なっていてもよい。但し、少なくとも一つの環Arが、置換基を有してもよい1,4−フェニレン環である場合、他の環Arの少なくとも一つは、置換基を有してもよい1,4−ナフチレン環である。nは2以上の整数を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示などに用いられる新規な二色性色素、該色素を含有する液晶組成物及び液晶素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子として多くの方式が提案されている。例えば、ゲストホスト方式の液晶素子とは、液晶中に二色性色素を溶解させた液晶組成物をセル中に封印し、これに電場を与え、電場による液晶の動きにあわせて二色性色素の配向を変化させ、セルの吸光状態を変化させることで表示する方式の液晶素子である。このゲストホスト方式は、バックライトを用い電力消費の少ない反射液晶素子として期待されている。
【0003】
ここで、液晶と共に液晶組成物を構成する二色性色素には、適当な光吸収特性、高い二色比のオーダーパラメーター(S値)、ホスト液晶に対する高い溶解性及び耐久性などの性質が要求される。
液晶素子に用いられる二色性色素としては、アントラキノン系色素とアゾ系色素が知られている。一般的にアントラキノン系色素は、分子構造によりイエローからシアンまで種々の色を得ることができ、耐光性に優れているとされているが、吸光係数が小さく、吸収スペクトルがシャープであるという欠点がある。これに対してアゾ系色素は、一般的に二色比が高くかつ吸光係数が大きい。さらに吸収スペクトルがブロードであるため、他の二色性色素と混色して所望のブラックの液晶組成物を構成する用途において、混色する色素の数をアントラキノン系の色素に比べて少なくでき、かつ添加量が少なくても高コントラスト化が可能であるという利点を有する。
【0004】
アゾ系の二色性色素としては例えば、特許文献1にチエノチアゾール環を有するジスアゾ系二色性色素が開示され、特許文献2には高いオーダーパラメーター(S値)を持つ複素環アゾ系二色性色素が開示され、また特許文献3〜6にも高いS値を持つ種々のアゾ系二色性色素が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−146960号公報
【特許文献2】特開2000−239664号公報
【特許文献3】特開2009−7486号公報
【特許文献4】特開2010−155924号公報
【特許文献5】特開昭62−555号公報
【特許文献6】欧州特許出願公開第0406812A2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らの検討によれば、特許文献1〜6に記載のアゾ系二色性色素は吸収極大波長(λmax)が十分に長くなく、これを用いた液晶組成物は無彩色とすることが困難であることが分かった。しかし吸収極大波長の長波長化を図った場合、一般に、二色性色素として必須の特性であるオーダーパラメーター(S値)が低下しやすい。
以上に鑑み、本発明の課題は、高いオーダーパラメーター(S値)を保持しつつ、長波長領域に吸収極大波長を有する、新規なアゾ系二色性色素を提供することにある。また本発明の他の課題は、新規なアゾ系二色性色素を用いることにより長波長領域までコントラストの高い表示を実現しうる、ゲストホスト方式の液晶組成物及びこれを含む液晶素子を
提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記構造式(I)で表されるアゾ系二色性色素のナフタレン環上の特定の位置に特定の置換基を2基導入することにより、高いオーダーパラメーター(S値)を保持しつつ、アゾ系二色性色素の長波長化が実現できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて成し遂げられたものである。
すなわち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)下記構造式(I)で表されることを特徴とするアゾ系二色性色素。
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R、R、及びRはそれぞれ独立して一価の置換基を示し、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又は一価の置換基を示す。環Arは置換基を有してもよいチエノチアゾール環、置換基を有してもよい1,4−フェニレン環、又は置換基を有してもよい1,4−ナフチレン環を示す。複数の環Arは同一であっても異なっていてもよい。但し、少なくとも一つの環Arが、置換基を有してもよい1,4−フェニレン環である場合、他の環Arの少なくとも一つは、置換基を有してもよい1,4−ナフチレン環である。nは2以上の整数を示す。)
(2)構造式(I)中、少なくとも一つの環Arがチエノチアゾール環であり、nは2又は3であることを特徴とする上記(1)に記載のアゾ系二色性色素。
(3)下記構造式(II)で表されることを特徴とするアゾ系二色性色素。
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、R、R、及びRはそれぞれ独立して一価の置換基を示し、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又は一価の置換基を示す。)
(4)下記構造式(III)で表されることを特徴とするアゾ系二色性色素。
【0012】
【化3】

