説明

二軸延伸ポリアミド積層フィルム

【課題】適度な層間接着強度を備えており、且つ耐衝撃強度や引張強度等の物理的強度特性とシーラントフィルムとの十分な接着強度が得られる二軸延伸ポリアミド積層フィルムを提供する。
【解決手段】ポリアミドA/ポリアミドB/ポリアミドC/ポリアミドB/ポリアミドAの順で積層され、縦方向、横方向ともに2〜5倍延伸された後の95℃5分の熱水収縮率が縦方向、横方向ともに0.5〜5.0%となるよう熱固定されたことを特徴とする二軸延伸ポリアミド積層フィルム。ポリアミドA:ポリアミド6を70〜99重量%、ポリアミド6とポリアミド66の共重合体であってポリアミド66比率が10〜25重量%であるポリアミド6−66を30〜1重量%含有する混合層。ポリアミドB:ポリアミド6を50〜95重量%、芳香族ポリアミドを50〜5重量%含有する混合層。ポリアミドC:芳香族ポリアミドを主に含有する層。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品や医療品などの包装用途、特に100℃を超える蒸気殺菌用包材として有用な二軸延伸ポリアミド積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリアミド6、ポリメタキシリレンアジパミド等のポリアミドからなる積層フィルムは、ポリアミド6の優れた機械的特性と、ポリメタキシリレンアジパミドの優れた酸素ガスバリア性を併せ持つ包装材料として利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、脂肪族ポリアミド層/(脂肪族ポリアミド+芳香族ポリアミド)層/芳香族ポリアミド層/(脂肪族ポリアミド+芳香族ポリアミド)層/脂肪族ポリアミド層の構成が提案されている。
特許文献2は、(結晶性ポリアミド+非晶性ポリアミド)/(結晶性ポリアミド+ポリアミド共重合体)/バリア層/(結晶性ポリアミド+ポリアミド共重合体)/(結晶性ポリアミド+非晶性ポリアミド)の構成が提案されている。
特許文献3は、(ポリアミド6+ポリアミド6−66+芳香族ポリアミド)層/バリア層/(ポリアミド6層+ポリアミド6−66+芳香族ポリアミド)の3層構成のポリアミド系多層フィルムが提案されている。
特許文献4は、(ポリアミド6+結晶性芳香族ポリアミド)/(ポリアミド6+ポリアミド6−66+芳香族ポリアミド)/エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物/(ポリアミド6+ポリアミド6−66+芳香族ポリアミド)/(ポリアミド6+結晶性芳香族ポリアミド)の構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−212389号公報
【特許文献2】特開2005−288923号公報
【特許文献3】特開2008−94016号公報
【特許文献4】特開2008−188774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記文献においては、耐衝撃強度や引張強度等の物理的強度を十分に有し、且つ無延伸ポリプロピレン(以下、CPP)等シーラントフィルムとのラミネート強度を十分に有する積層フィルムの提案はなかった。従来、蒸気殺菌用途のものであってCPP等とのラミネートをする包装用途の積層フィルムは、ラミネート強度を重視して熱固定を十分に行うため、衝撃強度が不十分であった。一方、衝撃強度を重視する場合は、十分な熱固定が行われず、ラミネート強度が不十分であった。
【0006】
そこで、本発明においては、耐衝撃強度や引張強度等の物理的強度と、CPP等のシーラントフィルムとの十分なラミネート強度とを有する二軸延伸ポリアミド積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、前記課題が以下の発明(1)〜(9)によって解決されることを見出した。
(1)ポリアミドA/ポリアミドB/ポリアミドC/ポリアミドB/ポリアミドAの順で積層され、縦方向、横方向ともに2〜5倍延伸された後、95℃5分の熱水収縮率が縦方向、横方向ともに0.5〜5.0%となるよう熱固定したことを特徴とする二軸延伸ポリアミド積層フィルム。
ポリアミドA:ポリアミド6を70〜99重量%、ポリアミド6とポリアミド66の共重合体であってポリアミド66比率が10〜25重量%であるポリアミド6−66を30〜1重量%含有する混合層
ポリアミドB:ポリアミド6を50〜95重量%、芳香族ポリアミドを50〜5重量%含有する混合層
ポリアミドC:芳香族ポリアミドを主に含有する層
(2)ポリアミドA層の厚みが2〜5μmである前記(1)に記載の二軸延伸ポリアミド積層フィルム。
(3)ポリアミドB/ポリアミドC間の層間剥離強度が200〜500gf/15mm幅である前記(1)又は(2)に記載の二軸延伸ポリアミド積層フィルム。
(4)ポリアミドAにヒンダードフェノール系酸化防止剤を0.01〜0.5重量%含有する(1)〜(3)のいずれか1つに記載の二軸延伸ポリアミド積層フィルム。
(5)ヒンダードフェノール系酸化防止剤が、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル)−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド]である(1)〜(4)のいずれか1つに記載の二軸延伸ポリアミド積層フィルム。
