説明

二軸配向ポリエステルフィルム

【課題】特にフレキシブルデバイス用基材フィルムとして使用した際に、各種工程での寸法変化が小さくすることができ、カールが小さく加工適性の優れた基材フィルムとして好適な二軸配向ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】二軸配向ポリエステルフィルムは、少なくともポリエチレンテレフタレート(樹脂A)とポリエーテルイミド(樹脂B)からなる海島構造を有し、島部分の平均分散径が30〜500nmであり、フィルムの長手方向または幅方向の少なくとも一方向の熱膨張係数(50〜150℃)が0〜25ppm/℃のフィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱寸法安定性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムに関するものである。本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、フレキシブルデバイス用基材フィルムなど好適に用いることができる。本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、それらの中でも、特に有機ELディスプレイ、電子ペーパー、有機EL照明、有機太陽電池および色素増感型太陽電池の基材フィルムとして用いた際に、各種工程での寸法変化が小さく、カールが小さく加工適性の優れた基材フィルムを得ることができる。
【背景技術】
【0002】
近年、各種エレクトロデバイスは、軽量化・薄膜化や状の自由度などが求められる用途があり、フレキシブル化が注目されている。エレクトロデバイスのフレキシブル化に対しては、従来基材として用いられていたガラスに代わり、プラスチックフィルムが用いられているが、熱寸法安定性や表面性が大きな課題となっている。
【0003】
二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムは、その優れた熱特性、寸法安定性、機械特性、電気特性、耐熱性および表面特性を利用して、磁気記録材料、包装材料、電気絶縁材料、各種写真材料、グラフィックアート材料あるいは光学表示材料などの多くの用途の基材として広く使用されている。しかしながら、フレキシブルデバイス用の基材フィルムにはさらなる物性の向上が必要と考えられ、過去にもポリエステルフィルムの特性を高めるために、ポリエステルに他の熱可塑性樹脂をブレンドするなどの方法が検討されている。
【0004】
従来、ポリエステルとポリエステル以外の熱可塑性樹脂を混合した二軸配向ポリエステルフィルムについて、走行性と耐傷つき性に優れたフィルムが提案されている(特許文献1参照。)。しかしながら、この提案は、フィルム表面の耐傷つき性を改良する技術であり、本発明とは技術的思想を異にするものである。実際に同文献記載の技術では、熱寸法安定性を向上させることはできない。また、ポリエステル中にポリエステル以外の熱可塑性樹脂を混合する際に、本発明に示すような、フィルムの熱寸法安定性を向上させために重要となる混合方法や、具体的な製膜手法は同文献には開示されていない。
【0005】
また、ポリエステルとポリイミドおよびポリイミドとナノ相溶するポリマーとからなるフィルムにおいて、ポリイミドとナノ相溶するポリマーとして芳香族ポリエーテルケトンなどを用いて耐熱性や熱寸法安定性が向上したフィルムが提案されている(特許文献2参照。)。しかしながら、この提案では、ポリエステルに対してポリイミドやポリイミドとナノ相溶するポリマーの混合量が多く、延伸などにより効果的に分子鎖配向させるには十分ではないことがある。さらにこの提案では、未溶融物による異物がフィルム中に発生しやすくなり、表面が荒れやすいという課題がある。
【0006】
さらに、ポリエステル、ポリエーテルイミドおよび芳香族ポリアミドからなるポリエステルフィルムについて、強度や熱寸法安定性が向上したフィルムが提案されている(特許文献3参照。)。しかしながら、ポリエステル中にポリエステル以外の熱可塑性樹脂を混合する際に、本発明に示すような、フィルムの熱寸法安定性を向上させために重要となる混合方法や具体的な製膜手法は同特許文献には開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−323146号公報
【特許文献2】特開2004−123863号公報
【特許文献3】特開2000−336184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明の目的は、上記の問題を解決し、熱寸法安定性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムを得ることにあり、特に、フレキシブルデバイス用基材フィルムとして使用した際に各種工程での寸法変化が小さくすることができ、カールが小さく加工適性の優れた二軸配向ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成せんとするものであって、次の特徴を有するものである。
【0010】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、少なくともポリエチレンテレフタレート樹脂(樹脂A)と樹脂Bからなる海島構造を有する二軸配向フィルムであって、島部分の平均分散径が30〜500nmであり、かつフィルムの長手方向または幅方向の少なくとも一方向の熱膨張係数(50〜150℃)が0〜25ppm/℃の二軸配向ポリエステルフィルムである。
【0011】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの好ましい態様によれば、前記の長手方向または幅方向の少なくとも一方向の150℃の温度における熱収縮率は0〜3%である。
【0012】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの好ましい態様によれば、前記の樹脂Bのガラス転移温度(Tg)は100〜400℃であり、前記の樹脂Bのフィルム中の含有量は0.1〜10質量%である。
【0013】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの好ましい態様によれば、前記の島成分は樹脂Bである。
【0014】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの好ましい態様によれば、前記の樹脂Bは下記式(1)
【0015】
【化1】

【0016】
で示される構造を有するポリエーテルイミド、または当該式(1)で示される構造とスルホニル基成分を有するポリエーテルイミドである。
【0017】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの好ましい態様によれば、前記の少なくともポリエチレンテレフタレート(樹脂A)と樹脂Bと樹脂Cからなる二軸配向フィルムであって、前記樹脂Cは下記式(2)
【0018】
【化2】

【0019】
で示される構造を有するポリエーテルイミドである。
【0020】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの好ましい態様によれば、前記の二軸配向ポリエステルフィルムのフィルムの固有粘度(IV)は0.68〜1.4である。
【0021】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの好ましい態様によれば、前記の二軸配向ポリエステルフィルムの融点直下の微小融解ピーク(T−meta)は200〜250℃である。
【0022】
本発明の前記二軸配向ポリエステルフィルムは、フレキシブルデバイス基材用フィルムに好適に用いられる。
【0023】
本発明は、前記の少なくとも樹脂Aと樹脂Bを溶融混練して、下記条件を満たすマスターバッチを作製し、該マスターバッチとポリエチレンテレフタレート樹脂(樹脂A)とを混合し、溶融押出しして未延伸フィルムを作製し、その未延伸フィルムを長手方向と幅方向に二軸延伸し、引き続き熱処理を行うことを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法である。
樹脂A;30〜80質量%
樹脂B;20〜70質量%。
【0024】
本発明は、前記の少なくとも樹脂Aと樹脂Bと樹脂Cを溶融混練して、下記条件を満たすマスターバッチを作製し、該マスターバッチとポリエチレンテレフタレート樹脂(樹脂A)とを混合し、溶融押出しして未延伸フィルムを作製し、その未延伸フィルムを長手方向と幅方向に二軸延伸し、引き続き熱処理を行うことを特徴とする請求項1記載の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。
樹脂A;30〜80質量%
樹脂B+C;20〜70質量%
