説明

二色成形金型及び二色成形方法

【課題】 第1部位の光透過性樹脂の裏側に第2部位の光遮蔽性樹脂が存在しない状態で二色成形を行う。
【解決手段】 光遮蔽性樹脂の第2部位2を射出成形する際に、第1部位1で包囲される第2部位2aの離面と、第1部位1で包囲されない第2部位2bの離面との間だけに光遮蔽性樹脂を流通させ、第1部位1で包囲される第2部位2aが存在する成形品部材11を成形し、共通雄型から成形品部材11を離型する際に第2部位2の離面側に残る残余部3を分断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電子関連機器の各種入力用のキートップ部品を成形する二色成形金型及び二色成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子関連機器の各種入力用のキートップは、着色された樹脂や光透過性樹脂で文字や図形の部位が成形され、文字や図形の部位と異なる色の樹脂あるいは光遮蔽性樹脂でそれ以外の部分が成形されている。このようなキートップを成形する場合、共通雄型と第1雌型及び第2雌型を備えた二色成形金型が用いられている。
【0003】
例えば、文字として、A、B、D、4、6、8等を表すキートップとしては、文字の部位をファーストショットにより光透過性樹脂で成形し、文字以外の部位をセカンドショットにより光遮蔽性樹脂で成形しているものが知られている。また、図形で四角や三角等、図形形状に囲まれた部位を有するキートップも同様に、図形形状の部位をファーストショットにより光透過性樹脂で成形し、図形形状以外の部位をセカンドショットにより光遮蔽性樹脂で成形しているものが知られている。この場合、共通雄型と第1雌型を用いてファーストショットを実施し、共通金型に光透過性樹脂の成形品を残した状態で第2雌型を用いてセカンドショットを実施している(二色成形)。
【0004】
二色成形の場合、光透過性樹脂の文字や図形で囲まれる光遮蔽性樹脂の部位が存在することになるため、セカンドショットにおいて、文字や図形で囲まれていない光遮蔽性樹脂の部位と、文字や図形で囲まれる光遮蔽性樹脂の部位とを背面側(離面側)で連通し、文字や図形で囲まれる光遮蔽性樹脂の部位に樹脂を充填している。この場合、光遮蔽性樹脂の背面同士(離面同士)に亘りブリッジ通路を設けることで、文字や図形で囲まれる部位及び囲まれない部位に亘り光遮蔽性樹脂を供給するようにしている。
【0005】
このため、成形終了後に光透過性樹脂である文字や図形の離面側に光遮蔽性樹脂であるブリッジ通路の部位が残ることになり、成形品の裏側から光を当てて表示部分を明るくした場合には、文字や図形の部分(光透過性樹脂)にブリッジ通路の部位(光遮蔽性樹脂)が影となって現れ、見栄えが低下することになる。
【0006】
見栄えの低下を防止するため、ブリッジ通路の部位を分離する技術が従来から種々提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2等参照)。従来から提案されている技術では、文字や図形で囲まれる光遮蔽性樹脂の部位及び囲まれない光遮蔽性樹脂の部位の離面側の共通金型に背面流路を設け、離型時に背面流路の内部に光遮蔽性樹脂を残すようにしている。しかし、背面流路は文字や図形の部分(光透過性樹脂)の離面側にも存在するので、製品である光透過性樹脂の離面に不要な光遮蔽性樹脂が溶着する虞があった。
【0007】
また、見栄えの低下を防止するため、文字や図形の部分(光透過性樹脂)の離面側のブリッジ通路の部位を離型時に破断させることで、文字や図形の部分の離面側の光遮蔽性樹脂の連通を開放する技術が提案されている(特許文献3参照)。しかし、特許文献3に開示された技術では、文字や図形の部分の真後ろに光遮蔽性樹脂が存在しない状態にすることができるものの、文字や図形の部分の離面側の脇に光透過性樹脂が残されることになり、視認角度や周囲の明るさによっては文字や図形の部分に残された光遮蔽性樹脂が影となることがあり、見栄えの低下を完全に防止することはできない。
【特許文献1】特開平7−329111号公報
【特許文献2】特開平7−88884号公報
