説明

二軸延伸プロピレン系重合体積層フィルム及びその製造方法

【課題】 プロピレン系重合体とポリグリコール酸とを用いて、共押出しして得た二軸延
伸プロピレン系重合体積層シートならびにその製造方法を提供する。
【解決手段】 二軸延伸ポリグリコール酸フィルムの少なくとも片面に、変性プロピレン
系重合体層を介して、融点が110〜150℃のプロピレン・α―オレフィンランダム共
重合体から得られるニ軸延伸プロピレン系重合体フィルムが積層されてなる二軸延伸プロ
ピレン系重合体積層フィルムならびに該積層フィルムを特定の延伸条件で製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素バリア性に優れ、透明性、層間接着強度、剛性及び収縮性を有する二軸
延伸プロピレン系重合体積層フィルムに関するものであり、より詳しくは、酸素バリア層
として二軸延伸ポリグリコール酸フィルムを備えた二軸延伸プロピレン系重合体積層フィ
ルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品等の包装用として用いられる包装用フィルムは、内容物の視認性や美観な
どから透明性が必要とされると共に、内容物の酸化などを防止するため、ガスバリア性が
必要とされる。
透明ガスバリア性フィルムとしては、二軸延伸ポリエステルフィルムや二軸延伸ポリプ
ロピレンフィルムのような熱可塑性樹脂フィルムの表面に、ポリ塩化ビニリデン、ポリビ
ニルアルコールやエチレン−ビニルアルコール共重合体などのガスバリア性に優れた樹脂
をコーティングあるいはラミネートしたフィルムが知られている。しかし、このようなガ
スバリア性樹脂を積層したフィルムは、水蒸気、酸素などに対するガスバリア性が未だ十
分ではなく、高温でのガスバリア性が著しく低下する。またポリビニルアルコールでは低
湿度下でのガスバリア性は良好であるが、高湿度下では十分でない。エチレン−ビニルア
ルコール共重合体などは、湿度依存性が若干抑えられるが、ガスバリア性は十分でない。
【0003】
高湿度下での酸素バリア性を改良する方法の一つとして、熱可塑性樹脂フィルムに二軸
延伸したポリグリコール酸フィルム層を積層したガスバリヤー性複合フィルムが提案され
ている(例えば、特許文献1)。かかる特許文献1には、熱可塑性樹脂とポリグリコール
酸及び接着性樹脂を共押出しして得た複合シートを延伸ロール等によりMDに延伸し、必
要に応じてテンター等によりTDに延伸して複合フィルムを製造し得ることが開示されて
いる。しかしながら、熱可塑性樹脂として二軸延伸ポリプロピレンとして通常使用されて
いるプロピレン単独重合体を用いた場合は、プロピレン単独重合体の延伸温度とポリグリ
コール酸の延伸温度が異なることから、かかる方法で複合フィルムを得ようとしても困難
であることが分った。
【0004】
【特許文献1】特開平10−80990号公報(特許請求の範囲、第8頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、プロピレン系重合体とポリグリコール酸とを用いて、共押出しして得た積層
シートを二軸延伸する方法を開発することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、二軸延伸ポリグリコール酸フィルムの少なくとも片面に、変性プロピレン系
重合体層を介して、融点が110〜150℃のプロピレン・α―オレフィンランダム共重
合体から得られる二軸延伸プロピレン系重合体フィルムが積層されてなることを特徴とす
る二軸延伸プロピレン系重合体積層フィルムを提供するものである。
【0007】
また、本発明は、ポリグリコール酸、変性プロピレン系重合体及び融点が110〜15
0℃のプロピレン・α―オレフィンランダム共重合体を共押出し成形して得られた積層シ
ートを、延伸ロールを用いて60〜70℃の温度で縦方向に少なくとも1.5倍延伸する
際に、積層シートの延伸点を加熱し、次いで、テンターを用いて70〜100℃の温度で
横方向に少なくとも1.5倍延伸することを特徴とするニ軸延伸プロピレン系重合体積層
フィルムの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の二軸延伸プロピレン系重合体積層フィルムは、酸素バリア性に優れ、透明性、
層間接着強度、剛性、柔軟性及び収縮性を有する。
本発明の二軸延伸プロピレン系重合体積層フィルムの製造方法は、共押出し成形して得
られた積層シートを延伸することができるので、予め得られた二軸延伸ポリプロピレンフ