樹脂B/樹脂C(重量比);10/90〜50/50。
【0025】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法の好ましい態様によれば、前記のマスターバッチと樹脂Aとを混合し、溶融押出しして未延伸フィルムを作製し、その未延伸フィルムを長手方向に延伸し幅方向に延伸する二軸延伸を施すに際し、長手方向の延伸温度を横方向の延伸温度より高くして二軸延伸し、引き続き205〜255℃で熱処理を行い、その後0〜50℃の温度に冷却した後、160〜200℃の温度で1〜30秒間アニール処理することである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、熱寸法安定性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムを得ることができる。特にフレキシブルデバイス用基材フィルムとして使用した際に各種工程での寸法変化が小さくすることができ、カールが小さく加工適性の優れた二軸配向ポリエステルフィルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムが有する海島構造を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、特に優れた生産性、機械特性、熱特性、電気特性、表面特性および耐熱性を付与できるという観点から、結晶性のポリエステルのポリエチレンテレフタレート(樹脂A)(以下、PETということがある。)が主成分である必要がある。
【0029】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、海島構造を有する。海島構造とは、連続相(海成分)中に分散する分散相(島成分)を持つ構造である(例えば、高分子学会編ポリマーアロイ基礎と応用第2版(1993)のP.324〜325の記載を参照。)。図1は、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムが有する海島構造を例示する断面図で、具体的には、フィルムの長手方向に平行かつフィルム面に垂直な方向の断面図であり、ここでは連続相(海成分)1中に複数の分散相(島成分)2が分散する構造が示されている。
【0030】
図1の断面図は、本発明のおける海島構造を理解するためのものであり、後述する島成分(分散相)の平均分散径の測定方法と評価に記載の「(ア)長手方向に平行かつフィルム面に垂直な方向」における断面図である。後述の平均分散径の測定方法と評価では、(ア)、(イ)、(ウ)で示した3方向の断面を観察しているが、基本的にはいずれの断面でも図1と同じような断面が観察される。島成分の分散相は、ほぼ球形状を呈しているからである。
【0031】
本発明の海島構造とは、島部分の分散径が30nm以上の構造を指す。本発明の二軸配向ポリエステルフィルムが海島構造を有すると、島構造が延伸時に拘束点となり、長手方向および幅方向に高い配向を付与することができるため、熱寸法安定性を高めることが可能となる。さらに、製膜時の熱処理やその後のアニール処理での配向緩和を抑制することができ、熱膨張と熱収縮をともに抑制することができ、熱寸法安定性が向上しやすい。そのため、フレキシブルデバイス用基材フィルムとして使用すると各種工程での寸法変化が小さくすることができ、カールが小さく加工適性の優れた基材フィルムを得ることができる。
【0032】
上記のような効果をさらに高めるためには、ポリエステルフィルムの延伸の際、島部分を拘束点として機能させ、海部分の分子鎖配向を高める作用を発現させることが重要となる。このため、島部分の平均分散径は30〜500nmであることが重要である。
【0033】
島部分の平均分散径が分散径30nm未満の構造だけであると、拘束点として機能せず、フィルム延伸時にフィルム長手方向および/または幅方向の分子鎖配向を高めることができないことがある。そのため、二軸配向ポリエステルフィルムの熱寸法安定性が低下し、また、熱処理やアニール処理での配向緩和が起こりやすく工程適性なども悪化しやすい。
【0034】
例えば、海部分とは異なる樹脂が島部分を形成した海島構造において、島部分の平均分散径が小さくなることに伴い、島部分を形成する樹脂のガラス転移温度(以下、Tgということがある。)が、該樹脂が単体で存在する場合のTgに比べて低くなる傾向がある。島部分の平均分散径が30nm未満であると、島部分のTgが十分低くなり、該島部分が海部分に対して拘束点として機能しなくなる。
【0035】
一方、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの島部分の平均分散径が500nmよりも大きいと、フィルム製膜中に島部分に起因するフィルム破れが多発し生産性が低下する。また、延伸の際、フィルム表面が粗くなったりボイドが発生したりして、工程適性が低くなり、本発明の効果が得にくくなる。
【0036】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの島部分の平均分散径は、より好ましくは50〜350nmであり、さらに好ましくは70〜200nmである。
【0037】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、島部分が樹脂Bからなることが好ましく、樹脂Bは非晶性樹脂からなることが好ましい。島部分が非晶性樹脂であることにより、ポリエステルとの加工性が良好になると同時に、フィルムの表面を平滑にしやすくなる。ここで、非晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)などを用いて試料を測定した場合、ガラス転移温度だけが検出されて融点や融解ピークが検出されない特性を持つ樹脂をいう。
【0038】
本発明で用いられる樹脂Bのガラス転移温度は、100〜400℃であることが好ましい。樹脂Bのガラス転移温度は、より好ましくは100〜300℃である。ガラス転移温度が100〜400℃であることにより、フィルム中の島部分が延伸時や熱処理時の拘束点として機能しやすくなり、延伸工程における海部分の分子鎖配向を高めやすくなる。分子鎖配向が高まると、熱寸法安定性向上による本発明の効果を得やすくなる。さらに、本発明の二軸配向ポリエステルフィルム中の欠点が少なくなる効果がある。例えば、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを溶融製膜法で製造する場合、樹脂Bをポリエステルと同時に押出加工する際には、樹脂Bのガラス転移温度がポリエステルの加工温度に近いこととなるため、樹脂Bが未溶融や分散不良となることが少なくなり、フィルム中の欠点が減少する。
【0039】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムにおいては、好適には島部分を構成する樹脂Bが、ポリエーテルイミド(以下、PEIということがある。)、ポリイミド(以下、PIということがある。)、ポリエーテルスルホン(以下、PESということがある。)、ポリスルホン(以下、PSUということがある。)、ポリアミドイミド(以下、PAIということがある。)、ポリアリレート(以下、PARということがある。)、ポリカーボネート(以下、PCということがある。)およびポリフェニレンエーテル(以下、PPEということがある。)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでいることが好ましい。
【0040】
島部分を構成する樹脂Bが、PEI、PI、PES、PSU、PAI、PAR、PCおよびPPEからなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでいることにより、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムに優れた熱寸法安定性を付与することができる。
【0041】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムにおいては、島部分を構成する樹脂Bとして、特にTgが210℃以上である樹脂を用いることが好ましい。樹脂BのTgは、より好ましくは220℃以上であり、さらに好ましくは230℃以上である。樹脂Bの構成成分としてイミド基を含有することによりポリエステルとの混合性がよくなり、フィルム破れが低減したりボイドが低減したりしやすい。
【0042】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、ポリエーテルイミドを少なくとも2種含むことが好ましい。本発明の二軸配向ポリエステルフィルムが少なくとも2種のポリエーテルイミドを含むことにより、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムに優れた熱寸法安定性や高配向化、および優れた表面性を同時に付与しやすくなるからである。具体的なポリエーテルイミドの種類については、後述する。
