二軸引張試験装置


【課題】1台の油圧シリンダ等の駆動手段によって直交する二軸に沿った四方向への引張試験が可能となり、試験片の位置が変動することがない二軸引張試験装置を提供する。
【解決手段】第一軸S1及び第二軸S2の交点においてこれら第一軸S1及び第二軸S2に直交する回転軸線Oを中心として回転するピニオンギア151を有し、第1把持部材16、第2把持部材26、第3把持部材36、第4把持部材46が、それぞれピニオンギア151に歯合されており、第1ラックギア10を駆動させて第1把持部材16を第一軸S1の一方側に向けて移動することにより、第2把持部材26が第一軸S1の他方側に向けて移動し、第3把持部材36が第二軸S2の一方側に向けて移動し、かつ、第4把持部材46が第二軸S2の他方側に向けて移動することを特徴とする。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば薄板材料の二軸引張試験に利用される引張試験装置に関し、単軸引張試験機等を利用して簡易な手段により二軸引張試験を行うことができる二軸引張試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、二軸引張試験装置として、特許文献1及び非特許文献1に示される技術が知られている。これらの文献に示される二軸引張試験装置では、十字形の薄板試験片を把持するための互いに直交する二軸方向に移動可能なつかみ治具が、二軸の四方向に沿って配置された油圧シリンダの引張試験軸にそれぞれ固定されている。そして、この二軸引張試験装置によれば、これら4台の油圧シリンダの駆動によってつかみ治具に把持された薄板試験片を四方向に引っ張り、これによって試験片に対し二軸引張試験を行うことが可能な構成とされている。
【0003】
ところで、上記のような二軸引張試験装置では、直交する二軸に沿った四方向に試験片をそれぞれ引っ張るための油圧シリンダを4台用いることが必要であり、これら4台の油圧シリンダを四方向に同期させて駆動することや、それら油圧シリンダ同士の軸合わせが困難であるという問題があった。
【0004】
また、非特許文献1に記載された技術では、互いに直交する軸上に配置される油圧シリンダのうち、同一軸上に配置される2台の油圧シリンダは、同一の油圧源から圧油が供給され、しかも、パンタグラフ等の等変位機構によって、同一軸上に配置される2台の油圧シリンダの変位が強制的に等しくなるように設定されている。
しかしながら、この場合にあっても、互いに直交する軸上に配置される油圧シリンダ同士の変位を同期させる調整が必要であった。
【0005】
そこで、前述のような問題を解決する手段として、例えば、特許文献2には、駆動パンタグラフと従動パンタグラフとを用いることによって、1台の油圧シリンダ等の駆動手段で、互いに直交する第一軸及び第二軸に沿った四方向への引張試験が可能な二軸引張試験装置が開示されている。特許文献2に記載された二軸引張試験装置によれば、引っ張り動作を四方向について互いに同期させて行うことができるとともに、従来の4台の油圧シリンダを用いた機構のような互いに直交する軸同士間の軸合わせ(油圧シリンダ同士の変位を同期させる調整)が不要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06−109609号公報
【特許文献2】特開2009−244183号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】塑性と加工(日本塑性加工学会誌)第40巻第457号(1999−2)145〜149ページ「十字形試験片を用いた2軸引張試験による冷間圧延鋼板の等塑性仕事面の測定と定式」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年では、引張試験において試験片に加わる伸び及び歪みをCCDカメラ等の撮像手段を利用して測定する非接触式の変位計や歪み計が提供されている。このような非接触式の変位計や歪み計においては、試験片に歪みゲージ等の測定部材を貼り付ける必要がなく、引張試験における測定部材への影響を防止することができ、精度の良いデータを得ることが可能となるのである。特に、容易に変形するアルミニウム薄板等の引張試験を行うときには、歪みゲージ等による測定部材への影響が大きくなるため、非接触式の変位計や歪み計を用いることが好ましい。
【0009】
