説明

二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム

【課題】
プロピレン系重合体に高分子型帯電防止剤を添加する際に、プロピレン系重合体と高分子型帯電防止剤とを混合するだけで、帯電防止性、透明性、水性インキ印刷適正に優れる二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムを提供する。
【解決手段】
二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる基材層の少なくとも片面に、融点(Tm)が155〜165℃及び体積固有抵抗値が1×105〜1×1011Ω・cmの範囲にあるポリオレフィン(a)のブロックと親水性ポリマー(b)のブロックとが、繰り返し交互に結合した構造を有するブロックポリマー(A)5〜25質量%と融点(Tm)が125〜145℃の範囲にあり、且つ、融点(Tm)−融点(Tm)が21℃を超えるプロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(B)95〜75質量%を含む帯電防止樹脂組成物からなる表層を有してなることを特徴とする二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止性に優れ、且つ、透明性、水性インキ印刷適正に優れる二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
二軸延伸ポリプロピレンフィルム(以下、「OPPフィルム」と呼ぶことがある。)は、その優れた透明性、機械的強度、防湿性、剛性等を活かして包装材料をはじめ広い分野で使用されている。
一方、OPPフィルムは無極性であり、帯電防止性に劣ることから、帯電防止性を必要とする用途用には、種々の帯電防止剤が添加されている。しかしながら、一般に添加されている帯電防止剤は、比較的低分子量の界面活性剤を添加し、当該界面活性剤がOPPフィルムの表面に滲み出させることにより、帯電防止性を発現させていることから、用途によっては、OPPフィルムの表面に滲み出した界面活性剤により汚れや、帯電防止性の持続性などが劣るという欠点を有している。
かかる欠点を改良する方法として、ポリオレフィン(a)のブロックと、体積固有抵抗値が1×105〜1×1011Ω・cmの親水性ポリマー(b)のブロックとが、繰り返し交互に結合した構造を有するブロックポリマー(A)からなる高分子型帯電防止剤を添加する方法が提案されている(例えば、特許文献1:特開2002‐321314号公報)。
また、特許文献2(特開2005‐314647号公報)には、前記ブロックポリマー(A)として、当該ブロックポリマー(A)を添加するポリオレフィン樹脂(B)との融点差が±20℃以内にあるブロックポリマー(A)を用いることが提案されている。
しかしながら、上記高分子型帯電防止剤とポリプロピレンとをドライブレンドして用いた場合は、帯電防止性は優れるものの、得られるOPPフィルムの表面が肌荒れして透明性に劣り、OPPフィルム本来の特徴である透明性が低下する虞があることが判った。
前記特許文献2には、透明性が優れる二軸延伸フィルムを得るには、融点差が±20℃以内にあるブロックポリマー(A)をポリオレフィン樹脂(B)に添加する際には、単に、当該ブロックポリマー(A)とポリオレフィン樹脂(B)とをドライブレンドしただけでは十分ではなく、二軸押出機を用いて、予め、当該ブロックポリマー(A)をより微分散させておくことが好ましいとされている。
【特許文献1】特開2002‐321314号公報
【特許文献2】特開2005‐314647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、プロピレン系重合体に高分子型帯電防止剤を添加する際に、二軸押出機を用いて、プロピレン系重合体と高分子型帯電防止剤とを溶融混練して、予め、高分子型帯電防止剤をより微分散させておくことを必要とせず、プロピレン系重合体と高分子型帯電防止剤とを混合して用いるだけで、湿度による帯電防止性の変化が小さく、透明性、水性インキ印刷適正に優れる二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる基材層の少なくとも片面に、融点(Tm)が155〜165℃及び体積固有抵抗値が1×105〜1×1011Ω・cmの範囲にあるポリオレフィン(a)のブロックと親水性ポリマー(b)のブロックとが、繰り返し交互に結合した構造を有するブロックポリマー(A)5〜25質量%と融点(Tm)が125〜145℃の範囲にあり、且つ、融点(Tm)−融点(Tm)が21℃を超えるプロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(B)95〜75質量%を含む帯電防止樹脂組成物からなる表層を有してなることを特徴とする二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムを提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムは、湿度による帯電防止性の変化が小さく、低湿度でも優れた帯電防止性を有し、かつ帯電防止効果の持続性に優れている。更に表面の親水性が高く水性インキの印刷適正に優れる等の特徴を有する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
<ブロックポリマー(A)>
本発明に係る帯電防止樹脂組成物に含まれるブロックポリマー(A)は、融点(Tm)が155〜165℃及び体積固有抵抗値が1×105〜1×1011Ω・cmの範囲にあるポリオレフィン(a)のブロックと親水性ポリマー(b)のブロックとが、繰り返し交互に結合した構造を有するブロックポリマー(A)である。