【0013】
(式中、R、R、及びRはそれぞれ独立して一価の置換基を示し、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又は一価の置換基を示す。環Arは置換基を有してもよい1,4−フェニレン環又は置換基を有してもよい1,4−ナフチレン環を示す。環Arは置換基を有してもよい1,4−フェニレン環又は置換基を有してもよい1,4−ナフチ
レン環を示し、少なくとも1つの環Arは置換基を有してもよい1,4−ナフチレン環を含む。nは2〜4の整数を示す。)
(5)構造式(III)中、環Arが1,4−フェニレン環であり、nが3であることを
特徴とする上記(4)に記載のアゾ系二色性色素。
(6)クロロホルム中での吸収極大波長(λmax)が630nm以上であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載のアゾ系二色性色素。
(7)上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の二色性色素及び液晶化合物を含有することを特徴とする液晶組成物。
(8)上記(7)に記載の液晶組成物を含む液晶層を有することを特徴とする液晶素子。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高いオーダーパラメーター(S値)を保持しつつ、長波長領域に吸収極大波長を有するアゾ系二色性色素を提供することができる。またこの二色性色素を用いることにより、無彩色で長波長領域までコントラストの高い表示を行いうるゲストホスト方式の液晶組成物及び液晶素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態としての相転移モードゲストホスト型液晶表示素子の電圧印加状態における略示的断面図である。
【図2】本発明の一実施形態としての相転移モードゲストホスト型液晶表示素子の電圧無印加状態における略示的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[二色性色素]
以下、本発明の二色性色素について詳細に説明する。
本発明の二色性色素は、下記構造式(I)で表される。
【0017】
【化4】

【0018】
式中、R、R、及びRはそれぞれ独立して一価の置換基を示し、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又は一価の置換基を示す。環Arは置換基を有してもよいチエノチアゾール環、置換基を有してもよい1,4−フェニレン環、又は置換基を有してもよい1,4−ナフチレン環を示す。複数の環Arは同一であっても異なっていてもよい。但し、少なくとも一つの環Arが、置換基を有してもよい1,4−フェニレン環である場合、他の環Arの少なくとも一つは、置換基を有してもよい1,4−ナフチレン環である。nは2以上の整数を示す。
【0019】
1.環Arについて
環Arは、チエノチアゾール環、1,4−フェニレン環、又は1,4−ナフチレン環を示す。複数の環Arは同一であっても異なっていてもよい。但し、少なくとも一つの環Arが1,4−フェニレン環である場合、他の環Arの少なくとも一つは1,4−ナフチレン環である。これらはいずれも置換基を有してもよい。
環Arが置換基を有する場合、置換基は特に限定されないが、例えばアルコキシ基、アルキル基等の電子供与性の基、又はシアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基などの電子吸引性の基、が挙げられる。
【0020】
アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基などの炭素数1〜10のアルコキシ基が挙げられる。好ましくは炭素数1〜4であり、より好ましくは炭素数1〜3である。
アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。好ましくは炭素数1〜4であり、より好ましくは炭素数1〜3である。
【0021】
なかでも、電子供与性の基としてはメチル基又はメトキシ基が特に好ましい。
アルキルスルホニル基としては、例えばメチルスルホニル基、エチルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、n−ブチルスルホニル基、イソブチルスルホニル基、sec−ブチルスルホニル基、tert−ブチルスルホニル基などの炭素数1〜10のアルキルスルホニル基が挙げられる。好ましくは炭素数1〜4であり、より好ましくは炭素数1〜3である。
【0022】
ハロゲン化アルキル基としては、例えばトリフルオロメチル基、ペンタルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基などの炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基が挙げられる。好ましくは炭素数1〜4、より好ましくは炭素数1〜3である。特に好ましくは炭素数1〜3のフルオロアルキル基である。
ハロゲン原子としては、例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、好ましくはフッ素、塩素、臭素が挙げられる。
【0023】
アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基などの炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基が挙げられる。好ましくは炭素数1〜4であり、より好ましくは炭素数1〜3である。
【0024】
なかでも、電子吸引性の基としてはトリフルオロメチル基、フッ素原子、塩素原子、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基が特に好ましい。
2.nについて
nは2以上の整数を示す。nは通常4以下であり、好ましくは2又は3である。nをこの範囲とすることにより、ホスト液晶に対する溶解性を高くでき、また製造を容易なものとすることができる。
3.Rについて
は一価の置換基を示す(水素原子ではない)。Rは、低極性で分子長を伸張する構造や、液晶分子の部分構造とすることが好ましい。具体的にはRは、R−X−で表されることが好ましい。ここでRはアルキル基又はアルコキシ基を表し、Xは直接結合又は二価の連結基を表す。
【0025】
具体的には、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましく、中でも直鎖状のアルキル基が更に好ましく、炭素数3〜8の直鎖状のアルキル基が特に好ましい。
また、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、へキシルオキシ基、オクチルオキシ基等の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基が好ましく、中でも直鎖状のアルコキシ基が更に好ましく、炭素数3〜8の直鎖
状のアルコキシ基が特に好ましい。
【0026】
より好ましくは、Rがアルキル基である。
Xが二価の連結基である場合、その構造は特に限定されないが、連結基Xが下記式で表される構造を含み且つ式中のアゾ基が構造式(I)の環Arに結合する場合を除く。
【0027】
【化5】