ここで、特許文献2に記載された二軸引張試験装置では、駆動パンタグラフと従動パンタグラフとを用いることによって、一台の油圧シリンダ等の駆動手段で、試験片を四方向から引っ張るように構成されているが、油圧シリンダを第一軸の一方側へと移動した場合、試験片自体も第一軸の一方側へと移動することになる。すると、CCDカメラ等の撮像手段によって試験片を撮像することが困難となり、前述の非接触式の変位計や歪み計を用いることは困難であった。
【0010】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、1台の油圧シリンダ等の駆動手段によって直交する二軸に沿った四方向への引張試験が可能となり、かつその引っ張り動作を四方向について互いに同期させて行うことができるとともに、試験片の位置が変動することがなく、撮像手段によって試験片を連続的に撮像することが可能な二軸引張試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。すなわち、本発明の二軸引張試験装置は、第一軸及び第二軸からなる互いに直交する二軸の四方向に、試験片の4つの接続部をそれぞれ引っ張ることにより、該試験片の引張試験を行う二軸引張試験装置であって、前記第一軸及び前記第二軸の交点に直交する回転軸線を中心として回転するピニオンギアを有し、前記第一軸の一方側には試験片を保持する第1把持部材が設けられ、この第1把持部材は、前記第一軸に対して平行に延在するとともに前記ピニオンギアに歯合された第1ラックギアに接続されており、前記第一軸の他方側には試験片を保持する第2把持部材が設けられ、この第2把持部材は、前記第一軸に対して平行に延在するとともに前記ピニオンギアに歯合された第2ラックギアに接続されており、前記第二軸の一方側には試験片を保持する第3把持部材が設けられ、この第3把持部材は、前記第二軸に対して平行に延在するとともに前記ピニオンギアに歯合された第3ラックギアに接続されており、前記第二軸の他方側には試験片を保持する第4把持部材が設けられ、この第4把持部材は、前記第二軸に対して平行に延在するとともに前記ピニオンギアに歯合された第4ラックギアに接続されており、前記第1ラックギアを駆動させて前記第1把持部材を前記第一軸の一方側に向けて移動することにより、前記第2把持部材が前記第一軸の他方側に向けて移動し、前記第3把持部材が前記第二軸の一方側に向けて移動し、かつ、前記第4把持部材が前記第二軸の他方側に向けて移動することを特徴としている。
【0012】
このような構成とされた本発明の二軸引張試験装置においては、前記第一軸及び前記第二軸の交点に直交する回転軸線を中心として回転するピニオンギアを有し、このピニオンギアに、前記第一軸に対して平行に延在する第1ラックギア及び第2ラックギアと、前記第二軸に対して平行に延在する第3ラックギア及び第4ラックギアと、が歯合されていることから、第1ラックギアを駆動させることによってピニオンギアが回転軸線を中心にして回転し、ピニオンギアに歯合されている第2ラックギア、第3ラックギア及び第4ラックギアが、それぞれ移動することになる。そして、これら第1ラックギア、第2ラックギア、第3ラックギア及び第4ラックギアには、それぞれ第1把持部材、第2把持部材、第3把持部材及び第4把持部材が接続されていることから、試験片を第一軸及び第二軸からなる互いに直交する二軸の四方向に引っ張ることが可能となる。また、第1ラックギアの駆動によって回転するピニオンギアに、第2ラックギア、第3ラックギア及び第4ラックギアが歯合されているので、試験片を四方向に均等に引っ張ることができ、精度の高い引張試験を行うことができる。
【0013】
そして、ピニオンギアが、前記第一軸及び前記第二軸の交点に直交する回転軸線を中心として回転する構成とされていることから、第1ラックギアを駆動して第1把持部材を第一軸の一方側に向けて移動させたとしても、この第一軸と第二軸との交点部分に配設された試験片の位置が移動することがなく、引張試験を実施する間、CCDカメラ等の撮像手段によって試験片を連続的に撮像することが可能となる。よって、非接触式の変位計や歪み計を用いて、試験片の伸びや歪みを測定することができる。
【0014】
ここで、前記ピニオンギアには、外径が異なる他のピニオンギアが積層されており、他のピニオンギアと前記ピニオンギアとが、前記第一軸及び前記第二軸の交点に直交する回転軸線を中心として、一体に回転する構成とされており、前記他のピニオンギアには、前記第二軸に対して平行に延在する他の第3ラックギアおよび他の第4ラックギアとが歯合されており、前記第3把持部材は、前記ピニオンギアに歯合された第3ラックギアと前記他のピニオンギアに歯合された他の第3ラックギアのいずれかに選択的に接続され、前記第4把持部材は、前記ピニオンギアに歯合された第4ラックギアと前記他のピニオンギアに歯合された他の第4ラックギアのいずれかに選択的に接続される構成とされていることが好ましい。