【特許文献3】特開平7−1506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、第1部位の樹脂の離面に第2部位の樹脂が溶着することがなく、第1部位の樹脂の裏側に第2部位の樹脂が存在しない状態で二色成形を行うことができる二色成形金型及び二色成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の二色成形金型は、共通雄型と第1雌型及び第2雌型を備え、前記共通雄型と前記第1雌型の間で第1樹脂の第1部位を射出成形し、前記共通雄型に前記第1部位を残した状態で前記第2雌型との間で第2樹脂の第2部位を射出成形し、前記第1部位で包囲される前記第2部位が存在する成形品部材を成型する二色成形金型において、前記共通金型には、前記第2雌型との間で前記第2樹脂の前記第2部位を射出成形する際に連通ブロックが配され、前記連通ブロックには、前記第1部位で包囲される前記第2部位の離面と、前記第1部位で包囲されない前記第2部位の離面とを連通する連通路が備えられ、前記第2部位を成形した際に前記連通路に残る前記第2樹脂の残余部は、前記共通金型から前記成形品部材を離型する際に前記第2部位の離面から分断されることを特徴とする。
【0010】
請求項1に係る本発明では、第1部位を残した状態で第2雌型との間で第2樹脂の第2部位を射出成形する際に、連通ブロックの連通路を介して第1部位で包囲される第2部位に第2樹脂を送り、共通雄型から成形品部材を離型する際に第2部位の離面から連通路に残る第2樹脂の残余部を分断する。連通路は第2部位の離面にのみ連通して第1部位の離面には第2樹脂の残余部は接触しないので、第1部位の第1樹脂の離面に第2部位の第2樹脂が溶着することがなく、第1部位の第1樹脂の裏側に第2部位の第2樹脂が存在しない状態で二色成形を行うことができる。
【0011】
そして、請求項2に係る本発明の二色成形金型は、請求項1に記載の二色成形金型において、前記連通ブロックは、型締め方向に沿った方向に対し前記共通雄型の表面から突出する方向に移動自在に備えられていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る本発明では、共通雄型から成形品部材を離型した後、連通ブロックを共通雄型の表面から突出させることで、第2樹脂の残余部を共通雄型の外部で取り除くことができる。
【0013】
また、請求項3に係る本発明の二色成形金型は、請求項2に記載の二色成形金型において、前記連通ブロックを前記共通雄型の表面から突出させた際に、前記連通路の前記残余部を前記共通雄型の表面から突出する方向に押し出す押し出し部材を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る本発明では、押し出し部材により第2樹脂の残余部を連通ブロックから押し出して取り除くことができる。
【0015】
また、請求項4に係る本発明の二色成形金型は、請求項3に記載の二色成形金型において、前記共通雄型には、前記成形品部材を押し出して離型させるスライド部材が備えられ、前記連通ブロックの前記連通路には、前記第2部位の離面との間で流路を狭めて前記残余部に薄肉部を形成する分断部が備えられ、前記スライド部材により前記成形品部材が押し出される際に、前記分断部の前記残余部の前記薄肉部が分断されることを特徴とする。
【0016】
請求項4に係る本発明では、連通部材の連通路に形成された分断部により第2部位の離面と残余部の間の第2樹脂の肉厚が薄くなり、スライド部材により成形品部材が押し出された際に、薄肉部で残余部が分断され、残余部を確実に分離することができる。
【0017】
また、請求項5に係る本発明の二色成形金型は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の二色成形金型において、前記第1部位とされる前記第1樹脂は、光透過性樹脂であり、前記第2部位とされる前記第2樹脂は、光遮蔽性樹脂であることを特徴とする。
【0018】
請求項5に係る本発明では、光透過性樹脂の離面に光遮蔽性樹脂が溶着することなく、しかも、光透過性樹脂の裏側に光遮蔽性樹脂が存在しない成形品部材を成形することができる。
【0019】
上記目的を達成するための請求項6に係る本発明の二色成形方法は、共通雄型を用いて、光透過性樹脂の第1部位を射出成形した後、第1部位を残した状態で光遮蔽性樹脂の第2部位を射出成形し、前記第1部位で包囲される前記第2部位が存在する成形品部材を成形する二色成形方法において、前記光遮蔽性樹脂の前記第2部位を射出成形する際に、前記第1部位で包囲される前記第2部位の離面と、前記第1部位で包囲されない前記第2部位の離面との間だけに前記光遮蔽性樹脂を流通させることで、前記第1部位で包囲される前記第2部位が存在する成形品部材を成形し、前記共通雄型から前記成形品部材を離型する際に前記第2部位の離面側に残る前記光遮蔽性樹脂を分断させることを特徴とする。
