説明

二軸配向積層フィルムおよびそれを用いたデータストレージ

【課題】データストレージのベースフィルムに用いても優れた電磁変換特性を発現できる走行性に優れた二軸配向積層フィルムの提供。
【解決手段】磁性層形成側に位置するフィルム層Aは、平均粒径0.05〜0.15μmと平均粒径が0.20〜0.40μmの不活性球状粒子を0.05〜0.20質量%と0.03〜0.10質量%含有し、他方の表面に位置するフィルム層Bは、平均粒径0.05〜0.15μmと平均粒径0.20〜0.40μmと平均粒径0.45〜0.55μmの不活性球状粒子を0.05〜0.25質量%と0.03〜0.50質量%と0〜0.03質量%含有し、表面粗さが磁性層側6〜15nmで、他方は磁性層側よりも1nm以上大きくかつ10〜25nmで、磁性層側の表面粗さの周波数解析による波長70μmでの強度が0.40〜0.90nmの範囲にある二軸配向積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記憶容量が0.8TB以上であるデータストレージのベースフィルムに用いる二軸配向積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜5には、磁気テープとしたときのエラーを低減するために、ベースフィルムの表面を平坦にすることや、ベースフィルム中に含有させる粒子として粗大粒子の少ないものを用いること、およびその両方を具備したフィルムが提案されている。
【0003】
しかしながら、前述の特許文献1〜5で提案されるような平坦でかつ表面欠点が少ないフィルムだと、表面が非常に平坦であることから、フィルムの製膜工程やデータストレージの加工工程において、生産性を向上させようと搬送速度などを速くすると、搬送ロールなどとの摩擦係数が大きいことから、破断などの工程トラブルが頻発し、生産性を向上できないといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−114492号公報
【特許文献2】特開2003−291288号公報
【特許文献3】特開2002−363311号公報
【特許文献4】特開2002−363310号公報
【特許文献5】特開2002−059520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、記憶容量が0.8TB以上であるデータストレージのベースフィルムに用いても優れた電磁変換特性を発現でき、フィルムの製膜工程やデータストレージの加工工程において、優れた生産性も発現できる二軸配向フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決しようと鋭意研究した結果、データストレージの製造工程において、磁性層の平坦化処理(カレンダー加工など)を併用し、かつ、ベースフィルムの表面にあるこれまであまり問題視されなかった特定の周期のうねりを低減させることで,Raで表す表面粗さが粗いものであっても高い電磁変換特性が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
かくして本発明によれば、磁気記録テープのベースフィルムに用いるフィルム層Aおよび層Bからなる二軸配向積層フィルムであって、
フィルム層Aは、磁性層を形成する側の表面(表面A)に位置し、フィルム層Aの質量を基準として、平均粒径0.05〜0.15μmの不活性球状粒子(A1)を0.05〜0.20質量%含有し、かつ平均粒径が0.20〜0.40μmの不活性球状粒子(A2)を0.03〜0.10質量%含有すること、
フィルム層Bは、磁性層を形成しない側の表面(表面B)に位置し、フィルム層Bの質量を基準として平均粒径0.05〜0.15μmの不活性球状粒子(B1)を0.05〜0.25質量%含有し、平均粒径が0.20〜0.40μmの不活性球状粒子(B2)を0.03〜0.50質量%含有し、かつ平均粒径が0.45〜0.55μmの不活性球状有機粒子(B3)を含有しないか、0.01〜0.03質量%含有すること、そして
表面Aの表面粗さ(RaA)が6〜15nmで、表面Bの表面粗さ(RaB)がRaAよりも1nm以上大きくかつ10〜25nmであり、表面Aの表面粗さを周波数解析したときの波長70μmでの強度が0.40nm〜0.90nmである二軸配向積層フィルムが提供される。
【0008】
また、本発明によれば、フィルムが、エチレンテレフタレートまたはエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルからなる二軸配向積層フィルムも提供される。
さらにまた、本発明によれば、上記本発明の二軸配向積層フィルムと、その表面A側に形成された磁性層とからなる記憶容量が0.8TB以上であるデータストレージ、さらに磁性層が塗布によって形成され、記録方式がリニア記録方式であるデータストレージも提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の二軸配向積層フィルムは、表面粗さが粗いことから、フィルム製膜工程やデータストレージの加工工程において、走行性に優れ、工程トラブルを減少して,歩留まりを上げることができ、しかも、特定周期のうねりが低減されていることから、記憶容量が0.8TB以上であるデータストレージのベースフィルムに用いたとき、優れた電磁変換特性をも発現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について、詳述する。
