説明

二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム

【課題】高分子耐電防止剤を必ずしも最外層となる部分に配合しなくても帯電防止性に優れる二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムを提供する。
【解決手段】二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる基材層の片面に、体積固有抵抗値が1×105〜1×1011Ω・cmの範囲にあるポリオレフィン(a)のブロックと親水性ポリマー(b)のブロックとが、繰り返し交互に結合した構造を有するブロックポリマー(A)5〜28質量%とプロピレン系重合体(B)95〜72質量%を含む帯電防止樹脂組成物からなる帯電防止層、及び当該帯電防止層上に、ヒートシール層を有してなることを特徴とする二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子帯電防止剤を必ずしも最外層となる部分に配合することなく帯電防止性に優れる二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムを得ることに関する。
【背景技術】
【0002】
二軸延伸ポリプロピレンフィルム(以下、「OPPフィルム」と呼ぶことがある。)は、その優れた透明性、機械的強度、防湿性、剛性等を活かして包装材料をはじめ広い分野で使用されている。
一方、OPPフィルムは無極性であり、帯電防止性に劣ることから、帯電防止性を必要とする用途には、種々の帯電防止剤が添加されている。しかしながら、一般には、比較的低分子量の界面活性剤を添加し、当該界面活性剤をOPPフィルムの表面に滲み出させることにより、帯電防止性を発現させていることから、用途によっては、OPPフィルムの表面に滲み出した界面活性剤により汚れや、帯電防止性の持続性などが劣るという欠点を有している。
かかる欠点を改良する方法として、ヒートシール性ポリオレフィンにホウ素原子を有する高分子電荷移動型結合体を配合する方法(特許文献1:特公平8−22589号公報)、ポリオレフィン(a)のブロックと、体積固有抵抗値が1×105〜1×1011Ω・cmの親水性ポリマー(b)のブロックとが、繰り返し交互に結合した構造を有するブロックポリマー(A)からなる高分子型帯電防止剤を添加する方法(特許文献2:特開2002‐321314号公報)、あるいは、前記ブロックポリマー(A)として、当該ブロックポリマー(A)を添加するポリオレフィン樹脂(B)との融点差が±20℃以内にあるブロックポリマー(A)を用いること(特許文献3:特開2005‐314647号公報)が提案されている。
しかしながら、何れもヒートシール層あるいは表面層に帯電防止剤を含有する層を有するので、ヒートシール性を阻害したり、表面層にある帯電防止剤が滲み出たりして、その利用が制約されるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平8−22589号公報
【特許文献2】特開2002‐321314号公報
【特許文献3】特開2005‐314647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高分子帯電防止剤を必ずしも最外層となる部分に配合することなく帯電防止性に優れる二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる基材層の片面に、体積固有抵抗値が1×105〜1×1011Ω・cmの範囲にあるポリオレフィン(a)のブロックと親水性ポリマー(b)のブロックとが、繰り返し交互に結合した構造を有するブロックポリマー(A)5〜28質量%とプロピレン系重合体(B)95〜72質量%を含む帯電防止樹脂組成物からなる帯電防止層、及び当該帯電防止層上に、ヒートシール層を有してなることを特徴とする二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高分子耐電防止剤を必ずしも最外層となる部分に配合することなく帯電防止性に優れる二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ブロックポリマー(A)
本発明に係る帯電防止樹脂組成物に含まれるブロックポリマー(A)は、体積固有抵抗値が1×105〜1×1011Ω・cmの範囲にあるポリオレフィン(a)のブロックと親水性ポリマー(b)のブロックとが、繰り返し交互に結合した構造を有するブロックポリマー(A)であり、好ましくは、融点(Tm)が155〜165℃の範囲にある。
なお、ブロックポリマー(A)が複数の融点を有する場合は、ここではそのうちの最も高いものを融点とする。
融点(Tm)が上記範囲外のブロックコポリマーを用いる場合は、プロピレン系重合体(B)への分散が不十分となりやすく、得られるOPPフィルムの表面が肌荒れし、透明性が劣る虞があるので、当該ブロックポリマー(A)と後述のプロピレン系重合体(B)とをドライブレンドしただけでは十分ではなく、二軸押出機を用いて、予め、当該ブロックポリマー(A)をより微分散させておくことが好ましい。
本発明に係るブロックポリマー(A)を構成するポリオレフィン(a)は、好ましくは、低分子量ポリプロピレン(a1)であり、特に、末端をα、β不飽和カルボン酸および/またはその無水物で変性した低分子量ポリプロピレン(a1−1)であることが好ましい。
このような低分子量ポリプロピレン(a1−1)における繰り返し単位であるプロピレン単位の数(n)は、通常30から200であり、中でも50から150が好適である。
本発明に係るブロックポリマー(A)を構成する親水性ポリマー(b)は、好ましくは、ポリエーテル(b1)、ポリエーテル含有親水性ポリマー(b2)、カチオン性ポリマー(b3)およびアニオン性ポリマー(b4)であり、より好ましくは、ポリエーテル含有親水性ポリマー(b2)である。
さらに好ましくは、ポリエーテルジオール(b1−1)のセグメントを有するポリエーテルエステルアミド(b2−1)、(b1−1)のセグメントを有するポリエーテルアミドイミド(b2−2)、(b1−1)のセグメントを有するポリエーテルエステル(b2−3)、ポリエーテルジアミン(b1−2)のセグメントを有するポリエーテルアミド(b2−4)及び(b1−1)または(b1−2)のセグメントを有するポリエーテルウレタン(b2−5)から選ばれるポリエーテル含有親水性ポリマー(b2)であり、特に、ポリエーテルジオール(b1−1)のセグメントを有するポリエーテルエステルアミド(b2−1)が好ましい。
本発明に係るブロックポリマー(A)は、特開2002‐321314号公報、特開2003‐48990号公報に記載されている方法で製造し得る。また、本発明に係るブロックポリマー(A)としては、例えば、三洋化成工業株式会社から、商品名:ペレスタット230〔融点(Tm):163℃、MFR(荷重2160g、温度190℃):10g/10分〕、商品名:ペレスタット300〔融点(Tm):135℃、MFR(荷重2160g、温度190℃):30g/10分〕として、製造・販売されている。
プロピレン系重合体(B)
本発明に係る帯電防止樹脂組成物に含まれるプロピレン系重合体(B)には、プロピレン単独重合体(B1)およびプロピレン・α−オレフィン共重合体(B2)がり、これらの中から用途、性能に応じて使用することができる。これらのプロピレン系重合体(B)のMFR(メルトフローレート;ASTM D−1238 荷重2160g、温度230℃)は前記ブロックポリマー(A)と混合してフィルムとすることができる限り特に限定はされないが、通常0.5〜20g/10分、好ましくは2〜10g/10分の範囲にある。

