説明

二輪乗物用施錠装置

【課題】スタンドを立てると必ず施錠される構成でありながら、二輪乗物の運転中に不意にスタンドが下方へ揺動しても施錠棒がスポーク間に進入しないため安全性が高い施錠装置を提供する。
【解決手段】スタンド7の所定揺動角度範囲AR1よりも小さい周方向角度範囲の切欠部が形成され、その周方向端縁がスタンド7のピン8に当接するとともに、揺動支軸Hを中心として周方向に延びる歯車部が形成された、揺動支軸Hまわりに揺動する第1歯車体11と、基体9によりスライド可能に支持されたラック体10と、基体9により回転可能に支持され、第1歯車体11の歯車部に噛合する第2歯車体12と、基体9により回転可能に支持され、第2歯車体12及びラック体10に噛合する第3歯車体13と、一端部21Aがリング錠1の施錠棒に連結されるとともに他端部21Bがラック体10に連結された索条体21とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車又は自動二輪車等の車輪を前後に並べた二輪乗物に用いられる施錠装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自転車の施錠装置として、後輪のリム内方に開口部を有するように両端部を対向させた状態でシートステーに固定されたリング状のケーシング及び該ケーシングにより前記開口部内を出没可能に支持された施錠棒からなり、前記施錠棒を後輪のスポーク間に進入させて前記両端部間に渡った状態にして後輪の回転を阻止するリング錠(馬蹄錠)と、自転車を自立させるために車体を支持するスタンドと、一端が前記施錠棒に設けた突出部に連結されるとともに他端が前記スタンドに連結された連結手段とを備え、スタンドを立てる操作に連動させて前記施錠棒を操作して施錠を行うように構成したものがある(例えば、特許文献1参照。)。
このような自転車の施錠装置によれば、自転車から降りてスタンドを立てると必ず施錠されることから、施錠忘れを防止することができるとともに施錠操作の手間を省くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−230479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような自転車の施錠装置は、上述の作用効果を奏する反面、スタンドの揺動と施錠棒の出没動作とが連動していることから、スタンドを後方へ跳ね上げた状態で走行している際に、道路の凹凸による振動や誤操作等により不意にスタンドが下方へ揺動すると、施錠棒が後輪のスポーク間に進入して引っ掛かる場合があるため、主に安全面から改良の余地がある。
【0005】
そこで本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、自転車又は自動二輪車等の二輪乗物から降りてスタンドを立てると必ず施錠される構成でありながら、前記二輪乗物の運転中に不意にスタンドが下方へ揺動しても施錠棒がスポーク間に進入しないため安全性が高い二輪乗物用施錠装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る二輪乗物用施錠装置は、前記課題解決のために、二輪乗物の後輪のリム内方に開口部を有するように両端部を対向させた状態で車体に固定されたリング状のケーシング及び前記ケーシングにより前記開口部内を出没可能に支持された施錠棒からなり、前記施錠棒を前記後輪のスポーク間に進入させて前記施錠棒が前記ケーシングの両端部間に渡った状態で前記後輪の回転を阻止するリング錠と、前記二輪乗物の後輪側に設けられ、前記二輪乗物を自立させるために車体を支持するように起立した位置及び走行の際に邪魔にならないように後方へ跳ね上げた位置の二位置間の所定揺動角度範囲を揺動支軸まわりに揺動可能であり、前記揺動支軸から遊端側へ離間した所定位置に側方へ突出する突出片が設けられたスタンドと、前記スタンドの所定揺動角度範囲よりも小さい周方向角度範囲の切欠部が形成され、その周方向端縁が前記スタンドの突出片に当接するとともに、前記揺動支軸を中心として周方向に延