説明

二軸延伸多層積層フィルム

【課題】優れた反射特性と優れた成形加工性とを兼備する多層積層フィルムを提供すること。
【解決手段】第1層と第2層とが交互に合計51層以上積層された構造を含み、該第1層が、ジカルボン酸成分の5〜50モル%が6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、50〜95モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分であり、ジオール成分がエチレングリコールであるポリエステルからなり、該第2層は無配向性で共重合量が5〜30モル%の共重合ポリエチレンテレフタレートからなる二軸延伸多層積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈折率の低い層と屈折率の高い層とを交互に規則的に配置させ、層間の屈折率差および各層の厚みによって特定の波長帯域の光を選択的に反射する二軸延伸多層積層フィルムに関するものである。さらに詳しくは、本発明は、優れた反射特性を有すると同時に、変形加工する際の加工性にも優れた二軸延伸多層積層フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
多層積層フィルムは、屈折率の低い層と高い層とを交互に多数積層したものであり、層間の構造的な光干渉によって、特定波長の光を選択的に反射または透過する光学干渉フィルムとすることができる。この多層積層フィルムは、選択的に反射または透過する光の波長を可視光領域とすれば、構造的な発色により意匠性に優れた、例えば、玉虫色に見える真珠光沢フィルムとすることができる。ここで得られる意匠性は、多層積層フィルムの構造的な発色によることから、染料などによる発色と異なり退色の問題もない。また、このような多層積層フィルムは、膜厚を徐々に変化させたり、異なる反射ピークを有するフィルムを貼り合せることで金属を使用したフィルムと同等の高い反射率を得ることができ、金属光沢フィルムや反射ミラーとして使用することができる。
【0003】
これまで、光干渉による発色を呈する多層積層フィルムとしては、例えば特開昭56−99307号公報に、ポリエチレンテレフタレートとポリメチルメタクリレートといった相互に異なる熱可塑性樹脂を用いた多層積層フィルム、特表平9−506837号公報に、屈折率の高い層としてポリエチレン−2,6−ナフタレートからなる層を用いた多層積層フィルムが提案されている。
【0004】
さらに、これらの光干渉により発色する多層積層フィルムに成形性を付与するために、特開2007−268709号公報には、第1のポリエステルの層の合計厚みが第1のポリエステルの層と第2のポリエステルの層との合計厚みの40%以下である多層積層フィルム、また、国際公開第2007/020861号パンフレットには、第2の層に非晶性樹脂を使用した多層積層フィルムが提案されている。
【0005】
しかしながら、層厚み割合の調整による成形性付与では、光干渉による優れた反射特性と良好な成形加工性とを兼備させることは困難である。一方、第2の層に非晶性樹脂を使用しても、反射特性を向上させるために第1の層に屈折率の高いポリエチレン−2,6−ナフタレートを用いると、該樹脂は高弾性率であるため多層積層フィルムの成形加工性に劣るという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭56−99307号公報
【特許文献2】特表平9−506837号公報
【特許文献3】特開2007−268709公報
【特許文献4】国際公開2007/020861号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記を鑑みなされたもので、その目的は、優れた反射特性と優れた成形加工性とを兼備する二軸延伸多層積層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、第1の層として6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を共重合したポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを用いれば、第1の層の高屈折率特性を達成できて優れた反射特性が得られると同時に、二軸延伸多層積層フィルムの成形性も向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明の目的は、第1の層と第2の層とが交互に合計51層以上積層された構造を含む二軸延伸多層積層フィルムであって、該第1の層は、ジカルボン酸成分が5モル%以上50モル%以下の6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分および50モル%以上95モル%以下の2,6−ナフタレンジカルボン酸成分からなり、ジオール成分がエチレングリコールからなるポリエステルからなり、該第2の層は無配向性で共重合量が5〜30モル%の共重合ポリエチレンテレフタレートからなることを特徴とする二軸延伸多層積層フィルムにより達成される。
