説明

二軸配向ポリエステルフィルム

【課題】
磁気記録媒体とした際に環境変化による寸法変化が少なく、塗布性と製膜性が良好である二軸配向ポリエステルフィルムを提供すること。
【解決手段】
ポリエステルフィルムの幅方向の120℃30分での熱収縮率が0〜5%であり、幅方向のヤング率が7〜15GPaであることを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気テープなどの磁気記録媒体に用いられる支持体と、該支持体上に磁性層を設けた磁気記録媒体とに関する。
【背景技術】
【0002】
二軸配向ポリエステルフィルムはその優れた熱特性、寸法安定性、機械特性および表面形態の制御のしやすさから各種用途に使用されており、特に延伸技術を用いて高強度化した磁気記録媒体などの支持体としての有用性がよく知られている。近年、磁気テープなどの磁気記録媒体は、機材の軽量化、小型化、大容量化のため高密度記録化が要求されている。高密度記録化のためには、記録波長を短くし、記録トラックを小さくすることが有用である。しかしながら、記録トラックを小さくすると、テープ走行時における熱やテープ保管時の温湿度変化による変形により、記録トラックのずれが起こりやすくなるという問題がある。したがって、テープの使用環境および保管環境での幅方向の寸法安定性といった特性の改善に対する要求がますます強まっている。また、高密度化により磁気テープ作製時の熱による寸法安定性も重要になっている。
【0003】
この観点から、支持体には、強度、寸法安定性の点で二軸配向ポリエステルフィルムよりも優れた剛性の高い芳香族ポリアミドが用いられることがある。しかしながら芳香族ポリアミドは高価格でコストがかかり、汎用記録媒体の支持体としては現実的ではない。
【0004】
ポリエステルフィルムの幅方向の寸法安定性を向上させるためにポリマーアロイや共重合などにより湿度膨張係数を低減する技術が開示されているが、スリット性の悪化や製膜時に破れの原因になりやすいなどの問題がある。(特許文献1〜3)。
【0005】
上記課題に対し、鋭意検討した結果、熱固定処理温度を段階的に行う高配向と低熱収縮を両立する特殊なプロセスを用いることで磁気テープとした際に寸法安定性・塗布性・電磁変換特性・製膜性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムが得られ、多くの問題が解決できることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−37448号公報
【特許文献2】特開2010−31116号公報
【特許文献3】特開2009−221277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記の問題を解決し、優れた二軸配向ポリエステルフィルムを提供することにある。詳しくは、磁気記録媒体とした際に環境変化による寸法変化が少なく、塗布性と製膜性が良好である二軸配向ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、次の(1)〜(4)を特徴とするものである。
【0009】
(1)ポリエステルフィルムの幅方向の120℃30分での熱収縮率が0〜5%であり、幅方向のヤング率が7〜12GPaであることを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルム。
【0010】
(2)フィルム長手方向の120℃30分の熱収縮率が0〜5%である、(1)に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【0011】
(3)フィルム幅方向の湿度膨張係数が0〜6ppm/%RHである(1)または(2)に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【0012】
(4)(1)〜(3)に記載の二軸配向ポリエステルフィルムに磁性層を塗布してなる磁気記録媒体。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、磁気記録媒体とした際に環境変化による寸法変化が少なく、塗布性と製膜性が良好である二軸配向ポリエステルフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、ポリエステルフィルムとは、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸などの酸成分やジオール成分を構成単位(重合単位)とするポリマーで構成されたものである。
【0015】
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸等を用いることができ、なかでも好ましくは、テレフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸を用いることができる。6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分としては、炭素数2〜10のアレキレンが好ましく、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸、6,6’−(トリメチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸および6,6’−(ブチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸などが挙げられる。脂環族ジカルボン酸成分としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸等を用いることができる。脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等を用いることができる。これらの酸成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0016】
ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2’−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用いることができ、なかでも、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール等を好ましく用いることができ、特に好ましくは、エチレングリコール等を用いることができる。これらのジオール成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0017】
ポリエステルには、ラウリルアルコール、イソシアン酸フェニル等の単官能化合物が共重合されていてもよいし、トリメリット酸、ピロメリット酸、グリセロール、ペンタエリスリトール、2,4−ジオキシ安息香酸、等の3官能化合物などが、過度に分枝や架橋をせずポリマーが実質的に線状である範囲内で共重合されていてもよい。さらに酸成分、ジオール成分以外に、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸などを本発明の効果が損なわれない程度の少量であればさらに共重合せしめることができる。
【0018】
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(ポリエチレン−2,6−ナフタレート)が好ましい。また、これらの共重合体や変性体でもよい。
【0019】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、幅方向のヤング率が7.0〜12GPaであることが好ましい。幅方向のヤング率が上記範囲内であると、磁気記録媒体用に用いた場合に磁気記録媒体の記録再生時の環境変化による寸法安定性が良好となる。幅方向のヤング率の上限は、より好ましくは10GPa、さらに好ましくは9.0GPaである。幅方向のヤング率の下限は、より好ましくは7.2GPa、さらに好ましくは7.5GPaである。より好ましい範囲は7.2〜10GPa、さらに好ましい範囲は7.5〜9.0GPaである。幅方向のヤング率はTD延伸の温度や倍率によって制御することができる。
【0020】
本発明のポリエステルフィルムの120℃、30分における幅方向の熱収縮率は0〜5%である。上記範囲より熱収縮率が大きくなると、磁気記録媒体に加工する際に、「しわ」などの工程トラブルを引き起こし、磁気テープ作製の収率低下などの問題となる。また上記範囲よりも小さいと非晶部分の緩和が進みすぎており、温湿度膨張係数が高くなりすぎて、品質が低下することがあり、磁気テープ作製時に膨張するなどシワなどの問題となる。より好ましい上限は4%であり、さらに好ましい上限は3%である。幅方向の120℃の熱収縮率は熱固定温度で制御することができる。
【0021】
本発明のポリエステルフィルムの120℃、30分における長手方向の熱収縮率は0〜5%である。上記範囲より熱収縮率が大きくなると、磁気記録媒体に加工する際に、「しわ」などの工程トラブルを引き起こし、磁気テープ作製の収率低下などの問題となる。また上記範囲よりも小さいと、磁気テープ作製時に膨張するなどシワなどの問題となる。より好ましい上限は4%であり、さらに好ましい上限は3%である。長手方向の120℃の熱収縮率は熱固定温度で制御することができる。
【0022】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、幅方向の湿度膨張係数が0〜6ppm/%RHである。湿度膨張係数が6ppm/%RHより大きいと磁気記録媒体用に用いた場合、湿度変化による変形が大きくなり、寸法安定性が悪化する。より好ましい上限は5.5ppm/%RHであり、さらに好ましくは5ppm/%RHである。より好ましい範囲は0〜5.5ppm/%RHであり、さらに好ましくは0〜5ppm/%RHである。湿度膨張係数は分子鎖の緊張度合いが影響する物性であり、TD延伸倍率よって制御が可能である。
【0023】
本発明において、二軸配向ポリエステルフィルムとしての厚みは、用途に応じて適宜決定できるが、通常リニア磁気記録媒体用途では1〜7μmが好ましい。この厚みが1μmより小さい場合、磁気テープにした際に電磁変換特性が低下することがある。一方、この厚みが7μmより大きい場合は、テープ1巻あたりのテープ長さが短くなるため、磁気テープの小型化、高容量化が困難になる場合がある。したがって、高密度磁気記録媒体用途の場合、厚みの下限は、好ましくは2μm、より好ましくは3μmであり、上限は、好ましくは6.5μm、より好ましくは6μmである。より好ましい範囲としては2〜6.5μm、より好ましい範囲としては3〜6μmである。
【0024】
上記したような本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、たとえば次のように製造される。
【0025】
