説明

二軸配向ポリエステルフィルム及びそれらの銅との積層板

【課題】熱安定性、耐熱性(はんだ及び寸法安定性)並びに低膨張率の二軸配向ポリエステルフィルムの提供。
【解決手段】(1)少なくとも90モル%のテレフタル酸残基及び/又はナフタレンジカルボン酸残基の二酸残基;及び(2)少なくとも90モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基を含んでなるポリエステルから製造される二軸配向ポリエステルフィルムであって;前記ポリエステルのフィルムが、90〜110℃の延伸温度で縦方向に2.5X〜3Xの比でそして横方向に2.5X〜3Xの比で延伸され(Xは延伸比)、且つ続いて延伸フィルムが260℃〜Tm[Tmは示差走査熱量測定法(DSC)によって測定したポリエステルの融点である]の実際フィルム温度において、前記延伸フィルムの寸法を保持しながら、1〜120秒間ヒートセットされているフィルムが開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の熱安定性ポリエステルフィルム並びにポリエステル積層板及び熱安定性ポリエステルフィルムを用いる銅−ポリエステル積層板に関する。好ましくは、これらのフィルムは、フレキシブル回路の用途に使用するのに必要な耐熱性(はんだ及び寸法安定性)及び低熱膨張率の望ましい組合せを有する。更に詳しくは、本発明は、二軸配向又は延伸され(oriented or stretched)且つある一定の条件下でヒートセットされた、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)又はポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンナフタレンジカルボキシレート)ホモ−若しくはコポリエステル又はそれらのブレンドから製造された熱安定性ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)フィルムは、種々の包装、単位包装(パッケージ)及び積層用に広く使用されている。PETフィルムはシュリンク包装用に使用されることもあり、その場合にはフィルムが対象物に適用され、対象物の周囲でフィルムが収縮するように加熱される。フレキシブル電子回路、耐熱包装及びクック−イン・バッグ(cook−in bag)のような他の用途において、高温における優れた寸法安定性及び耐収縮性を有する、二軸配向され且つヒートセットされたPETフィルムが使用されている。しかし、二軸配向PETフィルムは、その固有融解温度(Tm)が250℃であるので、250℃を超える温度では有用でない。
【0003】
いくつかのフレキシブル回路基板のような一部の用途は、260℃において熱安定性である(即ち優れた寸法安定性を有する)フィルムを必要とする。更に詳しくは、これらのフィルムは、260℃に予熱されたはんだ浴に浸漬した際に膨れを生じたり、しわが寄ったりしてはならない。更に詳しくは、これらのフィルムは、260℃に予熱されたはんだ浴中に10秒間浸漬した際に受ける収縮が3%又はそれ以下でなければならない。この要件を満たすフィルムは、接着剤及び回路部品と組合されてフレキシブル積層板にされ、それは次に260℃において噴流はんだ又はディップはんだに供されることができる。260℃におけるはんだ付け時の、この積層板のベースフィルムの膨れ又はちりめんじわはいずれも、最終用途において回路性能に悪影響を与える可能性がある。
【0004】
高温フレキシブル回路基板への適用ではまた、熱硬化性接着剤の使用によってベースフィルムを銅フィルムに取付けることが必要な場合がある。これらの接着剤は典型的には120〜150℃の温度において圧力のかかった状態で硬化されるので、積層板構造全体が、熱圧プレス、オートクレーブ又は同等の装置中でこれらの温度に加熱されなければならない。接着剤の硬化後、積層板は室温に冷却する。ベースフィルム及び接着剤の熱膨張率(CTE)は、150〜23℃の温度範囲にわたって積層板をカールさせるおそれのある残留応力が生じないように、銅フィルムのCTEに充分に類似していることが重要である。カールを防止するためには、このフィルムは、120〜150℃における測定時に10〜85ppm/℃のCTE値を有する必要があり、好ましくはまた、25〜90℃における測定時に10〜42ppm/℃のCTE値を有する。これらのCTE値は、積層板の製造に使用される二軸配向フィルムに特有であり、クック−イン・バッグのような他の耐熱包装用途に使用されるフィルムには必要とされず、先行技術には言及されていないと考えられることに注目されたい。
【0005】
優れた加水分解安定性は、フレキシブル回路基板(特に自動車用の)及びクック−イン・バッグに使用されるフィルムに重要なもう1つの要件である。優れた加水分解安定性を有するベースフィルムは、構造保全性を維持する回路基板及びバッグを生成する。更に、フレキシブル回路基板に使用される支持体及びカバーフィルムは、電荷が回路部品を横切らないように絶縁材料であることが重要である。これらの用途で使用されるフィルムの絶縁能は、誘電率によって測定される。フレキシブル回路基板用に使用されるフィルムは可能な限り低い誘電率を有することが重要である。
【0006】
1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)から得られる一部のポリエステルは250℃超の融点を有する。以下の特許文献は、CHDMから製造されたポリエステルから製造されたフィルムを記載している。しかし、これらの特許文献はいずれも、260℃において安定なフィルムの製造を明確に開示しているとは到底思われない。
【0007】
特許文献1はポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)(PCT)ホモポリエステル及びコポリエステル(20モル%以下のイソフタル酸残基を含む)から製造されたフィルムを記載している。
【0008】
特許文献2はPCTポリマーから製造された二軸配向フィルムを記載している。
【0009】
特許文献3はCHDM残基が75〜100%のシス異性体を含むインヘレント粘度(I.V.)が0.80dL/g未満のPCTポリマーを記載している。
【0010】
特許文献4は他のジカルボン酸又は他のグリコールに由来する15モル%以下の残基を含む、I.V.が少なくとも0.5dL/gのPCTポリマーから製造された二軸配向PCTフィルムを記載している。特許文献5は、特許文献4に記載された二軸配向PCTフィルムがいかに260℃はんだ浴抵抗性を有さないかを記載すると共に、特許文献4に記載されたフィルムを照射してフィルムを架橋させることによってどの程度のはんだ浴抵抗性が得られるかを記載している。特許文献6は金属蒸着二軸配向PCTフィルムを基材とする電気絶縁材料を記載している。CTE、使用温度及びフレキシブル回路基板への応用はこの文献には記載されていない。
【0011】
特許文献7、8、9、10及び11は少なくとも80モル%のテレフタル酸残基及び少なくとも90モル%のCHDM(トランス異性体60〜100%)残基を含むPCTポリマーを記載している。高い二軸配向性を有する二軸配向フィルムは磁気テープの製造において有用である。
【0012】
特許文献12は電気絶縁及びフレキシブル・プリント回路ベースフィルムに有用なPET、PCT及びコポリエステルから製造されたフィルムを記載している。特許文献13及び14は少なくとも97モル%のCHDM残基及び少なくとも90モル%のテレフタル酸残基を含むPCT及びPCTコポリエステル並びにキャパシターフィルム製造へのそれらのポリマーの使用について記載している。特許文献15は他のジカルボン酸又は他のグリコールから得られた25モル%以下の残基を含むPCTポリマーを記載している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】防衛出願公開(Defensive Publication)T876,001号明細書(1970年)
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】WO96−06125号公報(1996年)
【特許文献2】WO92/14771号公報(1992年)
【特許文献3】特開平01−299019号公報(1989年)
【特許文献4】特開平02−301419号公報(1989年)
【特許文献5】特開平02−196833号公報(1990年)
【特許文献6】米国特許第4,557,982号明細書(1985年)
【特許文献7】特開昭60−069133号公報(1985年)
【特許文献8】特公平03−000215号公報(1991年)
【特許文献9】特開昭60−085437号公報(1985年)
【特許文献10】特公平02−063256号公報(1990年)
【特許文献11】特開昭58−214208号公報(1983年)
【特許文献12】米国特許第5,153,302号明細書(1992年)
