説明

二軸延伸ポリエステル積層フィルム

【課題】 二軸延伸スルホネート基含有芳香族ポリエステルフィルムと二軸延伸ポリグリ
コール酸フィルムとが積層されている、耐熱性及びガスバリア性に優れるとともに、透明
性及び生分解性を具備した二軸延伸延伸ポリエステル積層フィルムを提供する。
【解決手段】
二軸延伸ポリグリコール酸フィルムの少なくとも片面に、芳香族ジカルボン酸成分90
〜99.8モル%及びスルホネート基含有芳香族ジカルボン酸成分10〜0.2モル%か
らなる酸成分と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分からなる二軸延伸スルホネー
ト基含有芳香族ポリエステルフィルムが積層されてなることを特徴とする二軸延伸ポリエ
ステル積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素バリア性、耐熱性に優れ、包装用フィルムを得るに適した生分解性を有
する二軸延伸ポリエステル積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムの廃棄処理を容易にする目的で生分解性のあるフィルムが注目さ
れ、各種フィルムが開発されて来ている。その生分解性フィルムは、土壌中や水中で加水
分解や生分解を受け、徐々にフィルムの崩壊や分解が進み、最後には微生物の作用で無害
な分解物へと変化するものである。そのようなフィルムとして、芳香族系ポリエステル樹
脂やポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族系ポリエステル樹脂、ポリビニルア
ルコール、酢酸セルロース、デンプン等から成形したフィルムが知られている。
これら生分解性フィルムの中で、透明性、耐熱性等に優れたフィルムとして、スルホネ
ート基含有芳香族ポリエステルからなるフィルムが幾つか提案されている(例えば、特許
文献1、特許文献2及び特許文献3参照)が、かかるフィルムは耐熱性に優れるが、ヒー
トシール性に劣り自動製袋が困難なため包装用フィルムとして使用するには制限がある。
一方、ポリ乳酸系重合体からなる二軸延伸フィルムからなる基材層の片面に、脂肪族・
芳香族共重合ポリエステルあるいは脂肪族・芳香族共重合ポリエステルとポリ乳酸系重合
体との組成物からなるヒートシール層を積層した生分解性積層フィルムが提案されている
(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、かかる脂肪族・芳香族共重合ポリエステル
とポリ乳酸系重合体との組成物から得られるフィルムは透明性に劣り、包装用フィルムに
用いる場合に用途が制限される場合がある。
また、脂肪族系ポリエステル樹脂からなるフィルムはガスバリア性に劣ることから、酸
素バリア性を改良する方法の一つとして、ポリ乳酸等の熱可塑性樹脂フィルムに二軸延伸
したポリグリコール酸フィルム層を積層したガスバリヤー性複合フィルムが提案されてい
る(例えば、特許文献5)。
【0003】
【特許文献1】特表平5−507109号公報(請求の範囲)
【特許文献2】特表平6−505040号公報(請求の範囲)
【特許文献3】特開2000−114912号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開2002−273845号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特開平10−80990号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ガスバリア性、耐熱性に優れ、且つ生分解性を有する包装材料等に好適な二
軸延伸ポリエステル積層フィルムを開発することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、二軸延伸ポリグリコール酸フィルムの少なくとも片面に、芳香族ジカルボン
酸成分90〜99.8モル%及びスルホネート基含有芳香族ジカルボン酸成分10〜0.