本発明の二軸配向積層フィルムは、磁性層を形成する側の表面の表面粗さ(RaA)が6〜15nmであり、好ましくは7〜14nmであり、さらに好ましくは8〜13nmである。RaAが下限未満では、二軸配向積層フィルムの表面Aが平坦過ぎて、フィルムの製膜工程やデータストレージの加工工程において、搬送ロール等との摩擦係数が大きくなり、工程トラブルを引き起したり、歩留まりが極端に悪くなる。一方、上限を超えると、データストレージの製造工程でも電磁変換特性への影響を抑えることが困難になり、データストレージとしたときに、エラーが発生したり、電磁変換特性が低下したりする。
【0011】
また、本発明の二軸配向積層フィルムは、他方の表面(表面B)、すなわち磁性層を形成しない側表面は、その表面粗さ(RaB)がRaAよりも1nm以上大きく、かつ10〜25nmである。RaBとRaAとの差が1nm未満では、走行性と電磁変換特性とを高度に両立するのが難しくなる。また、RaBが下限未満では、二軸配向積層フィルムの表面Bが平坦過ぎて、フィルムの製膜工程やデータストレージの加工工程において、搬送ロール等との摩擦係数が大きくなり、工程トラブルを引き起したり、歩留まりが極端に悪くなる。一方、RaBが上限を超えると、データストレージの製造工程でも電磁変換特性への影響を抑えることが困難になり、データストレージとしたときに、エラーが発生したり、電磁変換特性が低下したりする。好ましいRaBの範囲は、11〜22nm、さらに13〜20nmの範囲である。
【0012】
さらにまた、本発明の二軸配向積層フィルムは、表面Aの表面粗さを周波数解析したときの波長70μmの強度が0.10nm〜0.95nmであり、好ましくは0.20nm〜0.85nmであり、さらに好ましくは0.25nm〜0.80nmnmである。波長70μmのうねりは電磁変換特性悪化させるため,上限を超えると,データストレージとしたときにエラーが多発してしまう。なお、ここでいう波長70μmの強度とは、そもそも表面粗さのうねりを表すものであり、表面A側の表面を形成する後述のフィルム層A中の不活性粒子による突起や、表面B側の表面を形成する後述のフィルム層B中の不活性粒子による突き上げなどによって大きくなる。そして、微細な凹凸は磁性層の形成過程で電磁変換特性などに影響しないように加工できるが、この波長70μmの大きなうねりは、その磁性層の形成過程でも影響しないようにすることが困難であり、それを見出し、かつ抑制したのが本発明の特徴の一つである。
【0013】
ところで、このような表面粗さと波長70μmの強度とは、それぞれの表面Aおよび表面Bを形成するフィルム層に含有させる不活性粒子の種類、粒径、粒子量およびそれらの組み合わせならびに延伸条件によって調整できる。以下、それらについて、詳述する。
【0014】
まず、表面Aを形成するフィルム層Aは、後述の不活性球状粒子(A1)および不活性球状粒子(A2)の2種を特定量含有させる。1種類だけでは、表面粗さを上記範囲にしつつ、波長70μmの強度を0.40〜0.90nmの範囲にするのが難しくなる。不活性球状粒子(A1)の平均粒径(DA1)は、0.05〜0.15μm、さらに0.07〜0.14μmの範囲にあることが好ましい。DA1が上記下限未満では、表面粗さが平坦過ぎて走行性が不良となり、他方上記上限を超えるようでは、うねりが大きくなり波長70μmの強度が増し電磁変換特性悪化、となりやすい。また、含有させる該不活性球状粒子(A1)の含有量(WA1)は、フィルム層Aの質量を基準として、0.05〜0.20質量%、さらに0.07〜0.18質量%、特に0.08〜0.15質量%の範囲で含有させることが好ましい。WA1が上記下限未満では、摩擦係数が大きくなり走行性が不良となり、他方上記上限を超えるようでは、表面粗さが粗くなりすぎ電磁変換特性悪化となりやすい。つぎに、不活性球状粒子(A2)の平均粒径(DA2)は、0.20〜0.40μm、さらに0.18〜0.36μmの範囲にあることが好ましい。DA2が上記下限未満では、DA1との差が小さくなり過ぎ摩擦係数が大きくなり、他方上記上限を超えるようでは、スペーシングロスが大きくなり電磁変換特性悪化となりエラーが発生しやすい。また、含有させる該不活性球状粒子(A2)の含有量(WA2)は、不活性粒子A2を含有するフィルム層の質量を基準として、0.03〜0.10質量%、さらに0.03〜0.08質量%、特に0.05〜0.08質量%の範囲で含有させることが好ましい。WA2が上記下限未満では、摩擦係数が大きくなり走行性が不良となり、他方上記上限を超えるようでは、表面粗さが粗くなりすぎ電磁変換特性悪化となりやすい。
【0015】
このような不活性球状粒子(A1)および(A2)としては、粗大粒子を含まないか含有するとしても極めて少ない粒度分布がシャープな、一次粒子の状態で存在しやすい不活性粒子であることが好ましい。そのような観点から、不活性球状粒子(A1)および(A2)としては、シリコーン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋ポリエステル、架橋ポリスチレンなどの有機高分子粒子および球状シリカからなる群から選ばれる少なくとも1種の粒子であることが好ましく、特にシリコーン樹脂、架橋ポリスチレンおよび球状シリカからなる群から選ばれる少なくとも1種の粒子であることが好ましい。なお、本発明における球状とは、例えば長径と短経の比が2以下の略球状から1の真球状を包含するものである。