【特許文献13】特開平04−214757号公報(1992年)
【特許文献14】米国特許3,284,223号明細書(1966年)
【発明の概要】
【0015】
本発明の範囲内において多くの実施態様が考えられるが、実施態様のいくつかの例について具体的に説明する。
【0016】
本発明の第1の実施態様において、
(1)少なくとも90モル%のテレフタル酸残基、ナフタレンジカルボン酸残基又はそれらの組合せを含む二酸残基;及び
(2)少なくとも90モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基
を含んでなる、合計100モル%の二酸残基及び合計100モル%のジオール残基を含むポリエステルから製造される二軸配向ポリエステルフィルムであって、前記ポリエステルのフィルムが、式(27*R)−(1.3*(T−Tg))≧27[式中、Tは縦方向の延伸温度及び横方向の延伸温度の平均(摂氏度)であり、Tgはポリマーフィルムのガラス転移温度(摂氏度)であり、Rは縦方向及び横方向の延伸比の平均である]を満足させる延伸比及び延伸温度で延伸又は配向され、且つ延伸フィルムが260℃〜Tm[Tmは示差走査熱量測定法(DSC)によって測定したポリマーの融点である]の実際のフィルム温度において1〜120秒間、好ましくは1〜60秒間、前記延伸フィルムの寸法を保持しながら、ヒートセットされているポリエステルフィルムが提供される。二軸配向され且つヒートセットされたポリエステルフィルムは、260℃に予熱されたはんだ浴中に10秒間浸漬した場合の収縮が3%以下であり、120〜150℃で測定した場合に、10〜85ppm/℃の熱膨張率値を示すのが好ましい。低い収縮値は、次に260℃の噴流又はディップはんだに供することができるフレキシブル積層板を形成するための積層板を接着剤及び回路部品を用いて製造するのに好ましい。この積層回路のベースフィルムは、好ましくははんだ付けの間に、膨れも、ちりめんじわも生じてはならない。これは、最終用途において回路性能に悪影響を及ぼすおそれがあるためである。前述の用語「実際のフィルム温度」は、空気が加熱される温度ではなく、フィルムの実際の温度を意味する。
【0017】
本発明の第2の実施態様は、
(1)少なくとも90モル%のテレフタル酸残基、ナフタレンジカルボン酸残基又はそれらの組合せを含む二酸残基;及び
(2)少なくとも90モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基
を含んでなる、合計100モル%の二酸残基及び合計100モル%のジオール残基を含むポリエステルから製造される二軸配向ポリエステルフィルムであり、前記ポリエステルフィルムが、260℃に予熱されたはんだ浴中に10秒間浸漬した場合の収縮が3%以下であり且つ、120〜150℃において測定した場合に、10〜85ppm/℃の熱膨張率値を示し、好ましくは、25〜90℃で測定した場合に、10〜42ppm/℃の熱膨張率値を示すポリエステルフィルムである。
【0018】
本発明の第3の実施態様は、1枚又はそれ以上の積層板に熱及び圧力を加えることによって得られる熱可塑性製品であって、前記積層板の少なくとも1枚は、
I.少なくも1種の熱硬化性接着剤;及び
II.第1及び第2の実施態様において定義された少なくとも1層の、二軸配向され且つヒートセットされたポリエステルフィルム
を順に含んでなる。
【0019】
本発明の第4の実施態様は、1枚又はそれ以上の積層板に熱及び圧力を加えることによって得られる熱可塑性製品であって、前記積層板の少なくとも1枚は、
I.少なくとも1層の銅層;
II.少なくも1種の熱硬化性接着剤;及び
III.前に定義された少なくとも1層の、二軸配向され且つヒートセットされたポリエステルフィルム
を順に含んでなる。
【0020】
本発明の第5の実施態様は、1枚又はそれ以上の積層板に熱及び圧力を加える熱可塑性製品の製造方法であって、前記積層板の少なくとも1枚が、
(a)少なくとも1層の銅層;
(b)少なくも1種の熱硬化性接着剤;並びに
(c)第1及び第2の実施態様において定義された、二軸配向され且つヒートセットされたポリエステルフィルム
を順に含んでなり、約120〜180℃、好ましくは約120〜150℃の温度において、熱硬化性接着剤を硬化させるのに充分な時間、前記積層板に熱を加える方法である。
【0021】
本発明の第6の実施態様は、第1及び第2の実施態様において定義された少なくとも1層の二軸配向ポリエステルフィルムを含んでなるフレキシブル電子回路基板である。
【0022】
本発明の第7の実施態様は、前記フィルム積層板の製造方法であって、
(1)(c)少なくとも1層の熱硬化性接着剤層;及び
(d)第1及び第2の実施態様の、少なくとも1層の二軸配向ポリエステルフィルムを順に含んでなる多層サンドイッチを製造し;そして
(2)工程(1)の多層サンドイッチを、約120〜150℃の温度において、熱硬化性接着剤を硬化させるのに充分な時間加熱する
工程を含む製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明において有用な単層フレキシブル電子回路の図である。
【図2】本発明において有用な二層フレキシブル電子回路の図である。
【図3】本発明において有用な多層フレキシブル電子回路の図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の全ての実施態様のポリエステルは、
(1)少なくとも90モル%、好ましくは少なくとも97%のテレフタル酸残基、ナフタレンジカルボン酸算基又はそれらの混合物、より好ましくは少なくとも90モル%のテレフタル酸残基、更に好ましくは少なくとも97モル%のテレフタル酸残基を含む二酸残基;及び
(2)少なくとも90モル%、好ましくは少なくとも97モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)残基を含むジオール残基
を含んでなる。
【0025】
更に好ましいのは、
(1)テレフタル酸残基から本質的になる二酸残基;及び
(2)1,4−シクロヘキサンジメタノール残基から本質的になるジオール残基
から本質的になるポリエステルである。
【0026】
CHDM残基はシス及びトランス異性対比の任意の組合せを有することができる。しかし、好ましくは、CHDM残基は約60〜100%の範囲のトランス異性体含量を有する。より好ましい異性体含量は、トランス異性体約60〜約80%の範囲である。
【0027】
本発明に一部又は全ての実施態様において使用するポリエステルは、結晶質又は結晶性であり、且つ約260℃超、好ましくは約270℃超、例えば、約270〜330℃、より好ましくは約280〜300℃の融点を有するのが好ましい。
【0028】
これらのポリエステルは、公知の常法によって容易に製造される。例えば、所望ならば、溶融相重合法又は溶融相及び固相重縮合法の組合せを使用できる。ポリエステルは典型的には約0.4〜1.2、好ましくは約0.5〜1.1、より好ましくは0.7〜1.0のI.V.を有する。本明細書中で使用するI.V.は、フェノール60重量%及びテトラクロロエタン40重量%からなる溶媒100mL当たりポリマー0.50gを用いて25℃において測定した粘度測定値を意味する。本発明においてポリエステルのI.V.を測定する基本的方法は、ASTM法D2857−95に記載されている。任意のナフタレンジカルボン酸異性体を使用することができるが、1,4−、1,5−、2,7−及び特に2,6−異性体が好ましい。ポリエステルの二酸残基は、ジカルボン酸又は低級アルキルエステル、例えばテレフタル酸メチル、酸ハロゲン化物、例えば二酸塩化物、若しくは場合によっては、無水物のような二酸の誘導体から得ることができる。
【0029】
ポリエステルは、所望ならば、他のジカルボン酸又は他のグリコールの残基を少量含むことができるが、ポリマーの高レベルの結晶化度及び高融点を維持するためには、このような材料の改質量は少ない、例えば約10モル%以下でなければならない。有用な改質用モノマーとしては、炭素数約4〜約14の他のジカルボン酸及び炭素数約2〜約12の他のグリコールが挙げられる。好ましい改質用酸としては、イソフタル酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。いくつかの好ましい改質用グリコールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール及びネオペンチルグリコールが挙げられる。
【0030】
本発明に使用するポリエステルの合成に使用できる触媒材料の例としては、チタン、マンガン、亜鉛、コバルト、アンチモン、ガリウム、リチウム、カルシウム、珪素及びゲルマニウムが挙げられる。このような触媒系は、米国特許第3,907,754号、同第3,962,189号、同第4,010,145号、同第4,356,299号、同第5,017,680号、同第5,668,243号及び同第5,681,918号明細書が挙げられ、これらを引用することによってその全体を本明細書中に組み入れるものとする。