【0028】
Xが二価の連結基である場合、好ましくはフェニレン基又はシクロヘキサン−ジイル基のいずれかを含む。オーダーパラメーターを高くすることができる点から、好ましくはp−フェニレン基、またはtrans−1,4−シクロヘキサン−ジイル基である。フェニレン基とシクロヘキサン−ジイル基は、両方を含んでもよいし、それぞれを2以上含んでもよく、また結合順も任意である。このとき、Xはフェニレン基及び/又はシクロヘキサン−ジイル基のみからなってもよいし、更に別の二価の基を含んでもよい。但し、当該別の二価の基は、環状構造及び/又はアゾ結合を含まないものとする。
【0029】
環状構造及びアゾ結合を含まない二価の基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基;ビニレン基、プロペニレン基、イソプロペニレン基、ブテニレン基、イソブテニレン基、sec−ブテニレン基、tert−ブテニレン基、ヘキセニレン基、オクテニレン基等の炭素数2〜10の直鎖状又は分岐状のアルケニレン基;エチニレン基、プロピニレン基、イソプロピニレン基、ブチニレン基、イソブチニレン基、sec−ブチニレン基、tert−ブチニレン基、ヘキシニレン基、オクチニレン基等の炭素数2〜10の直鎖状又は分岐状のアルキニレン基;オキシカルボニル基、メチレンオキシカルボニル基、エチレンオキシカルボニル基、プロピレンオキシカルボニル基、イソプロピレンオキシカルボニル基、tert−ブチレンオキシカルボニル基等のアルキレン基で置換されていてもよいオキシカルボニル基;カルボニルオキシ基、メチレンカルボニルオキシ基、フェニレンカルボニルオキシ基等のアルキレン基又はアリーレン基で置換されていてもよいカルボニルオキシ基、アルキレンオキシ基、アルキレンカルボニル基が挙げられる。このアルキレン基とは炭素数1〜20、好ましくは1〜10のアルキレン基である。
【0030】
なかでも、連結に関与する結合原子数が2のものが好ましく、例えば、エチレン基、ビニレン基、エチニレン基、オキシカルボニル基、カルボニルオキシ基、メチレンオキシ基、又はオキシメチレン基が好ましい。特に好ましくはオキシカルボニル基であり、この場合、オキシカルボニル基のカルボニル基が構造式(I)の環Arに直接結合していることが好ましい。
【0031】
本構造とすることにより、本発明の二色性色素は高いオーダーパラメーターが得られる利点がある。
として好ましくは、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の炭素数3〜10、好ましくは炭素数3〜8の直鎖アルキル基;
4−プロピルシクロヘキシル基、4−ブチルシクロヘキシル基、4−ペンチルシクロヘキシル基、4−ヘキシルシクロヘキシル基、4−ヘプチルシクロヘキシル基等の炭素数9〜16、好ましくは炭素数9〜14の4−アルキルシクロヘキシル基;
4−プロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−ペンチルフェニル基、4−ヘキシ
ルフェニル基等の炭素数9〜16、好ましくは炭素数9〜14の4−アルキルフェニル基;
4−(4−プロピルシクロヘキシル)フェニル基、4−(4−ブチルシクロヘキシル)フェニル基、4−(4−ペンチルシクロヘキシル)フェニル基、4−(4−ヘキシルシクロヘキシル)フェニル基、4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)フェニル基等の炭素数15〜22、好ましくは炭素数15〜20の4−(4−アルキルシクロヘキシル)フェニル基;
4−プロピルオキシシクロヘキシル基、4−ブチルオキシシクロヘキシル基、4−ペンチルオキシシクロヘキシル基、4−ヘキシルオキシシクロヘキシル基、4−ペプチルオキシシクロヘキシル基等の炭素数9〜16、好ましくは炭素数9〜14の4−アルコキシシクロヘキシル基;
4−プロピルオキシフェニル基、4−ブチルオキシフェニル基、4−ペンチルオキシフェニル基、4−ヘキシルオキシフェニル基、4−ヘプチルオキシフェニル基等の炭素数9〜16、好ましくは炭素数9〜14の4−アルコキシフェニル基;
4−(4−プロピルオキシシクロヘキシル)フェニル基、4−(4−ブチルオキシシクロヘキシル)フェニル基、4−(4−ペンチルオキシシクロヘキシル)フェニル基、4−(4−ヘキシルオキシシクロヘキシル)フェニル基、4−(4−ヘプチルオキシシクロヘキシル)フェニル基等の炭素数15〜22、好ましくは炭素数15〜20の4−(4−アルコキシシクロヘキシル)フェニル基;