【0016】
つぎに、表面Bを形成するフィルム層Bは、後述の不活性球状粒子(B1)および不活性球状粒子(B2)の2種もしくはさらに不活性球状有機粒子(B3)の3種類を特定量含有させることが上述の表面特性を発現させる上で好ましい。1種類だけでは、表面粗さを上記範囲にしつつ、波長70μmの強度を0.40〜0.90nmの範囲にするのが難しくなる。
【0017】
まず、不活性球状粒子(B1)の平均粒径(DB1)は、0.05〜0.15μm、さらに0.07〜0.14μmの範囲にあることが好ましい。DB1が上記下限未満では、表面粗さが平坦過ぎて走行性不良となり、他方上記上限を超えるようでは、表面Aへの突き上げが大きくなり電磁変換特性悪化となりやすい。また、含有させる該不活性球状粒子(B1)の含有量(WB1)は、フィルム層Bの質量を基準として、0.05〜0.15質量%、さらに0.06〜0.13質量%、特に0.08〜0.12質量%の範囲で含有させることが好ましい。WB1が上記下限未満では、摩擦係数が大きくなり走行性が不良となり、他方上記上限を超えるようでは、表面Aへの突き上げによりうねりが大きくなり電磁変換特性悪化となりやすい。
【0018】
つぎに、不活性球状粒子(B2)の平均粒径(DB2)は、0.20〜0.40μm、さらに0.24〜0.36μmの範囲にあることが好ましい。DA2が上記下限未満では、摩擦係数が大きくなり走行性が不良となり、他方上記上限を超えるようでは、表面粗さが粗くなりすぎうねりが大きく電磁変換特性悪化となりやすい。また、含有させる該不活性球状粒子(B2)の含有量(WB2)は、不活性粒子B2を含有するフィルム層の質量を基準として、0.03〜0.50質量%、さらに0.05〜0.46質量%、特に0.06〜0.42質量%の範囲で含有させることが好ましい。WB2が上記下限未満では、DB1との差が小さくなり過ぎ摩擦係数が大きくなり、他方上記上限を超えるようでは、突き上げによるうねりが大きくなりすぎ電磁変換特性悪化となりやすい。
【0019】
さらにまた、本発明の二軸配向積層フィルムは、さらに不活性球状有機粒子(B3)を含有することが好ましい。不活性球状粒子(B3)の平均粒径(DB3)は、0.45〜0.55μm、さらに0.47〜0.53μmの範囲にあることが好ましい。DB3が上記下限未満では、摩擦係数が十分に下げることができず走行性が不良となり、他方上記上限を超えるようでは、転写による表面Aの凹で電磁変換特性悪化となりやすい。また、含有させる該不活性球状粒子(B3)の含有量(WB3)は、不活性粒子B3を含有するフィルム層の質量を基準として、0.0.40〜0.030質量%、さらに0.012〜0.028質量%、特に0.012〜0.026質量%の範囲で含有させることが好ましい。WB3が上記下限未満では、貼り付きが発生して走行性不良となり、他方上記上限を超えるようでは、転写が多発して電磁変換特性不良となりやすい。
【0020】
このような不活性球状粒子(B1)および(B2)としては、前述の不活性球状粒子(A1)および(A2)で説明したのと同様なことが言え、フィルムを製造する工程で発生するフィルム屑などを再利用することかできることから、同じものであることが好ましい。また、不活性粒子(B1)と(B2)以外の粒子を加える場合は、不活性球状有機粒子(B3)であることが、表面粗さを粗くしつつ、波長70nmの強度を抑える観点から好ましい。不活性球状有機粒子(B3)が無機粒子であると、波長70μmの強度を抑えるのが困難になりやすい。なお、不活性球状有機粒子(B3)としては、不活性球状粒子(A1)および(A2)の有機粒子で説明したのと同様なことが言える。また、不活性球状粒子(A1)、(A2)、(B1)、(B2)を無機粒子とし、不活性球状有機粒子(B3)を有機粒子とする組合せでも、不活性球状粒子(A1)、(A2)、(B1)、(B2)および不活性球状有機粒子(B3)のすべてを有機粒子とする組合せでもよい。
【0021】
このような不活性球状粒子(A1)、不活性球状粒子(A2)、不活性球状粒子(B1)、不活性球状粒子(B2)さらに必要に応じて不活性球状有機粒子(B3)を、上述のような組合せで用いることにより、表面粗さと波長70μmの強度を制御できる。
【0022】
また、波長70μmの強度を低くする観点からは、横方向の延伸温度を高くすることや、横方向の延伸倍率を高くすることで小さくすることができる。その条件は、それぞれの延伸条件やフィルムを形成する樹脂によって異なることから一律に規定できないが、波長70μmの強度を測定し、その結果に基づいて、調整すればよい。
【0023】
さらに、本発明のその他の好ましい態様について説明する。
本発明の二軸配向積層フィルムはそれ自体公知の熱可塑性樹脂から成形されたものでよいが、ポリエステルフィルムであることが好ましい。本発明におけるポリエステルとしては、フィルムへの製膜が可能なものであれば、それ自体公知のものを採用でき、例えば、グリコール成分と芳香族ジカルボン酸成分との重縮合によって得られる芳香族ポリエステルが好ましい。具体的なかかる芳香族ジカルボン酸成分として、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸などの6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸が挙げられ、またグリコール成分として、例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオールが挙げられる。
