説明

二輪車二人乗り用の安全ベルト

【課題】 二輪車二人乗り用の安全ベルトであって、運転者と同乗者との体格差その他が存在しても、同乗者を安全に保護できるものの提供。
【解決手段】 運転者の第1背当て部材(a1)に、上下方向に離間して複数の胴ベルト取付部(a10, a11,a12)を設け、それらの一つを選択して、そこに同乗者の第2胴ベルト(b2)の前側を着脱自在に取付け、
その第1背当て部材(a1)に、上下方向に離間して複数の肩ベルト取付部(a6,a7,a8, a9)を設け、それらの一つを選択して、そこに一対の第2肩ベルト(b3,b4)の前側を着脱自在に取付る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車二人乗り用の安全ベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、二輪車の後部座席に同乗者が乗る場合、同乗者は運転者の体に両腕を巻き付けたり、運転席と後部座席との間に設けられた把持ベルトや後部座席の横又は後方に設けられた把持グリップ等の装置を把持して乗車することにより、発進時やカーブ走行時の乗車姿勢の安定性を保ち、二輪車からの同乗者の脱落を防いでいた。また、下記特許文献1に記載された二輪車二人乗り用のグリップ付きベルトの発明のように、運転者がベルト状の装置を胴体に装着し、そのベルトの両端に設けられた把持グリップを同乗者が把持する事で乗車姿勢の安定性を保ち二輪車からの同乗者の脱落を防ぐものもあった。
【0003】
しかしながら、これらの把持ベルトや把持グリップ等の装置は、同乗者の握力によって乗車姿勢の安定性を保とうとするものであり、握力の弱い女性や子供にとって、把持ベルトや把持グリップで長時間上体を支え切ることは困難であった。また、後部座席での居眠りや、把持ベルトや把持グリップから手が離れている状態での二輪車からの同乗者の脱落防止の機能性は全く確保されておらず、安全上十分とは言えないのが現状であった。
【0004】
二輪車の後部座席に乗車する同乗者の握力のみに依存せず、同乗者の乗車姿勢の安定を保つ脱落防止装置として、下記特許文献2に記載された発明がある。この発明は、二重構造になった腰ベルトによって運転者と同乗者を連結し、同乗者の乗車姿勢の安定性を保つ構造であった。しかし、同乗者の腰から上の乗車姿勢の安定性は、把持ベルトや把持グリップ等を把持することで補う必要があった。そのため、実際に同乗者が居眠り等で握力による把持ベルトや把持グリップ等への把持を怠った際に、腰から上の乗車姿勢の安定性を保つ構造が無く、同乗者の体が大きく後方にのけぞったり左右に傾いたりすることを回避できず、安全上十分とは言えなかった。
【0005】
二輪車の後部座席に乗車する同乗者の腰部のみではなく、上半身全体の乗車姿勢の安定を保ちながら同乗者の二輪車からの脱落を防ぐ二輪車二人乗り用の安全ベルト装置として、下記特許文献3に記載された方式に代表された発明がある。この発明は、運転者と同乗者の腰部を束ね合わせるように固定する一本の腰ベルトと、束ね合わさった運転者と同乗者のそれぞれの肩を固定する一対の肩ベルトから構成されている。この発明によれば、同乗者の腰から上の乗車姿勢の安定性を同乗者の握力のみに依存せずに保持することが可能であり、同乗者の二輪車からの脱落を防ぐことができるとしている。
【0006】
しかしながら、この発明の場合、運転者と同乗者の体格差が大きく、且つ運転者用着座位置と同乗者用着座位置が同じ高さであった時、図18のように、同乗者の肩に装置の確実な装着が出来ず、走行時の横揺れで装置から同乗者の上半身が脱落する可能性があり安全とは言えなかった。さらに、この発明の場合、運転者と同乗者の体格差が同等または、同乗者の体格が運転者より大きく、且つ運転者用着座位置よりも同乗者用着座位置の方が高い位置にあった時、図19のように、肩ベルトが運転者の首に干渉し、安全な運転を阻害する可能性があり安全とは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭63−11261号公報
【特許文献2】特開2006−8030号公報