(6)ポリアミドB及びポリアミドCに含まれる芳香族ポリアミドがポリメタキシリレンアジパミドである(1)〜(5)のいずれか1つに記載の二軸延伸ポリアミド積層フィルム。
(7)(23℃50%RH条件下での)パンクチャー衝撃強度が1.2J/枚以上である(1)〜(6)のいずれか1つに記載の二軸延伸ポリアミド積層フィルム。
(8)前記(1)〜(7)のいずれか1つに記載の二軸延伸ポリアミド積層フィルムに無延伸ポリプロピレンフィルムをドライラミネートしたラミネート体において、ラミネート強度が500〜1500gf/15mm幅であることを特徴とする二軸延伸ポリアミド積層フィルムラミネート体。
(9)105℃〜135℃の蒸気殺菌用包材として使用される前記(8)に記載の二軸延伸ポリアミド積層フィルムラミネート体。
【発明の効果】
【0008】
本発明の二軸延伸ポリアミド積層フィルムは、衝撃強度や引張強度等の物理的強度を有し、且つCPP等のシーラントフィルムとの十分なラミネート強度を備えることができる。また、適度な酸素バリア性と層間接着強度を有し、食品や医療品などの包装用途に用いることができる。
【0009】
また、本発明の二軸延伸ポリアミド積層フィルムラミネート体は、上記の積層フィルムが備える優れた衝撃強度及びシーラントフィルムとの十分な接着強度によって、100℃以上の蒸気殺菌においてもフィルム強度が十分に保つことができる。また、シール部でのドライラミネート部の剥がれや二軸延伸ポリアミド積層フィルムの層間の剥がれによる破袋を防ぐことが可能になるので、内容物を安全に保存することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の二軸延伸ポリアミド積層フィルム(以下「積層フィルム」ということがある)を詳細に説明する。
本発明の積層フィルムは、ポリアミドA/ポリアミドB/ポリアミドC/ポリアミドB/ポリアミドAの順で積層される。このように、各層はポリアミドCを中心として対称構成であるため、カールが無いフィルムを得ることができる。
【0011】
また、本発明の積層フィルムは、上述のように積層され、縦方向、横方向ともに2〜5倍延伸された後の95℃5分の熱水収縮率が縦方向、横方向ともに0.5〜5.0%となるよう熱固定されたフィルムである。これにより、ボイルあるいはレトルト処理を行う場合であっても熱収縮しにくく、物理的特性や外観を損ないにくい。ここで縦方向、横方向の延伸倍率は好ましくは2.2〜4.5倍、さらに好ましくは2.5〜4.0倍である。
【0012】
本発明の積層フィルムの厚さは8〜25μmであることが好ましい。積層フィルムの強度を考慮すると8μm以上であることが好ましく、コストを考慮すると25μm以下であることが好ましいためである。この観点から、厚みはより好ましくは10〜22μm、更に好ましくは12〜20μmである。
【0013】
本発明の積層フィルムのポリアミドB/ポリアミドC間の層間剥離強度は200〜500gf/15mm幅であることが好ましく、より好ましくは230〜450gf/15mm幅、更に好ましくは250〜400gf/15mm幅である。200gf/15mm幅未満だとシーラント層を貼り合わせた後、袋状にして内容物を詰め使用したとき、ボイル・レトルト時や輸送時に層間で剥離して破袋の問題が発生する可能性があり、好ましくない。逆に500gf/15mm幅を超えるほどの層間接着強度がある場合には、ポリアミドA/ポリアミドB間の接着強度がボイル・レトルト時や輸送時に層間で剥離して破袋の問題が発生する可能性があり、好ましくない。一般にポリアミドA層単独では薄いため、層間剥離強度測定時にポリアミドA層が切れてしまうため測定が困難である。そのため、ポリアミドB/ポリアミドC間の強度を目安とする。
【0014】
本発明の積層フィルムは、パンクチャー衝撃強度が1.2J/枚以上であることが好ましい。ラミネート強度を重視して配向を抑えると、パンクチャー衝撃強度が弱くなるが、パンクチャー衝撃強度が1.2J/枚未満であると、二軸延伸ポリアミド積層フィルムに求められる強度が不十分となり好ましくない。また、前記パンクチャー衝撃強度は、より好ましくは1.3J/枚以上、さらに好ましくは1.4J/枚以上、最も好ましくは1.5J/枚以上である。
【0015】
前記ポリアミドAは、ポリアミド6を70〜99重量%、ポリアミド6とポリアミド66の共重合体であってポリアミド66比率が10〜25重量%であるポリアミド6−66を30〜1重量%含有する混合層である。本発明の積層フィルムは、表層であるポリアミドAの主原料を、衝撃強度に優れるポリアミド6とし、縦方向、横方向の二軸方向に延伸することにより、薄くても強度に優れるフィルムとすることができる。また、前記ポリアミドAにポリアミド6−66を含有することにより、フィルムの衝撃強度を保ちつつ無延伸ポリプロピレン(以下CPP)とのドライラミネート強度を改善することができる。
【0016】
本発明のポリアミドAにおいて、前記ポリアミド6の配合率は、70〜99重量%、好ましくは75〜97重量%、さらに好ましくは80〜95重量%である。前記ポリアミドAにおけるポリアミド6の含有量が70%未満であると積層フィルムの衝撃強度が不十分となる。また、ポリアミド6は強靭性が高く、安価であることから二軸延伸ポリアミドフィルムに使用されているが、前記ポリアミドAがポリアミド6のみで構成されている場合、強いラミネート強度を得るためには熱固定温度を高くし、ポリアミド6の面配向度を緩和させる必要があり、このことがフィルム強度の低下につながっていた。そこで、本発明においては、前記ポリアミドAにポリアミド6より融点が低く、ポリアミド6との相溶性の非常に良好なポリアミド6−66共重合ナイロンを30〜1重量%配合することにより、熱固定温度を下げてもポリアミド6の配向を緩和させることなくポリアミドA中に分散されたポリアミド6−66の配向が緩和されるため、ポリアミドAの面配向度が低下し、ラミネート強度を強く保持することができるようになる。
