説明

二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム

【課題】高分子型帯電防止剤を含有しつつ、表面の肌荒れのおそれがなく透明性に優れ、かつスリップ性、帯電防止性能も優れた積層フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】ポリオレフィン(a)のブロック及び親水性ポリマー(b)のブロックが、繰り返し交互に結合した構造を有し、表面固有抵抗値が1×105〜1×1011Ω・cmの範囲にあるブロックポリマー(A)5〜10質量%と、プロピレン系重合体(B)5〜50質量%と、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)40〜90質量%とを含む帯電防止樹脂組成物からなり、前記プロピレン系重合体(B)と、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)との質量比が、1:1〜1:9の範囲にある二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム表層を有する二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止性、透明性、スリップ性に優れる二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
二軸延伸ポリプロピレンフィルム(以下、「OPPフィルム」と呼ぶことがある)は、その優れた透明性、機械的強度、防湿性、剛性等を活かして包装材料をはじめ広い分野で使用されている。
【0003】
一方、OPPフィルムは無極性であり、帯電しやすいことから、帯電防止性を必要とする用途のものには、種々の帯電防止剤が添加されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、一般に添加されている帯電防止剤は、比較的低分子量の界面活性剤と共に用いられ、当該界面活性剤が帯電防止剤をOPPフィルムの表面に滲み出させることにより、帯電防止性を発現させている。そのため、用途によっては、OPPフィルムの表面に滲み出した界面活性剤によって汚れが付着したり、帯電防止性の持続性が劣る等の欠点を有している。
【0004】
かかる欠点を改良する方法として、ポリオレフィン(a)のブロックと、体積固有抵抗値が1×105〜1×1011Ω・cmの親水性ポリマー(b)のブロックとが、繰り返し交互に結合した構造を有するブロックポリマー(A)からなる高分子型帯電防止剤をポリオレフィン樹脂(B)に添加する方法が提案されている(例えば、特許文献2)。また、前記ブロックポリマー(A)として、添加するポリオレフィン樹脂(B)との融点差が±20℃以内にあるブロックポリマーを用いることも提案されている(例えば、特許文献3)。
【0005】
また、前記ブロックポリマー(A)と前記ポリオレフィン樹脂(B)との存在状態を、前記ポリオレフィン樹脂(B)を海部分とし、前記ブロックポリマー(A)を粒径状の島部分とする海島状の層分離構造とすることも提案されている(例えば、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平8−22589号公報
【特許文献2】特開2002‐321314号公報
【特許文献3】特開2005‐314647号公報
【特許文献4】特開2006−247934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記高分子型帯電防止剤とポリプロピレンとをドライブレンドして用いる際、ポリプロピレンが単独重合体である場合、十分な帯電防止性を得るためには高分子型帯電防止剤を多量に添加しなくてはならず、得られるOPPフィルムの表面が肌荒れして透明性に劣り、OPPフィルムの本来の特徴である透明性が低下するおそれがある。
【0008】
一方、ポリプロピレンが他の共重合成分とのランダム共重合体である場合、高分子型帯電防止剤は比較的少ない添加量で帯電防止性が得られるが、得られるOPPフィルムのスリップ性の低下により自動包装機適性が悪化し、ピッチが合わなくなったり、シワが入ったり、包装材料の内部に内容物が充填できないということが起こるおそれがある。
【0009】
本発明は、高分子型帯電防止剤を含有しつつ、表面に肌荒れが生じることなく透明性に優れ、かつスリップ性、帯電防止性能も優れた積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の要旨は以下に存する。
[1]ポリオレフィン(a)のブロック及び親水性ポリマー(b)のブロックが、繰り返し交互に結合した構造を有し、体積固有抵抗値が1×105〜1×1011Ω・cmの範囲にあるブロックポリマー(A)5〜20質量%と、
プロピレン系重合体(B)5〜50質量%と、
プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)40〜90質量%と
を含む帯電防止樹脂組成物からなる表層を有し、
前記表層におけるプロピレン系重合体(B)と、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)との質量比が、1:1〜1:9の範囲にある二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム。
[2]前記表層の厚さが0.5〜10μmの範囲にある[1]に記載の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム。
[3]前記ブロックポリマー(A)を構成するポリオレフィン(a)のブロックが、低分子量ポリプロピレン(a1)である[1]又は[2]に記載の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム。
[4]前記ブロックポリマー(A)を構成する親水性ポリマー(b)が、ポリエーテル(b1)、ポリエーテル含有親水性ポリマー(b2)、カチオン性ポリマー(b3)およびアニオン性ポリマー(b4)の何れかである[1]〜[3]のいずれかに記載の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム。