好ましい触媒金属としては、チタン及びマンガンが挙げられ、最も好ましいのはチタンである。触媒金属の使用量は、約5〜100ppmであることができるが、優れた色、熱安定性及び電気的性質を有するポリエステルを生成するためには、チタン約5〜約35ppmの触媒濃度の使用が好ましい。燐化合物は、触媒金属と組合せて使用されることが多く、ポリエステルの製造に通常使用される燐化合物はいずれも使用できる。典型的には約100ppm以下の燐を使用できる。
【0031】
必要ではないが、フィルムの製造に使用するポリエステルの性能を妨げない限りにおいて、所望ならば、ポリエステル中に典型的には存在する他の添加剤を使用できる。このような添加剤としては以下のものが挙げられるがこれらに限定されない:酸化防止剤、紫外線安定剤及び熱安定剤、金属活性低下剤、着色剤、顔料、耐衝撃性改良剤、成核剤、分岐剤、難燃剤など。
【0032】
本発明に関連して形成されるポリエステルの製造に有用な分岐剤は、ポリエステルの酸単位部分又はグリコール単位部分に分岐を生成するものであることができ、あるいは混成物であることができる。これらの分岐剤のいくつかは本明細書中に既に記載してある。しかし、このような分岐剤の実例となるのは、多官能価酸、多官能価無水物、多官能価グリコール及び酸/グリコール混成物である。例示すれば、トリ又はテトラカルボン酸及びそれらの対応する無水物、例えばトリメシン酸、ピロメリット酸及びそれらの低級アルキルエステルなど、並びにテトロール類、例えば、ペンタエリスリトールが挙げられる。また、トリオール類、例えばトリメチロールプロパン又はジヒドロキシカルボン酸並びにヒドロキシジカルボン酸及び誘導体、例えばヒドロキシテレフタル酸ジメチルなども本発明に関連して使用できる。トリメリット酸無水物が好ましい分岐剤である。
【0033】
ポリエステルフィルム又はシート材料の製造方法の第1工程において、前記ポリエステルのメルトを、当業界で知られた任意の温度において、例えば、典型的には約270〜310℃の温度において本質的に非晶質のフィルムに押出する。未延伸(又は未配向)フィルムの厚さは通常は100〜1000ミクロン、より典型的には約200〜600ミクロンの範囲である。初期フィルム押出は、一軸スクリュー押出機での押出又は二軸スクリュー押出機での押出を含む(但し、これらに限定されるものではない)任意の常法によって実施できる。次いで、式(27*R)−(1.3*(T−Tg))≧27[式中、Tは縦方向の延伸温度及び横方向の延伸温度の平均(摂氏度)であり、Tgはポリマーフィルムのガラス転移温度(摂氏度)であり、Rは縦方向及び横方向の延伸比の平均である]を満足させる延伸比及び延伸温度でフィルムを延伸又は配向させる。「×」は、フィルムの原寸に関するフィルム延伸度である延伸比を意味する。例えば2×は、フィルムが原寸の2倍の寸法に延伸されたことを意味する。好ましくは、フィルムは縦方向(MD)に約2.5×〜3×の比で且つ横方向(TD)に約2.5×〜3×の比で90〜110℃の延伸温度で延伸する。延伸後、フィルムは260℃〜Tm[Tmは示差走査熱量測定法(DSC)によって測定したポリマーの融点である]の実際フィルム温度で約5秒超の時間、ヒートセットする。オーブンの熱源(即ち対流、輻射など)に応じて、フィルムを260℃まで加熱するのに時間を要する場合があることに留意されたい。この時間は30秒以下である可能性がある。この追加の時間は、本明細書に記載したヒートセット時間には含めず、ヒートセット時間は、サンプルが実際に260℃〜Tmであった時間のみを示す。初期フィルム押出は、延伸直前に(即ちインラインで)又は別の時間に実施することができる。ヒートセットの間、延伸フィルムは、ヒートセット中の延伸フィルムの過剰な緩和を防ぐテンターフレーム又は他の機械的装置によって、フィルムの延伸寸法に保持する。ヒートセットの間に、フィルムは10%まで延伸又は緩和させることができ、即ちフィルムの全体寸法は10%まで増加又は減少させることができる。
【0034】
本発明の任意のフィルムの延伸又は配向には任意の常法を使用できる。例えば押出ポリエステルフィルムは、ロール延伸、ロングギャップ延伸、テンター延伸、チューブラ延伸又はそれらの組合せによって延伸できる。これらの方法のいずれかを用いて、連続二軸延伸、同時二軸延伸、一軸延伸又はそれらの組合せを行うことが可能である。同時二軸延伸は、フィルムの縦方向及び横方向を同時に延伸することを含む。同時二軸延伸において、横方向の延伸比は縦方向と同じでなくてもよい。連続二軸押出は、最初に縦方向にロールツーロール延伸し、次いで横方向に、例えばテンターを用いて延伸することを含む。連続延伸法において、2つの延伸は時を移さずに次々に(即ちインラインで)実施することもできるし、あるいは別の時間に実施することもできる。フィルムが圧延される場合には、縦方向はフィルムの長さ方向と定義する。横方向はフィルムの幅、即ち縦方向に垂直な方向と定義する。連続二軸延伸を実施する場合には、延伸比及び延伸温度は、横方向において、縦方向と同じでなくてもよい。
【0035】
延伸又は配向されたポリエステルフィルムは公知の方法に従ってヒートセットする。ヒートセットは連続法で、例えば延伸フィルムのロールを連続的にオーブン中に通すことによって、又は回分法として、例えばヒートセット・フレーム中にフィルムを入れ、それらを個々に一定時間、ヒートセット用オーブン中に入れることによって実施できる。ヒートセットは、延伸後直ちに(即ちインラインで)実施することもできるし、別の時間に実施することもできる。フィルムはヒートセット中に10%まで緩和又は膨張可能である。
【0036】
延伸及びヒートセット工程の数は様々であることができる。ポリエステルフィルムは、単一の延伸及び単一のヒートセット・パス又は処理、単一の延伸及び複数のヒートセット・パス、複数の延伸及び単一のヒートセット・パス、又は複数の延伸及び複数のヒートセット・パスに供することができる。複数の延伸及び/又はヒートセット・パスを実施する場合には、延伸及びヒートセット・パスのタイミングは交互であることも可能であるが、延伸パスを介在させずに1つのヒートセット・パスを前のヒートセットパスに続けることも可能である。各パスの条件は前のパスと同じでなくてもよい。例えばポリエステルフィルムを、二段ヒートセット法でヒートセットすることができる。その方法では、第1ヒートセットを延伸温度より高い任意の実際フィルム温度で実施する。続いて、フィルムを260℃〜Tmの範囲の実際フィルム温度において2度目のヒートセットを行う。TmはDSC(示差走査熱量測定法)によって測定したポリマーの融点である。本発明の積層板のポリエステルフィルム成分は通常、最終厚さ値、即ち延伸及びヒートセット後の最終厚さ値が約0.02〜0.2mm(約0.8〜8mil)、好ましくは約0.04〜0.13mm(約1.5〜5mil)である。
【0037】
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、本明細書中で定義されたポリエステルから製造する:ポリエステルのフィルムは、式(27*R)−(1.3*(T−Tg))≧27[式中、Tは縦方向の延伸温度及び横方向の延伸温度の平均(摂氏度)であり、Tgはポリマーフィルムのガラス転移温度(摂氏度)であり、Rは縦方向及び横方向の延伸比の平均である]を満足させる延伸比及び延伸温度で延伸又は配向させ、延伸フィルムは続いて、260℃〜Tm[Tmは示差走査熱量測定法(DSC)によって測定したポリエステルの融点である]の実際フィルム温度において延伸フィルムの寸法を保持しながらヒートセットする。
【0038】
前段落に記載したポリエステルフィルムは本発明の好ましい実施態様であるが、フィルムは前に定義した式を満足させる必要はない。あるいは、前段落に記載した式を必ずしも満足させなくてもよい、本明細書中で定義されたポリエステルから生成された二軸延伸ポリエステルであって、260℃に予熱されたはんだ浴中に10秒間浸漬した場合の収縮が3%以下であって、120〜150℃において測定した場合に、10〜85ppm/℃の熱膨張率値を示すものが提供される。
【0039】
本発明の全ての実施態様に関して、本発明のポリエステルフィルムは、260℃に予熱されたはんだ浴中に10秒間浸漬した場合の収縮が好ましくは3%未満であって、且つ好ましくは25〜90℃において測定した場合に、10〜42ppm/℃のCTE及び/又は120〜150℃において測定した場合に、10〜85ppm/℃のCTEを有することができる。更に、このポリエステルフィルムは、好ましくは260℃に予熱されたはんだ浴中に10秒間浸漬した場合に、膨れを生じたり、しわが寄ったりしない。このポリエステルフィルムはまた、PETから製造された同様なフィルムに比較して改良された加水分解抵抗性を示し、PET及びポリイミドから製造されたフィルムに比較して改良された誘電率を示す。本発明のポリエステルフィルムは、高温において寸法安定性を必要とするフィルムを必要とする任意の用途に有用であることができる。本明細書で例として示される詳細な最終用途は、例えばフレキシブル回路基板、フレキシブル・タッチスクリーン・ディスプレイ中のフィルム用導電層、液晶ディスプレイ、エレクトロクロミック・ディスプレイ、光起電装置(即ち太陽電池)、OLED(有機発光ダイオード)、マイクロ流体デバイス(使い捨て医療検査キット)である。本発明のフィルムに特に好ましい最終用途は、260℃及びそれ以上において寸法安定性を必要とするものである。