【0020】
請求項6に係る本発明では、第1部位の光透過性樹脂の離面に第2部位の光遮蔽性樹脂が溶着することがなく、第1部位の光透過性樹脂の裏側に第2部位の光遮蔽性樹脂が存在しない状態で、光透過性樹脂と光遮蔽性樹脂とからなる成形品部材の二色成形を行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の二色成形金型は、第1部位の樹脂の離面に第2部位の樹脂が溶着することがなく、第1部位の樹脂の裏側に第2部位の樹脂が存在しない状態で二色成形を行うことができる。
【0022】
また、本発明の二色成形方法は、第1部位の樹脂の離面に第2部位の樹脂が溶着することがなく、第1部位の樹脂の裏側に第2部位の樹脂が存在しない状態で二色成形を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施形態例の二色成形金型及び二色成形方法で成形される成形品部材は、例えば、電子関連機器の各種入力用のキートップ部品に適用される。成形品部材としては、電子関連機器の各種入力用のキートップ部品に限らず、自動車用の車室内のパネルスイッチ部品や家電製品の操作スイッチ部品等、様々な成形品部材に適用することができる。
【0024】
図1には本発明の一実施形態例に係る二色成形金型を用いて成形された成形品部材、図2には本発明の一実施形態例に係る二色成形金型のファーストショット時の断面、図3にはファーストショット後の断面、図4にはセカンドショット時の金型の断面、図5には光遮蔽性樹脂を充填した状態の断面、図6にはセカンドショット後の離型時の状態、図7には成形品部材を突き出した状態、図8には連通ブロックの説明、図9には連通路の詳細、図10には残余部の外観、図11には連通ブロックを突き出した状態、図12には残余部を取り除いた状態を示してある。
【0025】
図1に基づいて成形品部材を説明する。図1(a)には成形品部材の外観を表す斜視状況、図1(b)には成形品部材の断面状況(図1(a)中のB−B線断面)を示してある。
【0026】
図1(a)に示すように、成形品部材11は、三角形状の図形部分の第1部位1と、第1部位1の外側部分及び図形部分で包囲される部分(三角形状の内側)の第2部位2とで構成されている。第1部位1は第1樹脂としての光透過性樹脂からなり、第2部位2は第2樹脂としての光遮蔽性樹脂からなっている。第1部位1と第2部位2からなる成形品部材11は、共通雄型を用いて、光透過性樹脂の第1部位1を射出成形した後、第1部位1を共通雄型に残した状態で光遮蔽性樹脂の第2部位2を射出成形し、第1部位1で包囲される第2部位2が存在する成形品部材11が成形される。
【0027】
図1(b)に示すように、光遮蔽性樹脂の第2部位2を射出成形する際に、第1部位1で包囲される第2部位2aの離面と、第1部位1で包囲されない第2部位2bの離面との間だけに光遮蔽性樹脂を流通させることで、第1部位1で包囲される第2部位2aが存在する成形品部材11を成形し、共通雄型から成形品部材11を離型する際に第2部位2の離面側に残る光遮蔽性樹脂(残余部3)が分断される。
【0028】
詳細は後述するが、図1中の符号で、21は連通ブロックである。
【0029】
図2、図3に基づいてファーストショットにおける二色成形金型を説明する。
【0030】
図2に示すように、共通雄型5と第1雌型6の対向面に第1部位1を成形するための型部がそれぞれ設けられて第1空間12が形成される。型締めされた状態で、可動側の第1雌型6の第1注入路17から第1空間12に光透過性樹脂が充填される。図3に示すように、第1雌型6を離型移動させることで共通雄型5と第1雌型6を離型し、共通雄型5に第1部位1を残した状態にする。
【0031】
詳細は後述するが、図2、図3中の符号で、9はスライドバー、21は連通ブロック、22は連通路、24は溝部、25はプッシュバーである。
【0032】
図4、図5に基づいてセカンドショットにおける二色成形金型を説明する。尚、図2、図3に示した部材と同一部材には同一符号を付してある。
【0033】
図4に示すように、セカンドショットでは、第1雌型6(図2、図3参照)に代えて第2雌型7が用いられる。第2雌型7には共通雄型5に残された第1部位1に対向する面に第2部位を成形するための型部が備えられ、共通雄型5と第2雌型7の間で第2部位2を形成するための第2空間13が形成される。
【0034】