【0017】
本発明のポリアミドAにおいて、前記ポリアミド6−66の配合比率は、30〜1重量%、好ましくは25〜3重量%、さらに好ましくは20〜5重量%である。前記ポリアミドAにおけるポリアミド6−66の配合比率が上記特定値を越えると、熱固定後の配向が効かない部分が多くなりすぎ、衝撃強度が低下し好ましくない。逆に1重量%未満では面配向緩和の効果が低く好ましくない。
【0018】
前記ポリアミド6−66中のポリアミド66共重合比率は、10〜25重量%であることが必要であり、好ましくは12〜23重量%、さらに好ましくは14〜21重量%である。前記ポリアミド6−66中のポリアミド66共重合比率が10%未満であると、ポリアミド6に比べて融点が十分低くならず、面配向緩和の効果が低くなり好ましくない。逆に前記ポリアミド6−66中のポリアミド66共重合比率が25重量%を越えると融点が低くなりすぎ、ロールでの縦延伸時やシーラントとラミネートした後のヒートシール時にべたつきが発生しやすくなり好ましくない。特に本発明の積層フィルムは100℃以上の蒸気殺菌用に適したフィルムであるため、耐熱性の高いCPP等の融点の高いフィルムをシーラントとする場合が多く、ヒートシール温度が高くたるためべたつきも発生しやすくなる。
【0019】
前記ポリアミドAには、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を好ましくは0.01〜0.5重量%、より好ましくは0.03〜0.2重量%含有する。前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤の前記ポリアミドA層における含有量が0.01重量%未満では、耐熱水性処理した二軸延伸ポリアミド積層フィルムが酸化により劣化して、引張破断強度が極端に低下する場合がある。他方、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量が0.5重量%を越えると前記ポリアミドA層の表面に前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤がブリードアウトし、印刷インキや接着剤の乗りが悪くなるおそれがある。また、シーラントフィルム等、他のプラスチックフィルムと接着剤を介して積層して使用する場合、酸化防止剤がブリードアウトすると、接着剤と積層フィルムとの界面で剥離が起こるので好ましくない。
【0020】
前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含有するポリアミドAを調製する方法としては、ポリアミドの重合開始時、重合中または重合後に該酸化防止剤を添加する方法、それぞれを所定の割合でドライブレンドする方法のいずれであってもよい。
【0021】
尚、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤の添加の効果は、酸素存在下での上記殺菌前後のTD方向の引張強度を測定することによって確認することができる。前記引張強度保持率は70%以上であることが好ましく、より好ましくは80%、さらに好ましくは90%以上である。
【0022】
前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、通常公知のポリアミド系樹脂に好適に使用できるものであれば特定されなく、具体的には、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル)−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド]、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジル)ベンゼン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニリレン−ジ−フォスフォナイト、トリエチレングリコール−ビス−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチル−フェニル)プロピオネート等が挙げられ、特にN,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル)−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド]がポリアミドの酸化劣化防止効果が高く好ましい。
【0023】
前記ポリアミドAには、テンター耳などの主にリサイクル起因のポリアミドB、Cに含まれる芳香族ポリアミドや柔軟改質剤を少量含んでも良い。但し、前記ポリアミドA中のポリアミド6及びポリアミド6−66以外の樹脂成分の含有量は、ポリアミドA層の20重量%以下とすることが好ましく、より好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下とする。
【0024】
