説明

二軸延伸ポリエステルフィルムおよびその製造方法

【課題】高い反射率と低比重を兼ね備える二軸延伸ポリエステルフィルムを安定して生産する方法を提供する。
【解決手段】
少なくとも片面の平均反射率が97%以上、かつ、比重が0.3以上0.5以下であり、かつ、微細気泡を有する二軸延伸白色ポリエステルフィルムの製造方法において、該白色ポリエステルフィルムの二軸延伸工程における延伸前のフィルムについて、フィルム幅方向端部より2mm内側のフィルム厚みをt2、端部より10mm内側のフィルム厚みをt10、端部より20mm内側のフィルム厚みをt20とした時、以下の関係式を有することを特徴とする、二軸延伸白色ポリエステルフィルム。
1300≦t20<t10<t2≦2500・・・・(1)
50≦t10−t20<t2−t10≦400・・・(2)
(厚みの単位:μm)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二軸延伸ポリエステルフィルムに関するものであり、特に低比重の二軸延伸ポリエステルフィルムの安定的な製造方法について述べたものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイの光源として、ディスプレイの背面からライトを当てるバックライト方式や、特許文献1に示されるような光反射フィルムが、薄型で均一に照明できるメリットから広く用いられている。その際、照明光の逃げを防ぐため、画面の背面に光反射板を設置する必要がある。この反射板には薄さと光の高反射性が要求されることから、内部に微細な気泡を含有させ気泡界面で光を反射させることにより白色化されたフィルムなどが主に用いられる。
【0003】
この微細な気泡を含有させるためには、フィルム母材、例えばポリエステル中に、高融点の非相溶ポリマーまたは無機粒子を細かく分散させ、それを延伸(例えば二軸延伸)する方法などが挙げられる。延伸に際し、非相溶ポリマーまたは無機粒子の周りにボイド(気泡)が形成され、これが光散乱作用を発揮するため、白色化する。近年では、液晶ディスプレイのような表示機器にも、従来にない高度な表示能力が求められており、中でもバックライトには高輝度化や白再現性の向上などが要求されている。
【0004】
また一方で、液晶ディスプレイがモバイル用途(ノートパソコン、携帯端末等)に適用される場合、そのハンドリング性および軽さが重視されるため、液晶ディスプレイを構成する部材の一つ一つに、徹底した軽量化が求められている。
【0005】
これら、高性能化および軽量化の二つの課題を両立させる方法としては、例えば特許文献2にあるように、ポリエステル中に微細な気泡を多数含有させ、低比重化させることが挙げられる。しかしながら、微細気泡を多数含有させ、低比重化させると、フィルム強度が低下するため、二軸延伸工程におけるフィルム破断の要因となる。このことが、白色フィルムの生産性を悪化させる要因となり、例えば特許文献2にあるように、低比重化の下限を0.5に定める必要が有った。
【0006】
二軸延伸における白色フィルムの生産性向上の方法としては、例えば特許文献3にあるように、二軸延伸フィルムの生産工程において、フィルム幅方向の厚みムラを減少させる方法が挙げられるが、近年の要望に応えるために、さらなる低比重化を狙ったフィルムに対しては、この方法では、生産性維持の観点から不十分である。このように、白色フィルムの高性能化、軽量化、及び生産性の観点における二律背反性は、光反射フィルム生産における課題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許2099443号公報
【特許文献2】特開2003−160682号公報
【特許文献3】特開2010−052329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、光反射板用途としての白色フィルムの性能向上および軽量化は常に市場から求められており、それに対する課題を解決するために、微細気泡の増加、すなわち、白色フィルムの低比重化は必須事項である。本発明は、その様な低比重の白色フィルムであっても、生産性の維持向上を可能にしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するために、本発明では、以下記載の方法により製造される、微細気泡を多数有する低比重の白色二軸延伸ポリエステルフィルムを提供する。
(1)少なくとも片面の平均反射率が97%以上、かつ、比重が0.3以上0.5以下であり、かつ、微細気泡を有する二軸延伸白色ポリエステルフィルムの製造方法において、該ポリエステルフィルムの二軸延伸工程における延伸前のフィルムについて、フィルム幅方向端部より2mm内側のフィルム厚みをt2、端部より10mm内側のフィルム厚みをt10、端部より20mm内側のフィルム厚みをt20とした時、以下の関係式を満たすようにフィルム厚みを設定することによる。
