説明

二軸延伸フィルムの製造方法

【課題】 延伸性および製造安定性に優れ、フィルム製造工程などで生じるフィルム端材を有効利用した二軸延伸フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】 少なくとも1種の結晶性熱可塑性ポリエステルを主成分とし、当該ポリエステルの重量を基準として500ppm以上の少なくとも1種の粒子を含有する二軸延伸フィルムの製造方法であって、重縮合工程によって分子量が増加させられた上記ポリエステルの再生原料をフィルムの重量に対して20重量%以上使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二軸延伸フィルムの製造方法に関し、詳しくは、延伸性および製造安定性に優れ、フィルム製造工程などで生じるフィルム端材を有効利用した二軸延伸フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル等の結晶性熱可塑性樹脂を主成分とする二軸延伸フィルムは公知である。これらの二軸延伸フィルムの製造において、通常、フィルム製造工程などで生じるフィルム端材を再生原料として種々の割合で使用する。例えば、フィルムの厚さが4μm未満の場合や、300μmを超える場合は、製造安定性に欠けるために、上記の再生原料の添加には限度がある。フィルムの厚さが5〜300μmの場合、上記の再生原料の添加量は、使用する樹脂の総量に対して、通常20〜40%である。
【0003】
フィルムの厚さが薄い場合および厚い場合は、上記の再生原料の添加量の割合が低いため、フィルム端材が余剰となり、原料に対するフィルムの生産量が低くなり、フィルムの製造がコスト高となる。
【0004】
溶融重縮合法により、使用済ポリエステルの分子量を増加させ、種々の分子量および構成を有するポリエステルに再生する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、二軸延伸フィルムのような特定化された高次構造を有するフィルムの製造において、この方法を適用することは困難であると言われている。
【0005】
また、回収ボトルを再生原料として使用する方法も知られている(例えば特許文献2参照)。このような回収ボトルからの再生原料を使用する場合、原料の由来が不明なために医薬などへの応用は出来ず、白色フィルム等への応用に限られる。さらに、このような回収ボトルからの再生原料を使用する場合、国によっては、食品や飲料に対して使用するフィルムとして適応できない。さらに、PETボトルなどの再生原料やチップは、通常、フィルムの機械的特性を低下させるイソフタル酸などの添加剤を含有している。したがって、このような再生原料の使用は、通常50重量%が限界である。
【0006】
【特許文献1】欧州特許第0483665号明細書
【特許文献2】欧州特許第1418195号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の実情に鑑みなされたものであり、その目的は、製造工程などで生じるフィルム端材のような、そのフィルム自身の再生原料(内的再生原料)を高比率で含有し、それによりフィルムの諸物性が劣化しない二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法を提供することである。そして、上記の製造方法は、更に以下の特徴を有する。
【0008】
上記の製造方法で得られるポリエステルフィルムは機械的特性に優れる。得られるポリエステルフィルムの弾性率は、長手方向が通常3000N/mmを超え、横方向が通常4200N/mmを超える。引張破断強度は、長手方向が通常90N/mmを超え、横方向が通常120N/mmを超える。
【0009】
上記の製造方法は延伸性および製造安定性に優れるため、フィルムの破断無く長手方向および横方向に対し優れた延伸を行うことが出来る。さらに、得られた二軸延伸フィルムは、巻取り特性および後加工性に優れる。また、得られた二軸延伸フィルムは、リサイクル性に優れ、再生原料として使用してもフィルムの機械的特性および光学的特性を低下させない。ここで、光学的特性に優れるとは、長手方向および横方向に対して均一であり、表面に縞が認められないことを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、ポリエステルの再生原料を使用する際、重縮合工程によって分子量が増加させられたポリエステルの再生原料を特定量使用し、さらに粒子を特定量配合させることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0011】