2モル%からなる酸成分と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分からなる二軸延伸
スルホネート基含有芳香族ポリエステルフィルムが積層されてなることを特徴とする二軸
延伸ポリエステル積層フィルムを提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の二軸延伸ポリエステル積層フィルムは、二軸延伸スルホネート基含有芳香族ポ
リエステルフィルムと二軸延伸ポリグリコール酸フィルムとが積層されており、耐熱性及
びガスバリア性に優れるとともに、透明性及び生分解性をも具備している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を構成する要件について説明する。
ポリグリコール酸(A)
本発明に係るポリグリコール酸(A)は、グリコール酸若しくはその誘導体を重合して
得られる重合体(脂肪族ポリエステル)であって、下記式(1)
(−O−CH2 −CO−)・・・・・・・・・・(1)
で表される繰返し単位を有する重合体であり、通常、式(1)で表される繰返し単位を6
0重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上含む重
合体である。
本発明に係るポリグリコール酸(A)の分子量(溶融粘度)は、フィルム形成能がある
限りとくに限定はされないが、通常、(Tm+20℃)の温度(すなわち、通常の溶融加
工温度に相当する温度)及び剪断速度100/秒において測定した溶融粘度η* が、50
0〜100,000Pa・s、より好ましくは700〜50,000Pa・s、さらに好
ましくは800〜20,000Pa・sの範囲にある。溶融粘度η* が500Pa・s未
満の重合体は、フィルムに溶融成形する際に溶融体がドローダウンしたり、Tダイから溶
融押出したフィルムが冷却中に変形して溶融加工が困難であったり、あるいは、得られた
フィルムの強靭性が不十分となったりする虞がある。溶融粘度η* が100,000Pa
・sを超える重合体は、溶融加工に高い温度が必要となり、加工時にポリグリコール酸が
熱劣化を起こす虞がある。
本発明に係るポリグリコール酸(A)は、結晶性の重合体であり、通常、融点が150
℃以上、より好ましくは180〜225℃、さらに好ましくは210〜225℃の範囲に
ある。また、融解熱量(ΔHm)は、通常、20J/g以上、より好ましくは30〜75
J/g以上、さらに好ましくは40〜75J/gの範囲にある。融点またはΔHmが低い
重合体は、ガスバリヤー性、耐熱性、機械的強度などが不十分となる虞がある。
【0008】
本発明に係るポリグリコール酸(A)は、共重合成分として、例えば、シュウ酸エチレ
ン(すなわち、1,4−ジオキサン−2,3−ジオン)、ラクチド、ラクトン類(例えば
、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、ピバロラクトン、γ−ブチロラクトン、
δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等)、トリ
メチレンカーボネート及び1,3−ジオキサンなどの環状化合物;乳酸、3−ヒドロキシ
プロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、6−ヒドロキシカプロ
ン酸などのヒドロキシカルボン酸またはそのアルキルエステル;エチレングリコール、ト
リメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール等の
脂肪族または脂環式ジオール;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン
酸またはそのアルキルエステル等の1種または2種以上を含んでいてもよい。
ポリグリコール酸としてかかる共重合成分を含むことにより、ポリグリコール酸単独重
合体の融点を下げることができる。ポリグリコール酸の融点を下げることにより、成形温
度も下げることができるので、成形加工時の熱分解を低減することができる。また、共重
合によりポリグリコール酸の結晶化速度を制御して、押出加工性や延伸加工性を改良する
こともできる。
【0009】
本発明に係るポリグリコール酸(A)は種々公知の方法で製造し得る。具体的な重合方
法は、例えば、特開平10−80990号公報、特開平11−116666号公報に記載
されている。
【0010】
スルホネート基含有芳香族ポリエステル(B)
本発明に係るスルホネート基含有芳香族ポリエステル(B)は、芳香族ジカルボン酸成
分(b1)90〜99.8モル%、好ましくは92〜99.5モル%及びスルホネート基
含有芳香族ジカルボン酸成分(b2)10〜0.2モル%、好ましくは8〜0.5モル%
からなる酸成分と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(c)、好ましくはエチレ
ングリコール成分(c1)50〜99モル%、さらに好ましくは60〜98モル%及びポ
リオキシアルキレングリコール成分(c2)50〜1モル%、さらに好ましくは40〜2
モル%からなる脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(c)からなるポリエステル