融点(Tm)が155℃未満のブロックポリマーを用いた場合は、プロピレン・α−オレフィン共重合体(B)への分散が不十分であり、得られるOPPフィルムの表面が肌荒れし、透明性が劣る。一方、融点(Tm)が165℃を超えるブロックポリマーを用いた場合は、プロピレン・α−オレフィン共重合体(B)との均一延伸が出来ず、同様に得られるOPPフィルムの表面が肌荒れし、透明性に劣る。
本発明に係るブロックポリマー(A)を構成するポリオレフィン(a)は、好ましくは、低分子量ポリプロピレン(a1)であり、特に、末端をα、β不飽和カルボン酸および/またはその無水物で変性した低分子量ポリプロピレン(a1−1)であることが好ましい。
本発明に係るブロックポリマー(A)を構成する親水性ポリマー(b)は、好ましくは、ポリエーテル(b1)、ポリエーテル含有親水性ポリマー(b2)、カチオン性ポリマー(b3)およびアニオン性ポリマー(b4)であり、より好ましくは、ポリエーテル含有親水性ポリマー(b2)である。
さらに好ましくは、ポリエーテルジオール(b1−1)のセグメントを有するポリエーテルエステルアミド(b2−1)、(b1−1)のセグメントを有するポリエーテルアミドイミド(b2−2)、(b1−1)のセグメントを有するポリエーテルエステル(b2−3)、ポリエーテルジアミン(b1−2)のセグメントを有するポリエーテルアミド(b2−4)及び(b1−1)または(b1−2)のセグメントを有するポリエーテルウレタン(b2−5)から選ばれるポリエーテル含有親水性ポリマー(b2)であり、特に、ポリエーテルジオール(b1−1)のセグメントを有するポリエーテルエステルアミド(b2−1)が好ましい。
本発明に係るブロックポリマー(A)は、特開2002‐321314号公報、特開2003‐48990号公報に記載されている方法で製造し得る。また、本発明に係るブロックポリマー(A)としては、例えば、三洋化成工業株式会社から、商品名:ペレスタット230〔融点(Tm):163℃、MFR(荷重2160g、温度190℃):10g/10分〕として、製造・販売されている。
【0007】
<プロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(B)>
本発明に係る帯電防止樹脂組成物に含まれるプロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(B)は、融点(Tm)が125〜145℃、好ましくは130〜143℃の範囲にある。
融点(Tm)が125℃未満のプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体を用いた場合は、延伸時にブロックポリマー(A)が再凝集して得られるOPPフィルムの帯電防止性能と透明性が低下する部分がある。一方、融点(Tm)が145℃を超えるプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体を用いた場合は、ブロックポリマー(A)が二軸延伸に追随できずに得られるOPPフィルムの帯電防止性能が低下する虞がある。
本発明に係るプロピレン・α−オレフィン共重合体(B)のα―オレフィンの含有量は上記融点(Tm)を有する限りとくに制限はされないが、通常はα―オレフィンの含有量は1.0〜20重量%、より好ましくは1.5〜15重量%の範囲にある。α―オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル・1−ペンテン、1−オクテン等が例示できる。これらの中では、エチレン及び/又は1−ブテンとのランダム共重合体が好ましい。又、MFR(メルトフローレート;ASTM D−1238 荷重2160g、温度230℃)は前記ブロックポリマー(A)と混合してフィルムとすることができる限り特に限定はされないが、通常0.5〜20g/10分、好ましくは2〜10g/10分の範囲にある。
【0008】
<帯電防止樹脂組成物>
本発明に係る帯電防止樹脂組成物は、前記ブロックポリマー(A)を5〜25質量%、好ましくは10〜20質量%、前記プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(B)を95〜75質量%、好ましくは90〜80質量%含み、前記ブロックポリマー(A)と前記プロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(B)を含み、ブロックポリマー(A)の融点(Tm)とプロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(B)の融点(Tm)との差〔融点(Tm)−融点(Tm)〕が21℃を超える組成物である。
ブロックポリマー(A)の量が5質量%未満では、得られる二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムの帯電防止性が十分でない場合があり、一方、25質量%を超える場合は、透明性が損なわれると同時にフィルムの色相が黄色くなる。
また、〔融点(Tm)−融点(Tm)〕が、20℃以下のブロックポリマーとプロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体は、両者をドライブレンド等により単に混合して用いた場合は、得られる二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムは、表面が肌荒れし、透明性に劣る。
