説明

二軸延伸多層ポリプロピレンフィルム

【課題】石油樹脂等のフィルム表面への滲み出しを抑制でき、ラミネート強度に優れ、しかもその低下がない防湿性に優れる二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得ることを目的とする。
【解決手段】プロピレン単独重合体75〜90重量%及び粘着付与剤25〜10重量%を含むプロピレン重合体組成物からなる二軸延伸フィルムの片面に、プロピレン系重合体からなる層を介して融点(Tm)が125〜145℃の範囲のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体からなる層を有し、前記二軸延伸フィルムの他の片面に、プロピレン系重合体からなる層を有してなることを特徴とする二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防湿性、印刷適性及びラミネート強度に優れた二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
二軸延伸ポリプロピレンフィルム(以下OPPフィルムと呼ぶことがある)は、その優れた透明性、機械的強度、剛性等を活かして包装材料をはじめ広い分野で使用されている。又、OPPフィルムの防湿性を改良するために、石油樹脂、テルペン樹脂等の粘着付与剤を添加する方法も多々提案されている。そして、石油樹脂がOPPフィルムの表面にブリードアウトするのを防ぐ方法として、石油樹脂を含むOPPフィルムの両面あるいは片面に、石油樹脂を含まないポリプロピレン層をラミネートすることが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【0003】
OPPフィルムの防湿性は、石油樹脂の添加量を増やすことにより、より改良されるが、石油樹脂量が増すとともに、OPPフィルムの表面に滲み出る石油樹脂の量が増し、表面がべたついたり、他の層と積層(ラミネート)した場合に、ラミネート強度が低下する虞がある。石油樹脂の滲み出る量を抑制するには、石油樹脂を含むOPPフィルムの両側に積層するポリプロピレン層の厚さをある程度厚くすれば改良されるが、当該層を厚くすれば、OPPフィルムの防湿性が低下する虞がある等の問題点がある。
【特許文献1】特開平7−157573号公報
【特許文献2】特開昭60−210647号公報
【特許文献3】特表平1−500102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、石油樹脂等の粘着付与剤の添加量を増しても、フィルム表面への滲み出しを抑制でき、ラミネート強度に優れ、しかもその低下がない防湿性に優れる二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、プロピレン単独重合体(A)75〜90重量%及び粘着付与剤(D)25〜10重量%を含むプロピレン重合体組成物からなる二軸延伸フィルムの片面に、融点が155℃以上のプロピレン系重合体(B)からなる層を介して融点が125〜145℃の範囲のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)からなる層を有し、前記二軸延伸フィルムの他の片面に、プロピレン系重合体(E)からなる層を有してなることを特徴とする二軸延伸多層ポリプロピレンフィルム及びかかる二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムのプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)からなる層上に、ビニルアルコール系重合体(F)からなる層を有してなる二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムに関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムは、防湿性、印刷適性、及びラミネート強度に優れる。又、ビニルアルコール系重合体層を積層してなる二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムは、更に、ガスバリア性にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
プロピレン単独重合体(A)
本発明の二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムの二軸延伸フィルムを形成する成分の一つであるプロピレン単独重合体(A)は、プロピレンの単独重合体からなり、MFR(メルトフローレート;ASTM D−1238 荷重2160g、温度230℃)が、通常0.5〜10g/10分、好ましくは2〜5g/10分の範囲にある。
【0008】
本発明に係わるプロピレン単独重合体(A)は、好ましくはアイソタクチックインデックスが95%以上である。プロピレン単独重合体(A)として、かかるアイソタクチックインデックスが95%以上を用いることにより、より防湿性に優れる二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムを得ることができる。
【0009】
粘着付与剤(D)