まず、二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムを製造する。ポリエステルフィルムを製造するには、たとえばポリエステルのペレットを、押出機を用いて溶融し、口金から吐出した後、冷却固化してシート状に成形する。このとき、繊維焼結ステンレス金属フィルターによりポリマーを濾過することが、ポリマー中の未溶融物を除去するために好ましい。また、ポリエステルフィルムの表面性を制御し易滑性や耐摩耗性、耐スクラッチ性などを付与するため、不活性粒子を添加する必要がある。不活性粒子は無機粒子、有機粒子、例えば、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カリオン、タルク、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイド状シリカ、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、ジルコニア等の無機粒子、アクリル酸類、スチレン系樹脂、熱硬化樹脂、シリコーン、イミド系化合物等を構成成分とする有機粒子、ポリエステル重合反応時に添加する触媒等によって析出する粒子(いわゆる内部粒子)などが挙げられる。さらに、本発明を阻害しない範囲内であれば、各種添加剤、例えば、相溶化剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤、顔料、染料、などが添加されてもよい。
【0026】
続いて、上記シートを長手方向と幅方向の二軸に延伸した後、段階的に熱処理する。幅方向の寸法安定性を向上させるために延伸工程は、幅方向において2段階以上に分けることが好ましい。すなわち、再横延伸を行う方法が高寸法安定性の磁気テープとして最適な高強度のフィルムが得られ易いために好ましい。さらに、段階的に熱処理することが高強度を維持したまま熱収縮率を低減することができるため好ましい。
【0027】
延伸形式としては、長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行うなどの逐次二軸延伸法が好ましい。
【0028】
以下、本発明の支持体の製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(PET)をポリエステルとして用いた例を代表例として説明する。もちろん、本願はPETフィルムを用いた支持体に限定されるものではなく、他のポリマーを用いたものものでもよい。例えば、ガラス転移温度や融点の高いポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートなどを用いてポリエステルフィルムを構成する場合は、以下に示す温度よりも高温で押出や延伸を行えばよい。
【0029】
まず、ポリエチレンテレフタレートを準備する。ポリエチレンテレフタレートは、次のいずれかのプロセスで製造される。すなわち、(1)テレフタル酸とエチレングリコールを原料とし、直接エステル化反応によって低分子量のポリエチレンテレフタレートまたはオリゴマーを得、さらにその後の三酸化アンチモンやチタン化合物を触媒に用いた重縮合反応によってポリマーを得るプロセス、(2)ジメチルテレフタレートとエチレングリコールを原料とし、エステル交換反応によって低分子量体を得、さらにその後の三酸化アンチモンやチタン化合物を触媒に用いた重縮合反応によってポリマーを得るプロセスである。ここで、エステル化は無触媒でも反応は進行するが、エステル交換反応においては、通常、マンガン、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、リチウム、チタン等の化合物を触媒に用いて進行させ、またエステル交換反応が実質的に完結した後に、該反応に用いた触媒を不活性化する目的で、リン化合物を添加する場合もある。
【0030】
フィルムを構成するポリエステルに不活性粒子を含有させるには、エチレングリコールに不活性粒子を所定割合にてスラリーの形で分散させ、このエチレングリコールを重合時に添加する方法が好ましい。不活性粒子を添加する際には、例えば、不活性粒子の合成時に得られる水ゾルやアルコールゾル状態の粒子を一旦乾燥させることなく添加すると粒子の分散性がよい。また、不活性粒子の水スラリーを直接PETペレットと混合し、ベント式二軸混練押出機を用いて、PETに練り込む方法も有効である。不活性粒子の含有量を調節する方法としては、上記方法で高濃度の不活性粒子のマスターペレットを作っておき、それを製膜時に不活性粒子を実質的に含有しないPETで希釈して不活性粒子の含有量を調節する方法が有効である。
【0031】
次に、得られたPETのペレットを、180℃で3時間以上減圧乾燥した後、固有粘度が低下しないように窒素気流下あるいは減圧下で、270〜320℃に加熱された押出機に供給し、スリット状のダイから押出し、キャスティングロール上で冷却して未延伸フィルムを得る。この際、異物や変質ポリマーを除去するために各種のフィルター、例えば、焼結金属、多孔性セラミック、サンド、金網などの素材からなるフィルターを用いることが好ましい。また、必要に応じて、定量供給性を向上させるためにギアポンプを設けてもよい。フィルムを積層するには、2台以上の押出機およびマニホールドまたは合流ブロックを用いて、複数の異なるポリマーを溶融積層する。
【0032】
次に、このようにして得られた未延伸フィルムを、数本のロールの配置された縦延伸機を用いて、ロールの周速差を利用して縦方向に延伸し(MD延伸)、続いてステンターにより横延伸(TD延伸)を行う、二軸延伸方法について説明する。
【0033】