【0015】
この構成の二軸引張試験装置によれば、前記第3把持部材を他の第3ラックギアに接続し、前記第4把持部材を他の第4ラックギアに接続することにより、第一軸の一方側及び他方側に向けて試験片を引っ張る第1把持部材及び第2把持部材と、第二軸の一方側及び他方側に向けて試験片を引っ張る第3把持部材及び第4把持部材と、が、互い異なる外径のピニオンギア及び他のピニオンギアにそれぞれ歯合されていることから、第一軸方向と第二軸方向とで変位比が異なる引張試験を行うことが可能となる。すなわち、ピニオンギア及び他のピニオンギアの外径を調整することで、第一軸方向と第二軸方向とで変位比を設定することができるのである。また、ピニオンギアと他のピニオンギアとが同一の回転軸線を中心として同時に回転するように構成されていることから、第1把持部材を第一軸の一方側へと移動するのに併せて、第2把持部材が第一軸の他方側へ移動し、第3把持部材が第二軸の一方側へ移動し、第4把持部材が第二軸の他方側へ移動することになり、精度の高い引張試験を行うことができる。なお、他のピニオンギアは、複数配設されていてもよい。
【0016】
また、前記第1把持部材、前記第2把持部材、前記第3把持部材及び前記第4把持部材の移動方向を案内するガイドローラが配設されていることが好ましい。
この場合、ガイドローラによって前記第1把持部材、前記第2把持部材、前記第3把持部材及び前記第4把持部材の移動方向が案内されることから、試験片を確実に前記第一軸及び前記第二軸の4方向に向けて引っ張ることができ、精度の高い引張試験を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、1台の油圧シリンダ等の駆動手段によって直交する二軸に沿った四方向への引張試験が可能となり、かつその引っ張り動作を四方向について互いに同期させて行うことができるとともに、試験片の位置が変動することがなく、撮像手段によって試験片を連続的に撮像することが可能な二軸引張試験装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態である二軸引張試験装置を示す正面説明図である。
【図2】本発明の実施形態である二軸引張試験装置を示す側面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態を図1、図2を参照して説明する。図1は、互いに直交する第一軸S1及び第二軸S2の四方向(矢印A、B、C、Dで示す方向)に沿って十字形の試験片1を引っ張ることにより引張試験を行う二軸引張試験装置100を示す図である。
この二軸引張試験装置100は、例えば単軸引張試験機に組み付けられて使用されるものである。本実施形態では、第一軸S1が鉛直方向に延在するように配置され、第二軸S2が水平方向に延在するように配置されている。
【0020】
この二軸引張試験装置100は、図2に示すように、平板状をなして互いに平行に配設されたフロントプレート110及びバックプレート120を備えており、このフロントプレート110及びバックプレート120の下端側には、ベースプレート103が固定ボルトによって取り付けられている。
【0021】
フロントプレート110の中央部には、バックプレート120側に向けて突出した凸部111が形成されており、この凸部111には、バックプレート120側に向けて開口した軸受凹部が形成されている。また、バックプレート120には、厚さ方向に貫通した軸受孔が穿設されている。これら軸受凹部及び軸受孔には、それぞれ軸受113、123が配設されている。
【0022】
これら軸受凹部及び軸受孔の軸受113、123には、回転シャフト部140が軸支されている。この回転シャフト部140は、回転軸線Oに沿って延在する多段円柱状をなしており、回転軸線O方向中央部に位置するシャフト本体141と、このシャフト本体141よりも一段径の小さな小径部142、142と、を備えており、回転軸線O方向一端側及び他端側に位置する小径部142、142が、前述の軸受凹部及び軸受孔に挿入されるように構成されている。
【0023】
シャフト本体141には、円板状をなして外周面に歯部が形成されたピニオンギア151と、このピニオンギア151よりも大径とされた大径ピニオンギア152と、が嵌着されている。また、ピニオンギア151と大径ピニオンギア152とは、連結されており、ピニオンギア151と大径ピニオンギア152とが一体となって回転するように構成されている。
