説明

二軸配向フィルム

【課題】剛性や寸法安定性および表面平滑性に優れた二軸配向フィルムを得ること。
【解決手段】ガラス転移温度が180℃未満のポリエステルと、ガラス転移温度が180℃以上300℃以下の樹脂の少なくとも2種類以上と含み、少なくとも片面のフィルム表面について、以下の(A)〜(D)のいずれも満足している二軸配向フィルムとする。
(A)表面粗さRaが0.5nm以上10nm以下
(B)10点平均粗さRzが50nm以上300nm以下
(C)表面粗大突起数H1が0個/100cm以上100個/100cm以下
(D)表面粗大突起数H2が0個/100cm以上10個/100cm以下

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寸法安定性に優れた二軸配向フィルムに関する。本発明の二軸配向フィルムは、磁気記録媒体用、電気絶縁用、コンデンサー用、回路材料や太陽電池用材料などに好適に用いることができる。本発明の二軸配向フィルムは、それらの中でも特に磁気記録媒体のベースフィルムとして用いた際に、温度や湿度の環境変化や保存後の寸法変化が小さく、エラーレートが少なく、かつ、磁気ヘッドや磁気テープの削れが少ない走行耐久性に優れた高密度磁気記録媒体を得ることができる。特に、長時間保存後のエラーレートの少ない高密度磁気記録媒体を得ることができる。
【背景技術】
【0002】
二軸配向ポリエステルフィルムはその優れた熱特性、寸法安定性、機械特性、電気特性、耐熱性および表面特性を利用して磁気記録媒体用、電気絶縁用、コンデンサー用、包装用や磁気記録媒体用などの各種工業材料用途に用いられている。特に磁気記録媒体などの支持体としての有用性がよく知られている。
【0003】
近年、磁気テープなどの磁気記録媒体は、機材の軽量化、小型化や大容量化のため、ベースフィルムの薄膜化や高密度記録化が要求されている。高密度記録化のためには、記録波長を短くし、記録トラックを小さくすることが有用である。
【0004】
しかし、記録トラックを小さくすると、テープ走行時における熱やテープ保管時の温湿度変化によるテープの変形により、記録トラックのずれが起こりやすくなるという問題がある。そのため、テープの使用環境および保管環境に対するベースフィルムの寸法安定性を改善する要求が強まっている。また、磁気テープとしたときの走行耐久性の改善要求も強くなっている。
【0005】
また、薄膜化すると機械的強度が不十分となってフィルムの腰の強さが弱くなったり、長手方向に伸びやすく幅方向に縮みやすくなるため、トラックずれを起こしたり、ヘッドタッチが悪化し電磁変換特性が低下したり、ヘッドやテープが削れたりするといったような問題点がある。
【0006】
これらの観点から、支持体には、強度、寸法安定性の点で二軸延伸ポリエステルフィルムよりも優れた剛性の高い芳香族ポリアミドが用いられることがある。しかしながら芳香族ポリアミドは、剛性が高すぎてヘッド削れを引き起こしたりすることがある。さらに高価格であり、汎用記録媒体の支持体としては現実的ではない。ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどを用いたポリエステルフィルムにおいても、延伸技術を用いて高強度化した磁気記録媒体用支持体が開発されている。しかしながら、温度や湿度に対する寸法安定性などの厳しい要求を満足することはいまだ困難である。
【0007】
近年、ポリエステルフィルムの耐熱性を高めるために、ポリエステルに他の熱可塑性樹脂をブレンドするなどの方法が検討されている。
【0008】
ポリエステルとポリエステル以外の熱可塑性樹脂を混合した二軸配向ポリエステルフィルムについて、走行性、耐傷つき性に優れるフィルムが提案されている(例えば特許文献1)。しかし、この技術は、フィルム表面の耐傷つき性を改良する技術であり、本願とは技術思想を異にするものである。実際に同文献記載の技術では機械的物性や寸法安定性を向上させることはできない。また、ポリエステル中にポリエステル以外の熱可塑性樹脂を混合する際に、本願に示すような、フィルムの寸法安定性を向上させために重要となる混合手法や、本願実施例にて例示するポリイミドなどの3成分の樹脂を用いてフィルムを作製する場合の具体的な製膜手法は開示されていない。
【0009】
また、ポリエステルとポリイミドおよびポリイミドとナノ相溶するポリマーとからなるフィルムにおいて、ポリイミドとナノ相溶するポリマーとして芳香族ポリエーテルケトンなどを用いて耐熱性や熱寸法安定性が向上したフィルムが提案されている(例えば特許文献2)。しかし、この技術では、ポリエステルに対してポリイミドやポリイミドとナノ相溶するポリマーの混合量が多く、延伸などにより効果的に分子鎖配向させるには十分ではないことがある。例えば、高密度化磁気記録媒体などに用いる場合の温度や湿度に対する寸法安定性などの厳しい要求を満足するには必ずしも十分ではないことがある。さらに未溶融物による異物がフィルム中に発生しやすくなり、表面が荒れやすく、例えば磁気記録媒体などに用いる場合に電磁変換特性が不良となることがある。
【0010】
ポリマーアロイフィルムについて、添加する粒子の大きさおよび添加量を制御することや、フィルム製膜時に濾過精度の高いフィルターを用いることで表面平滑性を改良したフィルムが提案されている(例えば特許文献3)。しかし3種類以上のポリマーから構成されるポリマーアロイフィルムの表面平滑性の改良については、報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−323146号公報
【特許文献2】特開2004−123863号公報
【特許文献3】特開2002−178474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、上記の問題を解決し、剛性や寸法安定性に優れた二軸配向フィルムを得ることにある。特に磁気記録媒体のベースフィルムとして使用した際に温度や湿度の環境変化や保存による寸法変化を小さくすることができ、エラーレートが少なく、かつ、磁気ヘッドや磁気テープの削れが少なく走行耐久性に優れた高密度磁気記録媒体とすることができる二軸配向フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための本発明は以下の特徴を有する。
【0014】
(1)ガラス転移温度が180℃未満のポリエステルと、ガラス転移温度が180℃以上300℃以下の樹脂の少なくとも2種類以上と含み、少なくとも片面のフィルム表面について、以下の(A)〜(D)のいずれも満足している二軸配向フィルム。
【0015】
(A)フィルム表面粗さRaが0.5nm以上10nm以下
(B)10点平均粗さRzが50nm以上300nm以下
(C)表面粗大突起数H1が0個/100cm以上100個/100cm以下
(D)表面粗大突起数H2が0個/100cm以上10個/100cm以下
(2)フィルム断面を電子顕微鏡で観察した際に、海島構造または海島湖構造が観察される、上記(1)に記載の二軸配向フィルム。
【0016】
(3)フィルム内部のヘイズ値が0%以上50%以下である、上記(1)または(2)に記載の二軸配向フィルム。
【0017】
(4)長手方向および幅方向の屈折率の平均値が1.600以上1.850以下である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【0018】
(5)30℃の温度、40%RHから80%RHの湿度変化において、長手方向または幅方向の少なくとも一方向の湿度膨張係数が0ppm/%RH以上6.0ppm/%RH以下である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の二軸配向フィルム。
【0019】
(6)長手方向または幅方向の少なくとも一方向の温度膨張係数が−5.0ppm/℃以上8.0ppm/℃以下である、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の二軸配向フィルム。
【0020】
(7)ガラス転移温度が180℃未満のポリエステルがポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートおよびそれらの変性体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーである、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の二軸配向フィルム。
【0021】
(8)少なくとも2種類以上含まれるガラス転移温度が180℃以上300℃以下の樹脂が、それぞれガラス転移温度の異なるポリエーテルイミドである、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の二軸配向フィルム。
【0022】
(9)上記(1)〜(8)のいずれかに記載の二軸配向フィルムを用いてなる磁気記録媒体。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、磁気記録媒体用、電気絶縁用、コンデンサー用、回路材料、太陽電池用材料などに好適に用いることができる、剛性や寸法安定性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムを得ることができる。本発明の二軸配向フィルムは、それらの中でも特に磁気記録媒体のベースフィルムとして用いた際に、表面平滑性に優れ、温度や湿度の環境変化や保存後の寸法変化が小さく、エラーレートが少なく、かつ、磁気ヘッドや磁気テープの削れが少ない走行耐久性に優れた高密度磁気記録媒体とすることができる。特に、長時間保存後のエラーレートの少ない高密度磁気記録媒体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】幅寸法を測定する際に用いるシート幅測定装置の概略図である。
【図2】本発明の一実施態様に係る二軸配向フィルムの構造を示す概略断面図である。
【図3】本発明の別の一実施態様に係る二軸配向フィルムの構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の二軸配向フィルムはガラス転移温度が180℃未満のポリエステルを含んでいる。
【0026】
本発明の二軸配向フィルムを構成するポリエステルとしては、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸などの酸成分やジオール成分を構成単位(重合単位)とするポリマーであることが好ましい。
【0027】
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸等を用いることができ、なかでも好ましくは、テレフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸を用いることができる。6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分としては、炭素数2〜10のアレキレンが好ましく、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸、6,6’−(トリメチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸および6,6’−(ブチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸などが挙げられる。脂環族ジカルボン酸成分としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸等を用いることができる。脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等を用いることができる。これらの酸成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0028】
6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分は主成分として用いることもできるが、他の芳香族ポリエステル成分と共重合させることが好ましい。6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分の好ましい共重合量は、5〜50モル%であり、より好ましくは10〜40モル%、さらに好ましくは15〜30モル%である。6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を共重合させたポリエステルの融点は220〜260℃であることが好ましい。より好ましくは230〜250℃である。さらに好ましくは235〜245℃である。6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を共重合させたポリエステルのガラス転移温度は100〜140℃が好ましい。より好ましくは110〜130℃である。さらに好ましくは115〜125℃である。また、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を共重合させたポリエステルの溶融結晶化ピーク温度は140〜180℃であることが好ましい。より好ましくは150〜170℃である。さらに好ましくは155〜165℃である。
【0029】
ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2’−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用いることができ、なかでも、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール等を好ましく用いることができ、特に好ましくは、エチレングリコール等を用いることができる。これらのジオール成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0030】
ポリエステルには、ラウリルアルコール、イソシアン酸フェニル等の単官能化合物が共重合されていてもよいし、トリメリット酸、ピロメリット酸、グリセロール、ペンタエリスリトール、2,4−ジオキシ安息香酸、等の3官能化合物などが、過度に分枝や架橋をせずポリマーが実質的に線状である範囲内で共重合されていてもよい。さらに酸成分、ジオール成分以外に、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸などを本発明の効果が損なわれない程度の少量であればさらに共重合せしめることができる。
【0031】
ポリマーの共重合割合はNMR法(核磁気共鳴法)や顕微FT−IR法(フーリエ変換顕微赤外分光法)を用いて調べることができる。
【0032】
本発明の二軸配向フィルムは、特に優れた生産性、機械特性、熱特性、電気特性、表面特性、耐熱性を付与できるという観点から、結晶性のポリエステルを含んでいることが好ましい。特に、本発明の二軸配向フィルムを磁気記録媒体として用いた場合に、その磁気テープに優れた機械特性、耐熱性を付与するという観点から、および溶融連続製膜を用いて生産性を向上させる観点から、本発明に用いるポリエステルはガラス転移温度が180℃未満であることが好ましい。そのようなポリエステルの内でも、生産性、コスト、機械特性、熱特性の観点からポリエチレンテレフタレート(以下、PETということがある)、ポリ(エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(ポリエチレン−2,6−ナフタレート))(以下、PENということがある)およびこれらの変性体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリエステルを含んでいることが好ましい。もちろん、PETやPENの共重合体でもよく、他の熱可塑性樹脂とのポリマーアロイでもよい。ここでいうポリマーアロイとは多成分系高分子のことであり、共重合によるブロックコポリマーであってもよいし、混合などによるポリマーブレンドでもよい。本発明の二軸配向フィルムには、これらポリマーの少なくとも1種を含んでいることが好ましい。