まず、未延伸フィルムをMD延伸する。MD延伸の延伸温度は、用いるポリマーの種類によって異なるが、未延伸フィルムのガラス転移温度Tgを目安として決めることができる。Tg−10〜Tg+15℃の範囲であることが好ましく、より好ましくはTg℃〜Tg+10℃である。上記範囲より延伸温度が低い場合には、フィルム破れが多発して生産性が低下することがある。MD延伸倍率は2.5〜4.0倍が好ましい。より好ましくは2.8〜3.8倍、さらに好ましくは3.0〜4.0倍である。
【0034】
次に、ステンターを用いて、TD延伸を行う。TD延伸の延伸倍率は、好ましくは3.0〜5.0倍であり、より好ましくは3.2〜4.5倍であり、さらに好ましくは3.5〜4.0倍である。また、TD延伸の延伸温度は好ましくはTg−10〜Tg+15℃の範囲であることが好ましく、より好ましくはTg℃〜Tg+10℃である。
【0035】
TD延伸後、熱固定処理を行うが、フィルムの配向緩和を抑制するために2段階の温度で熱処理を行うことが好ましい。1段階目の熱固定処理はフィルムを緊張下または幅方向に弛緩しながら、好ましくはTD延伸2延伸温度〜TD延伸2延伸温度+30℃、TD延伸2延伸温度+5〜TD延伸2延伸温度+25℃である。熱処理時間は0.5〜10秒の範囲で行うことが好ましい。さらに2段階目は110〜130℃で行うことが好ましい。さらに好ましくは115〜125℃である。より好ましくは磁気テープ作製時の処理温度である120℃で熱固定処理を行うと好ましい。磁気テープ作製時の熱処理温度と熱固定温度を近づけることで、高配向化を維持したまま、分子鎖の歪みをとり、寸法安定性や塗布性の悪化を抑えることが可能となる。その後、25℃に冷却後、フィルムエッジを除去し、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムを得ることができる。
【0036】
次に、磁気記録媒体を製造する方法を説明する。
【0037】
上記のようにして得られた磁気記録媒体用支持体(二軸配向ポリエステルフィルム)を、たとえば0.1〜3m幅にスリットし、速度20〜300m/min、張力50〜300N/mで搬送しながら、一方の面(A面)に磁性塗料および非磁性塗料をエクストルージョンコーターにより重層塗布する。なお、上層に磁性塗料を厚み0.1〜0.3μmで塗布し、下層に非磁性塗料を厚み0.5〜1.5μmで塗布する。その後、磁性塗料および非磁性塗料が塗布された支持体を磁気配向させ、温度80〜130℃で乾燥させる。次いで、反対側の面(B面)にバックコートを厚み0.3〜0.8μmで塗布し、カレンダー処理した後、巻き取る。なお、カレンダー処理は、小型テストカレンダー装置(スチール/ナイロンロール、5段)を用い、温度70〜120℃、線圧0.5〜5kN/cmで行う。その後、60〜80℃にて24〜72時間エージング処理し、1/2インチ(1.27cm)幅にスリットし、パンケーキを作製する。次いで、このパンケーキから特定の長さ分をカセットに組み込んで、カセットテープ型磁気記録媒体とする。
【0038】
ここで、磁性塗料などの組成は例えば以下のような組成が挙げられる。
【0039】
(磁性塗料の組成)
・強磁性金属粉末 : 100質量部
・変成塩化ビニル共重合体 : 10質量部
・変成ポリウレタン : 10質量部
・ポリイソシアネート : 5質量部
・2−エチルヘキシルオレート : 1.5質量部
・パルミチン酸 : 1質量部
・カーボンブラック : 1質量部
・アルミナ : 10質量部
・メチルエチルケトン : 75質量部
・シクロヘキサノン : 75質量部
・トルエン : 75質量部
(バックコートの組成)
・カーボンブラック(平均粒径20nm) : 95質量部
・カーボンブラック(平均粒径280nm): 10質量部
・アルミナ : 0.1質量部
・変成ポリウレタン : 20質量部
・変成塩化ビニル共重合体 : 30質量部
・シクロヘキサノン : 200質量部
・メチルエチルケトン : 300質量部
・トルエン : 100質量部
磁気記録媒体は、例えば、データ記録用途、具体的にはコンピュータデータのバックアップ用途(例えばリニアテープ式の記録媒体(LTO4やLTO5など))や映像などのデジタル画像の記録用途などに好適に用いることができる。
【0040】
(物性の測定方法ならびに効果の評価方法)
本発明における特性値の測定方法並びに効果の評価方法は次の通りである。
【0041】
(1)ヤング率
ASTM−D882(1997年)に準拠してフィルムのヤング率を測定する。なお、インストロンタイプの引張試験機を用い、条件は下記のとおりとする。5回の測定結果の平均値を本発明におけるヤング率とする。
【0042】
・測定装置:インストロン社製超精密材料試験機MODEL5848
・試料サイズ:
フィルム幅方向のヤング率測定の場合
フィルム長手方向2mm×フィルム幅方向12.6mm
(つかみ間隔はフィルム幅方向に8mm)
フィルム長手方向のヤング率測定の場合
フィルム幅方向2mm×フィルム長手方向12.6mm
(つかみ間隔はフィルム長手方向に8mm)
・引張り速度:1mm/分
・測定環境:温度23℃、湿度65%RH
・測定回数:5回。
【0043】
(2)幅方向の湿度膨張係数
フィルムの幅方向に対して、下記条件にて測定を行い、3回の測定結果の平均値を本発明における湿度膨張係数とする。
【0044】
・測定装置:島津製作所製熱機械分析装置TMA−50(湿度発生器:アルバック理工製湿度雰囲気調節装置HC−1)
・試料サイズ:フィルム長手方向10mm×フィルム幅方向12.6mm
・荷重:0.5g
・測定回数:3回
・測定温度:30℃