[5]前記プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)を構成するα−オレフィンの炭素数が2以上6以下である[1]〜[4]のいずれかに記載の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、特定のブロックポリマー(A)、プロピレン系重合体(B)、及びプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)を所定の割合で含有する帯電防止樹脂組成物からなる表層を有することから、表面の肌荒れが生じることがなく透明性に優れ、かつスリップ性、帯電防止性能も優れた二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムが得られる。したがって、本発明の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムは、その透明性、帯電防止性、スリップ性等を活かして包装材料をはじめ広い分野で好ましく用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム
本発明の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムは、ポリオレフィン(a)のブロック及び親水性ポリマー(b)のブロックが、繰り返し交互に結合した構造を有し、体積固有抵抗値が1×105〜1×1011Ω・cmの範囲にあるブロックポリマー(A)5〜20質量%と、プロピレン系重合体(B)5〜50質量%と、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)40〜90質量%とを含む帯電防止樹脂組成物からなる表層を有し、前記表層におけるプロピレン系重合体(B)と、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)との質量比が、1:1〜1:9の範囲にあるものである。
【0013】
また、本発明の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムは、通常、ポリオレフィン樹脂等からなる基材層の片面又は両面に、上記表層を積層したものとされる。なお、二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムには、基材層と表層以外に、用途に応じて適宜他の層が積層されていてもよい。
【0014】
(1)表層
本発明のフィルムの表層は、ブロックポリマー(A)5〜10質量%と、プロピレン系重合体(B)5〜50質量%と、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)40〜90質量%とを含む帯電防止樹脂組成物からなる。また、表層におけるプロピレン系重合体(B)とプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)との含有比率(質量比)は、(B):(C)=1:9〜1:1の範囲とされる。プロピレン系重合体(B)の含有比率が高すぎると、透明性が低下したりする。一方、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)の含有比率が高すぎると、フィルムのスリップ性が過剰に低下する。
【0015】
本発明のフィルムの表層では、プロピレン系重合体(B)とプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)との混合相中に、ブロックポリマー(A)が分散していることが好ましい。例えば、プロピレン系重合体(B)とプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)との混合相中に、ブロックポリマー(A)が島状に分散していることが好ましい。島状とは、プロピレン系重合体(B)及びプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)の混合相を海部分として、ブロックポリマー(A)が独立した島のように点在していることをいう。
【0016】
また、二軸延伸された表層内部では、ブロックポリマー(A)も延伸方向に配向した形状を有していることが好ましい。例えば、TD方向及びMD方向の延伸倍率が異なる場合、ブロックポリマー(A)は、延伸倍率の高い延伸方向に配向した形状で分散されていることが好ましい。
【0017】
延伸方向に対して垂直、かつ表層表面に対して垂直に切断した断面に観察されるブロックポリマー(A)の粒径のうち、最大の粒径を本願では最大粒径とする。この最大粒径は、1.0μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましい。延伸倍率がTD方向及びMD方向で異なる場合には、延伸倍率が高い側の延伸方向に対して垂直、かつ表層表面に対して垂直に切断した断面を観察すればよい。
【0018】
表層の厚さは、0.5〜10μmの範囲にあることが好ましく、1〜5μmの範囲にあることがより好ましい。この範囲とすることにより、表層が十分に帯電防止性を発現することができ、二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムの帯電防止性を良好なものとすることができる。
【0019】
[ブロックポリマー(A)]
ブロックポリマー(A)は、上記帯電防止樹脂組成物中に、5〜20質量%、好ましくは5〜10質量%、より好ましくは7〜10質量%含有される。ブロックポリマー(A)をこの範囲含有することにより、ブロックポリマー(A)を含有する表層、ひいては二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムの帯電防止性を良好なものとすることができる。
【0020】