【0043】
ここで、PEIは、イミド基からなるポリイミド構成成分にエーテル結合を含有する樹脂であり、下記一般式(3)
【0044】
【化3】

【0045】
(ただし、上記式中Rは、6〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族または脂肪族残基、Rは6〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族残基、2〜20個の炭素原子を有するアルキレン基、2〜20個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、および2〜8個の炭素原子を有するアルキレン基で連鎖停止されたポリジオルガノシロキサン基からなる群より選択された2価の有機基である。)で示される樹脂である。
【0046】
上記R、Rとしては、例えば、下記式群
【0047】
【化4】

【0048】
(式中、nは2以上の整数、好ましくは20〜50の整数。)に示される芳香族残基を挙げることができる。
【0049】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステルとの親和性、コストおよび溶融成形性等の観点から、PEIとして、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物とm−フェニレンジアミンまたはp−フェニレンジアミンとの縮合物である、下記式(1)と(2)
【0050】
【化5】

【0051】
【化6】

【0052】
で示される繰り返し単位を有するポリマー(PEI)、および耐熱性の観点からスルホニル基成分を含む、下記式(4)
【0053】
【化7】

【0054】
で示される繰り返し単位を有するポリマー(PEI)が好ましく用いられる。
【0055】
このPEIは、“ウルテム”(登録商標)の商品名で、SABICイノベーティブプラスチック社から入手可能であり、“Ultem1000”、“Ultem1010−1000”、“Ultem1040A−1000”、“Ultem5000”、“Ultem6000”、“UltemCRS5011−1000”および“UltemXH6050−1000”シリーズや“Extem XH1015”および“Extem UH1016”の登録商標名等で知られているものである。
【0056】
上記した各種PEIは、本発明においては、少なくとも2種含んでいることが好ましい。PEIを2種含むことにより、PEIの溶融加工性が向上しPET中に混合しやすくなる。さらに、海部分を形成するポリマーとの分子鎖の絡み合いが大きくなるため、延伸時工程において、拘束点からの力をより効果的に海部分へ伝達することができ、海部分の分子鎖配向を高めることができる。
【0057】
好ましい2種の組み合わせとしては、具体的には、樹脂Bとして“UltemCRS5011−1000”、“UltemXH6050−1000”が好ましく、樹脂Cとして“Ultem1010−1000”の組み合わせが好ましい。
【0058】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、直径が30〜500nmである島部分の総質量がフィルム総質量の0.1〜10質量%であることが重要である。この島部分の総質量が、フィルム総質量の0.1〜10質量%であることにより、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの機械特性、熱寸法特性、電気特性、表面特性、耐熱性および加工性を高めることができる。さらに、製膜時の延伸によるフィルム破れの頻度が小さくなり、本発明の二軸配向ポリエステルをより安価に生産性良く製造することが可能となる。フィルム総質量が0.1質量%未満であると、島部分の拘束点としての機能が発現せず、高配向化が行えず本発明の効果が得られにくい。フィルム総質量が10質量%より大きいと、島部分の平均分散径が大きくなりやすく、フィルム製膜中に島部分に起因するフィルム破れが多発し生産性が低下する。また、延伸の際、フィルム表面が粗くなったりボイドが発生したりして、工程適性が低くなり、本発明の効果が得にくくなる。島部分の総質量は、より好ましくは0.3〜5質量%であり、さらに好ましくは0.5〜3質量%である。ポリマーの割合は、NMR法(核磁気共鳴法)や顕微FT−IR法(フーリエ変換顕微赤外分光法)を用いて調べることができる。
【0059】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルムの長手方向または幅方向の少なくとも一方向の50℃から150℃の熱膨張係数が0〜25ppm/℃であることが必要である。
【0060】
上記した熱膨張係数を0ppm/℃未満にするためには、フィルムの延伸倍率を極度に高める必要がある。その結果、フィルム製膜時に延伸破れが頻発して生産性が低下する。また、得られた二軸配向フィルムは、破断伸度が非常に小さいため破断しやすくなり、ハンドリング性が低下し加工性が低化する。一方、上記の熱膨張係数が25ppm/℃よりも大きいと、各種工程の熱などによりフィルムの寸法が大きく変わり、歩留まりが悪化し、またカールやデバイス層との剥離などの問題が起こる。熱膨張係数は、より好ましくは、0〜22ppm/℃であり、さらに好ましくは0〜20ppm/℃である。また、熱膨張係数は、フィルム長手方向と幅方向ともに0〜25ppm/℃であることが好ましい。熱膨張係数は、延伸条件で制御することができるが、平均分散径30〜500nmの島構造を持ち、本発明の延伸条件を用いることにより0〜25ppm/℃に制御することができる。
【0061】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルムの長手方向または幅方向の少なくとも一方向の150℃の温度における熱収縮率が0〜1%であることが好ましい。上記の熱収縮率が0%未満の場合、フィルムが収縮ではなく膨張することを示し、各種工程の熱などによりフィルムの寸法が大きく変わり、歩留まりが悪化し、またカールやデバイス層との剥離などの問題が起こりやすい。また、上記の熱収縮率が1%よりも大きいと、各種工程の熱などによりフィルムの寸法が大きく変わり、歩留まりが悪化し、またカールやデバイス層との剥離などの問題が起こりやすい。熱収縮率はより好ましくは0〜0.7%であり、さらに好ましくは0〜0.5%である。また、熱収縮率は、フィルム長手方向と幅方向ともに0〜1%であることが好ましい。熱膨張係数は、アニール条件で制御することができるが、平均分散径30〜500nmの島構造を持ち、本発明の延伸条件を用いることにより、アニールによる配向緩和を抑制することができ0〜1%に制御することができる。
【0062】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、固有粘度が0.68〜1.40dl/gであることが好ましい。固有粘度が0.68dl/gより小さいと、分子鎖が短く高配向化し熱膨張係数向上の効果が得られにくい。一方、固有粘度が1.40dl/gより大きいと、溶融状態で粘度が高くフィルム製膜時の押出機に負荷がかかり安定した吐出が困難となり、厚みムラや延伸ムラが起こりやすく、また延伸による配向がつきにくく熱収縮率が悪化しやすい。フィルムの固有粘度は、特に原料の固有粘度が影響する。フィルムの固有粘度は、原料の固有粘度やマスターペレットの固有粘度が高いほど高くなる。フィルムの固有粘度は、より好ましくは0.70〜1.00dl/gであり、さらに好ましくは0.73〜0.90dl/gである。
【0063】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、融点直下の微小融解ピーク(T−meta)が200〜250℃であることが好ましい。T−metaが200℃未満では、熱処理による構造固定が不十分であり熱収縮率が悪化しやすい。また、T−metaが250℃より大きいと、配向緩和が極度に起こり熱膨張係数が悪化しやすい。T−metaは、より好ましくは205〜240℃であり、さらに好ましくは210〜230℃である。T−metaは、熱固定温度で制御することができる。T−metaは、製膜機や製膜速度によって変動するが熱固定温度が高いほど高くなる。
【0064】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、ヘイズ値が0〜50%であることが好ましい。ヘイズ値が50%よりも大きいと透明性が低く、有機ELや薄膜PVの効率が落ちる問題が起こりやすい。ヘイズ値はより好ましくは0〜30%であり、さらに好ましくは0〜20%である。ヘイズ値は、フィルム構造の平均分散径やブレンドする熱可塑性樹脂の種類によって制御することができる。
【0065】
