説明

二軸延伸フィルムの製造方法

【課題】従来の二軸延伸ポリプロピレンフィルムに比べ、強度、耐熱性が向上した二軸延伸ポリプロピレンフィルムの提供。
【解決手段】少なくとも一方向に延伸されたプロピレン系フィルムを更に同時二軸延伸することを特徴とするプロピレン系二軸延伸フィルムの製造方法。また、タテ方向に一軸延伸されたプロピレン系フィルム又は二軸延伸されたプロピレン系フィルムを更に同時二軸延伸するプロピレン系二軸延伸フィルムの製造方法。さらに、同時二軸延伸する際に、タテ方向に1.5〜5倍、ヨコ方向に0.8〜5倍延伸する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン系ポリマーからなる二軸延伸フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、その優れた透明性、機械的強度、防湿性、剛性等を活かして包装材料をはじめ種々の用途に広く用いられている。ポリプロピレンの二軸延伸フィルムを成形する方法として、同時二軸延伸、逐次二軸延伸が知られている。
ポリプロピレンフィルムを二軸延伸することによりその強度、透明度等が向上し商品価値を高めることができ、さらに広い用途への利用が期待される。
【0003】
ポリプロピレンの二軸延伸フィルムに更にロール間の延伸工程を加えることが提案されているが、得られるフィルムの強度は不十分である。
本発明は、プロピレン系ポリマーの延伸配向による強度の向上と耐熱性の向上を目的とするものであり、同時二軸延伸ポリプロピレンフィルムの耐熱性、強度を改良することを目的とするものである。
【特許文献1】特公昭41−21790号 特許請求の範囲
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、原反のプロピレン系長尺フィルムの両端をテンタークリップで把持して同時二軸延伸を行い、引き続き得られた二軸延伸フィルムをテンタークリップで把持したまま、テンタークリップをタテ方向(MD方向)に加速度を加えて移動させることにより、少なくともタテ方向(MD方向)に、追加の延伸を行うことを特徴とするプロピレン系二軸延伸フィルムの製造方法に関する。また本発明は、タテ方向(MD方向)に3〜8倍、ヨコ方向(TD方向)に3〜8倍の同時二軸延伸を行い、引き続いて、タテ方向(MD方向)1.5〜5倍、ヨコ方向(TD方向)0.8〜5倍の追加の同時二軸延伸を行うことを特徴とするプロピレン計二軸延伸フィルムの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0005】
本発明の方法によれば、従来の二軸延伸ポリプロピレンフィルムに比べ強度、耐熱性に優れた二軸延伸フィルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
プロピレン系ポリマー
本発明の方法において、原料となるプロピレン系ポリマーは、一般にポリプロピレンの名称で製造・販売されているプロピレンを主体とする重合体であり、通常、密度が0.890〜0.930g/cm、MFR(ASTM D1238 荷重2160g、温度230℃)が0.001〜60g/10分、好ましくは0.5〜10g/10分、更に好ましくは1〜5g/10分のプロピレンの単独重合体若しくはプロピレンと他の少量例えば、1重量%以下のα−オレフィン、例えばエチレン、ブテン、ヘキセン−1等との共重合体、あるいは単独重合体と共重合体との組成物である。これらのプロピレン系ポリマーは、分子量の異なる2種以上の組成物でもよく、またアイソタクティシティの異なる2種類以上の組成物も利用することができる。これらの中ではアイソタクシティシティ(メソペンタッド98%以上)の高いポリプロピレンが好適である。これらのポリプロピレンには必要に応じて、石油樹脂などの炭化水素樹脂を配合したり、核剤を配合することが行われる。
【0007】
特に通常の高アイソタクシティシティ(メソペンタッドが98%以上)のポリプロピレンに、更に高分子量ポリプロピレン(MFR0.01以下)を3〜30重量%となるように配合した組成物とすることも行われる。
その他、ポリプロピレンとして高アイソタクシティシティのポリプロピレンの組成物、例えばより高いアイソタクシティシティのポリプロピレンとそれより低いアイソタクシティシティのポリプロピレンであって、そのアイソタクシティシティ値の比率(より高いペンタッドアイソタクシティシティの値とより低いペンタッドアイソタクシティシティの値の差が1から4(単位%)である組成物も好適である。
【0008】
これらの中でも、プロピレンの単独重合体、若しくは1重量%以下のランダム共重合体でアイソタクテシティの高い重合体もしくはそれらの組成物が、得られる二軸延伸ポリプロピレンフィルムの弾性率、耐熱性が優れるので好ましい。
本発明に係わるポリプロピレンは、チーグラー・ナッタ系触媒に限らず、シングルサイト触媒(メタロセン触媒)を始め種々公知の触媒を用いて重合されたものを用いることができる。
また、ポリプロピレンには、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、ベンジリデンソルビトール等の核剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機または有機の充填剤等の通常、ポリオレフィンに用いる各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加しておいてもよい。
【0009】
原反のプロピレン系長尺フィルムは、溶融押出によりシート成形して利用される。その他、必要に応じて予め成形したシートが原反として利用される。これら原反の厚みは通常300ミクロン(μm)ないし7ミリメートル(mm)である。
同時二軸延伸
原反のプロピレン系長尺フィルムは、同時二軸延伸される。
同時二軸延伸は、従来公知の種々の方法を採用して行うことができる。その延伸倍率は、縦方向(MD)が通常7〜12倍、好ましくは8〜11倍、横方向(TD)が通常7〜12倍、好ましくは8〜11倍の範囲である。延伸の際のテンター内温度は通常140〜200℃、好ましくは150〜190℃の範囲である。この更なる同時二軸延伸で得られるプロピレン系フィルムの厚さは通常3〜200ミクロン(μm)程度である。
【0010】
追加の延伸
同時二軸延伸を行い、それに引き続いて、得られた二軸延伸フィルムをテンタークリップで把持したまま、テンタークリップをタテ方向(MD方向)に加速度を加えて移動させることにより、少なくともタテ方向(MD方向)に、追加の延伸が行われる。
追加の延伸は、タテ方向(MD方向)1.5〜5倍、ヨコ方向(TD方向)0.8〜5倍の同時二軸延伸を行うことが好適である。中でも、その延伸条件を主としてタテ方向に延伸される条件とすることが好ましい。また延伸の際のフィルムの温度は約150〜約190℃の範囲が好適である。
なお、追加の延伸の際には、フィルムの中心付近の温度は、150℃〜190℃の範囲が通常であり、フィルムの両端の部分(テンタークリップで把持される部分)の温度はその温度より約1℃〜約100℃低い温度にコントロールすることが望ましい。
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限
りこれらの実施例に制約されるものではない。
【0011】
なお、物性値などは、以下の評価方法により求めた。
(1)弾性率(MPa)
二軸延伸ポリプロピレンフィルムから縦方向(MD)及び横方向(TD)に短冊状フィルム片(長さ:150mm、幅:15mm)を切出し、引張り試験機[(株)オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225]を用い、チャック間距離:100mm、クロスヘッドスピード:5mm/分の条件で引張試験を行い、弾性率(MPa)を求めた。
【0012】
実施例1
同時二軸延伸プロピレン系フィルムの製造
三井化学(株)社製F113G[密度:0.91、MFR:3.0g/10分(230℃)、アイソタクシティシティ(メソペンタッド)98.0%]を用い、スクリュー押出機で溶融押出し、同時二軸延伸フィルム成形装置を用い、テンター(予熱温度:185℃、延伸温度:160℃及び熱セット温度:180℃並びに緩和率;縦方向:5%及び横方向:5%)を用い、縦方向(MD)に8倍、横方向(TD)に8倍延伸して、厚さ30ミクロン(μm)の同時二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
その後、二軸延伸フィルムをテンタークリップで把持されたままで、引き続きタテ方向に延伸した。
すなわち、タテ方向の延伸においては、その両端部を除くフィルムの温度を、同時二軸延伸の際のフィルムの温度よりも、高い温度に設定した。
また、同時二軸延伸フィルムの両端部の温度はテンター内の温度より低めに設定した。
この追加の延伸では、テンタークリップの各対の幅(TD方向)を一定とし、タテ方向(MD方向)のスピードに加速度を加えて、実質1.5倍延伸した。
得られたフィルムの片面(塗工面)にコロナ処理を施した。
結果を表1に示す。
【0013】
表 1