本発明の二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムの二軸延伸フィルムを形成する他の成分である粘着付与剤(D)は、一般に粘着付与剤として製造・販売されている樹脂状物質で、具体的には、クマロン・インデン樹脂等のクマロン樹脂、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、テルペン・フェノール樹脂、ポリテルペン樹脂及びキシレン・ホルムアルデヒド樹脂等のフェノール,テルペン樹脂、合成ポリテルペン樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、脂肪族・脂環族系石油樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂、不飽和炭化水素重合体、水素添加炭化水素樹脂及び炭化水素系粘着化樹脂等の石油系炭化水素樹脂、ロジンのペンタエリスリトール・エステル、ロジンのグリセロール・エステル、水素添加ロジン、水素添加ロジンエステル、特殊ロジンエステル及びロジン系粘着付与剤等のロジン誘導体及びテルペン系粘着付与剤等を例示できる。
【0010】
これらの中では、軟化点が110℃以上、好ましくは125〜145℃の範囲にある水素添加率が95%以上、更には99%以上の水素添加炭化水素樹脂、水素添加脂肪族系環状炭化水素樹脂、水素添加脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加テルペン樹脂、水素添加合成ポリテルペン樹脂等の水素添加樹脂が、プロピレン単独重合体(A)との相溶性に優れるので好ましい。軟化点が110℃未満のものは成形時に発煙の問題が発生し、成形機を汚ごす虞が生ずる場合があり、一方、145℃を超えるものはプロピレン単独重合体(A)と相溶しづらくなるため二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムの外観が悪くなる虞がある。
【0011】
プロピレン重合体組成物
本発明の二軸延伸フィルムを形成するプロピレン重合体組成物は、前記プロピレン単独重合体(A)が75〜90重量%、好ましくは80〜90重量%及び前記粘着付与剤(D)を25〜10重量%、好ましくは10〜20重量%の範囲で含む組成物である。粘着付与剤(D)が10重量%未満の組成物では、防湿性に優れる二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムが得られず、一方、25重量%を超える組成物は、得られる二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムの透明性が損なわれ、防湿性の改善効果も少ない虞がある。
【0012】
本発明に係わるプロピレン重合体組成物には、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機または有機の充填剤等の通常ポリオレフィンに用いる各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加しておいてもよい。
【0013】
プロピレン系重合体(B)
本発明の二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムに係わるプロピレン系重合体(B)層を形成するプロピレン系重合体(B)は、融点が155℃以上、好ましくは157〜170℃のプロピレンの単独重合体若しくはプロピレンと少量、例えば、2モル%以下のエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル・1−ペンテン、1−オクテン等のα−オレフィンとのランダム共重合体である。かかるプロピレン系重合体としては、プロピレン単独重合体が好ましい。融点(Tm)が155℃未満のプロピレン系重合体は、前記プロピレン系重合体組成物に含まれる粘着付与剤(D)の滲み出しを抑制できない虞がある。
【0014】
本発明に係わるプロピレン系重合体(B)のMFR(メルトフローレート;ASTM D−1238 荷重2160g、温度230℃)は二軸延伸フィルムとすることができる限り特に限定はされないが、通常、0.5〜10g/10分、好ましくは2〜5.0g/10分の範囲にある。
【0015】
本発明に係わるプロピレン系重合体(B)は、前記プロピレン単独重合体(A)と同一の範疇の重合体であってもよい。
【0016】
また、本発明に係わるプロピレン系重合体(B)には、前記粘着付与剤(D)を、プロピレン系重合体(B)と粘着付与剤(D)の合計量に対して、10重量%以下の量で添加しておいてもよい。粘着付与剤(D)の量が、10重量%を超えると、粘着付与剤(D)の滲み出しを抑制することができなくなる虞がある。
【0017】
プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)
本発明の二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムに係わるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)層を形成するプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)は、融点が125〜145℃、好ましくは130〜143℃の範囲にあるプロピレンとα−オレフィンとのランダム共重合体である。融点が145℃を越えると、得られる二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムのヒートシール性、ラミネート強度が改良されない虞があり、一方、125℃未満では得られる二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムにべたが発生し、ブロッキングし易くなる虞がある。α―オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル・1−ペンテン、1−オクテン等が例示できる。具体的な共重合体としては、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体等が挙げられる。これら共重合体は、単独で用いても良いし、二種以上を混合して用いても良い。