【0024】
そして、この回転シャフト部140の回転軸線Oは、互いに直交する第一軸S1と第二軸S2の交点において、第一軸S1及び第二軸S2に対して直交するように配置されている。よって、この回転シャフト部140のシャフト本体141に嵌着されたピニオンギア151及び大径ピニオンギア152が、互いに直交する第一軸S1と第二軸S2の交点において第一軸S1及び第二軸S2に対して直交する回転軸線Oを中心として、回転するように構成されているのである。
【0025】
このピニオンギア151には、第一軸S1に平行して鉛直方向一方側(図1において上側)に向けて延在する第1ラックギア10と、第一軸S1に平行して鉛直方向他方側(図1において下側)に向けて延在する第2ラックギア20と、第二軸S2に平行して水平方向一方側(図1において右側)に向けて延在する第3ラックギア30と、第二軸S2に平行して水平方向他方側(図1において左側)に向けて延在する第4ラックギア40と、がそれぞれ歯合されている。
【0026】
本実施形態では、図1に示すように、ピニオンギア151の水平方向他方側(図1において左側)に第1ラックギア10が歯合され、ピニオンギア151の水平方向一方側(図1において右側)に第2ラックギア20が歯合されている。また、ピニオンギア151の鉛直方向一方側(図1において上側)に第3ラックギア30が歯合され、ピニオンギア151の鉛直方向他方側(図1において下側)に第4ラックギア40が歯合されている。
そして、第1ラックギア10の一端には、単軸引張試験機の駆動軸部(図示なし)に連結される連結部108が形成されている。
【0027】
また、大径ピニオンギア152には、第二軸S2に平行して水平方向一方側(図1において右側)に向けて延在する第5ラックギア50と、第二軸S2に平行して水平方向他方側(図1において左側)に向けて延在する第6ラックギア60と、がそれぞれ歯合されている。すなわち、第3ラックギア30と第5ラックギア50とが平行に、かつ、第4ラックギア40と第6ラックギア60とが平行に配設されているのである。
【0028】
ここで、フロントプレート110の背面(バックプレート120側を向く面)には、第1ラックギア10、第2ラックギア20、第3ラックギア30、第4ラックギア40、第5ラックギア50及び第6ラックギア60の延在方向に沿って延びる複数の背面ガイドレール114がそれぞれ配設されている。そして、第1ラックギア10、第2ラックギア20、第3ラックギア30、第4ラックギア40、第5ラックギア50及び第6ラックギア60は、それぞれスライド部材11、21、31、41、51、61に、スペーサ部材12、22、32、42、52、62を介して連結されており、前述の背面ガイドレール114に、それぞれスライド部材11、21、31、41、51、61が摺動可能に係合されている。すなわち、第1ラックギア10、第2ラックギア20、第3ラックギア30、第4ラックギア40、第5ラックギア50及び第6ラックギア60は、それぞれの背面ガイドレール114に沿って移動するように構成されているのである。
【0029】
また、フロントプレート110には、第1ラックギア10、第2ラックギア20、第3ラックギア30、第4ラックギア40、第5ラックギア50及び第6ラックギア60に対応する背面ガイドレール114に平行するように延在し、厚さ方向に貫通したガイド孔部115がそれぞれ形成されている。
第1ラックギア10、第2ラックギア20、第3ラックギア30、第4ラックギア40、第5ラックギア50及び第6ラックギア60に連結されたスペーサ部材12、22、32、42、52、62には、それぞれのガイド孔部115に挿通されたスライドバー13、23、33、43、53、63が固定されている。そして、第1ラックギア10、第2ラックギア20、第3ラックギア30、第4ラックギア40、第5ラックギア50及び第6ラックギア60が移動した場合、これら第1ラックギア10、第2ラックギア20、第3ラックギア30、第4ラックギア40、第5ラックギア50及び第6ラックギア60に連結されたスライドバー13、23、33、43、53、63がそれぞれのガイド孔部114に沿って移動するように構成されている。
【0030】