【特許文献3】実用新案登録第3119894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の背景技術に述べた従来の二輪車二人乗り用の安全ベルト装置は、運転者と同乗者の体格差や、運転者用着座位置と同乗者用着座位置の高低差への対応を満たしながら、且つ同乗者の握力のみに依存せずに、同乗者の上半身の乗車姿勢の安定性確保による二輪車からの同乗者の脱落防止を解決したものではない。
【0009】
例えば、下記特許文献3の二輪車二人乗り用の安全ベルト装置では、運転者の身長が高く、同乗者が身長の低い幼児や子供といった組み合わせであって、運転者用着座位置と同乗者用着座位置の高低差が同程度の場合(図18)は、安全ベルト装置からの同乗者の上半身の脱落の可能性が高くなり、運転者の身長が低く同乗者の身長が高いといった組み合わせであって、運転者用着座位置が同乗者用着座位置よりも低い場合(図19)は、安全ベルト装置が運転者の首や側頭部にかかってしまい、同乗者の動きが運転を阻害してしまうという大きな課題があった。
【0010】
本発明では、このような従来の二輪車二人乗り用の安全ベルト装置が有していた前記の課題を解決しようとするものである。すなわち、従来技術が既に解決している同乗者の握力への依存をせずに、同乗者の上半身の乗車姿勢の安定性を確保するという要件を満たしながら、従来技術では満たされていなかった運転者と同乗者の体格差や二輪車の運転者用着座位置と同乗者用着座位置の高低差による前記の課題を解決し、乗員の体格差や二輪車の運転者用着座位置と同乗者用着座位置の高低差に影響されずに、同乗者の二輪車からの脱落防止を図り、万人が安全に利用できる二輪車二人乗り用の安全ベルトを実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、上記目的を達成するための、
第1の本発明は、二輪車の運転者と同乗者の各上半身間を連結し、同乗者の乗車姿勢の 安定性を保ち、二輪車からの同乗者の脱落防止を図る安全ベルトであって、
運転者の背中に装着される平板状の第1背当て部材(a1)と、
その第1背当て部材(a1)の下部に接続されて、運転者の胴部回りに装着される第1胴ベルト(a2,a3)と、
その第1背当て部材(a1)の上部に接続されて、運転者の肩部回りに装着される一対の第1肩ベルト(a4,a5)と、
同乗者の胴部回りに装着される第2胴ベルト(b2)と、
同乗者の肩部回りに装着される一対の第2肩ベルト(b3,b4)と、
前記第1背当て部材(a1)に上下方向に離間して設けられ、第2胴ベルト(b2)の前側が着脱自在に取付られる複数の胴ベルト取付部(a10, a11,a12)と、
前記第1背当て部材(a1)に上下方向に離間して設けられ、一対の第2肩ベルト(b3,b4)の前側が着脱自在に取付られる複数の肩ベルト取付部(a6,a7,a8, a9)と、を具備し、
複数の前記胴ベルト取付部(a10, a11,a12)と、複数の前記肩ベルト取付部(a6,a7,a8, a9)との中から、同乗者の第2胴ベルト(b2)および第2肩ベルト(b3,b4)の取付位置を任意に選択できるようにしたことを特徴とする二輪車二人乗り用の安全ベルトである(請求項1)。
【0012】
上記構成において、同乗者の背中に装着される平板状の第2背当て部材(b1)を設け、その第2背当て部材(b1)の下部に前記第2胴ベルト(b2)を接続し、その第2背当て部材(b1)の上部に一対の前記第2肩ベルト(b3、b4)を接続することができる(請求項2)。
【0013】
さらに、上記構成において、一対の前記第1肩ベルト(a4,a5)の各一端部側を延長して、それが前記第1背当て部材(a1)の背面に上下方向に且つ、互いに平行に固定して、一対の背当てベルト部(20)を構成し、
前記胴ベルト取付部(a10, a11,a12)を、各背当てベルト部(20)にその幅方向に貫通し、上下に離間して複数取付たものとし、
前記肩ベルト取付部(a6,a7,a8, a9)を、各背当てベルト部(20)にその上下方向に貫通し、上下に離間して複数取付けたものとすることができる(請求項3)。
【0014】
また、上記構成において、前記背当てベルト部(20)を、それぞれ一対のベルト材を重ねて上下に離間して複数、幅方向に縫着したものとし、
前記肩ベルト取付部(a6,a7,a8,a9)を、一対のベルト材の幅方向の縫着部が上下に近接して離間した間の環状部に、角カンの一端を幅方向に挿通固定したものとし、