【0040】
新規積層板構造は、本発明によって提供されるフィルム又はポリエステルのいずれかを使用することができ、少なくとも1層の熱硬化性層若しくは紫外線硬化性層又は硬化接着層及び少なくとも1層の二軸配向され且つヒートセットされたポリエステル層を順に含むことができる。銅/ポリエステル積層板もまた、本発明によって提供され、それは、少なくとも1層の銅層、少なくとも1層の熱硬化性層若しくは紫外線硬化性層又は硬化接着層、及び少なくとも1層の二軸配向され且つヒートセットされたポリエステル層を順に含む。銅層は、典型的には約17〜140ミクロン、好ましくは約30〜70ミクロンの厚さを有する金属銅箔からなる。銅箔は、鍛造され又は圧延され又は電着された銅箔であることができる。熱硬化性接着剤層は、アクリル系、難燃性(FR)アクリル系、ブチラール−フェノール系、アクリル−エポキシ系、ポリエステル系、エポキシ−ポリエステル系、改質エポキシ系などのような種々の公知の接着剤組成物から選ばれることができる。これらの接着剤は、典型的には、熱の適用又は熱への暴露によって、約700〜3500キロパスカル(100〜500ポンド/平方インチ)の圧力下で約30分〜1時間、約120〜180℃の温度に加熱することによって硬化させる。硬化接着剤層の厚さは典型的には約15〜100ミクロンの範囲である。これらの積層板構造を含む熱可塑性製品の製造方法も提供され、この方法は前記積層板構造に熱及び圧力を適用することを含んでなる。本発明の積層板構造は、公知の又は本明細書中に記載した任意の使用法で使用できるが、フレキシブル電子回路基板に使用するのが好ましい。本発明の積層板は、例えば、図1〜3中に図示したような単層電子回路、2層電子回路及び/又は多層電子回路に使用できる。
【0041】
図示される通り、熱可塑性製品はまた、前記の複数の積層板又は「サンドイッチ」に熱及び圧力を加えることによって得ることもできる。多層積層板の実施態様及び/又は「サンドイッチ」構造においては、前述のような接着剤層も積層板の間に適用できる。
【0042】
図1〜3において、本発明のポリエステルフィルムは、それがポリエステル基体、ポリエステルカバー又は別の用語で称されるかに関わらず、フレキシブル電子回路の外層及び/又は中間層として使用できる。本発明を、図面中に示した用語「基体」(substrate,substrat)又は「カバー」によって限定するつもりはない。
【0043】
フィルムサンプルの線熱膨張率(CTE)は、IPC−TM−650 2.4.41.3に従って、Rheometrics RSA II動的機械的熱分析(DMTA)機器を用いて測定した。これを以下の実施例によって更に例示する。
【実施例】
【0044】
本発明を、その好ましい実施態様の以下の実施例によって更に説明するが、これらの実施例は単に説明にために記載するのであって、特に断らない限り、本発明の範囲を限定することを目的とするものではないことを理解されたい。特に断らない限り、全ての重量百分率はポリマー組成物の総重量に基づき、全ての分子量は重量平均分子量である。また、全ての百分率は特に断らない限り、重量基準である。
【0045】
本発明に係るポリエステルフィルム及びその製造について、以下の実施例によって更に説明する。本発明によって定義される耐はんだ性はIPC−TM−650 2.4.13.1に従って、はんだ浴温度を260℃に設定して測定する。以下の実施例中で試験した試験片は積層板にせず、エッチング加工せず、裸、即ち、被覆も積層もしなかった。フィルムの収縮は、MD(縦方向)の2点及びTD(横方向)の2点で5.1cm×5.1cm(2×2インチ)のフィルムサンプルの寸法を測定することによって求めた。次いで、本明細書中に記載したようにして、フィルムサンプルを、260℃に予熱したはんだ浴中に10秒間浸漬する。フィルムを膨れ及びしわに関して観察する。次いで、寸法を再び測定する。浸漬後の各寸法を、原寸から差し引き、次にそれを原寸で割って、収縮%を得る。4つの収縮%値(MDについて2つ及びTDについて2つ)を一緒に平均して、総収縮%を得る。
【0046】
本発明によって定義されるガラス転移温度及び融解温度は、ASTM D3418に従って示差走査熱量測定法(DSC)を用いて測定する。15.0mgの各サンプルをアルミニウムパン中にシールし、20℃/分の速度で290℃まで加熱する。次いで、サンプルを約320℃/分の速度でそのガラス転移以下に冷却して、非晶質の試験片を生成する。融解温度、Tmは、走査の間に観察される吸熱量のピークに対応する。本発明によって定義されるフィルムサンプルの線熱膨張率(CTE)は、IPC−TM−650 2.4.41.3.に従ってRheometrics RSA II動的機械的熱分析(DMTA)機器を用いて測定した。DMTA計器のクランプ中に公称寸法が幅2mm×長さ22mmのフィルム試験片を取り付ける操作を行った。DMTA力は、2gの一定値に設定した。サンプルを−10℃に冷却し、150℃に加熱し、−10℃に再冷却し、次いで150℃に再加熱した。これらは全て、10℃/分の加熱/冷却速度で行った。温度の関数としてのサンプルの長さを、第2加熱走査の間に測定した。サンプルの長さ−温度勾配を、25〜90℃及び120〜150℃の温度範囲において求めた。2種の校正を行った。1つはDMTAのベースラインを決定するために、もう1つは異なる基準に対する機械の反応を校正するためであった。公知のCTE値を有する銅、アルミニウム及びいくつかの非晶質プラスチックを、校正基準として用いた。次に、この校正を用いて、25〜90℃及び120〜150℃の温度範囲において測定した長さ−温度勾配から未知サンプルのCTEを計算した。
【0047】
実施例1及び比較例C1〜C3
実施例1及び比較例C1〜C3は、PCTから製造されたフィルムの収縮に対するヒートセット温度の影響を示す。PCTポリエステル(I.V. 0.74、Tm 293℃,Tg 94℃)のペレットを、溶融相重縮合法で100ppmのTi触媒(チタンイソブトキシドとして)を用いて調製する。ペレットを135℃において6時間乾燥させ、続いて、ポリエステル・バリヤ型スクリューを装着したDavis Standard 5.1cm(2.0インチ)押出機で厚さ2.032mm(8mil)のシート材料に押出する。融解温度及びダイ温度は、293℃に保持する。このシートを、ロール温度を66℃(150OF)に設定した二本ロール・ダウンスタック上にキャストする。次いで、フィルムを、T.M.Longフィルム延伸機上で、表Iに示した条件において両軸を同時に且つ同じ延伸比及び35.56cm(14インチ)/秒の同じ速度で延伸して、二軸配向させた。次に、フィルムをアルミニウムフレーム中にクランプし、表Iに示した設定温度及び時間でボックスオーブン中に挿入して、それらをヒートセットする。2枚のフィルムをフレーム中に入れ、2枚のフィルムの間に熱電対を挟んで、実際フィルム温度を測定した(表Iに示す)。設定温度は実際フィルム温度よりも高いこと、そして示したヒートセット時間は、サンプルを実際フィルム温度まで加熱するのに必要な時間(約30秒)を含むことに注意されたい。ヒートセット後、フィルムを、260℃に予熱したはんだ浴中に10秒間浸漬し、生じた収縮%を表Iに示す。例C−1〜C−3は種々の延伸条件下で生成した比較例である。これらは、260℃の実際フィルム温度より低温におけるヒートセットは、260℃において高い収縮レベルを有するフィルムを生成することを示している。はんだ浴への浸漬の間に比較フィルムには膨れが形成された。この高い収縮度は、電気コネクタ又はフレキシブル回路フィルムの製造する場合には、本発明の積層板の製造には許容され得ない。比較例C−1のフィルムは、WO/06125の実施例3に記載されたのと同一の条件下で延伸及びヒートセットすることに注意されたい。実施例1は、許容され得る収縮率を有するフィルムを生成する温度においてヒートセットされた、本発明に係るフィルムの例である。表Iにおいて、延伸比は、縦横両方向における延伸を示し、温度は℃で示し、時間は秒で示し、収縮%は、260℃に予熱されたはんだ浴中に10秒間浸漬された後にフィルムのサンプルが収縮した百分率を示し、CTE値はppm/℃であり、フィルム厚はミクロンで示す。
【0048】
【表1】

【0049】
実施例2〜4並びに比較例C−4及びC−5
