説明

二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムを含む缶用ラミネート金属板

【課題】大きな変形を伴う深絞り製缶時においても、ピンホールやクラック、破断等の成形不良が発生すること無く、また、耐衝撃性にも優れた飲料缶や食缶などの主要材料として用いられる缶用ラミネート金属板を得る。
【解決手段】
4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)すべての引張破断強度が170MPa以上、引張破断伸度が50%以上200%以下であるOPBTフィルムを金属板の片面、あるいは両面に1層、あるいは2層以上積層する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大きな変形を伴う深絞り製缶時においても、ピンホールやクラック、破断等の成形不良が発生すること無く、また、耐衝撃性にも優れた飲料缶や食缶などの主要材料として用いられる缶用ラミネート金属板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
飲料用や食用として広く使われているスチール缶やアルミ缶等の金属缶材料表面は、通常、内容物のフレーバー保持、耐腐食性、および印刷適性を付与する目的で樹脂被覆が施されている。その金属缶表面の樹脂被覆の方法は、従来の缶表面に熱硬化性樹脂成分からなる溶剤型塗料を塗布するタイプから種々のプラスチックフィルムを鋼板、またはアルミ板等の金属板にラミネートし、そのラミネート金属板を成形加工するラミネートタイプへの移行が、近年活発化している。例えば、飲料缶については、2ピース缶の底部及び缶胴部、3ピース缶の缶胴部がラミネート化されるようになってきた。このように缶用材料のラミネート化が志向されるようになった背景には、塗装・焼付けの省略による製造工程の合理化、溶媒乾燥工程(焼付工程)の省略による低環境負荷化、塗料に含まれる環境ホルモン溶出の回避等が挙げられる。
【0003】
金属板ラミネート用のプラスチックフィルムとしては、特許文献1〜6にあるように、保香性や耐衝撃性の改良、および製缶性の向上の観点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(以下、OPET)フィルムをベースに、他種類のポリエステル成分をブレンド、および/または共重合化、あるいはそれらを積層した種々の二軸延伸ポリエステル系フィルムの提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−147647公報
【特許文献2】特開平06−192442公報
【特許文献3】特開平10−324754公報
【特許文献4】特開2002−220482号公報
【特許文献5】特開2003−127277号公報
【特許文献6】特開2005−254629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、金属板ラミネート用のプラスチックフィルムとして、共重合OPETフィルム等原料種の変更により製缶性の向上、および結晶化の進行を抑制したタイプは、OPETフィルムと比較して、製缶後の印刷、レトルト殺菌処理前後で、大きな耐衝撃性の低下は見られないものの、もともとの耐衝撃性が不十分であるため、缶外部から大きな衝撃を受けた場合、被覆したフィルムの破損や剥離が生じることがあり問題であった。また、いずれの二軸延伸ポリエステル系フィルムにおいても、全方向でフィルム物性が均一では無い、すなわち異方性が大きいため、例えば大きな変形を伴う製缶加工(深絞り加工)では、製缶過程において、特定の方向でフィルムの白化(微小スクラックの発生)等の成形不良が発生する場合があり、改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究の結果、4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)すべての引張破断強度が170MPa以上、引張破断伸度が50%以上200%以下である二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(以下、OPBT)フィルムを金属板の片面、あるいは両面に1層、あるいは2層以上積層した缶用ラミネート金属板を飲料缶や食缶などの主要材料として用いることにより、優れた製缶性、および耐衝撃性を確保出来ることを見い出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の手段を提供する。
【0007】
1、金属板の片面、又は両面にOPBTフィルムが1層、又は2層以上積層された缶用ラミネート金属板であって、該OPBTフィルムの4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)すべての引張破断強度が170MPa以上、引張破断伸度が50%以上200%以下であることを特徴とする缶用ラミネート金属板、