ブロックポリマー(A)は帯電防止剤として機能しうる。そのため、ブロックポリマー(A)の体積固有抵抗値は、1×105〜1×1011Ω・cmの範囲にあることが好ましい。ブロックポリマー(A)が、本発明のフィルムに適切な帯電防止性を付与するためである。ブロックポリマー(A)の体積固有抵抗値は、ブロックポリマー(A)からなるフィルムを作製し、JIS C2151に準拠して測定すればよい。
【0021】
ブロックポリマー(A)のメルトフローレート(MFR;190℃・21.18N荷重下、ASTM D1238に準拠)は、樹脂物性、加工適性等の観点より6〜31g/10分であることが好ましく、より好ましくは6〜13g/10分である。また、ブロックポリマー(A)の融点は、樹脂物性、加工適性等の観点より130〜165℃であることが好ましく、より好ましくは150〜165℃である。上記融点は、示差走査熱量計による実測の他、計算により求めることができる。
【0022】
ブロックポリマー(A)は、ポリオレフィン(a)のブロックと、親水性ポリマー(b)のブロックとが繰り返し交互に結合した構造を有する。ポリオレフィン(a)のブロックと親水性ポリマー(b)のブロックとは、例えばエステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、イミド結合等を介して結合していることが好ましい。
【0023】
ポリオレフィン(a)のブロックは、例えば、1種または2種以上のポリオレフィンの重合体ブロックであり;好ましくはポリプロピレンのブロックであり;さらに好ましくは低分子量ポリプロピレン(a1)である。低分子量ポリプロピレン(a1)のブロックとは、平均重合度が200以下であるポリプロピレンブロックをいう。低分子量ポリプロピレン(a1)の重合度は、通常30〜200であり、50〜150とすることが好ましい。
【0024】
また、ポリオレフィン(a)のブロックは、その両末端に親水性ポリマー(b)と結合可能な基を導入されたポリオレフィン(末端変性ポリオレフィン)ブロックであることが好ましい。末端変性とは、末端をα,β-不飽和カルボン酸および/またはその無水物で変性することをいう。つまり、ポリオレフィン(a)のブロックは、末端をα,β-不飽和カルボン酸および/またはその無水物で変性した低分子量ポリプロピレン(a1−1)が特に好ましい。
【0025】
ブロックポリマー(A)におけるポリオレフィン(a)の含有量は、ポリオレフィン(a)と親水性ポリマー(b)との合計重量に基づいて、20〜80%の範囲であることが好ましく、特に40〜70%の範囲であることが好ましい。ブロックポリマー(A)におけるポリオレフィン(a)の量が少なすぎると、プロピレン系重合体(B)やプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)に対するブロックポリマー(A)の相溶性が低下して、ポリオレフィン(a)が適切に分散せず、十分な帯電防止能が発現されないことがある。一方、ポリオレフィン(a)の量が多すぎると、ブロックポリマー(A)の体積固有抵抗値が高まり、帯電防止剤として機能しにくくなる。
【0026】
親水性ポリマー(b)は、親水性を有する部分構造を分子鎖中に有するポリマーであれば特に制限はない。親水性ポリマー(b)の例には、ポリエーテル(b1)、ポリエーテル含有親水性ポリマー(b2)、カチオン性ポリマー(b3)およびアニオン性ポリマー(b4)などが含まれる。これらの中でもポリエーテル含有親水性ポリマー(b2)が好ましい。
【0027】
ポリエーテル(b1)の例には、ポリエーテルジオール、ポリエーテルジアミンおよびこれらの変性物が含まれる。
【0028】
ポリエーテル含有親水性ポリマー(b2)の例には、ポリエーテルジオール(b1−1)のセグメントを有するポリエーテルエステルアミド(b2−1)、ポリエーテルジオール(b1−1)のセグメントを有するポリエーテルアミドイミド(b2−2)、ポリエーテルジオール(b1−1)のセグメントを有するポリエーテルエステル(b2−3)、ポリエーテルジアミン(b1−2)のセグメントを有するポリエーテルアミド(b2−4)、及びポリエーテルジオール(b1−1)またはポリエーテルジアミン(b1−2)のセグメントを有するポリエーテルウレタン(b2−5)などが含まれる。
【0029】
ポリエーテルエステルアミド(b2−1)は、末端にカルボキシル基を有するポリアミド(Q1)とポリエーテルジオール(b1−1)とから構成される。
【0030】
末端にカルボキシル基を有するポリアミド(Q1)の例には、炭素数6〜12のラクタム(Q1−1)の開環重合体;炭素数6〜12のアミノカルボン酸(Q1−2)の縮重合体;ジアミン(Q1−3)と炭素数4〜20のジカルボン酸(Q1−4)とのポリアミド(Q1−5)、およびこれらの混合物などが含まれる。ジアミン(Q1−3)とは、炭素数2〜20の脂肪族ジアミン、炭素数6〜15の脂環式ジアミン、炭素数8〜15の芳香脂肪族ジアミンおよび炭素数6〜15の芳香族ジアミンなどである。炭素数4〜20のジカルボン酸(Q1−4)とは、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体{低級アルキル(炭素数1〜6)エステル、無水物等}などである。
【0031】
末端にカルボキシル基を有するポリアミド(Q1)として好ましいものは、カプロラクタムの開環重合体、12−アミノドデカン酸の縮重合体およびアジピン酸とヘキサメチレンジアミンとのポリアミドであり、特に好ましいものはカプロラクタムの開環重合体である。
【0032】
ポリエーテルジオール(b1−1)は、ジオール(b0)にアルキレンオキサイド(以下AOと略記)を付加反応させることにより得られる。
【0033】
ジオール(b0)は、二価アルコール(例えば炭素数2〜12の脂肪族、脂環式または芳香族二価アルコール)、炭素数6〜18の二価フェノール、および三級アミノ基含有ジオールが挙げられる。
【0034】
アルキレンオキサイドAOは、炭素数2〜4のAOが用いられる。炭素数2〜4のAOの例には、エチレンオキサイド(以下EOと略記)、プロピレンオキサイド(以下POと略記)、1,2−ブチレンオキサイド、1,4−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、1,3−ブチレンオキサイドおよびこれらの2種以上の併用系が含まれる。
