説明

二軸延伸フィルム

【課題】 手で容易に直線的に引き裂くことのできる直線引裂性を有し、透明性に優れ、製膜時に安定して製膜することのできる、包装材料として有用な二軸延伸ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 主として融点が200〜240℃かつガラス転移点温度が60℃以上のポリエステルからなりフィルムの長手方向に直線引裂性を有することを特徴とする二軸延伸フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包装材料として好適な二軸延伸フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品、雑貨の包装には二軸延伸ポリエステルフィルムや、二軸延伸ポリエステルフィルムをポリエチレンなどのヒートシール可能なフィルムとラミネートした包装材料が広く使用されている。二軸延伸ポリエステルフィルムは透明性、耐久性、寸法安定性、ガスバリアー性、耐油性、耐溶剤性、機械強度に優れており、良質な包装材料を提供することができる。
【0003】
しかし、二軸延伸ポリエステルフィルムを用いた包装材料は優れた機械強度を備えるため、包装容器としたときに手で容易に引き裂き開封することができない。この問題を解決するために、ポリエステルに非相溶な他ポリマーをブレンドして易引き裂き性を付与することが試みられている。例えば、特開2001−329077号公報や特開2004−285145号公報において、ポリエステル中にポリカーボネート樹脂をブレンドすることにより海島構造を発現させ、引き裂き性を付与することが提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−329077号公報
【特許文献2】特開2004−285145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これらの技術では、引き裂き性を付与することはできても、ポリエステルとポリカーボネートとのエステル交換反応が抑制しきれず、脱炭酸反応などにより発泡が発生し、フィルム製膜時に切断が多発して、操業性に劣る。
【0006】
本発明は、ポリエステルからなり、手で容易に直線的に引き裂くことのできる直線引裂性を有し、透明性に優れ、製膜時に安定して製膜することのできる、包装材料として有用なフィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、主として融点が200〜240℃かつガラス転移点温度が60℃以上のポリエステルからなりフィルムの長手方向に直線引裂性を有することを特徴とする二軸延伸フィルムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ポリエステルからなり、手で容易に直線的に引き裂くことのできる直線引裂性を有し、透明性に優れ、製膜時に安定して製膜することのできる、包装材料として有用な二軸延伸フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の二軸延伸フィルムは、主として融点が200〜240℃かつガラス転移点温度が60℃以上のポリエステルからなりフィルムの長手方向に直線引裂性を有することを特徴とする。
【0010】
[直線引裂性]
本発明の二軸延伸フィルムは、フィルムの長手方向に直線引裂性を有する。この直線引裂性は、具体的には、フィルムの長手方向を長辺とする長さ30cmの短冊状サンプルについて、引裂き開始点と引裂き終点の短辺方向のずれが5%未満のものを合格として評価したときの合格率が80%以上である直線引裂性である。この直線引裂性を備えることにより、包装材料として用いて包装容器としたときに、容器を手で容易に引き裂き開封することができる。
【0011】
[海島構造]
本発明の二軸延伸フィルムは、主として融点が200〜240℃かつガラス転移点温度が60℃以上のポリエステルからなる二軸延伸フィルムである。なお「主として」とはフィルムのポリマーの70重量%以上の成分であることをいう。
【0012】
フィルムの長手方向の直線引裂性は、二軸延伸フィルムが海島構造を有し、海成分は共重合ポリエステル、島成分はポリカーボネートであることによって得られる。すなわち、本発明において二軸延伸フィルムは、好ましくは海島構造をとり、この海島構造において海成分は共重合ポリエステル、島成分はポリカーボネートからなる。
【0013】