プロピレン単独重合体(B1)
プロピレン単独重合体(B1)は、通常その融点が158℃以上であり、このような重合体として、例えば(株)プライムポリマー製、商品名 F113BGがある。
プロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(B2)
プロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(B2)を用いる場合は、その融点(Tm)が125〜145℃、中でも130〜143℃の範囲にあることが好ましい。
融点(Tm)が125℃未満のプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体を用いた場合は、延伸時にブロックポリマー(A)が再凝集して得られるOPPフィルムの帯電防止性能が低下することがある。一方、融点(Tm)が145℃を超えるプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体を用いた場合は、ブロックポリマー(A)が二軸延伸に追随できずに得られるOPPフィルムの帯電防止性能が低下する虞がある。
本発明で用いるプロピレン・α−オレフィン共重合体(B2)のα―オレフィンの含有量は上記融点(Tm)を有する限りとくに制限はされないが、通常はα―オレフィンの含有量は1.0〜20質量%、より好ましくは1.5〜15質量%の範囲にある。α―オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル・1−ペンテン、1−オクテン等が例示できる。これらの中では、エチレン及び/又は1−ブテンとのランダム共重合体が好ましい。
帯電防止樹脂組成物
本発明に係る帯電防止樹脂組成物は、前記ブロックポリマー(A)を5〜28質量%、好ましくは10〜20質量%、前記プロピレン系重合体(B)を95〜72質量%、好ましくは90〜80質量%含む組成物である。
ブロックポリマー(A)の量が5質量%未満では、得られる二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムの帯電防止性が十分でない場合があり、一方、28質量%を超える場合は、透明性が損なわれると同時にフィルムの色相が黄色くなる。
このような帯電防止樹脂組成物は、好ましくは、ブロックポリマー(A)の融点(Tm)とプロピレン系重合体(B)の融点(Tm)との差〔融点(Tm)−融点(Tm)〕が21℃を超える組成物である。
その場合は、プロピレン系重合体(B)として、プロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(B2)を用いることが好適である。
〔融点(Tm)−融点(Tm)〕が、20℃以下の場合、例えばブロックポリマー(A)とプロピレン単独重合体(B1)の場合は、両者をドライブレンド等により単に混合して用いた場合は、得られる二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムは、表面が肌荒れし、透明性に劣ることがあり、ブロックポリマー(A)とプロピレン系重合体(B)とをドライブレンドしただけでは十分ではなく、二軸押出機を用いて、予め、ブロックポリマー(A)をより微分散させておくことが好ましい。
本発明に係る帯電防止樹脂組成物は、前記ブロックポリマー(A)と前記プロピレン系重合体(B)の所定量を、リボンブレンダー、V‐ブレンダー、ヘンシェルミキサーなどにより、ドライブレンドする方法、あるいは、二軸延伸フィルム製造装置に、重量式フィーダーなどを用い、前記ブロックポリマー(A)と前記プロピレン系重合体(B)を各々所定の量を計量して供給する方法などを用いて混合することにより得られる。
本発明に係る帯電防止樹脂組成物には、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、ブロッキング防止剤、顔料、染料、無機または有機の充填剤等の通常ポリプロピレンに添加して用い得る各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加しておいてもよい。
二軸延伸ポリプロピレンフィルム
本発明に係る二軸延伸ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレンは、一般にポリプロピレンの名称で製造・販売されているプロピレンを主体とした重合体で、通常、密度が0.890〜0.930g/cm、MFR(ASTM D1238 荷重2160g、温度230℃)が0.5〜60g/10分、好ましくは0.5〜10g/10分、更に好ましくは1〜5g/10分のプロピレンの単独重合体若しくはプロピレンと他の少量例えば、1質量%以下のα−オレフィン、例えばエチレン、ブテン、ヘキセン−1等との共重合体、あるいは、プロピレン単独重合体と少量のα‐オレフィンを含むプロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体との組成物である。これらの中でも、プロピレンの単独重合体、若しくは1質量%以下のランダム共重合体でアイソタクテシティの高い重合体が得られる二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムの透明性、剛性が優れるので好ましい。
本発明に係るポリプロピレンには、得られる二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムの防湿性を改良する為に、粘着付与剤(C)を、3〜25質量%、好ましくは4〜15質量%添加しておいてもよい。粘着付与剤(C)の量が3質量%未満では、防湿性の改良効果が十分ではなく、一方、25質量%を超えると防湿性の改良効果は飽和するとともに、押出し成形がし難い傾向にある。
粘着付与剤(C)
本発明に係わる粘着付与剤(C)は、一般に粘着付与剤として製造・販売されている樹脂状物質で、具体的には、クマロン・インデン樹脂等のクマロン樹脂、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、テルペン・フェノール樹脂、ポリテルペン樹脂及びキシレン・ホルムアルデヒド樹脂等のフェノール,合成ポリテルペン樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、脂肪族・脂環族系石油樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂、不飽和炭化水素重合体、水素添加炭化水素樹脂及び炭化水素系粘着化樹脂等の石油系炭化水素樹脂、ロジンのペンタエリスリトール・エステル、ロジンのグリセロール・エステル、水素添加ロジン、水素添加ロジン・エステル、特殊ロジン・エステル及びロジン系粘着付与剤等のロジン誘導体及びテルペン系粘着付与剤等を例示できる。