ィルムと二軸延伸ポリグリコール酸フィルムを、接着剤等を用いて貼り合せる方法に比べ
、工程が簡略化され、得られる二軸延伸プロピレン系重合体積層フィルムも層間接着強度
に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を構成する要件について説明する。
ポリグリコール酸
本発明に係るポリグリコール酸は、グリコール酸若しくはその誘導体を重合して得られ
る重合体(脂肪族ポリエステル)であって、下記式(1)
(−O−CH2 −CO−)・・・・・・・・・・(1)
で表される繰返し単位を有する重合体であり、通常、式(1)で表される繰返し単位を6
0重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上含む重
合体である。
本発明に係るポリグリコール酸の分子量(溶融粘度)は、フィルム形成能がある限りと
くに限定はされないが、通常、(Tm+20℃)の温度(すなわち、通常の溶融加工温度
に相当する温度)及び剪断速度100/秒において測定した溶融粘度η* が、500〜1
00,000Pa・s、より好ましくは、700〜50,000Pa・s、さらに好まし
くは、800〜20,000Pa・sの範囲にある。溶融粘度η* が500Pa・s未満
の重合体は、フィルムに溶融成形する際に溶融体がドローダウンしたり、Tダイから溶融
押出したフィルムが冷却中に変形して溶融加工が困難であったり、あるいは、得られたフ
ィルムの強靭性が不十分となったりする虞がある。溶融粘度η* が100,000Pa・
sを超える重合体は、溶融加工に高い温度が必要となり、加工時にポリグリコール酸が熱
劣化を起こす虞がある。
本発明に係るポリグリコール酸は、結晶性の重合体であり、通常、融点が150℃以上
、より好ましくは180〜225℃、さらに好ましくは210〜225℃の範囲にある。
また、融解熱量(ΔHm)は、通常、20J/g以上、より好ましくは、30〜75J/
g以上、さらに好ましくは、40〜75J/gの範囲にある。融点またはΔHmが低い重
合体は、ガスバリヤー性、耐熱性、機械的強度などが不十分となる虞がある。
【0010】
本発明に係るポリグリコール酸は、共重合成分として、例えば、シュウ酸エチレン(す
なわち、1,4−ジオキサン−2,3−ジオン)、ラクチド、ラクトン類(例えば、β−
プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、ピバロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バ
レロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等)、トリメチレ
ンカーボネート及び1,3−ジオキサンなどの環状化合物;乳酸、3−ヒドロキシプロパ
ン酸、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、6−ヒドロキシカプロン酸な
どのヒドロキシカルボン酸またはそのアルキルエステル;エチレングリコール、トリメチ
レングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール等の脂肪族
または脂環式ジオール;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸また
はそのアルキルエステル等の1種または2種以上を含んでいてもよい。
ポリグリコール酸としてかかる共重合成分を含むことにより、ポリグリコール酸単独重
合体の融点を下げることができる。ポリグリコール酸の融点を下げることにより、成形温
度も下げることができるので、成形加工時の熱分解を低減することができる。また、共重
合によりポリグリコール酸の結晶化速度を制御して、押出加工性や延伸加工性を改良する
こともできる。
【0011】
本発明に係るポリグリコール酸は種々公知の方法で製造し得る。具体的な重合方法は、
例えば、特開平10−80990号公報、特開平11−116666号公報に記載されて
いる。
【0012】
変性プロピレン系重合体
本発明に係る変性プロピレン系重合体は、プロピレンの単独重合体、または主体量のプ
ロピレンに、例えば10モル%以下のエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル
−1−ペンテン、1−オクテンなどのα−オレフィンを共重合した共重合体に、極性基を