すなわち、本発明の第1の要旨は、少なくとも1種の結晶性熱可塑性ポリエステルを主成分とし、当該ポリエステルの重量を基準として500ppm以上の少なくとも1種の粒子を含有する二軸延伸フィルムの製造方法であって、重縮合工程によって分子量が増加させられた上記ポリエステルの再生原料をフィルムの重量に対して20重量%以上使用することを特徴とする二軸延伸フィルムの製造方法に存する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の二軸延伸フィルムの製造方法は、製造工程などで生じるフィルム端材のような、そのフィルム自身の再生原料(内的再生原料)を高比率で含有させることが出来、それによりフィルムの諸物性が劣化しない。そのため、フィルム製造工程などで生じるフィルム端材を有効利用でき、低コストで機械的特性および光学的特性に優れたフィルムを安定して製造することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の二軸延伸フィルムの製造方法によって製造されるフィルムは、少なくとも1種の結晶性熱可塑性ポリエステルを主成分とし、当該ポリエステルの重量を基準として500ppm以上の粒子を含有する。上記二軸延伸フィルムは、ベース層Bのみから成る単層であっても、多層であってもよい。多層構造の場合、ベース層Bと外層Aから成るABA構造や、ベース層Bと外層A及びCとから成るABC構造の3層構造であることが好ましい。
【0014】
結晶性熱可塑性ポリエステルとしては、結晶性または半結晶性で熱可塑性のホモポリエステル、共重合ポリエステル、それらの混合物、ポリエステル再生原料、それらの変性品などが例示され、特に限定されない。好ましい例示として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)が挙げられる。
【0015】
上記ポリエステルは、ポリエステルの重量を基準として500ppm以上、好ましくは500ppm〜25重量%の粒子を含有する。粒子としては、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、カオリン、二酸化ケイ素、無機有彩色顔料および無機黒色顔料が例示され、好ましくは二酸化チタン(アナターゼ型またはルチル型)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム及び二酸化ケイ素である。粒子は2種以上組合せて使用してもよく、その場合、同じ種類で且つ粒径が異なる粒子の混合物を使用してもよい。
【0016】
本発明の製造方法によって製造されるフィルムは、種々の添加剤を1種または2種以上組合せて配合することが出来る。添加剤としては、紫外線安定剤、着色料、難燃剤、シール性付与剤、耐加水分解剤、酸化防止剤などが挙げられる。シール性付与については、フィルムの片面または両面にシール層を塗布または積層形成してもよい。また、フィルムの表面を化学的処理および/または火炎処理を行ってもよい。さらに、フィルムに、光沢剤、青色染料または赤色染料などの色調調節剤、赤外線吸収剤、滑剤、有彩色有機染料、ヒートシールなどの熱成型可能な共重合ポリエステルなどを1種以上含有させてもよい。また、フィルムの片面または両面に種々のコポリマー(共重合ポリエステル)、接着促進剤、シリコン又はシラン等による塗布層を形成してもよい。
【0017】
本発明の製造方法によって製造されるフィルムは、上述の様に、ベース層Bのみから成る単層であっても、多層であってもよい。多層構造の場合、対称構造であっても非対称構造であってもよいが、ベース層Bと外層Aから成るABA構造や、ベース層Bと外層A及びCとから成るABC構造の3層構造であることが好ましい。多層構造の場合、共押出法によって、添加剤の種類や使用量が異なったり、ポリエステルの種類、分子量、粘度などの異なる種々のポリエステル層を積層することが出来る。単層フィルム及び多層フィルムのベース層Bは、純原料、製造工程において生じるフィルム端剤などの再生原料および重縮合工程によって分子量が増加させられたポリエステルの再生原料の混合物から成るか、又は、純原料および重縮合工程によって分子量が増加させられたポリエステルの再生原料の混合物から成るか、或いは、製造工程において生じるフィルム端剤などの再生原料および重縮合工程によって分子量が増加させられたポリエステルの再生原料の混合物から成ることが好ましい。多層構造を有する外層は、ポリエチレンテレフタレートホモポリマー、ポリエチレンテレフタレート−ナフタレートコポリマー及びそれらの混合物から成ることが好ましい。