【0033】
本発明の二軸配向フィルムでは、二軸配向フィルム全量に対して70質量%以上99質量%以下のポリエステルを含むことが好ましい。ポリエステルの含有量を上記範囲内とすることにより、二軸配向フィルムに優れた機械特性、熱特性、電気特性、表面特性、耐熱性、加工性を付与することができる。ポリエステルの含有量の下限は、二軸配向フィルム全量に対して、より好ましくは80質量%、最も好ましくは90質量%である。ポリエステルの含有量の上限は、二軸配向フィルム全量に対して、より好ましくは98質量%、さらに好ましくは97質量%である。ポリエステルの含有量は、二軸配向フィルム全量に対して、最も好ましくは、90質量%以上97質量%以下である。
【0034】
本発明の二軸配向フィルムでは、表面粗大突起数H1およびH2を本発明の範囲内に制御しやすいという観点から、フィルムの原料として用いるポリエステル樹脂ペレット中に含まれる長径1μm以下の不純物量が0個/0.34mm以上100個/0.34mm以下であることが好ましい。不純物量が上記範囲内であることにより、本発明の二軸配向フィルムを磁気テープとした場合に、良好な電磁変換特性を得ることができる。
【0035】
本発明の二軸配向フィルムは、ガラス転移温度(以下、Tgということがある)が180℃未満のポリエステルと共に、Tgが180℃以上300℃以下の樹脂を少なくとも2種類以上含むことが好ましい。本発明の二軸配向フィルムが、Tgが180℃以上300℃以下の樹脂を少なくとも2種含むことにより、本発明の二軸配向フィルムに優れた耐熱性、高配向、優れた表面性を同時に付与しやすくなる。
【0036】
Tgが180℃以上300℃以下の樹脂としては、本発明の二軸配向フィルムを構成するTgが180℃未満のポリエステルとの混和性、加工性を良好にする観点から、熱可塑性非晶性樹脂であることが好ましい。
【0037】
Tgが180℃以上300℃以下の熱可塑性非晶性樹脂としては、例えばポリエーテルイミド(以下、PEIということがある)、ポリイミド(以下、PIということがある)、ポリエーテルスルホン(以下、PESということがある)、ポリスルホン(以下、PSUということがある)、ポリアミドイミド(以下、PAIということがある)、ポリアリレート(以下、PARということがある)、およびポリフェニレンエーテル(以下、PPEということがある)が挙げられる。
【0038】
本発明の二軸配向フィルムにおいては、Tgが180℃以上300℃以下の樹脂としては、本発明の二軸配向フィルムに優れた耐熱性を付与する観点から、特にTgが210℃以上であるPEI、PI、PES、PAIまたはPPEであることが好ましい。中でもTgが210℃以上であるPEI、PI、PES、PAIであることが特に好ましく、さらにはTgが210℃以上であり、かつイミド基を含有するPEI、PI、PAIが最も好ましく、中でもTgが210℃以上であるPEIがいっそう好ましい。イミド基を含有することでポリエステルとの混合性がよくなり、フィルム破れが低減しやすい。また、フィルム中の粗大異物が生成しにくいため、少なくとも片面のフィルム表面10点平均粗さRzを本発明の好ましい範囲に制御しやすい。
【0039】
ここで、PEIは、イミド基からなるポリイミド構成成分にエーテル結合を含有する樹脂であり、下記一般式で示される。
【0040】
【化1】

【0041】
(ただし、上記式中Rは、6〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族または脂肪族残基、Rは6〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族残基、2〜20個の炭素原子を有するアルキレン基、2〜20個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、および2〜8個の炭素原子を有するアルキレン基で連鎖停止されたポリジオルガノシロキサン基からなる群より選択された2価の有機基である。)
上記R、Rとしては、例えば、下記式群に示される芳香族残基を挙げることができる。
【0042】
【化2】

【0043】
本発明の二軸配向フィルムを構成するポリエステルとの親和性、コスト、溶融成形性等の観点から、PEIとして、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物とm−フェニレンジアミン、またはp−フェニレンジアミンとの縮合物である、下記式で示される繰り返し単位を有するポリマーが好ましい。
【0044】
【化3】

【0045】
または
【0046】
【化4】

【0047】
(nは2以上の整数、好ましくは20〜50の整数)
このPEIは、“ウルテム”(登録商標)の商品名で、SABICイノベーティブプラスチック社より入手可能であり、“Ultem1000”、“Ultem1010−1000”、“Ultem1040A−1000”、“Ultem5000”、“Ultem6000”、“UltemCRS5011−1000”および“UltemXH6050−1000”シリーズや“Extem XH1015”および“Extem UH1016”の登録商標名等で知られているものである。
【0048】
本発明においては、上記した各種PEIを少なくとも2種含んでいることが好ましい。PEIを2種含むことにより、PEIの溶融加工性が向上し、PET中に混合しやすくなり、ポリエステルとの分子鎖の絡み合いが大きくなるため、延伸時工程において、拘束点からの力をより効果的にポリエステルへ伝達することができ、ポリエステルの分子鎖配向を高めることができる。さらに、2種以上含まれる上記PEIは、それぞれTgが異なっていることが好ましい。
【0049】
好ましい2種の組み合わせとしては、具体的には、“Ultem1010−1000”と“UltemCRS5011−1000”の組み合わせや“Ultem1010−1000”と“UltemXH6050−1000”の組み合わせが挙げられる。
【0050】
本発明の二軸配向フィルムは、二軸配向フィルム全量に対して、上記したガラス転移温度が180℃以上300℃以下の樹脂の総含有量が1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。ガラス転移温度が180℃以上300℃以下の樹脂の総含有量が上記範囲内であると、二軸配向フィルムに優れた耐熱性、耐湿熱性を付与することができる。ガラス転移温度が180℃以上300℃以下の樹脂の総含有量の下限は、二軸配向フィルム全量に対して、より好ましくは3質量%、さらに好ましくは4質量%である。ガラス転移温度が180℃以上300℃以下の樹脂の総含有量の上限は、二軸配向フィルム全量に対して、より好ましくは15質量%、さらに好ましくは10質量%である。ガラス転移温度が180℃以上300℃以下の樹脂の総含有量は二軸配向フィルム全量に対して、より好ましくは3質量%以上15質量%、さらに好ましくは4質量%以上10質量%以下である。
【0051】
ガラス転移温度が180℃以上300℃以下の樹脂を、例えば2種類含む場合は、Tgの低い方の樹脂を樹脂B、Tgの高い方の樹脂を樹脂Cとすると、樹脂CをTgが180℃未満のポリエステル中へ添加する場合に、樹脂Bを介在させて前記ポリエステル中へ良好に分散させる観点から、樹脂Cの含有量比率が小さい方が好ましい。二軸配向フィルム中に含まれる樹脂Bと樹脂Cの含有量比率は、樹脂B:樹脂C=50:50〜90:10(質量比)であることが特に好ましい。
【0052】
また、二軸配向フィルムに優れた寸法安定性を付与する観点から、ガラス転移温度が180℃以上300℃以下の樹脂の内、少なくとも1種類は本発明の二軸配向フィルムの延伸温度以上のTgを有する樹脂であることが好ましい。
【0053】
本発明の二軸配向フィルムでは、後述する表面粗大突起数H1およびH2を本発明の範囲内に制御しやすいという観点から、フィルムの原料として用いる、Tgが180℃以上300℃以下の樹脂ペレット中に含まれる長径1μm以下の不純物量が0個/0.34mm以上100個/0.34mm以下であることが好ましい。不純物量が上記範囲内であることにより、本発明の二軸配向フィルムを磁気テープとした場合に、良好な電磁変換特性を得ることができる。
【0054】
本発明の二軸配向フィルムを磁気記録媒体として用いるためには、優れた表面平滑性を有することが重要である。
【0055】
本発明の二軸配向フィルムは(A)少なくとも片面の表面粗さRaが0.5nm以上10nm以下である。Raが0.5nm未満では、フィルム生産時の巻き取りの際、または磁気テープ加工工程の搬送の際にしわが入ることや表面に傷がつくため、生産性が低下する。一方、Raが10nmよりも大きい場合は、磁気テープへの加工時に、加工工程などで、搬送ロールとの摩擦係数が大きくなり、工程トラブルが多発するため生産性が低下することや、得られた磁気テープが磁気ヘッドと接触する際の摩擦が大きくなり、テープに記録されたデータ読み取りエラーが発生するなど、磁気テープ特性が大きく低下する。
【0056】
搬送ロールなどとの摩擦係数を小さくする観点、および、加工工程におけるハンドリング性の観点から、上記した少なくとも片面のフィルム表面粗さRaの下限は、好ましくは1nm、より好ましくは2nmであり、上限は好ましくは8nm、より好ましくは6nm、最も好ましくは4nmである。本発明の二軸配向ポリエステルの少なくとも片面のフィルム表面粗さRaの好ましい範囲は1〜8nm、より好ましい範囲は2〜6nm、最も好ましい範囲は2〜4nmである。
【0057】
本発明の二軸配向フィルムは、Raが上記範囲を満たす面について、(B)その10点平均粗さRzが50nm以上300nm以下である。Rzが50nm未満では、フィルム生産時の巻き取りの際、または磁気テープ加工工程の搬送の際にしわが入ることや表面に傷がつくため、生産性が低下する。一方、Rzが300nmよりも大きい場合には、磁気テープカートリッジ保存後の転写により、電磁変換特性が大幅に低下する。
【0058】
特に、本発明の二軸配向フィルムを磁気記録媒体として用いる場合に、電磁変換特性を良好に保つ観点およびカートリッジ保存後の転写による電磁変換特性の低下を抑制する観点から、Rzの上限は好ましくは200nm、より好ましくは100nmである。本発明の二軸配向フィルムはRaが上記範囲を満たす面について、その10点平均粗さRzの好ましい範囲は50〜200nm、より好ましい範囲は50〜100nmである。
【0059】
本発明の二軸配向フィルムはRaが上記範囲を満たす面について、(C)その表面粗大突起数H1が0個/100cm以上100個/100cm以下である。H1が100個/100cmより大きいと電磁変換特性が悪化する。H1は電磁変換特性の観点から、好ましくは50個/100cm以下、より好ましくは20個/100cm以下、さらに好ましくは、10個/100cm以下である。
【0060】
本発明の二軸配向フィルムはRaが上記範囲を満たす面について、(D)その表面粗大突起数H2が0個/100cm以上10個/100cm以下である。H2が10個/100cmより大きいと磁気ヘッドが傷付き易くなり、走行耐久性が悪化する。H2は走行耐久性の観点から、好ましくは5個/100cm以下、より好ましくは2個/100cm以下である。
【0061】
本発明の二軸配向フィルムは、少なくとも片面の表面について上記した(A)〜(D)のいずれも満足していることが好ましいが、磁気テープとして用いる観点から、他方の表面については、以下の特性を有していることが好ましい。
【0062】
(a)フィルム表面粗さRaが0.5nm以上20nm以下
(b)10点平均粗さRzが50nm以上400nm以下
(c)表面粗大突起数H1が0個/100cm以上100個/100cm以下
(d)表面粗大突起数H2が0個/100cm以上10個/100cm以下
すなわち、一方の表面のみ上記(A)〜(D)を全て満足している場合でも、いずれの表面についても上記(A)〜(D)を満足している場合でも、いずれでもよいが、前者の場合には、他方の面について上記(a)〜(d)を同時に満たしていることが好ましい。
【0063】
本発明の二軸配向フィルムは、フィルム断面を電子顕微鏡で観察した際に、その断面に海島構造または海島湖構造を有する(同構造が観察される)ことが好ましい。海島構造または海島湖構造を有すると、寸法安定性を保持しつつ、長手方向および幅方向に高い配向を付与することができるため、機械的物性も同時に高めることが可能となる。そのため、磁気記録媒体用のベースフィルムとして使用すると、温度や湿度の環境変化や、保存時の寸法変化、エラーレートなどが小さくなるという利点を有し、特に好適である。
【0064】
上記のような効果をさらに高めるためには、延伸の際、島部分を拘束点として機能させ、海部分の分子鎖配向を高める作用を発現させることが重要となる。
【0065】
ここで、島部分または湖部分とは、フィルム切断面を透過型電子顕微鏡を用いて観察した際に、円相当径が10nm以上であるドメイン部分を指す。一方、海部分とは、観察面における島部分および湖分以外を指す。
【0066】
海島構造は、例えば図2が一例として示されるような構造であり、海島湖構造は、例えば図3が一例として示されるような構造のことである。
【0067】
本発明の二軸配向フィルムは、フィルム内部のヘイズ値が0%以上50%以下であることが好ましい。フィルム内部のヘイズ値が0%以上50%以下であることにより、耐候性が向上するため、本発明の二軸配向フィルムを長期保管した場合の物性変化を抑えることができる。上記したフィルム内部のヘイズ値は、より好ましくは0%以上20%以下である。さらに好ましくは0%以上10%以下である。
【0068】
本発明の二軸配向フィルムは、長手方向および幅方向の屈折率の平均値が1.600以上1.850以下であることが好ましい。長手方向および幅方向の屈折率の平均値が1.600以上1.850以下であれば、二軸配向フィルムの機械的物性を向上させることができる。これにより、例えば磁気記録媒体用途に用いた場合に、テープドライブ内での長手方向への張力によって長手方向に伸び、この伸び変形により幅方向に収縮することで生じる記録トラックずれという問題の発生を抑制したり、エッジダメージの発生を抑制しやすい。
【0069】
本発明の二軸配向フィルムがPETを構成成分とする場合は、屈折率を制御するための製膜性とコストの観点および、該フィルムを磁気記録媒体として用いた際の記録トラックずれやエッジダメージの発生抑制効果の観点から、上記した屈折率の平均値は好ましくは1.630以上1.780以下であり、より好ましくは1.650以上1.750以下である。
【0070】
また、本発明の二軸配向フィルムがPENを構成成分とする場合は、上記した屈折率の平均値は好ましくは1.780以上1.850以下である。
【0071】