・測定湿度:40%RHで6時間保持し寸法を測定し時間40分で80%RHまで昇湿し、80%RHで6時間保持したあと支持体幅方向の寸法変化量ΔL(mm)を測定する。次式から湿度膨張係数(ppm/%RH)を算出する。
【0045】
・湿度膨張係数(ppm/%RH)=10×{(ΔL/12.6)/(80−40)}
(3)熱収縮率
JIS C2318(2007)に従って、測定した。
【0046】
・試料サイズ:幅10mm、標線間隔200mm
・処理条件:温度120℃、処理時間30分、無荷重状態
・熱収縮率を次式より求めた。
【0047】
・熱収縮率(%)={(L−L)/L}×100
:加熱処理前の標線間隔 L:加熱処理後の標線間隔
ただし、試料サイズは得られるサンプルの大きさによって標線間隔を小さくして測定しても良い。
【0048】
(4)屈折率
JIS−K7105(1981年)に従って、下記測定器を用いて測定した。
【0049】
・装置:アッベ屈折計 4T(株式会社アタゴ社製)
・光源:ナトリウムD線
・測定温度:25℃
・測定湿度:65%RH
・測定範囲 : 〜1.87
・マウント液:ヨウ化メチレン、硫黄ヨウ化メチレン
複屈折Δn=(nMD−nTD)
nMD;フィルム長手方向の屈折率
nTD;フィルム幅方向の屈折率
(5)融点(Tm)
JIS−K7121(1987年)に従って、示差走査熱量計として、セイコーインスツルメンツ社製DSC(RDC220)、データ解析装置として同社製ディスクステーション(SSC/5200)を用いて、試料5mgをアルミニウム製受皿上、25℃から300℃まで、昇温速度20℃/分で昇温した。そのとき、観測される融解の吸熱ピークのピーク温度を融点(Tm)
(6)ガラス転移温度(Tg)
下記装置および条件で比熱測定を行い、JIS−K7121(1987年)に従って決定する。
【0050】
・装置 :TA Instrument社製温度変調DSC
・測定条件
・加熱温度 :270〜570K(RCS冷却法)
・温度校正 :高純度インジウムおよびスズの融点
・温度変調振幅:±1K
・温度変調周期:60秒
・昇温ステップ:5K
・試料重量 :5mg
・試料容器 :アルミニウム製開放型容器(22mg)
・参照容器 :アルミニウム製開放型容器(18mg)
なお、ガラス転移温度は下記式により算出する。
【0051】
ガラス転移温度=(補外ガラス転移開始温度+補外ガラス転移終了温度)/2
(7)幅寸法安定性
1m幅にスリットしたフィルムを、張力200Nで搬送させ、支持体の一方の表面(A面)に下記組成の磁性塗料および非磁性塗料をエクストルージョンコーターにより重層塗布し(上層が磁性塗料で、塗布厚0.2μm、下層が非磁性塗料で塗布厚0.9μm)、磁気配向させ、乾燥温度100℃で乾燥させる。次いで反対側の表面(B面)に下記組成のバックコートを塗布した後、小型テストカレンダー装置(スチール/ナイロンロール、5段)で、温度85℃、線圧2.0×10N/mでカレンダー処理した後、巻き取る。上記テープ原反を1/2インチ(12.65mm)幅にスリットし、パンケーキを作成する。次いで、このパンケーキから長さ200m分をカセットに組み込んで、カセットテープとする。
【0052】
(磁性塗料の組成)
・強磁性金属粉末 : 100質量部
〔Fe:Co:Ni:Al:Y:Ca=70:24:1:2:2:1(質量比)〕
〔長軸長:0.09μm、軸比:6、保磁力:153kA/m(1,922Oe)、飽和磁化:146Am/kg(146emu/g)、BET比表面積:53m/g、X線粒径:15nm〕
・変成塩化ビニル共重合体(結合剤) : 10質量部
(平均重合度:280、エポキシ基含有量:3.1質量%、スルホン酸基含有量:8×10−5当量/g)
・変成ポリウレタン(結合剤) : 10質量部
(数平均分子量:25,000、スルホン酸基含有量:1.2×10−4当量/g、ガラス転移点:45℃)
・ポリイソシアネート(硬化剤) : 5質量部
(日本ポリウレタン工業(株)製コロネートL(商品名))
・2−エチルヘキシルオレート(潤滑剤) : 1.5質量部
・パルミチン酸(潤滑剤) : 1質量部
・カーボンブラック(帯電防止剤) : 1質量部
(平均一次粒子径:0.018μm)
・アルミナ(研磨剤) : 10質量部
(αアルミナ、平均粒子径:0.18μm)
・メチルエチルケトン : 75質量部
・シクロヘキサノン : 75質量部
・トルエン : 75質量部
(非磁性塗料の組成)
・変成ポリウレタン : 10質量部
(数平均分子量:25,000、スルホン酸基含有量:1.2×10−4当量/g、ガラス転移点:45℃)
・変成塩化ビニル共重合体 : 10質量部
(平均重合度:280、エポキシ基含有量:3.1質量%、スルホン酸基含有量:8×10−5当量/g)
・メチルエチルケトン : 75質量部
・シクロヘキサノン : 75質量部
・トルエン : 75質量部
・ポリイソシアネート : 5質量部
(日本ポリウレタン工業(株)製コロネートL(商品名))
・2−エチルヘキシルオレート(潤滑剤) : 1.5質量部
・パルミチン酸(潤滑剤) : 1質量部
(バックコートの組成)
・カーボンブラック : 95質量部
(帯電防止剤、平均一次粒子径0.018μm)
・カーボンブラック : 10質量部
(帯電防止剤、平均一次粒子径0.3μm)
・アルミナ : 0.1質量部
(αアルミナ、平均粒子径:0.18μm)
・変成ポリウレタン : 20質量部
(数平均分子量:25,000、スルホン酸基含有量:1.2×10−4当量/g、ガラス転移点:45℃)
・変成塩化ビニル共重合体 : 30質量部