胴ベルト取付部(a10, a11,a12)を、隣り合う各肩ベルト取付部(a6,a7,a8,a9)間に位置し、一対のベルト材の幅方向の縫着部を上下に離間した間の部分に環状に形成することができる(請求項4)。
【0015】
さらには、前記各胴ベルトおよび肩ベルトの長さを、ベルトアジャスターを介して伸縮自在に調整でき、
各胴ベルトを、ベルトバックルを介して係脱自在に構成することがきる(請求項5)。
【0016】
また、第2の本発明は、二輪車の運転者と同乗者の各上半身間を連結し、同乗者の乗車姿勢の安定性を保ち、二輪車からの同乗者の脱落防止を図る安全ベルトであって、
運転者の背中に装着される平板状の第1背当て部材(a1)と、
その第1背当て部材(a1)の下部に接続されて、運転者の胴部回りに装着される第1胴ベルト(a2,a3)と、
その第1背当て部材(a1)の上部に接続されて、運転者の肩部回りに装着される一対の第1肩ベルト(a4,a5)と、
同乗者の背中に装着される平板状の第2背当て部材(b1)と、
その第2背当て部材(b1)の下部に接続されて、同乗者の胴部回りに装着される第2胴ベルト(b2)と、
その第2背当て部材(b1)の上部に接続されて、同乗者の肩部回りに装着される一対の第2肩ベルト(b3,b4)と、
前記第1背当て部材(a1)に設けられ、第2胴ベルト(b2)の前側が取付られる胴ベルト取付部と、
前記第1背当て部材(a1)に設けられ、一対の第2肩ベルト(b3,b4)の前側が取付られる肩ベルト取付部と、を具備し、その肩ベルト取付部の位置が胴ベルト取付部の位置より上方にある二輪車二人乗り用の安全ベルトである。
【発明の効果】
【0017】
第1の本発明は、運転者の背中に装着される第1背当て部材(a1)に、上下に離間して複数の胴ベルト取付部及び複数の肩ベルト取付部を有し、それら複数の各取付部の中から任意に選択して、同乗者の第2胴ベルト及び第2肩ベルトを取り付けることができるので、運転者と同乗者の体格差があったり、二輪車の運転者用着座位置と同乗者用着座位置の高低差が存在しても、それらに影響されることなく、同乗者の乗車姿勢の安定性を保ち、同乗者の脱落を防ぐ安全な二輪車の二人乗り用の安全ベルト提供できる。
特に、胴ベルト取付部及び肩ベルト取付部は、運転者の背中に装着される安定した平板状の第1背当て部材に設けられるので、同乗者と運転者とが一体化されて、同乗者の安定性がよく、脱落防止の効果を確保し得る。
【0018】
上記構成において、請求項2に記載のように、同乗者の背中にも平板状の第2背当て部材を設けた場合には、さらに同乗者の姿勢の安定性に寄与できる。
また、請求項3に記載のように運転者の一対の第1肩ベルトの一方側を延長して、それを運転者の第1背当て部材の背面に上下方向に固定し、それに胴ベルト取付部,肩ベルト取付部を夫々設けた場合には、各取付部に充分なる強度を持たせ、より安全性を確保し得る。
【0019】
上記構成において、請求項4に記載のように、背当てベルト部(20)を二重のベルト材で形成し、部分的に縫着して肩ベルト取付部,胴ベルト取付部を環状に形成した場合には、構造が簡単でより安全なベルトを提供できる。
上記構成において、請求項5に記載のように、各胴ベルトおよび肩ベルトに長さ調整用のベルトアジャスターを設け且つ、胴ベルトがベルトバックルを介して係脱自在に構成された場合には、ベルト長さの調整が容易であると共に、その着脱が容易な取扱性の良い安全ベルトとなり得る。
【0020】
次に、第2の本発明は、運転者の背中に安定して取付けられる、平板状の第1背当て部材と、同乗者の背中に同様に安定して取付けられる平板状の第2背当て部材とが、第2胴ベルトと一対の第2肩ベルトとで接続されるため、同乗者の姿勢を安定に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の二輪車二人乗り用安全ベルトを装着し、二輪車に乗車した同乗図および、その第1実施例の安全ベルトの斜視図。
【図2】同安全ベルトの装着の第1の手順と構成の詳細説明図。
【図3】同安全ベルトの装着の第2の手順と構成の詳細説明図。
【図4】同安全ベルトの装着の第3の手順と構成の詳細説明図。
【図5】同安全ベルトの装着の第4の手順と構成の詳細説明図。
【図6】同安全ベルトの装着の第5の手順と構成の詳細説明図。
【図7】同安全ベルトの第1の連結位置可変の説明図。