図5に示すように、型締めされた状態で、可動側の第2雌型7の第2注入路18から第2空間13に光遮蔽性樹脂が充填される。前述したように、第2部位2には第1部位1で包囲されない外側の第2部位2bと、第1部位1で包囲される内側の第2部位2aが存在する。このため、第2部位2bと第2部位2aの離面同士を連通する連通ブロック21が共通雄型5に設けられている。連通ブロック21は長尺状とされ、型締め方向に沿った方向に対して共通雄型5の表面から突出する方向に移動自在とされている。
【0035】
詳細は後述するが、連通ブロック21の先端には連通路22が形成され、連通路22は、第2部位2aの離面と第2部位2bの離面だけを連通する流路とされている。型締めされた状態で、第2雌型7の第2注入路18から第2空間13に光遮蔽性樹脂が充填されると、外側の第2部位2bに相当する部位から連通路22に光遮蔽性樹脂が充填され、更に、内側の第2部位2aに相当する部位に光遮蔽性樹脂が充填される。つまり、第2部位2aを包囲する第1部位1の離面には光遮蔽性樹脂が流通する流路が存在せず、第1部位1の離面には光遮蔽性樹脂が接触しないようになっている。
【0036】
図6、図7に基づいて連通ブロック21を説明する。図6(a)には連通ブロック21の正面視、図6(b)には連通ブロック21の側面視、図7(a)には連通路22の正面視、図7(b)には連通路22の側面視、図7(c)には連通路22の部位を表す連通ブロック21の端面状況を示してある。
【0037】
図6に示すように、連通ブロック21は長尺の矩形棒状とされ、軸方向に沿って共通雄型5(図5参照)に移動自在に支持されている。連通ブロック21には軸方向に溝部24が形成され、連通ブロック21の先端(図中右端側)の溝部の底面には連通路22が形成されている。連通ブロック21の先端の端面は共通雄型5(図5参照)の型面の一部とされる。連通路22の後側(図中左側)の溝部24には押し出し部材としての矩形長尺状のプッシュバー25が往復移動自在に支持されている。
【0038】
図7に示すように、連通ブロック21の連通路22には、連通ブロック21の先端の端面の二箇所、即ち、第2部位2b(図5参照)と第2部位2a(図5参照)の離面に繋がる分路22aと、分路22aの後側で分路22a同士を繋ぐ後流路22bとで構成されている。分路22aの先端側には流路が狭められた分断部26が形成され、分断部26の部位の樹脂が薄肉部とされる。
【0039】
連通ブロック21の先端の端面は、分路22aが開口しない部位の壁面21aが存在し、壁面21aが共通雄型5(図5参照)の型面とされて第1部位1(図5参照)の離面に当接する。このため、第1部位1(光透過性樹脂:図5参照)の離面に第2部位2(図5参照)を形成する光遮蔽性樹脂が接触することがない。
【0040】
従って、共通雄型5(図4参照)と第2雌型7(図4参照)が型締めされた状態で、第2雌型7(図4参照)の第2注入路18(図4参照)から第2空間13(図4参照)に光遮蔽性樹脂が充填されると、外側の第2部位2bに相当する分路22aから後流路22bに光遮蔽性樹脂が充填される。更に、後流路22bから内側の第2部位2aに相当する分路22aに光遮蔽性樹脂が充填され、外側の第2部位2b、連通路22及び内側の第2部位2aに光遮蔽性樹脂が充填される。第2部位2と分路22aの境界部位の光遮蔽性樹脂は、分断部26により薄肉部とされる。
【0041】
図2〜図5に示すように、共通雄型5にはスライド部材としてのスライドバー9が軸方向に移動自在に備えられている。成形が完了した後、スライドバー9を共通雄型5の型面から突出させることにより成形品部材11が押し出されて離型するようになっている。
【0042】
図4、図5に示したセカンドショットが終了した後、図8に示すように、第2雌型7が離され、共通雄型5の型面に、光透過性樹脂からなる第1部位1と、光遮蔽性樹脂からなる第2部位2とが一体とされた成形品部材11(図1参照)が残される。この時、連通ブロック21の連通路22に存在する光遮蔽性樹脂(残余部3)は第2部位2の離面側に一体状態で残されている。
【0043】
第2部位2の離面側に残された残余部3は、図10に示すように、分路22a(図7参照)に対応する部位3aと後流路22b(図7参照)に対応する部位3bとが一体にされた形状の光遮蔽性樹脂となる。詳細は後述するが、残余部3は、成形品部材11を離型させた後に連通ブロック21から取り除かれる。
【0044】