海島構造を構成する島成分は海成分のなかに細長い島状に分散しており、それぞれの島はフィルムの長手方向(MD方向)に長く、この方向と直行するTD方向に短い構造をとる。それぞれの島は好ましくはMD方向に伸びた平板状で分布する。このような構造をとることにより、本発明の二軸延伸フィルムは、フィルムの長手方向に良好な直線引裂性を発現する。
【0014】
本発明における海島構造の有無は、フィルムを包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂を用いて包埋し、ミクロトーム(Reichert-Jung製、UlTRACUT)にて長手断面および巾断面を50μm厚に薄切りしたサンプルを3.2%オスミウム酸・60℃・2hrの条件で蒸気染色を行った後、透過電子顕微鏡(トプコン製、LEM−2000)によって加速電圧100kVで45000倍で観察する。本測定方法において海島構造が観察されないものはポリエステルとポリカーボネートが実質的に非相溶でないことを意味し本発明に該当しない。この場合、本発明のいう長手方向の直線引裂性は発現しない。
【0015】
この海島構造において、海成分として用いるポリエステルと、島成分として用いるポリカーボネートとの割合は、ポリエステルの好ましくは95〜70重量%、さらに好ましくは90〜75重量%、特に好ましくは85〜80重量%に対して、ポリカーボネートが好ましくは5〜30重量%、さらに好ましくは10〜25重量%、特に好ましくは15〜20重量%の割合である。海島構造における島は、細長い形状を呈しており、その長径方向はフィルムの巻き取り方向にほぼ一致している。ポリカーボネートの島成分の割合が30重量%を超えるとフィルム中の海島構造におけるポリカーボネートの島の個々のサイズが大きくなり過ぎ、ヘーズが高くなり過ぎて好ましくない。ポリカーボネートの島成分の割合が5%未満では直線引裂性を発現するに十分な量のポリカーボネートの島がポリエステルの海の中に形成できず好ましくない。
【0016】
[海成分]
本発明において海成分として用いられるポリエステルは、その融点が200〜240℃、好ましくは210〜230℃、さらに好ましくは220〜230℃であり、かつガラス転移点温度が60℃以上、好ましくは65℃以上、さらに好ましくは70℃以上のものである。ポリエステルの融点が240℃を超えると、島成分として用いるポリカーボネートと溶融混練したときに脱炭酸反応が起こり、発泡が発生しやすくなり、フィルムの製膜性が劣る。ポリエステルの融点が200℃未満であると耐熱性に劣り包装材料として適さない。ガラス転移温度が60℃未満であるとフィルムの機械強度が大幅に低下し製膜が困難になる。
【0017】
上記融点およびガラス転移温度を満足するポリエステルとしては、共重合ポリエステルを用いるとよい。共重合ポリエステルにおける共重合成分の割合は、上述の融点およびガラス転移温度についての条件を満足する範囲である。かかる条件を満たす共重合ポリエステルのうち、好適なものは、ジカルボン酸成分およびジオール成分の合計量として、好ましくは5〜40モル%、さらに好ましくは10〜30モル%の共重合成分を共重合したポリエチレンテレフタレートである。
【0018】
ジカルボン酸成分の共重合成分としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ダイマー酸、コハク酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸といった脂肪族ジカルボン酸;イソフタル酸、2−6ナフタレンジカルボン酸、2−7ナフタレンジカルボン酸、1−5ナフタレンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、4−ヒドロキシ安息香酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、アンスラセンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、ε−カプロラクトン、乳酸といったオキシカルボン酸;を例示することができる。
【0019】
ジオール成分の共重合成分としては、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコールといった脂肪族ジオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールといったポリアルキレングリコール;ビスフェノールAやビスフェノールSのエチレンオキシド付加体といったグリコール;を例示することができる。共重合成分は1種類を用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。