付与して変性したものである。極性基を付与する方法は、とくに限られるものではないが
、不飽和カルボン酸もしくはその誘導体をグラフト変性したものが前記ポリグリコール酸
からなるフィルムと後述のプロピレン・α―オレフィンランダム共重合体からなるフィル
ムとの接着性の改善効果に優れている点で好ましい。
不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、テトラヒドロフタ
ル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、エンドシス−ビシクロ
[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸(商標名:「ナジック酸」)な
どが挙げられ、その誘導体としては、酸ハライド、アミド、イミド、無水物、エステルな
どが挙げられる。
かかる誘導体の具体例としては、例えば、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコ
ン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエート等が挙げられ
、なかでも、不飽和ジカルボン酸またはその無水物が好適であり、特にマレイン酸、ナジ
ック酸またはこれらの酸無水物が好ましく用いられる。不飽和カルボン酸もしくはその誘
導体でグラフト変性された変性プロピレン重合体は、好ましくは、変性前のプロピレン系
重合体に基づいて0.05ないし15重量%、より好ましくは0.1ないし10重量%の
不飽和カルボン酸もしくはその誘導体でグラフト変性されている。
変性プロピレン系重合体は、好ましくはメルトフローレート(MFR、230℃)が0
.1ないし50g/10分、より好ましくは0.3ないし30g/10分である。また、
変性プロピレン重合体は、不飽和カルボン酸もしくはその誘導体のグラフト量が前記範囲
内にある限り、不飽和カルボン酸もしくはその誘導体で変性された変性プロピレン系重合
体と未変性のプロピレン系重合体との組成物であってもよい。
【0013】
プロピレン・α―オレフィンランダム共重合体
本発明に係るプロピレン・α―オレフィンランダム共重合体は、融点が110〜150
℃、好ましくは110〜140℃の範囲にあるプロピレンとα―オレフィンとのランダム
共重合体である。融点が150℃を超える重合体を用いた場合は、後述のポリグリコール
酸と共押出しして得られる積層シートを延伸することができず、一方、110℃未満の重
合体を用いた場合は、剛性が低くなり過ぎ、所謂、腰のないフィルムとなり、印刷、ラミ
ネート加工などの二次加工適性に劣る虞がある。また、得られる二軸延伸フィルムを重ね
た場合にフィルム同士がブロッキングする虞もある。
本発明に係るプロピレン・α―オレフィンランダム共重合体は、プロピレンを主成分と
する結晶性の重合体で、通常、α―オレフィンを3〜10モル%含む重合体である。α―
オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル・1−ペンテン
、1−オクテン等が例示できる。具体的な共重合体としては、プロピレン・エチレンラン
ダム共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体、プロピレン・1−
ブテンランダム共重合体等が挙げられる。本発明に係るプロピレン・α−オレフィン共重
合体のMFR(メルトフローレート;ASTM D−1238 荷重2160g、温度2
30℃)は二軸延伸積層フィルムとすることができる限り特に限定はされないが、通常0
.5〜15g/10分、好ましくは2〜10g/10分の範囲にある。
【0014】
本発明に係る前記ポリグリコール酸、変性プロピレン系重合体及びプロピレン・α−オ
レフィンランダム共重合体には、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリッ
プ剤、核剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機または有機の
充填剤等の通常熱可塑性樹脂に用いる各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加
しておいてもよい。
【0015】
二軸延伸プロピレン系重合体積層フィルム
本発明の二軸延伸プロピレン系重合体積層フィルムは、前記ポリグリコール酸からなる
二軸延伸フィルムの少なくとも片面、好ましくは両面に、前記変性プロピレン系重合体か