【0010】
また本発明の二軸延伸多層積層フィルムは、好ましい態様として以下の少なくともいずれか1つを具備するものも包含するものである。
a) 少なくとも1方向の100℃におけるフィルム破断応力が70MPa以下であること。
b) 波長350〜1000nmにおいて少なくとも100nmの波長帯の平均反射率が50%以上であること。
さらに、上記のいずれかのに記載の二軸延伸多層積層フィルムを成形加工してなる成形体も提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の二軸延伸多層積層フィルムは、優れた反射特性を有すると同時に優れた成形加工性も有するので、構造的な発色などによる優れた意匠性を呈する各種成形加工体を容易に提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳しく説明する。
[積層構造]
本発明の二軸延伸多層積層フィルムに含まれる積層構造は、2軸配向性(面配向性)の第1の層と、無配向性の第2の層とが、交互に合計51層以上積層された構造である必要があり、かくすることにより、光学干渉による構造的な発色・反射特性が優れたものになり、優れた意匠性を呈する各種成形加工体を提供することができる。第1の層が無配向性もしくは1軸配向性、または第2の層が配向性であると、第1の層に後述するポリエステルを用いても両層の屈折率差を十分なものとすることが難しくなり、光学干渉特性が低下するだけでなく、成形加工性が低下する場合もある。
【0013】
また、第1の層と第2の層が交互に積層された合計の積層数が51層未満の場合には、所望の波長帯域での十分な反射率を得ることができない。一方、積層数の上限は特に限定されないが、生産性の観点から高々900層であることが望ましい。
積層構造部分の第1の層の厚みと第2の層の厚みは、それぞれの層の厚みがいずれも0.05〜0.3μmであることが好ましい。各層の厚みが下限に満たないかまたは上限を超えると、光学干渉による構造的な発色や反射特性が十分でないことがある。各層の厚みがこの範囲内であれば、厚みが一定でも、厚みが徐々に変化するものであってもよい。厚みが一定であれば特定波長の反射率を高くすることができ、一方厚みを徐々に変化するものであれば反射波長帯域を広げることができる。
【0014】
なお、本発明の二軸延伸多層積層フィルムは、上記の積層構造部分を含んでいれば、他の層、例えば多層積層フィルムの両表面に保護層を設けてもよい。該層は、第1の層または第2の層と同じ樹脂からなっていても、また別の樹脂からなっていてもよいが、保護層の場合には第1の層であることがより好ましい。保護層を設けることによって、製膜時の多層積層状態の乱れを防ぎ、積層状態を良好に保ち光学干渉による反射特性をより優れたものとすることができる。
【0015】
[第1の層]
本発明の二軸延伸多層積層フィルムを構成する第1の層は、ジカルボン酸成分が5モル%以上50モル%以下の6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分および50モル%以上95モル%以下の2,6−ナフタレンジカルボン酸成分からなり、ジオール成分がエチレングリコールからなる共重合ポリエステルからなる。
【0016】
第1の層がかかる種類のポリエステルであることにより、二軸延伸多層積層フィルムに優れた反射特性と優れた成形加工性とを付与することができる。ジカルボン酸成分中の6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分の割合が下限未満であると、二軸延伸後のガラス転移温度が高いために十分な成形加工性が得られない。一方、上限を超えると結晶性が早いために製膜性に劣り、延伸フィルムが得られなくなる。該酸成分の範囲は好ましくは10モル%以上45モル%以下、より好ましくは15モル%以上40モル%以下である。
また、ジカルボン酸成分中の2,6−ナフタレンジカルボン酸成分の割合が下限未満であると十分な屈折率が得られず、優れた反射特性が得られない。
【0017】