びる歯車部が形成された、前記揺動支軸まわりに揺動する第1歯車体と、前記後輪の車軸まわりの車体に取り付けられた基体と、前記基体によりスライド可能に支持されたラック体と、前記基体により回転可能に支持され、前記第1歯車体の歯車部に噛合する第2歯車体と、前記基体により回転可能に支持され、前記第2歯車体及びラック体に噛合する第3歯車体と、一端部が前記リング錠の施錠棒に連結されるとともに他端部が前記ラック体に連結された索条体とを備え、前記スタンドを前記後方へ跳ね上げた位置から前記起立した位置まで揺動させる際に、前記所定揺動角度範囲内の中間揺動角度で前記スタンドの突出片が前記第1歯車体の切欠部の一方の周方向端縁に当接し、さらに前記スタンドを前記起立した位置に近づく方向へ揺動させる操作に伴って、前記第1歯車体の歯車部が揺動し、前記歯車部に噛合する前記第2歯車体が揺動し、前記第2歯車体に噛合する前記第3歯車体が揺動し、前記第3歯車体に噛合する前記ラック体がスライドして前記索条体が牽引されるため前記リング錠の施錠棒が駆動され、前記スタンドを前記起立した位置まで揺動させると前記リング錠が施錠状態になることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、二輪乗物から降りてスタンドを立てると、第1歯車体、第2歯車体、第3歯車体及びラック体からなる歯車伝達機構により、一端部がリング錠の施錠棒に連結され他端部がラック体に連結された索条体が牽引されて施錠棒が駆動され、リング錠が必ず施錠されるように構成されているため、施錠忘れを防止することができるとともに施錠操作の手間を省くことができる。
その上、第1歯車体にはスタンドの所定揺動角度範囲よりも小さい周方向角度範囲の切欠部が形成されており、スタンドの突出片が第1歯車体の切欠部の周方向端縁に当接する中間揺動角度まで揺動しても第1歯車体は揺動しないので、二輪乗物の運転中に不意にスタンドが下方へ中間揺動角度以内の角度で揺動しても索条体が牽引されることはなく、リング錠の施錠棒が駆動されないことから施錠棒がスポーク間に進入して引っ掛かることがないため、安全性が高くなる。
【0008】
ここで、前記中間揺動角度が、前記スタンドを前記後方へ跳ね上げた位置から前記起立した位置まで揺動させる際に前記後輪が地上から浮いた状態になった揺動角度であると好ましい。
このような構成によれば、二輪乗物の後輪が接地している状態で歯車伝達機構により索条体が牽引されて施錠棒が駆動されることがないため、より安全性が向上する。
【0009】
また、前記第2歯車体が、同軸で一体化された小径歯車部及び大径歯車部からなり、前記小径歯車部が前記第1歯車体の歯車部に噛合し、前記大径歯車部が前記第3歯車体に噛合すると好ましい。
このような構成によれば、スタンドを中間揺動角度から起立位置まで揺動させる揺動角度でリング錠を施錠状態にするための索条体の牽引ストロークを確保するように構成する必要がある歯車伝達機構において、第2歯車体の大径歯車部の歯数に対する小径歯車部の歯数の比(ピッチ円直径の比)により変位が拡大されるため、前記牽引ストロークの確保が容易になるとともに、第1歯車体と第2歯車体との軸間距離を小さくすることができるため、歯車伝達機構をよりコンパクトに形成することができる。
【0010】
さらに、前記ラック体に長手方向に延びる長孔を形成し、前記索条体の他端部に前記ラック体の長孔に係合して前記長孔内を移動可能な係合体を連結してなると好ましい。
このような構成によれば、ラック体の長孔に係合する係合体が長孔内を移動可能であることから、スタンドが後方跳上げ位置にある状態においてもリング錠の施錠棒に連結された操作片を手動で操作して施錠することができるため、スタンドを起立させない状態での駐輪が要求される二輪乗物の駐輪場における駐輪にも対応することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明に係る二輪乗物用施錠装置によれば、二輪乗物から降りてスタンドを立てると必ず施錠される構成であるため、施錠忘れを防止することができるとともに施錠操作の手間を省くことができ、