である。芳香族ジカルボン酸成分(b1)及びスルホネート基含有芳香族ジカルボン酸成
分(b2)からなる酸成分のモル数は脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(c)
のモル数と実質的に等しい。
本発明に係るスルホネート基含有芳香族ポリエステル(B)は、さらに、脂肪族ジカル
ボン酸または脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(b3)に由来する成分を少量、好ましく
は30モル%以下の範囲で含んでいてもよい。脂肪族ジカルボン酸(b3)を含む場合は
芳香族ジカルボン酸成分(b1)、スルホネート基含有芳香族ジカルボン酸成分(b2)
及び脂肪族ジカルボン酸からなる酸成分のモル数と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合
物成分(c)のモル数と実質的に等しい範囲とする。
本発明に係るスルホネート基含有芳香族ポリエステル(B)は、その重量平均分子量が
、10,000〜500,000の範囲が好ましい。また、そのメルトフローレートは、
ASTM D−1238に準拠し、220℃、2160g荷重下で測定した値が、0.1
〜100(g/10分)であることが好ましい。分子量およびメルトフローレートが前記
の範囲内にあると、押出成形に適した溶融粘度を示し、また積層フィルム基材層としての
十分な機械的強度を有する。
【0011】
芳香族ジカルボン酸成分(b1)
本発明に係るスルホネート基含有芳香族ポリエステル(B)を構成する成分である芳香
族ジカルボン酸成分(b1)は、前記芳香族ジカルボン酸成分(b)と同じ範疇の化合物
である。芳香族ジカルボン酸成分(b1)としては、前記芳香族ジカルボン酸成分(b)
と同様に、テレフタル酸またはジメチルテレフタレートまたはそれらの混合物が特に好ま
しい。
スルホネート基含有芳香族ポリエステル(B)の酸成分中の芳香族ジカルボン酸成分(
b1)は90〜99.8モル%、好ましくは92〜99.5モル%の範囲にあり、この範
囲内で芳香族ジカルボン酸成分(b1)量が多いほど、得られるポリエステルの剛性が高
くなる。
【0012】
スルホネート基含有芳香族ジカルボン酸成分(b2)
本発明に係るスルホネート基含有芳香族ポリエステル(B)を構成する成分であるスル
ホネート基含有芳香族ジカルボン酸成分(b2)は、具体的には、例えば、フタル酸、イ
ソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸のベンゼン環にスルホン酸金属塩基(−SO3 M)が
置換基として結合した化合物である。金属(M)としては、例えばリチウム、ナトリウム
、カリウム等のアルカリ金属、あるいはマグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属
である。好ましい例として、5−スルホ−イソフタル酸の金属塩、4−スルホ−イソフタ
ル酸の金属塩、4−スルホ−フタル酸の金属塩を挙げることができる。この成分は、芳香
族系ポリエステル共重合体に加水分解性や生分解性を付与する目的で加えられるが、特に
5−スルホ−イソフタル酸ナトリウム塩はその効果がよりすぐれているので好ましい。な
お、前記の芳香族ジカルボン酸は、アルキルエステルになっていてもよく、例えばジメチ
ル−5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩の形で使用することができる。
スルホネート基含有芳香族ポリエステル(B)の酸成分中のスルホネート基含有芳香族
ジカルボン酸成分(e)は10〜0.2モル%、好ましくは8〜0.5モル%の範囲にあ
る。スルホネート基含有芳香族ジカルボン酸成分(b2)量が多いほど加水分解性や生分
解性が高くなるが、過剰量を用いると得られるポリエステルは水溶性となってしまう虞が
ある。
【0013】
脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(c)
本発明に係るスルホネート基含有芳香族ポリエステル(B)を構成する成分である脂肪
族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(c)は、とくに限定はされないが、通常、脂肪
族ジヒドロキシ化合物成分であれば、2〜12個の炭素原子、好ましくは4〜6個の炭素
原子を有する枝分かれまたは線状のジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物成分
であれば、5〜10個の炭素原子を有する環状の化合物が挙げられる。
かかる脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(c)としては、具体的には、エチ
レングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタ
ンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−
2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール
、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−