【0018】
本発明に係わるプロピレン・α−オレフィン共重合体(C)のMFR(メルトフローレート;ASTM D−1238 荷重2160g、温度230℃)はフィルム形成能がある限り特に限定はされないが、通常0.5〜15g/10分、好ましくは2〜10g/10分の範囲にある。
【0019】
本発明に係るプロピレン・α−オレフィン共重合体(C)には耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機または有機の充填剤等の通常ポリオレフィンに用いる各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加しておいてもよい。
【0020】
また、ブロッキング防止剤を0.01〜3.0重量%、好ましくは0.05〜1.0重量%を添加しておくと、透明性に優れ、且つブロッキング防止性を有する二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムとすることができる。ブロッキング防止剤の量が0.01重量%未満では、得られる二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムのブロッキング防止効果が充分でなく、一方、3.0重量%を越えると、得られる二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムの透明性が劣る傾向にある。かかるブロッキング防止剤としては、種々公知のもの、例えば、シリカ、タルク、雲母、ゼオライトや更には金属アルコキシドを焼成して得た金属酸化物等の無機化合物粒子、ポリメタクリル酸メチル、メラミンホルマリン樹脂、メラミン尿素樹脂、ポリエステル樹脂等の有機化合物粒子等を用い得る。これらの中でも、シリカ、ポリメタクリル酸メチルがアンチブロッキング性、透明性の面から特に好ましい。
【0021】
プロピレン系重合体(E)
本発明の二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムに係わるプロピレン系重合体(E)層を形成するプロピレン系重合体は、融点が155℃以上、好ましくは157〜170℃のプロピレンの単独重合体若しくはプロピレンと少量、例えば、2モル%以下のエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル・1−ペンテン、1−オクテン等のα−オレフィンとのランダム共重合体である。かかるプロピレン系重合体としては、プロピレン単独重合体とプロピレンランダム共重合体との組成物であってもよい。
【0022】
本発明に係わるプロピレン系重合体(E)のMFR(メルトフローレート;ASTM D−1238 荷重2160g、温度230℃)はニ軸延伸フィルムとすることができる限り特に限定はされないが、通常0.5〜10g/10分、好ましくは2〜5.0g/10分の範囲にある。
【0023】
本発明に係わるプロピレン系重合体(E)は、前記プロピレン単独重合体(B)と同一の範疇の重合体であってもよい。
【0024】
本発明に係るプロピレン系重合体(E)には耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機または有機の充填剤等の通常ポリオレフィンに用いる各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加しておいてもよい。
【0025】
また、上記同様、ブロッキング防止剤を0.01〜3.0重量%、好ましくは0.05〜1.0重量%を添加しておくと、透明性に優れ、且つブロッキング防止性を有する二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムとすることができる。ブロッキング防止剤の量が0.01重量%未満では、得られる二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムのブロッキング防止効果が充分でなく、一方、3.0重量%を越えると、得られる二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムの透明性が劣る傾向にある。かかるブロッキング防止剤としては、種々公知のもの、例えば、シリカ、タルク、雲母、ゼオライトや更には金属アルコキシドを焼成して得た金属酸化物等の無機化合物粒子、ポリメタクリル酸メチル、メラミンホルマリン樹脂、メラミン尿素樹脂、ポリエステル樹脂等の有機化合物粒子等を用い得る。これらの中でも、シリカ、ポリメタクリル酸メチルがアンチブロッキング性、透明性の面から特に好ましい。
【0026】
ビニルアルコール系重合体(F)