第1歯車体にはスタンドの所定揺動角度範囲よりも小さい周方向角度範囲の切欠部が形成されており、スタンドの突出片が第1歯車体の切欠部の一方の周方向端縁に当接する中間揺動角度まで揺動しても第1歯車体は揺動しないことから、二輪乗物の運転中に不意にスタンドが下方へ中間揺動角度以内の角度で揺動しても索条体が牽引されることはなく、リング錠の施錠棒が駆動されないことから施錠棒がスポーク間に進入して引っ掛かることがないため、安全性が高くなるという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る二輪乗物用施錠装置が取り付けられた二輪乗物(自転車)の後輪まわりの構成を示す正面図であり、スタンドが起立位置にある状態を示している。
【図2】リング錠の構成を示す後斜め上方から見た部分縦断面である。
【図3】スタンドの所定揺動角度範囲及び中間揺動角度を示す概略正面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る二輪乗物用施錠装置におけるリング錠の施錠をスタンドにより操作する機構を示す正面図であり、スタンドが後方跳上げ位置にある状態を示している。
【図5】同じく正面図であり、スタンドが起立位置にある状態を示している。
【図6】ラック体を基体により支持する構造の例を示す分解斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る二輪乗物用施錠装置の動作を示す正面図であり、スタンドが後部跳上げ位置から中間揺動角度まで揺動した状態を示している。
【図8】同じく正面図であり、スタンドが中間揺動角度から起立位置まで揺動した状態を示している。
【図9】同じく正面図であり、スタンドが起立位置から後方跳ね上げ位置まで揺動する途中で、スタンドの突出片が第1歯車体の切欠の周方向端縁に当接するまで揺動した状態を示している。
【図10】同じく正面図であり、スタンドが図9の状態から後方跳上げ位置まで揺動した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に本発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明するが、本発明は、添付図面に示された形態に限定されず特許請求の範囲に記載の要件を満たす実施形態の全てを含むものである。
なお、本明細書においては、自転車、電動アシスト自転車、原動機付き自転車又は自動二輪車等の、車輪を前後に並べた二輪乗物の例として示す自転車Bに乗った状態で走行する方向を前方とし、左右は前方に向かっていうものとし、左方から見た図を正面図とする。
【0014】
図1の自転車Bの後輪Cまわりの正面図に示すように、後輪Cまわりの車体Fは、シートポストが差し込まれるパイプであるシートチューブF1、シートチューブF1の上端部と後輪Cの車軸Iとを繋ぐパイプであるシートステーF2、及び、シートチューブF1の下端部と後輪Cの車軸Iとを繋ぐパイプであるチェーンステーF3等からなり、図1に示すようにスタンド7を起立位置P1にすることにより、自転車Bの車体Fはスタンド7により支持され、自転車Bは自立する。
図1及び図3の正面図に示すように、スタンド7は、自転車Bを自立させるために車体Fを支持するように起立した起立位置P1及び走行の際に邪魔にならないように後方へ跳ね上げた跳上げ位置P2の二位置間の所定揺動角度範囲AR1を揺動支軸Hまわりに揺動することができ、揺動支軸Hから遊端側へ離間した所定位置に側方へ突出する突出片であるピン8が設けられている。
【0015】
図2の部分縦断面に示すように、リング錠(馬蹄錠)1は、後輪CのリムD内方に開口部Gを有するように両端部2A,2Bを対向させた状態で車体FのシートチューブF2に固定されたリング状(馬蹄状)のケーシング2及びケーシング2により開口部G内を出没可能に支持された施錠棒3からなり、施錠棒3を後輪CのスポークE,E(図1参照。)間に進入させて施錠棒3がケーシング2の両端部2A,2B間に渡った状態で後輪Cの回転を阻止するものである。