【0024】
これらの中でも、高温での加工時の寸法安定性の点からは、エチレンテレフタレートまたはエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる繰り返し単位とするものが好ましく、特にエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる繰り返し単位とするものが好ましい。
【0025】
また、より環境変化に対する寸法安定性を向上させる観点から、国際公開2008/096612号パンフレットに記載された6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、6,6’−(トリメチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分および6,6’−(ブチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分などを共重合したものも挙げられる。
【0026】
本発明におけるポリエステルは、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を含有しない場合はο−クロロフェノール中、35℃において、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を含有する場合はP−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(40/60質量比)の混合溶媒中、35℃において、測定したときの固有粘度が0.40dl/g以上であることが好ましく、0.40〜1.0dl/gであることがさらに好ましい。固有粘度が0.4dl/g未満ではフィルム製膜時に切断が多発したり、成形加工後の製品の強度が不足することがある。一方固有粘度が1.0dl/gを超える場合は重合時の生産性が低下する。
【0027】
また、本発明における熱可塑性樹脂の融点は、200〜300℃であることが好ましく、更に好ましくは210〜290℃、特に好ましくは220〜280℃である。融点が下限に満たないと二軸配向フィルムの耐熱性が不十分な場合があり、融点が上限を超える場合は後述は溶融混練する際の温度が非常に高温になり、熱劣化などを引き起こしやすくなる。
【0028】
なお、本発明における熱可塑性樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、それ自体公知の他の共重合成分をさらに共重合、例えば繰り返し単位のモル数に対して10モル%以下、さらに5モル%以下の範囲で共重合していてもよいし、他の熱可塑性樹脂などを、例えば20質量%以下、さらに10質量%以下の範囲でブレンドしたものであっても良い。
【0029】
つぎに、本発明の二軸配向積層フィルムの製造方法について説明する。まず、本発明における熱可塑性樹脂は、それ自体公知の方法で製造できる。この際、異物などによる欠点などを抑える観点から、精製を繰り返して、異物を低減しておくのが好ましい。
【0030】
また、熱可塑性樹脂に不活性粒子を含有させる方法については、熱可塑性樹脂の重合段階でスラリーなどの状態で添加し、さらにフィルターなどによって粗大粒子を低減しつつ、粒子含有量が0.02〜1.0質量%のマスター樹脂組成物を作成し、該マスター樹脂組成物を、粒子を含有しない熱可塑性樹脂で希釈するのが、不活性粒子の凝集による粗大突起を低減する上で好ましい。
【0031】
なお、本発明における熱可塑性樹脂は、本発明の効果を阻害しない範囲で、紫外線吸収剤等の安定剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、離型剤、核剤、を必要に応じて配合しても良いが、少なくとも磁性層を形成する側の表面に用いる熱可塑性樹脂は、不活性粒子(A1)および(A2)のほかに、表面欠点を形成しやすい他の熱可塑性ポリマー、顔料、充填剤、ガラス繊維、炭素繊維、層状ケイ酸塩などは含有させないのが好ましい。
【0032】
ところで、本発明の二軸配向フィルムは、データストレージのベースフィルムに用いることから、製膜方向と幅方向の2方向に配向している。このような二軸配向フィルムは、例えば上述のポリエステルを溶融状態で押出し、二軸方向に延伸することで製造できる。なお、製膜方法はそれ自体公知のものを採用することができる。
【0033】