本発明の積層フィルムは、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を0.01〜0.5重量%含有するポリアミドA層が少なくとも一方の外層を形成、前記ポリアミドA層の厚みが2〜5μmであることが好ましい。前記ポリアミドA層の厚みが2μm未満ではフィルム全体の酸化防止効果が不十分となり、蒸気殺菌時等のポリアミド6の酸化劣化によりフィルム強度が低下することがあるため好ましくない。逆に前記ポリアミドA層の厚みが5μmを越えると、高価な酸化防止剤添加層を多く使用することとなり全体として高価なフィルムとなってしまうため好ましくない。尚、前記ポリアミドA層の厚みはより好ましくは2.2〜4.8μm、さらに好ましくは2.5〜4.5μmである。
【0025】
前記ポリアミドBは、ポリアミド6を50〜95重量%、芳香族ポリアミドを50〜5重量%含有する混合層である。これは、前記ポリアミドAの主要成分であるポリアミド6と前記ポリアミドCの主要成分である芳香族ポリアミドとを配合する構成であって、強度層である前記ポリアミドAとガスバリア層である前記ポリアミドCは、共押出して二軸延伸を行うと十分な層間接着強度を得ることができないため、接着層として使用することが必要なためである。
【0026】
前記ポリアミドBに含まれる芳香族ポリアミドは、50〜5重量%であることが必要であるが、好ましくは40〜7重量%、より好ましくは30〜8重量%、さらに好ましくは25〜10重量%である。5重量%以下だとポリアミドCとの層間接着強度が不十分となり、逆に50重量%以上だとポリアミドAとの層間接着強度が不十分となるばかりか、芳香族ポリアミド成分が増えることにより、耐屈曲ピンホール性が低下するため好ましくない。尚、前記ポリアミドBに含まれる芳香族ポリアミドの比率は、ポリアミドCとの層間接着強度が問題ない範囲で、極力少なくすることが、耐屈曲ピンホール性等の強度の点で好ましい。
【0027】
前記ポリアミドBには、テンター耳などの主にリサイクル起因のポリアミドA、Cに含まれるポリアミド6−66や柔軟改質剤を少量含んでも良い。但し、前記ポリアミドB中のポリアミド6及び芳香族ポリアミド以外の樹脂成分の含有量は、ポリアミドB層の20重量%以下とすることが好ましいく、より好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下とする。
【0028】
前記ポリアミドCは芳香族ポリアミドを主に含有する層であって、前記芳香族ポリアミドはポリアミドC中に50〜100重量%含有することが好ましい。前記芳香族ポリアミドは、芳香族環を有するポリアミドであれば特に制限されないが、キシリレンジアミンと炭素数が6〜12のα,ω脂肪族ジカルボン酸とからなるポリアミド構成単位を分子鎖中に70モル%以上含有するものが好適に用いられる。前記芳香族ポリアミドの構成単位として、キシリレンジアミンと炭素数が6〜12のα,ω脂肪族ジカルボン酸を分子鎖中に70モル%以上含有させることにより高いガスバリア性が得られるためである。
【0029】
上記のキシリレンジアミンと炭素数が6〜12のα,ω脂肪族ジカルボン酸とからなるポリアミド構成成分の具体例としては、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリメタキシリレンピメラミド、ポリメタキシリレンアゼラミド、ポリパラキシリレンアゼラミド、ポリパラキシリレンデカナミドのような単独重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアジパミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンピメラミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアゼラミド共重合体およびメタキシリレン/パラキシリレンセバカミド共重合体のような共重合体が挙げられる。
【0030】
上記以外の芳香族ポリアミド構成成分としては、ジアミン類とジカルボン酸類とのナイロン塩およびε−カプロラクタムのようなラクタム類の開環重合物、ε−アミノカルボン酸のようなω−アミノカルボン酸類の自己重縮合物等が挙げられる。ナイロン塩の成分としてのジアミン類の具体例には、ヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンのような脂肪族ジアミン、ピペラジンビスプロピルアミン、ネオペンチルグリコールビスプロピルアミンのような異節環または異原子含有ジアミン等があり、また、ジカルボン酸類の具体例には、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸のような脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸のような芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のような環状脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0031】
本発明においては、前記ポリアミドCとして、特にポリメタキシリレンアジパミドを用いることが、ガスバリア性、延伸性、ポリアミド6との共押出適性、フィルム強度の面で優れるため最も好ましい。
【0032】
本発明の積層フィルムの各層中には耐屈曲ピンホール改質のために柔軟改質剤を添加することができる。前記柔軟改質剤としては、ポリオレフィン類、ポリアミドエラストマー類、ポリエステルエラストマー類などが挙げられる。
【0033】