リング錠1は、スタンド7を起立位置P1(図1参照。)にすることにより、後述する歯車伝達機構により索条体21が牽引されて施錠棒3が駆動され、施錠状態になるとともに、ケーシング2の上面に形成されたスリット2Cから突出する操作片4を手動で操作することによっても施錠することができ、鍵5を本体の鍵穴に差し込んで回すことにより解錠することができるとともに、リモコン6の操作によっても解錠することができる。
【0016】
次に、本発明の実施の形態に係る二輪乗物用施錠装置におけるリング錠1の施錠をスタンド7により操作する歯車伝達機構等について説明する。
図4、図5及び図7の正面図に示すように、第1歯車体11には、スタンド7の所定揺動角度範囲AR1(図3参照。)よりも小さい周方向角度範囲AR2(図7参照。)の切欠部14が形成され、その周方向端縁14A,14Bがスタンド7の突出片8に当接するとともに、揺動支軸Hを中心として周方向に延びる歯車部15が形成されており、揺動支軸Hまわりに揺動する。
また、基体9が、例えば長孔9Bに車軸Iが挿通されて固定されるとともにスタンド7を支持するブラケット等により支持固定される。すなわち、基体9は後輪Cの車軸Iまわりの車体Fに取り付けられ、この基体9により、ラック体10がスライド可能に支持されるとともに、第2歯車体12及び第3歯車体13が回転可能に支持される。
【0017】
そして、第2歯車体12は第1歯車体11の歯車部15に噛合し、第3歯車体13は第2歯車体12及びラック体10に噛合するため、第1歯車体11、第2歯車体12、第3歯車体13及びラック体10は連動し、これらの歯車体11,12,13及びラック体10からなる歯車伝達機構並びに基体9は、カバー23により被われる。
なお、第2歯車体12は、同軸で一体化された小径歯車部12A及び大径歯車部12Bからなり、小径歯車部12Aが第1歯車体11の歯車部15に噛合し、大径歯車部12Bが第3歯車体13に噛合する。
【0018】
ここで、基体9によりラック体10をスライド可能に支持する構造について、その一例を説明する。
図6の分解斜視図に示すように、ラック体10の裏面(右面)に長手方向に形成された凹条10B内に長尺状のガイド体16を入れた状態で、基体9上辺を左方に折り曲げ、さらにその先端部を下方へ折り曲げて形成された折曲片9Aの内側へラック体10及びガイド体16を入れ、ガイド体16両端部の通孔16A,16Bの左方から取付ねじ17,18を基体9の螺孔9C,9Dに螺合することにより、ラック体10は基体9により自転車Bの略前後方向にスライド可能に支持される。
また、図2、図4及び図5に示すように、可撓性のある索条体21は、その中間部がシートチューブF2に取り付けられた支持部材19により支持された外被体20に挿通され、索条体21の一端部(上端部)21Aがリング錠1の施錠棒3に連結され、他端部(下端部)21Bがラック体10に連結される。
なお、索条体21の他端部21Bには係合体であるピン22が連結されており、ピン22はラック体10に形成された長手方向に延びる長孔10A内を移動することができる。
【0019】
次に、スタンド7の操作によるリング錠1の施錠動作等について説明する。
図7の正面図に示すように、スタンド7を後方跳上げ位置P2(スタンド7のピン8が第1歯車体11の切欠部14の上側の周方向端縁14Bに当接している状態)から、スタンド7のピン8が第1歯車体11の切欠部14の下側の周方向端縁14Aに当接するまで下方へ揺動(中間揺動角度A1であり、図3も参照。)させても第1歯車体11は揺動しない。
この状態からスタンド7をさらに揺動(施錠操作揺動角度A2であり、図3も参照。)させて図8の正面図に示す起立位置P1にすると、ピン8により周方向端縁14Aが押されて第1歯車体11が揺動するため、第2歯車体12及び第3歯車体13も揺動し、ラック体10が後方へスライドすることから索条体21が牽引されるため、リング錠1の施錠棒3が駆動されて図2に示す施錠状態となる。
【0020】