上記したような本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、例えば、次のようにして製造される。
【0066】
二軸配向ポリエステルフィルムを製造するには、例えば、ポリエステルのペレットを押出機を用いて溶融し口金から吐出した後、冷却固化してシート状に成形する。このとき、繊維焼結ステンレス金属フィルターによりポリマーを濾過することが、ポリマー中の未溶融物を除去するために好ましい態様である。また、ポリエステルフィルムの表面に、易滑性、耐摩耗性および耐スクラッチ性などを付与するため、無機粒子や有機粒子、例えば、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カリオン、タルク、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイド状シリカ、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナおよびジルコニア等の無機粒子、アクリル酸類、スチレン系樹脂、熱硬化樹脂、シリコーンおよびイミド系化合物等を構成成分とする有機粒子、およびポリエステル重合反応時に添加する触媒等によって析出する粒子(いわゆる内部粒子)などを添加することも好ましい態様である。
【0067】
さらに、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、各種添加剤、例えば、相溶化剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤、顔料および染料などが添加されてもよい。続いて、上記のようにして成形されたシート状物を二軸延伸する。長手方向と幅方向の二軸に延伸して、熱処理する。
【0068】
延伸形式としては、長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行うなどの逐次二軸延伸法や、同時二軸テンター等を用いて長手方向と幅方向を同時に延伸する同時二軸延伸法、さらに、逐次二軸延伸法と同時二軸延伸法を組み合わせた方法などが包含される。
【0069】
延伸工程後の熱処理は、熱膨張係数や熱収縮率を本発明の範囲に制御するには、過度な熱処理による分子鎖配向の緩和を起こさず、効果的に熱処理を施すことが望ましい。
【0070】
そして、このようにして製造された二軸延伸ポリエステルフィルムは、ロールに巻き取られる。さらに、熱寸法安定性を高めるために、巻き取られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、好ましくは一定の温度条件下で張力をかけて搬送されアニール処理される。
【0071】
本発明においては、ポリエステルフィルムやそのポリエステルフィルムロールに、必要に応じて、成形、表面処理、ラミネート、コーティング、印刷、エンボス加工およびエッチングなどの任意の加工を行ってもよい。
【0072】
次に、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法について、フィルムの構成成分として、樹脂Aのポリエチレンテレフタレート(PET)と樹脂Cのガラス転移温度が215℃であるPEI(I)、および島部分を形成する成分として、樹脂Bのガラス転移温度が245℃であるPEI(II)を用いた例を代表例として説明する。
【0073】
もちろん、本発明は、PETを構成成分として用いた支持体に限定されるものではなく、他のポリマーを用いたものものでもよい。例えば、ガラス転移温度や融点の高いポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(ポリエチレン−2,6−ナフタレート)などを用いてポリエステルフィルムを構成する場合は、次に示す温度よりも高温で押出や延伸を行えばよい。
【0074】
まず、PETを準備する。PETは、次のいずれかのプロセスで製造される。すなわち、(1)テレフタル酸とエチレングリコールを原料とし、直接エステル化反応によって低分子量のポリエチレンテレフタレートまたはオリゴマーを得、さらにその後の三酸化アンチモンやチタン化合物を触媒に用いた重縮合反応によってポリマーを得るプロセス、および(2)ジメチルテレフタレートとエチレングリコールを原料とし、エステル交換反応によって低分子量体を得、さらにその後の三酸化アンチモンやチタン化合物を触媒に用いた重縮合反応によってポリマーを得るプロセスである。
【0075】
ここで、エステル化は無触媒でも反応は進行するが、エステル交換反応においては、通常、マンガン、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、リチウムおよびチタン等の化合物を触媒に用いて進行させ、またエステル交換反応が実質的に完結した後に、該反応に用いた触媒を不活性化する目的でリン化合物を添加する場合もある。
【0076】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの構成成分となるポリエステルに不活性粒子を含有させる場合には、エチレングリコールに不活性粒子を所定割合でスラリーの形で分散させ、このエチレングリコールを重合時に添加する方法が好ましい。不活性粒子を添加する際には、例えば、不活性粒子の合成時に得られる水ゾルやアルコールゾル状態の粒子を一旦乾燥させることなく添加すると粒子の分散性がよい。また、不活性粒子の水スラリーを直接PETペレットと混合し、ベント式二軸混練押出機を用いて、PETに練り込む方法も有効である。不活性粒子の含有量を調節する方法としては、上記方法で高濃度の不活性粒子のマスターペレットを作っておき、それを製膜時に不活性粒子を実質的に含有しないPETで希釈して不活性粒子の含有量を調節する方法が有効である。
【0077】
PETとPEIを混合する方法としては、溶融押出前に、(1)PETとPEI(I)とPEI(II)の混合物を、予備溶融混練(ペレタイズ)してマスターチップ化する必要がある。その場合、二軸押出機などのせん断応力のかかる高せん断混合機を用いて予備混練してマスターチップ化する方法が好ましく用いられる。二軸押出機で混合する場合、分散不良物を低減させる観点から、3条二軸タイプまたは2条二軸タイプのスクリューを装備したものが好ましく用いられる。PETとPEI(I)とPEI(II)は、二軸押出機に同時にフィードする必要がある。同時にフィードすることにより混練時間を長くすることができ、PEI(II)の平均分散径を本発明の範囲内に制御することができる。
【0078】
従来、PETとPEIでは加工温度が異なるため、特にPEI(II)はPETよりもかなり高温化する必要があると考えられており、高温化された押出機に同時にフィードすることはPETの劣化が起こりやすく問題があった。しかしながら、本発明者らが鋭意検討した結果、押出温度をPETが劣化しにくい温度に低温化しても、ある配合比率を制御することにより、PET、PEI(I)およびPEI(II)の溶融押出が可能であることを見出した。
【0079】
本発明では、マスターチップ作製の混練において、溶融温度は好ましくは300〜350℃の範囲で、より好ましくは305〜340℃の範囲で、さらに好ましくは310〜330℃の範囲で行われる。混練で使用するPETとして、IVが好ましくは0.8以上、より好ましくは1.0以上の高粘度のPETが用いられる。
【0080】
また、PET/PEI(I)/PEI(II)でのPETの混合質量比率は、30〜80%とすることが好ましく、より好ましくは35〜70%であり、さらに好ましくは40〜60%である。PEI(I)の混合質量比率は1〜60%であることが好ましく、より好ましくは10〜50%であり、さらに好ましくは20〜40%である。PEI(II)の混合質量比率は1〜40%であることが好ましく、より好ましくは5〜30%であり、さらに好ましくは10〜25%である。混合質量比率については、PEI(I)/PEI(II)は、90/10〜50/50であることが好ましい。
【0081】
また、二軸押出機でペレタイズする場合、スクリュー回転数を100〜500回転/分とすることが好ましく、スクリュー回転数はより好ましくは150〜450回転/分であり、さらに好ましくは200〜400回転/分の範囲である。スクリュー回転数を好ましい範囲に設定することでも、高いせん断応力が付加され易く、分散不良物を低減しやすくなる。また、二軸押出機の(スクリュー軸長さ/スクリュー軸径)の比率は、20〜60の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは30〜50の範囲である。
【0082】