(平均重合度:280、エポキシ基含有量:3.1質量%、スルホン酸基含有量:8×10−5当量/g)
・シクロヘキサノン : 200質量部
・メチルエチルケトン : 300質量部
・トルエン : 100質量部
カセットテープのカートリッジからテープを取り出し、下記恒温恒湿槽内へ図1のように作製したシート幅測定装置を入れ、幅寸法測定を行う。なお、図1に示すシート幅測定装置は、レーザーを使って幅方向の寸法を測定する装置で、磁気テープ9をフリーロール5〜8上にセットしつつ荷重検出器3に固定し、端部に荷重となる分銅4を吊す。この磁気テープ9にレーザー光10を照射すると、レーザー発振器1から幅方向に線状に発振されたレーザー光10が磁気テープ9の部分だけ遮られ、受光部2に入り、その遮られたレーザーの幅が磁気テープの幅として測定される。3回の測定結果の平均値を本発明における幅とする。
【0053】
・測定装置:(株)アヤハエンジニアリング社製シート幅測定装置
・レーザー発振器1、受光部2:レーザー寸法測定機 キーエンス社製LS−5040
・荷重検出器3:ロードセル NMB社製CBE1−10K
・恒温恒湿槽:(株)カトー社製SE−25VL−A
・荷重4:分銅(長手方向)
・試料サイズ:幅1/2inch×長さ250mm
・保持時間:5時間
・測定回数:3回測定。
【0054】
(幅寸法変化率:寸法安定性)
2つの条件でそれぞれ幅寸法(l、l)を測定し、次式にて寸法変化率を算出する。具体的には、次の基準で寸法安定性を評価する。
【0055】
A条件で24時間経過後lを測定して、その後B条件で24時間経過後にlを測定する。テープカートリッジのはじめから30m地点から切り出したサンプル、100m地点から切り出したサンプル、170m地点から切り出したサンプルの3点を測定した。×を不合格とする。
【0056】
A条件:10℃10%RH 張力0.8N
B条件:29℃80%RH 張力0.5N
幅寸法変化率(ppm)=10×((l−l)/l
◎:幅寸法変化率の最大値が500(ppm)未満
○:幅寸法変化率の最大値が500(ppm)以上600(ppm)未満
△:幅寸法変化率の最大値が600(ppm)以上700(ppm)未満
×:幅寸法変化率の最大値が700(ppm)以上
(8)塗布性
上記(7)で作製したカセットテープを、次の基準でテープの磁性層の塗布性を評価した。
【0057】
◎:ムラや塗布抜け、また剥がれが全く無く塗布性良好である。
【0058】
○:ムラや塗布抜け、剥がれがほぼ無く塗布性に問題ない。
【0059】
△:ムラや塗布抜け、剥がれが時々発生し塗布性に若干問題あり。
【0060】
×:ムラや塗布抜け、剥がれが頻発しており塗布性に問題あり。
【0061】
(9)製膜安定性
フィルムの製膜性について、下記の基準で評価した。
【0062】
○:フィルム破れの発生がほとんどなく、安定製膜が可能である。
【0063】
△:フィルム破れが時々発生し、製膜安定性が若干低い。
【0064】
×:フィルム破断が多数発生し、製膜安定性が低い。
【実施例】
【0065】
次の実施例に基づき、本発明の実施形態を説明する。なお、ここでポリエチレンテレフタレートをPET、ポリエチレンナフタレートPENと表記する。
【0066】
(参考例1)
テレフタル酸ジメチル194質量部とエチレングリコール124質量部とをエステル交換反応装置に仕込み、内容物を140℃に加熱して溶解した。その後、内容物を撹拌しながら酢酸マグネシウム4水塩0.1質量部および三酸化アンチモン0.05質量部を加え、140〜230℃でメタノールを留出しつつエステル交換反応を行った。次いで、リン酸トリメチルの5質量部エチレングリコール溶液を1質量部(リン酸トリメチルとして0.05質量部)添加した。
【0067】
トリメチルリン酸のエチレングリコール溶液を添加すると反応内容物の温度が低下する。そこで余剰のエチレングリコールを留出させながら反応内容物の温度が230℃に復帰するまで撹拌を継続した。このようにしてエステル交換反応装置内の反応内容物の温度が230℃に達したら、反応内容物を重合装置へ移行した。
【0068】
移行後、反応系を230℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を0.1kPaまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。最終温度、最終圧力に到達した後、2時間(重合を始めて3時間)反応させたところ、重合装置の撹拌トルクが所定の値(重合装置の仕様によって具体的な値は異なるが、本重合装置にて固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレートが示す値を所定の値とした)を示した。そこで反応系を窒素パージし常圧に戻して重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングして固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレートのPETペレットXを得た。(Tm=255℃、Tg=78℃)
(参考例2)
280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、参考例1にて作製したPETペレットXを99質量部と平均径0.06μmのコロイダルシリカ粒子の10質量部水スラリーを10質量部(コロイダルシリカ粒子として1質量部)供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、平均径0.06μmのコロイダルシリカ粒子を1質量部含有する固有粘度0.62のPETペレットZ0.06を得た。