図9に示すように、スライドバー9を共通雄型5の型面から突出させることで、共通雄型5の型面に残された成形品部材11が押し出されて離型する。第2部位2と連通路22(分路22a)の境界部位の光遮蔽性樹脂は、分断部26により薄肉部とされているので、スライドバー9により成形品部材11が押し出されると、第2部位2と連通路22の境界部位が薄肉部で分断され、連通路22に存在する光遮蔽性樹脂(残余部3)が成形品部材11から分離される。
【0045】
分断部26により第2部位2の離面と残余部3の間の光遮蔽性樹脂の肉厚が薄くなり、スライドバー9により成形品部材11が押し出された際に、薄肉部で残余部3が分断され、残余部3を確実に分離することができる。このため、押し出された成形品部材11は、第1部位1の裏側に光遮蔽性樹脂からなる残余部3が存在しない製品となる。
【0046】
成形品部材11を離型させた後、図11に示すように、連通ブロック21を共通雄型5の型面から突出させ、連通路22の部位(残余部3の部位)を共通雄型5の型面から突出させる。図12に示すように、連通ブロック21に対してプッシュバー25を突出方向に移動させ、連通路22の部位の残余部3を連通ブロック21(連通路22)から分離させる。
【0047】
残余部3は、図10に示すように、分路22a(図7参照)に対応する部位3aと後流路22b(図7参照)に対応する部位3bとが一体にされ、分路22a(図7参照)の方向に押されることになる。残余部3がプッシュバー25で押されると、2つの分路22a(図7参照)の間に存在する壁部に後流路22b(図7参照)に対応する部位3bが当接することになるが、残余部3は弾性変形により分路22a(図7参照)から離れる方向に変形して連通ブロック21から分離して排出される。
【0048】
詳細な構造は省略してあるが、共通雄型5におけるスライドバー9の移動、連通ブロック21の突出移動、プッシュバー25の突出移動は、1回の移動工程で順番に実施できるように型がブロック分割されている。ブロック分割された型ブロックを一つの駆動手段により一方向に移動させることで、スライドバー9の移動、連通ブロック21の突出移動、プッシュバー25の突出移動が順次実施されて上述した動作が実行され、残余部3を分離しての成形品部材11の排出及び残余部3の排出が行なわれる。
【0049】
上述した二色成形金型は、第1部位1で包囲される第2部位2の離面と、第1部位1で包囲されない第2部位2の離面との間だけに連通ブロック21の連通路22を介して光遮蔽性樹脂が送られ、連通ブロック21の第1部位1に対応する部位は共通雄型5の型面とされている。
【0050】
このため、二色成形金型を用いて成形を行なうことにより、連通路22は第2部位2の離面にのみ連通して第1部位1の離面(製品面の裏側)には第2部位2の残余部3は接触しない。従って、第1部位1の光透過性樹脂の離面に第2部位2の光遮蔽性樹脂が溶着することがなく、共通雄型5から成形品部材11を離型する際に第2部位2の離面から連通路22に残る光遮蔽性樹脂が分断され、第1部位1の光透過性樹脂の裏側に第2部位2の光遮蔽性樹脂が存在しない状態で二色成形が行われる。
【0051】
また、連通ブロック21は、型締め方向に沿った方向に対し共通雄型5の表面から突出する方向に移動自在に備えられているので、共通雄型5から成形品部材11を離型した後、連通ブロック21を共通雄型5の表面から突出させることで、光遮蔽性樹脂の残余部3を共通雄型5の外部で取り除くことができる。
【0052】
また、連通ブロック21を共通雄型5の型面から突出させた際に、連通路22の残余部3を共通雄型5の型面から突出する方向に押し出すプッシュバー25を備えたので、プッシュバー25により光遮蔽性樹脂の残余部3を連通ブロック21から押し出して取り除くことができる。
【0053】
また、連通ブロック21の連通路22には、第2部位2の離面との間で流路を狭めて残余部3に薄肉部を形成する分断部26が備えられ、スライドバー9により成形品部材11が押し出される際に、分断部26の残余部3の薄肉部が分断されるので、成形品部材11が押し出された際に、薄肉部で残余部3が分断され、残余部3を確実に分離することができる。
【0054】
尚、上述した実施形態例では、第1部位として光透過性樹脂を適用し、第2部位として光遮蔽性樹脂を適用した成形品部材11を例に挙げて説明したが、第1部位の離面側で第2部位の樹脂を流通させて成形する成形品部材であれば、第1部位と第2部位として、色の異なる樹脂や材質の異なる樹脂を用いた成形品部材に適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、二色成形金型及び二色成形方法の産業分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態例に係る二色成形金型を用いて成形された成形品部材の図である。