1300≦t20<t10<t2≦2500・・・・(1)
50≦t10−t20<t2−t10≦400・・・(2)
(厚みの単位:μm)
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施により、光反射性白色フィルムとして高性能であり、かつ、低比重である二軸延伸ポリエステルフィルムの生産性の維持向上が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を構成するポリエステルとは、ジオールとジカルボン酸とから縮重合によって得られるポリマーであり、ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバチン酸、などで代表されるものであり、またジオールとは、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノールなどで代表されるものである。具体的には例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタート、ポリエチレン−p−オキシベンゾエート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートなどがあげられる。本発明の場合、特にポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略称することがある)、ポリエチレンナフタレートが好ましい。
【0012】
ポリエチレンテレフタレートを基本構成として用いる場合、製膜安定性の観点から、好ましくは全ジカルボン酸成分あたり1モル%以上15モル%以下、さらに好ましくは3モル%以上14モル%以下、最も好ましくは5モル%以上13モル%以下の共重合成分を含有する共重合ポリエステルを用いることは好ましく例示される。1モル%未満であると、製膜できないことがある。15モル%を超えても、製膜できない場合がある。この共重合成分としては、ジカルボン酸成分として、例えばイソフタル酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸、4,4’―ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などを挙げることができる。ジオールとして、例えばジエチレングリコール、1,4―ブタンジオール、1,4―シクロヘキサンジメタノール、1,6―ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコールなどを挙げることができる。特に、良好な製膜性を得るためには、イソフタル酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸を用いることが好ましい。
【0013】
また、このポリエステルの中には、公知の各種添加剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤などが添加されていても良い。本発明に用いられるポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。ポリエチレンテレフタレートフイルムは耐水性、耐久性、耐薬品性などに優れている。
【0014】
本発明においては、400〜700nmの光の波長域における平均反射率が白色ポリエステルフィルムの少なくとも片面で97%以上である必要がある。97%未満であると、液晶ディスプレイに適用したとき、バックライトとしての輝度が不十分となることがある。本発明において平均反射率とは、日立ハイテクノロジーズ製分光光度計(U―3310)に積分球を取り付け、標準白色板(酸化アルミニウム)を100%とした時の反射率を400〜700nmにわたって測定し、得られたチャートより波長を5nm間隔で反射率を読み取り、平均した値である。
【0015】
反射率を97%以上とするためには、フィルム内部に微細な気泡を含有させ白色化されていることが重要であり、これにより光の散乱作用を発揮するため反射率を向上させることができる。好ましくは、反射率は98%以上であり、より好ましくは100%以上である。反射率については特に上限はないが、反射率を上げるためには、例えば上記不活性無機粒子の添加量を上げる必要があり、その場合製膜性が不安定になることがあるため、110%以下であることが好ましい。
【0016】
微細な気泡の形成は、フィルム母材、たとえばポリエステル中に、高融点のポリエステルと非相溶なポリマーを細かく分散させ、それを延伸することにより達成される。延伸の際、この非相溶ポリマー粒子周りに気泡が形成され、これが光に散乱作用を発揮するため、白色化され、高い反射率を得ることが可能となる。
【0017】