例えば、二軸配向積層ポリエステルフィルムで説明すると、押出し口金内または口金以前(一般に、前者はマルチマニホールド方式、後者はフィードブロック方式と呼ぶ)で、表面A側を形成するポリエステルAと表面B側を形成するポリエステルBとを、それぞれ高精度のフィルターでろ過したのち、溶融状態にて積層複合し、上記好適な厚み比の積層構造となし、次いで口金よりポリエステルの融点(Tm)〜(Tm+70)℃の温度でフィルム状に共押出ししたのち、30〜70℃の冷却ロールで急冷固化し、未延伸積層フィルムを得る。その後、上記未延伸積層フィルムを常法に従い、一軸方向(縦方向または横方向)に(ポリエステルのガラス転移温度(Tg)−10)〜(Tg+70)℃の温度で2.5〜8.0倍の倍率で、好ましくは3.0〜7.5倍の倍率で延伸し、次いで上記延伸方向とは直角方向(一段目延伸が縦方向の場合には、二段目延伸は横方向となる)に(Tg)〜(Tg+70)℃の温度で2.5〜8.0倍の倍率で、好ましくは3.0〜7.5倍の倍率で延伸する。さらに、必要に応じて、縦方向および/または横方向に再度延伸してもよい。すなわち、2段、3段、4段あるいは多段の延伸を行うとよい。全延伸倍率としては、通常9倍以上、好ましくは10〜35倍、さらに好ましくは12〜30倍である。
【0034】
さらに、前記二軸配向フィルムは(Tg+70)〜(Tm−10)℃の温度、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムの場合、180〜250℃で熱固定結晶化することによって、優れた寸法安定性が付与される。その際、熱固定時間は1〜60秒が好ましい。
また、上記の説明は逐次二軸延伸で説明したが、同時二軸延伸でも同様な温度条件や延伸倍率によって製造できる。
【実施例】
【0035】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明におけるポリエステル、ポリエステルフィルムおよびデータストレージの特性は、下記の方法で測定および評価した。
【0036】
(1)固有粘度
得られたポリエステルの固有粘度は、前述のとおり、o−クロロフェノール、35℃で測定し、o−クロロフェノールでは均一に溶解するのが困難な場合は、p−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(40/60質量比)の混合溶媒を用いて35℃で測定して求めた。
【0037】
(2)中心面平均粗さ(Ra)
非接触式三次元表面粗さ計(ZYGO社製:New View5022)を用いて測定倍率25倍、測定面積283μm×213μm(=0.0603mm)の条件にて測定し、該粗さ計に内蔵された表面解析ソフトMetro Proにより中心面平均粗さ(Ra)を求めた。
【0038】
(3)周波数解析
中心面平均粗さの測定データをイメージメトロロジー社製SPIP画像解析ソフトウェアーによりフーリエ変換を行い,波長70μmの点の強度を読みとる。
【0039】
(4)ガラス転移点および融点
ガラス転移点、融点はDSC(TAインスツルメンツ株式会社製、商品名:Thermal lyst2920)により昇温速度20℃/minで測定した。
【0040】
(5)ヤング率
得られたフィルムを試料巾10mm、長さ15cmで切り取り、チャック間100mm、引張速度10mm/分、チャート速度500mm/分の条件で万能引張試験装置(東洋ボールドウィン製、商品名:テンシロン)にて引っ張る。得られた荷重―伸び曲線の立ち上がり部の接線よりヤング率を計算する。
【0041】
(6)データストレージ(磁気テープ)の作成
1m幅にスリットしたポリエステルフィルムを、張力20kg/mで搬送させ、フィルムの平坦な側の表面に下記組成の磁性塗料および非磁性塗料をエクストルージョンコーターにより重層塗布(上層は磁性塗料で、塗布厚0.1μm、非磁性下層の厚みは1.5μmとした。)し、磁気配向させ、乾燥温度100℃で乾燥させる。次いで反対面に下記組成のバックコートを固形分の厚みが0.5μmとなるように塗布した後、小型テストカレンダー装置(スチール/ナイロンロール、5段)で、温度85℃、線圧200kg/cmでカレンダー処理し、巻き取る。上記テープ原反を1/2インチ幅にスリットし、それをLTO用のケースに組み込み、長さが820mで磁気記録容量が0.8TBのデータストレージカートリッジを作成した。
(磁性塗料の組成)
・超微粒子メタル粉体 : 100質量部
・変成塩化ビニル共重合体 : 10質量部
・変成ポリウレタン : 10質量部
・ポリイソシアネート : 5質量部
・ステアリン酸 : 1.5質量部
・オレイン酸 : 1質量部
・カーボンブラック : 1質量部
・アルミナ : 10質量部
・メチルエチルケトン : 75質量部
・シクロヘキサノン : 75質量部
・トルエン : 75質量部
非磁性塗料の組成
・超微粒子酸化鉄 :100質量部
・エスレックA(積水化学製塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体 :10質量部
・ニッポラン2304(日本ポリウレタン 製ポリウレタンエラストマ):10質量部
・コロネートL(日本ポリウレタン製ポリイソシアネート) : 5質量部
・レシチン : 1質量部
・メチルエチルケトン :75質量部
・メチルイソブチルケトン :75質量部
・トルエン :75質量部
・カーボンブラック : 2質量部
・ラウリン酸 :1.5質量部
(バックコートの組成)
・カーボンブラック(平均粒径20nm) : 95質量部
・カーボンブラック(平均粒径280nm): 10質量部
・αアルミナ : 0.1質量部
・変成ポリウレタン : 20質量部
・変成塩化ビニル共重合体 : 30質量部
・シクロヘキサノン : 200質量部
・メチルエチルケトン : 300質量部
・トルエン : 100質量部
【0042】
(7)平均粒子径および粒子含有量