なお、第1の層には、上記のポリエステルの他に、本発明の目的を阻害しない範囲内で他の樹脂、特に上記のポリエステルとは異なるポリエステルを含有させてもよいが、本発明においては、他の樹脂は含有しないほうがより好ましい。含有させる場合の量は、上記のポリエステル重量を基準として20重量%以下、好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。また、第1層を構成する共重合ポリエステルは、例えばフィルムにする段階で2種以上のポリエステルを溶融混練してエステル交換させたものであってもよい。
【0018】
[第2の層]
本発明における第2の層は、無配向性で共重合量が5〜30モル%の共重合ポリエチレンテレフタレートからなる。好ましく用いられる共重合成分としては、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸といった脂環族ジカルボン酸等の酸成分、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノールといった脂環族ジオール等のグリコール成分を好ましく挙げることができる。なかでも、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジメタノールが好ましく、特にイソフタル酸が好ましい。共重合量の下限は好ましくは7モル%以上、より好ましくは10モル%以上である。
【0019】
なお、該共重合ポリエチレンテレフタレートが結晶性である場合には、フィルムを延伸して配向させた後、第2の層のポリマーのみを配向緩和させて無配向性とする。そのため、第1の層ポリマーよりも融点が5℃以上低いことが好ましい。共重合量が下限未満であると、第1の層のポリマーとの融点差が小さくなり、延伸配向後に第2の層のポリマーのみを配向緩和させることができなくなる。
第2層を構成する共重合ポリエチレンテレフタレートも、第1層を構成するポリエステルと同じく、例えばフィルムにする段階で2種以上のポリエステルを溶融混練してエステル交換させたものであってもよい。
【0020】
[ポリエステルの固有粘度]
上記の第1の層および第2の層に用いられるポリエステルの固有粘度は、少なくとも0.40dl/g以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.50dl/g以上、特に好ましくは0.60dl/g以上である。固有粘度が高いほど得られる多層積層フィルムの機械的特性が高まり、最終的に得られる成形加工体の機械的特性が良好なものとなる。一方、ポリエステルの固有粘度の上限は製造可能な範囲であれば特に制限されないが、一般的には高々1.0dl/gである。固有粘度が高すぎると、溶融押出が困難で、生産性が悪くなることがある。一方固有粘度が低すぎると、製膜性が悪くなり、所望の反射特性が得られるほどの屈折率差をだすことが難しくなる。なお、固有粘度は、o−クロロフェノールを溶媒として用い、35℃で測定した値である。
【0021】
[滑剤]
本発明の二軸延伸多層積層フィルムは、巻取り性を向上させるため不活性微粒子(滑剤)を含有させることが好ましい。この場合、表層に保護層を設ける場合には保護層中に含有させることが好ましく、一方保護層を設けない場合には第1の層、第2の層のいずれに含有させてもよく、また両方に含有させてもよい。不活性微粒子は、例えば平均粒径0.01μm〜2μm、さらには0.05〜1μm、特に0.1〜0.3μmのものを用いるとよい。含有量は、含有させる層の重量を基準として、例えば0.001〜0.01重量%配合すればよい。不活性粒子の平均粒径が下限よりも小さいか、含有量が下限よりも少ない場合には、多層積層フィルムの巻取り性を向上させる効果が不十分になりやすく、他方、不活性粒子の含有量が上限を超えるか、平均粒径が上限を超えると、粒子による多層積層フィルムの光学特性が悪くなる場合がある。
好ましく用いられる不活性粒子としては、例えばシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、カオリン、タルクのような無機不活性粒子、シリコーン、架橋ポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体のような有機不活性粒子を挙げることができる。
【0022】
これらの不活性粒子は、その長径と短径の比が1.2以下、さらには1.1以下である球状粒子(以下、真球状粒子ということがある)であることが、フィルムの滑り性と光学特性をできるかぎり維持するために好ましい。また、これらの不活性粒子は、粒度分布がシャープであることが好ましく、例えば相対標準偏差が0.3未満、さらには0.2未満のものが好ましい。相対標準偏差が大きい粒子を使用すると、粗大粒子の頻度が多くなり、光学的な欠陥を生ずる場合がある。ここで、不活性粒子の平均粒径、粒径比および相対標準偏差は、まず粒子表面に導電性付与のための金属を極く薄くスパッターし、電子顕微鏡にて、1万〜3万倍に拡大した像から、長径、短径および面積円相当径を求め、次いでこれらを次式に当てはめることで算出される。