実施例2〜4は、本発明に係るポリエステルフィルムの例であり、比較例C−4及びC−5と共に、PCTから製造されたフィルムの収縮及びCTEに対する延伸比及び延伸温度の影響を示す。PCTポリエステル(I.V. 0.74,Tm 293℃,Tg 94℃)のペレットを、前記例に記載したようにしてフィルムに製造する。次いで、フィルムを、T.M.Longフィルム延伸機上で、表IIに示した条件において両軸を同時に且つ同じ延伸比及び35.56cm(14インチ)/秒の同じ速度で延伸して、二軸配向させた。次に、フィルムをアルミニウムフレーム中にクランプし、表IIに示したヒートセット・ゾーンの設定温度及び時間でボックスオーブン中に挿入して、それらをヒートセットする。2枚のフィルムをフレーム中に入れ、2枚のフィルムの間に熱電対を挟んで、実際フィルム温度を測定した(表IIに示す)。設定温度は実際フィルム温度よりも高いこと、及び示したヒートセット時間は、サンプルを実際フィルム温度まで加熱するのに必要な時間(約30秒)を含むことに注意されたい。ヒートセットしたフィルムを、260℃に予熱したはんだ浴中に10秒間浸漬し、生じた収縮%を表IIに示す。実施例1は参考のためにこの表IIに含める。実施例1〜4は全て、許容され得る収縮及びCTEを有する。これらは、式(27*R)−(1.3*(T−Tg))≧27[式中、Tは縦方向の延伸温度及び横方向の延伸温度の平均(摂氏度)であり、Tgはポリマーフィルムのガラス転移温度(摂氏度)であり、Rは縦方向及び横方向の延伸比の平均である]を満足させる条件下で延伸した。これらのフィルムは、260℃又はそれ以上の実際フィルム温度においてヒートセットした。比較例C−4及びC−5は、式(27*R)−(1.3*(T−Tg))≧27を満足させない条件下で延伸したものであり、許容され得ないCTE値を有する。比較例C−5のフィルムはWO/06125号公報の実施例2に記載されたのと同一の条件下で延伸及びヒートセットすることに注意されたい。WO/06125号公報は、「フィルムを2.5×を超えて延伸すると、最大限のヒートセット(時間又は温度)ですら、延伸プロセスの間に生じた内部応力をアニールすることができない点で、PCTはPETとは異なる挙動をする」と明記しているので、実施例3及び4が許容され得るものであったことは注目に値する。表IIにおいて、延伸比は、縦横両方向における延伸を示し、温度は℃で示し、時間は秒で示し、収縮%は、260℃に予熱されたはんだ浴中に10秒間浸漬された後にフィルムのサンプルが収縮した百分率を示し、CTE値はppm/℃であり、フィルム厚はミクロンで示す。
【0050】
【表2】

【0051】
実施例5〜8及び比較例C−6〜C−9
実施例5〜8及び比較例C−6〜C−9は、連続延伸及びテンター法を用いてPCTから製造されたフィルムの収縮及びCTEに対するヒートセット温度及び時間の影響を示す。PCTポリエステル(I.V. 0.74,Tm 293℃,Tg 94℃)のペレットを、溶融相重縮合法で100ppmのTi触媒(チタンイソブトキシドとして)を用いて製造する。ペレットを120℃において16時間乾燥させ、続いて、ポリエステル・バリヤ型スクリューを装着したDavis Standard 6.4cm(2.5インチ)押出機で厚さ0.460mm(18mil)のシート材料に押出する。融解温度及びダイ温度は、300℃に保持する。このシートを、ロール温度を上から下へそれぞれ、49℃/57℃/66℃(120OF/135OF/150OF)に設定した三本ロール・ダウンスタック上にキャストする。次いで、フィルムを、市販テンター装置上で延伸及び幅出しを行った。縦方向を表IIIに示した比及び温度でロールスタック上で延伸し、続いて、横方向を、表IIIに示した条件下でテンターフレーム中のクリップの間で延伸した。フィルムは直ちに、第1ヒートセット処理又はパスを行うアニールゾーンに移す。このアニールゾーンは、表IIIに示したヒートセット・ゾーンの設定温度及び時間に設定する。アニールゾーン中の実際フィルム温度は、フィルム上に示温テープを乗せることによって得た。このテープは一連の公知温度において色を変え、フィルムに生じる最大温度を示す。実施例7並びに比較例C−8及びC−9においては、フィルムをアルミニウムフレーム中にクランプし、次いで表IIIに示したヒートセット・ゾーン設定温度及び時間でボックスオーブン中に挿入することによって、第2ヒートセット処理を行う。これらの例に関しては、2枚のフィルムをフレーム中に入れ、2枚のフィルムの間に熱電対を挟んで、実際フィルム温度を測定した。実施例8においては、表IIIに示したヒートセット・ゾーン設定温度及び時間でテンターフレームのアニールゾーンにフィルムをもう一回通すことによって、第2ヒートセット処理を行う。示した実際フィルム温度は、第1及び第2ヒートセットの組合せにおいて到達した最高温度である。設定温度は実際フィルム温度よりも高いこと、及び示したヒートセット時間は、サンプルを実際フィルム温度まで加熱するのに必要な時間を含むことに注意されたい。フィルムの加熱に時間を要するため、示した実際フィルム温度は設定温度及び時間の両者の関数である。ヒートセットされたフィルムを、260℃に予熱したはんだ浴中に10秒間浸漬し、生じた収縮%を表IIIに示す。比較例C−6〜C−9は、260℃未満の実際フィルム温度は260℃においてどの程度、満足のいく収縮を生じないかを示す。実施例5〜8のフィルムは許容され得る収縮及びCTEを有する。
表IIIにおいて、MD延伸比は縦方向の延伸を示し、TD延伸比は横方向の延伸を示し、温度は℃で示し、時間は秒で示し、n/aは第2ヒートセット処理を行わなかったことを意味し、収縮%は、260℃に予熱されたはんだ浴中に10秒間浸漬された後にフィルムのサンプルが収縮した百分率を示し、CTE値はppm/℃であり、フィルム厚はミクロンで示す。
【0052】
【表3】

【0053】
本発明を、特にその好ましい実施態様に関して詳述したが、本発明の精神及び範囲内において変更及び修正が可能なことを理解されたい。
以下に、本発明及びその関連態様を記載する。
態様1.(1)少なくとも90モル%のテレフタル酸残基、ナフタレンジカルボン酸残基又はこれらの組合せを含む二酸残基;及び
(2)少なくとも90モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基
を含んでなる、ポリエステルから製造される二軸配向ポリエステルフィルムであって、
前記ポリエステルのフィルムが、90〜110℃の延伸温度で、縦方向(MD)に2.5X〜3Xの比で、そして横方向(TD)に2.5X〜3Xの比で延伸され、且つ
続いて延伸されたフィルムが260℃〜Tm[Tmは示差走査熱量測定法(DSC)によって測定したポリエステルの融点である]の実際のフィルム温度において、前記延伸フィルムの寸法を保持しながら、ヒートセットされているフィルム。
態様2.前記1,4−シクロヘキサンジメタノール残基が60〜100%の範囲のトランス異性体含量を有する態様1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
態様3.前記1,4−シクロヘキサンジメタノール残基が60〜80%の範囲のトランス異性体含量を有する態様1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
態様4.前記二酸残基が少なくとも90モル%のテレフタル酸残基を含む態様1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
態様5.前記ポリエステルが、少なくとも270℃の融点を及びASTM法D2857−95に従ってフェノール60重量%及びテトラクロロエタン40重量%からなる溶媒100mL当たり0.50gのポリマーを用いて25℃において測定した場合に、0.4〜1.2のインヘレント粘度を有し、そして
(1)少なくとも97モル%のテレフタル酸残基、ナフタレンジカルボン酸残基又はそれらの組合せを含む二酸残基;及び
(2)少なくとも97モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基
を含む態様1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
態様6.前記ポリエステルが0.5〜1.1のインヘレント粘度を有する態様5に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
態様7.前記ポリエステルが270〜330℃の融点及び0.5〜1.1のインヘレント粘度を有する態様5に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
態様8.前記1,4−シクロヘキサンジメタノール残基が60〜100%の範囲のトランス異性体含量を有する態様5に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
態様9.前記1,4−シクロヘキサンジメタノール残基が60〜80%の範囲のトランス異性体含量を有する態様5に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