2、金属板の片面、あるいは両面に積層するフィルムが、OPBTフィルムを含む複数のフィルムで構成されていることを特徴とする前項1に記載の缶用ラミネート金属板、
3、前記OPBTフィルムが、4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)の引張破断強度のうち、最大値と最小値の比が1.5以下のものであることを特徴とする前項1または2に記載の缶用ラミネート金属板、
4、前記OPBTフィルムが、ポリブチレンテレフタレート樹脂を溶融押出した直後に200℃/秒以上の冷却速度で急冷製膜して得られた未延伸原反を縦横それぞれ2.7〜4.0倍同時二軸延伸することにより得られるものであることを特徴とする前項1〜3のいずれか一項に記載の缶用ラミネート金属板である。
【発明の効果】
【0008】
4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)すべての引張破断強度が170MPa以上、引張破断伸度が50%以上200%以下であるOPBTフィルムを金属板の片面、あるいは両面に1層、あるいは2層以上積層した缶用ラミネート金属板を飲料缶や食缶などの主要材料として用いることにより、缶外部から大きな衝撃を受けても被覆したフィルムの破損や剥離が生じること無く、また、大きな変形を伴う深絞り加工時においても、成形不良が発生すこと無く、安定した製缶性を確保することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】前記実施形態におけるOPBTフィルムを製造するチューブラー延伸装置の工程図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
(OPBTフィルムの原料) OPBTフィルムに用いられる主原料は、ブチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステルであれば特に限定されるものでは無いが、具体的にはグリコール成分としての1,4−ブタンジオール、二塩基酸成分としてのテレフタル酸を主成分としたホモタイプが好ましい。また、最適な機械的強度特性を付与するためには、ポリブチレンテレフタレート系樹脂のうち、融点200〜250℃、IV値1.10〜1.35dl/gの範囲のものが好ましく、さらには融点215〜225℃、IV値1.15〜1.30dl/gの範囲のものが特に好ましい。なお、必要に応じて滑剤、アンチブロッキング剤、無機増量剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、着色剤、結晶化抑制剤、結晶化促進剤等の添加剤を加えても差し支えない。また、用いるポリエステル樹脂ペレットは加熱溶融時の加水分解による粘度低下を避けるため、加熱溶融前に水分率が0.05wt%以下、好ましくは0.01wt%以下になるように十分予備乾燥を行った上で使用するのが好ましい。
【0011】
(ポリブチレンテレフタレート未延伸原反の製造方法)OPBTフィルムを安定的に製造するには、延伸前未延伸原反の結晶化を極力抑制する必要があり、押出されたポリブチレンテレフタレート溶融体を冷却して製膜する際、該ポリマーの結晶化温度領域をある速度以上で冷却する、すなわち原反冷却速度が重要な因子となる。その原反冷却速度は200℃/秒以上、好ましくは250℃/秒以上、特に好ましくは350℃/秒以上であり、高い冷却速度で製膜された未延伸原反は極めて低い結晶状態を保っているため、延伸時のバブルの安定性が飛躍的に向上する。さらには高速での製膜も可能になることから、生産性も向上する。冷却速度が200℃/秒未満では、得られた未延伸原反の結晶性が高くなり延伸性が低下するばかりでなく、極端な場合には延伸バブルが破裂し、延伸が継続しない場合がある。
【0012】
原反製膜方式は、前記原反冷却速度を満たす方法であれば特に限定されるものでは無いが、急冷製膜の点では内外直接水冷式がもっとも適している。その内外直接水冷式による原反製膜法の概要を以下に説明する。まず、ポリブチレンテレフタレート樹脂は210〜260℃の温度に設定された押出機によって溶融混練され、Tダイ製膜の場合は、シート状の溶融樹脂を水槽に浸漬することにより内外とも直接水冷する。一方、環状製膜の場合は、押出機に下向きに取り付けられた環状ダイより下方に押し出され、溶融管状薄膜が成形される。
【0013】
次に環状ダイに連結されている冷却マンドレルに導かれ、冷却マンドレル各ノズルから導入された冷却水が溶融管状薄膜の内側に直接接触して冷却される。同時に、冷却マンドレルと組み合わせて使用される外部冷却槽からも冷却水が流され、溶融管状薄膜の外側にも冷却水が直接接触して冷却される。内部水、および外部水の温度は30℃以下が好ましく、急冷製膜の観点では20℃以下が特に好ましい。30℃より高くなると、原反の白化や冷却水の沸騰による原反外観不良等を招き、延伸も徐々に困難になる。