第1ラックギア10に連結されたスライドバー13には、フロントプレート110と平行して水平方向一方側(図1において右側)に向けて延在する第1支持プレート14が固定されている。この第1支持プレート14の背面側(バックプレート120側)にはスライド部材15が配設されており、このスライド部材15が、フロントプレート110の前面に形成された前面ガイドレール116に摺動可能に係合されている。
また、第1支持プレート14の前面側には、十字形状の試験片1の上端を掴む第1把持部材16が固定されている。この第1把持部材16、スライド部材15は、第一軸S1上に配設されている。
【0031】
第2ラックギア20に連結されたスライドバー23には、フロントプレート110と平行して水平方向他方側(図1において左側)に向けて延在する第2支持プレート24が固定されている。この第2支持プレート24の背面側(バックプレート120側)にはスライド部材25が配設されており、このスライド部材25が、フロントプレート110の前面に形成された前面ガイドレール116に摺動可能に係合されている。
また、第2支持プレート24の前面側には、十字形状の試験片1の下端を掴む第2把持部材26が固定されている。この第2把持部材26、スライド部材25は、第一軸S1上に配設されている。
【0032】
第3ラックギア30に連結されたスライドバー33及び第5ラックギア50に連結されたスライドバー53のいずれかには、鉛直方向他方側(図1において下側)に向けて延在する第3支持プレート34が固定されている。すなわち、この第3支持プレート34は、第3ラックギア30に連結されたスライドバー33及び第5ラックギア50に連結されたスライドバー53のいずれか一方に、選択的に固定されるように構成されているのである。
【0033】
この第3支持プレート34の背面側(バックプレート120側)にはスライド部材35が配設されており、このスライド部材35が、フロントプレート110の前面に形成された前面ガイドレール116に摺動可能に係合されている。
また、第3支持プレート34の前面側には、十字形状の試験片1の水平方向一端(図1において右端)を掴む第3把持部材36が固定されている。この第3把持部材36、スライド部材35は、第二軸S2上に配設されている。
【0034】
第4ラックギア40に連結されたスライドバー43及び第6ラックギア60に連結されたスライドバー63のいずれかには、鉛直方向一方側(図1において上側)に向けて延在する第4支持プレート44が固定されている。すなわち、この第4支持プレート44は、第4ラックギア40に連結されたスライドバー43及び第6ラックギア60に連結されたスライドバー63のいずれか一方に、選択的に固定されるように構成されているのである。
【0035】
この第4支持プレート44の背面側(バックプレート120側)にはスライド部材45が配設されており、このスライド部材45が、フロントプレート110の前面に形成された前面ガイドレール116に摺動可能に係合されている。
また、第4支持プレート44の前面側には、十字形状の試験片1の水平方向他端(図1において左端)を掴む第4把持部材46が固定されている。この第4把持部材46、スライド部材45は、第二軸S2上に配設されている。
【0036】
次に、上記構成の二軸引張試験装置100の作用について説明する。
この二軸引張試験装置100は、前述のように、単軸引張試験機に組み付けられて使用される。すなわち、単軸引張試験機の基盤上にベースプレート103が接地するように載置され、単軸引張試験機の駆動軸部に、第1ラックギア10の一端に形成された連結部108を連結する。このとき、第一軸S1が鉛直方向に延在するように配置され、第二軸S2が水平方向に延在するように配置されることになる。
【0037】
そして、十字形状をなす試験片1の上端を第1把持部材16にて保持し、試験片1の下端を第2把持部材26で保持し、試験片1の右端を第3把持部材36で保持し、試験片1の左端を第4把持部材46で保持する。このとき、試験片1の中心部分は、第一軸S1と第二軸S2との交点部分に位置することになる。ここで、第3支持プレート34を第3ラックギア30に連結されたスライドバー33に固定し、第4支持プレート44を第4ラックギア40に連結されたスライドバー43に固定しておく。
【0038】
この状態で、単軸引張試験機の駆動軸部を駆動させて、第1ラックギア10を鉛直方向上方へと移動させる。この第1ラックギア10の移動に伴い、第1ラックギア10と歯合されたピニオンギア151が回転軸線Oを中心として矢印R方向に回転することになる。
すると、ピニオンギア151に歯合されていた第2ラックギア20は、ピニオンギア151の矢印R方向への回転によって鉛直方向下方側へと移動することになる。