本発明に係わるビニルアルコール系重合体(F)は、酢酸ビニル系重合体をケン化して得られる分子内に水酸基を持つ、好ましくは水に可溶の重合体である。原料である酢酸ビニル系重合体は酢酸ビニルの単独重合体であってもよいし、他の共重合可能なモノマー、例えばエチレン、プロピレンまたは1−ブテン等のα―オレフィン等が30モル%まで共重合されたものであってもよい。共重合のモノマーが30モル%を越えると、ガスバリア性が低下して、バリア材としての性能が不十分になる。
【0027】
ビニルアルコール系重合体(F)のケン化度は通常90%以上、好ましくは99%以上であり、この範囲にあると高湿度下でのバリア性が維持される。重合度は特に制限されないが300〜5000、より好ましくは500〜2000の範囲が望ましい。重合度が300以下ではガスバリア性が不充分な虞があり、5000以上ではかかるビニルアルコール系重合体(E)を塗布する際の分散液の粘度が高くなりすぎて塗布加工が難しくなる。
【0028】
無機層状化合物
本発明に係わるビニルアルコール系重合体(F)には、無機層状化合物を添加しておいてもよい。かかる無機層状化合物は、極薄の単位結晶層が1枚または数枚重なった多層構造をもって板状の粒子を形成している無機化合物のことであり、粘土鉱物が好ましく用いられる。本発明における粘土鉱物とは極薄の単位結晶層間に水を配位、吸収する性質、特には水分子が配位することにより浸漬前より体積が増加する化合物を持つ粘土化合物であり、一般にはSi4+がO2−対して配位し4面体構造を構成する層とAl、Mg2+、Fe2+、Fe3+、Li等がO2−およびOHに対して配位し8面体構造を構成する層とが1対1あるいは2対1で結合し積み重なって層状構造を構成しており、天然のものであっても合成されたものでも良い。代表的なものとしては、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、カオリナイト、ハロイサイト、バーミキュライト、ディッカイト、ナクライト、アンチゴライト、パイロフィライト、マーガライト、タルク、テトラシリリックマイカ、白雲母、金雲母、緑泥石等が挙げられる。中でも、スメクタイト群と呼ばれているモンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライトやサポナイトが好ましく用いられ、更には不純物の少ない合成品が好ましく、その中でも結晶構造が成長し、アスペクト比を大きくできる溶融法で生成したナトリウム型テトラシリシックマイカが特に好ましい。
【0029】
上記層状化合物の層と層との間には通常陽イオンが保持されている。このような層間イオンとしては、K+、Na+、Li+等のアルカリ金属イオンを例示することが出来る。特に陽イオンが膨潤性を向上させるためにNaで置換されていることが好ましい。
【0030】
二軸延伸多層ポリプロピレンフィルム
本発明の二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムは、前記プロピレン単独重合体及び粘着付与剤(D)を含むプロピレン重合体組成物からなる二軸延伸フィルムの片面に、前記プロピレン系重合体(B)からなる層を介してプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)からなる層を有し、他の片面に、プロピレン系重合体(E)からなる層を有してなることを特徴とする二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムである。
【0031】
本発明の二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムの厚さは用途により種々決められるものであり、特に限定はされないが、通常、プロピレン重合体組成物からなる二軸延伸フィルムが10〜100μm、好ましくは15〜50μm、プロピレン系重合体(B)層が0.5〜15μm、好ましくは1〜10μm、プロピレン・α−オレフィン共重合体(C)層が0.5〜15μm、好ましくは1〜10μm、他の片面にあるプロピレン系重合体(B)層が0.5〜15μm、好ましくは1〜10μmの範囲にある。
【0032】
本発明の二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムは、ラミネート層となるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)層と粘着付与剤(D)を含むプロピレン重合体組成物からなる二軸延伸フィルムとの間に、プロピレン系重合体(B)層を有するので、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)層の表面に、粘着付与剤(D)が滲み出す虞が極めて少ないので、得られる二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムの表面がべたつかず、また、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)層の表面に、ビニルアルコール系重合体(E)を積層(ラミネート)した際にも、良好な接着強度(ラミネート強度)が得られる。
【0033】
また、本発明の二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムは、前記プロピレン単独重合体及び粘着付与剤(D)を含むプロピレン重合体組成物からなる二軸延伸フィルムの片面に、前記プロピレン系重合体(B)からなる層を介してプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)からなる層を有し、他の片面に、プロピレン系重合体(E)からなる層を有し、且つ、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)からなる層上に、ビニルアルコール系重合体(F)からなる層を有してなる二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムでもある。