【0035】
炭素数2〜4のアルキレンオキサイドAOと、炭素数2〜4のアルキレンオキサイドAO以外のアルキレンオキサイド(他のアルキレンオキサイド)とを組み合わせてもよい。他のアルキレンオキサイドの含量は、全AOの重量に基づいて30%以下とすることが好ましい。他のアルキレンオキサイドの例には、炭素数5以上のアルキレンオキサイドAOや;炭素数5〜12のα−オレフィン、スチレンオキサイドおよびエピハロヒドリン(エピクロルヒドリン等)で変性したアルキレンオキサイドなどが含まれる。
【0036】
アルキレンオキサイドAOの好ましい例には、エチレンオキサイドEO単独、およびエチレンオキサイドEOとEO以外のアルキレンオキサイドAOとの併用(ブロックおよび/またはランダム付加)である。
【0037】
ポリエーテルジオール(b1−1)における炭素数2〜4のオキシアルキレン単位の含量は、好ましくは8〜99.6%、特に10〜98%である。ポリオキシアルキレン鎖中のオキシエチレン単位の含量は、好ましくは10〜100%、さらに好ましくは50〜100%、特に60〜100%である。
【0038】
ポリエーテルアミドイミド(b2−2)は、少なくとも1個のイミド環を有するポリアミドイミド(Q2)とポリエーテルジオール(b1−1)とから構成される。イミド環を有するポリアミドイミド(Q2)は、ラクタム(Q1−1)と少なくとも1個のイミド環を形成しうる三価または四価の芳香族ポリカルボン酸(Q2−1)とから得られる縮重合体;アミノカルボン酸(Q1−2)と芳香族ポリカルボン酸(Q2−1)とからなる縮重合体;アミド(Q1−5)と芳香族ポリカルボン酸(Q2−1)とからなる縮重合体;およびこれらの混合物が用いられる。
【0039】
ポリエーテルエステル(b2−3)は、ポリエステル(Q3)とポリエーテルジオール(b1−1)とから構成される。ポリエステル(Q3)は、ジカルボン酸(Q1−4)とジオール(b0)とのポリエステル;炭素数6〜12のラクトン若しくは炭素数6〜12のオキシカルボン酸のポリエステル;およびこれらの混合物が用いられる。
【0040】
ポリエーテルアミド(b2−4)は、ポリアミド(Q1)とポリエーテルジアミン(b1−2)とから構成される。ポリエーテルジアミン(b1−2)は、ポリエーテルジオール(b1−1)の水酸基を公知の方法によりアミノ基に変えることにより得ることができる。例えば、ポリエーテルジオール(b1−1)の水酸基をシアノアルキル化して得られる末端を還元してアミノ基としたものが使用できる。
【0041】
ポリエーテルウレタン(b2−5)は、前記有機ジイソシアネートと、ポリエーテルジオール(b1−1)またはポリエーテルジアミン(b1−2)と、必要により鎖伸長剤[ジオール(b0)およびジアミン(Q3−1)など]とから構成される。
【0042】
また、ポリエーテル含有親水性ポリマー(b2)中のポリエーテル(b1)セグメントの含量は、成形性の点から、ポリエーテル含有親水性ポリマー(b2)の重量に基づいて30〜80%、特に40〜70%が好ましい。ポリエーテル含有親水性ポリマー(b2)中のオキシエチレン基の含量は、帯電防止性および成形性の点から、ポリエーテル含有親水性ポリマー(b2)の重量に基づいて30〜80%、特に40〜70%が好ましい。ポリエーテル含有親水性ポリマー(b2)のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定される数平均分子量は、耐熱性の点から、800以上、特に1,000以上が好ましく、ポリオレフィン(a)との反応性の点から、50,000以下、特に30,000以下が好ましい。
【0043】
カチオン性ポリマー(b3)の例には、非イオン性分子鎖(c1)で隔てられた2〜80個、好ましくは3〜60個のカチオン性基(c2)を分子内に有するカチオン性ポリマーが含まれる。
【0044】
非イオン性分子鎖(c1)の例には、二価の炭化水素基およびエーテル結合を有する二価の炭化水素基、さらに好ましくは炭素数1〜8のアルキレン基(ヘキサメチレン基等)、フェニレン基および(ポリ)オキシアルキレン基、特に(ポリ)オキシエチレン基、(ポリ)オキシプロピレン基である。非イオン性分子鎖(c1)の重量平均分子量は、通常28〜10,000、好ましくは300〜5,000である。
【0045】
カチオン性基(c2)は、四級アンモニウム塩またはホスホニウム塩を有する基などである。四級アンモニウム塩を有する基としては、二価の四級アンモニウム塩含有複素環基が好ましい。二価の四級アンモニウム塩基含有複素環基としては、二価の三級アミノ基含有複素環基が四級化された構造の基が挙げられる。二価の三級アミノ基含有複素環基の例には、二価のイミダゾール環基(1,4−イミダゾレン基および2−フェニル−1,4−イミダゾレン基など)、二価のピペリジン環基(2,3−ピペリジレン基、3,4−ピペリジレン基または2,6−ピペリジレン基など)、および二価の芳香複素環基(2,3−ピリジレン基、2,4−ピリジレン基、2,5−ピリジレン基、2,6−ピリジレン基、3,4−ピリジレン基、3,5−ピリジレン基、2,5−ピリミジニレン基、3,6−ピリダジニレン基および2,5−ピラジニレン基など)などが含まれる。
【0046】
アニオン性ポリマー(b4)の例には、スルホニル基を有するジカルボン酸と、ジオール(b0)またはポリエーテル(b1)とを必須構成単位とし、かつ分子内に2〜80個、好ましくは3〜60個のスルホニル基を有するアニオン性ポリマーが使用できる。スルホニル基を有するジカルボン酸としては、スルホニル基を有する芳香族ジカルボン酸、スルホニル基を有する脂肪族ジカルボン酸およびこれらのスルホニル基のみが塩となったものが使用できる。
【0047】
スルホニル基を有する芳香族ジカルボン酸としては、例えば5−スルホイソフタル酸、2−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、4−スルホ−2,6−ナフタレンジカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。エステル形成性誘導体とは、低級アルキル(炭素数1〜4)エステル(メチルエステル、エチルエステルなど)や、酸無水物などである。スルホニル基を有する脂肪族ジカルボン酸としては、例えばスルホコハク酸およびそのエステル形成性誘導体が挙げられる。スルホニル基を有する芳香族ジカルボン酸がより好ましい。