また、ピニオンギア151に歯合されていた第3ラックギア30は、ピニオンギア151の矢印R方向への回転によって水平方向右側へと移動することになる。
さらに、ピニオンギア151に歯合されていた第4ラックギア40は、ピニオンギア151の矢印R方向への回転によって水平方向左側へと移動することになる。
【0039】
第1ラックギア10が鉛直方向上方に移動することで、第1ラックギア10に連結された第1支持プレート14とともに、試験片1の上端を把持した第1把持部材16が第一軸S1に沿って鉛直方向上方へと移動する。
同様に、第2ラックギア20が鉛直方向下方に移動することで、第2ラックギア20に連結された第2支持プレート24とともに、試験片1の下端を把持した第2把持部材26が第一軸S1に沿って鉛直方向下方へと移動する。
また、第3ラックギア30が水平方向右側に移動することで、第3ラックギア30に連結された第3支持プレート34とともに、試験片1の右端を把持した第3把持部材36が第二軸S2に沿って水平方向右側へと移動する。
さらに、第4ラックギア40が水平方向左側に移動することで、第4ラックギア40に連結された第4支持プレート44とともに、試験片1の左端を把持した第4把持部材46が第二軸S2に沿って水平方向左側へと移動する。
【0040】
このように、試験片1を、第一軸S1に沿って鉛直方向上方及び下方に向けて引っ張るとともに、第二軸S2に沿って水平方向右側及び左側に向けて引っ張ることになり、互いに直交する第一軸S1及び第二軸S2の四方向への二軸引張試験が実施されるのである。
【0041】
なお、第3支持プレート34を第5ラックギア50に連結されたスライドバー53に固定し、第4支持プレート44を第6ラックギア60に連結されたスライドバー63に固定した場合には、第1ラックギア10の移動に伴い、第1ラックギア10と歯合されたピニオンギア151が回転軸線Oを中心として矢印R方向に回転する。このピニオンギア151と同時に大径ピニオンギア152も矢印R方向に回転することになる。
【0042】
そして、大径ピニオンギア152の回転に伴って、大径ピニオンギア152に歯合されていた第5ラックギア50は水平方向右側へと移動し、大径ピニオンギア152に歯合されていた第6ラックギア60は水平方向左側へと移動することになる。
よって、第3支持プレート34を第5ラックギア50に連結されたスライドバー53に固定し、第4支持プレート44を第6ラックギア60に連結されたスライドバー63に固定した場合も、互いに直交する第一軸S1及び第二軸S2の四方向への二軸引張試験が実施されることになる。
【0043】
以上のような構成とされた本実施形態である二軸引張試験装置100によれば、第一軸S1及び第二軸S2の交点において、これら第一軸S1及び第二軸S2に直交する回転軸線Oを中心として回転するピニオンギア151を有し、このピニオンギア151に、第一軸S1に沿って鉛直方向上方に向けて延在する第1ラックギア10と、第一軸S1に沿って鉛直方向下方に向けて延在する第2ラックギア20と、第二軸S2に沿って水平方向右方に向けて延在する第3ラックギア30と、第二軸S2に沿って水平方向左方に向けて延在する第4ラックギア40と、が歯合されていることから、第1ラックギア10を鉛直方向上方に向けて駆動させることによって、ピニオンギア151が回転軸線Oを中心にして矢印R方向に回転し、ピニオンギア151に歯合されている第2ラックギア20、第3ラックギア30及び第4ラックギア40が、それぞれ移動することになる。
【0044】
そして、これら第1ラックギア10、第2ラックギア20、第3ラックギア30及び第4ラックギア40には、それぞれ試験片1の端部を保持する第1把持部材16、第2把持部材26、第3把持部材36及び第4把持部材46が接続されていることから、試験片1を第一軸S1及び第二軸S2からなる互いに直交する二軸の四方向に引っ張ることが可能となる。
また、第1ラックギア10の駆動によって回転するピニオンギア151に、第2ラックギア20、第3ラックギア30及び第4ラックギア40が歯合されているので、四方向に均等に引っ張ることができ、精度の高い引張試験を行うことができる。
【0045】
さらに、ピニオンギア151が、第一軸S1及び第二軸S2の交点に直交する回転軸線Oを中心として回転する構成とされていることから、第1ラックギア10を駆動させて第1把持部材16を第一軸S1に沿って鉛直方向上方に向けて移動させたとしても、この第一軸S1と第二軸S2との交点部分に配設された試験片1の位置が移動することがない。よって、引張試験を実施する間、CCDカメラ等の撮像手段によって試験片1を連続的に撮像することが可能となり、非接触式の変位計や歪み計を用いて、試験片1の伸びや歪みを測定することができる。