1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、とく
には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び2
,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール);シクロペンタ
ンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、
1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及び2,2
,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール類及びジエチレングリコール、
トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール等のポリオキシアルキレング
リコール並びにポリテトラヒドロフラン等が例示でき、とくには、ジエチレングリコール
、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール又はこれらの混合物又は異
なる数のエーテル単位を有する化合物が挙げられる。脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化
合物成分は、異なる脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物の混合物も使用することがで
きる。
これら脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(c)の中でも、ポリオキシアルキ
レングリコール成分(c2)は、得られるポリエステル(B)の機械的物性、加水分解性
あるいは生分解性を適度に調整する効果を有していることから、エチレングリコール成分
(c1)が50〜99モル%、さらには60〜98モル%及びポリオキシアルキレングリ
コール成分(c2)、好ましくはジエチレングリコール成分が50〜1モル%、さらには
40〜2モル%からなる脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(c)の組合せが好
ましい。
ポリオキシアルキレングリコール成分(c2)量が1モル%を下回ると加水分解性ある
いは生分解性が不十分となる場合があり、50モル%を超えるとフィルムの機械的特性に
悪影響を及ぼす虞がある。
【0014】
脂肪族ジカルボン酸または脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(b3)
本発明に係るスルホネート基含有芳香族ポリエステル(B)を構成する成分に含まれて
いてもよい脂肪族ジカルボン酸または脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(b3)は、具体
的には、アゼライン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸及びグルタル酸等の脂肪族ジ
カルボン酸を、グリコール酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸及びカプロラクトン等の脂肪族ヒド
ロキシカルボン酸を夫々例示することができる。かかる脂肪族ジカルボン酸または脂肪族
ヒドロキシカルボン酸(b3)は、スルホネート基含有芳香族ポリエステル(B)のガラ
ス転移点温度を下げ、好適には70℃以下に下げ、あるいはポリエステルの加水分解性や
生分解性を向上させる目的で共重合成分の1種として加えられる。
【0015】
本発明に係るスルホネート基含有芳香族ポリエステル(B)の製造方法は、本願出願前
に公知であり、例えば、特表平5−507109号公報、特表平6−505040号公報
、特表平6−505513号公報等に記載されている。
【0016】
二軸延伸ポリエステル積層フィルム
本発明の二軸延伸ポリエステル積層フィルムは、前記ポリグリコール酸からなる二軸延
伸フィルムの少なくとも片面に、前記芳香族ジカルボン酸成分90〜99.8モル%及び
スルホネート基含有芳香族ジカルボン酸成分10〜0.2モル%からなる酸成分と脂肪族
または脂環式ジヒドロキシ化合物成分からなるスルホネート基含有芳香族ポリエステルか
らなる二軸延伸フィルムが積層されてなることを特徴とする。
本発明の二軸延伸ポリエステル多層フィルムの厚さは用途に応じて適宜決められるもの
であり、特に限定はされないが、通常、二軸延伸ポリグリコール酸フィルムが2〜20μ
m、好ましくは5〜15μm、二軸延伸スルホネート基含有芳香族ポリエステルフィルム
が5〜15μm、好ましくは10〜30μmの範囲にある。
【0017】
本発明の二軸延伸ポリエステル多層フィルムは必要に応じて片面あるいは両面をコロナ
処理、火炎処理等の表面処理をしてもよい。また、本発明の二軸延伸ポリエステル多層フ
ィルムは更に用途により、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、結晶性
あるいは低結晶性のエチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体あ
るいはプロピレンとエチレンもしくは炭素数4以上のα−オレフィンとのランダム共重合