【0048】
これらのスルホニル基のみが塩となったものとしては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、ヒドロキシアルキル(炭素数2〜4)基を有するモノ、ジまたはトリアミン等のアミン塩、これらアミンの四級アンモニウム塩およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
【0049】
アニオン性ポリマー(b4)を構成するジオール(b0)またはポリエーテル(b1)のうち好ましいものは、炭素数2〜10のアルカンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール(重合度2〜20)、ビスフェノール(ビスフェノールA等)のEO付加物(付加モル数2〜60)、及びこれらの2種以上の混合物である。
【0050】
アニオン性ポリマー(b4)のMnは、帯電防止性および(a)との反応性の点から、好ましくは500〜20,000、さらに好ましくは1,000〜15,000、特に1,200〜8,000である。
【0051】
[プロピレン系重合体(B)]
プロピレン系重合体(B)は、上記帯電防止樹脂組成物中に、5〜50質量%、好ましくは30〜50質量%含有される。プロピレン系重合体(B)をこの範囲含有することにより、二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムが、透明性に優れ、かつスリップ性、帯電防止性能にも優れたものとすることができる。
【0052】
プロピレン系重合体(B)は、プロピレン単独重合体であるか、もしくはプロピレンとプロピレン以外のオレフィンの1種又は2種以上との共重合体である。ただし、プロピレン系重合体(B)の分子鎖中に含まれるプロピレン以外の共重合成分の量は、5質量%以下とすることが好ましく、1質量%以下がより好ましく、特にプロピレン単独重合体とすることが好ましい。
【0053】
このポリプロピレン系重合体(B)のメルトフローレート(MFR;ASTM D1238、230℃、2.16kg荷重下)は、樹脂物性、加工適性等の面から0.5〜20g/10分であることが好ましく、より好ましくは1〜10g/10分である。またプロピレン系重合体(B)の融点は、樹脂物性、加工適性等の観点より157〜165℃であることが好ましい。
【0054】
[プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)]
プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)は、上記帯電防止樹脂組成物中に、40〜90質量%、好ましくは50〜70質量%含有される。プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)をこの範囲含有することにより、ブロックポリマー(A)を適切に分散させ、帯電防止性を十分に発現させることができる。
【0055】
プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)は、プロピレンと、プロピレン以外の一種又は二種以上のα−オレフィンとを触媒存在下等で共重合させることによって得られるランダム共重合体である。α−オレフィンは、炭素数2〜6が好ましく、より好ましくは炭素数2〜4である。具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン等が挙げられ、特に好ましくはエチレン及び1−ブテンである。
【0056】
プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)の分子鎖中におけるα−オレフィンの含有量は、1〜20重量%であることが好ましく、より好ましくは1.5〜15重量%である。α−オレフィンランダムの量を上記範囲内とすることにより、プロピレン・α−ランダム共重合体を含む表層を有する二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムが肌荒れを起こすおそれがなく、透明性等に優れるものとすることができる。
【0057】
また、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)のメルトフローレート(MFR;ASTM D1238、230℃、2.16kg荷重下)は、樹脂物性、加工適性等の観点より0.5〜20g/10分であることが好ましく、より好ましくは1〜10g/10分である。また、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)の融点は、樹脂物性、加工適性等の観点より125〜145℃であることが好ましく、より好ましくは130〜143℃である。
【0058】
プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)の製法に特に制限はなく、公知の重合触媒を用いて製造されうる。
【0059】
[その他成分]
本発明のフィルムの表層を構成する帯電防止樹脂組成物には、ブロックポリマー(A)、プロピレン系重合体(B)、及びプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)の他に、二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムの用途などに応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、任意の樹脂用添加剤等を含有していてもよい。
【0060】
樹脂用添加剤としては、例えば酸化防止剤、滑剤、着色剤、紫外線吸収剤をはじめ、通常のポリオレフィンフィルムに用いられる各種添加剤、充填剤を付加成分として適宜添加することができる。また、さらなる帯電防止性能の向上を目的として、アルカリ金属、アルカリ土類金属のハロゲン化物からなる金属塩が添加されることもある。