これらの中では、軟化点が110℃以上、好ましくは125〜145℃の範囲にある水素添加率が95%以上、更には99%以上の水素添加炭化水素樹脂、水素添加脂肪族系環状炭化水素樹脂、水素添加脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加テルペン樹脂、水素添加合成ポリテルペン樹脂等の水素添加樹脂が、ポリプロピレンとの相溶性に優れるので好ましい。軟化点が110℃未満のものは成形時に発煙の問題が発生し、成形機を汚ごす虞が生ずる場合があり、一方、145℃を超えるものはポリプロピレンと相溶しづらくなるため得られる二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムの外観が悪くなる虞がある。
本発明に係るポリプロピレンには耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、前記前記ブロックポリマー(A)などの帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機または有機の充填剤等の通常ポリプロピレンに用いる各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加しておいてもよい。
ヒートシール層
本発明の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムの帯電防止層上に積層されるヒートシール層としては、通常、ヒートシール層(熱融着層)として公知のエチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチル・ペンテン−1、オクテン−1等のα−オレフィンの単独若しくは共重合体、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンランダム共重合体、ポリブテン、低結晶性あるいは非晶性のエチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・ブテン−1ランダム共重合体、プロピレン・ブテン−1ランダム共重合体等のポリオレフィンを単独若しくは2種以上の組成物、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体あるいはその金属塩、EVAとポリオレフィンとの組成物等から得られる層である。
中でも、その融点が90〜130℃、好ましくは100〜125℃の範囲にあるエチレン系重合体、例えば、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレン等のエチレン系重合体から得られるヒートシール層、あるいは、融点が90〜145℃、好ましくは95〜140℃の範囲にあるプロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(ポリプロピレンランダム共重合体)が低温ヒートシール性、ヒートシール強度に優れるので好ましい。
二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム
本発明の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムは、前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる基材層の片面に、体積固有抵抗値が1×105〜1×1011Ω・cmの範囲にあるポリオレフィン(a)のブロックと親水性ポリマー(b)のブロックとが、繰り返し交互に結合した構造を有する前記ブロックポリマー(A)と前記プロピレン系重合体(B)との帯電防止樹脂組成物からなる帯電防止層及び当該帯電防止層上に、前記ヒートシール層を有してなる。
また、用いられる帯電防止樹脂組成物は、好ましくは、ブロックポリマー(A)の融点(Tm)とプロピレン系重合体(B)の融点(Tm)との差〔融点(Tm)−融点(Tm)〕が21℃を超える組成物である。
その場合は、プロピレン系重合体(B)として、プロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(B2)を用いることが好適である。
本発明の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムの各層の厚さは、用途により種々決められるものである。通常、二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる基材層が10〜100μm、好ましくは15〜50μm、帯電防止樹脂組成物からなる帯電防止層が0.5〜15μm、好ましくは1〜10μmである。そして、これらの中でもヒートシール層は5〜50μm、中でも8〜40μmの範囲にすることが望ましい。
また、二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる基材層の片面に前記帯電防止樹脂組成物からなる帯電防止層を積層した場合は、他の片面に、前記ポリプロピレンにブロッキング防止剤を0.01〜3.0質量%、更には0.05〜1.0質量%を添加してなる組成物からなる層、あるいは、融点(Tm)が125〜143℃の範囲にあるプロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体からなる層、若しくは、当該プロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体に、ブロッキング防止剤を0.01〜3.0質量%、更には0.05〜1.0質量%を添加してなる組成物からなる層を積層させておいてもよい。
ブロッキング防止剤としては、合成または天然のシリカ(二酸化珪素)、ケイ酸マグネシウム、アルミノシリケート、タルク、ゼオライト、硼酸アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、燐酸カルシウム等の無機系のブロッキング防止剤、ポリメチルメタクリレート、ホリメチルシリルトセスキオキサン(シリコーン)、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド(ユリア樹脂)、フェノール樹脂等の有機系ブロッキング防止剤が例示される。これらの中では、ポリメチルメタクリレート、合成シリカが分散性、透明性、傷つき性、ブロッキング防止性等のバランスから好適である。また、アンチブロッキング剤は表面処理されたものを用いてもよく、表面処理剤としては、界面活性剤、金属石鹸、クエン酸酸等の有機酸、高級アルコール、エステル、シリコーン、シランカップリング剤等を用いることができる。これらブロッキング防止剤の形状は限定されず、球状、角状、柱状、針状、板状、不定形状等任意の形状とすることができ、その平均粒径は、通常0.5から7ミクロン(μm)程度である。