【図8】同安全ベルトの第2の連結位置可変の説明図。
【図9】同安全ベルトの第3の連結位置可変の説明。
【図10】同安全ベルトの第4の連結位置可変の説明図。
【図11】同安全ベルトの第5の連結位置可変の説明図。
【図12】本発明の第2実施例の安全ベルトの斜視図。
【図13】本発明の第3実施例の安全ベルトの斜視図。
【図14】本発明の第4実施例の安全ベルトの斜視図。
【図15】本発明の第5実施例の安全ベルトの斜視図。
【図16】本発明の第6実施例の安全ベルトの斜視図。
【図17】本発明の第7実施例の安全ベルトの斜視図。
【図18】特許文献3に代表される従来型安全ベルトの第1の問題点の説明図。
【図19】特許文献3に代表される従来型安全ベルトの第2の問題点の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0023】
はじめに、本発明の実施の形態の全体概要を図1に基づいて説明する。
図1は、二輪車に乗車し本発明の安全ベルトを装着した状態の図と、本発明の安全ベルトを斜視した図であり、本発明が運転者装着用部品(A)と同乗者装着用部品(B)の2つの構成部品の組み合わせで成り立っていることを示す。そして、その運転者装着用部品(A)と同乗者装着用部品(B)の2つの構成部品を、あらかじめ連結させて使用することを表現している。
【0024】
図1の斜視図には、運転者装着用部品(A)の基本母材となる平板状の第1背当て部材(a1)を有する。この第1背当て部材(a1)は、一例として複数枚の布材を縫着した可撓性を有するものからなり、その平面形状は運転者の背中を略被うと共に、その下部は運転者の脇の一部を被うように、下部が広がっている。なお、この第1背当て部材の材質を皮材または樹脂材とすることもできる。さらには、厚手の布材を使用してもよい。
第1背当て部材(a1)下部両側には、一対の第1胴ベルト(a2,a3)の端部が縫着されている。それらのベルトの他端には、第1胴ベルトバックル(a13,a14)及び第1胴ベルトアジャスター(a15)が着脱自在に取付けられている。これらのベルトはリックサック等に広く使用されている丈夫な厚手の布製帯材が使用できる。また、アシャスター,バックルは、同様にリックサック等に広く使用されている樹脂材等のものを使用することができる。
【0025】
また、第1背当て部材(a1)には、その中心線を挟んで両側に互いに平行に第1肩ベルト(a4,a5)が延長して延ばされ、その幅方向の両縁が夫々第1背当て部材(a1)に縫着されている。
なお、この例では背当てベルト部(20)は第1肩ベルト(a4,a5)に重ねられて、それより僅かに幅の小なる布製ベルトが部分的に縫着されている。即ち、上下に近接して一対づつの幅方向への縫着部(21)が設けられ、それがこの例では第1背当て部材(a1)の上端から四箇所存在すると共に、その最下端も幅方向に縫着されている。そして近接した一対の縫着部(21)間に幅の狭い貫通部が横方向に形成され、そこに角カンからなる肩ベルト取付部(a6〜a9)が止着されている。この角カンは平面矩形状に形成された樹脂製または、金属製のリングからなる。
【0026】
そして、隣接する角カン間に幅方向に貫通する環状の胴ベルト取付部(a10〜a12)が配置される。さらに、第1肩ベルト(a4,a5)の他方端が第1背当て部材(a1)の下部両側に縫着されている。そして、各ベルトの互い結合される一方側と他方側とには、バックルの係合部と係止部とが着脱自在に取付けられている。なお、第1肩ベルト(a4,a5)の中間部には補助ベルト(22)が幅方向に突設され、その先端に第1肩ベルト補助バックル(a16,a17)が設けられている。なお、本発明の安全ベルトは上記実施例および後述の実施例に限定されるものでは勿論ない。
【0027】
次に、同乗者装着用部品(B)には、基本母体となる平板状の第2背当て部材(b1)を有する。この例では、同乗者用の第2背当て部材(b1)は第1背当て部材(a1)に比べて大きさが小さくなっている。なお、これを同一大きさとすることも可能である。また材質等は第1背当て部材(a1)と同一とすることができる。
また、同乗者装着用部品(B)の大きさを各種揃え、それらの適宜なものを組み合わせて本発明の安全ベルトを形成することもできる。