延伸方法としては、一軸延伸および二軸延伸を選択することが出来るが、本発明においては、一軸延伸を選択すると、微細気泡の形成が不十分となり、本発明で必要な高い反射率を得ることが困難であるため、二軸延伸方式であることが必要である。二軸延伸方式であれば、逐次二軸延伸であっても同時二軸延伸であっても良い。
【0018】
非相溶ポリマーとしては、直鎖状、分鎖状あるいは環状のポリオレフィンが好ましく使用できる。直鎖状、分鎖状のポリオレフィンとしては、例えば、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリビニル−t−ブタン、1,4−トランス−ポリ−2,3−ジメチルブタジエン、ポリビニルシクロヘキサン、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリジメチルスチレン、ポリフルオロスチレン、ポリ−2−メチル−4−フルオロスチレン、ポリビニル−t−ブチルエーテル、セルロールトリアセテート、セルロールトリプロピオネート、ポリビニルフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレンから選ばれた融点200℃以上のポリマーが挙げられる。中でもポリエステル母材に対して、ポリ−4−メチルペンテンが好ましい。
【0019】
環状のポリオレフィンとしては、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、6−メチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、5,6−ジメチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、1−メチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、6−エチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、6−n−ブチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、6−i−ブチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、7−メチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、トリシクロ〔4,3,0,12.5 〕−3−デセン、2−メチル−トリシクロ〔4,3,0,12.5〕−3−デセン、5−メチル−トリシクロ〔4,3,0,12.5 〕−3−デセン、トリシクロ〔4,4,0,12.5 〕−3−デセン、10−メチル−トリシクロ〔4,4,0,12.5 〕−3−デセンなどを共重合したポリマーが挙げられる。また、環状ポリオレフィンに、直鎖状、分鎖状のオレフィンを共重合させたものも好ましく使用することが出来、その場合の直鎖状、分鎖状のオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン等が挙げられる。中でも、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エンとエチレンとの共重合体が好ましい。
【0020】
非相溶ポリマーの添加量としては、非相溶ポリマーを含有する層全体を100質量%としたときに、15重量%以上45重量%以下であることが好ましい。これより少なすぎると白色化の効果が薄れ、高反射率が得にくくなり、高すぎると、フィルム母材本来の特性を損なうおそれがある。この非相溶ポリマーは均一に分散されている程好ましい。均一分散により、フィルム内部に均一に気泡が形成され、白色化の度合、ひいては反射率が均一になる。非相溶ポリマーを均一分散させるには、低比重化剤を分散助剤として添加することが有効である。低比重化剤とは、比重を小さくする効果を持つ化合物のことであり、特定の化合物にその効果が認められる。例えば、ポリエステルに対しては、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール、エチレノキサイド/プロピレノキサイド共重合体、さらにはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホネートナトリウム塩、グリセリンモノステアレート、テトラブチルホスホニウムパラアミノベンゼンスルホネートなどで代表されるものである。本発明の反射板用白色ポリエステルフィルムの場合、特にポリアルキレングリコール、中でもポリエチレングリコールが好ましい。また、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールの共重合体なども、非相溶ポリマーの分散性を向上させるために好ましく用いられる。添加量としては、非相溶ポリマーを含有する層全体を100質量%として、15質量%以上45質量%以下が好ましい。少なすぎると、添加の効果が薄れ、多すぎると、フィルム母材本来の特性を損なうおそれがある。このような低比重化剤は、予めフィルムを構成するポリマー中に添加して調整可能である。