フィルムからポリエステルをプラズマ低温灰化処理法(たとえばヤマト科学製PR−503型)で除去し粒子を露出させる。処理条件はポリエステルは灰化されるが粒子はダメージを受けない条件を選択する。これをSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、粒子の画像(粒子によってできる光の濃淡)をイメージアナライザーに結び付け、観察箇所を変えて粒子数5000個以上で次の数値処理を行ない、それによって求めた数平均径Dを平均粒径とする。
また、粒子含有量は、積層フィルムからフィルム層Aとフィルム層Bをそれぞれ削り取り、ポリエステルは溶解し粒子は溶解させない溶媒を選択し、粒子をポリエステルから遠心分離し、粒子の全体重量に対する比率(重量%)をもって全体としての粒子含有量を求める。そして、上記平均粒径の測定から、それぞれの不活性粒子の頻度が求められるので、それに基づき、個々の不活性粒子の含有量を算出した。
【0043】
(8)加工性
上記(6)のデータストレージの作成を、フィルムの搬送速度が(500)m/分で行ったときに塗布斑などの欠陥がない場合を◎、フィルムの搬送速度が(500)m/分で行ったときに塗布斑などの欠陥があるものの、フィルムの搬送速度を(200)m/分で行ったときには塗布斑などの欠陥がない場合を○、フィルムの搬送速度を(200)m/分で行ったときにも塗布斑などの欠陥がある場合を×と評価した。
【0044】
(9)電磁変換特性
電磁変換特性測定には、ヘッドを固定した1/2インチリニアシステムを用いた。記録は、電磁誘導型ヘッド(トラック幅14.3μm、ギャップ0.1μm)を用い、再生はMRヘッド(5μm)を用いた。ヘッド/テープの相対速度は7m/秒とし、記録波長0.2μmの信号を記録し、再生信号をスペクトラムアナライザーで周波数分析し、キャリア信号(波長0.2μm)の出力Cと、スペクトル全域の積分ノイズNの比をC/N比とし、実施例1を0dBとした相対値を求め、以下の基準で、評価した。
◎ : +1dB以上
○ : −1dB以上、+1dB未満
× : −1dB未満
【0045】
[参考例1]樹脂1の作成
蒸留による精製を繰り返した2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステルとエチレングリコールとをそれぞれ100部と70部用意し、それらを攪拌機、精留塔、冷却器を供えた反応槽に仕込み、150℃まで昇温した。その後、トリメリット酸チタンをTi元素量として、全ジカルボン酸成分のモル数に対して7mmol%となるように添加し、反応槽全体を窒素により0.25MPaの圧力下で加熱して、反応槽内部温度を240℃に昇温した。反応の進行に従い、圧力一定のまま内温を250℃まで上げた。その後、反応槽内の圧力を常圧にゆっくりと戻し、トリメチルホスフェートをリン元素量で、全ジカルボン酸成分のモル数に対して12mmol%となるように添加し、余剰のエチレングリコールを追い出して、エステル交換反応を終了させた。
得られた反応生成物を重合反応槽へと移送した。このとき、移送途中で95%濾過精度5μmの金属繊維製のフィルターを通して濾過した。重合反応槽では250℃からゆっくりと昇温しながら、また減圧させながら重縮合反応を行い、最終的に290℃、30Paで所定の重合度になるまで重縮合を行い、実質的に不活性粒子を含有しない、固有粘度0.6dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレートを得た。
【0046】
[参考例2]樹脂2の作成
蒸留による精製を繰り返したテレフタル酸ジメチルエステルとエチレングリコールとをそれぞれ100部と70部用意し、それらを攪拌機、精留塔、冷却器を供えた反応槽に仕込み、150℃まで昇温した。その後、トリメリット酸チタンをTi元素量として、全ジカルボン酸成分のモル数に対して3mmol%となるように添加し、反応槽全体を窒素により0.25MPaの圧力下で加熱して、反応槽内部温度を240℃に昇温した。反応の進行に従い、圧力一定のまま内温を250℃まで上げた。その後、反応槽内の圧力を常圧にゆっくりと戻し、トリメチルホスフェートをリン元素量で、全ジカルボン酸成分のモル数に対して7mmol%となるように添加し、余剰のエチレングリコールを追い出して、エステル交換反応を終了させた。
得られた反応生成物を重合反応槽へと移送した。このとき、移送途中で95%濾過精度5μmの金属繊維製のフィルターを通して濾過した。重合反応槽では250℃からゆっくりと昇温しながら、また減圧させながら重縮合反応を行い、最終的に290℃、30Paで所定の重合度になるまで重縮合を行い、実質的に不活性粒子を含有しない、固有粘度0.6dl/gのポリエチレンテレフタレートを得た。
【0047】
[参考例3]樹脂3の作成
平均粒径が0.1μmで相対標準偏差が0.13のアルコキシド法で作成した真球状シリカ粒子を、エチレングリコールに10質量%となるように添加して、100℃で20分間過熱したのち、95%濾過精度5μmの金属繊維製のフィルターを通過するように循環させて、真球状シリカ粒子の含有量が10質量%のエチレングリコールスラリーを作成した。そして、このエチレングリコールスラリーを、エステル交換反応の段階で、真球状シリカ粒子の含有量が、得られるポリエステルの質量に対して、0.5質量%となるように添加したほかは、参考例1と同様な操作を繰り返して、樹脂3を作成した。