項 目 単位 実施例1

同時二軸延伸の延伸倍率(面積比) 倍 8×8
タテ方向の延伸倍率 倍 1.5

弾性率 タテ(MD) MPa 3500
ヨコ(TD) MPa 2800

比較例1
同時二軸延伸プロピレン系フィルムの製造
三井化学(株)社製F113G[密度:0.91、MFR:3.0g/10分(230℃)、アイソタクシティシティ(メソペンタッド)98.0%]を用い、スクリュー押出機で溶融押出し、同時二軸延伸フィルム成形装置を用い、テンター(予熱温度:185℃、延伸温度:160℃及び熱セット温度:180℃並びに緩和率;縦方向:5%及び横方向:5%)を用い、縦方向(MD)に8倍、横方向(TD)に8倍延伸して、厚さ30ミクロン(μm)の同時二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
その後、二軸延伸フィルムの両端部を端から10cm切り取り、ロールで予熱し、ロールの速度差で縦方向に1.5倍延伸した。その時に、横方向に40%、幅収縮した。
得られたフィルムの片面(塗工面)にコロナ処理を施した。
結果を表2に示す。
【0014】
表 2

項 目 単位 比較例1

同時二軸延伸の延伸倍率(面積比) 倍 8×8
タテ方向の延伸倍率 倍 1.5(ヨコ方向に40%幅収縮)

弾性率 タテ(MD) MPa 3300
ヨコ(TD) MPa 2300

本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、同時二軸延伸後、テンタークリップで把持したまま、縦方向に延伸することによって、横方向の幅収縮を抑えることができ、幅方向の物性低下を防ぎ、さらに縦方向の配向も上がり、縦方向の弾性率を向上することができる。一方、比較例1は、縦方向にロール延伸することによって、幅収縮を抑えることができず、横方向の弾性率が低下し、さらに縦方向の配向も低くなり、縦方向弾性率も不十分である。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明によれば、プロピレン系ポリマーの延伸配向による強度と耐熱性が向上しているので、包装材料としてばかりでなく、離型フィルム等の種々の産業材用途への利用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原反のプロピレン系長尺フィルムの両端をテンタークリップで把持して同時二軸延伸を行い、引き続き得られた二軸延伸フィルムをテンタークリップで把持したまま、テンタークリップをタテ方向(MD方向)に加速度を加えて移動させることにより、少なくともタテ方向(MD方向)に、追加の延伸を行うことを特徴とするプロピレン系二軸延伸フィルムの製造方法。
【請求項2】
タテ方向(MD方向)に3〜8倍、ヨコ方向(TD方向)に3〜8倍の同時二軸延伸を行い、引き続いて、タテ方向(MD方向)1.5〜5倍、ヨコ方向(TD方向)0.8〜5倍の追加の同時二軸延伸を行うことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。

【公開番号】特開2009−214507(P2009−214507A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63399(P2008−63399)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】