【0021】
前述の如く、白色ポリエステルフィルムが微細な気泡を含有することにより、該ポリエステルフィルムの比重は通常のポリエステルフィルムよりも低くなる。さらに低比重化剤を添加すれば、さらに比重は低くなる。つまり、白くて軽いフィルムが得られる。この白色ポリエステルフィルムを、液晶ディスプレイ反射板用基材としての機械的特性を保ちながら、軽量にするには、比重が0.3以上1.2以下であることが好ましい。比重を0.3以上1.2以下とするためには、上記のごとく低比重化剤、例えば比重0.85のポリメチルペンテンを用いた場合、層全体に対して15質量%以上45質量%以下含有させ、フィルムを延伸する際の一方向の延伸倍率を2.5〜4.5とすることで微細な気泡を多数含有させることにより達成することができる。比重が本発明の範囲にあると、フィルム強度を保ったまま微細な気泡を多数存在させることが出来、高反射率を得ることが出来る。すなわち、液晶ディスプレイ反射板として使用した場合、画面の明るさにおいて、顕著に優れた輝度を発揮する。また、本発明の液晶ディスプレイ反射板用白色ポリエステルフィルムの比重は0.3以上1.2以下、好ましくは0.3以上1.0以下、より好ましくは0.3以上0.9以下であることが、高反射率化ために好ましい。
【0022】
本発明の白色ポリエステルフィルムの厚みは、薄すぎるとコシがなくなるため、後加工等の作業性に劣り、厚すぎると原価が高値になり生産性に劣るため、フィルム総厚みで50μm〜500μm、好ましくは75μm〜400μmの範囲にあるものが、実用面での取扱性にも優れており、好ましい。また、他の素材と貼合わせる場合にも、取扱性の点から、厚みの上限は500μmが好ましい。
【0023】
また、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、延伸前のフィルムにおいて、フィルム幅方向端部より2mm内側のフィルム厚みをt2、端部より10mm内側のフィルム厚みをt10、端部より20mm内側のフィルム厚みをt20とした時、以下の関係式を有することが必要である。
1300≦t20<t10<t2≦2500・・・・(1)
50≦t10−t20<t2−t10≦400・・・(2)
(厚みの単位:μm)
式(1)は、延伸前のフィルム厚みにおいて、フィルムの端部で厚く、フィルムの内側になるほど、厚みが徐々に薄くなることを表し、その厚み上限は2500μm、下限は1300μmであることを表す。上限が2500μmを上回ると、二軸延伸ポリエステルフィルムの製造工程におけるドラム表面での冷却工程において、十分な冷却が行われず、その結果、フィルムの端部が脆くなり、破断しやすくなる。一方で、下限が1300μmを下回ると、フィルム端部の厚みが薄いことによって、延伸(特に横延伸)の工程において該部分が引っ張られやすくなり、設定した倍率よりも高い倍率で引っ張られる結果、フィルム端部が脆くなり、破断しやすくなる。また、t20<t10<t2の関係が成立しない場合、フィルム端部の強度が部分的に悪化し、該部分でフィルムの強度が周囲に比べて低くなることで、延伸(特に横延伸)の時、該部分からフィルムが破断しやすくなる。
【0024】
以上から、式(1)において、厚み上限2500μm、下限1300μmであることが必要であり、より好ましくは、上限2400μm、下限1350μm、さらに好ましくは、上限2300μm、下限1350μmである。
【0025】
式(2)は、延伸前のフィルム厚みにおいて、フィルム端部の厚みの差が、端部ほど大きく、フィルムの内側になるほど、差は小さくなることを表し、その厚みの差の上限は400μm、下限は50μmであることを表す。厚みの差が400μmを超えると、その部分で極端な厚みの落ち込みが発生し、延伸(特に横延伸)の工程において、該部分のフィルムの強度が周囲に比べて低くなることで、延伸時、該部分からフィルムが破断しやすくなる。厚みの差が50μmより小さいと、延伸(特に横延伸)の際、該部分が設定倍率に対して十分な延伸をされず、フィルム端部が脆くなり、破断しやすくなる。また、t10−t20<t2−t10の関係が成立しない場合、フィルム端部の強度が部分的に悪化し、該部分でフィルムの強度が周囲に比べて低くなることで、延伸(特に横延伸)の時、該部分からフィルム破断しやすくなる。
以上から、式(2)において、厚みの差の上限は400μm、下限は50μmであることが必要であり、より好ましくは、上限は350μm、下限は50μm、さらに好ましくは、上限は300μm、下限は70μmである。
【0026】