らなる接着層を介して、融点が110〜150℃のプロピレン・α―オレフィンランダム
共重合体から得られる二軸延伸プロピレン系重合体フィルムが積層されてなる二軸延伸プ
ロピレン系重合体積層フィルムである。
本発明の二軸延伸プロピレン系重合体積層フィルムの厚さは用途に応じて適宜決められ
るものであり、特に限定はされないが、通常、二軸延伸ポリグリコール酸フィルムが2〜
20μm、好ましくは2〜15μm、変性プロピレン系重合体層が2〜30μm、好まし
くは5〜20μm及び二軸延伸プロピレン系重合体フィルムが5〜50μm、好ましくは
5〜20μmの範囲にある。
【0016】
本発明の二軸延伸プロピレン系重合体積層フィルムは必要に応じて片面あるいは両面を
コロナ処理、火炎処理等の表面処理をしてもよい。また、本発明の二軸延伸プロピレン系
重合体積層フィルムは、更に用途により、低温ヒートシール性を付与するために、高圧法
低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、結晶性あるいは低結晶性のエチレンと炭
素数3〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体あるいはプロピレンとエチレンもし
くは炭素数4以上のα−オレフィンとのランダム共重合体、ポリブテン、エチレン・酢酸
ビニル共重合体等の低融点のポリマーを単独あるいはそれらの組成物を二軸延伸プロピレ
ン系重合体フィルム層あるいは二軸延伸ポリグリコール酸フィルム上に積層してもよい。
また、更にガスバリア性を改良するために、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリ
アミド、ポリエステル、塩化ビニリデン系重合体等を押出しコーティング、フィルムラミ
ネート等で積層してもよいし、金属あるいはその酸化物、シリカ等を蒸着してもよい。勿
論、他の物質との接着性を増すために、延伸フィルムの表面をイミン、ウレタン等の接着
剤でアンカー処理してもよいし、無水マレイン酸変性ポリオレフィンを積層してもよい。
【0017】
二軸延伸プロピレン系重合体積層フィルムの製造方法
本発明の二軸延伸プロピレン系重合体積層フィルムは、前記ポリグリコール酸、前記変
性プロピレン系重合体及び前記融点が110〜150℃のプロピレン・α―オレフィンラ
ンダム共重合体を共押出し成形して得られた積層シートを、延伸ロールを用いて60〜7
0℃、好ましくは65〜70℃の温度で縦方向(MD)に少なくとも1.5倍、好ましく
は2〜4倍延伸する際に、積層シートの延伸点を赤外線ヒーターにより加熱し、次いで、
テンターを用いて70〜100℃、好ましくは70〜95℃の温度で横方向(TD)に少
なくとも1.5倍、好ましくは3〜10倍延伸することにより製造することが出来る。
融点が150℃を超えるプロピレン・α―オレフィンランダム共重合体あるいはプロピ
レン単独重合体を用いた場合は、共押出し成形して得られた積層シートを縦方向に延伸す
る際の温度が80℃未満では積層シートが軟化せず延伸が困難であり、延伸温度を80℃
以上にした場合は、縦方向には延伸できるが、縦方向に延伸した際に、ポリグリコール酸
層が結晶化し、横方向への延伸ができない虞がある。
一方、融点が110℃未満のプロピレン・α―オレフィンランダム共重合体は、横方向
に延伸した後、熱固定する際に、得られる二軸延伸プロピレン系重合体積層フィルムの外
観は損なわれる虞があり、またロール状に巻き取った二軸延伸プロピレン系重合体積層フ
ィルムがブロッキングを起こしたり、場合によっては二軸延伸プロピレン系重合体積層フ
ィルム同士が融着してしまう虞がある。
共押出し成形して得られた積層シートを縦方向に延伸する際の延伸温度が60℃未満で
は積層シートが均一に延伸されず、横方向に延伸する際にポリグリコール酸層が割れ、良
好な二軸延伸プロピレン系重合体積層フィルムを得ることができない虞がある。これは、
70℃を超えた温度で縦延伸した際にポリグリコール酸の結晶化が進み、横延伸でその結
晶を引き延ばすことができずポリグリコール酸層が割れ、均一な横延伸が行えなくなる為
である。
本発明の二軸延伸プロピレン系重合体積層フィルムの製造方法において最も重要な点は
、共押出し成形して得られた積層シートを縦方向に延伸する際に、積層シートの延伸点を
加熱するところにある。延伸点を加熱するには、補助加熱手段、例えば、抵抗加熱、熱風
加熱、誘導加熱、赤外線加熱等の加熱手段を用いることができる。これら補助加熱手段と