前記ポリオレフィン類は、主鎖中にポリエチレン単位、ポリプロピレン単位を50質量%以上含むものであり、無水マレイン酸等でグラフト変性されたものも使用できる。また、前記ポリオレフィン類のポリエチレン単位、ポリプロピレン単位以外の構成単位としては、酢酸ビニル、あるいはこの部分けん化物、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、あるいはこれらの部分金属中和物(アイオノマー類)、ブテン等の1−アルケン類、アルカジエン類、スチレンなどが挙げられるが、これらの構成単位を複数含むものも使用できる。
【0034】
前記ポリアミドエラストマー類は、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド等のポリアミド系ブロック共重合体に属するものである。アミド成分としてはポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド12等が例示され、エーテル成分としては、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシ−1,2−プロピレングリコール等が例示されるが、ポリアミドとの相溶性、押出時の熱安定性、柔軟性改質効果の点からポリオキシテトラメチレングリコールとポリラウリルラクタム(ポリアミド12)を主成分とする共重合体が最も好ましい。また、任意成分としてドデカンジカルボン酸、アジピン酸、テレフタル酸等のジカルボン酸単位を少量含むものも使用できる。
【0035】
前記ポリエステルエラストマー類としては、例えばポリブチレンテレフタレートとポリオキシテトラメチレングリコールを組み合わせたポリエーテル・エステルエラストマーや、ポリブチレンテレフタレートとポリカプロラクトンを組み合わせたポリエステル・エステルエラストマーなどが挙げられる。
【0036】
これらの柔軟改質剤は単独でも2種類以上を混合しても使用できる。特に硬い芳香族ポリアミドである前記ポリアミドCに1〜5重量%添加することが好ましい。
【0037】
本発明に使用される原料のポリアミドはいずれも吸湿性が大きい性質を有している。従って、原料を熱溶融し押出す際に、水蒸気やオリゴマーが発生しフィルム化を阻害することがあるので、これらの原料は、事前に乾燥して水分含有率を0.1質量%以下とすることが好ましい。なお、これら原料樹脂中には、前記柔軟改質剤の他に、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、安定剤、染料、顔料、無機質微粒子等の各種添加剤を、積層フィルムの性質に影響を与えない範囲で添加することができる。
【0038】
次に本発明の積層フィルムの製造方法を具体的に説明する。
本発明の積層フィルムは、従来公知の方法により製造することができ、例えば、ポリアミドA、ポリアミドB、ポリアミドCを原料として用いて、実質的に無定型で配向していない未延伸のフィルム(以下「積層未延伸フィルム」ということがある)を、共押出法で製造することができる。この積層未延伸フィルムの製造は、例えば、上記原料を各々3〜5台の押出機により溶融し、フラットダイまたは丸ダイで押出した後、急冷することによりフラット状またはチューブ状の積層未延伸フィルムとする共押出法により行われる。
【0039】
次に、このようにして得られた積層未延伸フィルムを、フィルムの流れ方向(縦方向)、およびこれと直角な方向(横方向)の二軸方向に通常2〜5倍延伸する。二軸延伸の方法は、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸等、公知の延伸方法を採用できる。例えば、テンター式逐次二軸延伸方法の場合には、積層未延伸フィルムを50〜110℃程度の温度範囲に加熱し、ロール式縦延伸機によって縦方向に2〜5倍に延伸し、続いてテンター式横延伸機によって60〜140℃程度の温度範囲内で横方向に2〜5倍に延伸する。また、テンター式同時二軸延伸やチューブラー式同時二軸延伸方法の場合は、例えば、60〜130℃程度の温度範囲において縦横同時に2〜5倍に延伸する。
【0040】
上記方法により二軸延伸された二軸延伸積層フィルムは、引き続き熱処理による熱固定をされて、常温における寸法安定性が付与される。熱処理温度は、110℃を下限としてポリアミドA層を構成するポリアミド6の融点より2℃低い温度を上限とする範囲を選択するのがよく、これにより常温寸法安定性のよい、任意の熱収縮率を持った延伸フィルムを得ることができる。熱処理操作により、充分に熱固定された二軸延伸積層フィルムは、常法により冷却し巻き取ることができる。また、他の基材フィルムとの接着強度を改善するため、積層フィルムの片面または両面にコロナ放電処理等の表面処理を施すことができる。
【0041】
延伸による強度の向上はポリアミド6分子の配向によるものであるが、延伸しただけでは印刷やシーラントフィルムとのラミネート加工や製袋時等の加工時に熱がかかり収縮してしまうため、熱固定が施される。熱固定は、延伸後、本発明のフィルムの場合は、上述の熱処理操作のように主原料であるポリアミド6の融点近くまで熱を掛けることにより収縮率を抑えるものであるが、95℃5分の熱水収縮率は縦方向、横方向ともに0.5〜5.0%とすることが必要である。熱水収縮率が0.5%以下の場合は熱固定温度がかかりすぎなため、ポリアミド6が溶融状態になり配向が戻ってしまうためフィルム強度が低下するので好ましくない。反対に熱固定が不十分で、縦方向、横方向のどちらか一方の収縮率が5.0%を越えると、後加工時に収縮し、寸法や外観に影響を及ぼす可能性が高いため好ましくない。また熱固定が不十分だとフィルムの面配向が強くなり、フィルムが厚み方向に剥がれ易くなる。つまりシーラントフィルムとラミネートした場合にはシーラントフィルムを剥がす方向の力に弱くなるため、ラミネート面のラミネート強度が出にくくなる。特に本発明のような5層の多層フィルムであれば、各層の厚みが薄くなり、各層一層一層の強度は弱くなるため、剥離のキッカケができやすくなり、これがラミネート強度に大きく影響する。ラミネート強度を強くするためには熱固定温度を高くし、面配向を緩和することが有効であるが、これではポリアミド6の配向が弱くなり、フィルム強度の低下を招くため好ましくない。熱水収縮率は好ましくは0.8〜4.0%、さらに好ましくは1.0〜3.0%である。