本発明の二軸配向フィルムは、磁気テープとした際に、環境変化や保存後の寸法変化、エラーレートが小さくし、かつ、フィルム製膜時の延伸破れを抑制し、生産性を高める観点、ハンドリング性特に磁気テープへの加工性を高める観点から、30℃の温度において、相対湿度を40%RHから80%RHへ変化させたときのフィルムの長手方向または幅方向の少なくとも一方向の湿度膨張係数が0ppm/%RH以上6ppm/%RH以下であることが好ましい。磁気記録媒体用のベースフィルムとして用いた場合に、得られる磁気記録媒体の記録再生時の湿度変化による寸法安定性や高湿条件での保存後の寸法安定性を向上させる観点から、上記した少なくとも一方向の湿度膨張係数の上限は、好ましくは5.5ppm/%RHであり、さらに好ましくは5ppm/%RHである。好ましい範囲としては、0ppm/%RH以上5.5ppm/%RH以下であり、さらに好ましい範囲としては0ppm/%RH以上5ppm/%RH以下である。
【0072】
本発明の二軸配向フィルムを磁気記録媒体用途に用いる場合、特にフィルムの幅方向の寸法安定性が重要となる場合があることから、本発明の二軸配向フィルムの幅方向の湿度膨張係数は0ppm/%RH以上6ppm/%RH以下であることが好ましい。幅方向の湿度膨張係数はより好ましくは、0ppm/%RH以上5.5ppm/%RH以下であり、さらに好ましくは0ppm/%RH以上5ppm/%RH以下である。
【0073】
本発明の二軸配向フィルムは、長手方向または幅方向の少なくとも一方向の温度膨張係数が−5.0ppm/℃以上8.0ppm/℃以下であることが好ましい。温度膨張係数が−5.0ppm/℃以上8.0ppm/℃以下であることにより、例えば磁気記録媒体のベースフィルムとして用いた場合に、磁気記録媒体の記録再生時の温度変化による寸法安定性を向上せしめたり、高温条件での保存後の寸法安定性を向上させることができる。
【0074】
寸歩安定性の観点から、上記の温度膨張係数の上限は、好ましくは7.0ppm/℃であり、より好ましくは5.0ppm/℃であり、下限は、好ましくは−3.0ppm/℃であり、より好ましくは0ppm/℃である。さらに好ましい範囲としては、−3.0ppm/℃以上7.0ppm/℃以下であり、より好ましい範囲としては0ppm/℃以上5.0ppm/℃以下である。
【0075】
本発明の二軸配向フィルムを磁気記録媒体のベースフィルムに用いる場合、特にフィルムの幅方向の寸法安定性が重要となる場合があることから、本発明の二軸配向フィルムの幅方向の温度膨張係数は−5.0ppm/℃以上8.0ppm/℃以下であることが好ましい。本発明の二軸配向フィルムの幅方向の温度膨張係数はさらに好ましくは、−3.0ppm/℃以上7.0ppm/℃以下であり、最も好ましくは0ppm/℃以上5.0ppm/℃以下である。
【0076】
本発明の二軸配向フィルムは、長手方向のヤング率と幅方向のヤング率の和が11GPa以上20GPa以下であることが好ましい。ヤング率の和の好ましい範囲は、12GPa以上20GPa以下であり、より好ましい範囲は13GPa以上18GPa以下である。ヤング率の和が11GPaより小さい場合、例えば磁気記録媒体用に使用する場合などに、後述するように、長手方向や幅方向のヤング率が不足するために、伸び変形により幅方向に収縮し、記録トラックずれという問題が発生したり、エッジダメージが発生したりしやすくなる。また、ヤング率の和が20GPaより大きい場合、延伸倍率を高めて極度に配向させる必要があり、フィルム破れが頻発して生産性に劣ったり、破断伸度が小さくなり破断しやすくなったりすることがある。
【0077】
長手方向のヤング率と幅方向のヤング率の和を上述の範囲内とするためには、二軸配向フィルムの長手方向のヤング率を3.5GPa以上12GPa以下とすることが好ましい。長手方向のヤング率が3.5GPaより小さい場合、テープドライブ内での長手方向への張力によって長手方向に伸び、この伸び変形により幅方向に収縮し、記録トラックずれという問題が発生しやすい。長手方向のヤング率の下限は、より好ましくは4GPaであり、さらに好ましくは4.5GPaである。一方、長手方向のヤング率が12GPaより大きい場合、幅方向のヤング率を好ましい範囲に制御することが難しくなり、幅方向のヤング率が不足し、エッジダメージの原因となる傾向がある。長手方向のヤング率の上限は、より好ましくは11GPa、さらに好ましくは10GPaである。より好ましい範囲は4GPa以上11GPa以下であり、さらに好ましい範囲は4.5GPa以上10GPa以下である。
【0078】
また、本発明の二軸配向フィルムは、長手方向のヤング率Emと幅方向のヤング率Etの比Em/Etが0.50以上0.95以下の範囲内であることが好ましく、0.60以上0.90以下の範囲内であることがより好ましく、0.60以上0.80以下の範囲内であることがさらに好ましい。特に、長手方向のヤング率より幅方向のヤング率が大きいほうが幅方向の温度膨張係数や湿度膨張係数を本発明の範囲に制御しやすい。
【0079】
また、幅方向のヤング率は6GPa以上12GPa以下の範囲とすることが好ましい。幅方向のヤング率が6GPaより小さい場合、エッジダメージの原因となったりすることがある。幅方向のヤング率の下限は、より好ましくは7GPaである。一方、幅方向のヤング率が12GPaより大きい場合、長手方向のヤング率を好ましい範囲に制御することが難しくなり長手方向の張力により変形しやすくなったり、スリット性が悪化したりすることがある。幅方向のヤング率の上限は、より好ましくは11GPa、さらに好ましくは10GPaである。より好ましい範囲は7GPa以上11GPa以下、さらに好ましい範囲は7GPa以上10GPa以下である。
【0080】
本発明において、二軸配向フィルムは2層以上の積層構成であることが好ましい。特に、本発明の二軸配向フィルムを、磁気記録媒体に用いる場合は、一方の表面には、優れた電磁変換特性を得るための平滑さが求められ、他方の表面には、製膜・加工工程での搬送性や、磁気テープの走行性や走行耐久性を付与するための粗さが求められる。そのため、二軸配向フィルムを2層以上の積層構成にすることが好ましい。2層以上の積層構成である場合は、そのうちの少なくとも1層は、ガラス転移温度が180℃未満のポリエステルと、ガラス転移温度が180℃以上300℃以下の樹脂の少なくとも2種類以上を含む層であることが好ましい。
【0081】
上記したような本発明の二軸配向フィルムは、たとえば次のように製造される。
【0082】
二軸配向フィルムを製造するには、たとえばポリエステルのペレットを、押出機を用いて溶融し、口金から吐出した後、冷却固化してシート状に成形する。ここで、口金から吐出した樹脂を、冷却ドラム上に密着させ冷却固化させた場合、冷却ドラムに接触していたしたシートの面をD面、その反対面で冷却ドラムに接触していなかった面をND面ということがある。また、このとき、繊維焼結ステンレス金属フィルターによりポリマーを濾過することが、ポリマー中の未溶融物を除去するために好ましい。また、ポリエステルフィルムの表面に易滑性や耐摩耗性、耐スクラッチ性などを付与するため、無機粒子、有機粒子、例えば、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カリオン、タルク、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイド状シリカ、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、ジルコニア等の無機粒子、アクリル酸類、スチレン系樹脂、熱硬化樹脂、シリコーン、イミド系化合物等を構成成分とする有機粒子、ポリエステル重合反応時に添加する触媒等によって析出する粒子(いわゆる内部粒子)などを添加する(発生させる)ことも好ましい。さらに、本発明を阻害しない範囲内であれば、各種添加剤、例えば、相溶化剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤、顔料、染料、などが添加されてもよい。
【0083】
続いて、上記シートを長手方向と幅方向の二軸に延伸して、熱処理する。延伸工程は、各方向において2段階以上に分けることが好ましい。すなわち再縦、再横延伸を行う方法が高密度記録の磁気テープとして最適な高強度のフィルムが得られ易いために好ましい。
【0084】
延伸形式としては、長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行うなどの逐次二軸延伸法や、同時二軸テンター等を用いて長手方向と幅方向を同時に延伸する同時二軸延伸法、さらに、逐次二軸延伸法と同時二軸延伸法を組み合わせた方法などが包含される。
【0085】
特に同時二軸延伸法を用いることが好ましい。逐次二軸延伸法に比べて同時二軸延伸法は、製膜工程で長手方向、幅方向に結晶が均一に成長するため、安定して高倍率に延伸しやすい。なお、ここでいう同時二軸延伸とは、長手方向と幅方向の延伸が同時に行われる工程を含む延伸方式である。必ずしも、すべての区間で長手方向と幅方向が同時に延伸されている必要はなく、長手方向の延伸が先にはじまり、その途中から幅方向にも延伸を行い(同時延伸)、長手方向の延伸が先に終了し、残りを幅方向のみ延伸するような方式でもよい。延伸装置としては、例えば同時二軸延伸テンターなどが好ましく例示され、中でもリニアモータ駆動式の同時二軸テンターが破れなくフィルムを延伸する方法として特に好ましい。
【0086】
延伸工程後の熱処理は、1段階で実施してもよいが、温度膨張係数や湿度膨張係数を本発明の範囲に制御するには、過度な熱処理による分子鎖配向の緩和を起こさず、効果的に熱処理を施すことが望ましいので、熱処理温度を制御して多段階で実施することが好ましい。多段階とは、熱処理温度を変更して2段階以上で実施することである。
【0087】
熱処理温度はガラス転移温度が180℃未満のポリエステルの融点を目安にして決定することができる。熱処理温度は、[フィルムを構成するガラス転移温度が180℃未満のポリエステルの融点(Tm)−100]〜(Tm−50)℃が好ましく、熱処理時間は0.5〜10秒の範囲で行うのが好ましい。特に、1段目の熱処理温度を好ましくは(Tm−75)〜(Tm−50)℃、さらに好ましくは(Tm−75)〜(Tm−60)℃に設定して、2段目の熱処理温度を1段目より低温に設定するとよい。2段目の熱処理温度は、好ましくは(Tm−100)〜(Tm−75)℃、さらに好ましくは(Tm−100)〜(Tm−85)℃に設定する。さらに、1段目または/および2段目の熱処理工程において幅方向に1〜5%の弛緩率で弛緩処理するとさらに好ましい。
【0088】
そして、このようにして製造されたフィルムはロールに巻き取られる。さらに、寸法安定性や保存安定性を高めるために、巻き取られたフィルムをロールごと一定の温度条件下で熱処理することも好ましい。一定の温度条件下とは、ある温度条件に設定された熱風オーブンやゾーンにフィルムをロールごと設置することである。フィルムをロールのまま熱処理することで、フィルムの内部構造のひずみが除去されやすく、クリープ特性等の寸法安定性を改良することができる。例えば、フィルムを巻き取って保存したり、磁気テープなどの磁気記録媒体用に使用された場合に、テープに巻き取った状態で保存したり、テープを走行させて使用したりするときには、フィルムの長手方向に張力が付加され、長手方向にクリープ変形などを起こすことがあるが、クリープ特性等の寸法安定性が改良されると、保存安定性が格段に向上する。
【0089】
なお、本発明においては、フィルムやそのフィルムロールに、必要に応じて、熱処理、マイクロ波加熱、成形、表面処理、ラミネート、コーティング、印刷、エンボス加工、エッチング、などの任意の加工を行ってもよい。
【0090】
以下、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法について、ガラス転移温度が180℃未満のポリエステルとしてPET(以下、樹脂Aということがある)を、Tgが180℃以上300℃以下の樹脂として、ガラス転移温度が215℃であるPEI(以下、樹脂Bということがある)およびガラス転移温度が225℃であるPEI(以下、樹脂Cということがある)を用いた例を代表例として説明する。もちろん、本願はPETを構成成分として用いた支持体に限定されるものではなく、他のポリマーを用いたものものでもよい。例えば、Tgや融点の高いPENなどを用いてフィルムを構成する場合は、以下に示す温度よりも高温で押出や延伸を行えばよい。
【0091】
まず、PETを準備する。PETは、次のいずれかのプロセスで製造される。すなわち、(1)テレフタル酸とエチレングリコールを原料とし、直接エステル化反応によって低分子量のポリエチレンテレフタレートまたはオリゴマーを得、さらにその後の三酸化アンチモンやチタン化合物を触媒に用いた重縮合反応によってポリマーを得るプロセス、(2)ジメチルテレフタレートとエチレングリコールを原料とし、エステル交換反応によって低分子量体を得、さらにその後の三酸化アンチモンやチタン化合物を触媒に用いた重縮合反応によってポリマーを得るプロセスである。ここで、エステル化は無触媒でも反応は進行するが、エステル交換反応においては、通常、マンガン、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、リチウム、チタン等の化合物を触媒に用いて進行させ、またエステル交換反応が実質的に完結した後に、該反応に用いた触媒を不活性化する目的で、リン化合物を添加する場合もある。
【0092】
本発明の二軸配向フィルムの構成成分となるポリエステル(樹脂A)に不活性粒子を含有させる場合には、エチレングリコールに不活性粒子を所定割合にてスラリーの形で分散させ、このエチレングリコールを重合時に添加する方法が好ましい。不活性粒子を添加する際には、例えば、不活性粒子の合成時に得られる水ゾルやアルコールゾル状態の粒子を一旦乾燥させることなく添加すると粒子の分散性がよい。また、不活性粒子の水スラリーを直接PETペレットと混合し、ベント式二軸混練押出機を用いて、PETに練り込む方法も有効である。不活性粒子の含有量を調節する方法としては、上記方法で高濃度の不活性粒子のブレンドポリマーを作っておき、それを製膜時に不活性粒子を実質的に含有しないPETで希釈して不活性粒子の含有量を調節する方法が有効である。
【0093】
また、表面粗大突起数H1およびH2を本発明の範囲内に制御しやすいという観点から、フィルムの原料として用いる各樹脂は各樹脂中の長径1μm以下の不純物量が0個/0.34mm以上100個/0.34mm以下であることが好ましい。不純物量が上記範囲内であることにより、本発明の二軸配向フィルムを磁気テープとした場合に、良好な電磁変換特性を得ることができる。
【0094】
さらに、製膜原料として用いるブレンドポリマーを作成する際には、各樹脂の熱劣化によるゲルの発生を抑制し、本発明の二軸配向フィルムを磁気テープとした際に良好な電磁変換特性および走行耐久性を付与するために、混練回数および樹脂の溶融滞留時間を制御することが好ましい。例えば、次の通りである。
【0095】
PET(樹脂A)とPEI(樹脂B)とPEI(樹脂C)を含むフィルムを作製する際には、あらかじめ、フィルム製膜の溶融押出前に、PET(樹脂A)とPEI(樹脂B)とPEI(樹脂C)のペレット混合物を予備溶融混練(以下、ペレタイズということがある)してブレンドポリマー化する。また、この際、各樹脂を180℃、3mmHg下にて3時間以上減圧乾燥させた後、PEI(樹脂C)の混合量はPEI(樹脂B)の混合量以下であることが好ましい。PET(樹脂A)に対してPEI(樹脂C)を良好に分散させ、本発明のフィルム表面性であるH1、H2を本願範囲内に制御しやすくするという観点から、PET(樹脂A)に近いTgを有するPEI(樹脂B)の含有比率がPEI(樹脂C)の含有比率よりも大きい方が好ましい。つまり、PEI(樹脂B)/PEI(樹脂C)の混合質量比率は好ましくは50wt%/50wt%〜90wt%/10wt%であり、特に好ましくは60wt%/40wt%〜80wt%/20wt%である。また、PETの混合比率は50wt%以上90wt%以下とするのが好ましく、ペレタイズにおけるせん断応力を高めて、PEI(樹脂B)およびPEI(樹脂C)をPET(樹脂A)へ良好に分散させる観点から、PETの混合比率は特に好ましくは50wt%以上70wt%以下である。