態様10.前記二酸残基が少なくとも97モル%のテレフタル酸残基を含む態様5に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
態様11.前記延伸フィルムが、260℃〜Tmの実際フィルム温度において1〜120秒間、前記延伸フィルムの寸法を保持しながら、ヒートセットされている態様1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
態様12.前記ポリエステルフィルムが縦方向及び横方向に順次的に延伸され、且つ前記延伸フィルムが、260℃〜Tmの実際のフィルム温度において1〜120秒間、前記延伸フィルムの寸法を保持しながら、ヒートセットされている態様1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
態様13.前記ポリエステルフィルムが、縦方向及び横方向に同時に延伸され、且つ前記延伸フィルムが、260℃〜Tmの実際のフィルム温度において1〜120秒間、前記延伸フィルムの寸法を保持しながら、ヒートセットされている態様1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
態様14.(1)少なくとも90モル%のテレフタル酸残基、ナフタレンジカルボン酸残基又はそれらの組合せを含む二酸残基;及び
(2)少なくとも90モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基
を含んでなるポリエステルから製造され、前記ポリエステルフィルムが90〜110℃の延伸温度で、縦方向(MD)に2.5X〜3Xの比で、そして横方向(TD)に2.5X〜3Xの比で延伸され、
続いて延伸フィルムが260℃〜Tm[Tmは示差走査熱量測定法(DSC)によって測定したポリマーの融点である]の実際のフィルム温度において、前記延伸フィルムの寸法を保持しながら、ヒートセットされており、そして
前記二軸配向ヒートセットポリエステルフィルムが、260℃に予熱されたはんだ浴中に10秒間浸漬した場合の収縮が3%以下であり、且つ120〜150℃において測定した場合に、10〜85ppm/℃の熱膨張率値を示し、そして25〜90℃において測定した場合に、10〜42ppm/℃の熱膨張率値を示す二軸配向ポリエステルフィルム。
態様15.前記ポリエステルが、少なくとも270℃の融点を示し、且つASTM法D2857−95に従ってフェノール60重量%及びテトラクロロエタン40重量%からなる溶媒100mL当たり0.50gのポリマーを用いて25℃において測定した場合に、0.4〜1.2のインヘレント粘度を有し、そして
(1)少なくとも97モル%のテレフタル酸残基、ナフタレンジカルボン酸残基又はそれらの組合せを含む二酸残基;及び
(2)少なくとも97モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基
を含む態様14に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
態様16.前記ポリエステルフィルムが縦方向及び横方向に順次的に延伸され、且つ延伸フィルムが、260℃〜Tmの実際のフィルム温度において1〜120秒間、前記延伸フィルムの寸法を保持しながら、ヒートセットされている態様14に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
態様17.前記ポリエステルフィルムが縦方向及び横方向において同時に延伸され、且つ前記延伸フィルムが260℃〜Tmの実際のフィルム温度において1〜120秒間、前記延伸フィルムの寸法を保持しながら、ヒートセットされている態様14に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
態様18.1枚又はそれ以上の積層板を含む熱可塑性製品であって、前記積層板の少なくとも1枚が、
I.熱硬化性接着剤;並びに
II.(1)少なくとも90モル%のテレフタル酸残基、ナフタレンジカルボン酸残基又はそれらの組合せを含む二酸残基;及び
(2)少なくとも90モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基
をこの順に含んでなり、
前記ポリエステルのフィルムが、90〜110℃の延伸温度で、縦方向(MD)に2.5X〜3Xの比で、そして横方向(TD)に2.5X〜3Xの比で延伸され、且つ
続いて延伸フィルムが260℃〜Tm[Tmは示差走査熱量測定法(DSC)によって測定したポリマーの融点である]の実際のフィルム温度において、前記延伸フィルムの寸法を保持しながら、ヒートセットされている熱可塑性製品。
態様19.前記少なくとも一枚の積層板が
I.銅層;
II.前記熱硬化性接着剤;並びに
III.前記二軸配向され且つヒートセットされたポリエステルフィルムを順に含んでなる熱可塑性製品。
態様20.前記銅層が17〜140ミクロンの厚さを有し;そして前記ポリエステルが少なくとも270℃の融点並びにASTM法D2857−95に従ってフェノール60重量%及びテトラクロロエタン40重量%からなる溶媒100mL当たりポリマー0.50gを用いて25℃において測定した場合に、0.4〜1.2のインヘレント粘度を有し、そして
(1)少なくとも97モル%のテレフタル酸残基、ナフタレンジカルボン酸残基又はそれらの組合せを含む二酸残基;及び
(2)少なくとも97モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基
を含む態様19に記載の熱可塑性製品。
態様21.1枚又はそれ以上の積層板を含んでなり、前記積層板の少なくとも1枚が、
I.少なくとも1種の熱硬化性接着剤;並びに
II.(1)少なくとも90モル%のテレフタル酸残基、ナフタレンジカルボン酸残基又はそれらの組合せを含む二酸残基;及び
(2)少なくとも90モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基
を含んでなるポリエステルから製造された二軸配向され且つヒートセットされたポリエステルフィルムを順に含んでなり、
前記ポリエステルが90〜110℃の延伸温度で、縦方向(MD)に2.5X〜3Xの比で、そして横方向(TD)に2.5X〜3Xの比で延伸され、そして
前記延伸フィルムが続いて260℃〜Tmの実際のフィルム温度において、前記延伸フィルムの寸法を保持しながら、ヒートセットされ;そして
二軸延伸され且つヒートセットされた前記フィルムが、260℃に予熱されたはんだ浴中に10秒間浸漬した場合の収縮が3%以下であり、且つ120〜150℃において測定した場合に、10〜85ppm/℃の熱膨張率値を示し、且つ25〜90℃において測定した場合に、10〜42ppm/℃の熱膨張率値を示す熱可塑性製品。
態様22.少なくとも1枚の前記積層板が、
I.銅層;
II.前記熱硬化性接着剤;及び
III.前記二軸配向され且つヒートセットされたポリエステルフィルム
を順に含む態様21に記載の熱可塑性製品。
態様23.前記銅層が17〜140ミクロンの厚さを有し、そして前記ポリエステルが少なくとも270℃の融点を示し、且つASTM法D2857−95に従ってフェノール60重量%及びテトラクロロエタン40重量%からなる溶媒100mL当たり0.50gのポリマーを用いて25℃において測定した場合に、0.4〜1.2のインヘレント粘度を有し、且つ
(1)少なくとも97モル%のテレフタル酸残基、ナフタレンジカルボン酸残基又はそれらの組合せを含む二酸残基;及び
(2)少なくとも97モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基
を含んでなる態様22に記載の熱可塑性製品。
態様24.1枚又はそれ以上の積層板を含む熱可塑性製品の製造方法であって、
前記積層板の少なくとも1枚が、
(a)銅層;
(b)熱硬化性接着剤;並びに
(c)(1)少なくとも90モル%のテレフタル酸残基、ナフタレンジカルボン酸残基又はそれらの組合せを含む二酸残基;及び
(2)少なくとも90モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基
を含んでなるポリエステルから製造される、二軸配向され且つヒートセットされたポリエステルフィルムであって、
前記ポリエステルのフィルムが90〜110℃の延伸温度で、縦方向(MD)に2.5X〜3Xの比で、そして横方向(TD)に2.5X〜3Xの比で延伸され、且つ続いて延伸フィルムが260℃〜Tm[Tmは示差走査熱量測定法(DSC)によって測定したポリエステルの融点である]の実際のフィルム温度において、前記延伸フィルムの寸法を保持しながら、ヒートセットされているフィルム
を順に含んでなり、
120〜180℃の温度において圧力のかかった状態で、前記熱硬化性接着剤を硬化させるのに充分な時間、前記積層板に熱を加える熱可塑性製品の製造方法。
態様25.(1)少なくとも90モル%のテレフタル酸残基、ナフタレンジカルボン酸残基又はそれらの組合せを含む二酸残基;及び