次に、得られた上記のペレットと原料PETチップを180℃の温度で3時間以上減圧乾燥した後、固有粘度が低下しないように窒素気流下あるいは減圧下で、270〜320℃の温度に加熱された押出機にフィルム組成となるように供給し、スリット状のダイから押出し、キャスティングロール上で冷却して未延伸フィルムを得る。この際、異物や変質ポリマーを除去するために各種のフィルター、例えば、焼結金属、多孔性セラミック、サンドおよび金網などの素材からなるフィルターを用いることが好ましい。また、必要に応じて、定量供給性を向上させるために、ギアポンプを設けてもよい。フィルムを積層する場合には、2台以上の押出機およびマニホールドまたは合流ブロックを用いて、複数の異なるポリマーを溶融積層する。原料PETチップはフィルムIVが好ましい範囲になるように、0.8〜1.5dl/gであることが好ましい。
【0083】
フィルム組成としては、PEI(I)は、1〜40質量%であることが好ましい。PEI(I)は、より好ましくは3〜30質量%であり、さらに好ましくは5〜20質量%である。また、PEI(II)は、0.1〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.3〜5質量%であり、さらに好ましくは0.5〜3質量%である。
【0084】
次に、このようにして得られた未延伸フィルムを、数本のロールの配置された縦延伸機を用いて、ロールの周速差を利用して縦方向に延伸し(MD延伸)、続いてステンターにより横延伸を行う(TD延伸)という二軸延伸方法について説明する。
【0085】
まず、未延伸フィルムをMD延伸する。本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、固有粘度IVが通常のポリエステルよりも高いため、高配向化するには延伸倍率を高める必要がある。そこで、MD延伸では最初に高温で延伸を行い、分子鎖をほぐしながら高倍率延伸を行い、その後温度を下げて横延伸すると高倍率延伸ができ高配向化が行える。この延伸方式は、拘束点として分子鎖の絡み合いではなく、海島構造の島部分が機能する本発明のポリエステルフィルムで可能な延伸方式であり、島部分が存在しない場合、高配向化せず、またフィルム破れが多発することがある。
【0086】
最初の高温延伸(MD延伸)は、好ましくは(Tg)〜(Tg+40)℃の範囲、より好ましくは(Tg+5)〜(Tg+30)℃の範囲、さらに好ましくは(Tg+10)〜(Tg+20)の範囲にある加熱ロール群で加熱し、長手方向に好ましくは3.0〜6.0倍、より好ましくは3.5〜5.5倍、さらに好ましくは4.0〜4.5倍に延伸し、延伸後、20〜50℃の温度の冷却ロール群で冷却することが好ましい。
【0087】
次に、ステンターを用いて、低温延伸(TD延伸)を行う。低温延伸温度は、好ましくは(MD延伸温度−5)〜(MD延伸温度−20)℃の範囲であり、さらに好ましくは(MD延伸温度−5)〜(MD延伸温度−15)℃の範囲である。延伸倍率は好ましくは3.0〜6.0倍であり、より好ましくは3.5〜5.5倍であり、さらに好ましくは4.0〜4.5倍である。
【0088】
続いて、この延伸フィルムを緊張下または幅方向に弛緩しながら熱固定処理する。熱固定温度は、好ましくは220〜250℃であり、より好ましくは223〜245℃の温度であり、さらに好ましくは225〜240℃の温度で熱処理する。熱処理時間は、0.5〜10秒の範であることが好ましい。熱処理時間は0.5〜10秒の範囲で行うことが好ましい。
【0089】
弛緩率は、0〜4%であることが好ましい。弛緩率は、より好ましくは1〜3%である。その後、25℃の温度に冷却後、フィルムエッジを除去しコア上に巻き取る。その後、熱寸法安定性の効果をさらに高めるために、アニール処理を行う。アニール処理温度は160〜200℃が好ましく、より好ましくは165〜195℃であり、さらに好ましくは170〜190℃である。アニール時間は、1〜30秒が好ましく、より好ましくは3〜20秒であり、さらに好ましくは5〜15秒である。フィルムを速度10〜300m/min、張力1〜300N/mで搬送しながらアニール処理し、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムを得ることができる。
【0090】
(物性の測定方法ならびに効果の評価方法)
本発明における特性値の測定方法並びに効果の評価方法は、次のとおりである。
【0091】
(1)島部分(分散相)の平均分散径
ここで、島部分の平均分散径とは、複数の観察面において得られる平均の円相当径であり、次の測定法により得ることができる。
【0092】
まず、フィルムの切断面を透過型電子顕微鏡を用いて、加速電圧100kVの条件下で観察し、2万倍で撮影した写真をイメ−ジアナライザ−に画像として取り込み、任意の100個の分散相(島部分)を選択し、必要に応じて画像処理を行うことにより、分散径を求め、その数平均として算出する。具体的には次のとおりである。
【0093】
フィルムを(ア)長手方向に平行かつフィルム面に垂直な方向、(イ)幅方向に平行かつフィルム面に垂直な方向、(ウ)フィルム面に対して平行な方向に切断し、サンプルを超薄切片法で作製した。分散相のコントラストを明確にするために、オスミウム酸やルテニウム酸などで染色してもよい。切断面を透過型電子顕微鏡(日立製H−7100FA型)を用いて、加速電圧100kVの条件下で観察し、2万倍で写真を撮影する。得られた写真をイメージアナライザーに画像として取り込み、任意の100個の分散相を選択し、必要に応じて画像処理を行うことにより、次に示すようにして分散相の大きさを求めた。(ア)の切断面に現れる各分散相のフィルム厚み方向の最大長さ(la)と長手方向の最大長さ(lb)と、(イ)の切断面に現れる各分散相のフィルム厚さ方向の最大長さ(lc)と、幅方向の最大長さ(ld)、(ウ)の切断面に現れる各分散相のフィルム長手方向の最大長さ(le)と幅方向の最大長さ(lf)を求めた。次いで、分散相の形状指数I=(lbの数平均値+leの数平均値)/2、形状指数J=(ldの数平均値+lfの数平均値)/2、形状指数K=(laの数平均値+lcの数平均値)/2とした場合、分散相の平均分散径を(I+J+K)/3とした。
【0094】
各試料の透過型電子顕微鏡写真を、スキャナーにてコンピューターに取り込んだ。その後、専用ソフト(プラネトロン社製 Image Pro Plus Ver. 4.0)を用いて画像解析を行った。トーンカーブを操作することにより、明るさとコントラストを調整し、その後ガウスフィルターを用いて得た画像の高コントラスト成分の円相当径のうちをランダムに100点観察し、上記の計算法に従い平均分散径を算出した。ここで、透過型電子顕微鏡写真のネガ写真を使用する場合には、上記スキャナーとして日本サイテックス社製 Leafscan 45 Plug-Inを用い、透過型電子顕微鏡のポジを使用する場合には、上記スキャナーとしてセイコーエプソン製 GT−7600Sを用いるが、そのいずれでも同等の値が得られる。
【0095】
[画像処理の手順及びパラメータ]:
・平坦化1回
・コントラスト+30
・ガウス1回
・コントラスト+30、輝度−10
・ガウス1回
・平面化フィルター:背景(黒)、オブジェクト幅(20pix)
・ガウスフィルター:サイズ(7)、強さ(10)。
【0096】
(2)熱膨張係数
JIS K7197(1991年)に準拠し、下記の条件で、試料数3にてフィルムの長手方向および幅方向それぞれについて測定をして、平均値をとり、長手方向と幅方向の熱膨張係数とした。
・測定装置 :セイコーインスツルメンツ社製“TMA/SS6000”
・試料サイズ:幅4mm、長さ20mm
・温度条件 :5℃/minで30℃から175℃に昇温し、10分間保持
・さらに5℃/minで175℃から40℃まで降温して20分保持
・荷重条件 :29.4mN一定
ここで、熱膨張係数測定範囲温度は、降温時の150℃から50℃である。熱膨張係数は、下記式から算出した。
熱膨張係数[ppm/℃]=10×{(150℃時の寸法)−(50℃時の寸法)}/(150℃−50℃)。
【0097】
(3)150℃の温度の熱収縮率
下記装置および条件で、熱収縮率測定を行った。
・測長装置 :万能投影機
・資料サイズ :試長150m×幅10mm
・熱処理装置 :ギアオーブン
・熱処理条件 :150℃、30分
・荷重 :3g
・算出方法
熱処理前にサンプルに100mmの間隔で標線を描き、熱処理後の標線間距離を測定し、加熱前後の標線間距離の変化から熱収縮率を算出し、寸法安定性の指標とした。測定は、各フィルムとも長手方向および幅方向に5サンプル実施して平均値で評価を行った。
【0098】
(4)三次元表面粗さRa
触針式表面粗さ計を用いJIS−B0601(1994年)に準拠して、下記条件にて支持体の表面形態を測定する。
・測定装置 :小坂研究所の三次元微細形状測定器(型式ET−350K)
・解析機器 :三次元表面粗さ解析システム(型式TDA−22)
・触針径 :2μm
・触針の荷重:0.04mN
・縦倍率 :5万倍
・カットオフ:0.25mm
・送りピッチ:5μm
・測定長 :0.5mm
・測定面積 :0.2mm2
・測定速度 :0.1mm/秒。
【0099】
(5)固有粘度