二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムの製造方法
本発明の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムは、種々公知の製造方法、例えば、少なくとも二台の押出機を備えた二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム製造装置を用い、基材層の原料として前記ポリプロピレンあるいは粘着付与剤(C)3〜25質量%を含むポリプロピレン組成物を一台の押出機に供給し、他の押出機に帯電防止層の原料として前記ブロックポリマー(A)と前記プロピレン系重合体(B)とをリボンブレンダー、V‐ブレンダー、ヘンシェルミキサーなどにより、ドライブレンドした後、供給あるいは、重量式フィーダーなどを用い、前記ブロックポリマー(A)と前記プロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(B)を各々所定の量を計量して供給し、あるいは予め前記ブロックポリマー(A)と前記プロピレン系重合体(B)とを溶融混練した後、夫々200〜250℃の温度で溶融した後、多層ダイから共押出し成形して得た多層シートを、公知の同時二軸延伸あるいは逐次二軸延伸する方法、例えば、逐次二軸延伸法では、縦延伸温度、例えばロール温度を110℃〜145℃、延伸倍率を4.5〜6倍の範囲、横延伸温度、例えばテンター内の温度を140〜180℃、延伸倍率を8〜11倍の範囲で延伸することにより得られる。
帯電防止層上に、ヒートシール層を積層する方法としては、他の押出機のヒートシール層に用いる原料を供給して、多層ダイから帯電防止層上に積層された多層シートを前記方法で延伸する方法、あるいは、予め得られた帯電防止層を備えた二軸延伸ポリプロピレンフィルムの帯電防止層上に、ヒートシール層を押出しラミネートする方法、あるいは、予め得られたヒートシール層用のフィルムとをドライラミ等、種々公知の方法で積層してもよい。
予め得られた帯電防止層を備えた二軸延伸ポリプロピレンフィルムの帯電防止層上にヒートシール層を積層する場合は、帯電防止層とヒートシール層との接着強度を改良するために、帯電防止層面をコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理、フレーム処理等の表面活性化処理を行っておいてもよいし、また、ヒートシール層を積層する前に、用途に応じて、アクリル樹脂やアクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂等のバインダーに各種顔料や染料を分散・溶解した水性インキや油性インキの印刷層を積層しておいてもよい。