本発明に係る帯電防止樹脂組成物は、前記ブロックポリマー(A)と前記プロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(B)の所定量を、リボンブレンダー、V‐ブレンダー、ヘンシェルミキサーなどにより、ドライブレンドする方法、あるいは、二軸延伸フィルム製造装置に、重量式フィーダーなどを用い、前記ブロックポリマー(A)と前記プロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(B)を各々所定の量を計量して供給する方法などを用いて混合することにより得られる。
本発明に係る帯電防止樹脂組成物には、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、ブロッキング防止剤、顔料、染料、無機または有機の充填剤等の通常ポリプロピレンに添加して用い得る各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加しておいてもよい。
【0009】
<二軸延伸ポリプロピレンフィルム>
本発明に係る二軸延伸ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレンは、一般にポリプロピレンの名称で製造・販売されているプロピレンを主体とした重合体で、通常、密度が0.890〜0.930g/cm、MFR(ASTM D1238 荷重2160g、温度230℃)が0.5〜60g/10分、好ましくは0.5〜10g/10分、更に好ましくは1〜5g/10分のプロピレンの単独重合体若しくはプロピレンと他の少量例えば、1重量%以下のα−オレフィン、例えばエチレン、ブテン、ヘキセン−1等との共重合体、あるいは、プロピレン単独重合体と少量のα‐オレフィンを含むプロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体との組成物である。これらの中でも、プロピレンの単独重合体、若しくは1重量%以下のランダム共重合体でアイソタクテシティの高い重合体が得られる二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムの透明性、剛性が優れるので好ましい。
本発明に係るポリプロピレンには、得られる二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムの防湿性を改良する為に、粘着付与剤(C)を、3〜25質量%、好ましくは4〜15質量%添加しておいてもよい。粘着付与剤(C)の量が3質量%未満では、防湿性の改良効果が十分ではなく、一方、25質量%を超えると防湿性の改良効果は飽和するとともに、押出し成形がし難い傾向にある。
【0010】
<粘着付与剤(C)>
本発明に係わる粘着付与剤(C)は、一般に粘着付与剤として製造・販売されている樹脂状物質で、具体的には、クマロン・インデン樹脂等のクマロン樹脂、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、テルペン・フェノール樹脂、ポリテルペン樹脂及びキシレン・ホルムアルデヒド樹脂等のフェノール,テルペン樹脂、合成ポリテルペン樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、脂肪族・脂環族系石油樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂、不飽和炭化水素重合体、水素添加炭化水素樹脂及び炭化水素系粘着化樹脂等の石油系炭化水素樹脂、ロジンのペンタエリスリトール・エステル、ロジンのグリセロール・エステル、水素添加ロジン、水素添加ロジン・エステル、特殊ロジン・エステル及びロジン系粘着付与剤等のロジン誘導体及びテルペン系粘着付与剤等を例示できる。
これらの中では、軟化点が110℃以上、好ましくは125〜145℃の範囲にある水素添加率が95%以上、更には99%以上の水素添加炭化水素樹脂、水素添加脂肪族系環状炭化水素樹脂、水素添加脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加テルペン樹脂、水素添加合成ポリテルペン樹脂等の水素添加樹脂が、ポリプロピレンとの相溶性に優れるので好ましい。軟化点が110℃未満のものは成形時に発煙の問題が発生し、成形機を汚ごす虞が生ずる場合があり、一方、145℃を超えるものはポリプロピレンと相溶しづらくなるため得られる二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムの外観が悪くなる虞がある。
本発明に係るポリプロピレンには耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、前記前記ブロックポリマー(A)などの帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機または有機の充填剤等の通常ポリプロピレンに用いる各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加しておいてもよい。
【0011】
<二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム>
本発明の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムは、前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる基材層の少なくとも片面に、融点(Tm)が155〜165℃及び体積固有抵抗値が1×105〜1×1011Ω・cmの範囲にあるポリオレフィン(a)のブロックと親水性ポリマー(b)のブロックとが、繰り返し交互に結合した構造を有する前記ブロックポリマー(A)と融点(Tm)が125〜143℃の範囲にあり、且つ、融点(Tm)−融点(Tm)が21℃を超える前記プロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(B)との帯電防止樹脂組成物からなる表層を有してなる。