この第2背当て部材(b1)の下部両側には第2胴ベルト(b2)の端部が縫着され、その先端にバックル及び第2胴ベルトアジャスター(b7,b8,b9)が取付けられている。
【0028】
(変形例)
上記実施例では、第1背当て部材(a1)に背当てベルト部(20)を設け、そこに肩ベルト取付部、胴ベルト取付部を設けたが、それに替えて図12に示すごとく、第1背当て部材(a1)の裏面側にそれぞれ短ベルト材(肉厚の布材等)からなる肩ベルト取付部(a6)〜(a9)を水平に、胴ベルト取付部(a10〜a12)を垂直に配置して、それぞれの短ベルト材の両端を縫着により設けてもよい。
さらには、前記各実施例では、第1背当て部材(a1)に二列に背当てベルト部(20)を設け、夫々に胴ベルト取付部及び、肩ベルト取付部を設けたが、それに変えて図13に示すように、一列にそれらを設けることも可能である。その場合、その肩ベルト取付部に一対の第2肩ベルトが先端部で一緒に結合される。
【0029】
また図14のごとく、背当てベルト部(20)に多段に、角カンからなる肩ベルト取付部(a6〜a9)を設け、その側方に短いベルト材の縫着体を介して、角カンからなる胴ベルト取付部(a10〜a12)を配置してもよい。さらには、図15に示すごとく、図13と図14とを組合わせた構造とすることもできる。
【0030】
次に、図16はさらに他の例を示し、この例は肩ベルト取付部(a6〜a9)が縫着された短いベルトと着脱自在なバックルとで構成されたものである。すなわち、バックルの係止部を一例として、第1背当て部材(a1)側に取り付け、その係合部材を第2肩ベルト(b3、b4)の先端に取付け、両者を着脱自在に係止させるものである。同様に胴ベルト取付部(a10〜a12)もバックルで構成されている。
【0031】
次に図17は、この図16の構造と図15の構造とを組合わせたものである。
さらには、前記各実施例では第2肩ベルト,第2胴ベルトの各取付部が多段に形成されたものから適宜のものを選択したが、第2の本発明はそれら取付部を一つのみとするものである。
【0032】
(作用)
次に、本発明の安全ベルトの使用方法について述べる。
第1背当て部材(a1)の後面に上下に沿って多段に設けられた角カン(a6、a7、a8、a9)のいずれかに(図1ではa8)、同乗者装着用部品(B)の基本母材となる第2背当て部材(b1)に接続した第2肩ベルト(b3、b4)の前端をあらかじめ連結する。同時に、第1背当て部材(a1)の後面に上下に沿って多段に設けられた胴ベルト取付部(a10、a11、a12)のいずれかに(図1ではa12)、第2背当て部材(b1)に接続した第2胴ベルト(b2)をあらかじめ連結する。
【0033】
以下に、本発明の実施形態の構成の詳細を、二輪車の運転者と同乗者に装着する手順の流れに沿いながら、図2〜図6を用いて説明する。
そして、本発明の安全ベルトが、運転者と同乗者の体格差や二輪車の運転者用着座位置と同乗者用着座位置の高低差に合わせた、運転者装着部品(A)と同乗者装着部品(B)の連結位置の変更を可能とする実施形態の特徴を、図7、図8、図9を用いて説明する。
【0034】
はじめに、運転者装着用部品(A)と同乗者装着用部品(B)の2つの構成部品を、あらかじめ運転者と同乗者の体格差や二輪車の運転者用着座位置と同乗者用着座位置の高低差に合わせて(以下体格差等に合わせて、と省略する)、その連結位置を任意に選択し、連結させるための準備の手順を記載し、次にそれらを運転者と同乗者のそれぞれの体格等に合わせて調整し、連結させるための手順と、その安全ベルトを装着し、二輪車に乗車するまでの手順を記載する。
【0035】
先ず、図2のように、第2背当て部材(b1)に接続した第2肩ベルト(b3、b4)の前端を、第1背当て部材(a1)の後面に上下に沿って多段に設けられた角カン(a6、a7、a8、a9)のいずれかに、体格差等に合わせて、選択して、そこに通す。
図2では、第2肩ベルト(b3、b4)の前端を上から2番目の角カン(a7)に通しているが、体格差等に合わせて、第2肩ベルト(b3、b4)の前端を通す位置を、多段に設けられた角カン(a6、a7、a8、a9)のいずれかから選択できる構造となっており、例えば運転者用着座位置と同乗者着座位置の高低差がほぼ同等の場合で、同乗者が運転者と同程度の身長であった際には、図9のように一番上の角カン(a6)を選択することで、適切な本発明の安全ベルトの装着ができる。