【0042】
このようにして得られる本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムは、通常、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン系のシーラントフィルム等、他の基材フィルムの上に積層して使用される。
【0043】
本発明において、シーラントフィルムとしては、CPPをドライラミネートすることが好ましい。蒸気殺菌用包材として使用する場合、耐熱性の点でCPPをドライラミネートする事が好ましいが、一般の衝撃強度が十分強い二軸延伸積層ポリアミドフィルムをドライラミネートした場合、CPPとのラミネート強度が弱くなってしまうと言う問題が発生しやすくなる。本発明の二軸延伸ポリアミド積層フィルムを用いればCPPとのドライラミネート強度も500gf/15mm幅以上確保することが容易となる。
【0044】
本発明において、前記CPPとのラミネート強度は、500〜1500gf/15mm幅とすることが好ましく、より好ましくは600〜1500gf/15mm幅、さらに好ましくは700〜1500gf/15mm幅である。ラミネート強度が1500gf/15mm幅を越えるような接着剤を使用すると、耐熱性が不足し蒸気殺菌中等に破袋しやすくなり、逆に硬くなりすぎて屈曲ピンホール性を低下させる可能性があり、好ましくない。前記ラミネート強度は当該ラミネート強度を有するラミネート体は、105〜135℃の蒸気殺菌用包材として有効に使用できる。蒸気殺菌温度が105℃未満では、菌の殺菌が不十分となり内容物を変色させたり、腐敗させたりする可能性が高くなり好ましくない。逆に135℃より高くなるとシーラントフィルムのCPPが十分な強度を保つことができなくなり、シール破袋が発生する可能性があるため好ましくない。蒸気殺菌の温度範囲はより好ましくは110℃〜130℃、さらに好ましくは115℃〜130℃である。
【0045】
本発明の二軸延伸ポリアミド積層フィルムラミネート体は、上記の積層フィルムが備える優れた衝撃強度及びシーラントフィルムとの十分なラミネート強度によって、100℃以上の蒸気殺菌においてもフィルム強度が十分に保たれ、シール部でのドライラミネート部の剥がれや二軸延伸ポリアミド積層フィルムの層間の剥がれによる破袋を防ぐことが可能になるので、内容物を安全に保存することができる。特に105℃〜135℃の蒸気殺菌用包材においては高度なフィルム強度とドライラミネート強度が要求されるため、本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムラミネート体が好ましく使用される。
【0046】
また、本発明の積層フィルムとCPPとの積層方法としては、特に限定されず公知の方法が用いられるが、ドライラミネート法、押出ラミネート法、ポリサンドラミネート法等が挙げられ、ドライラミネート法によることが好ましい。
【実施例】
【0047】
以下、本発明の内容および効果を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、以下の例に限定されるものではない。
なお、以下の例において、得られたフィルムの評価は次の方法によって行った。
【0048】
(1)熱水収縮率
フィルム試験片を幅120mm、長さ120mmに切りだし、このサンプルに、縦(MD)方向と横(TD)方向に約100mmの線を引く。このサンプルを温度23℃、相対湿度50%雰囲気下、24時間放置し基準線を測長する。測長した長さを熱処理による熱固定前の長さFとする。このサンプルフイルムを95℃の熱水中に5分間浸漬した後、付着した水分を完全に拭き取り、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気のもとで約5時間放置して乾燥させた後、前記基準線を測長し、熱処理による熱固定後の長さGとする。
加熱収縮率を、[(F―G)/F]×100(%)で算出する。
上記方法で、MDとTDの各収縮率をn=5で測定し、平均値を熱水収縮率とした。
【0049】
(2)層間剥離強度
引張試験機〔(株)島津製作所製、オートグラフAG−I〕にて測定した。測定条件は、評価用サンプル15mm幅のものを使用し、T型剥離、剥離速度20mm/分で実施した。
【0050】
(3)パンクチャー耐衝撃強度(J/フィルム1枚)
下記の各例に記載の方法によって得られた積層フィルムから幅方向、流れ方向共に150mmの試験片を切りだし、23℃×50%RH条件下で10時間以上調湿し、測定試料とした。測定は、東洋精機製作所製パンクチャータイプフィルムインパクトテスターを用い、調湿試料をセットし、パンクチャーポイント1/2インチ、ウェイトなし、Eスケールで測定した。23℃50%RH条件下でn数20測定し、平均値(J/フィルム1枚)を耐衝撃強度とした。