オルトクロロフェノール中、25℃の温度で測定した溶液粘度から、下式に基づいて固有粘度を計算する。
ηsp/C=[η]+K[η]×C
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)−1であり、Cは溶媒100mlあたりの溶解ポリマー重量(g/100ml、通常1.2)であり、Kはハギンス定数(0.343とする)である。また、溶液粘度と溶媒粘度は、オストワルド粘度計を用いて測定する。
【0100】
(6)融点(Tm)、融点直下の微小融解ピーク(Tmeta)
JIS K7121−1987に従って、示差走査熱量計として、セイコーインスツルメンツ社製DSC(RDC220)、データ解析装置として同社製ディスクステーション(SSC/5200)を用いて、試料5mgをアルミニウム製受皿上、25℃から300℃まで、昇温速度20℃/分で昇温した。そのとき、観測される融解の吸熱ピークのピーク温度を融点(Tm)、Tm直下の微小吸熱ピークをTmetaとした。
【0101】
(7)ガラス転移温度(Tg)
下記装置および条件で比熱測定を行い、JIS K7121(1987年)に従って決定する。
・装置 :TA Instrument社製温度変調DSC
・測定条件
・加熱温度 :270〜570K(RCS冷却法)
・温度校正 :高純度インジウムおよびスズの融点
・温度変調振幅:±1K
・温度変調周期:60秒
・昇温ステップ:5K
・試料重量 :5mg
・試料容器 :アルミニウム製開放型容器(22mg)
・参照容器 :アルミニウム製開放型容器(18mg)
ガラス転移温度は、下記式により算出する。
ガラス転移温度=(補外ガラス転移開始温度+補外ガラス転移終了温度)/2。
【0102】
(8)フィルムのヘイズ値
フィルムから10cm×10cmの試料を切り出して、JISK7105(1985年)に基づいて、全自動直読ヘイズコンピューターHGM−2DP(スガ試験機(株)製)を用いて測定した。これを無作為に10点くり返し測定し、その平均値を該フィルムのヘイズ値とした。
【0103】
(9)フィルム中の樹脂の含有量の測定
フィルムを秤量後、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)/クロロホルム(質量比50/50)の混合溶媒に溶解する。不溶な成分がある場合は、この不溶成分を遠心分離で分取した後、質量を測定し、元素分析、FT−IR、NMR法により該成分の構造と質量分率を測定する。上澄み成分についても同様に分析すれば、ポリエステル成分および他成分の質量分率と構造が特定できる。詳しくは、この上澄み成分から溶媒を留去した後にHFIP/重クロロホルム(質量比50/50)混合溶媒に溶解した後、1H核のNMRスペクトルを測定する。
【0104】
得られたスペクトルで、各成分に特有の吸収(例えば、PETであればテレフタル酸の芳香族プロトン、PEIであればビスフェノールAの芳香族のプロトン)のピーク面積強度を求め、その比率とプロトン数よりブレンドのモル比を算出する。さらにポリマーの単位ユニットに相当する式量より質量比を算出する。このようにして各成分の質量分率と構造が特定できる。
【0105】
(10)熱寸法安定性
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムを、幅50mm×長さ100mmに切り出し、有機フレキシブルデバイスを想定して、下記の有機EL層を形成し、そのときの二軸延伸ポリエステルフィルムの寸法変化から熱寸法安定性を評価した。
【0106】
・(正孔輸送層)
ポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS、Bayer社製 Bytron P AI 4083)を純水で65%、メタノール5%で希釈した溶液を正孔輸送層形成用塗布液として、PETの上全面(但し、両端の10mmは除く)に、エクストルージョン塗布機を使用し乾燥後の厚みが30nmになるように塗布した。塗布後、150℃の温度で1時間の乾燥・加熱処理を行い正孔輸送層を形成した。
【0107】
・(発光層)
正孔輸送層上に、PVK、ドーパントをそれぞれ1質量%、0.1質量%含むトルエン溶液をエクストルージョン塗布法により製膜した。120℃の温度で1時間真空乾燥し、膜厚約50nmの発光層とした。
【0108】
・(電子輸送層)
発光層上に、0.5質量%の電子輸送材料を含有する1−ブタノール溶液を同様にエクストルージョン塗布法により製膜した。60℃の温度で1時間真空乾燥し、膜厚約15nmの電子輸送層とした。測長装置には、万能投影機を用いた。熱寸法安定性を次の基準に従って評価した。◎と○と△が合格である。
◎:長手、幅方向ともに変形量が100μm未満で問題なく有機EL層が形成された。
○:長手、幅方向の少なくとも一方の変形量が100μm以上、500μm未満で有機EL層が形成された。
△:長手、幅方向の少なくとも一方の変形量が500μm以上、またはシワの発生や有機EL層の塗布ムラが起こった。
×:フィルムのシワ、カールや幅縮みなどで有機EL層が形成できなかった。
【0109】
(11)カール性
フィルムから10cm×10cmの試料を切り出して温度150℃で30分間オーブンに置いた。その後、温度23℃、65%RHの条件で30分放置してから、4隅のカール状態を観測し、4隅の反り量(mm)の平均値を求めて、下記の基準に従って評価した。◎と○と△が合格である。
◎:反り量が2.5mm未満である。
○:反り量が2.5mm以上、5mm未満である。
△:反り量が5mm以上、10mm未満である。
×:反り量が10mm以上である。
【0110】
(12)工程適性(透明導電膜形成)
プラズマの放電前にチャンバー内を5×10−4Paまで排気した後、チャンバー内にアルゴンと酸素を導入して圧力を0.3Pa(酸素分圧は3.7mPa)としターゲットとして酸化スズを36質量%含有した酸化インジウム(住友金属鉱山社製、密度6.9g/cm3)に用いて2W/cm2の電力密度で電力を印加して直流マグネトロンスパッタリング法により、膜厚260nmのITOからなる透明導電層を形成した。下記の基準に従って評価した。◎と○と△が合格である。
◎:表面抵抗率が30Ω/□未満で問題なく透明導電層が形成された
○:表面抵抗率が30Ω/□以上、100Ω/未満でやや欠陥を含む透明導電層が形成された
△:表面抵抗率が100Ω/□以上で欠陥の多い透明導電層が形成された
×:フィルムのカールや幅縮みや表面突起などで透明導電層が形成できなかった
【実施例】
【0111】
本発明の実施形態を、実施例に基づいて説明する。
【0112】
(参考例1)
テレフタル酸ジメチル194質量部とエチレングリコール124質量部とをエステル交換反応装置に仕込み、内容物を140℃の温度に加熱して溶解した。その後、内容物を撹拌しながら、酢酸マグネシウム四水和物0.3質量部および三酸化アンチモン0.05質量部を加え、これに140〜230℃の温度でメタノールを留出しつつエステル交換反応を行った。次いで、リン酸トリメチルの5質量%エチレングリコール溶液を、1質量部(リン酸トリメチルとして0.05質量部)添加した。リン酸トリメチルのエチレングリコール溶液を添加すると、反応内容物の温度が低下する。そこで、余剰のエチレングリコールを留出させながら反応内容物の温度が230℃の温度に復帰するまで撹拌を継続した。このようにして、エステル交換反応装置内の反応内容物の温度が230℃の温度に達した後、反応内容物を重合装置へ移行した。移行後、反応系を230℃の温度から290℃の温度まで徐々に昇温するとともに、圧力を0.1kPaまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。最終温度、最終圧力に到達した後、2時間(重合を始めて3時間)反応させたところ、重合装置の撹拌トルクが所定の値(重合装置の仕様によって具体的な値は異なるが、本重合装置において固有粘度0.60のポリエチレンテレフタレートが示す値を所定の値とした)を示した。そこで、反応系を窒素パージし常圧に戻して重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングして、固有粘度0.60のポリエチレンテレフタレートのPETペレットX0.60を得た。
【0113】
(参考例2)
回転型真空重合装置を用いて、上記の参考例1で得られたPETペレットX0.60を0.1kPaの減圧下230℃の温度で長時間加熱処理し、固相重合を行った。処理時間100時間で固有粘度が1.0であるPETペレットX1.0を得た。
【0114】
(参考例3)
回転型真空重合装置を用いて、上記の参考例1で得られたPETペレットX0.60を0.1kPaの減圧下230℃の温度で長時間加熱処理し、固相重合を行った。加熱処理時間が長いほど固有粘度は高くなる。処理時間15時間で固有粘度が0.80であるPETペレットX0.80を得た。
【0115】
(参考例4)