実施例
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれらの実施例に制約されるものではない。
実施例及び比較例における物性値等は、以下の評価方法により求めた。

(イ)融点
示差走査熱量系(セイコーインスツルメンツ社製 DSC220)で、昇温速度10℃/minにより樹脂の融点を測定した。
(ロ)摩擦帯電圧(帯電防止性)
得られたサンプルから45mm×45mmの試験片を切り出し、温度23℃、湿度20%RHに24時間保管後、摩擦帯電圧測定器(大栄化学精器製作所製 RS−101D)を用いて摩擦帯電圧を測定した。摩擦布には綿布を用いた。指示値が1kV以下であれば帯電防止性が十分に良好である。
(ハ)ヒートシール強度
得られたサンプルから10cm×5cmの試験片を切り出し、ヒートシールテスター(テスター産業製 TP−701−B)を用いて、圧力を1kgf/cm、時間を1秒とし、5mm幅にシールした。ヒートシール温度は、135℃、140℃、145℃、150℃及び155℃の場合について行った。
その後、それぞれのサンプルを15mm幅に切り出し、テンシロン(エーアンドデイ社製)を用いて、500mm/minの速度条件でヒートシール強度を測定した。
各サンプルにおいて最大のヒートシール強度が20N/15mm以上であればヒートシール強度が良好である。
また、本実施例で使用した樹脂は次の通りである。
(ニ)ヘイズ(透明性)
ヘイズはJIS K−7136に準拠し、デジタル濁度計日本電色社製「HAZE METER NDH2000」にてフィルム1枚の全ヘイズの測定を行った。

(1)ブロックポリマー(A)
無水マレイン酸変性ポリプロピレンブロック・ポリ(エチレングリコール)ブロック共重合体樹脂(A−1):
〔三洋化成工業(株)製、商品名 ペレスタットVH230〕:密度1.0g/cm、融点163℃、体積固有抵抗値:3×10Ω・cm、MFR:7(190℃)、ポリプロピレン単位の繰り返し数(n)は約90。〕