【0096】
混練する際には、二軸押出機などのせん断応力のかかる高せん断混合機を用いて予備混練してブレンドポリマー化する方法が好ましい。二軸押出機で混合する場合、分散不良物を低減させる観点から、3条二軸タイプまたは2条二軸タイプのスクリューを装備したものが好ましい。例えば、2条二軸タイプのスクリューで、スクリュー径44mm、スクリュー軸長さ/スクリュー軸径=52.5の押出機にて吐出60kg/時間でペレタイズした場合は滞留時間を30秒以上150秒以下とすることが樹脂の熱劣化を抑制する観点から、好ましい。滞留時間は、より好ましくは、50秒以上90秒以下である。
【0097】
PET(樹脂A)とPEI(樹脂B)とPEI(樹脂C)を混練する際には、PET中にPEIを良好に分散させる観点から、PET(樹脂A)、PEI(樹脂B)およびPEI(樹脂C)を同時に押出機に投入すること、かつその加工温度および溶融滞留時間が重要である。PETが熱分解したり、ゲル化物を発生したりしない温度でかつ、PEI(樹脂B)およびPEI(樹脂C)を加工するために十分な流動性を示す温度領域であることが重要である。具体的には、例えば加工温度は280℃〜320℃が好ましい。PETとPEI(樹脂B)およびPEI(樹脂C)からなるブレンドポリマーを用いて本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを作製した場合に、得られるフィルムに優れた機械物性および寸法安定性を付与するという観点から、PETとPEI(樹脂B)とPEI(樹脂C)の加工温度は、より好ましくは、290〜315℃である。
【0098】
この際、PETとPEI(樹脂B)とPEI(樹脂C)は全てをペレットの状態で配合ブレンドした後に、一度に押出機に投入して、上記の方法により溶融混練することが、PETへPEI(樹脂B)およびPEI(樹脂C)を良好に分散させる観点から、好ましい。
【0099】
また、二軸押出機でペレタイズする場合、スクリュー回転数を100〜500回転/分とすることが好ましく、さらに好ましくは200〜400回転/分の範囲である。スクリュー回転数を好ましい範囲に設定することでも、高いせん断応力が付加され易く、分散不良物を低減しやすくなる。また、二軸押出機の(スクリュー軸長さ/スクリュー軸径)の比率は20〜60の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは30〜55の範囲である。
【0100】
さらに、二軸スクリューにおいて、混練力を高めるためにニーディングパドルなどによる混練部を設けることが好ましく、その混練部を好ましくは2箇所以上、さらに好ましくは3箇所以上設けたスクリュー形状にするとよい。
【0101】
また、プラスチック成形加工学会誌「成形加工」第15巻第6号、382〜385頁(2003年)に記載された超臨界流体を利用する方法なども好ましく例示することができる。
【0102】
次に、得られた上記のペレットを、180℃、3mmHg下で、3時間以上減圧乾燥した後、固有粘度が低下しないように窒素気流下あるいは減圧下で、270〜320℃に加熱された押出機に供給し、スリット状のダイから押出し、キャスティングロール上で冷却して未延伸フィルムを得る。
【0103】
この際、ポリマー中の異物や変質ポリマー、未溶融物などを除去する方法としては、各種のフィルター、例えば、焼結金属、多孔性セラミック、サンド、金網などの素材からなるフィルターを用いることが好ましい。特に、1.2μmカット以下の繊維焼結ステンレス金属フィルターによりポリマーを濾過すること好ましく例示される。より好ましくは、0.8μmカット以下のフィルターである。また、必要に応じて、2つ以上のフィルター部分を通過させ、2段階以上で濾過するとより効果的に未溶融物を除去できるため好ましい。最も好ましくは、サンドフィルター、1.2μmカットの繊維焼結ステンレス金属フィルターおよび0.8μmカットの繊維焼結ステンレス金属フィルターを順に用いて、3段階に濾過する方法が挙げられる。なお、ここでいう1.2μmカットのフィルターとは、濾過精度1.2μmのことをいい、濾過精度とはJIS−B8356(2000)の方法によりフィルターメディアを透過した最大グラスビーズ粒径を意味する。
【0104】
また、必要に応じて、定量供給性を向上させるためにギアポンプを設けてもよい。フィルムを積層する場合には、2台以上の押出機およびマニホールドまたは合流ブロックを用いて、複数の異なるポリマーを溶融積層する。
【0105】
次に、たとえば同時二軸延伸テンターに導いて、長手および幅方向に同時に二軸延伸を行う。延伸速度は長手、幅方向ともに100〜20,000%/分の範囲で行うのが好ましい。より好ましくは、500〜10,000%/分、さらに好ましくは2,000〜7,000%/分である。延伸速度が100%/分よりも小さい場合には、フィルムが熱にさらされる時間が長くなるため、特にエッジ部分が結晶化して延伸破れの原因となり製膜性が低下したり、十分に分子配向が進まず製造したフィルムのヤング率などの機械的物性が低下したりすることがある。また、20,000%/分よりも大きい場合には、延伸時点で分子間の絡み合いが生成しやすくなり、延伸性が低下して、高倍率の延伸が困難となることがある。
【0106】
延伸温度は、用いるポリマーの種類によって適宜決定すればよいが、例えば未延伸フィルムのポリエステルのガラス転移温度Tgを目安として決めることができる。長手方向および幅方向それぞれの1段目の延伸工程における温度は、Tg〜Tg+30℃の範囲であることが好ましく、より好ましくはTg+5℃〜Tg+20℃である。上記範囲より延伸温度が低い場合には、フィルム破れが多発して生産性が低下したり、再延伸性が低下して高倍率に安定して延伸することが困難となったりすることがある。また、上記範囲よりも延伸温度が高い場合には、特にエッジ部分が結晶化して延伸破れの原因となり製膜性が低下したり、十分に分子配向が進まず製造したフィルムのヤング率が低下したりすることがある。
【0107】
そして、フィルムの製造工程が多段延伸、すなわち再延伸工程を含む場合、1段目の延伸温度は上述のとおりであるが、2段目の延伸温度はTg+40℃〜Tg+120℃が好ましく、さらに好ましくはTg+60℃〜Tg+100℃である。延伸温度が上記範囲を外れる場合には、熱量不足や結晶化の進みすぎによって、フィルム破れが多発して生産性が低下したり、十分に配向を高めることができず強度が低下したりする場合がある。
【0108】
また、延伸倍率は、用いるポリマーの種類や延伸温度、延伸方法(多段延伸など)によって適宜決定すればよいが、例えば総面積延伸倍率(総縦延伸倍率×総横延伸倍率)は、20〜40倍の範囲になるようにすることが好ましい。より好ましくは25〜35倍である。長手方向、幅方向の一方向の総延伸倍率としては、2.5〜8倍が好ましく、より好ましくは、3〜7倍である。延伸倍率が上記範囲より小さい場合には、延伸ムラなどが発生しフィルムの加工適性が低下することがある。また、延伸倍率が上記範囲より大きい場合には、延伸破れが多発して、生産性が低下する場合がある。
【0109】
各方向に関して延伸を多段で行う場合、1段目の長手、幅方向それぞれにおける延伸倍率は、2〜4倍が好ましく、より好ましくは3〜3.8倍である。また、1段目における好ましい面積延伸倍率は4〜18倍であり、より好ましくは、7〜15倍である。これらの延伸倍率の値は、特に同時二軸延伸法を採用する場合に好適な値であるが、逐次二軸延伸法でも適用できる。本発明の二軸配向フィルムでは、PEI(樹脂B)またはPEI(樹脂C)が結節点として存在するため、応力ひずみ曲線において低倍率で応力が立ち上がりやすい。したがって、1段目の延伸倍率を高くしすぎると、分子鎖の緊張や結晶化が過度に進行して、2段目の延伸を施せないことがあるので、1段目の延伸倍率を上記範囲に設定することが好ましい。
【0110】
また、再延伸を行う場合の一方向における延伸倍率は、1.05〜2.5倍が好ましく、より好ましくは1.2〜1.8倍である。再延伸の面積延伸倍率としては、1.4〜4倍が好ましく、より好ましくは1.9〜3倍である。
【0111】
続いて、この延伸フィルムを緊張下または幅方向に弛緩しながら熱処理する。熱処理条件のうち、熱処理温度は、155℃〜205℃が好ましく、熱処理時間は0.5〜10秒の範囲で行うのが好ましい。熱処理工程を2段階以上の多段階で行うことが好ましく、特に、1段目の熱処理温度を好ましくは180〜205℃、さらに好ましくは180〜195℃に設定して、2段目の熱処理温度を1段目より低温にして、好ましくは155〜180℃、さらに好ましくは155〜170℃に設定するとよい。さらに、2段目の熱処理工程のみを幅方向に1〜5%の弛緩率で弛緩処理するとさらに好ましい。上述の多段階の熱処理工程によると、ヤング率などの機械物性や温度・湿度変化に対する寸法安定性を高めつつ、分子鎖緩和が効果的に進行するので、荷重が負荷された状態で保存したときの寸法変化を表す保存安定性を高めやすくなる。
【0112】
その後、フィルムエッジを除去し、コア上に巻き取る。そして、寸法安定性や保存安定性の効果をさらに高めるために、フィルムをコアに巻いた状態(ロール状フィルム)で、熱風オーブンなどで加熱処理することも好ましい。加熱処理の雰囲気温度は、フィルムのガラス転移温度(Tg)を目安にして決定することができ、(Tg−80)〜(Tg−30)℃の範囲、より好ましくは(Tg−75)〜(Tg−35)℃の範囲、さらに好ましくは(Tg−70)〜(Tg−40)℃の範囲である。好ましい処理時間は、10〜360時間の範囲、より好ましくは24〜240時間の範囲、さらに好ましくは72〜168時間の範囲である。多段階で行うロール状フィルムの加熱処理の合計時間が上記範囲内となるようにすることが好ましい。
【0113】
Tgが複数検出される場合は、そのうちの最も低いTgをフィルムのTgとする。
【0114】
次に、磁気記録媒体を製造する方法を説明する。
【0115】
上記のようにして得られた磁気記録媒体用支持体(二軸配向フィルム)を、たとえば0.1〜3m幅にスリットし、速度20〜300m/min、張力50〜300N/mで搬送しながら、一方の面(以下、A面ということがある)に磁性塗料および非磁性塗料をエクストルージョンコーターにより重層塗布する。この場合、フィルム表面粗さRaが0.5nm以上10nm以下である面をA面とすることが好ましい。両面ともにフィルム表面粗さRaが0.5nm以上10nm以下である場合はその内のRa値が小さい面をA面とする。なお、上層に磁性塗料を厚み0.1〜0.3μmで塗布し、下層に非磁性塗料を厚み0.5μm以上1.5μm以下で塗布する。その後、磁性塗料および非磁性塗料が塗布された支持体を磁気配向させ、温度80〜130℃で乾燥させる。
【0116】
次いで、反対側の面(以下、B面ということがある)にバックコートを厚み0.3μm以上0.8μm以下で塗布し、カレンダー処理した後、巻き取る。なお、カレンダー処理は、小型テストカレンダー装置(スチール/ナイロンロール、5段)を用い、温度70〜120℃、線圧0.5〜5kN/cmで行う。その後、60〜80℃にて24〜72時間エージング処理し、1/2インチ(1.27cm)幅にスリットし、パンケーキを作製する。次いで、このパンケーキから特定の長さ分をカセットに組み込んで、カセットテープ型磁気記録媒体とする。
【0117】
ここで、磁性塗料などの組成は例えば以下のような組成が挙げられる。
【0118】
(磁性塗料の組成)
・強磁性金属粉末 : 100質量部
・変成塩化ビニル共重合体 : 10質量部
・変成ポリウレタン : 10質量部
・ポリイソシアネート : 5質量部
・2−エチルヘキシルオレート : 1.5質量部
・パルミチン酸 : 1質量部
・カーボンブラック : 1質量部
・アルミナ : 10質量部
・メチルエチルケトン : 75質量部
・シクロヘキサノン : 75質量部
・トルエン : 75質量部
(バックコートの組成)
・カーボンブラック(平均粒径20nm) : 95質量部
・カーボンブラック(平均粒径280nm): 10質量部
・アルミナ : 0.1質量部
・変成ポリウレタン : 20質量部
・変成塩化ビニル共重合体 : 30質量部
・シクロヘキサノン : 200質量部
・メチルエチルケトン : 300質量部
・トルエン : 100質量部
磁気記録媒体は、例えば、データ記録用途、具体的にはコンピュータデータのバックアップ用途(例えばリニアテープ式の記録媒体(LTO4やLTO5など))や映像などのデジタル画像の記録用途などに好適に用いることができる。
【0119】
(物性の測定方法ならびに効果の評価方法)
本発明における特性値の測定方法並びに効果の評価方法は次の通りである。
【0120】
(1)フィルム断面構造
フィルムを(ア)長手方向に平行かつフィルム面に垂直な方向(MD−ZD断面)、(イ)幅方向に平行かつフィルム面に垂直な方向(TD−ZD断面)、(ウ)フィルム面に対して平行な方向(MD−TD断面)に切断し、サンプルを超薄切片法で作製した。分散相のコントラストを明確にするために、オスミウム酸やルテニウム酸、リンタングステン酸などで染色してもよい。切断面を透過型電子顕微鏡(日立製H−7100FA型)を用いて、加速電圧100kVの条件下で観察し、2万倍で写真を撮影した。(ア)〜(ウ)のそれぞれについて、100個の写真を撮影した。得られた写真全てをイメージアナライザーに画像として取り込み、任意の100個の画像の内、50個以上の画像について、分散相(島部分または島湖部分)が観察された場合、そのフィルムについて海島構造または海島湖構造を有する(観察される)ものとした。
【0121】
なお、上記の方法ではコントラストが付きにくい場合、次に示す画像解析を行う。
【0122】
各試料の透過型電子顕微鏡写真をスキャナーにてコンピューターに取り込む。その後、専用ソフト(プラネトロン社製 Image Pro Plus Ver. 4.0)にて画像解析を行う。トーンカーブを操作することにより、明るさとコントラストを調整し、その後ガウスフィルターを用いて画像を得る。ここで、透過型電子顕微鏡写真のネガ写真を使用する場合には、上記スキャナーとして日本サイテックス社製 Leafscan 45 Plug-Inを用い、透過型電子顕微鏡のポジを使用する場合には、上記スキャナーとしてセイコーエプソン製GT−7600Sを用いるが、そのいずれでも同等の値が得られる。
【0123】
画像処理の手順及びパラメータ:
平坦化1回
コントラスト+30
ガウス1回
コントラスト+30、輝度−10
ガウス1回
平面化フィルター:背景(黒)、オブジェクト幅(20pix)
ガウスフィルター:サイズ(7)、強さ(10)
(2)温度膨張係数
フィルムの幅方向(TD方向)に対して、下記条件にて測定を行い、3回の測定結果の平均値を本発明の二軸配向フィルムの幅方向の温度膨張係数とした。
【0124】
・測定装置:島津製作所製熱機械分析装置TMA−50
・試料サイズ:フィルム長手方向10mm×フィルム幅方向12.6mm
・荷重:0.5g
・測定回数:3回
・測定温度:窒素をフローした状態で温度25℃から昇温速度2℃/分で温度50℃まで昇温して、5分間保持した後、温度25℃まで降温速度2℃/分で降温し、温度40〜30℃のフィルム幅方向の寸法変化量ΔL(mm)を測定した。次式から温度膨張係数(ppm/℃)を算出した。
【0125】
・温度膨張係数(ppm/℃)=10×{(ΔL/12.6)/(40−30)}
長手方向(MD方向)の温度膨張係数についても、試料の方向を入れ替えて、上記と同様に測定する。