【0020】
これらの中でも、ジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、2−6ナフタレンジカルボン酸が好ましい。ジオール成分としては、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
【0021】
海成分のポリエステルとして最も好ましいものは、イソフタル酸および/または2,6−ナフタレンジカルボン酸を共重合成分として合計5〜40モル%含む共重合ポリエチレンテレフタレートである。
【0022】
海成分に用いるポリエステルは、公知の方法に準じて製造することができる。テレフタル酸ジメチルとエチレングリコール、および所望の共重合成分のモノマーからのエステル交換反応法、あるいはテレフタル酸とエチレングリコール、および所望の共重合成分のモノマーとの直接エステル化によりオリゴマーを得た後、溶融重合して得ることができる。必要があればさらに常法により固相重合をしてもよい。
【0023】
ただし、海成分に用いるポリエステルの重合には、チタン化合物を触媒として用いることが好ましい。触媒としてのチタン化合物は、単独で用いてもよく、ゲルマニウム化合物と併用してもよい。すなわち、Ti触媒系、Ti−Ge触媒系のいずれとして用いてもよい。本発明ではチタン化合物を用いることにより、フィルムを製造する際のポリカーボネートの末端基部分からの脱炭酸反応による発泡を防ぐことができる。他方、触媒としてチタン化合物を用いることなく、マンガン化合物やアンチモン化合物を触媒として用いると、フィルムを製造する際にポリカーボネートの末端基部分より脱炭酸反応が生じてしまい、フィルム成形のための押出機内でのポリマー溶融時に発泡してしまう問題が発生するので好ましくない。
【0024】
[島成分]
島成分としてはポリカーボネートを用いる。島成分のポリカーボネートは、ポリエステルと実質的に非相溶である。実質的に非相溶とは、フィルム製膜時の溶融混練後において、ポリエステル中にポリカーボネートが海島状に相分離して分散した状態をとることをいい、具体的には後述の測定方法により海島構造が観察されるものをいう。ここで、ポリエステルが海、ポリカーボネートが島に相当する。
【0025】
本発明におけるポリカーボネートは下記式(1)で表される繰り返し単位からなる。このポリカーボネートの粘度平均分子量は、好ましくは15000〜25000、さらに好ましくは16000〜24000、特に好ましくは17000〜23000である。ポリカーボネートの分子量が25000を超えると溶融粘度が高すぎて安定した製膜が不可能となり、15000未満では逆に溶融粘度が低くなるため直線的な引裂性発現に必要な大きさのポリカーボネートの細長い島を含む海島構造をポリエステルの海の中に形成できないため好ましくない。
【0026】
【化1】

(ここでR、Rはそれぞれ水素原子、炭素数1〜5のアルキル基または環員炭素数5〜6のシクロアルキル基を示し、またR、Rはそれらが結合する炭素原子と共に環員数5〜6のシクロアルキル基を形成しても良く、RおよびRはそれぞれ炭素数5〜6のアルキル基、フェニル基またはハロゲン原子を示し、mおよびnはそれぞれ0、1または2である。)
【0027】
本発明におけるポリカーボネートは公知の方法で製造することができる。例えば、ビスフェノールA、ジフェニルカーボネートを原料としたエステル交換法、ビスフェノールA、塩化カルボニルを原料としたホスゲン法、によって得ることができる。
【0028】
[直線引裂性の詳細]
本発明の二軸延伸フィルムは、フィルムの面内方向において、フィルムの長手方向(MD方向)に沿ってポリカーボネートの相が、細長い島状の相として長径の方向が平行に分散しており、MD方向に直線引裂性を有する。
【0029】
直線引裂性の発現の機構は、以下のような機構ではないかと推定される。まず、ポリエステルとポリカーボネートは非相溶であるため相分離し、この状態は前者が海で後者がその海の中に島状に分散した状態となる。そして、ポリカーボネートの島状に分散した粒子が、押出し機内でのせん断力によってポリマーの進行方向に細く伸ばされるような大きな変形をうけ、海島構造のポリカーボネートの島の長径方向は、最終的なポリマーの進行方向であるMD方向に一致した状態となる。
【0030】
そして、このMD方向への変形量がフィルムの製膜時に横延伸で受けるTD方向への変形量よりも大きいことから、長径方向がMD方向に揃ったままとなり、その方向に直交する方向のフィルム内の結合力が弱まる。その結果、島の長径方向に沿った直線引裂性が発現すると考えられる。