平均粒径=測定粒子の面積円相当径の総和/測定粒子数
粒径比=粒子の平均長径/該粒子の平均短径
【0023】
[添加剤]
本発明の二軸延伸多層積層フィルムには、本発明の目的を損なわない範囲内で、その他の添加剤として、着色剤、色調調整剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤をごく少量添加してもよい。
【0024】
[破断強度]
本発明の二軸延伸多層積層フィルムは、高い成形加工性を得る観点から、少なくとも1方向において100℃における破断強度が70MPa以下であることが好ましく、さらに好ましくは60MPa以下、特に好ましくは50MPa以下である。100℃における破断強度が70MPaを超える場合には、得られる成形加工体表面にひび、割れなどが生じやすくなる。
【0025】
[反射特性]
本発明の二軸延伸多層積層フィルムは、波長350〜1200nmにおいて少なくとも100nmの波長帯域内での平均反射率が50%以上であることが好ましく、さらに好ましくは65%以上、特に好ましくは80%以上である。平均反射率が50%未満であると多層積層フィルムの構造的な反射性能を十分に発揮できない場合がある。
反射帯域は用途によって異なる。例えば、加飾用途の場合には可視光領域(380〜750nm)の光を反射させることが好ましいので、少なくとも380〜750nmの波長帯域内での反射率が50%以上であることが好ましい。さらには、反射率が50%以上の波長範囲を350〜1000nmとすることにより、成形後のフィルム厚みの増加または減少による反射波長の高波長側シフトまたは低波長側シフトが起きても、可視光領域を反射させることができるので特に好ましい。
【0026】
[DSC]
本発明の二軸延伸多層積層フィルムは、DSC(示差走査熱量計、昇温速度20℃/min)では第1層に対応する融点のみが存在することがより好ましい。すなわち、第1の層は延伸および熱処理によって十分結晶化し、第2の層はDSCの測定に結晶化ピークと融点ピークが存在しない非晶性であることがより好ましい。結晶化ピークが存在する場合には、第1の層の結晶化が不十分、または、多層積層フィルムの成形加工時に第2の層が結晶化しやすくなることになり、層間の屈折率差が小さくなるため反射特性が低下する場合がある。
第2の層のポリマーが結晶性である場合には、DSCでは第1層および第2層に対応する融点が存在し、その融点差が5℃以上あることが好ましい。また、第2層は少なくとも部分的に溶融されていることから第2層に対応する結晶化ピークが存在することが好ましい。
【0027】
[製造方法]
本発明の二軸延伸多層積層フィルムは、第1の押出し機より供給された第1の層用の樹脂と、第2の押出し機より供給された第2の層用の樹脂とを、溶融状態で交互に少なくとも51層以上重ね合わせ、必要に応じて保護層を表層に設けて多層積層未延伸シートとする。これを回転するドラム上にキャストすることにより、未延伸多層積層フィルムとする。このようにして得られた未延伸多層積層フィルムを、製膜方向とそれに直交する幅方向の二軸方向(フィルム面に沿った方向)に、それぞれの方向に少なくとも2倍に延伸する。延伸温度は、第1の層に使用するポリエステルのガラス転移点の温度(Tg)〜Tg+50℃の範囲とする。延伸の面積倍率は5〜50倍とすることが好ましい。延伸倍率が大きい程、第1の層および第2の層の個々の層における方向のバラツキが延伸による薄層化により小さくなり、光学干渉が面方向に均一になるので、延伸倍率はこの範囲で大きいことが好ましい。延伸方法は、逐次二軸延伸、同時二軸延伸のいずれであってもよい。
【0028】
次にこの二軸延伸多層積層フィルムを第1の層に使用するポリエステルの融点よりも10℃低い温度ないし第1の層に使用するポリエステルの結晶化温度の範囲で熱処理する。この熱処理により、第1の層が結晶化し、延伸によって生じた層間の屈折率差がさらに大きくなって反射特性を向上させることができる。なお、熱処理温度が高すぎる場合には、第1の層の分子配向が緩和されて屈折率が低下し、得られる多層積層フィルムに十分な屈折率差を付与できなくなることがある。
【実施例】
【0029】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下に示した実施例に制限されるものではない。
なお、実施例中の物性や特性は、下記の方法にて測定または評価した。
【0030】
(1)ガラス転移温度(Tg)