【0046】
また、本実施形態では、ピニオンギア151の背面側に、ピニオンギア151よりも一段大径の大径ピニオンギア152が積層配置されており、このピニオンギア151と大径ピニオンギア152とが一体となって同時に、第一軸S1及び第二軸S2の交点に直交する回転軸線Oを中心として回転する構成とされている。そして、この大径ピニオンギア152には、第3ラックギア30と平行するように配設された第5ラックギア50と、第4ラックギア40と平行するように配設された第6ラックギア60と、が歯合されているので、ピニオンギア151を回転させると大径ピニオンギア152も回転し、第5ラックギア50及び第6ラックギア60が、第3ラックギア30及び第4ラックギア40と同様に、第二軸S2に平行して水平方向に移動することになる。
【0047】
そして、試験片1の水平方向右端を把持する第3把持部材36が固定された第3支持プレート34が、第3ラックギア30に接続されたスライドバー33及び第5ラックギア50に接続されたスライドバー53のいずれかに連結され、試験片1の水平方向左端を把持する第4把持部材46が固定された第4支持プレート44が、第4ラックギア40に接続されたスライドバー43及び第6ラックギア60に接続されたスライドバー63のいずれかに連結される構成とされているので、第一軸S1方向と第二軸S2方向とで変位比が異なる引張試験を行うことが可能となる。すなわち、ピニオンギア151及び大径ピニオンギア152の外径の差を調整することで、第一軸S1方向と第二軸S2方向との変位比を任意に設定することができるのである。
【0048】
さらに、本実施形態では、第一軸S1或いは第二軸S2に沿って延びる前面ガイドレール116がフロントプレート110に形成され、第1、第2、第3、第4支持プレート14、24、34、44の背面に配設されたスライド部材15、25、35、45が、前面ガイドレール116に摺動可能に嵌め込まれているので、試験片1を確実に第一軸S1及び第二軸S2の4方向に向けて引っ張ることができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、ピニオンギアと大径ピニオンギアとを備えたものとして説明したが、これに限定されることはなく、ピニオンギアが一枚だけ配設されたものであってもよい。また、ピニオンギアと径の異なる他のピニオンギアが複数枚配設されていてもよい。
【0050】
駆動される第1ピニオンギアが鉛直方向上方に向けて移動される構成として説明したが、これに限定されることはなく、駆動される第1ピニオンギアが鉛直方向下方側に向けて移動される構成でもよいし、水平方向に移動される構成であってもよい。
ガイドローラ、ガイドレール、ガイド孔等の位置、構成等については、本実施形態に限定されることはなく、適宜設計変更してもよい。
【0051】
また、第1把持部材の試験片把持部、第2把持部材の試験片把持部、第3把持部材の試験片把持部及び第4把持部材の試験片把持部の移動方向を案内するガイドローラをそれぞれ配設してもよい。この場合、試験片を確実に第一軸S1及び第二軸S2の4方向に向けて引っ張ることができ、精度の高い引張試験を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0052】
1 試験片
10 第1ラックギア
16 第1把持部材
20 第2ラックギア
26 第2把持部材
30 第3ラックギア
36 第3把持部材
40 第4ラックギア
46 第4把持部材
50 第5ラックギア(他の第3ラックギア)
60 第6ラックギア(他の第4ラックギア)
100 二軸引張試験装置
151 ピニオンギア
152 大径ピニオンギア(他のピニオンギア)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一軸及び第二軸からなる互いに直交する二軸の四方向に、試験片の4つの接続部をそれぞれ引っ張ることにより、該試験片の引張試験を行う二軸引張試験装置であって、
前記第一軸及び前記第二軸の交点においてこれら前記第一軸及び前記第二軸に直交する回転軸線を中心として回転するピニオンギアを有し、
前記第一軸の一方側には試験片を保持する第1把持部材が設けられ、この第1把持部材は、前記第一軸に対して平行に延在するとともに前記ピニオンギアに歯合された第1ラックギアに接続されており、