【0031】
[厚み]
本発明の二軸延伸フィルムは、厚みが好ましくは6〜50μm、さらに好ましくは9〜25μm、特に好ましくは12〜16μmである。6μm未満では腰が弱くなって静電気のためにフィルムが手にまとわり付いたりするため好ましくない。50μmを超えると引裂き強度が大きくなりすぎ好ましくない。
【0032】
[安定剤]
本発明の二軸延伸フィルムは、安定剤として有機リン化合物を含有することが好ましい。リン化合物を含有することにより、ポリエステルとポリカーボネートとの劣化反応を抑制し、高い熱安定性を得ることができる。
【0033】
有機リン化合物の含有量は、ポリカーボネートに対するリン含有量として、好ましくは5〜1000ppm、さらに好ましくは10〜100ppmである。5ppm未満では耐熱劣化性が劣ることがあり好ましくない。1000ppmを超えるとフィルムの表面が粗くなることがあり好ましくない。
【0034】
リン化合物としては、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビスオクタデシルフォスファイト、モノステアリルアシッドフォスフェート、ジステアリルアシッドフォスフェートを例示することができる。
【0035】
[滑剤]
本発明のフィルムは滑剤を含有することが好ましい。透明性を維持するために平均粒径2.5μm未満、製膜性や滑り性の観点から平均粒径1.0μm以上の滑剤を含有することが好ましい。滑剤の添加量としては、その粒径にも依存するが、フィルムの巻き取り性および透明性に悪影響を及ぼさない範囲で選択すると良い。滑剤としては無機系、有機系のいずれも用いることができるが、無機系滑剤が好ましい。無機系滑剤としてはシリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウムまたは硫酸バリウムが例示でき、有機系滑剤としてはシリコーン粒子が例示できる。
【0036】
[製造方法]
本発明の二軸延伸フィルムは、上記のポリエステルとポリカーボネートを190〜250℃の温度で溶融混練する溶融混練工程、および溶融混練されたポリマーをフィルム状に二軸延伸する二軸延伸工程を含む製造方法により好適に製造することがでる。具体的には、ポリエステルとポリカーボネートを190〜250℃の温度で溶融混練し、これをダイから冷却ロールのうえにフィルム状にキャストして未延伸フィルムとして、これを二軸延伸する。本発明の二軸延伸フィルムにおいては、フィルムの熱収縮率を低く抑えるために、二軸延伸のあとにさらに160〜200℃、好ましくは160〜200℃の温度で2〜60秒間熱固定することが好ましい。熱固定温度が160℃未満であるとフィルムの熱収縮率が大きくなり、ラミネート等の包装加工時に寸法変化が大きくなってしまい包装材料として適さない。このようにして得られる本発明の二軸延伸フィルムは、150℃、30分間熱処理したときの熱収縮率が7%以下、好ましくは6以下、さらに好ましくは5%以下であり、厚み12μmでのヘーズ値が10%以下、好ましくは6%以下、さらに好ましくは5%以下、特に好ましくは4%以下である。このように熱収縮率およびヘーズを低く抑えることができるため、包装材料として好適な性質を備える。
【実施例】
【0037】
(1)ポリカーボネートの粘度平均分子量
塩化メチレン溶液中(25℃)で測定した固有粘度([η])より下記Schnellの式を用いて算出した。
Mv={log([η]/1.23×10-4)}/0.83
【0038】
(2)フィルム厚み
打点式フィルム厚み計(Anritsu、K402B)を用い、フィルム幅方向の任意の場所50箇所、フィルム幅の中心付近の長手方向で任意の場所50箇所について厚みを測定し、全100箇所の数平均値をフィルム厚みとした。
【0039】
(3)ヘーズ
JIS K7105の測定法Aに準じて測定した。
【0040】
(4)直線引裂性
フィルムのMD方向を、フィルムから切り出す短冊の長辺に合わせ、4cm×30cmの短冊を切り出した。この短冊の短辺中心に切れ目を入れて、該切れ目より2つに引裂 いたときの、引裂き開始位置から短冊の短辺方向におけるずれを測定した。そして、該ずれを短冊の長辺の長さ(30cm)で割った値(図1において(b−a)cm/30cm×100)が5%未満のもの合格とし、各水準ごとに10個の短冊を測定し、その結果から、以下の基準で判断した。
○:10個中8個以上が合格する良好な直線引裂性
×:10個中7個以下しか合格しない乏しい直線引裂性