(2)プロピレン系重合体(B)
(イ)プロピレン単独重合体(B1)
プロピレン単独重合体(B11):
〔(株)プライムポリマー製、商品名 F113BG〕:密度0.91g/cm、融点159℃、表面固有抵抗値:3×1016Ω/□、MFR:3(230℃)。

(ロ)プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B2)
プロピレン・エチレンランダム共重合体(B21):
〔(株)プライムポリマー製、商品名 F327〕:密度0.91g/cm、融点139℃、表面固有抵抗値:3×1016Ω/□、MFR:7(230℃)。

(4)ヒートシール層
プロピレン・エチレンランダム共重合体(D):
〔(株)プライムポリマー製、商品名 F329D 〕:密度 0.91g/cm、融点139℃、表面固有抵抗値:3×1016Ω/□、MFR:9(230℃)。

実施例1
二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる基材層の原料にMFRが3.0g/10分のプロピレン単独重合体(B11)を用い、帯電防止樹脂組成物からなる表層の原料に前記ブロックポリマー(A)とプロピレン単独重合体(B11)を25:75の質量比でドライブレンドした帯電防止樹脂組成物層を用い、裏層の原料にMFRが3.0g/10分のプロピレン単独重合体にブロッキング防止剤としてポリメチルメタクリリレートを800ppm添加した樹脂を用い、それぞれ、別の押出機に供給し、Tダイ法により多層シートを押出した。次いで、多層シートを縦延伸機で5倍に延伸し、テンター横延伸機で更に10倍延伸後、帯電防止樹脂組成物からなる表層面にコロナ放電処理を施して20μmの二軸延伸積層多層フィルムを得た。各層の厚みは表層/基材層/裏層=1.5/17.0/1.5μmであった。
得られた二軸延伸フィルムにプロピレン・エチレンランダム共重合体(D)からなるヒートシールフィルム(東セロ(株)製 商品名GHC 厚さ20ミクロン(μm))をラミネートして、ヒートシール層を有する二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムを得た。その摩擦耐電圧は0.7kVであり、帯電防止性は十分に良好であった。また、ヘイズ(透明性)の値も4.1と透明性も良好であった。
実施例2
実施例1で用いた帯電防止樹脂組成物に替えて、ブロックポリマー(A)とプロピレン・エチレン共重合体(B21)を、その質量比10:90にした帯電防止樹脂組成物を用いる以外は実施例1と同様に行い、ヒートシール層を有する二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムを得た。
評価結果を表1に示す。

実施例3
実施例2で用いた帯電防止樹脂組成物に替えて、ブロックポリマー(A)とプロピレン・エチレン共重合体(B21)の質量比を20:80にした帯電防止樹脂組成物を表層に用いる以外は実施例1と同様に行い、ヒートシール層を有する二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムを得た。
評価結果を表1に示す。

比較例1
比較例1で用いた帯電防止樹脂組成物に替えて、ブロックポリマー(A)とプロピレン単独重合体(B11)との質量比を30:70にした帯電防止樹脂組成物を用いる以外は比較例1と同様に行い、ヒートシール層を有する二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムを得た。
その摩擦耐電圧は0.7kVであり、帯電防止効果は十分に良好であった。しかし、二軸延伸積層ポリプロピレンのヘイズの値は、9.8であり、透明性は不十分であった。

比較例2
実施例1で用いた帯電防止樹脂組成物に替えて、ブロックポリマー(A)とプロピレン・エチレン共重合体(B11)の質量比を4:96にした帯電防止樹脂組成物を表層に用いる以外は実施例1と同様に行い、ヒートシール層を有する二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムを得た。
評価結果を表1に示す。

表1
プロピレ 質量比 摩擦 ヒートシール強度
ン系重合 帯電圧
体(B) (kV) (N/15mm)
135℃ 140℃ 145℃ 150℃ 155℃
実施例2 B21 10/90 0.6 0.9 11.4 22.7 26.8 21.3
実施例3 B21 20/80 0.3 1.2 10.5 23.5 27.8 23.0
比較例2 B11 4/96 1.5 1.8 7.3 20.4 18.2 17.3