【0126】
(3)湿度膨張係数
フィルムの幅方向に対して、下記条件にて測定を行い、3回の測定結果の平均値を本発明の二軸配向フィルムの幅方向の湿度膨張係数とした。
【0127】
・測定装置:島津製作所製熱機械分析装置TMA−50(湿度発生器:アルバック理工製湿度雰囲気調節装置HC−1)
・試料サイズ:フィルム長手方向10mm×フィルム幅方向12.6mm
・荷重:0.5g
・測定回数:3回
・測定温度:30℃
・測定湿度:40%RHで6時間保持し寸法を測定し時間40分で80%RHまで昇湿し、80%RHで6時間保持したあとフィルム幅方向の寸法変化量ΔL(mm)を測定した。次式から湿度膨張係数(ppm/%RH)を算出した。
【0128】
・湿度膨張係数(ppm/%RH)=10×{(ΔL/12.6)/(80−40)}
長手方向の湿度膨張係数についても、試料の方向を入れ替えて、上記と同様に測定する。
【0129】
(4)フィルム表面粗さRaおよび10点平均粗さRz
小坂研究所の三次元微細形状測定器(型式ET−350K)および三次元表面粗さ解析システム(型式TDA−22)を用いてフィルム表面粗さRa(中心面平均粗さ)および表面粗さRz(10点平均粗さ)を測定した。条件は下記の通りであり、20回の測定の平均値をもって値とした。
【0130】
・触針径 :2μm
・触針の荷重 :0.04mN
・縦倍率 :5万倍
・カットオフ :0.25mm
・送りピッチ :5μm
・測定長 :0.5mm
・測定面積 :0.2mm
・測定速度 :0.1mm/秒
(5)ガラス転移温度(Tg)
下記装置および条件で比熱測定を行い、JIS K7121(1987年)に従って決定した。
【0131】
・装置 :TA Instrument社製温度変調DSC
・測定条件:
・加熱温度 :270〜570K(RCS冷却法)
・温度校正 :高純度インジウムおよびスズの融点
・温度変調振幅:±1K
・温度変調周期:60秒
・昇温ステップ:5K
・試料重量 :5mg
・試料容器 :アルミニウム製開放型容器(22mg)
・参照容器 :アルミニウム製開放型容器(18mg)
なお、ガラス転移温度は下記式により算出する。
【0132】
ガラス転移温度=(補外ガラス転移開始温度+補外ガラス転移終了温度)/2
(6)幅寸法測定
1m幅にスリットしたフィルムを、張力200Nで搬送させ、支持体の一方の表面(A面)(フィルム表面粗さRaが0.5〜10nmの範囲にある面)に下記組成の磁性塗料および非磁性塗料をエクストルージョンコーターにより重層塗布し(上層が磁性塗料で、塗布厚0.2μm、下層が非磁性塗料で塗布厚0.9μm)、磁気配向させ、乾燥温度100℃で乾燥させた。次いで反対側の表面(B面)に下記組成のバックコートを塗布した後、小型テストカレンダー装置(スチール/ナイロンロール、5段)で、温度85℃、線圧2.0×10N/mでカレンダー処理した後、巻き取る。上記テープ原反を1/2インチ(12.65mm)幅にスリットし、パンケーキを作成した。次いで、このパンケーキから長さ200m分をカセットに組み込んで、カセットテープとした。
【0133】
(磁性塗料の組成)
・強磁性金属粉末 : 100質量部
〔Fe:Co:Ni:Al:Y:Ca=70:24:1:2:2:1(質量比)〕
〔長軸長:0.09μm、軸比:6、保磁力:153kA/m(1,922Oe)、飽和磁化:146Am/kg(146emu/g)、BET比表面積:53m/g、X線粒径:15nm〕
・変成塩化ビニル共重合体(結合剤) : 10質量部
(平均重合度:280、エポキシ基含有量:3.1質量%、スルホン酸基含有量:8×10−5当量/g)
・変成ポリウレタン(結合剤) : 10質量部
(数平均分子量:25,000,スルホン酸基含有量:1.2×10−4当量/g、ガラス転移点:45℃)
・ポリイソシアネート(硬化剤) : 5質量部
(日本ポリウレタン工業(株)製コロネートL(商品名))
・2−エチルヘキシルオレート(潤滑剤) : 1.5質量部
・パルミチン酸(潤滑剤) : 1質量部
・カーボンブラック(帯電防止剤) : 1質量部
(平均一次粒子径:0.018μm)
・アルミナ(研磨剤) : 10質量部
(αアルミナ、平均粒子径:0.18μm)
・メチルエチルケトン : 75質量部
・シクロヘキサノン : 75質量部
・トルエン : 75質量部
(非磁性塗料の組成)
・変成ポリウレタン : 10質量部
(数平均分子量:25,000、スルホン酸基含有量:1.2×10−4当量/g、ガラス転移点:45℃)
・変成塩化ビニル共重合体 : 10質量部
(平均重合度:280、エポキシ基含有量:3.1質量%、スルホン酸基含有量:8×10−5当量/g)
・メチルエチルケトン : 75質量部
・シクロヘキサノン : 75質量部
・トルエン : 75質量部
・ポリイソシアネート : 5質量部
(日本ポリウレタン工業(株)製コロネートL(商品名))
・2−エチルヘキシルオレート(潤滑剤) : 1.5質量部
・パルミチン酸(潤滑剤) : 1質量部
(バックコートの組成)
・カーボンブラック : 95質量部
(帯電防止剤、平均一次粒子径0.018μm)
・カーボンブラック : 10質量部
(帯電防止剤、平均一次粒子径0.3μm)
・アルミナ : 0.1質量部
(αアルミナ、平均粒子径:0.18μm)
・変成ポリウレタン : 20質量部
(数平均分子量:25,000、スルホン酸基含有量:1.2×10−4当量/g、ガラス転移点:45℃)
・変成塩化ビニル共重合体 : 30質量部
(平均重合度:280、エポキシ基含有量:3.1質量%、スルホン酸基含有量:8×10−5当量/g)
・シクロヘキサノン : 200質量部
・メチルエチルケトン : 300質量部
・トルエン : 100質量部
カセットテープのカートリッジからテープを取り出し、下記恒温恒湿槽内へ図1のように作製したシート幅測定装置を入れ、幅寸法測定を行う。なお、図1に示すシート幅測定装置は、レーザーを使って幅方向の寸法を測定する装置で、磁気テープ9をフリーロール5〜8上にセットしつつ荷重検出器3に固定し、端部に荷重となる分銅4を吊す。この磁気テープ9にレーザー光10を照射すると、レーザー発振器1から幅方向に線状に発振されたレーザー光10が磁気テープ9の部分だけ遮られ、受光部2に入り、その遮られたレーザーの幅が磁気テープの幅として測定される。3回の測定結果の平均値を本発明における幅とする。
【0134】
・測定装置:(株)アヤハエンジニアリング社製シート幅測定装置
・レーザー発振器1、受光部2:レーザー寸法測定機 キーエンス社製LS−5040
・荷重検出器3:ロードセル NMB社製CBE1−10K
・恒温恒湿槽:(株)カトー社製SE−25VL−A
・荷重4:分銅(長手方向)
・試料サイズ:幅1/2inch×長さ250mm
・保持時間:5時間
・測定回数:3回測定する。
【0135】
(幅寸法変化率:寸法安定性)
2つの条件でそれぞれ幅寸法(lA、lB)を測定し、次式にて寸法変化率を算出する。
【0136】
具体的には、次の基準で寸法安定性を評価する。
【0137】
A条件で24時間経過後lAを測定して、その後B条件で24時間経過後にlBを測定する。テープカートリッジのはじめから30m地点から切り出したサンプル、100m地点から切り出したサンプル、170m地点から切り出したサンプルの3点を測定した。×を不合格とする。
【0138】
A条件:10℃10%RH 張力0.85N
B条件:29℃80%RH 張力0.55N
幅寸法変化率(ppm)=10×((lB−lA)/lA)
◎:幅寸法変化率の最大値が500(ppm)未満
○:幅寸法変化率の最大値が500(ppm)以上600(ppm)未満
△:幅寸法変化率の最大値が600(ppm)以上700(ppm)未満
×:幅寸法変化率の最大値が700(ppm)以上
(7)保存安定性
上記(6)と同様に、作製したカセットテープのカートリッジからテープを取り出し、次の2つの状態でそれぞれ幅寸法(lC、lD)を測定し、次式にて幅寸法変化率を算出する。
【0139】
具体的には、次の基準で寸法安定性を評価する。
【0140】
23℃65%RHで24時間経過後lCを測定して、40℃20%RHの環境下で10日間カートリッジを保管後、23℃65%RHで24時間経過後にlDを測定する。テープカートリッジのはじめから30m地点から切り出したサンプル、100m地点から切り出したサンプル、170m地点から切り出したサンプルの3点を測定する。×を不合格とする。
【0141】
幅寸法変化率(ppm)=10×(|lC−lD|/lC)
◎:幅寸法変化率の最大値が80(ppm)未満
○:幅寸法変化率の最大値が80(ppm)以上100(ppm)未満
△:幅寸法変化率の最大値が100(ppm)以上150(ppm)未満
×:幅寸法変化率の最大値が150(ppm)以上
(8)走行耐久性
上記(6)と同様にカセットテープを作製し、市販のIBM社製LTOドライブ3580−L11を用いて23℃65%RHの環境で300回走行することで評価する。エラーレートはドライブから出力されるエラー情報(エラービット数)から次式にて算出する。×を不合格とする。
【0142】
エラーレート=(エラービット数)/(書き込みトライビット数)
◎:エラーレートが1.0×10−6未満
○:エラーレートが1.0×10−6以上、1.0×10−5未満
△:エラーレートが1.0×10−5以上、1.0×10−4未満
×:エラーレートが1.0×10−4以上
(9)電磁変換特性
上記(6)と同様にカセットテープを作製し、C/Nの測定にはリールtoリールテスタを用い、市販のMRヘッドを搭載して下記の条件で実施した。
【0143】
相対速度:2m/sec
記録トラック幅:18μm
再生トラック幅:10μm
シールド間距離:0.27μm
記録用信号発生器:HP社製 8118A
再生信号処理:スペクトラムアナライザ
このC/Nを市販のLTO4テープ(富士フィルム社製)と比較して、−1dB以上は○、−2dB以上−1dB未満は△、−2dB未満は×と判定した。○が望ましいが、△でも実用的には使用可能である。
【0144】
(10)長時間保存後の走行耐久性(長期耐久性)
40℃20%RHの環境下でのカートリッジ保管期間を100日間とする以外は上記(7)と同様にカセットテープを作製し、市販のIBM社製LTOドライブ3580−L11を用いて23℃65%RHの環境で300回走行することで評価する。エラーレートはドライブから出力されるエラー情報(エラービット数)から次式にて算出する。×を不合格とする。
【0145】
エラーレート=(エラービット数)/(書き込みトライビット数)
◎:エラーレートが1.0×10−6未満
○:エラーレートが1.0×10−6以上、1.0×10−5未満
△:エラーレートが1.0×10−5以上、1.0×10−4未満
×:エラーレートが1.0×10−4以上
(11)屈折率
JIS−K7105(1981)に規定された方法に従って、ナトリウムD線を光源としてアッベ屈折計を用いて測定した。なお、マウント液は、ポリエステルがPETの場合はヨウ化メチレン[nD=1.74;D線における20℃のヨウ化メチレンの屈折率は1.74]、ポリエステルがPENの場合はイオウヨウ化メチレン溶液[nD=1.74〜1.78;D線における20℃のイオウヨウ化メチレン溶液の屈折率は1.74〜1.78]を用い、25℃、65%RHにて測定した。なお、サンプルの長手方向はフィルムの製膜方向であり、磁気テープなどの場合には、テープの長手方向と一致する。幅方向とは、長手方向に直角な方向である。長手方向および幅方向の屈折率の平均値を次の通りとした。
【0146】
長手方向および幅方向の平均屈折率=(長手方向の屈折率+幅方向の屈折率)/2
これを無作為に10点くり返し測定し、その平均値を該フィルムの平均屈折率とした。
【0147】
(12)フィルム内部のヘイズ値
JIS K 7105(1985年)に基づいて、ヘイズメーター(スガ試験器社製HZ−2)を用いて測定した。また、液体測定用石英セルにフィルムを入れ、流動パラフィンを充填し測定を行うことで、フィルム表面ヘイズを除いた内部ヘイズを測定した。これを無作為に10点くり返し測定し、その平均値を該フィルムのヘイズ値とした。
【0148】
(13)表面粗大突起数H1、H2の測定
測定面(100cm)同士を2枚重ね合わせて静電気力(印加電圧5.4kv)で密着させた後、2枚のフィルム間で粗大突起の光の干渉によって生じるニュートン環から粗大突起の高さを判定し、1重環以上の粗大突起数をH1、2重環以上の粗大突起数をH2とした。なお、光源はハロゲンランプに564nmのバンドパスフィルタをかけて用いた。
【0149】
(14)樹脂中の不純物量
樹脂のペレットをサンプルとする。本測定に用いる全てのホットプレート、ピンセットは無塵ふきんでよく拭き、錆、汚れをよく落とし、使用するビーカーおよびカバーガラスは純水で洗い、乾燥させておく。サンプルの表面をイオン交換水で洗浄し、300〜380℃に設定された溶融圧着装置上で、スライドガラス上にカバーガラスを置き、その中央にサンプルをのせる。ここで、溶融圧着装置の温度は、サンプルがガラス転移温度が180℃未満のポリエステルを含有する場合は320℃、ガラス転移温度が180℃未満のポリエステルを含まない場合は350℃とする。暫くそのまま放置しペレットが溶融し始めたところで、カバーガラスで挟み円形状に圧着する。サンプル作製は10kgの荷重をかけて150秒間圧着を行い、溶融させたペレットを直径15mmの円形にする。試料厚みは50μmとする。カバーガラスを直ちに金属製のトレイの上に載せ冷却する。サンプルが白化しなように十分に急冷する。観察には下に示す顕微鏡を使用する。顕微鏡を観察倍率450倍に設定し、光源は反射側に接続し、リング照明を取り付ける。カバーガラスに挟んだサンプルを下地を黒にしてリング照明(強度6.5)のみで、暗視野法で観察する。ピントを任意の場所に合わせ、モニター1画面(1画面当たりの面積は0.34mm)中に目視確認できる長径1μm以下の不純物を全個数数える。これを任意の5視野について行い、それらの平均値を該サンプルの平均不純物量とする。ある一つの樹脂について、10サンプル(ペレット10個)の平均不純物量を求め、それら10サンプルの平均値を該樹脂の不純物量とする。
【0150】
<使用する顕微鏡>
ライカ検査・研究顕微鏡DMLB HC
接眼レンズ:L 40×/0.55 CORR
対物レンズ:S 10×/22
【実施例】
【0151】
本発明の実施形態を次の実施例に基づいて説明する。
【0152】
(参考例1)
テレフタル酸ジメチル194質量部とエチレングリコール124質量部とをエステル交換反応装置に仕込み、内容物を140℃に加熱して溶解した。その後、内容物を撹拌しながら酢酸マグネシウム四水和物0.3質量部および三酸化アンチモン0.05質量部を加え、140〜230℃でメタノールを留出しつつエステル交換反応を行った。次いで、リン酸トリメチルの5質量%エチレングリコール溶液を1質量部(リン酸トリメチルとして0.05質量部)添加した。リン酸トリメチルのエチレングリコール溶液を添加すると反応内容物の温度が低下する。そこで余剰のエチレングリコールを留出させながら反応内容物の温度が230℃に復帰するまで撹拌を継続した。このようにしてエステル交換反応装置内の反応内容物の温度が230℃に達した後、反応内容物を重合装置へ移行した。移行後、反応系を230℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を0.1kPaまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。最終温度、最終圧力に到達した後、2時間(重合を始めて3時間)反応させたところ、重合装置の撹拌トルクが所定の値(重合装置の仕様によって具体的な値は異なるが、本重合装置にて固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレートが示す値を所定の値とした)を示した。そこで反応系を窒素パージし常圧に戻して重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングして固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレートのPETペレット(X)を得た。得られたPETペレット(X)のTgは80℃、またペレットに含まれる不純物量は20個/0.34mmであった。