本発明の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムの各層の厚さは、用途により種々決められるものであり、特に限定はされないが、通常、二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる基材層が10〜100μm、好ましくは15〜50μm、帯電防止樹脂組成物からなる表層が0.5〜15μm、好ましくは1〜10μmの範囲にある。
本発明の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムは、少なくとも片面が帯電防止樹脂組成物からなる表層が積層されてなるが、二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる基材層の両面に帯電防止樹脂組成物からなる表層を積層させておいてもよい。
また、二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる基材層の片面に前記帯電防止樹脂組成物からなる表層を積層した場合は、他の片面に、前記ポリプロピレンにブロッキング防止剤を0.01〜3.0質量%、更には0.05〜1.0質量%を添加してなる組成物からなる層、あるいは、融点(Tm)が125〜143℃の範囲にあるプロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体からなる層、若しくは、当該プロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体に、ブロッキング防止剤を0.01〜3.0質量%、更には0.05〜1.0質量%を添加してなる組成物からなる層を積層させておいてもよい。
本発明の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムには、用途に応じて、アクリル樹脂やアクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂等のバインダーに各種顔料や染料を分散・溶解した水性インキや油性インキの印刷層を積層し、更には、ポリエチレン系やポリプロピレン系シーラントフィルムを積層しても良い。また。無機物やポリビニルアルコール等の酸素ガスバリア層やアクリル樹脂等の熱接着層、オレフィンやスチレンエラストマー等の感圧接着材層、更にはシリコーン樹脂等の離形材層を積層しても良い。
【0012】
<二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムの製造方法>
本発明の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムは、種々公知の製造方法、例えば、少なくとも二台の押出機を備えた二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム製造装置を用い、基材層の原料として前記ポリプロピレンあるいは粘着付与剤(C)3〜25質量%を含むポリプロピレン組成物を一台の押出機に供給し、他の押出機に表層の原料として前記ブロックポリマー(A)と前記プロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(B)とをリボンブレンダー、V‐ブレンダー、ヘンシェルミキサーなどにより、ドライブレンドした後、供給あるいは、重量式フィーダーなどを用い、前記ブロックポリマー(A)と前記プロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(B)を各々所定の量を計量して供給し、夫々200〜250℃の温度で溶融した後、多層ダイから共押出し成形して得た多層シートを、公知の同時二軸延伸あるいは逐次二軸延伸法する方法、例えば、逐次二軸延伸法では、縦延伸温度を110℃〜145℃、延伸倍率を4.5〜6倍の範囲、横延伸温度を14〜180℃、延伸倍率を8〜11倍の範囲で延伸することにより得られる。
実施例
【0013】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれらの実施例に制約されるものではない。
実施例及び比較例における物性値等は、以下の評価方法により求めた。
(1)融点
示差走査熱量系(セイコーインスツルメンツ DSC220)で、各樹脂の融点を測定した。
(2)表面固有抵抗値(帯電防止性)
得られた二軸延伸フィルムから10×10cmの試験片を切り出し、温度23℃、湿度 50%RHおよび20%RHに24時間保管後、アドバンテスト社製デジタル超高抵抗/微量電流計(8340A)とレジスチビティチェンバ(R12704)を用いて表面固有抵抗率を測定した。表面固有抵抗率が1×1013Ω/口以下で帯電防止性を良好とした。
(3)ヘイズ(透明性)
ヘイズはJIS K−7136に準拠し、デジタル濁度計日本電色社製「HAZE METER NDH2000」にてフィルム1枚の全ヘイズの測定を行った。全ヘイズが3%/枚以下を透明性が良好とした。
(4)水性インキ印刷適正
水性インキとしてサカタインクス「スーパーラミピュア」を用い、水/アルコール溶剤=80/20重量比で固形分濃度20%に調整し、グラビアロール版にて階調印刷を行った。フィルムへのベタ部/ハイライト部のインキの転移性を目視で判断した。評価は、○(良好)、△(一部不良)、×(悪い)の3段階で評価した。
また、本実施例で使用した樹脂は次の通りである。
(1)ブロックポリマー(A)