しては、赤外線、とくに遠赤外線が、本発明に係わるプロピレン系重合体、ポリグリコー
ル酸等の高分子化合物を、効率よく、しかも瞬時に加熱することができるので、最も好ま
しい。
積層シートを縦延伸する際に、延伸ロールの温度を上記範囲に調節しても、積層シート
の延伸点を赤外線ヒーター等で加熱を行わない場合は、積層シートが縦方向に均一に延伸
されず、また,フィルムが白化し外観も悪くなり、横方向に延伸する際に積層シートが破
断してしまう虞がある。
縦延伸した積層シートを横延伸する際に,横延伸の温度が70℃未満では,積層シート
が破断、もしくは、テンターのチャックから外れてしまい場合があり,均一な横延伸が行
えない虞がある。一方、横延伸の温度が100℃を越えると、ポリグリコール酸の結晶化
が進み均一な横延伸が行えなくなる。
<実施例>
【0018】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限
りこれらの実施例に制約されるものではない。
【0019】
実施例及び比較例における物性値等は、以下の評価方法により求めた。
<評価方法>
(1)引張特性:
二軸延伸プロピレン系重合体積層フィルムからMD方向及びTD方向に短冊状の試験片
(長さ150mm、幅15mm)を採取して、チャック間距離100mmで、引張り試験
機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機 RTC―1225)を用いて引張り試験
を行い、破断点における強度(応力)(MPa)、伸び(%)及びヤング率(MPa)を
求めた。なお、伸び(%)はチャック間距離の変化とした。
(2)酸素透過度:
モコン社製 OX−TRAN2/20を用い、JIS K 7126に準じ、温度20
℃、湿度80%RHの条件で測定した。
(3)加熱収縮率:
二軸延伸プロピレン系重合体積層フィルムから長さ:120mm、幅:15mmのサン
プルを切出し、100mm間隔で標線を記入した。次いで、当該フィルムを所定の温度(
80℃、100℃、120℃)に設定したオーブン中に15分間放置してから取り出し、
室温に15分以上放置した後、標線間の長さ(L:mm)を測定した。〔(100−L)
/100〕×100(%)の値を、加熱収縮率(%)とした。
(4)融解特性:
JIS K7121及びK7122に準拠し、DSC(示差走査熱量計)を用い以下の
条件で求めた。
試料約5mgを精秤し、アルミパンに詰め、DSCとして、TAインスツルメント社製
Q100を用い、50ml/分の窒素雰囲気下、20℃から10℃/分の速度で250℃
まで昇温し、一旦融解させた後、250℃に10分間維持し、10℃/分の速度で20℃
まで降温して結晶化させた後、10℃に5分間維持した後、再度10℃/分の速度で25
0℃まで昇温して熱融解曲線を得、得られた熱融解曲線から試料の融解熱量及び融点(吸
熱ピーク温度)を求めた。
【0020】
実施例及び比較例で用いた重合体を以下に示す。
(1)ポリグリコール酸(PGA):
溶融粘度η* ;1,000〜1,500Pa ・sec 、融点;220℃、融解熱量;64
/g。
(2)無水マレイン酸グラフト変性プロピレン重合体(MAH−PP):
融点:90℃、MFR:1.1g/10分。
(3)プロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体(PEB−1):
エチレン含有量;3.5モル%、1−ブテン含有量;2.5モル%、融点;128℃、
MFR;7g/10分。
(4)プロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体(PEB−2):
エチレン含有量;3.3モル%、1−ブテン含有量;1.5モル%、融点;140℃、
MFR;7g/10分。
(5)プロピレン単独重合体(PP):
融点;158℃、MFR;7g/10分。
【0021】
実施例1
<積層シートの製造>
先端にT−ダイを具備した40mmφの三種五層1軸押出機を用い、PEB−1/MA
H−PP/PGA/MAH−PP/PEB−1を65/65/60/65/65の厚み比
率で押出し、30℃のキャスティングロールで急冷し、厚さ320μmの五層の積層シー
トを得た。なお、PEB−1、MAH−PP及びPGAの押出温度はそれぞれ230℃、
230℃、270℃とした。
<二軸延伸プロピレン系重合体積層フィルムの製造>
得られた五層の積層シートを60℃に加熱した延伸ロールを用い、縦方向に3倍延伸し
た。なお、縦延伸する際に、低速ロールと高速ロール間に設置した赤外線ヒーター(W.