【図2】本発明の一実施形態例に係る二色成形金型のファーストショット時の断面図である。
【図3】ファーストショット後の断面図である。
【図4】セカンドショット時の金型の断面図である。
【図5】光遮蔽性樹脂を充填した状態の断面図である。
【図6】セカンドショット後の離型時の状態の図である。
【図7】成形品部材を突き出した状態の図である。
【図8】連通ブロックの説明図である。
【図9】連通路の詳細図である。
【図10】残余部の外観図である。
【図11】連通ブロックを突き出した状態の図である。
【図12】残余部を取り除いた状態の図である。
【符号の説明】
【0057】
1 第1部位
2 第2部位
3 残余部
5 共通雄型
6 第1雌型
7 第2雌型
9 スライドバー
11 成形品部材
12 第1空間
13 第2空間
17 第1注入路
18 第2注入路
21 連通ブロック
22 連通路
24 溝部
25 プッシュバー
26 分断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通雄型と第1雌型及び第2雌型を備え、前記共通雄型と前記第1雌型の間で第1樹脂の第1部位を射出成形し、前記共通雄型に前記第1部位を残した状態で前記第2雌型との間で第2樹脂の第2部位を射出成形し、前記第1部位で包囲される前記第2部位が存在する成形品部材を成型する二色成形金型において、
前記共通金型には、
前記第2雌型との間で前記第2樹脂の前記第2部位を射出成形する際に連通ブロックが配され、
前記連通ブロックには、
前記第1部位で包囲される前記第2部位の離面と、前記第1部位で包囲されない前記第2部位の離面とを連通する連通路が備えられ、
前記第2部位を成形した際に前記連通路に残る前記第2樹脂の残余部は、前記共通金型から前記成形品部材を離型する際に前記第2部位の離面から分断される
ことを特徴とする二色成形金型。
【請求項2】
請求項1に記載の二色成形金型において、
前記連通ブロックは、型締め方向に沿った方向に対し前記共通雄型の表面から突出する方向に移動自在に備えられている
ことを特徴とする二色成形金型。
【請求項3】
請求項2に記載の二色成形金型において、
前記連通ブロックを前記共通雄型の表面から突出させた際に、前記連通路の前記残余部を前記共通雄型の表面から突出する方向に押し出す押し出し部材を備えた
ことを特徴とする二色成形金型。
【請求項4】
請求項3に記載の二色成形金型において、
前記共通雄型には、前記成形品部材を押し出して離型させるスライド部材が備えられ、
前記連通ブロックの前記連通路には、前記第2部位の離面との間で流路を狭めて前記残余部に薄肉部を形成する分断部が備えられ、
前記スライド部材により前記成形品部材が押し出される際に、前記分断部の前記残余部の前記薄肉部が分断される
ことを特徴とする二色成形金型。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の二色成形金型において、
前記第1部位とされる前記第1樹脂は、光透過性樹脂であり、
前記第2部位とされる前記第2樹脂は、光遮蔽性樹脂である
ことを特徴とする二色成形金型。
【請求項6】
共通雄型を用いて、光透過性樹脂の第1部位を射出成形した後、第1部位を残した状態で光遮蔽性樹脂の第2部位を射出成形し、前記第1部位で包囲される前記第2部位が存在する成形品部材を成形する二色成形方法において、
前記光遮蔽性樹脂の前記第2部位を射出成形する際に、前記第1部位で包囲される前記第2部位の離面と、前記第1部位で包囲されない前記第2部位の離面との間だけに前記光遮蔽性樹脂を流通させることで、前記第1部位で包囲される前記第2部位が存在する成形品部材を成形し、前記共通雄型から前記成形品部材を離型する際に前記第2部位の離面側に残る前記光遮蔽性樹脂を分断させる
ことを特徴とする二色成形方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−298005(P2009−298005A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−154644(P2008−154644)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(592190866)株式会社江東彫刻 (8)
【Fターム(参考)】