体、ポリブテン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、脂肪族ポリエステル等の低融点のポリ
マーを単独あるいはそれらの組成物を積層してもよい。また、更に、ガスバリア性を改良
するために、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリアミド、ポリエステル、塩化ビ
ニリデン系重合体等を押出しコーティング、フィルムラミネート等で積層してもよいし、
金属あるいはその酸化物、シリカ等を蒸着してもよい。勿論、他の物質との接着性を増す
ために、二軸延伸多層フィルムの表面をイミン、ウレタン等の接着剤でアンカー処理して
もよいし、無水マレイン酸変性ポリオレフィンを積層してもよい。
【0018】
二軸延伸ポリエステル積層フィルムの製造方法
本発明の二軸延伸ポリエステル積層フィルムは、予め得られた二軸延伸ポリグリコール
酸フィルムと二軸延伸スルホネート基含有芳香族ポリエステルフィルムとを種々公知の方
法、例えば、二軸延伸ポリグリコール酸フィルム若しくは二軸延伸スルホネート基含有芳
香族ポリエステルフィルムの表面に、例えば、溶剤タイプ、ラテックスタイプ、ディスパ
ージョンタイプ等の接着剤を塗布し、溶媒を揮発除去して乾燥させたあとに他のフィルム
を積層して圧着することにより積層フィルムとすることができる。
また、本発明の二軸延伸ポリエステル積層フィルムは、前記ポリグリコール酸、スルホ
ネート基含有芳香族ポリエステルを共押出し成形して得られた積層シートを二軸延伸する
ことによっても製造し得る。
二軸延伸ポリエステル積層フィルムはチューブラー法、テンター法の何れをも採用し得
るが、テンター法が好ましい。二軸延伸は、同時でも逐次でもよい。延伸条件は、(未延
伸)多層シートの熱履歴によっても異なるが、例えば、延伸温度40〜90℃、延伸倍率
1.5〜6.0倍で行われる。延伸した後は、必要に応じて得られた二軸延伸フィルムを
熱処理(ヒートセット)する。熱処理の温度は、通常、ポリエステルの結晶化温度以上か
つ融点以下の温度範囲で行われる。熱処理温度を高温にすると、熱安定性が良く、その逆
に低温にすると、熱安定性が悪くなる。すなわち、熱処理温度を変えることで、熱収縮率
を変化させることが可能であり、温度条件は、用途に合わせ選択できる。
本発明の二軸延伸ポリエステル積層フィルムをテンター法で製造する場合は、前記ポリ
グリコール酸及びスルホネート基含有芳香族ポリエステルを共押出し成形して得られた積
層シートを、延伸ロールを用いて、通常、55〜70℃、好ましくは55〜65℃の温度
で縦方向に少なくとも1.5倍、好ましくは2〜4倍延伸し、次いで、テンターを用いて
、通常、60〜90℃、好ましくは70〜80℃の温度で横方向に少なくとも1.5倍、
好ましくは2〜10倍延伸することにより製造し得る。
共押出し成形して得られた積層シートを縦方向に延伸する際の延伸温度が55℃未満で
は多層シートが均一に延伸されず、横方向に延伸する際にポリグリコール酸層が割れ、良
好な二軸延伸ポリエステル積層フィルムを得ることができない虞がある。その理由は、縦
方向の延伸温度は70℃を超えても積層シートは均一に延伸できるが、70℃を超えて延
伸した積層フィルムは横方向に延伸する際にポリグリコール酸の結晶化が進み、横延伸で
その結晶を引き延ばすことができずポリグリコール酸層が割れ、均一な横延伸が行えなく
なる為である。
また、共押出し成形して得られた積層シートを縦方向に延伸する際に、積層シートの延
伸点を加熱しても良い。延伸点を加熱するには、補助加熱手段、例えば、抵抗加熱、熱風
加熱、誘導加熱、赤外線加熱等の加熱手段を用いることができる。これら補助加熱手段と
しては、赤外線、とくに遠赤外線が、本発明に係わるスルホネート基含有芳香族ポリエス
テル、ポリグリコール酸等の高分子化合物を、効率よく、しかも瞬時に加熱することがで
きるので、最も好ましい。
縦延伸した積層シートを横延伸する際の温度が60℃未満では、フィルムが破断、もし
くは、シートがテンターのチャックからはずれてしまい延伸が行えない虞がある。一方、
90℃を超えるとスルホネート基含有芳香族ポリエステル及びポリグリコール酸の結晶化
が進み均一な横延伸が行えなくなる虞がある。
<実施例>
【0019】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限
りこれらの実施例に制約されるものではない。
【0020】
実施例及び比較例における物性値等は、以下の評価方法により求めた。
<評価方法>
(1)引張特性:
二軸延伸ポリエステル積層フィルムからMD方向及びTD方向に短冊状の試験片(長さ
150mm、幅15mm)を採取して、チャック間距離100mmで引張り試験機(オリ
エンテック社製テンシロン万能試験機 RTC―1225)を用いて引張り試験を行い、
破断点における強度(応力)(MPa)、伸び(%)及びヤング率(MPa)を求めた。
なお、伸び(%)はチャック間距離の変化とした。
(2)酸素透過度:
モコン社製 OX−TRAN2/20を用い、JIS K 7126に準じ、温度20
℃、湿度80%RHの条件で測定した。
(3)加熱収縮率:
二軸延伸ポリエステル積層フィルムから長さ:120mm、幅:15mmのサンプルを
切出し、100mm間隔で標線を記入した。次いで、当該積層フィルムを所定の温度(8