【0034】
かかる二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムの各層の厚さは、ビニルアルコール系重合体(E)層若しくは無機層状化合物を含むビニルアルコール系重合体(E)層が0.1〜10μm、好ましくは0.2〜3μmの範囲にある。
【0035】
本発明の二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムは、種々用途に応じ、他の層、例えば、低温ヒートシール性を付与するために、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、結晶性あるいは低結晶性のエチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体あるいはプロピレンとエチレンもしくは炭素数4以上のα−オレフィンとのランダム共重合体、ポリブテン、エチレン・酢酸ビニル共重合体等の低融点のポリマーを単独あるいはそれらの組成物をプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)層上、あるいはプロピレン系重合体(E)からなる層上、若しくはビニルアルコール系重合体(F)若しくは無機層状化合物を含むビニルアルコール系重合体(F)層に積層してもよい。
【0036】
また、更に、ガスバリア性を付与するために、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリアミド、ポリエステル、塩化ビニリデン系重合体等を押出しコーティング、フィルムラミネート等で積層してもよいし、金属あるいはその酸化物、シリカ等を蒸着してもよい。勿論、他の物質との接着性を増すために、延伸フィルムの表面をイミン、ウレタン等の接着剤でアンカー処理してもよいし、無水マレイン酸変性ポリオレフィンを積層してもよい。
【0037】
二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムの製造方法
本発明の二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムは、例えば、プロピレン単独重合体(A)と粘着付与剤(D)を所定量含むプロピレン重合体組成物、プロピレン系重合体(B)及び(E)、及びプロピレン・α−オレフィン共重合体(C)とを共押出し成形して得たプロピレン系重合体(E)/プロピレン重合体組成物/プロピレン系重合体(B)/プロピレン・α−オレフィン共重合体(C)からなる多層シートを、公知の同時二軸延伸法あるいは逐次二軸延伸法等の二軸延伸フィルム製造方法を用いて製造し得る。二軸延伸の条件は、公知のOPPフィルムの製造条件、例えば、逐次二軸延伸法では、縦延伸温度を115℃〜145℃、延伸倍率を4.5〜6倍の範囲、横延伸温度を150〜190℃、延伸倍率を9〜11倍の範囲にすればよい。
【0038】
プロピレン・α−オレフィン共重合体(C)層上に、ビニルアルコール系重合体(F)からなる層を有してなる二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムは、前記記載の製造方法で二軸延伸多層フィルムを得た後、ビニルアルコール系重合体(F)若しくは無機層状化合物を含むビニルアルコール系重合体(F)の分散液を塗布・乾燥する方法により製造し得る。又、ビニルアルコール系重合体(F)の分散液等を塗布する場合は、共押出し成形して得た多層シートに塗布した後、二軸延伸してもよいし、共押出し成形して得た多層シートを縦方向に延伸したシートに塗布した後、横方向に延伸して二軸延伸多層フィルムとしてもよい。
【0039】
ビニルアルコール系重合体(F)等の分散液には、プロピレン・α−オレフィン共重合体(C)層との密着性向上、及び/または皮膜の強度向上のためにビニルアルコール系重合体(F)に架橋剤成分を添加しても良い。かかる架橋剤成分としては、シランカップリング剤、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、アミン系化合物などがあるが、高湿度下でも密着性低下しないことからイソシアネート系架橋剤が好ましく、特に水性の自己乳化タイプが水溶液中で安定であるので好ましい。その添加量はビニルアルコール系重合体(F)に対し重量比で1〜10%の範囲にあることが好ましい。
【0040】
又、ビニルアルコール系重合体(F)等の分散液に架橋剤成分を添加する代りに、プロピレン・α−オレフィン共重合体(C)層の表面を種々公知のアンカー(AC)剤、例えば有機チタン系AC剤、ポリウレタン系AC剤、ポリエチレンイミン系AC剤、ポリブタジエン系AC剤等で処理しておいてもよい。
【0041】
本発明に係わるビニルアルコール系重合体(F)には、本発明の目的を阻害しない範囲で濡れ性向上剤、帯電防止剤、その他各種添加剤を加えることが可能である。特に、アンチブロッキング剤として粒径が0.1〜10μm程度の酸化珪素、カオリン等の無機系微粒子やポリメチルメタクリレート、メラミン等の有機系微粒子を好ましく用いることが出来る。
【0042】