表1から明らかなように、ブロックポリマー(A)とプロピレン・α−オレフィン共重合体(B21)の組成が本発明の範囲内の比率の組成物から得られる帯電防止樹脂層の上に、ヒートシール層を有する二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムの場合(実施例2、実施例3)は、摩擦帯電圧の値が小さく、静電防止性に優れており、かつ、ヒートシール強度も20N/15mm以上となり、良好なヒートシール強度を有する。
また、ブロックポリマー(A)の割合が少ない場合(比較例2)は、摩擦帯電圧の値が大きく、静電防止性も不十分である。
【産業上の利用可能性】
【0008】
本発明のヒートシール層を有する二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムは、低湿度でも優れた帯電防止性を有し、且つ帯電防止効果の持続性に優れているのでお菓子、加工食品、野菜、青果物、特に帯電防止性が要求されるカツオ節や粉体等内容物の付着防止用包装袋として好ましく用いることができる。また、表面の親水性が高く、環境対応として採用が広がっている水溶性インキの印刷適性向上に有用である。更には少ない家電、OA機器、事務機器、ICトレイ、事務機器、ICトレイ、自動車部品の産業機器や食品用各種プラスティック容器、トレイ、コンテナ等の表面被服フィルムとして使用することにより、帯電防止効果を簡便に付与でき、外部の埃、塵等の付着防止、または部品等への機能破壊防止が可能となる。
加工面では従来主に帯電防止剤が引き起していた溶融押し出し、製膜工程、特に延伸工程での延伸ロールや延伸炉内の汚れが少なくなり成型作業性を向上することが出来、あるいは帯電防止剤の表面への浮き出し(ブリード)が少なく、二軸延伸フィルムに熱接着フィルムを押出しあるいはドライラミネートしてもラミネート強度が安定したフィルムを得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる基材層の片面に、体積固有抵抗値が1×105〜1×1011Ω・cmの範囲にあるポリオレフィン(a)のブロックと親水性ポリマー(b)のブロックとが、繰り返し交互に結合した構造を有するブロックポリマー(A)5〜28質量%とプロピレン系重合体(B)95〜72質量%を含む帯電防止樹脂組成物からなる帯電防止層、及び当該帯電防止層上に、ヒートシール層を有してなることを特徴とする二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム。
【請求項2】
ヒートシール層が、融点が90〜145℃の範囲にあるプロピレン系重合体あるいは融点が90〜130℃の範囲にあるエチレン系重合体かなる層である請求項1記載の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム。
【請求項3】
帯電防止層が、少なくとも一方向に延伸されてなる請求項1記載の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム。
【請求項4】
帯電防止層が、二軸延伸されてなる請求項1または2記載の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム。
【請求項5】
ブロックポリマー(A)を構成するポリオレフィン(a)が、低分子量ポリプロピレン(a1)である請求項1記載の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム。
【請求項6】
低分子量ポリプロピレン(a1)が、末端をα、β不飽和カルボン酸および/またはその無水物で変性した低分子量ポリプロピレン(a1−1)である請求項5記載の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム。
【請求項7】
ブロックポリマー(A)を構成する親水性ポリマー(b)が、ポリエーテル(b1)、ポリエーテル含有親水性ポリマー(b2)、カチオン性ポリマー(b3)およびアニオン性ポリマー(b4)の何れかである請求項1記載の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム。
【請求項8】
ポリエーテル含有親水性ポリマー(b2)が、ポリエーテルジオール(b1−1)のセグメントを有するポリエーテルエステルアミド(b2−1)、(b1−1)のセグメントを有するポリエーテルアミドイミド(b2−2)、(b1−1)のセグメントを有するポリエーテルエステル(b2−3)、ポリエーテルジアミン(b1−2)のセグメントを有するポリエーテルアミド(b2−4)及び(b1−1)または(b1−2)のセグメントを有するポリエーテルウレタン(b2−5)の何れかである請求項7記載の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム。




【公開番号】特開2011−189714(P2011−189714A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60015(P2010−60015)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000220099)三井化学東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】