【0061】
(2)基材層
本発明のフィルムの基材層は、上記表層と積層可能なものであれば特に制限はなく、例えば単一の樹脂、もしくは異なる2以上の樹脂を混合した混合系樹脂による単層体であってもよく、または同一種類の層を複数積層した積層体、もしくは異なる種類の層を複数積層した積層体であってもよい。
【0062】
基材層の材料として好ましくは、ポリオレフィンが挙げられ、特に樹脂物性、加工特性等の面からポリプロピレン単独重合体が好ましく用いられる。
【0063】
また、基材層であるポリオレフィンのメルトフローレート(MFR;ASTM D1238、230℃、2.16kg荷重下)は、樹脂物性、加工適性等の観点より0.5〜20g/10分であることが好ましく、より好ましくは1〜10g/10分である。また、基材層の材料の融点は、樹脂物性、加工適性等の観点より157〜165℃であることが好ましい。
【0064】
基材層の厚さは、本発明の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムの用途等に応じて適宜選択されるが、通常10〜100μmの範囲であり、好ましくは15〜50μmの範囲である。
【0065】
基材層の材料の融点は、表層に含まれるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)の融点以上であることが好ましく、α−オレフィンランダム共重合体(C)の融点より5℃以上高いことがさらに好ましい。基材層の材料の融点が、表層に含まれるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)の融点より低い場合には、二軸延伸時の加熱によって、基材層が変形してしまう可能性がある。
【0066】
(3)その他
本発明の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムは、その他の層を有していてもよい。例えば裏面層を設けることができる。裏面層とは、表層を設ける面とは反対の基材層の表面に配置される層をいう。裏面層としては、例えば樹脂、紙、不織布、セロハン等、公知の材料からなる層を用いることができる。
【0067】
また、二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムは、用途などに応じて、コロナ放電処理などの表面処理を行うこともできる。この場合、表面処理は表層に対して行ってもよく、また表層を片側のみに積層している場合には、表層が設けられていない側に行ってもよい。
【0068】
(4)二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムの物性
本発明の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムは、表面固有抵抗値が、1×10Ω/□以上、1×1013Ω/□以下であることが好ましい。
また、本発明の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムのスリップ性は、JIS P8147に準拠した傾斜法により測定される摩擦子の滑り出し開始角度の正接(tanθ)を静摩擦係数とし、当該フィルム表面と裏面との静摩擦係数が、0.5以下となることが好ましい。
本発明の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムのヘイズは、3%以下であることが好ましい。なお、ヘイズはJIS K−7136に準拠して測定される。
【0069】
2.二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムの製造方法
本発明の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムの作製方法は特に制限されない。例えば、表層の材料となる帯電防止樹脂組成物と、基材層の材料となる樹脂組成物と、任意の他の層の材料となる樹脂組成物とを共押出し成形することで積層シートを得て;得られた積層シートを、各種延伸機によりTD方向およびMD方向に、順次もしくは同時に延伸すればよい。
【0070】
ただし、本発明の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムの作製方法はこの方法に限定されるものではない。例えば、表層となるフィルムと、基材層となるフィルムと、その他の層となるフィルムを個別に作製し、それらをラミネートなどにより貼り合わせて製造してもよい。
【0071】
表層の材料となる帯電防止樹脂組成物は、ブロックポリマー(A)、プロピレン系重合体(B)、及びプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)と、任意の樹脂用添加剤等とを、各種ミキサー等でドライブレンドもしくはドライブレンド後、溶融混練することによって得られる。
【0072】
表層の延伸倍率は、いずれの方法においても、それぞれの方向に2〜15倍とすることが好ましい。また特に、2軸延伸の際、表層の延伸倍率を、一方向(例えばMD方向)に4〜5倍とし、他方向(例えばTD方向)に8〜10倍とすることが好ましい。この範囲とすることにより、表層が優れた帯電防止性を発現する。
【0073】
延伸温度は、表層に含まれるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)の融点より5℃以上高い温度で行うことが好ましい。当該温度未満で延伸を行った場合には、表層の延伸性が不十分となり、十分な帯電防止性を有するフィルムが得られない場合がある。
【0074】
また、延伸温度は、基材層に含まれる樹脂の融点に対して、2℃以上高い温度で行うことが好ましい。
【0075】
3.二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムの用途