4−プロピルシクロヘキシルオキシカルボニル基、4−ブチルシクロヘキシルオキシカルボニル基、4−ペンチルシクロヘキシルオキシカルボニル基、4−ヘキシルシクロヘキシルオキシカルボニル基、4−ヘプチルシクロヘキシルオキシカルボニル基等の炭素数10〜17、好ましくは炭素数10〜15の4−アルキルシクロヘキシルオキシカルボニル基;
4−(4−プロピルシクロヘキシル)フェニルオキシカルボニル基、4−(4−ブチルシクロヘキシル)フェニルオキシカルボニル基、4−(4−ペンチルシクロヘキシル)フェニルオキシカルボニル基、4−(4−ヘキシルシクロヘキシル)フェニルオキシカルボニル基、4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)フェニルオキシカルボニル基等の炭素数16〜23、好ましくは炭素数16〜21の4−(4−アルキルシクロヘキシル)フェニルオキシカルボニル基;
4−プロピルシクロヘキシルオキシメチル基、4−ブチルシクロヘキシルオキシメチル基、4−ペンチルシクロヘキシルオキシメチル基、4−ヘキシルシクロヘキシルオキシメチル基、4−ヘプチルシクロヘキシルオキシメチル基等の炭素数10〜17、好ましくは炭素数10〜15の4−アルキルシクロヘキシルオキシメチル基;
4−プロピルシクロヘキシルカルボニルオキシ基、4−ブチルシクロヘキシルカルボニルオキシ基、4−ペンチルシクロヘキシルカルボニルオキシ基、4−ヘキシルシクロヘキシルカルボニルオキシ基、4−ヘプチルシクロヘキシルカルボニルオキシ基等の炭素数10〜17、好ましくは炭素数10〜15の4−アルキルシクロヘキシルカルボニルオキシ基;
プロピルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基等の炭素数4〜11、好ましくは炭素数4〜9のアルコキシカルボニル基;
4−プロピルシクロヘキシルメチルオキシ基、4−ブチルシクロヘキシルメチルオキシ基、4−ペンチルシクロヘキシルメチルオキシ基、4−ヘキシルシクロヘキシルメチルオキシ基、4−ヘプチルシクロヘキシルメチルオキシ基等の炭素数9〜16、好ましくは炭素数9〜14の4−アルキルシクロヘキシルメチルオキシ基等が挙げられる。
【0032】
4.R及びRについて
及びRは各々独立して一価の置換基を示す(水素原子ではない)。R及びRは本発明の性能を損なわない限りいかなる基でも良いが、具体的には、メチル基、エチル
基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基などの炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。好ましくは炭素数1〜10であり、より好ましくは炭素数1〜6である。なかでも炭素数1〜6の直鎖状アルキル基が特に好ましい。
【0033】
5.R及びRについて
及びRは、各々独立して水素原子又は一価の置換基を示す。R、Rとして好ましくは水素原子、又は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等の炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基が挙げられる。より好ましくは炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜8の直鎖状のアルキル基である。
【0034】
また、RとRは連結して環状構造を形成してもよい。RとRが環状構造を形成する場合、環状構造としては、例えば、置換基を有してもよい4−アルキルシクロへキシル基、4−アルコキシシクロへキシル基が挙げられる。4−アルキルシクロへキシル基が有するアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜8の直鎖状のアルキル基が更に好ましい。4−アルコキシシクロへキシル基が有するアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、へキシル基、オクチル基等の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基が好ましく、直鎖状のアルコキシ基がより好ましく、炭素数3〜8の直鎖状のアルコキシ基が更に好ましい。
【0035】
6.分子量
本発明の二色性色素は、ホスト液晶への溶解性及び応答速度の点から、分子量は通常3000以下であり、好ましくは1500以下である。また、分子量は450以上が好ましく、550以上がより好ましい。
7.好ましい例
本発明の二色性色素の好ましい一例は、構造式(I)中、少なくとも一つの環Arがチエノチアゾール環であり、nは2又は3である構造である。より好ましくは下記構造式(II)で表されるアゾ系二色性色素である。
【0036】
【化6】