(1−1)無水マレイン酸変性ポリプロピレンブロック・ポリ(エチレングリコール)ブロック共重合体樹脂(A−1)〔三洋化成工業(株)製、商品名 ペレスタットVH230〕:密度1.0g/cm、融点163℃、体積固有抵抗値:3×10Ω・cm。MFR:7(190℃)
(1−2)無水マレイン酸変性ポリプロピレンブロック・ポリ(エチレングリコール)ブロック共重合体樹脂(A−2)〔三洋化成工業(株)製、商品名 ペレスタット303〕:密度1.0g/cm、融点135℃、体積固有抵抗値:3×10Ω・cm。MFR:30(190℃)
(2)プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B)
(2−1)プロピレン・エチレンランダム共重合体(B−1)〔(株)プライムポリマー製、商品名 F327〕:密度0.91g/cm、融点139℃、表面固有抵抗値:3×1016Ω/口。MFR:7(230℃)
(2−2)プロピレン・エチレンランダム共重合体(B−2)〔サンアロマ(株)製、商品名 F630S〕:密度0.91g/cm、融点142℃、表面固有抵抗値:3×1016Ω/口。MFR:7.5(230℃)
(2−3)プロピレン・エチレンランダム共重合体(B−3)〔(株)プライムポリマー製、商品名 F337〕:密度0.91g/cm、融点131℃、表面固有抵抗値:3×1016Ω/口。MFR:7(230℃)
(3)プロピレン単独重合体(D) 〔(株)プライムポリマー製、商品名 F113BG〕:密度0.91g/cm、融点159℃、表面固有抵抗値:3×1016Ω/口。MFR:3(230℃)
〔実施例1〕
二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる基材層の原料にMFRが3.0g/10分のプロピレン単独重合体を用い、帯電防止樹脂組成物からなる表層の原料に前記ブロックポリマー(A−1)とプロピレン・エチレンランダム共重合体(B−1)を10:90の質量比でドライブレンドした帯電防止性樹脂組成物層を用い、裏層の原料にMFRが3.0g/10分のプロピレン単独重合体にAB剤としてポリメチルメタクリリレートを800ppm添加した樹脂を用い、それぞれ、別の押出機に供給し、Tダイ法により多層シートを押出した。次いで、多層シートを縦延伸機で5倍に延伸し、テンター横延伸機で更に10倍延伸後、帯電防止樹脂組成物からなる表層面にコロナ放電処理を施して20μmの二軸延伸積層多層フィルムを得た。各層の厚みは表層/基材層/裏層=1.5/17.0/1.5μmであった。得られた二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムを前記記載の方法で物性評価した。評価結果を表1に示す。
〔実施例2〕
実施例1で用いた帯電防止樹脂組成物に替えて、ブロックポリマー(A−1)とプロピレン・エチレン共重合体(B−1)の質量比を20:80にした帯電防止樹脂組成物を表層に用いる以外は実施例1と同様に行い、二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
〔実施例3〕
実施例1で用いたプロピレン・エチレンランダム共重合体(B−1)に替えて、プロピレン・エチレンランダム共重合体(B−2)を用いた帯電防止樹脂組成物を用いる以外は実施例1と同様に行い、二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
〔実施例4〕
実施例1で用いたプロピレン・エチレンランダム共重合体(B−1)に替えて、プロピレン・エチレンランダム共重合体(B−3)を用いた帯電防止樹脂組成物を用いる以外は実施例1と同様に行い、二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
〔実施例5〕
二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる基材層の原料にMFRが3.0g/10分のプロピレン単独重合体に粘着付与剤として石油樹脂((株)プライムポリマー製ES5000F)を8%添加した樹脂を用いた以外は実施例1と同様に行い二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
〔比較例1〕
実施例1で用いたプロピレン・エチレンランダム共重合体(B−1)に替えて、プロピレン単独重合体(D)を用いた帯電防止樹脂組成物を用いる以外は実施例1と同様に行い、二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
〔比較例2〕
比較例1で用いた帯電防止樹脂組成物に替えて、ブロックポリマー(A−1)とプロピレン単独重合体(D)との質量比を30:70にした帯電防止樹脂組成物を用いる以外は比較例1と同様に行い、二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
〔比較例3〕
実施例1で用いた帯電防止樹脂組成物に替えて、ブロックポリマー(A−2)とプロピレン・エチレン共重合体(B−1)の質量比を10:90にした帯電防止樹脂組成物を表層に用いる以外は実施例1と同様に行い、二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
〔比較例4〕
実施例1で用いた帯電防止樹脂組成物に替えて、ブロックポリマー(A−1)とプロピレン・エチレン共重合体(B−1)の質量比を4:96にした帯電防止樹脂組成物を表層に用いる以外は実施例1と同様に行い、二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
〔比較例5〕