【0041】
(5)海島構造の有無
フィルムを包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂を用いて包埋し、ミクロトーム(Reichert-Jung製、UlTRACUT)にて長手断面、巾断面を50μm厚に薄切りしたサンプルを、3.2%オスミウム酸・60℃・2hrの条件で蒸気染色を行った後、透過電子顕微鏡(トプコン製、LEM−2000)によって加速電圧100kVで45000倍にて撮影した。海島構造が観察できるものを○、観察できないものを×として評価した。
【0042】
(6)製膜性
製膜時の安定性を下記の基準で評価した。
○:製膜時に安定して製膜できる。
△:ほぼ安定して製膜できるが、時折発泡による切断が発生する。
×:製膜できない。
【0043】
(7)ポリマーの融点、ガラス転移点
DuPont Instruments910型DSCを用い、サンプル量20mgについて昇温速度20℃/分で290℃まで昇温させて融点を求めた。またガラス転移点はクエンチ後の再昇温にて求めた。測定は合計5回行い、その平均値を採用した。
【0044】
[実施例1]
ジメチルテレフタレートとエチレングリコールおよび表1に記載の共重合成分とを原料として、テトラブトキシチタンをエステル交換触媒、二酸化ゲルマニウムを重合触媒、正リン酸を安定剤として用い、常法により重合を行い、固有粘度(o−クロロフェノール、35℃)0.64の共重合ポリエステルを製造しチップとした。なお、この重合工程にて、平均粒径1.5μmの球状シリカ粒子を滑剤として添加した。
【0045】
また、ジフェニルカーボネート、ビスフェノールA、ビスフェノールAのジナトリウム塩を反応容器に仕込み常法により表1に記載の分子量のポリカーボネートを得た。得られたポリカーボネートにリン化合物として旭電化工業(株)アデカスタブPEP−8を70ppm(リン濃度換算)を混合し、溶融押出ししてチップとした。
【0046】
上記の共重合ポリエステルのチップとポリカーボネートのチップとを表1に示す比率(wt%)でチップ状態でブレンドしたものを120℃で6時間乾燥した後、押出機ホッパーに供給して表1に記載の溶融温度で溶融混練し、ダイを用いて表面温度20℃の冷却ドラム上に押出して急冷し厚さ160〜180μの未延伸フィルムを得た。
【0047】
この未延伸フィルムを低速−高速ロール間で延伸温度100℃にて延伸倍率3.6倍に延伸した。得られた一軸延伸フィルムをステンターに供給し、110℃にて横方向に4.0倍に延伸しその後170℃にて熱固定を行い、二軸延伸フィルムを得た。なお、フィルム厚みは押出機の回転数を変え、未延伸フィルムの厚みを変えることで調節した。得られたフィルムは、平均粒径1.5μmの凝集シリカ粒子を、0.05重量%滑剤として添加されていた。得られた二軸延伸フィルムの特性を表1に示す。
【0048】
[実施例2〜5]
共重合ポリエステルの共重合成分およびその共重合比率、重合触媒、ポリカーボネートの平均分子量、共重合ポリエステルとポリカーボネートの混合比率、安定剤種類および添加量(リン濃度換算量)、押出機の溶融混練温度について表1に示す内容で変更する以外は実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムの特性を表1に示す。
【0049】
[比較例1〜4および9]
共重合ポリエステルの共重合成分およびその共重合比率、重合触媒、ポリカーボネートの平均分子量、共重合ポリエステルとポリカーボネートの混合比率、安定剤種類および添加量(リン濃度換算量)、押出機の溶融混練温度について表1に示す内容で変更する以外は実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムの特性を表1に示す。なお、比較例1〜3ではホモのポリエチレンテレフタレート(融点256℃)を用いた。
【0050】
[参考例5〜8]
共重合ポリエステルの共重合成分およびその共重合比率、重合触媒、ポリカーボネートの平均分子量、共重合ポリエステルとポリカーボネートの混合比率、安定剤種類および添加量(リン濃度換算量)、押出機の溶融混練温度について表1に示す内容で変更する以外は実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムの特性を表1に示す。なお、比較例1〜3ではホモのポリエチレンテレフタレート(融点256℃)を用いた。参考例7ではホモのポリエチレンテレフタレート(融点256℃)を用いた。
【0051】
【表1】

【0052】