【0036】
次に、図3のように、第2背当て部材(b1)に接続した第2胴ベルト(b2)の前端を、第1背当て部材(a1)の後面に上下に沿って多段に設けられた各胴ベルト取付部(a10、a11、a12)のいずれかに、体格差等に合わせて選択して、そこにそれを通す。
図3では、第2胴ベルト(b2)の前端を下から2番目の胴ベルト取付部(a11)に通しているが、体格差等に合わせて、第2胴ベルト(b2)の前端を通す位置を多段に設けられた各胴ベルト取付部(a10、a11、a12)のいずれかから選択できる構造となっており、例えば運転者用着座位置と同乗者着座位置の高低差がほぼ同等の場合で、同乗者が運転者と同程度の身長であった際には、図9のように2番目の胴ベルト取付部(a11)を選択することで適切な本発明の安全ベルトの装着ができる。
【0037】
上記の手順で、体格差等に合わせた連結位置の選択と連結の準備が完了した後、以下に記載する手順で、本発明の安全ベルトを運転者と同乗者のそれぞれの体格に合わせて調整し、連結させることで、本発明の安全ベルトの装着が完了する。
図2の要領で角カン(a6、a7、a8、a9)のいずれかに通した第2肩ベルト(b3、b4)の前端を、図4のように第2肩ベルトアジャスター(b5、b6)に通し、第2肩ベルト(b3、b4)の長さを同乗者の体格に合わせて調節しながら、第1背当て部材(a1)と連結する。
【0038】
さらに、図3の要領で、第1背当て部材(a1)に設けられた胴ベルト取付部(a10、a11、a12)のいずれかに通した第2胴ベルト(b2)の前端の第2胴ベルトバックル(係合部材)(b7)を、第2背当て部材(b1)に接続した第2胴ベルトバックル(係止部材)(b8)に図5のように連結する。この第2胴ベルトバックルの(b7)と(b8)を連結する際に、第2胴ベルトアジャスター(b9)を使って第2胴ベルト(b2)の長さを同乗者の体格に合わせてあらかじめ調整する。
【0039】
次に、第1背当て部材(a1)に接続した第1肩ベルト(a4、a5)の中程にそれぞれ設けられた第1肩ベルトアジャスター(a18)を使って、第1肩ベルト(a4、a5)の長さを運転者の体格に合わせて調整する。
次に、第1背当て部材(a1)に接続した第1胴ベルト(a2、a3)の長さを、第1胴ベルトアジャスター(a15)を使って運転者の体格に合わせて調整し、第1胴ベルト(a2、a3)の前端に取付けられた運転者側の第1胴ベルトバックル(a13、a14)を用いて連結する。
【0040】
更に、第1背当て部材(a1)に接続した第1肩ベルト(a4、a5)の中程にそれぞれ設けられた補助ベルト22の先端の第1肩ベルト補助バックル(a16、a17)を連結する。それにより、第1肩ベルト(a4、a5)が同乗者の挙動によってズレ動くことを抑えることができる。
【0041】
以下に、図6を基に本発明を装着し二輪車に乗車するまでの手順を記載する。
はじめに、本発明の同乗者装着用部品(B)を図6の左上の図ように運転者装着用部品(A)に連結された状態で同乗者に装着する。
同乗者装着用部品(B)の同乗者への装着は、あらかじめ同乗者の体格に合わせて調整された一対の第2肩ベルト(b3、b4)の間に同乗者の頭部をくぐらせる。
同乗者装着用部品(B)を図6のように運転者装着用部品(A)に連結させた状態で装着した同乗者は、運転者が二輪車の運転者用着座位置に乗車を完了した後で、同乗者用着座位置に乗車する。
【0042】
運転者は、乗車した同乗者が装着した同乗者装着用部品(B)に連結された運転者装着用部品(A)の第1背当て部材(a1)に接続され、あらかじめ運転者の体格に合わせて調整された一対の第1肩ベルト(a4、a5)に、図6の右上の図のように運転者の両腕を、リュックサックを背負うように通す。そして、第1背当て部材(a1)に接続され、あらかじめ運転者の体格に合わせて調整された第1胴ベルト(a2、a3)の運転者側の第1胴ベルトバックル(a13、a14)を連結する。さらに、あらかじめ運転者の体格に合わせて調整された第1肩ベルト補助バックル(a16、a17)を連結し、本発明の安全ベルトの装着が完了する。
【0043】
次に、本発明の安全ベルトを、運転者装着部品(A)と同乗者装着部品(B)の連結位置の変更を可能とする実施形態の特徴を、図7、図8、図9、図10、図11、に記載された、体格差等に合わせた例を用いて説明する。