(2)少なくとも90モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基
を含んでなるポリエステルから製造される少なくとも1層の二軸配向ポリエステルフィルムを含んでなるフレキシブル電子回路基板であって、
前記ポリエステルのフィルムが90〜110℃の延伸温度で、縦方向(MD)に2.5X〜3Xの比で、そして横方向(TD)に2.5X〜3Xの比で延伸され、且つ
延伸フィルムが260℃〜Tm[Tmは示差走査熱量測定法(DSC)によって測定したポリエステルの融点である]の実際のフィルム温度において、前記延伸フィルムの寸法を保持しながら、ヒートセットされているフレキシブル電子回路基板。
態様26.前記ポリエステルが少なくとも270℃の融点を有し且つASTM法D2857−95に従ってフェノール60重量%及びテトラクロロエタン40重量%からなる溶媒100mL当たりポリマー0.50gを用いて25℃において測定した場合に、0.4〜1.2のインヘレント粘度を有し、そして
(1)少なくとも97モル%のテレフタル酸残基、ナフタレンジカルボン酸残基又はそれらの組合せを含む二酸残基;及び
(2)少なくとも97モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基
を含む、態様25に記載のフレキシブル電子回路基板。
態様27.1枚又はそれ以上の積層板を含んでなり、前記積層板少なくとも1枚が、
I.銅層;
II.熱硬化性接着剤;並びに
III.前記二軸配向ヒートセットポリエステルフィルム
を順に含んでなる態様25に記載のフレキシブル電子回路基板。
態様28.(1)少なくとも90モル%のテレフタル酸残基、ナフタレンジカルボン酸残基又はそれらの組合せを含む二酸残基;及び
(2)少なくとも90モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基
を含んでなるポリエステルから製造される少なくとも一つの二軸配向ポリエステルフィルムを含んでなり、
前記ポリエステルフィルムが90〜110℃の延伸温度で、縦方向(MD)に2.5X〜3Xの比で、そして横方向(TD)に2.5X〜3Xの比で延伸され、
前記延伸フィルムが、260℃〜Tm[Tmは示差走査熱量測定法(DSC)によって測定したポリエステルの融点である]の実際フィルム温度において1〜120秒間、前記延伸フィルムの寸法を保持しながら、ヒートセットされており、そして
二軸延伸され且つヒートセットされた前記フィルムが、260℃に予熱されたはんだ浴中に10秒間浸漬した場合の収縮が3%以下であり、且つ120〜150℃において測定した場合に、10〜85ppm/℃の熱膨張率値を示し、且つ25〜90℃において測定した場合に、10〜42ppm/℃の熱膨張率値を示すフレキシブル電子回路基板。
態様29.前記ポリエステルが少なくとも270℃の融点を示し、かつASTM法D2857−95に従ってフェノール60重量%及びテトラクロロエタン40重量%からなる溶媒100mL当たり0.50gのポリマーを用いて25℃において測定した場合に、0.4〜1.2のインヘレント粘度を有し、そして
(1)少なくとも97モル%のテレフタル酸残基、ナフタレンジカルボン酸残基又はそれらの組合せを含む二酸残基;及び
(2)少なくとも97モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基
を含む態様28に記載のフレキシブル電子回路基板。
態様30.1枚又はそれ以上の積層板を含んでなり、前記積層板少なくとも1枚が、
I.銅層;
II.熱硬化性接着剤;並びに
III.前記二軸延伸ヒートセットポリエステルフィルム
を順に含む態様28に記載のフレキシブル電子回路基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)少なくとも90モル%のテレフタル酸残基、ナフタレンジカルボン酸残基又はこれらの組合せを含む二酸残基;及び
(2)少なくとも90モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基
を含んでなる(ここで二酸残基は合計100モル%でジオール残基は合計100モル%である)、ポリエステルから製造される二軸配向ポリエステルフィルムであって、
前記ポリエステルのフィルムが、90〜110℃の延伸温度で、縦方向に2.5X〜3Xの比で、そして横方向に2.5X〜3Xの比で延伸され、且つ
続いて延伸されたフィルムが260℃〜Tm[Tmは示差走査熱量測定法によって測定したポリエステルの融点である]の実際のフィルム温度において、前記延伸フィルムの寸法を保持しながら、1〜120秒間ヒートセットされているフィルム。
【請求項2】
前記1,4−シクロヘキサンジメタノール残基が60〜100%の範囲のトランス異性体含量を有する請求項1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記1,4−シクロヘキサンジメタノール残基が60〜80%の範囲のトランス異性体含量を有する請求項1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記二酸残基が少なくとも90モル%のテレフタル酸残基を含む請求項1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項5】
前記ポリエステルが、少なくとも270℃の融点を及びASTM法D2857−95に従ってフェノール60重量%及びテトラクロロエタン40重量%からなる溶媒100mL当たり0.50gのポリマーを用いて25℃において測定した場合に、0.4〜1.2のインヘレント粘度を有し、そして
(1)少なくとも97モル%のテレフタル酸残基、ナフタレンジカルボン酸残基又はそれらの組合せを含む二酸残基;及び
(2)少なくとも97モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基
を含む請求項1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項6】
前記ポリエステルが0.5〜1.1のインヘレント粘度を有する請求項5に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項7】
前記ポリエステルが270〜330℃の融点及び0.5〜1.1のインヘレント粘度を有する請求項5に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項8】
前記1,4−シクロヘキサンジメタノール残基が60〜100%の範囲のトランス異性体含量を有する請求項5に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項9】
前記1,4−シクロヘキサンジメタノール残基が60〜80%の範囲のトランス異性体含量を有する請求項5に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項10】
前記二酸残基が少なくとも97モル%のテレフタル酸残基を含む請求項5に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項11】
前記ポリエステルフィルムが縦方向及び横方向に順次的に延伸され、且つ前記延伸フィルムが、260℃〜Tmの実際のフィルム温度において1〜120秒間、前記延伸フィルムの寸法を保持しながら、ヒートセットされている請求項1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項12】
前記二軸配向ヒートセットポリエステルフィルムが、260℃に予熱されたはんだ浴中に10秒間浸漬した場合の収縮が3%以下であり、且つ120〜150℃において測定した場合に、10〜85ppm/℃の熱膨張率値を示し、そして25〜90℃において測定した場合に、10〜42ppm/℃の熱膨張率値を示す請求項1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項13】
前記ポリエステルが、少なくとも270℃の融点を示し、且つASTM法D2857−95に従ってフェノール60重量%及びテトラクロロエタン40重量%からなる溶媒100mL当たり0.50gのポリマーを用いて25℃において測定した場合に、0.4〜1.2のインヘレント粘度を有し、そして
(1)少なくとも97モル%のテレフタル酸残基、ナフタレンジカルボン酸残基又はそれらの組合せを含む二酸残基;及び
(2)少なくとも97モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基
を含む請求項12に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項14】