ビニルアルコール系重合体(F)の分散媒としては、コスト、作業環境面から水が好ましく用いられるが、水以外の溶媒、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、或いはその他ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等を必要に応じて、1種または2種以上を組み合わせて加えることも可能である。
【実施例】
【0043】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれらの実施例に制約されるものではない。
【0044】
実施例及び比較例における物性等は、以下の評価方法により求めた。
(1)アイソタクチックインデックス
プロピレン単独重合体の樹脂ペレットの重量をW(mg)はかり取り、ソックスレー抽出器に入れ沸騰n−ヘプタンで12時間抽出する。抽出残渣をアセトンで洗浄した後、130℃で6時間乾燥する。その後室温まで冷却した後重量W(mg)を測定し、次式より求める。
【0045】
アイソタクチックインデックス(%)=(W/W)×100
(2)融点
DSC(示差走査熱量計)として、ティー・エイ・インスツルメント社製 Q100を用い、試料約5mgを精秤し、JIS K 7121に準拠し、窒素ガス流入量:50ml/分の条件下で、25℃から加熱速度:10℃/分で200℃まで昇温し、当該温度に10分間保った後、冷却速度:10℃/分で25℃まで冷却し、当該温度に10分間保った後、再度加熱速度:10℃/分で200℃まで昇温し、その際得られたDSC曲線の最大融解ピークの温度を融点とした。
(3)濡れ張力
二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムのプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体層の表面を110℃、30秒間熱処理し、コロナ処理面を和光純薬製濡れ張力試験用混合液(標準液)にて測定した。単位はmN/mである。
(4)水蒸気透過度
JISZ0208(カップ法)に準じて測定(40℃、90%RH)を行った。単位はg/m・dayである。
(5)ラミネート強度
二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムのポリビニルアルコール系重合体層に50μmの無延伸ポリエチレンフィルム(東セロ製L−LDPE FCS)をドライラミネートした後15mm幅に切り出し、オリエンテック製引張り試験機(型式RTC−1225A)に於いて300mm/minの引張り速度で引き剥がし、その際の強度(単位はN/15mm)をラミネート強度とした。
【0046】
実施例1
<プロピレン重合体組成物(A+D)層>
二軸延伸フィルム用の原料として、プロピレン単独重合体(融点;166℃、アイソタクチックインデックス;99.2%、MFR;3.0g/10分)に軟化点135℃のジシクロペンタジエン系粘着付与剤を10%添加したプロピレン重合体組成物を用意した。
<プロピレン系重合体層(B層、E層)>
プロピレン系重合体層の原料として、融点;162℃、MFR;3.0g/10分のプロピレン系重合体を用意した。
<プロピレン・α−オレフィン共重合体(C)層>
プロピレン・α−オレフィン共重合体層の原料として、エチレンから導かれる単位の含有量;4.0モル%、ブテン−1から導かれる単位の含有量;1.1モル%、融点;138℃、MFR;7.0g/10分のプロピレン・α−オレフィン共重合体を用意した。
<ビニルアルコール系重合体(F層)>
ビニルアルコール系重合体層の原料として、ケン化度;99.5%、重合度;1700のポリビニルアルコールを水に溶解し、5%濃度の水溶液を得た。この水溶液に無機膨潤性無機層状化合物(トピー工業製合成マイカ)を固形分比で6%添加し、更に物水性ウレタン(三井武田ケミカル製 WD726)を固形分比で3%、及び塗れ向上剤としてアニオン系界面活性剤(花王製ネオペレックスG15)を0.5%添加し、ビニルアルコール系重合体組成物を用意した。
<二軸延伸多層ポロプロピレンフィルムの製造>
前記、プロピレン系重合体(E)、プロピレン重合体組成物(A+D)、プロピレン系重合体(B)、及びプロピレン・α−オレフィン共重合体(C)を押出量比1/18/2/1になるよう各々スクリュー押出機を用いて溶融押出しマルチマニホールドT−ダイを用いて賦形し、冷却ロール上にて急冷し厚さ約1.0mmの共押出多層シートを得た。この多層シートを約120℃に加熱しシートの流れ方向(縦方向)に5倍に延伸した。この5倍延伸したシートを155℃に加熱し流れ方向に対して直交する方向(横方向)に10倍延伸し、次いで、二軸延伸ポリプロピレンフィルムのプロピレン・α−オレフィン共重合体層面にコロナ処理を施し、合計の厚さ22μmの二軸延伸多層ポリプロピレンフィルム(基材フィルム)を得た。
【0047】
二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムのプロピレン・α−オレフィン共重合体層面にポリビニルアルコール重合体組成物をバーコート法(メイヤーバー#14)にて塗布し、110℃で30秒間乾燥した。塗膜の厚みは0.5μmであった。
得られた二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムを40℃で1日エージングした後、水蒸気透過度、ラミネート強度を測定した。評価結果を表1に示す。
得られた二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムは、優れた水蒸気透過度と高い塗れ性、十分なラミネート強度を示している。