図7は、二輪車の運転者用着座位置と同乗者用着座位置の高さが同等であり、運転者が成人男性で、同乗者が幼児の場合を示した例であり、第2肩ベルト(b3、b4)は第1背当て部材(a1)に設けられた3番目の角カン(a8)に連結し、第2胴ベルト(b2)は第1背当て部材(a1)に設けられた最下の胴ベルト取付部(a12)と連結することで、同乗者の乗車姿勢の安定性を保ち、脱落防止の効果を得ることができる。
【0044】
図8は、二輪車の運転者用着座位置と同乗者用着座位置の高さが同等であり、運転者が成人男性で、同乗者が小学生から中学年程度の子供の場合を示した例であり、第2肩ベルト(b3、b4)は第1背当て部材(a1)に設けられた2番目の角カン(a7)に連結し、第2胴ベルト(b2)は第1背当て部材(a1)に設けられた3番目の胴ベルト取付部(a11)と連結し、同乗者の乗車姿勢の安定性を保ち脱落防止の効果を得ることができる。
【0045】
図9は、二輪車の運転者用着座位置と同乗者用着座位置の高さが同等であり、運転者と同乗者の体格が同程度の場合を示した例であり、第2肩ベルト(b3、b4)は第1背当て部材(a1)に設けられた最上端の角カン(a6)に連結し、第2胴ベルト(b2)は第1背当て部材(a1)に設けられた上から3番目の胴ベルト取付部(a11)と連結して、同乗者の乗車姿勢の安定性を保ち、脱落防止の効果を得ることができる。
【0046】
図10は、二輪車の運転者用着座位置が同乗者用着座位置よりも低く、運転者が成人男性で同乗者が幼児の場合を示した例であり、第2肩ベルト(b3、b4)は第1背当て部材(a1)に設けられた2番目の角カン(a7)に連結し、第2胴ベルト(b2)は第1背当て部材(a1)に設けられた3番目の胴ベルト取付部(a11)と連結し、同乗者の乗車姿勢の安定性を保ち脱落防止の効果を得ることができる。
【0047】
図11は、二輪車の運転者用着座位置が同乗者用着座位置よりも低く、運転者と同乗者の体格が同程度の場合を示した例であり、第2肩ベルト(b3、b4)は、第1背当て部材(a1)に設けられた最上端の角カン(a6)に連結し、第2胴ベルト(b2)は第1背当て部材(a1)に設けられた2番目の胴ベルト取付部(a10)と連結することで、同乗者の乗車姿勢の安定性を保ち脱落防止の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0048】
A 運転者装着用部品
B 同乗者装着用部品
a1 第1背当て部材
a2 第1胴ベルト
a3 第1胴ベルト
a4 第1肩ベルト
a5 第1肩ベルト
【0049】
a6 角カン(肩ベルト取付部)
a7 角カン(肩ベルト取付部)
a8 角カン(肩ベルト取付部)
a9 角カン(肩ベルト取付部)
a10 胴ベルト取付部
a11 胴ベルト取付部
【0050】
a12 胴ベルト取付部
a13 第1胴ベルトバックル
a14 第1胴ベルトバックル
a15 第1胴ベルトアジャスター
a16 第1肩ベルト補助バックル
a17 第1肩ベルト補助バックル
a18 第1肩ベルトアジャスター
【0051】
b1 第2背当て部材
b2 第2胴ベルト
b3 第2肩ベルト
b4 第2肩ベルト
b5 第2肩ベルトアジャスター
b6 第2肩ベルトアジャスター
【0052】
b7 第2胴ベルトバックル
b8 第2胴ベルトバックル
b9 第2胴ベルトアジャスター
20 背当てベルト部
21 縫着部
22 補助ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二輪車の運転者と同乗者の各上半身間を連結し、同乗者の乗車姿勢の安定性を保ち、二輪車からの同乗者の脱落防止を図る安全ベルトであって、
運転者の背中に装着される平板状の第1背当て部材(a1)と、
その第1背当て部材(a1)の下部に接続されて、運転者の胴部回りに装着される第1胴ベルト(a2,a3)と、
その第1背当て部材(a1)の上部に接続されて、運転者の肩部回りに装着される一対の第1肩ベルト(a4,a5)と、
同乗者の胴部回りに装着される第2胴ベルト(b2)と、
同乗者の肩部回りに装着される一対の第2肩ベルト(b3,b4)と、
前記第1背当て部材(a1)に上下方向に離間して設けられ、第2胴ベルト(b2)の前側が着脱自在に取付られる複数の胴ベルト取付部(a10, a11,a12)と、