【0037】
式中、R、R、及びRはそれぞれ独立して一価の置換基を示し、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又は一価の置換基を示す。
また、本発明の二色性色素の好ましい他の例は、下記構造式(III)で表されるアゾ系
二色性色素である。
【0038】
【化7】

【0039】
式中、R、R、及びRはそれぞれ独立して一価の置換基を示し、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又は一価の置換基を示す。環Arは置換基を有してもよい1,4−フェニレン環又は置換基を有してもよい1,4−ナフチレン環を示す。環Arは置換基を有してもよい1,4−フェニレン環又は置換基を有してもよい1,4−ナフチレン環を示し、少なくとも1つの環Arは置換基を有してもよい1,4−ナフチレン環を含む。nは2〜4の整数を示す。
【0040】
より好ましくは、構造式(III)において、環Arが1,4−フェニレン環であり、
nが3である。
上記の例の化合物はいずれも、吸収極大波長の長波長化、高オーダーパラメーター、及びホスト液晶への高溶解性の点で好ましい。
以下に、本発明に係わる二色性色素の具体例を例示するが、本発明はその要旨を超えない限りこれらに限定されるものではない。
【0041】
【化8】

【0042】
8.二色性色素の製造方法
本発明の二色性色素は、下記式に示す、中間体(IV)と中間体(V)とのアゾカップリ
ング反応により得ることができる。中間体(IV)は公知の方法により合成でき、例えば特開平10−60446に記載の方法に準じて合成できる。中間体(V)は公知の方法によ
り合成でき、例えば本願実施例に記載の方法で合成できる。
【0043】
【化9】

【0044】
[液晶組成物]
本発明の二色性色素の1種又は2種以上を、各種のホスト液晶化合物、又はそれらの化合物を含有するホスト液晶組成物に公知の方法で混合することにより、液晶組成物を調製することができる。具体的には、日本学術振興会第142委員会編「液晶デバイスハンドブック」(日刊工業新聞社、1989年発行)の第154〜192頁及び第715〜722頁記載のネマチック或いはスメクチック相を示すビフェニル系、フェニルシクロヘキサン系、フェニルピリミジン系、シクロヘキシルシクロヘキサン系等の各種のホスト液晶化合物、又はそれらの化合物を含有するホスト液晶組成物などが挙げられる。
【0045】
本発明に適用しうる液晶化合物は、特に限定されないが、例えば特開平3−14892号公報などに記載の化合物が挙げられる。好ましいホスト液晶の種類は駆動方式により異なるが、例えば駆動方式がアクティブマトリックス型である場合はフッ素系液晶が好ましい。
ホスト液晶化合物としては、例えば、下記構造式(VIII)〜(XII)で表されるNp型液晶化合物やNn型液晶化合物が挙げられる。
【0046】
【化10】