【0048】
[参考例4]樹脂4の作成
平均粒径が0.1μmで相対標準偏差が0.13のアルコキシド法で作成した真球状シリカ粒子を、エチレングリコールに10質量%となるように添加して、100℃で20分間過熱したのち、95%濾過精度5μmの金属繊維製のフィルターを通過するように循環させて、真球状シリカ粒子の含有量が10質量%のエチレングリコールスラリーを作成した。そして、このエチレングリコールスラリーを、エステル交換反応の段階で、真球状シリカ粒子の含有量が、得られるポリエステルの質量に対して、0.5質量%となるように添加したほかは、参考例2と同様な操作を繰り返して、樹脂4を作成した。
【0049】
[参考例5]樹脂5の作成
真球状シリカ粒子を、平均粒径が0.3μmで相対標準偏差が0.12の真球状シリカ粒子に変更したほかは、参考例3と同様な操作を繰り返して、樹脂5を作成した。
【0050】
[参考例6]樹脂6の作成
真球状シリカ粒子を、平均粒径が0.3μmで相対標準偏差が0.12の真球状シリカ粒子に変更したほかは、参考例4と同様な操作を繰り返して、樹脂6を作成した。
【0051】
[参考例7]樹脂7の作成
真球状シリカ粒子の変わりに、平均粒径が0.3μmで相対標準偏差が0.19のシリコーン粒子を用いたほかは、参考例3と同様な操作を繰り返して、樹脂7を作成した。
【0052】
[参考例8]樹脂8の作成
真球状シリカ粒子の変わりに、平均粒径が0.08μmで相対標準偏差が0.18の架橋ポリスチレン粒子を用いたほかは、参考例4と同様な操作を繰り返して、樹脂8を作成した。
【0053】
[参考例9]樹脂9の作成
真球状シリカ粒子の変わりに、平均粒径が0.5μmで相対標準偏差が0.19のシリコーン粒子に変更したほかは、参考例3と同様な操作を繰り返して、樹脂9を作成した。
【0054】
[参考例10]樹脂10の作成
真球状シリカ粒子の変わりに、平均粒径が0.5μmで相対標準偏差が0.19のシリコーン粒子に変更したほかは、参考例4と同様な操作を繰り返して、樹脂10を作成した。
【0055】
[参考例11]樹脂11の作成
真球状シリカ粒子の変わりに、平均粒径が1.2μmで相対標準偏差が0.19のシリコーン粒子に変更したほかは、参考例3と同様な操作を繰り返して、樹脂11を作成した。
【0056】
[実施例1]
A層用ポリマーとして樹脂1と3と7とを表1の不活性粒子の割合になるように用意し、また、B層用のポリマーとして樹脂1と3と7と9とを表1の不活性粒子の割合になるように用意し、それぞれ、170℃で6時間乾燥させた。こうして、乾燥チップを表1に示した層厚み構成になるような比率にて、2台の押出機ホッパーに供給し、溶融温度310℃で溶融し、マルチマニホールド型共押出ダイを用いてA層の片側にB層を積層させて積層未延伸フィルムを得た。なお、A層用のポリマーとB層用のポリマーは、溶融状態にした後、ダイに供給する前に、それぞれ95%ろ過精度が1μmの金属繊維製のフィルターでろ過した。
このようにして得られた積層未延伸フィルムを、金属ロール上で120℃に予熱し、低速、高速のロール間でフィルムを130℃に加熱して4.8倍に延伸し後、急冷し、縦延伸フィルムを得た。
続いてステンターに供給し、150℃にて横方向に5.1倍に延伸した。得られた二軸延伸フィルムを200℃の熱風で3秒間熱固定しつつ横方向に10%延伸を行い、厚み4.5μmの積層二軸配向ポリエステルフィルムを得た。このフィルムのヤング率は縦方向5.8GPa、横方向8.8GPaであった。得られた積層二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0057】
[実施例2]
実施例1において、A層用のポリマーとB層用のポリマーとを表1に示す不活性粒子の割合となるように樹脂1と3と5を用いたほかは、実施例1と同様な操作を繰り返した。得られた積層二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0058】
[実施例3]
実施例1において、樹脂7の代わりに、表1に示す不活性粒子の割合となるように樹脂5を用いたほかは、実施例1と同様な操作を繰り返した。得られた積層二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0059】
[実施例4]
実施例1において、A層用のポリマーとB層用のポリマーとを表1に示す不活性粒子の割合となるように樹脂1と3と7を用いたほかは、実施例1と同様な操作を繰り返した。得られた積層二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0060】
[実施例5]
A層用ポリマーとして樹脂2と6と8とを表1の不活性粒子の割合になるように用意し、また、B層用のポリマーとして樹脂2と6と8と10とを表1の不活性粒子の割合になるように用意し、それぞれ、150℃で3時間乾燥させた。こうして、乾燥チップを表1に示した層厚み構成になるような比率にて、2台の押出機ホッパーに供給し、溶融温度250℃で溶融し、マルチマニホールド型共押出ダイを用いてA層の片側にB層を積層させて積層未延伸フィルムを得た。なお、A層用のポリマーとB層用のポリマーは、溶融状態にした後、ダイに供給する前に、それぞれ95%ろ過精度が1μmのフィルター金属繊維製のでろ過した。このようにして得られた積層未延伸フィルムを、金属ロール上で100℃に予熱し、さらに低速、高速のロール間でフィルムを110℃に加熱して3.5倍に延伸し後、急冷し、縦延伸フィルムを得た。続いてステンターに供給し、105℃にて横方向に4.6倍に延伸した。得られた二軸延伸フィルムを210℃の熱風で3秒間熱固定しつつ横方向に5%延伸を行い、厚み4.5μmの積層二軸配向ポリエステルフィルムを得た。このフィルムのヤング率は縦方向4.4GPa、横方向6.1GPaであった。得られた積層二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0061】