さらに、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは延伸後のフィルムにおいて、フィルム幅方向端部より50mm内側のフィルム厚みをT50、端部より75mm内側のフィルム厚みをT75、端部より100mm内側のフィルム厚みをT100、フィルム幅方向中央部のフィルム厚みをTcとした時、以下の関係式を有することにより、生産性の維持向上が出来る。
Tc≦T100<T75<T50≦1000・・・・(3)
T75−T100<T50−T75・・・・・・・・(4)
(厚みの単位:μm)
式(3)は、延伸後のフィルム厚みにおいて、フィルムの端部で厚く、フィルムの内側になるほど、厚みが徐々に薄くなることを表し、その厚み上限は1000μm、下限はフィルム幅方向中央厚みと同じかそれ以上であることを表す。
【0027】
上限が1000μmを上回ると、フィルム端部が厚くなりすぎて、延伸(特に横延伸)工程においてフィルムの端部が十分に引っ張られず、該部分が脆くなり、破断しやすくなる場合がある。一方で、下限がフィルム幅方向中央厚みを下回ると、フィルム端部の該部分で厚みが薄いことにより、延伸(特に横延伸)の工程において該部分が引っ張られやすくなり、設定した倍率よりも高い倍率で引っ張られる結果、フィルム端部が脆くなり、破断しやすくなる傾向がある。また、T100<T75<T50の関係が成立しない場合、フィルム端部の強度が部分的に悪化し、該部分でフィルムの強度が周囲に比べて低くなることで、延伸(特に横延伸)の時、該部分からフィルム破断が発生する可能性がある。
【0028】
以上から、式(3)において、厚み上限は1000μm、下限はフィルム幅方向中央厚みと同じであることが必要であり、さらには、上限は950μm、下限はフィルム幅方向中央厚みと同じであることが好ましい。
【0029】
式(4)は、延伸後のフィルム厚みにおいて、フィルム端部の厚みの差が、端部ほど大きく、フィルムの内側になるほど、差は小さくなることを表す。この関係が成立しない場合、フィルム端部の強度が部分的に悪化し、該部分でフィルムの強度が周囲に比べて低くなることで、延伸(特に横延伸)の時、該部分からフィルム破断が発生する可能性がある。
【0030】
次に本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法について説明するが、この方法に限定されるものではない。ポリエステル樹脂に無機粒子や添加剤を混合したマスターペレット、とポリエチレンテレフタレートからなるPETチップを混合しA層用原料とする。それを充分乾燥させて270〜300℃の温度に加熱された押出機Aに供給する。一方、非相溶樹脂としてメルトフローレートが400g/10minのポリメチルペンテンを、分散剤としてポリエチレングリコール、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコール共重合物を、ポリエチレンテレフタレートに混合しB層用原料とする。それを十分乾燥させて270〜300℃の温度に加熱された押出機Bに供給する。Tダイ3層口金内で押出機A層のポリマーがB層ポリマーの両表層にくるように積層し、丸型ピノールを使用して積層フィルムの厚み比率がA層/B層/A層=1〜10/80〜98/1〜10からなる3層構成の溶融押出シートを吐出する。このとき、押出機のスクリュー回転数(押出速度)が不安定になると安定したポリマーの吐出が出来ないため、流路内においてポリマーの流速差が生じポリメチルペンテンの分散性が悪化することから、幅方向での密度ムラとなることがある。押出機のシリンダー温度の適切化およびスクリュー通水量の調整を施すことにより押出機のスクリュー回転数を安定させることができる。または、押出機に供給する回収原料をペレット化して使用する割合を適切にすることが重要である。
【0031】
この溶融されたシートを、ドラム表面温度10〜60℃に冷却されたドラム上で静電気力にて密着冷却固化し、未延伸フィルム(以下、「延伸前フィルム」または「Aフィルム」ということもある)を得る。該未延伸フィルムを75〜120℃に加熱したロール群に導き、長手方向(以下、「縦方向」ともいう)に2.0〜5.0倍延伸し、20〜50℃のロール群で冷却し、一軸延伸フィルム(以下、「Bフィルム」ともいう)を得る。縦延伸倍率は3.3倍以上の高倍率を用いるためフィルムの加熱が不足すると長手方向の延伸ムラやフィルム破断を招きやすい。続いて、縦延伸したフィルム(Bフィルム)の両端をクリップで把持しながらテンターに導き90〜140℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向(「幅方向」または「横方向」ということもある)に横延伸する。予熱段階で過加熱になると結晶化が進行しフィルム破断が発生しやすいので、この温度は110〜125℃が安定製膜に好ましい。延伸倍率は、縦、横それぞれ2.5〜4.5倍に延伸するが、その面積倍率(縦延伸倍率×横延伸倍率)は9〜16倍であることが好ましい。