【0047】
〔式(VIII)〜(XII)中、環Bは、シクロヘキサン環、ベンゼン環、ジオキサン環、又
はピリミジン環を示し、qは1〜3の整数を示す。Zは、単結合、−CO−O−、−CHCH−、−CH=CH−、又は−C≡C−を示す。Y及びYは各々独立して、水素原子、又はフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を示し、Yはフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を置換基として有する炭素数1〜7のアルキル基、同じくアルケニル基、同じくアルコキシ基、これらの置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルコキシ基を置換基として有するシクロヘキシル基、又はこれらの置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルコキシ基を置換基として有するフェニル基を示す。Y及びYは各々独立して、シアノ基、又はフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を示す。Y11及びY13はシアノ基を示す。Y、Y、Y、Y、Y10、Y12、及びY14は各々独立して、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、又は炭素数2〜10のアルコキシアルキル基を示す。〕
尚、本発明の液晶組成物としては、本発明の前記二色性色素以外の二色性色素、及び、コレステリルノナノエート等の、液晶相を示しても示さなくてもよい光学活性物質や、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤を含有してもよい。
【0048】
液晶組成物における本発明の二色性色素の含有割合は、特に限定されるものではないが、2種以上を含有する場合はその合計として、通常0.05重量%以上であり、好ましくは0.1重量%以上である。一方、通常15重量%以下であり、好ましくは5重量%以下である。
本発明の二色性色素又はこれを含有する液晶組成物は、クロロホルム中での吸収極大波長が、好ましくは630nm以上、より好ましくは650nm以上、さらに好ましくは680nm以上、最も好ましくは690nm以上であり、長波長領域に吸収極大波長を有する。
【0049】
尚、本発明の二色性色素のクロロホルム中での吸収極大波長は、二色性色素を1mgを秤量し、クロロホルムに溶解して1mg/100mlとなるよう調製後、光路長1cmの石英セルに溶液を入れ、クロロホルムをリファレンスとして分光光度計U4100(日立ハイテクノロジーズ社製)を用い、380nm〜780nmの吸光度を測定することにより求めることができる。
【0050】
また、本発明の二色性色素又はこれを含有する液晶組成物は、好ましくは0.78以上、さらに好ましくは0.80以上、最も好ましくは0.81以上の高いオーダーパラメーター(S値)を有する。
尚、色素のオーダーパラメーター(S値)は、分光学的な測定に基づき、前述の日本学術振興会第142委員会編「液晶デバイスハンドブック」に記載の次式から求めることができる。
【0051】
S=(A//−A⊥)/(2A⊥+A//)
ここで、「A//」及び「A⊥」は、それぞれ、液晶の配向方向に対して平行及び垂直に偏光した光に対する色素の吸光度であり、S値は、理論上は0〜1の範囲の値をとり、その値が1に近づく程、ゲストホスト型液晶素子としてのコントラストが向上することとなる。
【0052】
[液晶素子]
本発明の二色性色素を含有する液晶組成物を含む液晶層を、少なくとも一方が透明な2枚の電極付基板間に挟持することにより、液晶素子とすることができる。液晶素子としては種々の種類があり、本発明の二色性色素の適用範囲は特に限定されないが、例えば、松本正一、角田市良著「液晶の最新技術」(工業調査会、1983年発行)第34頁、J.L.Fergason,SID85Digest,68(1985)、日本学術振興会第
142委員会編「液晶デバイスハンドブック」(日刊工業新聞社、1989発行)第315〜329頁、等に記載されているHeilmeier型ゲストホスト、相転移型ゲストホスト等のゲストホスト効果を利用したものが挙げられる。
【0053】
本発明では、液晶素子のモードは種々のものが使用可能であるが、ネマチック液晶組成物中に光学活性物質を加えることにより得られる相転移モードでは、偏光板を用いなくてもコントラストが高く表示が明るいため、反射型液晶表示素子として特に好ましい。
本発明の液晶素子の一例として、図1及び図2にアクティブ駆動方式の相転移モードゲストホスト型液晶表示素子の略示的断面図を示す。図1は液晶表示素子の電圧印加状態を表し、図2は電圧無印加状態を表す。図中、1は入射光、3は透明ガラス板、4は透明電極、5は配向膜、6は液晶化合物分子、7は二色性色素分子、9は反射層、10は反射光を示す。
【0054】
電圧無印加時(図2)では、液晶化合物分子6はコレステリック相を示し、二色性色素分子7も液晶化合物分子6と共にコレステリック構造を示すので、入射光1は自然光であっても、偏光板を用いることなく二色性色素分子7に吸収される。電圧を印加すると(図1)、液晶化合物分子6と二色性色素分子7は電界方向に配列するため、光は透過し反射層9によって反射される。このように、液晶素子では、電界の有無によって、光の透過、吸収を制御することができる。
【0055】
本発明に係わる液晶化合物及び液晶素子は、無彩色であり長波長領域までコントラストの高い表示を実現しうる利点があり、コンピューター、時計、電卓用等の表示素子、電子光学シャッター、電子光学絞り、光通信光路切替スイッチ、光変調器等の種々の電子光学デバイスに好適に利用することができる。
【実施例】
【0056】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
〔二色性色素の合成〕
<中間体M04の合成>
【0057】
【化11】

【0058】
中間体M01(25.0g、158mmol)をトルエン(150ml)に希釈し、p−トルエンスルホン酸(1.36g、5mol%)、3−ヘプタノン(M02)(21.6g、1.2eq.)を添加し、Dean−Stark装置にて脱水しながら4時間加熱還流した。反応液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60N関東科学450ml、ヘキサン/酢酸エチル=10/1〜8/1)で精製して、中間体M03(31.2g、収率78%)を得た。
【0059】
60%水素化ナトリウム(1.73g、43.3mmol、2.2MR)をN,N−ジメチルホルムアミド(30ml)に希釈し、これにN,N−ジメチルホルムアミド(20ml)に希釈した中間体M03(5.0、19.7mmol)をゆっくり滴下した。次い
でヨウ化メチル(6.99g、49.3mmol、2.5MR)を滴下し、室温にて4時間攪拌した。その後、再度60%水素化ナトリウム(760mg、19.7mmol、1.0MR)及びヨウ化メチル(2.80g、19.7mmol、1.0MR)を添加し、さらに12時間攪拌した。反応液を冷水(50ml)にゆっくりと滴下してクエンチし、酢酸エチル(60ml)にて抽出後、さらに水(30ml)にて2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過して得られた有機層を濃縮後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(吸着法、シリカゲル60N関東科学200ml、ヘキサン/酢酸エチル=20/1〜15/1)で精製して、中間体M04(2.01g、収率36%)を得た。
【0060】
<中間体M07の合成>
【0061】
【化12】