【0153】
(参考例2)
参考例1で得たPETペレット(X)を160℃、4時間、3mmHgの減圧下で乾燥した後、220℃、8時間、133Pa以下の減圧度で固相重合反応を行い、固有粘度1.2のPETペレット(Y)を得た。得られたPETペレット(Y)のTgは80℃、またペレットに含まれる不純物量は20個/0.34mmであった。
【0154】
(参考例3)
SABICイノベーティブプラスチック社製のPEI“Ultem1010−1000”のペレット50質量部とPETペレット(X)50質量部を別々に180℃、3mmHgの減圧下にて6時間乾燥した。
【0155】
日本製鋼所製のスクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5であるニーディングパドル混練部を3箇所設けた同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機をスクリューゾーンから押出ヘッド部にかけて270℃〜320℃に温度勾配を設定した。この押出機に減圧乾燥したペレットを供給し、スクリュー回転数300回転/分、滞留時間3分にて溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてPET−PEI(Ul1010)ブレンドペレット(Z)を作製した。得られたブレンドペレット(Z)の不純物量は30個/0.34mmであった。
【0156】
(参考例4)
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル100質量部とエチレングリコール60質量部の混合物に、酢酸マンガン・4水和物塩0.03質量部を添加し、150℃の温度から240℃の温度に徐々に昇温しながらエステル交換反応を行った。途中、反応温度が170℃に達した時点で三酸化アンチモン0.024質量部を添加した。また、反応温度が220℃に達した時点で3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩0.042質量部(2mmol%に相当)を添加した。その後、引き続いてエステル交換反応を行い、トリメチルリン酸0.023質量部を添加した。次いで、反応生成物を重合装置に移し、290℃の温度まで昇温し、30Paの高減圧下にて重縮合反応を行い、重合装置の撹拌トルクが所定の値(重合装置の仕様によって具体的な値は異なるが、本重合装置にて固有粘度0.65のポリエチレン−2,6−ナフタレートが示す値を所定の値とした)を示した。そこで反応系を窒素パージし常圧に戻して重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングして固有粘度0.65のPEN(ポリエチレン−2,6−ナフタレート)ペレット(V)を得た。得られたPENペレット(V)のTgは120℃、またペレットに含まれる不純物量は20個/0.34mmであった。
【0157】
また、得られたPENペレット(V)を160℃、4時間減圧乾燥した後、220℃、8時間、133Pa以下の減圧度で固相重合反応を行い、固有粘度0.85のPENペレット(W)を得た。得られたPENペレット(W)のTgは120℃、またペレットに含まれる不純物量は20個/0.34mmであった。
【0158】
(参考例5)
280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、参考例1にて作製したPETペレット(X)を99質量部と平均径0.06μmのコロイダルシリカ粒子の10質量部水スラリーを10質量部(コロイダルシリカ粒子として1質量部)供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、平均径0.06μmのコロイダルシリカ粒子を1質量%含有する固有粘度0.62のPETペレットU0.06を得た。得られたPETペレットU0.06のTgは80℃であった。
【0159】
(参考例6)
300℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、参考例4にて作製したPENペレット(V)を99質量部と平均径0.06μmのコロイダルシリカ粒子の10質量部水スラリーを10質量部(コロイダルシリカ粒子として1質量部)供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、平均径0.06μmのコロイダルシリカ粒子を1質量%含有する固有粘度0.65のPENペレットT0.06を得た。得られたPENペレットT0.06のTgは120℃であった。
【0160】
(参考例7)
280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、参考例1にて作製したPETペレット(X)を98質量部と平均径0.3μmの架橋ポリスチレン粒子の10質量部水スラリーを20質量部(架橋ポリスチレン粒子として2質量部)供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、平均径0.3μmの架橋ポリスチレン粒子を2質量部含有する固有粘度0.62のPETペレットS0.3を得た。得られたPETペレットS0.3のTgは80℃であった。
【0161】
(参考例8)
280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、参考例1にて作製したPETペレット(X)を99質量部と平均径0.8μmの架橋ポリスチレン粒子の10質量部水スラリーを10質量部(架橋ポリスチレン粒子として1質量部)供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、平均径0.8μmの架橋ポリスチレン粒子を1質量部含有する固有粘度0.62のPETペレットS0.8を得た。得られたPETペレットS0.8のTgは80℃であった。
【0162】
(参考例9)
300℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、参考例4にて作製したPENペレット(V)を98質量部と平均径0.3μmの架橋ポリスチレン粒子の10質量部水スラリーを20質量部(架橋ポリスチレン粒子として2質量部)供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、平均径0.3μmの架橋ポリスチレン粒子を2質量部含有する固有粘度0.65のPENペレットR0.3を得た。得られたPENペレットR0.3のTgは120℃であった。
【0163】
(参考例10)
300℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、参考例4にて作製したPENペレット(V)を99質量部と平均径0.8μmの架橋ポリスチレン粒子の10質量部水スラリーを10質量部(架橋ポリスチレン粒子として1質量部)供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、平均径0.8μmの架橋ポリスチレン粒子を1質量部含有する固有粘度0.65のPENペレットR0.8を得た。得られたPENペレットR0.8のTgは120℃であった。
【0164】
(実施例1)
PETペレット(X)50質量部と、SABICイノベーティブプラスチック社製のPEI“Ultem1010−1000”(Tg=215℃)のペレット35質量部とSABICイノベーティブプラスチック社製のPEI“UltemCRS5011−1000”(Tg=225℃)のペレット15質量部を別々に180℃、3mmHgの減圧下にて3時間乾燥した。
【0165】
日本製鋼所製のスクリュー直径44mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=52.5であるニーディングパドル混練部を3箇所設けた同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機をスクリューゾーンから押出ヘッド部にかけて315℃〜280℃に温度勾配を設定した。この押出機に減圧乾燥したあらかじめペレットの状態でブレンドしておいた上記3種類のペレットを供給し、スクリュー回転数300回転/分、滞留時間60秒にて溶融押出してストランド状に吐出し、温度60℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてPET−PEI(Ul1010)−PEI(CRS5011)(混合質量比率50/35/15)ブレンドペレット(D)を作製した。得られたブレンドペレット(D)の不純物量は50個/0.34mmであった。
【0166】
次いで、PETペレット(X)70質量部、ブレンドペレット(D)10質量部およびPETペレットU0.0620質量部を混合し、180℃で3時間、3mmHgの減圧下で乾燥した後、押出機に投入し、300℃にて溶融押出し、サンドフィルター、濾過精度1.2μmの繊維焼結ステンレス金属フィルターおよび濾過精度0.8μmの繊維焼結ステンレス金属フィルターを順に用いて、3段階にフィルターを通過させた後、Tダイからシート状に吐出し、該シートを表面温度25℃の冷却ドラム上に静電印加法により密着固化させ冷却し、未延伸フィルムを得た。
【0167】
この未延伸フィルムの両端部をクリップで把持して、リニアモーター方式の同時二軸延伸テンターに導き製膜した。フィルム温度を95℃に加熱し、面積延伸倍率12.25倍(縦倍率:3.5倍、横倍率:3.5倍)で同時二軸延伸した。続いて、フィルム温度を160℃にして、面積延伸倍率2.16倍(縦倍率:1.2倍、横倍率:1.8倍)で再延伸し、熱固定温度210℃で2秒間熱固定処理後、熱固定温度で長手方向と幅方向に2%の弛緩熱処理Iを行い、その後150℃と100℃の2段階で合わせて長手方向に4%、幅方向に2%の弛緩熱処理IIを行い、厚さ5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。この二軸配向ポリエステルフィルムの組成・特性等は、表に示したとおりであり、磁気記録媒体用のベースフィルムとして優れた特性を有していた。
【0168】
(実施例2)
押出機E、F2台を用い、300℃に加熱された押出機Eには、PETペレット(X)70質量部、ブレンドペレット(D)10質量部およびPETペレットU0.0620質量部を混合し、180℃で3時間、3mmHgの減圧下で乾燥した後、押出機に投入し、同じく300℃に加熱された押出機Fには、PETペレット(X)76質量部、ブレンドペレット(D)10質量部、PETペレットS0.3を13質量部およびPETペレットS0.8を1質量部を混合し、180℃で3時間、3mmHgの減圧下で乾燥した後、押出機に投入した。
【0169】
300℃にて溶融押出し、サンドフィルター、濾過精度1.2μmの繊維焼結ステンレス金属フィルターおよび濾過精度0.8μmの繊維焼結ステンレス金属フィルターを順に用いて、3段階にフィルターを通過させた後、2層積層するべくTダイ中で合流させ(積層比E(A面側)/F(B面側)=7/1)、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製した。
【0170】
この未延伸フィルムの両端部をクリップで把持して、リニアモーター方式の同時二軸延伸テンターに導き製膜した。フィルム温度を95℃に加熱し、面積延伸倍率12.25倍(縦倍率:3.5倍、横倍率:3.5倍)で同時二軸延伸した。続いて、フィルム温度を160℃にして、面積延伸倍率2.16倍(縦倍率:1.2倍、横倍率:1.8倍)で再延伸し、熱固定温度210℃で2秒間熱固定処理後、熱固定温度で長手方向と幅方向に2%の弛緩熱処理Iを行い、その後150℃と100℃の2段階で合わせて長手方向に4%、幅方向に2%の弛緩熱処理IIを行い、厚さ5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。この二軸配向ポリエステルフィルムの組成・特性等は、表に示したとおりであり、磁気記録媒体用のベースフィルムとして優れた特性を有していた。
【0171】
(実施例3)
PETペレット(X)50質量部と、SABICイノベーティブプラスチック社製のPEI“Ultem1010−1000”(Tg=215℃)のペレット35質量部とSABICイノベーティブプラスチック社製のPEI“UltemCRS5011−1000”(Tg=225℃)のペレット15質量部を別々に180℃、3mmHgの減圧下にて3時間乾燥した。
【0172】
日本製鋼所製のスクリュー直径44mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=52.5であるニーディングパドル混練部を3箇所設けた同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機をスクリューゾーンから押出ヘッド部にかけて320℃〜280℃に温度勾配を設定した。この押出機に減圧乾燥したあらかじめペレットの状態でブレンドしておいた上記3種類のペレットを供給し、スクリュー回転数200回転/分、滞留時間3分にて溶融押出してストランド状に吐出し、温度60℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてPET−PEI(Ul1010)−PEI(CRS5011)(混合質量比率50/35/15)ブレンドペレット(F)を作製した。得られたブレンドペレット(F)の不純物量は100個/0.34mmであった。
【0173】
押出機E、F2台を用い、300℃に加熱された押出機Eには、PETペレット(X)70質量部、およびブレンドペレット(F)10質量部およびPETペレットU0.0620質量部を混合し、180℃で3時間、3mmHgの減圧下で乾燥した後、押出機に投入し、同じく300℃に加熱された押出機Fには、PETペレット(X)76質量部、ブレンドペレット(F)10質量部、PETペレットS0.3を13質量部およびPETペレットS0.8を1質量部を混合し、180℃で3時間、3mmHgの減圧下で乾燥した後、押出機に投入した。
【0174】
300℃にて溶融押出し、サンドフィルター、濾過精度1.2μmの繊維焼結ステンレス金属フィルターおよび濾過精度0.8μmの繊維焼結ステンレス金属フィルターを順に用いて、3段階にフィルターを通過させた後、2層積層するべくTダイ中で合流させ(積層比E(A面側)/F(B面側)=7/1)、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製した。
【0175】
得られた未延伸フィルムに対し、実施例1と同様に処理することにより、厚さ5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。この二軸配向ポリエステルフィルムの組成・特性等は、表に示したとおりであり、磁気記録媒体用のベースフィルムとして優れた特性を有していた。
【0176】
(実施例4)