前記第一軸の他方側には試験片を保持する第2把持部材が設けられ、この第2把持部材は、前記第一軸に対して平行に延在するとともに前記ピニオンギアに歯合された第2ラックギアに接続されており、
前記第二軸の一方側には試験片を保持する第3把持部材が設けられ、この第3把持部材は、前記第二軸に対して平行に延在するとともに前記ピニオンギアに歯合された第3ラックギアに接続されており、
前記第二軸の他方側には試験片を保持する第4把持部材が設けられ、この第4把持部材は、前記第二軸に対して平行に延在するとともに前記ピニオンギアに歯合された第4ラックギアに接続されており、
前記第1ラックギアを駆動させて前記第1把持部材を前記第一軸の一方側に向けて移動することにより、前記第2把持部材が前記第一軸の他方側に向けて移動し、前記第3把持部材が前記第二軸の一方側に向けて移動し、かつ、前記第4把持部材が前記第二軸の他方側に向けて移動することを特徴とする二軸引張試験装置。
【請求項2】
前記ピニオンギアには、外径が異なる他のピニオンギアが積層されており、他のピニオンギアと前記ピニオンギアとが、前記第一軸及び前記第二軸の交点に直交する回転軸線を中心として、一体に回転する構成とされており、
前記他のピニオンギアには、前記第二軸に対して平行に延在する他の第3ラックギアおよび他の第4ラックギアとが歯合されており、
前記第3把持部材は、前記ピニオンギアに歯合された第3ラックギアと前記他のピニオンギアに歯合された他の第3ラックギアのいずれかに選択的に接続され、
前記第4把持部材は、前記ピニオンギアに歯合された第4ラックギアと前記他のピニオンギアに歯合された他の第4ラックギアのいずれかに選択的に接続される構成とされていることを特徴とする請求項1に記載の二軸引張試験装置。
【請求項3】
前記第1把持部材、前記第2把持部材、前記第3把持部材及び前記第4把持部材の移動方向を案内するガイドローラが配設されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の二軸引張試験装置。


【図1】

【図2】


【公開番号】特開2011−137696(P2011−137696A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
物理学 | 測定;試験 | 材料の化学的または物理的性質の決定による材料の調査または分析 | 機械的応力の負荷による固体材料の強さの調査 | 細部 | チヤック
物理学 | 測定;試験 | 材料の化学的または物理的性質の決定による材料の調査または分析 | 機械的応力の負荷による固体材料の強さの調査 | 定張力または定圧縮力によるもの
【出願番号】特願2009−297235(P2009−297235)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(305060154)ユニバーサル製缶株式会社
【Fターム(参考)】
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 調査方法;試験の仕方 | 引張試験
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 力を掛ける方法(時間的、空間的) | 静的負荷による試験
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 力を掛ける方法(時間的、空間的) | 多軸試験(三軸圧縮試験を除く) | 2軸引張試験
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 試験片、材料 | 金属材料
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 試験片、形状、構造及び部分、部品 | シート状
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 試験片の取扱い | チャック、把持機構
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 試験片の取扱い | チャック、把持機構 | 簡単な構造
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 試験装置;構成、部分構成(治具を含む) | 荷重負荷装置
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 試験装置;構成、部分構成(治具を含む) | 治具