【0014】
(OPBTフィルムの製造方法)ポリブチレンテレフタレート未延伸原反は、25℃以下、好ましくは20℃以下の雰囲気温度に保ちつつ延伸ゾーンまで搬送する必要があり、当該温度管理下では滞留時間に関係無く、製膜直後の未延伸原反の結晶性を維持することが出来る。この延伸開始点までの結晶化制御は、前記未延伸原反の製膜技術とともに、ポリブチレンテレフタレート樹脂の二軸延伸を安定して行う上で重要なポイントと言える。
【0015】
同時二軸延伸法は、例えばチューブラー方式やテンター方式が挙げられるが、縦横の強度バランスの点で、チューブラー法が特に好ましい。図1はチューブラー法同時二軸延伸装置の概略図である。延伸ゾーンに導かれた未延伸原反1は、一対の低速ニップロール2間に挿通された後、中に空気を圧入しながら延伸用ヒーター3で加熱するとともに、延伸終了点に冷却ショルダーエアーリング4よりエアーを吹き付けることにより、チューブラー法によるMD、およびTD同時二軸延伸フィルム7を得た。延伸倍率は、延伸安定性や得られたOPBTフィルムの強度物性、透明性、および厚み均一性を考慮すると、MD、およびTDそれぞれ2.7〜4.5倍の範囲であることが好ましい。延伸倍率が2.7倍未満である場合、得られたOPBTフィルムの引張強度や衝撃強度が不十分となり好ましくない。また4.5倍超の場合、延伸により過度な分子鎖のひずみが発生するため、延伸加工時に破断やパンクが頻繁に発生し、安定的に生産出来ない。延伸温度は、40〜80℃の範囲が好ましく、特に好ましくは45〜65℃である。前記の高い冷却速度で製造した未延伸原反は、結晶性が低いため、比較的低温域の延伸温度で安定して延伸可能である。80℃を超える高温延伸では、延伸バブルの揺れが激しくなり、大きな延伸ムラが発生して厚み精度の良好なフィルムは得られない。一方、40℃未満の延伸温度では、低温延伸による過度な延伸配向結晶化が発生し、フィルムの白化等を招き、場合によって延伸バブルが破裂し延伸継続困難となる。このように二軸延伸加工を施すことにより、特に強度物性が飛躍的に向上し、かつ異方性が少ないOPBTフィルムを得ることが出来る。
【0016】
得られたOPBTフィルムを熱ロール方式またはテンター方式、あるいはそれらを組み合わせた熱処理設備に任意の時間投入し、180〜240℃、特に好ましくは190〜210℃で熱処理を行うことにより、熱寸法安定性に優れたOPBTフィルムを得ることができる。熱処理温度が220℃よりも高い場合は、ボーイング現象が大きくなり過ぎて幅方向での異方性が増加する、または結晶化度が高くなり過ぎるため強度物性が低下してしまう。一方、熱処理温度が185℃よりも低い場合は、フィルムの熱寸法安定性が大きく低下するため、ラミネートや印刷加工時にフィルムが縮み易くなり、実用上問題が生じる。
【0017】
OPBTフィルムの厚みは、特に制限されるものでは無いが、缶用ラミネート金属板の基材層として用いる場合は5〜50μm、好ましくは10〜30μmである。厚みが5μmよりも小さい場合は、ラミネート金属板の耐衝撃性が低くなり、製缶性も不十分となる。一方、50μmを超えると衝撃強度は向上するものの、特に破断防止や製缶性の向上への効果は小さく、金属板自体が厚くなるだけで経済的ではない。
【0018】
OPBTフィルムの4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)における引張破断強度は、いずれも170MPa以上、および4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)の引張破断強度のうち、最大値と最小値の比は1.5以下に調整することが好ましく、これにより、大きな変形を伴う製缶加工(深絞り加工)過程においても、特定の方向でフィルムの白化(微小スクラックの発生)等の成形不良が発生すること無く、安定した製缶性を確保することが出来る。いずれか一方向でも引張破断強度が170MPa未満の場合、あるいは4方向の引張破断強度のうち、最大値と最小値の比が1.5より大きい場合、特に深絞り加工時において、OPBTフィルム自体が容易に破断するようになり、安定した製缶性は得られない。一方、引張破断伸度は50%以上200%以下であり、好ましくは100%以上150%以下である。200%より大きい、あるいは50%より小さい場合、印刷や他基材と貼り合わせる際の張力により、フィルムの破断や伸び等が発生しやすくなるため好ましくない。このような特性をもつOPBTフィルムは、上述した製造方法により安定して得られる。
【0019】
(缶用ラミネート金属板の構成)本発明の缶用ラミネート金属板は、金属板のいずれか一方、又は両方の面に、基材層となるOPBTフィルムを1層又は2層以上積層して構成される。具体的には、外側から基材層−金属板の2層構成、基材層−金属板−基材層の3層構成等が挙げられるが、基材層は前記OPBTフィルム単独、OPBTフィルム同士の積層、もしくはOPBTフィルムとOPETフィルム、ONyフィルム、OPPフィルム等の他基材と併用して構成することも可能である。