本発明の実施例1〜5の延伸ポリエステルフィルムは、ポリカーボネートの細長い島状構造のサイズがいずれもMD方向に0.9〜4.2μm、TD方向に0.2〜0.5μmとMD方向に伸びた平板状であり、長手方向(MD方向)に良好な引裂直線性を有した上でヘーズも低く透明であった。
【0053】
実施例1〜4は製膜時における脱炭酸反応による発泡が抑制されており、非常に良好な安定な製膜性であった。実施例5はMn−Sb重合触媒を使用しているため、時折発泡による切断はあるものの、ほぼ安定した製膜性が得られた。
【0054】
これに対して、ホモのポリエチレンテレフタレートを用いた比較例1〜3の延伸ポリエステルフィルムは、いずれも融点256℃以上の高い温度での溶融混練が必要であることから、いずれも発泡反応が抑えきれずに安定した製膜が困難であり、生産性が著しく低いものであった。
【0055】
共重合ポリエステルの共重合成分の比率が高過ぎた比較例4のフィルムはその機械強度が低すぎてフィルムが切断してしまい延伸フィルムが製膜できなかった。
【0056】
ポリカーボネートの割合が過度に多い参考例5のフィルムでは、ポリエステルの海の中のポリカーボネートの細長い島状構造のサイズがいずれもMD方向に9〜27μ、TD方向に4.8〜7.3μmと大きくなり過ぎて透明性が悪化した。
【0057】
ポリカーボネートの割合が過度に少ない参考例6のフィルムではポリエステルの海の中にポリカーボネートの細長い島状構造が明確に観察されず、海島間の相溶性が高過ぎるか島状構造を十分に形成できないため直線引裂性が悪かった。
【0058】
分子量が過度に大きいポリカーボネートを用いた参考例7のフィルムは溶融粘度が高過ぎて製膜が出来なかった。
【0059】
ポリカーボネートの分子量が小さ過ぎる参考例8のフィルムではポリエステルの海の中にポリカーボネートの細長い島状構造が明確に観察されず、海島間の相溶性が高過ぎるか島状構造を十分に形成できないため直線引裂性が悪かった。
【0060】
共重合ポリエステルの代わりにホモのポリエチレンテレフタレートを使用した比較例9のフィルムでは直線引裂性が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の二軸延伸ィルムは包装材料として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】直線引裂性の評価における短冊状サンプルの引裂きの一例である。
【符号の説明】
【0063】
a 直線引裂性の評価における短冊状サンプルの端から引裂き開始点までの距離
b 直線引裂性の評価における短冊状サンプルの端から引裂き終了点までの距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主として融点が200〜240℃かつガラス転移点温度が60℃以上のポリエステルからなりフィルムの長手方向に直線引裂性を有することを特徴とする二軸延伸フィルム。
【請求項2】
フィルムが海島構造を有する二軸延伸フィルムであり、海成分はポリエステル、島成分はポリカーボネートである、請求項1記載の二軸延伸フィルム。
【請求項3】
海成分はフィルムの重量100重量%あたり95〜70重量%を占め、島成分は5〜30重量%を占める、請求項2記載の二軸延伸フィルム。
【請求項4】
ポリエステルがTi化合物を触媒として用いて重合された、請求項1記載の二軸延伸フィルム。
【請求項5】
ポリエステルが、イソフタル酸および/または2,6−ナフタレンジカルボン酸を共重合成分として合計5〜40モル%含む共重合ポリエチレンテレフタレートである、請求項4記載の二軸延伸フィルム。
【請求項6】
ポリカーボネートの粘度平均分子量が15000〜25000である、請求項4記載の二軸延伸フィルム。
【請求項7】
フィルムのヘーズが10%以下である、請求項1記載の二軸延伸フィルム。
【請求項8】
ポリエステルとポリカーボネートを190〜250℃の温度で溶融混練する溶融混練工程、および溶融混練されたポリマーをフィルム状に二軸延伸する二軸延伸工程を含む製造方法により製造される、請求項1記載の二軸延伸フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2006−212860(P2006−212860A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−26384(P2005−26384)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】