図9の正面図に示すように、スタンド7の起立位置P1(スタンド7のピン8が第1歯車体11の切欠部14の下側の周方向端縁14Aに当接している状態)から、スタンド7のピン8が第1歯車体11の切欠部14の上側の周方向端縁14Bに当接するまで後方へ揺動(中間揺動角度A1に等しい角度である揺動角度A3)させても第1歯車体11は揺動しない。
この状態からスタンド7をさらに揺動(揺動角度A4)させて図10の正面図に示す後方跳上げ位置P2にすると、ピン8により周方向端縁14Bが押されて第1歯車体11が図8と逆方向へ揺動するため、第2歯車体12及び第3歯車体13も図8と逆方向へ揺動し、ラック体10が図8と逆方向の前方へスライドして図7の位置に復帰する。
この状態で、上述のように、図2における鍵5の操作又はリモコン6の操作により解錠することができ、この解錠状態では索条体21が前方へ移動してピン22がラック体10の長孔10Aの前端部に移動した図7に示す状態になる。
【0021】
以上のような本発明の実施の形態に係る二輪乗物用施錠装置の構成によれば、二輪乗物(例えば、自転車B)ら降りてスタンド7を立てると、第1歯車体11、第2歯車体12、第3歯車体13及びラック体10からなる歯車伝達機構により、一端部21Aがリング錠1の施錠棒3に連結され他端部21Bがラック体10に連結された索条体21が後方へ牽引されて施錠棒3が駆動され、リング錠1が必ず施錠されるように構成されているため、施錠忘れを防止することができるとともに施錠操作の手間を省くことができる。
また、第1歯車体11にはスタンド7の所定揺動角度範囲AR1よりも小さい周方向角度範囲AR2の切欠部14が形成されており、スタンド7の突出片であるピン8が第1歯車体11の切欠部14の一方の周方向端縁14Aに当接する中間揺動角度A1(図3参照。)まで揺動しても第1歯車体11は揺動しないので、二輪乗物の運転中に不意にスタンド7が下方へ中間揺動角度A1以内の角度で揺動しても索条体21が牽引されることはなく、リング錠1の施錠棒3が駆動されないことから施錠棒3がスポークE,E間に進入して引っ掛かることがないため、安全性が高くなる。
【0022】
さらに、歯車伝達機構を構成する第1歯車体11、第2歯車体12、第3歯車体13及びラック体10は、施錠部ではなく、施錠棒3を駆動するためのものであるので、歯車部の精度や強度を落とすことができるため、例えば合成樹脂製等としてコストの上昇を抑制することができる。
さらにまた、図3に示すように、中間揺動角度A1を、スタンド7を後方跳上げ位置P2から起立位置P1まで揺動させる際に後輪Cが地上から浮いた状態になった揺動角度であるように設定すると、二輪乗物の後輪Cが接地している状態で歯車伝達機構により索条体21が牽引されて施錠棒3が駆動されることがないため、より安全性が向上する。
【0023】
また、第2歯車体12が、同軸で一体化された小径歯車部12A及び大径歯車部12Bからなり、小径歯車部12Aが第1歯車体11の歯車部15に噛合し、大径歯車部12Bが第3歯車体13に噛合するように構成することにより、スタンド7を中間揺動角度A1から起立位置P1まで揺動させる図3に示す施錠操作揺動角度A2の揺動でリング錠1を施錠状態にするための索条体21の牽引ストロークを確保するように構成する必要がある歯車伝達機構において、第2歯車体12の大径歯車部12Bの歯数に対する小径歯車部12Aの歯数の比(ピッチ円直径の比)により変位が拡大されるため、前記牽引ストロークの確保が容易になるとともに、第1歯車体11と第2歯車体12との軸間距離を小さくすることができるため、歯車伝達機構をよりコンパクトに形成することができる。
さらに、ラック体10に長手方向に延びる長孔10Aを形成し、索条体21の後端部21Bにラック体10の長孔10Aに係合して長孔10a内を移動可能な係合体であるピン22を連結しているので、ピン22が長孔10A内を移動可能であることから、スタンド7が後方跳上げ位置P2にある状態においてもリング錠1の施錠棒3に連結された操作片4(図2参照。)を手動で操作して施錠することができるため、スタンド7を起立させない状態での駐輪が要求される二輪乗物の駐輪場における駐輪にも対応することができる。
【符号の説明】
【0024】
A1 揺動角度(中間揺動角度) A2 揺動角度(施錠操作揺動角度)