面積倍率が9倍未満であると得られるフィルムの白さが不良となり、逆に16倍を越えると延伸時に破れを生じやすくなり製膜性が不良となる傾向がある。好ましい面積倍率を満たしたとしても、Bフィルムの両端部の厚みが適切でないと安定した製膜は望めないので注意が必要である。Bフィルムの両端部の厚みの適性化には、本発明に基づいたフィルム端部厚みの調整が肝要となる。こうして二軸延伸されたフィルムの平面性、寸法安定性を付与するために、テンター内で150〜230℃の熱固定を行い、均一に徐冷後、室温まで冷却し、二軸延伸フィルム(以下、「延伸後フィルム」または「Cフィルム」ともいうこともある)を得る。かかるCフィルムを巻き取り、本発明の目的とするフィルムを得る。
【0032】
フィルムの端部の厚みを調整する手法として、β線やX線などを用いてAフィルムまたはCフィルムの幅方向の厚みを測定する手法を採用することは、本発明において好ましい態様の一つである。この場合、AフィルムまたはCフィルムの幅方向の厚み情報を、口金にフィードバックし、口金の幅方向のリップ厚みを調整することによって、AフィルムまたはCフィルムのフィルム端部の厚みムラを低減させることができる。ここで、β線やX線はフィルムに照射させたときの減衰量から厚みを換算するしくみになっている。そのため、フィルム幅方向の密度が均一なフィルムであれば、上記手法を用いることによって、AフィルムまたはCフィルムのフィルム幅方向の厚みムラを低減させることができる。しかし、フィルム幅方向に密度ムラが存在する場合には、正確な値を示さないことがある。例えば、フィルム幅方向において、中央部と端部でフィルム密度が異なる場合、誤って換算された厚みが得られることとなる。そのため、厚みムラを改善するためには、Cフィルム幅方向の厚みがフラットになるよう補正をかける必要がある。かくして得られた本発明の液晶反射板用白色積層ポリエステルフィルムは、フィルム内部に微細な気泡が形成され高反射率が達成されており、液晶ディスプレイ等の反射板として使用された場合に輝度ムラのない画面を得ることができる。
【0033】
フィルムの端部厚みを調整する方法として、製造中のフィルムの端部の各測定ポイントに定圧厚み測定器(例えば、SONY(株)製マイクロメーターM−30)を押し当て、測定する方法も、好ましい態様の一つである。ただし、この場合、厚み測定器の端子がフィルムと擦れることで、フィルム端部に傷が付き、それがフィルムの欠点となる、または、その傷を起点にフィルム破断が発生する場合があるため、注意が必要である。同時に、厚み測定器の端子が傷み、継続して厚みを測定することが困難になる場合も有る。
【0034】
そのため、製膜中のフィルムを適切な状態で切り取り、定圧厚み測定器を用いて測定する方法、または、定圧厚み測定器の端子の形状として、フリー回転式の端子を選択することが好ましい方法の一つとして選択出来る。定圧厚み測定器の端子の形状として、フリー回転式の端子を選択した場合(例えば、尾崎製作所製ピーコックHR−1)、製膜中のフィルムに該定圧厚み測定器を押し当てた際、厚み計の端子が回転することで、フィルムに傷が発生することなく、かつ、端子に摩耗が発生することなく、フィルム端部の厚み測定が可能となる。
【0035】
本発明のポリエステルフィルムは、単層、複層のいずれでも良いが、好ましくは、ポリエステル層(A)および(B)を用いた積層構造であり、ポリエステル層(A)が微細気泡を含有した層であり、少なくともその片側に、ポリエステル層(A)を支持するポリエステル層(B)が構成されることが、高反射率、製膜性、光学特性および光安定性の点で好ましい。本発明のポリエステルフィルムは、このポリエステル層(A)およびポリエステル層(B)の構成を含む多数の層から構成されてもよい。例えば、ポリエステル層(A)/ポリエステル層(B)の2層構成であってもよく、ポリエステル層(B)/ポリエステル層(A)/ポリエステル層(B)の3層構成、あるいはポリエステル層(A)/ポリエステル層(B)/ポリエステル層(A)/ポリエステル層(B)の4層構成であってもよい。さらに5層以上の構成であってもよい。多層構成にすることにより、積層されたポリエステルフィルムの表面において、それぞれの層の特性が発現し、多様な特性をコントロールすることができる。製膜上の容易さと効果を考慮すると2層構成あるいはポリエステル層(B)/ポリエステル層(A)/ポリエステル層(B)からなる3層構成の形態が好ましい。特にポリエステル層(B)にてポリエステル層(A)を保護する形態、すなわち、ポリエステル層(B)/ポリエステル層(A)/ポリエステル層(B)の三層構成が好ましい。また、芯層部がポリエステル層(A)であり、片側または両側の表層部がポリエステル層(B)であることが好ましい。
【0036】
〔物性の測定ならびに効果の評価方法〕