回転型真空重合装置を用いて、上記の参考例1で得られたPETペレットX0.60を0.1kPaの減圧下230℃の温度で長時間加熱処理し、固相重合を行った。加熱処理時間が長いほど固有粘度は高くなる。処理時間6時間で固有粘度が0.70であるPETペレットX0.70を得た。
【0116】
(参考例5)
回転型真空重合装置を用いて、上記の参考例1で得られたPETペレットX0.60を0.1kPaの減圧下230℃の温度で長時間加熱処理し、固相重合を行った。加熱処理時間が長いほど固有粘度は高くなる。処理時間5時間で固有粘度が0.69であるPETペレットX0.69を得た。
【0117】
(参考例6)
回転型真空重合装置を用いて、上記の参考例1で得られたPETペレットX0.60を0.1kPaの減圧下230℃の温度で長時間加熱処理し、固相重合を行った。加熱処理時間が長いほど固有粘度は高くなる。処理時間300時間で固有粘度が1.45であるPETペレットX1.45を得た。
【0118】
(参考例7)
回転型真空重合装置を用いて、上記の参考例1で得られたPETペレットX0.60を0.1kPaの減圧下230℃の温度で長時間加熱処理し、固相重合を行った。加熱処理時間が長いほど固有粘度は高くなる。処理時間320時間で固有粘度が1.47であるPETペレットX1.47を得た。
【0119】
(参考例8)
参考例2で得られたPETペレットX1.050質量部とSABICイノベーティブプラスチック社製のPEI“Ultem1010−1000”のペレット35質量部と“UltemXH6050−1000”のペレット15質量部を別々に180℃の温度で、3mmHgの減圧下で6時間乾燥した。日本製鋼所製のスクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5であるニーディングパドル混練部を3箇所設けた同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機を、スクリューゾーンから押出ヘッド部にかけて270℃〜320℃の温度に温度勾配を設定した。この押出機に減圧乾燥したペレットを供給し、スクリュー回転数300回転/分、滞留時間3分で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてPET/PEI(Ul1010)/PEI(XH6050)ブレンドペレットYを作製した。
【0120】
(参考例9)
参考例2で得られたPETペレットX1.050質量部とSABICイノベーティブプラスチック社製のPEI“Ultem1010−1000”のペレット50質量部を、別々に180℃の温度で、3mmHgの減圧下で6時間乾燥した。日本製鋼所製のスクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5であるニーディングパドル混練部を3箇所設けた同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機を、スクリューゾーンから押出ヘッド部にかけて270℃〜320℃に温度勾配を設定した。この押出機に減圧乾燥したペレットを供給し、スクリュー回転数300回転/分、滞留時間3分で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてPET/PEI(Ul1010)ブレンドペレットZを作製した。
【0121】
(実施例1)
290℃の温度に加熱された押出機Eには、参考例3で得られた固有粘度0.80のPETペレットX0.8078質量部と、参考例8で得られたブレンドチップY6.7質量部と、参考例9で得られたブレンドチップZ15.3質量部を180℃の温度で3時間減圧乾燥した後に供給し、窒素雰囲気下Tダイ口金に導入した。次いで、Tダイ口金内から、シート状に押出して溶融単層シートとし、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸単層フィルムを得た。
【0122】
続いて、得られた未延伸単層フィルムを加熱したロール群で予熱した後、105℃の温度で4.3倍MD延伸を行い、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の85℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に95℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に4.3倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで230℃の温度で5秒間の熱処理を施し、さらに230℃の温度で2%幅方向に弛緩処理を行った。次いで、25℃に均一に冷却後、フィルムエッジを除去し、コア上に巻き取って厚さ100μmの二軸延伸フィルムを得た。
【0123】
そして、アニール温度180℃で張力20N/m、フィルム速度30m/minで10秒間、搬送しながらアニール処理し二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0124】
得られた二軸配向ポリエステルフィルムを評価したところ、表4に示すように、熱寸法安定性、カール性および工程適性に優れた特性を有していた。
(実施例2)
表1に示すようにマスタ組成を変更すること以外、実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムを評価したところ、表4に示すように、熱寸法安定性、カール性および工程適性に優れた特性を有していた。
【0125】
(実施例3)
表1に示すようにマスタ組成を変更すること以外、実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムを評価したところ、表4に示すように、工程適性にやや劣るものの熱寸法安定性とカール性に優れた特性を有していた。
【0126】
(実施例4)
表2に示すように製膜条件を変更すること以外、実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムを評価したところ、表4に示すように、熱寸法安定性、カール性および工程適性に優れた特性を有していた。
【0127】
(実施例5)
表2に示すように製膜条件を変更すること以外、実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムを評価したところ、表4に示すように、熱寸法安定性とカール性にやや劣るものの、工程適性に優れた特性を有していた。
【0128】
(実施例6)
表2に示すように製膜条件を変更すること以外、実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムを評価したところ、表4に示すように、カール性にやや劣るものの、熱寸法安定性および工程適性に優れた特性を有していた。
【0129】
(実施例7)
表2に示すようにアニール条件を変更すること以外、実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムを評価したところ、表4に示すように、熱寸法安定性にやや劣るものの、カール性および工程適性に優れた特性を有していた。
【0130】
(実施例8)
表2に示すように製膜条件を変更すること以外、実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムを評価したところ、表4に示すように、熱寸法安定性、カール性および工程適性に優れた特性を有していた。
【0131】
(実施例9)
表2に示すように製膜条件を変更すること以外、実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムを評価したところ、表4に示すように、熱寸法安定性、カール性および工程適性に優れた特性を有していた。
【0132】
(実施例10)
表2に示すようにフィルム原料となるPETペレットX0.80を参考例4で得られたPETペレットX0.70に変更すること以外、実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムを評価したところ、表4に示すように、熱寸法安定性、カール性および工程適性に優れた特性を有していた。
【0133】
(実施例11)
表2に示すようにフィルム原料となるPETペレットX0.80を参考例5で得られたPETペレットX0.69に変更すること以外、実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムを評価したところ、表4に示すように、熱寸法安定性、カール性および工程適性に優れた特性を有していた。
【0134】
(実施例12)
表2に示すようにフィルム原料となるPETペレットX0.80を参考例6で得られたPETペレットX1.45に変更すること以外、実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムを評価したところ、表4に示すように、熱寸法安定性、カール性および工程適性に優れた特性を有していた。