動的粘弾性測定装置(オリエンテック社製、DDV−01FP)を用い、測定温度範囲を30〜180℃、昇温速度を2℃/min、1Hzの条件で、得られた二軸延伸多層積層フィルムの内部損失tanδを測定した。tanδのピーク温度をガラス転移温度とした。
【0031】
(2)融点(Tm)
得られたフィルムサンプルを10mgずつサンプリングし、DSC(TAインスツルメンツ社製、商品名:DSC2920)を用い、20℃/minの昇温速度で融点を測定した。
【0032】
(3)層厚み
サンプルを三角形に切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂にて包埋した。そして、包埋されたサンプルをミクロトーム(ULTRACUTS、製造元:ライヘルト社)で製膜方向と厚み方向に沿って切断し、厚さ50nmの薄膜切片にした。得られた薄膜切片を、透過型電子顕微鏡(製造元:日本電子(株)、商品名:JEM2010)を用いて、加速電圧100kVにて観察・撮影し、写真から各層の厚みを測定した。
【0033】
(4)平均反射率
分光光度計(島津製作所製、MPC−3100)を用い、波長350nmから2000nmの範囲にわたり、アルミ蒸着したミラーとの相対鏡面反射率を測定した。得られたスペクトルのなかで最も反射率が高い波長範囲を100nm選択し、その範囲における反射率を平均して平均反射率とした。
【0034】
(5)100℃における破断強度
製膜方向の破断強度は、サンプルフィルムを試料幅(フィルム幅方向,MD方向)10mm、長さ(フィルム製膜方向,TD方向)150mmに切り出し、チャック間100mm、引張速度100mm/min、チャート速度500m/minの条件で外部環境を100℃に保持した状態で、インストロンタイプの万能引張試験装置にてサンプルを引張り、得られた荷重−伸び曲線から破断強度を測定した。また、幅方向の破断強度も、製膜方向の破断強度の測定と同様に行った。
【0035】
(6)成形加工性
加熱プラグを有したPTP(Push Through Package)成形機にて、フィルムを80℃にてプレス成形して、長さ20mm、幅10mm、深さ10mmのポケットを10mm間隔で付与したパック用フィルムを作成した。下記の基準で評価した。
○:ポケットの形状は金型通りであり、ポケット間のフィルムにしわの発生もない
△:ポケットの形状は金型通りであるが、ポケット間のフィルムに若干のしわの発生がある。
×:ポケットのしわがあり、また形状も金型通りでないものがある。さらにポケット間のフィルムにしわの発生が多い。
【0036】
[実施例1]
第1層のポリエステルとして固有粘度0.62dl/gで、酸成分の30モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の70モル%が6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、グリコール成分がエチレングリコールである芳香族ポリエステル(以下「ENA70PEN」という)と固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.62のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(以下「PEN」という)を重量比で1:9でブレンドしたもの(以下「ENA5PEN」という)を、第2層のポリエステルとしてイソフタル酸を12mol%共重合した固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.65のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(以下「IA12PET」という)をそれぞれ準備した。
そして、第1の層のポリエステルを170℃で5時間、第2層のポリエステルを160℃で3時間乾燥後、押出機に供給し、ENA5PENは300℃、IA12PETは280℃まで加熱して溶融状態とし、第1の層のポリエステルを71層、第2の層のポリエステルを70層に分岐させた後、第1の層と第2の層とを交互に積層する多層フィードブロック装置を使用して積層し、その積層状態を保持したままダイへと導き、キャスティングドラム上にキャストして、未延伸多層積層フィルムを作成した。この際、厚み方向に各層の厚みが次第に厚くなるように第1の層と第2の層とを交互に積層した。このとき第1の層のポリエステルと第2の層のポリエステルの押出し量が60:40になるように調整し、かつ交互積層体の両面に両方の層の合計の割合がフィルム全厚みの20%となるように第1層のポリエステルからなる保護層を積層した。
この未延伸多層積層フィルムを150℃の温度で製膜方向に3.0倍延伸し、さらに155℃の温度で幅方向に3.0倍に延伸し、240℃で3秒間熱固定処理を行った。得られた二軸延伸多層積層フィルムの物性を表3に示す。