0℃、100℃、120℃)に設定したオーブン中に15分間放置した後、取り出し、室
温に15分以上放置した後、標線間の長さ(L:mm)を測定した。〔(100−L)/
100〕×100(%)の値を、加熱収縮率(%)とした。
(4)融解特性:
JIS K7121及びK7122に準拠し、DSC(示差走査熱量計)を用い以下の
条件で求めた。
試料約5mgを精秤し、アルミパンに詰め、DSCとして、TAインスツルメント社製
Q100を用い、50ml/分の窒素雰囲気下、20℃から10℃/分の速度で250℃
まで昇温し、一旦融解させた後、250℃に10分間維持し、10℃/分の速度で20℃
まで降温して結晶化させた後、10℃に5分間維持した後、再度10℃/分の速度で25
0℃まで昇温して熱融解曲線を得、得られた熱融解曲線から試料の融解熱量及び融点(吸
熱ピーク温度)を求めた。
【0021】
実施例及び比較例で用いた重合体を以下に示す。
(1)ポリグリコール酸(PGA):
溶融粘度η* ;1,000〜1,500Pa・sec、融点;220℃、融解熱量;6
4J/g。
(2)スルホネート基含有芳香族ポリエステル(B)(SAE):
テレフタル酸45モル%、エチレングリコール37モル%、ジエチレングリコール9モ
ル%、5−スルホ−イソフタル酸ナトリウム1モル%、ヒドロキシ酢酸8モル%、密度:
1.35g/cm3 、融点(Tm):200℃、MFR(220℃、2160g荷重):
15g/10分。
【0022】
実施例1
<積層シートの製造>
先端にT−ダイを具備した40mmφの三種3層1軸押出機を用い、SAE/ PGA/
SAEを70/70/70/の厚み比率で押出し、30℃のキャスティングロールで急冷
し、厚さ210μmの三層構成の積層シートを得た。
PLA、PGAの押出温度はそれぞれ230℃、270℃とした。
<二軸延伸フィルムの製造>
得られた積層シートの表面をパンタグラフ式バッチ2軸延伸装置(ブルックナー社製
KARO―IV型)を用いて70℃×5秒のホットエアーにより予熱した後、8m/分の
速度で縦横方向に3.0倍延伸(同時二軸延伸)した。また延伸後120℃の雰囲気下で
10秒間ヒートセットした後、直ちに延伸フィルムを扇風機で冷却し、厚さ18μmの三
層構成の二軸延伸積層フィルムを得た。
得られた二軸延伸ポリエステル積層フィルムの物性を表1に示す。
【0023】
比較例1
実施例1で得られた積層シートを二軸延伸する際、100℃で予熱する以外は実施例1
と同様に行ったが、二軸延伸する際に積層シートが割れ、二軸延伸が行えなかった。
【0024】
参考例1
<シートの製造>
先端にT−ダイを具備した40mmφの1軸押出機を用い、SAEを押出し、30℃の
キャスティングロールで急冷し、厚さ210μmのシートを得た。
SAEの押出温度は230℃とした。
<二軸延伸フィルムの製造>
得られたシートを60℃に加熱したロールに導き、縦方向に3倍にロール延伸を行った
。そのロール間に赤外線ヒーター(W.C.Heraeus社製:2400W/200V
)を用いて延伸点の加熱を行った。この縦延伸シートをテンター式の横延伸装置により横
方向に80℃で3.5倍に延伸し3秒間160℃で熱固定し巻き取り、二軸延伸フィルム
を得た。
得られた二軸延伸フィルムの物性を表1に示す。














【0025】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の二軸延伸ポリエステル積層フィルムは、食品、医薬品等の包装用として用いら
れる際に求められる、内容物の視認性や美観などから透明性に優れると共に、内容物の酸
化などを防止するためのガスバリア性に優れている。
また、本発明の二軸延伸ポリエステル積層フィルムは、優れた生分解性を有しているの
で使用後に容易にその形状が崩壊し、自然環境の保護に寄与することができる。
さらに、生分解樹脂としては高融点であるため耐熱性に優れたバリアフィルムとしても
有効である。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
二軸延伸ポリグリコール酸フィルムの少なくとも片面に、芳香族ジカルボン酸成分90
〜99.8モル%及びスルホネート基含有芳香族ジカルボン酸成分10〜0.2モル%か
らなる酸成分と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分からなる二軸延伸スルホネー
ト基含有芳香族ポリエステルフィルムが積層されてなることを特徴とする二軸延伸ポリエ
ステル積層フィルム。
【請求項2】
二軸延伸スルホネート基含有芳香族ポリエステルフィルムが直接二軸延伸ポリグリコー
ル酸フィルムに積層されてなる請求項1記載の二軸延伸ポリエステル積層フィルム。
【請求項3】
二軸延伸ポリグリコール酸フィルムと二軸延伸スルホネート基含有芳香族ポリエステル
フィルムとが、共押出し成形法により得られた積層シートを二軸延伸してなる請求項2記
載の二軸延伸ポリエステル積層フィルム。

【公開番号】特開2006−130848(P2006−130848A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−324272(P2004−324272)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】