【0135】
(実施例13)
表2に示すようにフィルム原料となるPETペレットX0.80を参考例7で得られたPETペレットX1.47に変更すること以外、実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムを評価したところ、表4に示すように、熱寸法安定性、カール性および工程適性に優れた特性を有していた。
【0136】
(実施例14)
SABICイノベーティブプラスチック社製の“UltemXH6050−1000”をソルベイアドバンストポリマーズ社製のPES“レーデル(RADEL)A グレードA−300A”に変更すること以外、実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムを評価したところ、表4に示すように、熱寸法安定性、カール性および工程適性に優れた特性を有していた。
【0137】
(実勢例15)
SABICイノベーティブプラスチック社製の“UltemXH6050−1000”を“UltemCRS5011−1000”に変更すること以外、実施例1と同じ方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムを評価したところ、表4に示すように、熱寸法安定性、カール性および工程適性に優れた特性を有していた。
【0138】
(比較例1)
290℃の温度に加熱された押出機Eには、参考例3で得られた固有粘度0.80のPETペレットX0.8080質量部と、参考例9で得られたブレンドチップZ20質量部を180℃の温度で3時間減圧乾燥した後に供給し、窒素雰囲気下Tダイ口金に導入した。次いで、Tダイ口金内から、シート状に押出して溶融単層シートとし、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸単層フィルムを得た。
【0139】
続いて、得られた未延伸単層フィルムを加熱したロール群で予熱した後、95℃の温度で4.0倍MD延伸を行い、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の95℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に105℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に4.0倍延伸したこと以外は、実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムを評価したところ、表4に示すように、熱寸法安定性、カール性および工程適性に劣る特性を有していた。
【0140】
(比較例2)
表1に示すようにマスタ組成を変更すること以外、実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムを評価したところ、表4に示すように、熱寸法安定性、カール性および工程適性に劣る特性を有していた。
【0141】
(比較例3)
表1に示すようにマスタ組成を変更すること以外、実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムを評価したところ、表4に示すように、熱寸法安定性、カール性および工程適性に劣る特性を有していた。
【0142】
(比較例4)
表1に示すように製膜条件を変更すること以外、実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムを評価したところ、表4に示すように、熱寸法安定性、カール性および工程適性に劣る特性を有していた。
【0143】
上記実施例1〜13と比較例1〜4のマスター作成条件、マスター組成、フィルム組成、製膜条件、フィルム構造およびフィルム物性を、表1〜表3にまとめた。
【0144】
【表1】

【0145】
【表2】

【0146】
【表3】

【0147】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、熱寸法安定性、カール性、工程適性に優れたフレキシブルデバイス用基材フィルムに適用することができる。そのため、有機ELディスプレイ、電子ペーパー、有機EL照明、有機太陽電池および色素増感型太陽電池などを得るために利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0149】
1:連続相(海成分)
2:分散相(島成分)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリエチレンテレフタレート樹脂(樹脂A)と樹脂Bからなる海島構造を有する二軸配向フィルムであって、島部分の平均分散径が30〜500nmであり、かつ50〜150℃の温度におけるフィルムの長手方向または幅方向の少なくとも一方向の熱膨張係数が0〜25ppm/℃であることを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項2】
長手方向または幅方向の少なくとも一方向の150℃の温度における熱収縮率が0〜3%であることを特徴とする請求項1記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項3】
樹脂Bのガラス転移温度(Tg)が100〜400℃であり、樹脂Bのフィルム中の含有量が0.1〜10質量%であることを特徴とする請求項1または2記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項4】
島部分を構成する島成分が樹脂Bからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項5】
樹脂Bが下記式(1)
【化1】

で示される構造を有するポリエーテルイミドまたは当該式(1)で示される構造とスルホニル基成分を有するポリエーテルイミドであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項6】
少なくともポリエチレンテレフタレート(樹脂A)と樹脂Bと樹脂Cからなる海島構造を有する二軸配向フィルムであって、前記樹脂Cが下記式(2)
【化2】

で示される構造を有するポリエーテルイミドであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項7】
フィルムの固有粘度(IV)が0.68〜1.4であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項8】
融点直下の微小融解ピーク(T−meta)が200〜250℃であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルムを用いてなるフレキシブルデバイス基材用フィルム。
【請求項10】
少なくとも樹脂Aと樹脂Bを溶融混練して下記条件を満たすマスターバッチを作製し、該マスターバッチとポリエチレンテレフタレート樹脂(樹脂A)とを混合し、溶融押出しして未延伸フィルムを作製し、その未延伸フィルムを長手方向と幅方向に二軸延伸し、引き続き熱処理を行うことを特徴とする請求項1記載の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。
樹脂A;30〜80質量%
樹脂B;20〜70質量%
【請求項11】
少なくとも樹脂Aと樹脂Bと樹脂Cを溶融混練して下記条件を満たすマスターバッチを作製し、該マスターバッチとポリエチレンテレフタレート樹脂(樹脂A)とを混合し、溶融押出しして未延伸フィルムを作製し、その未延伸フィルムを長手方向と幅方向に二軸延伸し、引き続き熱処理を行うことを特徴とする請求項6記載の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。
樹脂A;30〜80質量%
樹脂B+C;20〜70質量%
樹脂B/樹脂C(重量比);10/90〜50/50
【請求項12】
マスターバッチと樹脂Aとを混合し、溶融押出しして未延伸フィルムを作製し、その未延伸フィルムを長手方向に延伸し幅方向に延伸する二軸延伸を施すに際し、長手方向の延伸温度を幅方向の延伸温度より高くして二軸延伸し、引き続き205〜255℃で熱処理を行い、その後0〜50℃の温度に冷却した後、160〜200℃の温度で1〜30秒間アニール処理することを特徴とする請求項10または11記載の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−184617(P2011−184617A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53002(P2010−53002)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】