【0018】
上記の単層構造または多層構造を有するフィルムは、その両表面形状が同一であっても異なっていてもよい。例えば、多層構造のフィルムの場合、フィルムの片面に粒子を添加し、他の面に粒子を添加しなかったり、又はすべての層に粒子を添加してもよい。多層構造を有するフィルムは、共押出法によって製造することが好ましい。また、公知の方法によって、フィルムの片面または両面に機能性塗布層を形成してもよい。さらに、フィルムの重量に対し、0.1〜30重量%の範囲において、他の原料樹脂および/または公知の添加剤を添加してもよい。
【0019】
本発明の製造方法によって製造されるポリエステルフィルムの総厚さは、広い範囲をとることが出来、通常2〜500μm、好ましくは5〜350μm、より好ましくは10〜300μmである。
【0020】
本発明の製造方法において、後重縮合工程によって分子量が増加させられたポリエステルの再生原料をフィルムの重量に対して20重量%以上使用する。ポリエステルの再生原料としては、フィルムの製造工程において生じるフィルムの端材を使用することが好ましい。再生原料の使用量は、フィルムの厚さによって好ましい範囲が異なる。フィルムの厚さが4μm未満の場合、再生原料の使用量は、通常50重量%以下、好ましくは30〜40重量%である。フィルムの厚さが4〜300μmの場合、再生原料の使用量は100重量%まで可能であり、好ましくは20〜80重量%である。フィルムの厚さが300μmを超える場合、再生原料の使用量は、通常70重量%以下、好ましくは20〜60重量%である。このように、通常の厚さのフィルムについては再生原料を100重量%まで使用することが出来、薄いフィルム及び厚いフィルムについても高含有率で再生原料を使用することが出来る。そして、このように多量(20〜100重量%)の再生原料を使用しても、優れた長手方向延伸、横方向延伸を行うことが出来、フィルムの破断が起らず、得られるフィルムの機械的性質および光学的性質を低下させることがない。
【0021】
再生原料は、乾燥工程や、押出工程を既に経ているので、ポリマー粘度が低下している。すなわち、再生原料として使用されるフィルムの製造工程において生じるフィルム端材は、押出工程の後において生じるため、純原料と比較して粘度が低下している。フィルム端材の粘度低下の要因は、押出などの工程によるものだけでなく、添加粒子や添加剤の種類および含有量にも起因する。例えば、添加粒子や他の複合材料の含有率が高いフィルムの端剤は、粘度の低下率が10%を超える。そのため、このような場合、粘度低下以外の品質は高品質である再生原料を廃棄することとなり、リサイクルシステムを構築することが出来ず、非経済的となる。また、粘度低下した再生原料をそのまま使用すれば、原料ポリマーの粘度の不均一性により製造安定性が極めて悪化し、フィルムの製造が困難になる場合もある。
【0022】
そのため、本発明の製造方法において、ポリエステルの再生原料を重縮合工程によって分子量を増加させた後に原料として使用する。重縮合工程としては、溶融または固相重縮合工程が好ましく、これにより、粘度低下した再生原料の分子量を増加させることが出来る。固相重合法としては、通常、固定床乾燥機中、不活性ガスの気流下、200℃を超える温度で行う。タンブル乾燥機を使用してバッチ形式で行う場合は、10mbar未満の減圧下で200℃を超える温度で行う。
【0023】
重縮合工程による再生原料の分子量の増加は、粘度の低下とは逆(すなわち粘度増加)の工程となる。重縮合工程による再生原料の分子量の増加の程度は、ジクロロ酢酸(DCA)中25℃における標準粘度の増加量が、通常100〜250、好ましくは120〜250である。重縮合工程により分子量が増加した再生原料は、純原料と同一の処理で使用することが出来、経済的に大きな意味がある。再生原料の分子量の増加の程度(粘度増加の程度)は、重縮合温度、圧力(減圧度)、反応時間などによって性格に制御できる。上記の様に、重縮合工程により分子量が増加した再生原料は、純原料と同一の処理で使用することが出来るため、フィルム原料として100重量%の再生原料を使用することも可能であり、この場合においても、製造安定性に優れ、優れた性質を有する二軸延伸フィルムを製造できる。さらに、この手法で製造されるフィルム(再生原料を使用したフィルム)の端材を再生原料として使用することも可能である。この場合、再度、重縮合工程により分子量の増加を行うことが好ましい。