前記ポリエステルフィルムが縦方向及び横方向に順次的に延伸され、且つ延伸フィルムが、260℃〜Tmの実際のフィルム温度において1〜120秒間、前記延伸フィルムの寸法を保持しながら、ヒートセットされている請求項12に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項15】
前記ポリエステルフィルムが縦方向及び横方向において同時に延伸され、且つ前記延伸フィルムが260℃〜Tmの実際のフィルム温度において1〜120秒間、前記延伸フィルムの寸法を保持しながら、ヒートセットされている請求項12に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項16】
1枚又はそれ以上の積層板を含む熱可塑性製品であって、前記積層板の少なくとも1枚が、
I.熱硬化性接着剤;並びに
II.(1)少なくとも90モル%のテレフタル酸残基、ナフタレンジカルボン酸残基又はそれらの組合せを含む二酸残基;及び
(2)少なくとも90モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基
をこの順に含んでなり、
前記ポリエステルのフィルムが、90〜110℃の延伸温度で、縦方向に2.5X〜3Xの比で、そして横方向に2.5X〜3Xの比で延伸され、且つ
続いて延伸フィルムが260℃〜Tm[Tmは示差走査熱量測定法(DSC)によって測定したポリマーの融点である]の実際のフィルム温度において、前記延伸フィルムの寸法を保持しながら、1〜120秒間ヒートセットされている、熱及び圧力を1種又はそれ以上の積層板に適用することによって得られる熱可塑性製品。
【請求項17】
前記少なくとも1枚の積層板が
I.銅層;
II.前記熱硬化性接着剤;並びに
III.前記二軸配向され且つヒートセットされたポリエステルフィルムを順に含んでなる請求項16に記載の熱可塑性製品。
【請求項18】
前記銅層が17〜140ミクロンの厚さを有し;そして前記ポリエステルが少なくとも270℃の融点並びにASTM法D2857−95に従ってフェノール60重量%及びテトラクロロエタン40重量%からなる溶媒100mL当たりポリマー0.50gを用いて25℃において測定した場合に、0.4〜1.2のインヘレント粘度を有し、そして
(1)少なくとも97モル%のテレフタル酸残基、ナフタレンジカルボン酸残基又はそれらの組合せを含む二酸残基;及び
(2)少なくとも97モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基
を含む請求項17に記載の熱可塑性製品。
【請求項19】
前記二軸延伸され且つヒートセットされた前記フィルムが、260℃に予熱されたはんだ浴中に10秒間浸漬した場合の収縮が3%以下であり、且つ120〜150℃において測定した場合に、10〜85ppm/℃の熱膨張率値を示し、且つ25〜90℃において測定した場合に、10〜42ppm/℃の熱膨張率値を示す請求項16に記載の熱可塑性製品。
【請求項20】
前記少なくとも1枚の積層板が、
I.銅層;
II.前記熱硬化性接着剤;及び
III.前記二軸配向され且つヒートセットされたポリエステルフィルム
をこの順に含む請求項19に記載の熱可塑性製品。
【請求項21】
前記銅層が17〜140ミクロンの厚さを有し、そして前記ポリエステルが少なくとも270℃の融点を示し、且つASTM法D2857−95に従ってフェノール60重量%及びテトラクロロエタン40重量%からなる溶媒100mL当たり0.50gのポリマーを用いて25℃において測定した場合に、0.4〜1.2のインヘレント粘度を有し、且つ
(1)少なくとも97モル%のテレフタル酸残基、ナフタレンジカルボン酸残基又はそれらの組合せを含む二酸残基;及び
(2)少なくとも97モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基
を含んでなる請求項20に記載の熱可塑性製品。
【請求項22】
1枚又はそれ以上の積層板に熱及び圧力を適用し、熱可塑性製品の製造方法であって、
前記積層板の少なくとも1枚が、
(a)銅層;
(b)熱硬化性接着剤;並びに
(c)(1)少なくとも90モル%のテレフタル酸残基、ナフタレンジカルボン酸残基又はそれらの組合せを含む二酸残基;及び
(2)少なくとも90モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基
を含んでなる(ここで二酸残基は合計100モル%でジオール残基は合計100モル%である)ポリエステルから製造される、二軸配向され且つヒートセットされたポリエステルフィルムをこの順に含んでなり、
前記ポリエステルのフィルムが90〜110℃の延伸温度で、縦方向に2.5X〜3Xの比で、そして横方向に2.5X〜3Xの比で延伸され、且つ続いて延伸フィルムが260℃〜Tm[Tmは示差走査熱量測定法によって測定したポリエステルの融点である]の実際のフィルム温度において、前記延伸フィルムの寸法を保持しながら、1〜120秒間ヒートセットされているフィルム
を含み、
120〜180℃の温度において圧力のかかった状態で、前記熱硬化性接着剤を硬化させるのに充分な時間、前記積層板に熱を加える熱可塑性製品の製造方法。
【請求項23】
(1)少なくとも90モル%のテレフタル酸残基、ナフタレンジカルボン酸残基又はそれらの組合せを含む二酸残基;及び
(2)少なくとも90モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基
を含んでなるポリエステル(ここで二酸残基は合計100モル%でジオール残基は合計100モル%である)から製造される少なくとも1層の二軸配向ポリエステルフィルムを含んでなるフレキシブル電子回路基板であって、
前記ポリエステルのフィルムが90〜110℃の延伸温度で、縦方向に2.5X〜3Xの比で、そして横方向に2.5X〜3Xの比で延伸され、且つ
延伸フィルムが260℃〜Tm[Tmは示差走査熱量測定法によって測定したポリエステルの融点である]の実際のフィルム温度において、前記延伸フィルムの寸法を保持しながら、1〜120秒間ヒートセットされているフレキシブル電子回路基板。
【請求項24】
前記ポリエステルが少なくとも270℃の融点を有し且つASTM法D2857−95に従ってフェノール60重量%及びテトラクロロエタン40重量%からなる溶媒100mL当たりポリマー0.50gを用いて25℃において測定した場合に、0.4〜1.2のインヘレント粘度を有し、そして
(1)少なくとも97モル%のテレフタル酸残基、ナフタレンジカルボン酸残基又はそれらの組合せを含む二酸残基;及び
(2)少なくとも97モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基
を含む、請求項23に記載のフレキシブル電子回路基板。
【請求項25】
1枚又はそれ以上の積層板を含んでなり、前記積層板の少なくとも1枚が、
I.銅層;
II.熱硬化性接着剤;並びに
III.前記二軸配向ヒートセットポリエステルフィルム
をこの順に含んでなる請求項23に記載のフレキシブル電子回路基板。
【請求項26】
前記二軸延伸され且つヒートセットされた前記フィルムが、260℃に予熱されたはんだ浴中に10秒間浸漬した場合の収縮が3%以下であり、且つ120〜150℃において測定した場合に、10〜85ppm/℃の熱膨張率値を示し、且つ25〜90℃において測定した場合に、10〜42ppm/℃の熱膨張率値を示す請求項23に記載のフレキシブル電子回路基板。
【請求項27】
前記ポリエステルが少なくとも270℃の融点を示し、かつASTM法D2857−95に従ってフェノール60重量%及びテトラクロロエタン40重量%からなる溶媒100mL当たり0.50gのポリマーを用いて25℃において測定した場合に、0.4〜1.2のインヘレント粘度を有し、そして
(1)少なくとも97モル%のテレフタル酸残基、ナフタレンジカルボン酸残基又はそれらの組合せを含む二酸残基;及び
(2)少なくとも97モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を含むジオール残基
を含む請求項26に記載のフレキシブル電子回路基板。
【請求項28】
1枚又はそれ以上の積層板を含んでなり、前記積層板の少なくとも1枚が、
I.銅層;
II.熱硬化性接着剤;並びに
III.前記二軸延伸ヒートセットポリエステルフィルム
を順に含む請求項26に記載のフレキシブル電子回路基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−246485(P2012−246485A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−152284(P2012−152284)
【出願日】平成24年7月6日(2012.7.6)
【分割の表示】特願2004−517949(P2004−517949)の分割
【原出願日】平成15年6月26日(2003.6.26)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】