A3,A4 揺動角度 AR1 所定揺動角度範囲
AR2 切欠部の周方向角度範囲 B 自転車(二輪乗物)
C 後輪 D リム
E スポーク F 車体
F1 シートチューブ F2 シートステー
F3 チェーンステー G 開口部
H 揺動支軸 I 車軸
P1 起立位置 P2 後方跳上げ位置
1 リング錠 2 ケーシング
2A,2B 端部 2C スリット
3 施錠棒 4 操作片
5 鍵 6 リモコン
7 スタンド 8 ピン(突出片)
9 基体 9A 折曲片
9B 長孔 9C,9D 螺孔
10 ラック体 10A 長孔
10B 凹条 11 第1歯車体
12 第2歯車体 12A 小径歯車部
12B 大径歯車部 13 第3歯車体
14 切欠部 14A,14B 周方向端縁
15 歯車部 16 ガイド体
16A,16B 通孔 17,18 取付ねじ
19 支持部材 20 外被体
21 索条体 21A 一端部
21B 他端部 22 ピン(係合体)
23 カバー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
二輪乗物の後輪のリム内方に開口部を有するように両端部を対向させた状態で車体に固定されたリング状のケーシング及び前記ケーシングにより前記開口部内を出没可能に支持された施錠棒からなり、前記施錠棒を前記後輪のスポーク間に進入させて前記施錠棒が前記ケーシングの両端部間に渡った状態で前記後輪の回転を阻止するリング錠と、
前記二輪乗物の後輪側に設けられ、前記二輪乗物を自立させるために車体を支持するように起立した位置及び走行の際に邪魔にならないように後方へ跳ね上げた位置の二位置間の所定揺動角度範囲を揺動支軸まわりに揺動可能であり、前記揺動支軸から遊端側へ離間した所定位置に側方へ突出する突出片が設けられたスタンドと、
前記スタンドの所定揺動角度範囲よりも小さい周方向角度範囲の切欠部が形成され、その周方向端縁が前記スタンドの突出片に当接するとともに、前記揺動支軸を中心として周方向に延びる歯車部が形成された、前記揺動支軸まわりに揺動する第1歯車体と、
前記後輪の車軸まわりの車体に取り付けられた基体と、
前記基体によりスライド可能に支持されたラック体と、
前記基体により回転可能に支持され、前記第1歯車体の歯車部に噛合する第2歯車体と、
前記基体により回転可能に支持され、前記第2歯車体及びラック体に噛合する第3歯車体と、
一端部が前記リング錠の施錠棒に連結されるとともに他端部が前記ラック体に連結された索条体とを備え、
前記スタンドを前記後方へ跳ね上げた位置から前記起立した位置まで揺動させる際に、前記所定揺動角度範囲内の中間揺動角度で前記スタンドの突出片が前記第1歯車体の切欠部の一方の周方向端縁に当接し、さらに前記スタンドを前記起立した位置に近づく方向へ揺動させる操作に伴って、前記第1歯車体の歯車部が揺動し、前記歯車部に噛合する前記第2歯車体が揺動し、前記第2歯車体に噛合する前記第3歯車体が揺動し、前記第3歯車体に噛合する前記ラック体がスライドして前記索条体が牽引されるため前記リング錠の施錠棒が駆動され、前記スタンドを前記起立した位置まで揺動させると前記リング錠が施錠状態になることを特徴とする二輪乗物用施錠装置。
【請求項2】
前記中間揺動角度が、前記スタンドを前記後方へ跳ね上げた位置から前記起立した位置まで揺動させる際に前記後輪が地上から浮いた状態になった揺動角度である請求項1記載の二輪乗物用施錠装置。
【請求項3】
前記第2歯車体が、同軸で一体化された小径歯車部及び大径歯車部からなり、前記小径歯車部が前記第1歯車体の歯車部に噛合し、前記大径歯車部が前記第3歯車体に噛合する請求項1又は2記載の二輪乗物用施錠装置。
【請求項4】
前記ラック体に長手方向に延びる長孔を形成し、前記索条体の他端部に前記ラック体の長孔に係合して前記長孔内を移動可能な係合体を連結してなる請求項1〜3の何れか1項に記載の二輪乗物用施錠装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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