【0020】
金属板としては、シート状又は帯状の鋼板、およびアルミニウム板、あるいはそれらの表面に種々のメッキ処理や化成処理を施したものが好適に用いられる。表層にクロム水和酸化物皮膜を有したものは、フィルムとの接着性が優れる。特に下層が金属クロム、上層がクロム水和酸化物の二層構造をもつティンフリースチール(TFS)が好ましく、さらに鋼板表面に錫、ニッケル、亜鉛、アルミニウム等の一種または二種以上の複層メッキ、合金メッキを施し、その上層に上記の二層構造を持つ皮膜、あるいはクロム水和酸化物皮膜を形成させたもの、アルミニウムに電解クロム酸処理、浸漬クロム酸処理等を施し、表層にクロム水和酸化物皮膜を形成させたもの等を用いることが出来る。金属板の厚みは、金属板の種類、容器の用途、サイズ、および形状によっても異なるが、一般に0.10〜0.50mmのものが好ましく、その中でも表面処理鋼板の場合は0.10〜0.30mm、軽金属板の場合は0.15〜0.40mmのものが特に好ましい。
【0021】
本発明の缶用ラミネート金属板は、OPBTフィルム等の基材層と金属板とを熱ラミネート法によりラミネートすることにより得られる。その熱ラミネートの方法は、金属板をOPBTフィルムの金属板に接触する表層部のみが溶融される温度、すなわちホモPBT樹脂の軟化点温度以上の温度にあらかじめ予熱し、該金属板とフィルムを温度制御可能なロールによって圧接して熱圧着させた後、室温まで急冷することにより連続的に製造される。金属板の加熱方法としては、ヒーターロール伝熱方式、誘導加熱方式、抵抗加熱方式、熱風伝達方式等があげられ、特に設備費、および設備の簡素化を考慮した場合、ヒーターロール伝熱方式が好ましい。また、ラミネート後の冷却方法については、水等の冷媒中に浸漬する方法や冷却ロールと接触させる方法を用いることができる。
【実施例】
【0022】
以下に実施例および比較例を用いて、本発明を具体的に説明する。
<実施例1> (OPBTフィルムの製造)
140℃で5時間熱風乾燥機にて乾燥したポリブチレンテレフタレート樹脂ペレット(ホモタイプ、融点=224℃、IV値=1.26dl/g)を押出機中、シリンダーおよびダイ温度210〜260℃の各条件で溶融混練して溶融管状薄膜を環状ダイより下方に押し出した。引き続き、冷却マンドレルの外径を通しカラプサロールで折り畳んだ後、引取ニップロールにより1.2m/min.の速度で製膜引取りを行った。溶融管状薄膜に直接接触する冷却水の温度は内側、外側ともに20℃であり、原反冷却速度は416℃/秒であった。未延伸原反の折径は143mmであり、ポリブチレンテレフタレート樹脂中にはあらかじめ滑剤としてステアリン酸マグネシウムを500ppmを添加した。以上の条件で製膜した未延伸原反1を20℃の雰囲気中で低速ニップロール2まで搬送し、図1に示す構造のチューブラー同時二軸延伸装置にて縦横同時二軸延伸を行った。延伸倍率はMDが3.0倍、TDが2.8倍であり、延伸温度は60℃であった。次に、この二軸延伸フィルム7を熱ロール式、およびテンター式熱処理設備にそれぞれ投入し、210℃で熱処理を施すことによりOPBTフィルムを得た。なお、OPBTフィルムの厚みは15μmであった。
【0023】
(原反冷却速度の測定方法)前記原反冷却速度は下記に示した式により算出した。溶融薄膜、および原反温度は接触式の放射温度計にて測定した。また、冷却開始点は溶融薄膜が冷却水、または冷却装置に接触する部分、冷却終了点は未延伸原反の温度が30℃に到達する部分をいう。
原反冷却速度(℃/秒)=(冷却開始点直前の溶融薄膜温度−冷却終了点の原反温度)(℃)/(冷却開始点〜冷却終了点間距離)(m)×冷却開始点〜冷却終了点間の原反の通過速度(m/秒)
【0024】
(OPBT系フィルムの引張破断強伸度の評価方法) OPBTフィルムの引張破断強伸度は、オリエンテック製―テンシロン(RTC−1210−A)を使用し、試料幅15mm、チャック間100mm、引張速度200mm/minの条件で、0℃(MD)方向/45°方向/90°(TD)方向/135°方向の4方向についてそれぞれ測定を行った。得られた応力−ひずみ曲線に基づいて求めた、各方向での引張破断強度、破断伸度、および4方向の引張破断強度のうち最大値と最小値の比を表1に示した。
【0025】
(缶用ラミネート金属板、缶の作成方法、および製缶性、耐衝撃性の評価方法)得られたOPBTフィルムを、260℃に加熱した板厚み0.25mmのTFSの両面に貼合せ、水で急冷した後150mm径の円板状に切取り、次いで絞りダイスとポンチを用いて2段階で深絞り加工し、55mm径の2ピース缶を作成した。この2ピース缶の製缶性、および耐衝撃性を下記の基準で評価した。
【0026】
(1)製缶性