【0062】
中間体M01(15.8g、100mmol)をトルエン(160ml)に希釈し、p−トルエンスルホン酸(0.86g、5mol%)、4−ペンチルシクロヘキサノン(M05)(20.2g、1.2eq.)を添加し、Dean−Stark装置にて脱水しながら8時間加熱還流した。反応液を室温に冷却し、水(100nm)にて洗浄し、得られた有機層を濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(吸着法、シリカゲル60N関東科学500ml、ヘキサン/酢酸エチル=10/1〜6/1)にて精製し、中間体M06(23.9g、収率77%)を得た。
【0063】
60%水素化ナトリウム(3.89g、97.3mmol、3MR)をN,N−ジメチルホルムアミド(30ml)に懸濁させ、これにN,N−ジメチルホルムアミド(20ml)に希釈した中間体M06(10.0g、32.4mmol)をゆっくり滴下した。次いでヨウ化メチル(10.0ml、162mmol)を滴下し、室温にて2日間攪拌した。その後、反応液を冷水(50ml)にゆっくりと滴下してクエンチし、酢酸エチル(100ml)にて抽出後、さらに水(40ml)にて2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過して得られた有機層を濃縮後、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(吸着法、シリカゲル60N関東科学500ml、ヘキサン/酢酸エチル=100/1〜100/3)で精製して、中間体M07(3.57g、収率33%)を得た。
【0064】
〔実施例1〕
<化合物1の合成>
【0065】
【化13】

【0066】
中間体M08は特開平10−060446に記載の手法で合成した。
得られた中間体M08(2.36g、3.5mmol)をN−メチルピロリドン:N,N−ジメチルホルムアミド=5:1(150ml)に希釈し、5℃以下に保持し、ここに35%塩酸(0.989g、9.45mmol)及び亜硝酸ナトリウム(253mg、3.6mmol)水溶液を順次滴下した。3.5時間攪拌後、この反応液を、5℃以下を保った中間体M04(989mg、3.5mmol)のメタノール(20ml)溶液に滴下し、室温に戻してさらに1時間攪拌した。これに酢酸ナトリウム(5g)の水溶液を添加して30分攪拌し、反応液をろ過して黒色の固体として化合物1の粗体16.95gを取得した。この粗体をカラムクロマトグラフィー(吸着法、シリカゲル60N関東科学350ml、ヘキサン/クロロホルム=3/2〜1/1)で精製し、さらにクロロホルム−へキサンにて再沈殿し、トルエンにて懸洗した。さらにこの結晶を酢酸エチルにて懸洗し、化合物1(30mg、LC純度96%)を得た。質量分析(MALDI−MS)により、化合物1の水素付加分子イオンを確認した。
【0067】
〔実施例2〕
<化合物2の合成>
【0068】
【化14】

【0069】
中間体M09は特開平1−146960に記載の手法で合成した。
得られた中間体M09(1.50g、4.74mmol)に酢酸/プロピオン酸=17/8(60ml)を加え寒剤冷却し、ここに亜硝酸ナトリウム(425mg、6.16mmol)の98%硫酸(7.1ml)溶液を滴下した。30分攪拌しジアゾ液を得た。別容器で中間体M04(1.33g、4.74mmol)及び酢酸ナトリウム(10.7g、24mmol)のTHF/メタノール=1/1(15ml)溶液を氷冷し、これにジアゾ液を滴下した。30分攪拌後、室温に昇温し、水(50ml)を添加し、析出した固体を吸引濾過した。得られたケーキをメタノール及び水でかけ洗浄して、得られた粉末をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(吸着法、シリカゲル60N関東科学100ml、n−へキサン/クロロホルム=1/2〜0/1)で精製し、得られた粉末をTHF(10ml)及び酢酸エチル(30ml)にて再沈殿精製し、ろ過して得られた個体を乾燥し、化合物2(170mg、収率5%)を得た。質量分析(MALDI−MS)により、化合物2の水素付加分子イオンを確認した。
【0070】
〔比較例1〕
<化合物3の合成>
【0071】
【化15】