[比較例1]
実施例1において、A層用ポリマーとして樹脂1と3とを表1の不活性粒子の割合になるように用意し、また、B層用のポリマーとして樹脂1と3と9とを表1の不活性粒子の割合になるように用意したほかは、実施例1と同様な操作を繰り返した。得られた積層二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0062】
[比較例2]
実施例1において、A層用ポリマーとして樹脂1と7とを表1の不活性粒子の割合になるように用意し、また、B層用のポリマーとして樹脂1と7とを表1の不活性粒子の割合になるように用意したほかは、実施例1と同様な操作を繰り返した。得られた積層二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0063】
[比較例3]
実施例5において、A層用ポリマーとして樹脂2と4と10とを表1の不活性粒子の割合になるように用意し、また、B層用のポリマーとして樹脂2と4と6と10とを表1の不活性粒子の割合になるように用意したほかは、実施例5と同様な操作を繰り返した。得られた積層二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0064】
[比較例4]
実施例5において、A層用ポリマーとして樹脂2と6と8とを表1の不活性粒子の割合になるように用意し、また、B層用のポリマーとして樹脂2と6と8と10とを表1の不活性粒子の割合になるように用意したほかは、実施例5と同様な操作を繰り返した。得られた積層二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0065】
[比較例5]
実施例1において、A層用ポリマーとして樹脂1と3と7とを表1の不活性粒子の割合になるように用意し、また、B層用のポリマーとして樹脂1と3と7と11とを表1の不活性粒子の割合になるように用意したほかは、実施例1と同様な操作を繰り返した。得られた積層二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0066】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のポリエステルフィルムは、表面粗さは粗いものでも特定の周期のうねりを低減させていることから、特に記憶容量が0.8TB以下であるデータストレージのベースフィルムに好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気記録テープのベースフィルムに用いるフィルム層Aおよび層Bからなる二軸配向積層フィルムであって、
フィルム層Aは、磁性層を形成する側の表面(表面A)に位置し、フィルム層Aの質量を基準として、平均粒径0.05〜0.15μmの不活性球状粒子(A1)を0.05〜0.20質量%含有し、かつ平均粒径が0.20〜0.40μmの不活性球状粒子(A2)を0.03〜0.10質量%含有すること、
フィルム層Bは、磁性層を形成しない側の表面(表面B)に位置し、フィルム層Bの質量を基準として平均粒径0.05〜0.15μmの不活性球状粒子(B1)を0.05〜0.25質量%含有し、平均粒径が0.20〜0.40μmの不活性球状粒子(B2)を0.03〜0.50質量%含有し、かつ平均粒径が0.45〜0.55μmの不活性球状有機粒子(B3)を含有しないか、0.01〜0.03質量%含有すること、そして
表面Aの表面粗さ(RaA)が6〜15nmで、表面Bの表面粗さ(RaB)がRaAよりも1nm以上大きくかつ10〜25nmであり、表面Aの表面粗さを周波数解析したときの波長70μmでの強度が0.40nm〜0.90nm以下であることを特徴とする二軸配向積層フィルム。
【請求項2】
フィルムが、エチレンテレフタレートまたはエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルからなる請求項1記載の二軸配向積層フィルム。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載の二軸配向積層フィルムと、その表面A側に形成された磁性層とからなる記憶容量が0.8TB以上であるデータストレージ。
【請求項4】
磁性層が塗布によって形成され、記録方式がリニア記録方式である請求項3記載のデータストレージ。

【公開番号】特開2012−119040(P2012−119040A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269442(P2010−269442)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】