○:缶内面、および外面のフィルムに白化や破断が無く、缶内フィルム面の防錆性試験(1%NaCl水を缶内に入れ、電極を挿入し、缶体を陽極にして6Vの電圧をかけた時の電流値を測定する。以下ERV試験と略す)において0.1mA未満を示す。
×:缶内面、および/または外面の一部フィルムに破断が認められる、あるいは缶内フィルム面のERV試験にお
いて電流値が0.1mA以上を示す。
【0027】
(2)耐衝撃性
成形加工性が良好な缶についてのみ、水を満タンに注入、密閉し、各テストにつき10個ずつを1mの高さから塩ビタイル床面に落した後、缶内フィルム面のERV試験を行い、下記基準にて耐衝撃性を評価した。
○:全10個が0.1mA未満であった。
×:5個以上が0.1mA以上であった。
【0028】
<実施例2〜3、比較例1〜3> 実施例1において、OPBTフィルム製造時の延伸倍率を表1に記載した条件に変えた以外は実施例1と同様に行った。
【0029】
<実施例4〜10> 実施例1において、ラミネート構成を表1に記載した素材、条件に変えた以外は実施例1と同様に行った。なお、OPETフィルムはフタムラ化学製、FE2001、フィルム厚み16μmを用いた。
【0030】
<比較例4>実施例1において、基材層をOPETフィルム(フタムラ化学製、FE2001、フィルム厚み16μm)に変えた以外は実施例1と同様に行った。
【0031】
<比較例5>実施例1において、原料種をイソフタル酸5mol%共重合PET樹脂、押出温度を210〜275℃に変えた以外は実施例1と同様に行った。
【0032】
<比較例6>実施例1において、原料種をホモPET樹脂/ホモPBT樹脂=50/50ブレンド品、押出温度を210〜275℃に変えた以外は実施例1と同様に行った。
【0033】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のOPBTフィルムを含むラミネート金属板は、特に製缶性、耐衝撃性に優れていることから、特に大きな変形を伴う深絞り加工を施して製造される飲料缶や食缶全般の金属製容器の主要材料として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0035】
1 未延伸原反
2 低速ニップロール
3 延伸用ヒーター
4 冷却ショルダーエアーリング
5 カラプサロール
6 高速ニップロール
7 二軸延伸フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板の片面、又は両面に二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムが1層、又は2層以上積層された缶用ラミネート金属板であって、該二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムの4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)すべての引張破断強度が170MPa以上、引張破断伸度が50%以上200%以下であることを特徴とする缶用ラミネート金属板。
【請求項2】
金属板の片面、あるいは両面に積層するフィルムが、二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムを含む複数のフィルムで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の缶用ラミネート金属板。
【請求項3】
前記二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムが、4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)の引張破断強度のうち、最大値と最小値の比が1.5以下のものであることを特徴とする請求項1または2に記載の缶用ラミネート金属板。
【請求項4】
前記二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムが、ポリブチレンテレフタレート樹脂を溶融押出した直後に200℃/秒以上の冷却速度で急冷製膜して得られた未延伸原反を縦横それぞれ2.7〜4.0倍同時二軸延伸することにより得られるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の缶用ラミネート金属板。

【図1】
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【公開番号】特開2013−95071(P2013−95071A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240732(P2011−240732)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000142252)興人ホールディングス株式会社 (182)
【Fターム(参考)】