【0072】
特開2000−23964に記載の手法に従い、化合物3を合成した。
〔比較例2〕
<化合物4の合成>
【0073】
【化16】

【0074】
特開2010−155924に記載の手法に従い、化合物4を合成した。
〔二色性色素のλmax及びオーダーパラメーター(S値)の評価〕
100mlのメスフラスコに、化合物1〜4をそれぞれ1mg精密天秤で秤量し、クロロホルムを注ぎ1mg/100mlとなるよう調製後、色素を完全に溶解させた。この溶液を光路長1cmの石英セルに入れ、クロロホルムをリファレンスとして、分光光度計U4100(日立ハイテクノロジーズ社製)を用い、380nm〜780nmの吸光度を測定した。それぞれの吸収極大波長の値をλmax(CHCl)として表1に示した。併せて参考例1、2として、二色性色素である化合物5及び化合物6のλmax(CHCl)を表1に示す。
【0075】
次に、化合物1を商品名MCL−2039(Merck社製品)として市販されているフッ素系液晶混合物に、化合物2を商品名MCL−2097(Merck社製品)として市販されているフッ素系液晶混合物に、それぞれ0.1重量%の濃度で溶解させ、ゲストホスト液晶組成物を調製した。これを、ポリイミド系樹脂を塗布、硬化、ラビング処理した透明電極付きガラス基板を対向させ、液晶が平行配向となるように構成したギャップ50μmのセルに封入した。このセルの、配向方向に平行な直線偏光に対する吸光度(A//)及び配向方向に垂直な偏光に対する吸光度(A⊥)を測定し、その吸収ピーク(λmax)におけるオーダーパラメーター(S値)を下記の式から求めた。
【0076】
S=(A//−A⊥)/(2A⊥+A//)
これらの結果を表1にS値及びλmax(液晶)として示した。
【0077】
【表1】

【0078】
* 化合物5の吸収極大波長λmax(CHCl)は特開昭62−555に記載のクロロホルム中での測定結果である。
** 化合物6の吸収極大波長λmax(CHCl)は特開平1−146960に記載のクロロホルム中での測定結果である。
表1から、本発明の構造式(I)で表されるアゾ系色素化合物1、2(実施例1、2)は、いずれもクロロホルム中での吸収極大波長が650nm以上であって、比較例1、2及び参考例1、2に比べて著しく長波長化が実現されていることがわかる。そして、化合物1、2を含む液晶組成物は吸収極大波長λmax(液晶)が650nm以上であり、かつ0.75以上という高いオーダーパラメーターを示しており、長波長化と高コントラストの両立を実現できることがわかる。
【0079】
従って本化合物1、2を用いて作製したゲストホスト方式の液晶組成物及び液晶素子は、無彩色であり長波長領域までコントラストの高い表示を実現できる。
以上の結果から、本発明に係わる構造式(I)で表されるアゾ系二色性色素化合物は長波長領域の吸収極大波長と高オーダーパラメーターを両立する化合物であり、また本化合物を用いた液晶組成物及びこれを含む液晶素子は、無彩色であり長波長領域までコントラストの高い表示を実現することが裏付けられた。
【符号の説明】
【0080】
1;入射光
3;透明ガラス基板
4;透明電極
5;配向膜
6;液晶化合物分子
7;二色性色素分子
9;反射層
10;反射光


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式(I)で表されることを特徴とするアゾ系二色性色素。
【化1】

(式中、R、R、及びRはそれぞれ独立して一価の置換基を示し、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又は一価の置換基を示す。環Arは置換基を有してもよいチエノチアゾール環、置換基を有してもよい1,4−フェニレン環、又は置換基を有してもよい1,4−ナフチレン環を示す。複数の環Arは同一であっても異なっていてもよい。但し、少なくとも一つの環Arが、置換基を有してもよい1,4−フェニレン環である場合、他の環Arの少なくとも一つは、置換基を有してもよい1,4−ナフチレン環である。nは2以上の整数を示す。)
【請求項2】
構造式(I)中、少なくとも一つの環Arがチエノチアゾール環であり、nは2又は3であることを特徴とする請求項1に記載のアゾ系二色性色素。
【請求項3】
下記構造式(II)で表されることを特徴とするアゾ系二色性色素。
【化2】

(式中、R、R、及びRはそれぞれ独立して一価の置換基を示し、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又は一価の置換基を示す。)
【請求項4】
下記構造式(III)で表されることを特徴とするアゾ系二色性色素。
【化3】

(式中、R、R、及びRはそれぞれ独立して一価の置換基を示し、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又は一価の置換基を示す。環Arは置換基を有してもよい1,4−フェニレン環又は置換基を有してもよい1,4−ナフチレン環を示す。環Arは置換基を有してもよい1,4−フェニレン環又は置換基を有してもよい1,4−ナフチレン環を示し、少なくとも1つの環Arは置換基を有してもよい1,4−ナフチレン環を含む。nは2〜4の整数を示す。)
【請求項5】
構造式(III)中、環Arが1,4−フェニレン環であり、nが3であることを特徴
とする請求項4に記載のアゾ系二色性色素。
【請求項6】
クロロホルム中での吸収極大波長(λmax)が630nm以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のアゾ系二色性色素。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の二色性色素及び液晶化合物を含有することを特徴とする液晶組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の液晶組成物を含む液晶層を有することを特徴とする液晶素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−153866(P2012−153866A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16940(P2011−16940)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】