C.Heraeus社製:2400W/200V)を用いて積層シートの延伸点を加熱し
た。ついで、縦延伸した積層シートをテンター式の横延伸装置により横方向に80℃で3
.5倍延伸し、3秒間、160℃で熱固定して巻き取り、二軸延伸プロピレン系重合体積
層フィルムを得た。
得られた二軸延伸プロピレン系重合体積層フィルムの評価結果を表1に示す。
【0022】
実施例2
実施例1のPEB−1に代えてPEB−2を用いる以外は実施例1と同様に行い、二軸
延伸プロピレン系重合体積層フィルムを得た。
得られた二軸延伸プロピレン系重合体積層フィルムの評価結果を表1に示す。
【0023】
比較例1
実施例1で得られた積層シートを、延伸ロールを用いて縦方向に延伸する際に赤外線ヒ
ーターによる加熱を行わなかったところ、縦延伸時に積層シートが白化し、均一な延伸が
行えず、横延伸が出来なかった。
【0024】
比較例2
実施例1で得られた積層シートを、延伸ロールを用いて縦方向に延伸する際に、延伸温
度(ロール温度)を80℃にして延伸を行い、次いで、横延伸を行ったところ、PGA層
がひび割れ、均一な延伸ができなかった。
【0025】
比較例3
実施例1で用いたPEB−1に代えてPPを用いる以外は実施例1と同様に行った。し
かしながら、延伸点を赤外線ヒーターで加熱しながら80℃で縦方向に3.5倍にロール
延伸した五層の積層シートを、テンターで横方向の延伸を80℃で試みたが、PGAが完
全に結晶化し、延伸できなかった。ついで、テンターでの延伸温度を190℃に上げて、
延伸を試みたが、横延伸はできなかった。
【0026】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の二軸延伸プロピレン系重合体積層フィルムは、酸素バリア性に優れ、透明性、
層間接着強度、剛性、柔軟性及び収縮性を有するので、食品、医薬品をはじめ、種々の被
包装物の包装用フィルムとして好適に用い得る。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
二軸延伸ポリグリコール酸フィルムの少なくとも片面に、変性プロピレン系重合体層を
介して、融点が110〜150℃のプロピレン・α―オレフィンランダム共重合体から得
られる二軸延伸プロピレン系重合体フィルムが積層されてなることを特徴とする二軸延伸
プロピレン系重合体積層フィルム。
【請求項2】
二軸延伸ポリグリコール酸フィルムの両面に、変性プロピレン系重合体層を介して、二
軸延伸プロピレン系重合体フィルムが積層されてなる請求項1記載の二軸延伸プロピレン
系重合体積層フィルム。
【請求項3】
二軸延伸ポリグリコール酸フィルム、変性プロピレン系重合体層及び二軸延伸プロピレ
ン系重合体フィルムとが、共押出し成形法により得られた積層シートを二軸延伸してなる
請求項1または2記載の二軸延伸プロピレン系重合体積層フィルム。
【請求項4】
変性プロピレン系重合体が、不飽和カルボン酸もしくはその誘導体をグラフト変性した
ものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の二軸延伸プロピレン系重合体積層フィル
ム。
【請求項5】
ポリグリコール酸、変性プロピレン系重合体及び融点が110〜150℃のプロピレン
・α―オレフィンランダム共重合体を共押出し成形して得られた積層シートを、延伸ロー
ルを用いて60〜70℃の温度で縦方向に少なくとも1.5倍延伸する際に、積層シート
の延伸点を加熱し、次いで、テンターを用いて70〜100℃の温度で横方向に少なくと
も1.5倍延伸することを特徴とする二軸延伸プロピレン系重合体積層フィルムの製造方
法。
【請求項6】
変性プロピレン系重合体が、不飽和カルボン酸もしくはその誘導体をグラフト変性した
ものである請求項5記載の二軸延伸プロピレン系重合体積層フィルムの製造方法。
【請求項7】
延伸点の加熱を赤外線ヒーターにより行う請求項5記載の二軸延伸プロピレン系重合体
積層フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2006−130846(P2006−130846A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−324269(P2004−324269)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】