本発明の物性値の評価方法ならびに効果の評価方法は次の通りである。
【0037】
(1)平均反射率
日立ハイテクノロジーズ製分光光度計(U―3310)に積分球を取り付け、標準白色板(酸化アルミニウム)を100%とした時の反射率を400〜700nmにわたって測定する。得られたチャートより5nm間隔で反射率を読み取り、平均値を計算し、平均反射率とする。
【0038】
(2)延伸前のフィルム厚み
定圧厚み測定器として、尾崎製作所製ピーコック(HR−1)を使用し、縦延伸工程に入る前のフィルムの端部から各測定ポイントについて、各層合計厚みを計測した。両端について計測を行い、その平均値を取得した。
【0039】
(3)延伸後のフィルム厚み
延伸後のフィルム端部を、フィルム端部から100mm以上の幅が得られるようにサンプリングし、定圧厚み測定器として、マイクロメーターM−30(SONY(株)製)を使用し、白色フィルムの各層合計厚みを計測した。両端について計測を行い、その平均値を取得した。
【0040】
(4)比重
フィルムを10cm×10cmに正確にサンプリングし、電子天秤(Mettler製AC100)にて0.1mg単位まで正確に秤量する。秤量したサンプルを取り出した後、定圧厚み測定器を使用して、フィルムの各層合計厚みを測定し、以下の式に当てはめて比重を算出する。
比重=(秤量値(g))/(各層合計厚み(μm))×100。
【0041】
(5)製膜安定性
製膜安定性は、下記基準で評価した。
○:2時間以上安定に製膜できる。
×:2時間以内に破断が発生し、安定な製膜ができない。
【実施例】
【0042】
本発明を実施例に基づいて説明する。
【0043】
[実施例1〜11]
ポリエステル層(A)の原料ポリマーとして、以下に示す原料を、表1に示す配合比で混合した。押出温度を320℃に設定し、270〜300℃に加熱された押出機Aに供給することで作製した。
(1)ベース樹脂
・ポリエチレンテレフタレートチップ(東レ(株)製F20S)
(2)低比重化剤
・分子量4000のポリエチレングリコール、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールの共重合物(東レデュポン(株)製“ハイトレル”)
・ポリエチレンテレフタレートにイソフタル酸10mol%とポリエチレングリコールを5mol%共重合した共重合物(東レ(株)製T794M)
・1,4−シクロヘキサンジメタノールが33mol%共重合された共重合ポリエチレンテレフタレート(PET−G)
(3)非相溶ポリマー
・ポリメチルペンテン(三井化学(株)製TPX)
・環状オレフィンとエチレンの共重合体(ポリプラスチックス社製TOPAS)。
【0044】
一方、ポリエチレンテレフタレートのチップに、無機粒子を表1に示す割合で混合したものを180℃で3時間真空乾燥した後、280℃に加熱された押出機Bに供給することで、ポリエステル層(B)の原料ポリマーを作製した。
【0045】
層構成および層厚みが表1のようになるように、ポリエステル層(A)および(B)の原料ポリマーを積層装置に通して積層し、Tダイによりシート状に成形した。さらにこのシートを表面温度25℃の冷却ドラムで冷却固化した未延伸シートを80〜98℃に加熱温度調整をした7本のロール群に導き、長手方向に表1に示す倍率で縦延伸し、25℃のロール群で冷却した。得られたフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き130℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向に表1に示す倍率で横延伸した。その後テンター内で190℃の熱固定を行い、均一に徐冷後、室温まで冷却して巻き取り厚みが表1に示すフィルムを得た。得られたフィルムの白色ポリエステルフィルムとしての性能は表1の通りであり、いずれも、高い反射率および低比重を得ながら、高い製膜安定性であった。
【0046】
[比較例1〜3]
表1記載の原料を用いて、実施例1と同様の手法・条件で製膜した。延伸前フィルム厚みが、式(1)式(2)の少なくとも1つを満たしていないため、製膜性に劣るものとなった。
【0047】
[比較例4,5]
表1記載の原料を用いて、実施例1と同様の手法・条件で製膜した。低比重でありながら、製膜性は良好であるが、光反射性能(平均反射率)で劣るものとなった。
【0048】
[比較例6〜8]
表1記載の原料を用いて、実施例1と同様の手法・条件で製膜した。光反射性能(平均反射率)および製膜性は良好であるが、比重が高く、軽量化が求められる用途には不向きなものとなった。
【0049】
【表1−1】

【0050】
【表1−2】

【0051】
【表1−3】

【0052】
(*1) 判定は、以下の通り。
○:関係式を満たす、×:関係式を満たさない
式(1):1300≦t20<t10<t2≦2500