PETペレット(X)56質量部、およびブレンドペレット(D)24質量部およびPETペレットU0.0620質量部を混合し、180℃で3時間、3mmHgの減圧下で乾燥した後、押出機に投入し、300℃にて溶融押出し、濾過精度1.2μmの繊維焼結ステンレス金属フィルターを通過させた後、Tダイからシート状に吐出し、該シートを表面温度25℃の冷却ドラム上に静電印加法により密着固化させ冷却し、未延伸フィルムを得た。
【0177】
押出機E、F2台を用い、300℃に加熱された押出機Eには、PETペレット(X)56質量部、およびブレンドペレット(D)24質量部およびPETペレットU0.0620質量部を混合し、180℃で3時間、3mmHgの減圧下で乾燥した後、押出機に投入し、同じく300℃に加熱された押出機Fには、PETペレット(X)62質量部、ブレンドペレット(D)24質量部、PETペレットS0.3を13質量部およびPETペレットS0.8を1質量部を混合し、180℃で3時間、3mmHgの減圧下で乾燥した後、押出機に投入した。
【0178】
300℃にて溶融押出し、サンドフィルター、濾過精度1.2μmの繊維焼結ステンレス金属フィルターおよび濾過精度0.8μmの繊維焼結ステンレス金属フィルターを順に用いて、3段階にフィルターを通過させた後、2層積層するべくTダイ中で合流させ(積層比E(A面側)/F(B面側)=7/1)、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製した。
【0179】
得られた未延伸フィルムに対し、実施例1と同様に処理することにより、厚さ5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。この二軸配向ポリエステルフィルムの組成・特性等は、表に示したとおりであり、磁気記録媒体用のベースフィルムとして優れた特性を有していた。
【0180】
(実施例5)
PENペレット(V)50質量部と、SABICイノベーティブプラスチック社製のPEI“Ultem1010−1000”(Tg=215℃)のペレット35質量部とSABICイノベーティブプラスチック社製のPEI“UltemCRS5011−1000”(Tg=225℃)のペレット15質量部を別々に180℃、3mmHgの減圧下にて3時間乾燥した。
【0181】
日本製鋼所製のスクリュー直径44mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=52.5であるニーディングパドル混練部を3箇所設けた同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機をスクリューゾーンから押出ヘッド部にかけて315℃〜280℃に温度勾配を設定した。この押出機に減圧乾燥したあらかじめペレットの状態でブレンドしておいた上記3種類のペレットを供給し、スクリュー回転数300回転/分、滞留時間60秒にて溶融押出してストランド状に吐出し、温度60℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてPEN−PEI(Ul1010)−PEI(CRS5011)(混合質量比率50/35/15)ブレンドペレット(G)を作製した。得られたブレンドペレット(G)の不純物量は50個/0.34mmであった。
【0182】
押出機E、F2台を用い、300℃に加熱された押出機Eには、PENペレット(V)70質量部、ブレンドペレット(G)10質量部およびPENペレットT0.0620質量部を混合し、180℃で3時間、3mmHgの減圧下で乾燥した後、押出機に投入し、同じく300℃に加熱された押出機Fには、PENペレット(V)76質量部、ブレンドペレット(G)10質量部、PENペレットR0.3を13質量部およびPENペレットR0.8を1質量部を混合し、180℃で3時間、3mmHgの減圧下で乾燥した後、押出機に投入した。
【0183】
300℃にて溶融押出し、サンドフィルター、濾過精度1.2μmの繊維焼結ステンレス金属フィルターおよび濾過精度0.8μmの繊維焼結ステンレス金属フィルターを順に用いて、3段階にフィルターを通過させた後、2層積層するべくTダイ中で合流させ(積層比E(A面側)/F(B面側)=7/1)、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製した。
【0184】
得られた未延伸フィルムに対して、リニアモータ式クリップを有する同時二軸テンターを用いて、二軸延伸した。長手方向および幅方向に同時に、温度135℃、延伸速度6,000%/分で2.8倍×2.8倍延伸し、70℃まで冷却した。続いて、温度180℃で長手方向および幅方向に同時に1.6×2.0倍に再延伸した。その後、温度200℃で5秒間熱処理後、温度170℃で幅方向に2%の弛緩処理を行い、厚さ5μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作製した。この二軸配向ポリエステルフィルムの組成・特性等は、表に示したとおりであり、磁気記録媒体用のベースフィルムとして優れた特性を有していた。
【0185】
(実施例6)
実施例2におけるSABICイノベーティブプラスチック社製のPEI“UltemCRS5011−1000”(Tg=225℃)の代わりにSABICイノベーティブプラスチック社製のPEI“UltemXH6050−1000”(Tg=245℃)を用いること以外は実施例2と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを作製した。
【0186】
また、この時作製したPET−PEI(Ul1010)−PEI(XH6050)(混合質量比率50/35/15)ブレンドペレットの不純物量は100個/0.34mmであった。
【0187】
この二軸配向ポリエステルフィルムの組成・特性等は、表に示したとおりであり、磁気記録媒体用のベースフィルムとして優れた特性を有していた。
【0188】
(実施例7)
PETペレット(X)50質量部と、SABICイノベーティブプラスチック社製のPEI“Ultem1010−1000”(Tg=215℃)のペレット35質量部とSABICイノベーティブプラスチック社製のPEI“UltemCRS5011−1000”(Tg=225℃)のペレット15質量部を別々に180℃、3mmHgの減圧下にて3時間乾燥した。
【0189】
日本製鋼所製のスクリュー直径44mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=52.5であるニーディングパドル混練部を3箇所設けた同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機をスクリューゾーンから押出ヘッド部にかけて315℃〜280℃に温度勾配を設定した。この押出機に減圧乾燥した“Ultem1010−1000”と“UltemCRS5011−1000”を供給し、溶融混練中にサイドフィーダーからPETペレット(X)を供給してスクリュー回転数300回転/分、滞留時間60秒にて溶融押出してストランド状に吐出し、温度60℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてPET−PEI(Ul1010)−PEI(CRS5011)(混合質量比率50/35/15)ブレンドペレット(H)を作製した。得られたブレンドペレット(H)の不純物量は150個/0.34mmであった。
【0190】
押出機E、F2台を用い、300℃に加熱された押出機Eには、PETペレット(X)70質量部、ブレンドペレット(H)10質量部およびPETペレットU0.0620質量部を混合し、180℃で3時間、3mmHgの減圧下で乾燥した後、押出機に投入し、同じく300℃に加熱された押出機Fには、PETペレット(X)76質量部、ブレンドペレット(H)10質量部、PETペレットS0.3を13質量部およびPETペレットS0.8を1質量部を混合し、180℃で3時間、3mmHgの減圧下で乾燥した後、押出機に投入した。
【0191】
300℃にて溶融押出し、サンドフィルター、濾過精度1.2μmの繊維焼結ステンレス金属フィルターおよび濾過精度0.8μmの繊維焼結ステンレス金属フィルターを順に用いて、3段階にフィルターを通過させた後、2層積層するべくTダイ中で合流させ(積層比E(A面側)/F(B面側)=7/1)、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製した。
【0192】
得られた未延伸フィルムに対し、実施例1と同様に処理することにより、厚さ5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。この二軸配向ポリエステルフィルムの組成・特性等は、表に示したとおりであり、磁気記録媒体用のベースフィルムとして優れた特性を有していた。
【0193】
(実施例8)
PETペレット(X)50質量部と、SABICイノベーティブプラスチック社製のPEI“Ultem1010−1000”(Tg=215℃)のペレット25質量部とSABICイノベーティブプラスチック社製のPEI“UltemCRS5011−1000”(Tg=225℃)のペレット25質量部を別々に180℃、3mmHgの減圧下にて3時間乾燥した。
【0194】
日本製鋼所製のスクリュー直径44mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=52.5であるニーディングパドル混練部を3箇所設けた同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機をスクリューゾーンから押出ヘッド部にかけて315℃〜280℃に温度勾配を設定した。この押出機に減圧乾燥したあらかじめペレットの状態でブレンドしておいた上記3種類のペレットを供給し、スクリュー回転数300回転/分、滞留時間60秒にて溶融押出してストランド状に吐出し、温度60℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてPET−PEI(Ul1010)−PEI(CRS5011)(混合質量比率50/25/25)ブレンドペレット(E)を作製した。得られたブレンドペレット(E)の不純物量は50個/0.34mmであった。
【0195】
押出機E、F2台を用い、300℃に加熱された押出機Eには、PETペレット(X)70質量部、ブレンドペレット(E)6質量部、ブレンドペレット(Z)4質量部およびPETペレットU0.0620質量部を混合し、180℃で3時間、3mmHgの減圧下で乾燥した後、押出機に投入し、同じく300℃に加熱された押出機Fには、PETペレット(X)80質量部、ブレンドペレット(E)6質量部、PETペレットS0.3を13質量部およびPETペレットS0.8を1質量部を混合し、180℃で3時間、3mmHgの減圧下で乾燥した後、押出機に投入した。
【0196】
300℃にて溶融押出し、サンドフィルター、濾過精度1.2μmの繊維焼結ステンレス金属フィルターおよび濾過精度0.8μmの繊維焼結ステンレス金属フィルターを順に用いて、3段階にフィルターを通過させた後、2層積層するべくTダイ中で合流させ(積層比E(A面側)/F(B面側)=7/1)、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製した。
【0197】
得られた未延伸フィルムに対し、実施例1と同様に処理することにより、厚さ5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。この二軸配向ポリエステルフィルムの組成・特性等は、表に示したとおりであり、磁気記録媒体用のベースフィルムとして優れた特性を有していた。
【0198】
(実施例9)
PETペレット(X)50質量部と、SABICイノベーティブプラスチック社製のPEI“Ultem1010−1000”(Tg=215℃)のペレット35質量部とソルベイアドバンストポリマーズ社製PES“レーデル(RADEL)A グレードA−300A”(Tg=220℃)のペレット15質量部を別々に180℃、3mmHgの減圧下にて3時間乾燥した。
【0199】
日本製鋼所製のスクリュー直径44mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=52.5であるニーディングパドル混練部を3箇所設けた同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機をスクリューゾーンから押出ヘッド部にかけて315℃〜280℃に温度勾配を設定した。この押出機に減圧乾燥したあらかじめペレットの状態でブレンドしておいた上記3種類のペレットを供給し、スクリュー回転数300回転/分、滞留時間60秒にて溶融押出してストランド状に吐出し、温度60℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてPET−PEI(Ul1010)−PES(A−300A)(混合質量比率50/35/15)ブレンドペレット(I)を作製した。得られたブレンドペレット(I)の不純物量は200個/0.34mmであった。
【0200】
押出機E、F2台を用い、300℃に加熱された押出機Eには、PETペレット(Y)70質量部、ブレンドペレット(I)10質量部およびPETペレットU0.0620質量部を混合し、180℃で3時間、3mmHgの減圧下で乾燥した後、押出機に投入し、同じく300℃に加熱された押出機Fには、PETペレット(Y)76質量部、ブレンドペレット(I)10質量部、PETペレットS0.3を13質量部およびPETペレットS0.8を1質量部を混合し、180℃で3時間、3mmHgの減圧下で乾燥した後、押出機に投入した。
【0201】
300℃にて溶融押出し、サンドフィルター、濾過精度1.2μmの繊維焼結ステンレス金属フィルターおよび濾過精度0.8μmの繊維焼結ステンレス金属フィルターを順に用いて、3段階にフィルターを通過させた後、2層積層するべくTダイ中で合流させ(積層比E(A面側)/F(B面側)=7/1)、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製した。
【0202】
得られた未延伸フィルムに対し、実施例1と同様に処理することにより、厚さ5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。この二軸配向ポリエステルフィルムの組成・特性等は、表に示したとおりであり、磁気記録媒体用のベースフィルムとして優れた特性を有していた。
【0203】
(比較例1)
SABICイノベーティブプラスチック社製のPEI“Ultem1010−1000”(Tg=215℃)のペレット70質量部とSABICイノベーティブプラスチック社製のPEI“UltemCRS5011−1000”(Tg=225℃)のペレット30質量部を別々に150℃、3mmHgの減圧下にて6時間乾燥した。
【0204】
日本製鋼所製のスクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=52.5であるニーディングパドル混練部を3箇所設けた同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機をスクリューゾーンから押出ヘッド部にかけて380℃〜400℃に温度勾配を設定した。この押出機に減圧乾燥した“Ultem1010−1000”と“UltemCRS5011−1000”を供給し、溶融混練中にサイドフィーダーからPETペレット(X)を供給して、スクリュー回転数100回転/分、滞留時間5分にて溶融押出してストランド状に吐出し、温度10℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてPEI(Ul1010)−PEI(CRS5011)(混合質量比率70/30)ブレンドペレット(J)を作製した。