【0051】
(4)TD方向の蒸気殺菌後の引張強度保持率
蒸気殺菌前の引張強度は、引張試験機〔(株)島津製作所製、オートグラフAG−I〕にて引張破断強度を測定した。測定条件は、評価用サンプルをTD方向に10mm幅で切り出し、チャック間距離50mm、剥離速度50mm/分で実施した。
蒸気殺菌処理は一辺の長さ200mmの正方形状の試料フィルムを切り出し、この試料フィルムの全周を、一辺の長さ100mmの正方形状の開口部を有し、全周にシリコンゴム製のパッキング材を備えた型枠で固定した。この試料フィルムを、加圧式レトルト槽(平山製作所製、「超加速寿命試験装置PL−30AeRIII」)の底に、予め、逆さにした籠を置き、その上に試料フィルムが水没しない程度に水を入れ、蓋をした後、空気を残留させたままで135℃に加熱した。この状態で30分間保持した後、80℃まで降温し、その後、蓋をあけて該試料フィルムの水分をぬぐい取った後、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で24時間調湿した。蒸気殺菌処理を行なった試料フィルムについて上記のレトルト処理前の破断強度と同様の方法によりTD方向の引張強度を測定した。蒸気殺菌後の引張強度保持率は、熱水処理前の引張強度を100とした時の、前記熱水処理後の引張強度の割合(%)を算出した。
【0052】
(5)ラミネート強度
下記の各例に記載の方法によって得られたフィルムに、ウレタン系二液型接着剤(東洋モートン(株)製、AD900/RT5)を用いて、無延伸ポリプロピレンフィルム(東レ合成(株)製、ZK−93,厚み70μm)をドライラミネートして、積層フィルムを調製した。次に、この積層フィルムを、40℃×3日間のエージングした後、引張試験機〔(株)島津製作所製、オートグラフAG−I〕にて二軸延伸ポリアミド積層フィルムと無延伸ポリプロピレンフィルムのラミネート強度を測定した。測定条件は、ラミネートフィルム15mm幅のものを使用し、T型剥離、剥離速度20mm/分でTD方向のラミネート強度の測定を実施した。
【0053】
(実施例1)
最外層のポリアミド層を構成するポリアミドAとしてポリアミド6(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、ノバミッド1022C6、融点224℃)を89.9重量%、ポリアミド6−66共重合体(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、ノバミッド2420、融点192℃、66比率20重量%)を10重量%、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・ジャパン社製、イルガノックス1098、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル)−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド]を0.1重量%配合したものをφ65mmの押出機に、ポリアミドBとしてポリアミド6(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、ノバミッド1022C6、融点224℃)を85重量%、芳香族ポリアミドとしてMXD6(三菱ガス化学(株)製、MXナイロン6007、融点237℃)を15重量%配合したものをφ50mmの押出機に、ポリアミドCとして芳香族ポリアミドMXD6(三菱ガス化学(株)製、MX−ナイロン6007、融点237℃)を95重量%、耐屈曲ピンホール性改良材としてポリアミドエラストマー(アルケマ社製、PEBAX4033)を5重量%配合したものをφ50mmの押出機を使用し、それぞれ溶融させ、さらにポリアミドA、ポリアミドBについてはそれぞれ分配ブロックでほぼ半々に分割して口金に導入した。マニホールドを5つ持つマルチマニホールド共押出Tダイ内で積層させて5層構造の溶融体として押出し、30℃の冷却ロール上で急冷して、厚み約150μmの未延伸積層フィルム(ポリアミドA層/ポリアミドB層/ポリアミドC層/ポリアミドB層/ポリアミドA層)を得た。
【0054】
次いで、この未延伸積層フィルムを50℃に加熱昇温した後、この温度条件でロール式縦延伸機を用いて縦方向に3倍延伸し、さらに120℃に加熱昇温して、テンター式横延伸機を用いて横方向に3.5倍延伸した。得られた二軸延伸フィルムを215℃の条件で6秒間熱処理することにより熱固定を行い、厚み15μmの積層フィルムを得た。ポリアミドA層/ポリアミドB層/ポリアミドC層/ポリアミドB層/ポリアミドA層の各層の平均厚み(μm)は3.5/2.0/4.0/2.0/3.5であった。このフィルムを測定し表1の結果を得た。
【表1】

【0055】
(実施例2)
ポリアミドAの配合比率を94.9:5:0.1とした以外は実施例1と同様にフィルムを作製し、測定を行い表1の結果を得た。
(実施例3)
ポリアミドAの配合比率を79.9:5:0.1とした以外は実施例1と同様にフィルムを作製し、測定を行い表1の結果を得た。
(実施例4)
ポリアミドAにポリアミド6−66共重合体(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、ノバミッド2020、融点200℃、66比率15重量%)とした以外は実施例1と同様にフィルムを作製し、測定を行い表1の結果を得た。
(実施例5)