本発明の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムの用途としては、例えば包装用資材、マスキング用資材、電子部品用の包装材料、テープ用材料等が挙げられる。また、紙、不織布、セロハン等と貼り合わせ、これらの用途に使用することも可能である。
【実施例】
【0076】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれらの実施例に制約されるものではない。
【0077】
実施例で使用した樹脂は次の通りである。
【0078】
(1)ブロックポリマー(A)
無水マレイン酸変性ポリプロピレンブロック・ポリ(エチレングリコール)ブロック共重合体樹脂:〔三洋化成工業(株)製、商品名 ペレスタットVH230〕:密度1.0g/cm、融点163℃、体積固有抵抗値:5×10Ω・cm、MFR:7.0g/10分(190℃)
【0079】
(2)プロピレン系重合体(B)
プロピレン単独重合体(B−1):〔(株)プライムポリマー製、商品名 F113G〕:密度0.91g/cm、融点159℃、表面固有抵抗値:3×1016Ω/□、MFR:3.0g/10分(230℃)
プロピレン単独重合体(B−2):〔(株)プライムポリマー製、商品名 F107BV〕:密度0.91g/cm3、融点160℃、表面固有抵抗値:3×1016Ω/□、MFR:7.0g/10分(230℃)
プロピレン単独重合体(B−3):〔(株)プライムポリマー製、商品名 F113BG〕:密度0.91g/cm、融点159℃、表面固有抵抗値:3×1016Ω/□、MFR:3.0g/10分(230℃)
【0080】
(3)プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(C):プロピレン・エチレンランダム共重合体〔(株)プライムポリマー製、商品名 F327〕:密度0.91g/cm、融点139℃、表面固有抵抗値:3×1016Ω/□、MFR:7.0g/10分(230℃)
【0081】
各樹脂の融点は、示差走査熱量系(セイコーインスツルメンツ DSC220)で測定した。
【0082】
[実施例1]
二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる基材層の原料としてプロピレン単独重合体(B−1)を用いた。帯電防止樹脂組成物からなる表層の原料として前記ブロックポリマー(A)とプロピレン単独重合体(B−2)、およびプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)を10:9:81の質量比でドライブレンドした帯電防止樹脂組成物を用いた。裏層の原料としてプロピレン単独重合体(B−3)にブロッキング防止剤としてポリメチルメタクリレート800ppm添加した樹脂を用いた。それぞれ、別の押出機に供給し、Tダイ法により押出し成形して多層シートを得た。
【0083】
次いで、多層シートを延伸温度165℃で、縦延伸機で5倍延伸し、テンター横延伸機で更に10倍延伸した。その後、帯電防止樹脂組成物からなる表層面にコロナ放電処理を施して、20μmの二軸延伸積層多層フィルムを得た。各層の厚さは表層/基材層/裏層=1.5/17.0/1.5μmであった。
【0084】
[実施例2]
実施例1で用いた帯電防止樹脂組成物に代えて、ブロックポリマー(A)と、プロピレン単独重合体(B−2)と、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)とを、質量比10:27:63にした帯電防止樹脂組成物を用いる以外は、実施例1と同様に行い、二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムを得た。
【0085】
[実施例3]
実施例1で用いた帯電防止樹脂組成物に代えて、ブロックポリマー(A)と、プロピレン単独重合体(B−2)と、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)とを、質量比10:45:45にした帯電防止樹脂組成物を用いる以外は、実施例1と同様に行い、二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムを得た。
【0086】
[実施例4]
実施例1で用いた帯電防止樹脂組成物に代えて、ブロックポリマー(A)と、プロピレン単独重合体(B−3)と、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)とを、質量比10:9:81にした帯電防止樹脂組成物を用いる以外は、実施例1と同様に行い、二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムを得た。
【0087】
[実施例5]
実施例1で用いた帯電防止樹脂組成物に代えて、ブロックポリマー(A)と、プロピレン単独重合体(B−3)と、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)とを、質量比10:27:63にした帯電防止樹脂組成物を用いる以外は、実施例1と同様に行い、二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムを得た。
【0088】
[比較例1]
実施例1で用いた帯電防止樹脂組成物に代えて、ブロックポリマー(A)と、プロピレン単独重合体(B−2)とを、質量比10:90にした帯電防止樹脂組成物を用いる以外は、実施例1と同様に行い、二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムを得た。
【0089】
[比較例2]
実施例1で用いた帯電防止樹脂組成物に代えて、ブロックポリマー(A)と、プロピレン単独重合体(B−2)と、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)とを、質量比10:81:9にした帯電防止樹脂組成物を用いる以外は、実施例1と同様に行い、二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムを得た。
【0090】
[比較例3]