実施例1で用いた帯電防止樹脂組成物に替えて、ブロックポリマー(A−1)とプロピレン・エチレン共重合体(B−1)の重量比を30:70にした帯電防止樹脂組成物を表層に用いる以外は実施例1と同様に行い、二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムを得た。評価結果を表1に示す。

表1



表1から明らかなように、ブロックポリマー(A)とプロピレン・α−オレフィン共重合体(B)との組成物から得られる帯電防止性樹脂層(表層)の各樹脂の融点差が21℃以上(実施例1〜5)で、帯電防止性と透明性が良好であった。融点差が小さい場合(比較例1〜3)、また融点差が21℃以上でも添加量により帯電防止性、透明性両方を満足するフィルムは得られない(比較例4〜5)。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムは、低湿度でも優れた帯電防止性を有し、且つ帯電防止効果の持続性に優れているのでお菓子、加工食品、野菜、青果物、特に帯電防止性が要求されるカツオ節や粉体等内容物の付着防止用包装袋として好ましく用いることができる。また、表面の親水性が高く、環境対応として採用が広がっている水溶性インキの印刷適性向上に有用である。更には少ない家電、OA機器、事務機器、ICトレイ、事務機器、ICトレイ、自動車部品の産業機器や食品用各種プラスティック容器、トレイ、コンテナ等の表面被服フィルムとして使用することにより、帯電防止効果を簡便に付与でき、外部の埃、塵等の付着防止、または部品等への機能破壊防止が可能となる。
加工面では従来主に帯電防止剤が引き起していた溶融押し出し、製膜工程、特に延伸工程での延伸ロールや延伸炉内の汚れが少なくなり成型作業性を向上することが出来、あるいは帯電防止剤の表面への浮き出し(ブリード)が少なく、二軸延伸フィルムに熱接着フィルムを押出しあるいはドライラミネートしてもラミネート強度が安定したフィルムを得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる基材層の少なくとも片面に、融点(Tm)が155〜165℃及び体積固有抵抗値が1×105〜1×1011Ω・cmの範囲にあるポリオレフィン(a)のブロックと親水性ポリマー(b)のブロックとが、繰り返し交互に結合した構造を有するブロックポリマー(A)5〜25質量%と融点(Tm)が125〜145℃の範囲にあり、且つ、融点(Tm)−融点(Tm)が21℃を超えるプロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(B)95〜75質量%を含む帯電防止樹脂組成物からなる表層を有してなることを特徴とする二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム。
【請求項2】
帯電防止樹脂組成物からなる表層が、少なくとも一方向に延伸されてなる請求項1記載の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム。
【請求項3】
帯電防止樹脂組成物からなる表層が、二軸延伸されてなる請求項1または2記載の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム。
【請求項4】
ブロックポリマー(A)を構成するポリオレフィン(a)が、低分子量ポリプロピレン(a1)である請求項1記載の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム。
【請求項5】
低分子量ポリプロピレン(a1)が、末端をα、β不飽和カルボン酸および/またはその無水物で変性した低分子量ポリプロピレン(a1−1)である請求項4記載の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム。
【請求項6】
ブロックポリマー(A)を構成する親水性ポリマー(b)が、ポリエーテル(b1)、ポリエーテル含有親水性ポリマー(b2)、カチオン性ポリマー(b3)およびアニオン性ポリマー(b4)の何れかである請求項1記載の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム。
【請求項7】
ポリエーテル含有親水性ポリマー(b2)が、ポリエーテルジオール(b1−1)のセグメントを有するポリエーテルエステルアミド(b2−1)、(b1−1)のセグメントを有するポリエーテルアミドイミド(b2−2)、(b1−1)のセグメントを有するポリエーテルエステル(b2−3)、ポリエーテルジアミン(b1−2)のセグメントを有するポリエーテルアミド(b2−4)及び(b1−1)または(b1−2)のセグメントを有するポリエーテルウレタン(b2−5)の何れかである請求項6記載の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム。
【請求項8】
二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる基材層が、粘着付与剤(C)3〜25質量%を含むポリプロピレン組成物を二軸延伸してなる基材層である請求項1記載の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム。

【公開番号】特開2011−93259(P2011−93259A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251480(P2009−251480)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000220099)三井化学東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】