【0024】
重縮合工程により分子量が純原料と同じくらいに増加した再生原料に対し、予備乾燥化を施すことが好ましい。この予備乾燥化は、上記再生原料を撹拌しながら減圧下で(通常20〜80mbar、好ましくは30〜60mbar、更に好ましくは40〜50mbar)徐々に加熱する。必要であれば上昇して一定となった温度で後乾燥してもよい。供給容器からベース層用および/または外層用ポリマー及び必要であれば他の原料のブレンドを必要量だけ室温にて真空乾燥機に供給することが好ましい。原料のブレンドの乾燥または滞留時間の間、原料成分またはマスターバッチ容器内の温度を通常10〜160℃、好ましくは20〜150℃、更に好ましくは30〜130℃に、徐々に昇温させる。滞留時間は通常約6時間、好ましくは約5時間、更に好ましくは約4時間であり、通常10〜70rpm、好ましくは15〜65rpm、更に好ましくは20〜60rpmで撹拌することが好ましい。得られた予備結晶化または予備乾燥した原料混合物は、さらに、下向流にある容器内で温度が通常90〜180℃、好ましくは100〜170℃更に好ましくは110〜160℃で、通常2〜8時間、好ましくは3〜7時間、更に好ましくは4〜6時間減圧下で後乾燥する。
【0025】
次に、本発明の二軸延伸フィルムの製造方法を具体的に説明する。重縮合工程により分子量が増加した再生原料を含むベース層B用ポリマーを押出機に供給し、それぞれの押出機において、フラットフィルムダイを介して対応する溶融物を押出し、冷却ロールで冷却し、アモルファスシートを得る。得られたアモルファスシートは、再加熱され、長手方向および横方向、横方向および長手方向、または長手方向、横方向および再度長手方向および/または横方向に延伸される。一般的に、延伸温度はポリマーのガラス転移温度をTgとした場合、Tg+10〜Tg+60℃で行い、長手方向には通常2.0〜6.0倍、好ましくは2.5〜4.5倍に、横方向には通常2.0〜5.0倍、好ましくは3.0〜4.5倍に延伸する。再度長手方向または横方向に延伸する場合の延伸比は、通常1.1〜3.0倍である。最初の長手方向の延伸において同時に横方向の延伸を行う2軸延伸法(同時二軸延伸)で延伸を行ってもよい。延伸後、通常200〜260℃、好ましくは220〜250℃で熱固定を行い、冷却後巻取る。
【0026】
本発明の製造方法で得られるフィルムは機械的特性に優れる。フィルムの弾性率は、長手方向が通常3000N/mmを超え、横方向が通常4200N/mmを超える。引張破断強度は、長手方向が通常90N/mmを超え、横方向が通常120N/mmを超える。
【0027】
本発明の製造方法は延伸性および製造安定性に優れるため、フィルムの破断無く長手方向および横方向に対し優れた延伸を行うことが出来る。さらに、得られた二軸延伸フィルムは、巻取り特性および後加工性に優れる。また、得られた二軸延伸フィルムは、リサイクル性に優れ、再生原料として使用してもフィルムの機械的特性および光学的特性を低下させない。
【0028】
本発明の製造方法で得られるフィルムは、上記の様に優れた性質を有する。そのため、ケーブルの絶縁体、モーターの絶縁体、熱転写フィルム、包装・装飾フィルム、建築用表示板、表示用必需品、ディスプレイ、プラカード、ラベル、機械や自動車保護部材、照明部材、店における建具類や備品、宣伝必需品、積層部材、食品や飲料用品用部材、医療用部材、高機能フィルム、コンデンサー用フィルム、粘着テープ、蓋材などに使用できる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。評価方法を以下に示す。
【0030】
(1)表面欠陥および/またはフィルムの色の均一性:
目視により確認した。
【0031】
(2)機械的性質:
フィルムの長手方向および横方向の弾性率および伸長破断強度はISO 527−1−2に従って測定した。
【0032】
(3)標準粘度SV:
ポリエステルの標準粘度SV(DCA)はジクロロ酢酸中25℃でDIN 53726に従って測定した(SV(DCA)=(ηrel−1)×1000)。ポリエステルの固有粘度IVは、標準粘度SV値を使用して以下の式より算出した。
【0033】
【数1】