ポリアミドBの配合比率を90:10とした以外は実施例1と同様にフィルムを作製し、測定を行い表1の結果を得た。
(実施例6)
ポリアミドBの配合比率を75:25とした以外は実施例1と同様にフィルムを作製し、測定を行い表1の結果を得た。
(実施例7)
熱固定を行う熱処理温度を218℃とした以外は実施例1と同様にフィルムを作製し、測定を行い表1の結果を得た。
(実施例8)
熱固定を行う熱処理温度を212℃とした以外は実施例1と同様にフィルムを作製し、測定を行い表1の結果を得た。
(比較例1)
ポリアミドAをポリアミド6(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、ノバミッド1022C6、融点224℃)のみとした以外は実施例1と同様にフィルムを作製し、測定を行い表1の結果を得た。
(比較例2)
ポリアミドAを64.9:35:0.1とした以外は実施例1と同様にフィルムを作製し、測定を行い表1の結果を得た。
(比較例3)
ポリアミドBを97:3とした以外は実施例1と同様にフィルムを作製し、測定を行い表1の結果を得た。
(比較例4)
ポリアミドBを45:55とした以外は実施例1と同様にフィルムを作製し、測定を行い表1の結果を得た。
(比較例5)
熱固定を行う熱処理温度を222℃とした以外は実施例1と同様にフィルムを作製し、測定を行い表1の結果を得た。
(比較例6)
熱固定を行う熱処理温度を205℃とした以外は実施例1と同様にフィルムを作製し、測定を行い表1の結果を得た。
【0056】
表1より、本発明の二軸延伸ポリアミド積層フィルムは、層間接着強度、耐衝撃強度や引張強度等の物理的強度、シーラントフィルムとの十分なラミネート強度のいずれも満たすものが得られた(実施例1〜8)。これに対し、ポリアミドAにポリアミド6−66を含まない比較例1はTD方向の蒸気殺菌後の引張強度保持率及びラミネート強度に劣るものとなり、ポリアミドAにおけるポリアミド6の配合比率が少ない比較例2はパンクチャー衝撃強度が劣るものであった。更に、ポリアミドBにおける芳香族ポリアミドの配合比率が少ない比較例3及びポリアミドBにおけるポリアミド6の配合比率が少ない比較例4は、層間剥離強度に大きく劣り、熱固定を行う熱処理温度が高すぎる比較例5はパンクチャー衝撃に劣るものとなり、熱固定を行う熱処理温度が低すぎる比較例6はラミネート強度に劣るものとなった。
【0057】
これにより、本発明の二軸延伸ポリアミド積層フィルムは、適度な層間接着強度を備えており、且つ耐衝撃強度や引張強度等の物理的強度特性とシーラントフィルムとの十分なラミネート強度があることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドA/ポリアミドB/ポリアミドC/ポリアミドB/ポリアミドAの順で積層され、縦方向、横方向ともに2〜5倍延伸された後の95℃5分の熱水収縮率が縦方向、横方向ともに0.5〜5.0%となるよう熱固定されたことを特徴とする二軸延伸ポリアミド積層フィルム。
ポリアミドA:ポリアミド6を70〜99重量%、
ポリアミド6とポリアミド66の共重合体であってポリアミド66比率が10〜25重量%であるポリアミド6−66を30〜1重量%含有する混合層
ポリアミドB:ポリアミド6を50〜95重量%、芳香族ポリアミドを50〜5重量%含有する混合層
ポリアミドC:芳香族ポリアミドを主に含有する層
【請求項2】
ポリアミドA層の厚みが2〜5μmである請求項1に記載の二軸延伸ポリアミド積層フィルム。
【請求項3】
ポリアミドB/ポリアミドC間の層間剥離強度が200〜500gf/15mm幅である請求項1又は2に記載の二軸延伸ポリアミド積層フィルム。
【請求項4】
ポリアミドAにヒンダードフェノール系酸化防止剤を0.01〜0.5重量%含有する請求項1〜3のいずれか1つに記載の二軸延伸ポリアミド積層フィルム。
【請求項5】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤が、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル)−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド]である請求項4に記載の二軸延伸ポリアミド積層フィルム。
【請求項6】
ポリアミドB及びポリアミドCに含まれる芳香族ポリアミドがポリメタキシリレンアジパミドである請求項1〜5のいずれか1つに記載の二軸延伸ポリアミド積層フィルム。
【請求項7】
(23℃50%RH条件下での)パンクチャー衝撃強度が1.2J/枚以上である請求項1〜6のいずれか1つに記載の二軸延伸ポリアミド積層フィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の二軸延伸ポリアミド積層フィルムに無延伸ポリプロピレンフィルムをドライラミネートしたラミネートフィルムにおいて、ラミネート強度が500〜1500gf/15mm幅であることを特徴とする二軸延伸ポリアミド積層フィルムラミネート体。
【請求項9】
105℃〜135℃の蒸気殺菌用包材として使用される請求項8に記載の二軸延伸ポリアミド積層フィルムラミネート体。

【公開番号】特開2010−269557(P2010−269557A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124919(P2009−124919)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】