【0205】
次に、PETペレット(X)の50質量部とブレンドペレット(J)の50質量部を別々に180℃、3mmHgの減圧下にて3時間乾燥した後、上記押出機をスクリューゾーンから押出ヘッド部にかけて270℃〜320℃に温度勾配を設定する。同様にして温度310℃に加熱されたニーディングパドル混練部を3箇所設けた同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)にブレンドペレット(J)の50質量部供給し、溶融混練中にサイドフィーダーからPETペレット(X)50質量部を供給して、スクリュー回転数300回転/分で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてPET−PEI(Ul1010)−PEI(CRS5011)ブレンドペレット(K)を作製した。
【0206】
得られたブレンドペレット(K)の不純物量は600個/0.34mmであった。
【0207】
押出機E、F2台を用い、300℃に加熱された押出機Eには、PETペレット(X)70質量部、ブレンドペレット(K)10質量部およびPETペレットU0.0620質量部を混合し、180℃で3時間、3mmHgの減圧下で乾燥した後、押出機に投入し、同じく300℃に加熱された押出機Fには、PETペレット(X)76質量部、ブレンドペレット(K)10質量部、PETペレットS0.3を13質量部およびPETペレットS0.8を1質量部を混合し、180℃で3時間、3mmHgの減圧下で乾燥した後、押出機に投入した。
【0208】
300℃にて溶融押出し、繊維焼結ステンレス金属フィルター(14μmカット)を通過させた後、2層積層するべくTダイ中で合流させ(積層比E(A面側)/F(B面側)=7/1)、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製した。
【0209】
この未延伸フィルムの両端部をクリップで把持して、リニアモーター方式の同時二軸延伸テンターに導き製膜した。フィルム温度を95℃に加熱し、面積延伸倍率12.25倍(縦倍率:3.5倍、横倍率:3.5倍)で同時二軸延伸した。続いて、フィルム温度を160℃にして、面積延伸倍率2.16倍(縦倍率:1.2倍、横倍率:1.8倍)で再延伸し、熱固定温度210℃で2秒間熱固定処理後、熱固定温度で長手方向と幅方向に2%の弛緩熱処理Iを行い、その後150℃と100℃の2段階で合わせて長手方向に4%、幅方向に2%の弛緩熱処理IIを行い、厚さ5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。この二軸配向ポリエステルフィルムの組成・特性等は、表に示したとおりである。
【0210】
(比較例2)
PETペレット(X)50質量部とSABICイノベーティブプラスチック社製のPEI“ウルテム(Ultem) 1010−1000”50質量部を、150℃で5時間除湿乾燥した後、320〜290℃に加熱された(スクリューゾーン、押出ヘッド部で温度勾配を設定)二軸3段タイプのスクリュー(PETとPEIの混練可塑化ゾーン/ダルメージ混練ゾーン/逆ネジダルメージによる微分散相溶化ゾーン)を具備したベント式二軸押出機(L/D= 40、ベント孔の減圧度は200Paとした)に供給して、滞留時間3分にて溶融押出し、PEIを50質量%含有したPET/PEIブレンドチップ(L)を得た。得られたブレンドペレット(L)の不純物量は50個/0.34mmであった。
【0211】
押出機E、F2台を用い、300℃に加熱された押出機Eには、PETペレット(X)70質量部、ブレンドペレット(L)10質量部およびPETペレットU0.0620質量部を混合し、180℃で3時間、3mmHgの減圧下で乾燥した後、押出機に投入し、同じく300℃に加熱された押出機Fには、PETペレット(X)76質量部、ブレンドペレット(L)10質量部、PETペレットS0.3を13質量部およびPETペレットS0.8を1質量部を混合し、180℃で3時間、3mmHgの減圧下で乾燥した後、押出機に投入した。
【0212】
300℃にて溶融押出し、繊維焼結ステンレス金属フィルター(14μmカット)を通過させた後、2層積層するべくTダイ中で合流させ(積層比E(A面側)/F(B面側)=7/1)、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製した。
【0213】
この未延伸フィルムの両端部をクリップで把持して、リニアモーター方式の同時二軸延伸テンターに導き製膜した。フィルム温度を95℃に加熱し、面積延伸倍率12.25倍(縦倍率:3.5倍、横倍率:3.5倍)で同時二軸延伸する。続いて、フィルム温度を160℃にして、面積延伸倍率2.16倍(縦倍率:1.2倍、横倍率:1.8倍)で再延伸し、熱固定温度210℃で2秒間熱固定処理後、熱固定温度で長手方向と幅方向に2%の弛緩熱処理Iを行い、その後150℃と100℃の2段階で合わせて長手方向に4%、幅方向に2%の弛緩熱処理IIを行い、厚さ5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。この二軸配向ポリエステルフィルムの組成・特性等は、表に示したとおりである。
【0214】
(比較例3)
押出機E1、E2の2台を用い、295℃に加熱された押出機E1には、PETペレット(X)80質量部およびPETペレットU0.06 20質量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給し、同じく295℃に加熱された押出機E2には、PETペレット(X)86質量部、PETペレットS0.3 13質量部およびPETペレットS0.8 1質量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。295℃にて溶融押出し、繊維焼結ステンレス金属フィルター(14μmカット)を通過させた後、これらを2層積層するべくTダイ中で合流させ(積層比E1(A面側)/E2(B面側)=7/1)、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製した。なお、未延伸フィルムのガラス転移温度(Tg)は80℃であった。この積層未延伸フィルムをリニアモータ式クリップを有する同時二軸テンターを用いて、二軸延伸した。長手方向および幅方向に同時に、温度95℃、延伸速度6,000%/分で3.1倍×3.1倍延伸し、70℃まで冷却した。続いて、温度160℃で長手方向および幅方向に同時に1.4×1.7倍に再延伸した。その後、温度200℃で5秒間熱処理後、温度160℃で幅方向に2%の弛緩処理を行い、厚さ5μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作製した。なお、二軸延伸フィルムのガラス転移温度(Tg)は105℃であり、融点(Tm)は255℃であった。得られた二軸延伸ポリエステルフィルムを評価した結果を表に示した。
【0215】
(比較例4)
押出機を2台用い、280℃に加熱された押出機AにSABICイノベーティブプラスチック社製の固有粘度0.68の“ウルテム”1010を10質量%と、芳香族環が1つのスルホニル基と、1つまたは2つのエーテル基とで結合された以下に示すPES1を繰り返し単位とするPESを5質量%とPEN85質量%のブレンドポリマー(平均粒径0.25μmの球状シリカ粒子を0.1質量%と平均粒径0.02μmのアルミナ粒子0.5質量%含有する)を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給し、280℃に加熱された押出機BにはPEN(平均粒径0.8μmの球状シリカ粒子を0.05質量%と平均粒径0.3μmの球状シリカ粒子0.6質量%含有する)を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。その後、Tダイ中で合流させ(積層比8.5/1.0)、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製した。
【0216】
【化5】

【0217】
この未延伸フィルムをロール式延伸機にて長手方向に温度150℃で3.2倍延伸し、次にテンターを用いて、幅方向に温度155℃で4.5倍延伸し、さらにロール式延伸機にて長手方向に温度155℃で1.6倍再縦延伸し、テンターを用いて幅方向に温度195℃で1.1倍再横延伸しようとしたところ、延伸破れが多発し、サンプル採取が不可能であった。
【0218】
(比較例5)
PETペレット(X)の70質量部とSABICイノベーティブプラスチック社製のPEI“UltemCRS5011−1000”(Tg=225℃)の30質量部を別々に180℃、3mmHgの減圧下にて3時間乾燥した後、日本製鋼所製のスクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=52.5であるニーディングパドル混練部を3箇所設けた同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機をスクリューゾーンから押出ヘッド部にかけて270℃〜320℃に温度勾配を設定して、加熱されたニーディングパドル混練部を3箇所設けた同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)にPETペレット(X)の70質量部とSABICイノベーティブプラスチック社製のPEI“UltemCRS5011−1000”(Tg=225℃)の30質量部供給し、スクリュー回転数100回転/分、滞留時間5分で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてPET−PEI(CRS5011)ブレンドペレット(M)を作製した。
【0219】
得られたブレンドペレット(M)の不純物量は500個/0.34mmであった。
【0220】
300℃にて溶融押出し、サンドフィルター、濾過精度1.2μmの繊維焼結ステンレス金属フィルターおよび濾過精度0.8μmの繊維焼結ステンレス金属フィルターを順に用いて、3段階にフィルターを通過させた後、Tダイからシート状に吐出し、該シートを表面温度25℃の冷却ドラム上に静電印加法により密着固化させ冷却し、未延伸フィルムを得た。
【0221】
押出機E、F2台を用い、300℃に加熱された押出機Eには、PETペレット(X)68質量部、ブレンドペレット(Z)7質量部、ブレンドペレット(M)5質量部およびPETペレットU0.0620質量部を混合し、180℃で3時間、3mmHgの減圧下で乾燥した後、押出機に投入し、同じく300℃に加熱された押出機Fには、PETペレット(X)74質量部、ブレンドペレット(Z)7質量部、ブレンドペレット(M)5質量部、PETペレットS0.3を13質量部およびPETペレットS0.8を1質量部を混合し、180℃で3時間、3mmHgの減圧下で乾燥した後、押出機に投入した。
【0222】
300℃にて溶融押出し、繊維焼結ステンレス金属フィルター(14μmカット)を通過させた後、2層積層するべくTダイ中で合流させ(積層比E(A面側)/F(B面側)=7/1)、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製した。
【0223】
この未延伸フィルムの両端部をクリップで把持して、リニアモーター方式の同時二軸延伸テンターに導き製膜した。フィルム温度を95℃に加熱し、面積延伸倍率10.89倍(縦倍率:3.3倍、横倍率:3.3倍)で同時二軸延伸した。続いて、フィルム温度を160℃にして、面積延伸倍率1.32倍(縦倍率:1.1倍、横倍率:1.2倍)で再延伸し、熱固定温度210℃で2秒間熱固定処理後、熱固定温度で長手方向と幅方向に2%の弛緩熱処理Iを行い、その後150℃と100℃の2段階で合わせて長手方向に4%、幅方向に2%の弛緩熱処理IIを行い、厚さ5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。この二軸配向ポリエステルフィルムの組成・特性等は、表に示したとおりである。
【0224】
【表1】

【0225】
【表2】

【0226】
【表3】

【0227】
【表4】

【0228】
【表5】

【符号の説明】
【0229】
1 レーザー発振器
2 受光部
3 荷重検出器
4 分銅
5 フリーロール
6 フリーロール
7 フリーロール
8 フリーロール
9 磁気テープ
10 レーザー光
11 海部分
12 島部分
13 海部分
14 島部分
15 湖部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度が180℃未満のポリエステルと、ガラス転移温度が180℃以上300℃以下の樹脂の少なくとも2種類以上と含み、少なくとも片面のフィルム表面について、以下の(A)〜(D)のいずれも満足している二軸配向フィルム。
(A)フィルム表面粗さRaが0.5nm以上10nm以下
(B)10点平均粗さRzが50nm以上300nm以下
(C)表面粗大突起数H1が0個/100cm以上100個/100cm以下
(D)表面粗大突起数H2が0個/100cm以上10個/100cm以下
【請求項2】
フィルム断面を電子顕微鏡で観察した際に、海島構造または海島湖構造が観察される、請求項1に記載の二軸配向フィルム。
【請求項3】
フィルム内部のヘイズ値が0%以上50%以下である、請求項1または2に記載の二軸配向フィルム。
【請求項4】
長手方向および幅方向の屈折率の平均値が1.600以上1.850以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の二軸配向フィルム。
【請求項5】
30℃の温度、40%RHから80%RHの湿度変化において、長手方向または幅方向の少なくとも一方向の湿度膨張係数が0ppm/%RH以上6.0ppm/%RH以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の二軸配向フィルム。
【請求項6】
長手方向または幅方向の少なくとも一方向の温度膨張係数が−5.0ppm/℃以上8.0ppm/℃以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の二軸配向フィルム。
【請求項7】
ガラス転移温度が180℃未満のポリエステルがポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートおよびそれらの変性体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーである、請求項1〜6のいずれかに記載の二軸配向フィルム。
【請求項8】
少なくとも2種類以上含まれるガラス転移温度が180℃以上300℃以下の樹脂が、それぞれガラス転移温度の異なるポリエーテルイミドである、請求項1〜7のいずれかに記載の二軸配向フィルム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の二軸配向フィルムを用いてなる磁気記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−184605(P2011−184605A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52581(P2010−52581)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】