【0034】
実施例1:
以下の表に示す組成を有し、厚さが350μmの単層二軸延伸ポリエステルフィルムを製造した。
【0035】
【表1】

【0036】
製造されるフィルム及びそれによって生じるフィルム端材のSVは850であった。そして、それらから製造される再生原料のSVは790であった。この再生原料についてタンブル乾燥機を使用して後重縮合反応を行い、SVを970まで増加させた。
【0037】
フィルムの製造における押出量を基準とした原料収率(押出された原料がフィルムとして使用される割合)は64重量%であり、押出量の36重量%は回収され、再生原料として使用でき、原料のリサイクルシステムを達成できた。
【0038】
実施例2:
以下の表に示す組成を有し、厚さが4.5μmの単層二軸延伸ポリエステルフィルムを製造した。
【0039】
【表2】

【0040】
実施例3:
以下の表に示す組成を有し、厚さが12μmのABA型3層二軸延伸ポリエステルフィルムを製造した。ベース層の厚さは10μm、外層の厚さはそれぞれ1μmであった。
【0041】
【表3】

【0042】
実施例4:
以下の表に示す組成を有し、厚さが50μmの単層二軸延伸ポリエステルフィルムを製造した。
【0043】
【表4】

【0044】
比較例1:
実施例1と同様に、以下の表に示す組成を有し、厚さが350μmの単層二軸延伸ポリエステルフィルムを製造した。比較例1においては、フィルム製造工程で生じたフィルム端材について後重縮合工程などを行わずそのまま使用した。製造されるフィルム及びそれによって生じるフィルム端材のSVは850で実施例1と同じであった。すなわち、ポリマー混合物のSVは950であったが、フィルムとした場合SVが850となり、100低下した。しかしながら、PET純品、マスターバッチ及び再生原料のSVが大きく異なるため、溶融混合物の均一性が損なわれた。フィルムの製造における押出量を基準とした原料収率(押出された原料がフィルムとして使用される割合)は64重量%であり、押出量の10重量%のみ回収され、再生原料として使用した。そのため、、製造コストが高く非経済的であった。
【0045】
【表5】

【0046】
比較例2:
実施例1と同様に、以下の表に示す組成を有し、厚さが350μmの単層二軸延伸ポリエステルフィルムを製造した。比較例1においては、フィルム製造工程で生じたフィルム端材について後重縮合工程などを行わず90重量%の配合量でそのまま使用した。原料のリサイクルシステムを達成できたものの、フィルムの製造安定性が悪く、得られたフィルムの特性も不安定で、低下した。
【0047】
【表6】

【0048】
実施例および比較例で得られたフィルムの特性について、表7にまとめて示す。
【0049】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の結晶性熱可塑性ポリエステルを主成分とし、当該ポリエステルの重量を基準として500ppm以上の少なくとも1種の粒子を含有する二軸延伸フィルムの製造方法であって、重縮合工程によって分子量が増加させられた上記ポリエステルの再生原料をフィルムの重量に対して20重量%以上使用することを特徴とする二軸延伸フィルムの製造方法。
【請求項2】
フィルムの厚さが2〜500μmである請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
粒子の含有量が、ポリエステルの重量を基準として25重量%未満である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
フィルムが押出法で製造される単層フィルムである請求項1〜3の何れかに記載の製造方法。
【請求項5】
フィルムが共押出法で製造され、少なくとも1つのベース層と少なくとも1つの外層とから成る多層フィルムである請求項1〜3に記載の製造方法。
【請求項6】
粒子が、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、カオリン、二酸化ケイ素、無機有彩色顔料および無機黒色顔料から成る群より選択される1つ以上である請求項1〜5の何れかに記載の製造方法。
【請求項7】
ポリエステルの再生原料の分子量増加が、溶融または固相重縮合工程によって行われる請求項1〜6の何れかに記載の製造方法。
【請求項8】
ポリエステルの再生原料の重縮合工程によるジクロロ酢酸中25℃における標準粘度の増加量が、100〜250である請求項1〜7の何れかに記載の製造方法。
【請求項9】
結晶性熱可塑性ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート又はそれらの混合物である請求項1〜8の何れかに記載の製造方法。
【請求項10】
結晶性熱可塑性ポリエステルが、紫外線安定剤、着色料、難燃剤、シール性付与剤、耐加水分解剤から成る群より選択される1つ以上の添加剤を含有する請求項1〜9の何れかに記載の製造方法。
【請求項11】
上記ポリエステルの再生原料が重縮合工程によって分子量が増加させられた後、予備乾燥を行う請求項1〜10の何れかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2006−16617(P2006−16617A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−192666(P2005−192666)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(596099734)ミツビシ ポリエステル フィルム ジーエムビーエイチ (29)
【Fターム(参考)】