【0037】
[実施例2]
第1層のポリエステルとしてENA70PENとPENを重量比4:6でブレンド(以下「ENA21PEN」という)した以外は実施例1と同様にして多層積層フィルムを作成した。得られたフィルムの物性を表3に示す。
【0038】
[実施例3]
第1層のポリエステルとしてENA70PENとPENを重量比7:3でブレンド(以下「ENA43PEN」という)した以外は実施例1と同様にして多層積層フィルムを作成した。得られたフィルムの物性を表3に示す。
【0039】
[実施例4]
第1の層のポリエステルを416層、第2の層のポリエステルを415層に積層させた以外は実施例2と同様にして多層積層フィルムを作成した。得られたフィルムの物性を表3に示す。
【0040】
[実施例5]
第1の層のポリエステルを27層、第2の層のポリエステルを26層に積層させた以外は実施例2と同様にして多層積層フィルムを作成した。得られたフィルムの物性を表3に示す。
【0041】
[実施例6]
第2層のポリエステルとしてイソフタル酸を30mol%共重合した固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.65のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(以下「IA30PET」という)を使用した以外は実施例2と同様にして多層積層フィルムを作成した。得られたフィルムの物性を表3に示す。
【0042】
[実施例7]
第2層のポリエステルとしてイソフタル酸を6mol%共重合した固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.65のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(以下「IA6PET」という)を使用し、熱固定温度を245℃とした以外は実施例2と同様にして多層積層フィルムを作成した。得られたフィルムの物性を表3に示す。
【0043】
[比較例1]
第1層のポリエステルとしてPENを使用した以外は実施例2と同様にして多層積層フィルムを作成した。得られたフィルムの物性を表3に示す。
【0044】
[比較例2]
第1層のポリエステルとして固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.64のポリエチレンテレフタレート(以下「PET」という)を使用し、熱固定温度を230℃とした以外は実施例2と同様にして多層積層フィルムを作成した。得られたフィルムの物性を表3に示す。
【0045】
[比較例3]
第1層のポリエステルとしてENA70PENを使用した。実施例1と同様の製造条件で延伸を行ったところ延伸できなかった。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の二軸延伸多層積層フィルムは、例えば玉虫色に見える、真珠光沢を示すといった構造的な発色性に優れると同時に、モールディング加工、エンボス加工など各種成形加工する際の加工性に優れ、装飾用フィルムなどとして好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の層と第2の層とが交互に合計51層以上積層された構造を含む二軸延伸多層積層フィルムであって、該第1の層は、ジカルボン酸成分が5モル%以上50モル%以下の6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分および50モル%以上95モル%以下の2,6−ナフタレンジカルボン酸成分からなり、ジオール成分がエチレングリコールからなるポリエステルからなり、該第2の層は無配向性で共重合量が5〜30モル%の共重合ポリエチレンテレフタレートからなることを特徴とする二軸延伸多層積層フィルム。
【請求項2】
少なくとも1方向の100℃におけるフィルム破断応力が70MPa以下である請求項1に記載の多層積層フィルム。
【請求項3】
波長350〜1000nmにおいて少なくとも100nmの波長帯の平均反射率が50%以上である請求項1〜2のいずれかに記載の多層積層フィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の多層積層フィルムを成形加工してなる成形体。

【公開番号】特開2013−6314(P2013−6314A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139443(P2011−139443)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】