【0069】
(参考例3)
280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、参考例1にて作製したPETペレットXを98質量部と平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子の10質量部水スラリーを20質量部(球状架橋ポリスチレンとして2質量部)供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子を2質量部含有する固有粘度0.62のPETペレットZ0.3を得た。
【0070】
(参考例4)
平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子ではなく平均径0.8μmの球状架橋ポリスチレン粒子を用いたこと以外、参考例2と同様の方法にて、平均径0.8μmの球状架橋ポリスチレン粒子を2質量部含有する固有粘度0.62のPETペレットZ0.8を得た。
【0071】
(参考例5)
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル100質量部とエチレングリコール60質量部の混合物に、酢酸マンガン・4水和物塩0.03質量部を添加し、150℃の温度から240℃の温度に徐々に昇温しながらエステル交換反応を行った。途中、反応温度が170℃に達した時点で三酸化アンチモン0.024質量部を添加した。また、反応温度が220℃に達した時点で3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩0.042質量部(2mmol%に相当)を添加した。その後、引き続いてエステル交換反応を行い、トリメチルリン酸0.023質量部を添加した。次いで、反応生成物を重合装置に移し、290℃の温度まで昇温し、30Paの高減圧下にて重縮合反応を行い、重合装置の撹拌トルクが所定の値(重合装置の仕様によって具体的な値は異なるが、本重合装置にて固有粘度0.65のポリエチレン−2,6−ナフタレートが示す値を所定の値とした)を示した。そこで反応系を窒素パージし常圧に戻して重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングして固有粘度0.65のPENペレットX’を得た。
【0072】
(参考例6)
280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、参考例7にて作製したPENペレットX’を99質量部と平均径0.06μmのコロイダルシリカ粒子の10質量部水スラリーを10質量部(コロイダルシリカ粒子として1質量部)供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、平均径0.06μmのコロイダルシリカ粒子を1質量部含有する固有粘度0.65のPENペレットZ’0.06を得た。
【0073】
(参考例7)
280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、参考例7にて作製したPENペレットX’を98質量部と平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子の10質量部水スラリーを20質量部(球状架橋ポリスチレンとして2質量部)供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子を2質量部含有する固有粘度0.65のPENペレットZ’0.3を得た。
【0074】
(参考例8)
平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子ではなく平均径0.8μmの球状架橋ポリスチレン粒子を用いたこと以外、参考例9と同様の方法にて、平均径0.8μmの球状架橋ポリスチレン粒子を2質量部含有する固有粘度0.65のPENペレットZ’0.8を得た。
【0075】
(実施例1)
押出機E、F2台を用い、280℃に加熱された押出機Eには、参考例1、2で得られたPETペレットX80質量部、PETペレットZ0.0620質量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給し、同じく280℃に加熱された押出機Fには、参考例1、3、4、5で得られたPETペレットX84質量部、PETペレットZ0.315質量部、およびPETペレットZ0.81質量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。2層積層するべくTダイ中で合流させ(積層比E(A面側)/F(B面側)=20/1)、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製した。
【0076】
続いて、得られた積層未延伸フィルムを加熱したロール群で予熱した後、90℃の温度で3.3倍延伸を行い(MD延伸)、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の85℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に90℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に4.0倍延伸(TD延伸)した。引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで180℃の温度でしながら5秒間の熱処理を施し、さらに120℃の温度で処理を行った。次いで、25℃に均一に冷却後、フィルムエッジを除去し、コア上に巻き取って厚さ5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムを評価したところ、表2に示すように、寸法安定性、塗布性、製膜性に優れた特性を有していた。