前記第1背当て部材(a1)に上下方向に離間して設けられ、一対の第2肩ベルト(b3,b4)の前側が着脱自在に取付られる複数の肩ベルト取付部(a6,a7,a8,a9)と、を具備し、
複数の前記胴ベルト取付部(a10, a11,a12)と、複数の前記肩ベルト取付部(a6,a7,a8,a9)との中から、同乗者の第2胴ベルト(b2)および第2肩ベルト(b3,b4)の取付位置を任意に選択できるようにしたことを特徴とする二輪車二人乗り用の安全ベルト。
【請求項2】
請求項1において、
同乗者の背中に装着される平板状の第2背当て部材(b1)を有し、その第2背当て部材(b1)の下部に前記第2胴ベルト(b2)が接続され、その第2背当て部材(b1)の上部に一対の前記第2肩ベルト(b3,b4)が接続された二輪車二人乗り用の安全ベルト。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
一対の前記第1肩ベルト(a4,a5)の各一端部側が延長されて、それが前記第1背当て部材(a1)の背面に上下方向に且つ、互いに平行に固定されて、一対の背当てベルト部(20)を構成し、
前記胴ベルト取付部(a10, a11,a12)は、各背当てベルト部(20)にその幅方向に貫通し、上下に離間して複数取付られたものからなり、
前記肩ベルト取付部(a6,a7,a8,a9)は、各背当てベルト部(20)にその上下方向に貫通し、上下に離間して複数取付られたものからなる二輪車二人乗り用の安全ベルト。
【請求項4】
請求項3において、
前記背当てベルト部(20)は、それぞれ一対のベルト材を重ねて上下に離間して複数、幅方向に縫着したものからなり、
前記肩ベルト取付部(a6,a7,a8,a9)は、一対のベルト材の幅方向の縫着部が上下に近接して離間した間の環状部に、その一端が幅方向に挿通固定された角カンからなり、
胴ベルト取付部(a10, a11,a12)は、隣り合う各肩ベルト取付部(a6,a7,a8,a9)間に位置し、一対のベルト材の幅方向の縫着部が上下に離間した間の部分に環状に形成されてなる二輪車二人乗り用の安全ベルト。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかにおいて、
前記各胴ベルトおよび肩ベルトはその長さがベルトアジャスターを介して伸縮自在に調整でき、
各胴ベルトはベルトバックルを介して係脱自在に構成した二輪車二人乗り用の安全ベルト。
【請求項6】
二輪車の運転者と同乗者の各上半身間を連結し、同乗者の乗車姿勢の安定性を保ち、二輪車からの同乗者の脱落防止を図る安全ベルトであって、
運転者の背中に装着される平板状の第1背当て部材(a1)と、
その第1背当て部材(a1)の下部に接続されて、運転者の胴部回りに装着される第1胴ベルト(a2,a3)と、
その第1背当て部材(a1)の上部に接続されて、運転者の肩部回りに装着される一対の第1肩ベルト(a4,a5)と、
同乗者の背中に装着される平板状の第2背当て部材(b1)と、
その第2背当て部材(b1)の下部に接続されて、同乗者の胴部回りに装着される第2胴ベルト(b2)と、
その第2背当て部材(b1)の上部に接続されて、同乗者の肩部回りに装着される一対の第2肩ベルト(b3,b4)と、
前記第1背当て部材(a1)に設けられ、第2胴ベルト(b2)の前側が取付られる胴ベルト取付部と、
前記第1背当て部材(a1)に設けられ、一対の第2肩ベルト(b3,b4)の前側が取付られる肩ベルト取付部と、を具備し、その肩ベルト取付部の位置が胴ベルト取付部の位置より上方にある二輪車二人乗り用の安全ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−20493(P2011−20493A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165508(P2009−165508)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【特許番号】特許第4488380号(P4488380)
【特許公報発行日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(509198996)
【Fターム(参考)】