実施例1で用いた帯電防止樹脂組成物に代えて、ブロックポリマー(A)と、プロピレン単独重合体(B−2)と、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)とを、質量比10:63:27にした帯電防止樹脂組成物を用いる以外は、実施例1と同様に行い、二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムを得た。
【0091】
[比較例4]
実施例1で用いた帯電防止樹脂組成物に代えて、ブロックポリマー(A)と、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)とを、質量比10:90にした帯電防止樹脂組成物を用いる以外は実施例1と同様に行い、二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムを得た。
【0092】
各実施例及び比較例にて得られた二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムの物性値などを、以下の評価方法により求めた。各評価結果を表1に示す。
【0093】
(イ)表面固有抵抗値(帯電防止性)
得られた二軸延伸フィルムから切り出した10×10cmの試験片を、温度23℃、湿度 50%RHおよび20%RHに24時間保管した。その後、アドバンテスト社製デジタル超高抵抗/微量電流計(8340A)とレジスチビティチェンバ(R12704)を用いて表面固有抵抗値を測定した。表面固有抵抗値が1×1013Ω/□以下で帯電防止性を良好とした。
【0094】
(ロ)ヘイズ(透明性)
ヘイズはJIS K−7136に準拠し、デジタル濁度計日本電色社製「HAZE METER NDH2000」にてフィルム1枚の全ヘイズの測定を行った。全ヘイズが3%/枚以下を透明性が良好とした。
【0095】
(ハ)スリップ性(すべり性)
スリップはJIS P8147に準拠し、安田精機製作所社製スリップテスターを用いて、傾斜法により摩擦係数を測定した。傾斜板を一定速度(1°/sec)で傾斜させ、摩擦子の滑り出し開始角度の正接(tanθ)を静摩擦係数とし、フィルム表面と裏面による静摩擦係数が0.5以下をすべり性が良好とした。
【0096】
【表1】

【0097】
表1から明らかなように、ブロックポリマー(A)と、プロピレン単独重合体(B−2、B−3)と、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)の組成が、本発明の範囲内の比率の組成物から得られる帯電防止樹脂層を有する二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムの場合(実施例1〜5)は、表層の表面固有抵抗値が小さく、スリップ性の値が小さく、帯電防止性およびすべり性に優れ、かつ透明性も良好である。
【0098】
一方、表層に含まれるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)の量が少ない場合には(比較例1,2,3)、帯電防止性が不十分である。また、表層にプロピレン単独重合体を含有させない場合(比較例4)には、スリップ性が不十分である。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムは、その透明性、帯電防止性、スリップ性等を活かして包装材料をはじめ広い分野で好ましく用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン(a)のブロック及び親水性ポリマー(b)のブロックが、繰り返し交互に結合した構造を有し、体積固有抵抗値が1×105〜1×1011Ω・cmの範囲にあるブロックポリマー(A)5〜20質量%と、
プロピレン系重合体(B)5〜50質量%と、
プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)40〜90質量%と
を含む帯電防止樹脂組成物からなる表層を有し、
前記表層におけるプロピレン系重合体(B)と、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)との質量比が、1:1〜1:9の範囲にある二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム。
【請求項2】
前記表層の厚さが0.5〜10μmの範囲にある請求項1に記載の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム。
【請求項3】
前記ブロックポリマー(A)を構成するポリオレフィン(a)のブロックが、低分子量ポリプロピレン(a1)である請求項1又は2に記載の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム。
【請求項4】
前記ブロックポリマー(A)を構成する親水性ポリマー(b)が、ポリエーテル(b1)、ポリエーテル含有親水性ポリマー(b2)、カチオン性ポリマー(b3)およびアニオン性ポリマー(b4)の何れかである請求項1〜3のいずれか一項に記載の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム。
【請求項5】
前記プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)を構成するα−オレフィンの炭素数が2以上6以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載の二軸延伸積層ポリプロピレンフィルム。


【公開番号】特開2012−184351(P2012−184351A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49154(P2011−49154)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000220099)三井化学東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】