【0048】
比較例1
実施例1においてジシクロペンタジエン系粘着付与剤の添加量を5%とする以外は実施例1同様に実施した。高い塗れ性と十分なラミネート強度を有しているが、水蒸気透過度は十分では無い。
【0049】
比較例2
実施例1で用いた二軸延伸多層ポリプロピレンフィルム(基材フィルム)に換えて、プロピレン系重合体(E)、プロピレン重合体組成物(A+D)及びプロピレン系重合体(B)の三層からなる二軸延伸多層ポリプロピレンフィルム(基材フィルム)を用いる以外は実施例1と同様に行い、プロピレン系重合体(B)層の表面にポリビニルアルコール重合体組成物を形成してなる二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムを得た。
【0050】
得られた二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムは、水蒸気透過度は優れ、基材フィルムは高い塗れ性を維持しているが、ラミネート強度は十分では無い。
【0051】
比較例3
実施例1で用いた二軸延伸多層ポリプロピレンフィルム(基材フィルム)に換えて、プロピレン系重合体(E)、プロピレン重合体組成物(A+D)及びプロピレン・α−オレフィン共重合体(C)の三層からなる二軸延伸多層ポリプロピレンフィルム(基材フィルム)を用いる以外は実施例1と同様に行い、プロピレン・α−オレフィン共重合体(C)層の表面にポリビニルアルコール重合体組成物を形成してなる二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムを得た。
【0052】
得られた二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムは、水蒸気透過度は優れているが、基材フィルムの塗れ性は低下し、ラミネート強度も十分では無い。
【0053】
【表1】

表1の結果から明らかなように、本発明のプロピレン単独重合体(A)75〜90重量%及び粘着付与剤(D)25〜10重量%を含むプロピレン重合体組成物からなる二軸延伸フィルムの片面に、融点が155℃以上のプロピレン系重合体(B)からなる層を介して融点が125〜145℃の範囲のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)からなる層を有し、前記二軸延伸フィルムの他の片面に、プロピレン系重合体(E)からなる層を有してなることを特徴とする二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムは、水蒸気透過度に優れ、フィルム表面の高い塗れ性を維持し、またポリビニルアルコール系樹脂積層体との十分なラミネート強度を有することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムは、透明性、水蒸気透過度に優れ、フィルム表面の高い塗れ性を維持し、またポリビニルアルコール系樹脂積層体との十分なラミネート強度を有するので、ラミネート原反として使用し得る、また、ビニルアルコール系重合体層を有してなる二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムは、さらにガスバリア性に優れるので、特に食品包装材料としてスナック菓子、米菓、ビスケット、ピーナッツ等の乾燥食品に使用し得るし、また、無機層状化合物を含んでなるビニルアルコール重合体層を有する二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムは、さらに高いガスバリア性を有しているので前記乾燥菓子はもちろんのこと含水率の多い饅頭やカステラ、切り餅、鰹節、各種珍味等の広範囲な用途にも使用し得る。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン単独重合体(A)75〜90重量%及び粘着付与剤(D)25〜10重量%を含むプロピレン重合体組成物からなる二軸延伸フィルムの片面に、融点が155℃以上のプロピレン系重合体(B)からなる層を介して融点が125〜145℃の範囲のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)からなる層を有し、前記二軸延伸フィルムの他の片面に、プロピレン系重合体(E)からなる層を有してなることを特徴とする二軸延伸多層ポリプロピレンフィルム。
【請求項2】
プロピレン単独重合体(A)が、アイソタクチックインデックスが95以上である請求項1に記載の二軸延伸多層ポリプロピレンフィルム。
【請求項3】
粘着付与剤(D)が、軟化点が110℃以上の水素添加樹脂である請求項1に記載の二軸延伸多層ポリプロピレンフィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムのプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)からなる層上に、ビニルアルコール系重合体(F)からなる層を有してなる二軸延伸多層ポリプロピレンフィルム。


【公開番号】特開2008−73926(P2008−73926A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−254847(P2006−254847)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】