【0077】
(実施例2)
表1の通り製膜条件を変更した以外は実施例1と同様に二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0078】
得られた二軸配向ポリエステルフィルムを評価したところ、表2に示すように、磁気テープとして使用した際にTD方向のヤング率が低いためやや寸法安定性が劣るものの塗布性、製膜性に優れた特性を有していた。
【0079】
(実施例3)
表1の通り製膜条件を変更した以外は実施例1と同様に二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0080】
得られた二軸配向ポリエステルフィルムを評価したところ、表2に示すように、磁気テープとして使用した際にTD方向のヤング率が高いためやや製膜性が劣るものの寸法安定性、製膜性に優れた特性を有していた。
【0081】
(実施例4)
表1の通り製膜条件を変更した以外は実施例1と同様に二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0082】
得られた二軸配向ポリエステルフィルムを評価したところ、表2に示すように、磁気テープとして使用した際にTD方向の120℃の熱収縮率が大きいためやや塗布性が劣るものの寸法安定性、製膜性に優れた特性を有していた。
【0083】
(実施例5)
表1の通り製膜条件を変更した以外は実施例1と同様に二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0084】
得られた二軸配向ポリエステルフィルムを評価したところ、表2に示すように、磁気テープとして使用した際に湿度膨張係数が大きいためやや寸法安定性が劣るものの塗布性、製膜性に優れた特性を有していた。
【0085】
(実施例6)
実施例1で用いたPETペレットX、PETペレットZ0.06、PETペレットZ0.3、PETペレットZ0.8を参考例5、6、7、8で得られたPENペレットX’、PENペレットZ’0.06、PENペレットZ’0.3、PENペレットZ’0.8に変更し積層未延伸フィルムを作製したことと表1の通り製膜条件を変更したこと以外は実施例1と同様に二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0086】
得られた二軸配向ポリエステルフィルムを評価したところ、表に示すように、寸法安定性、塗布性、製膜性に優れた特性を有していた。
【0087】
(比較例1)
表1の製膜条件で延伸したこと以外は実施例1と同様に二軸配向ポリエステルフィルムを得た。TD方向の120℃の熱収縮率が大きいため、得られた二軸配向ポリエステルフィルムは塗布性が大きく劣っていた。
【0088】
(比較例2)
表1の製膜条件で延伸したこと以外は実施例1と同様に二軸配向ポリエステルフィルムを得た。TD方向の120℃の熱収縮率が負の値をとなり膨張するため、塗布性が大きく劣っていた。
【0089】
(比較例3)
表1の製膜条件で延伸したこと以外は実施例1と同様に二軸配向ポリエステルフィルムを得た。TDヤング率が小さいため、得られた二軸配向ポリエステルフィルムは寸法安定性が大きく劣っていた。
【0090】
(比較例4)
表1の製膜条件で延伸したこと以外は実施例1と同様に二軸配向ポリエステルフィルムを得た。TD延伸倍率が大きいため、製膜性が悪化し二軸配向ポリエステルフィルムを安定して得られなかった。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】幅寸法を測定する際に用いるシート幅測定装置の模式図である。
【符号の説明】
【0094】
1:レーザー発振器
2:受光部
3:荷重検出器
4:荷重
5:フリーロール
6:フリーロール
7:フリーロール
8:フリーロール
9:磁気テープ
10:レーザー光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの幅方向の120℃30分での熱収縮率が0〜5%であり、幅方向のヤング率が7〜12GPaであることを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項2】
フィルム長手方向の120℃30分の熱収縮率が0〜5%である、請求項1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項3】
フィルム幅方向の湿度膨張係数が0〜6ppm/%RHである請求項1または2に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の二軸配向ポリエステルフィルムに磁性層を塗布してなる磁気記録媒体。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−72219(P2012−72219A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216627(P2010−216627)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】