式(2):50≦t10−t20<t2−t10≦400
式(3):Tc≦T100<T75<T50≦1000
式(4):T75−T100<T50−T75
(*2)製膜安定性は、以下の通り判定する。
○:2時間以上安定に製膜できる
×:2時間以内に破断が発生し、安定な製膜ができない。
【0053】
原料における略語は以下のとおりである。
PET: ポリエチレンテレフタレート
T:ポリエチレンテレフタレートにイソフタル酸とポリエチレングリコールを共重合した共重合物(T794M)
PET-G: シクロヘキサンジメタノールが共重合されたポリエチレンテレフタレート
ハイトレル:ポリエチレングリコール、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールの共重合物
PET-I: イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート
TOPAS:シクロオレフィンとエチレンの共重合体
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によって二軸延伸ポリエステルフィルムを製造することにより、低比重でありながら高い光反射性能を持つフィルムを提供することが可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片面の平均反射率が97%以上、かつ、比重が0.3以上0.5以下であり、かつ、微細気泡を有する二軸延伸白色ポリエステルフィルムの製造方法において、
以下の関係式(1)および(2)を満足するフィルムを延伸する工程を含む二軸延伸白色ポリエステルフィルムの製造方法。

1300≦t20<t10<t2≦2500・・・・(1)
50≦t10−t20<t2−t10≦400・・・(2)
ただし、延伸前のフィルムにおける、フィルム幅方向端部より2mm内側のフィルム厚みをt2、端部より10mm内側のフィルム厚みをt10、端部より20mm内側のフィルム厚みをt20とする(厚みの単位:μm)。
【請求項2】
前記白色ポリエステルフィルムが、フィルム内部に微細な気泡を含有させることにより白色化されている請求項1に記載の二軸延伸白色ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記白色ポリエステルフィルムの微細な気泡が、ポリエステルに非相溶な樹脂を15重量%以上45重量%以下含有させ、二軸延伸されている請求項1ないし2のいずれかに記載の二軸延伸白色ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記ポリエステルに非相溶な樹脂がポリメチルペンテンである請求項3に記載の二軸延伸白色ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記ポリエステルに非相溶な樹脂がシクロオレフィンである請求項3に記載の二軸延伸白色ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の二軸延伸白色ポリエステルフィルムの製造方法であって、
前記(1)および(2)式を満足するフィルムを延伸し、以下の関係式(3)、(4)および(5)を満足する延伸フィルムを得る工程を含む二軸延伸白色ポリエステルフィルムの製造方法。
Tc≦T100<T75<T50≦1000・・・・(3)
T75−T100<T50−T75・・・・・・・・(4)
50≦Tc≦500・・・・・・・・・・・・・・・・・・(5)
ただし、延伸後のフィルムにおける、フィルム幅方向端部より50mm内側のフィルム厚みをT50、端部より75mm内側のフィルム厚みをT75、端部より100mm内側のフィルム厚みをT100、フィルム幅方向中央部のフィルム厚みをTcとする(厚みの単位:μm)。
【請求項7】
前記二軸延伸白色ポリエステルフィルムが、ポリエステル層(A)/ポリエステル層(B)の2層構成、またはポリエステル層(A)/ポリエステル層(B)/ポリエステル層(A)の3層構成からなり、該ポリエステル層(B)が微細な気泡を含有した層である請求項1ないし6のいずれかに記載の二軸延伸白色ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の製造方法で得られる二軸延伸白色ポリエステルフィルムが、液晶表示装置用に用いられることを特徴とする反射板用白色ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2012−201066(P2012−201066A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69549(P2011−69549)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】