説明

二輪車搬送機能付きリフト搬器

【課題】 簡易な構造で、かつリフトのフレームから二輪車がはみ出す量をできるだけ少なくした二輪車搬送機能付きリフト搬器を提供する。
【解決手段】 リフトハンガーに取り付けられる略矩形状のフレーム3と、フレーム3の前面に形成された乗車部3dと、フレーム3の背面に形成された二輪車保持機構9と、を備え、二輪車保持機構9は、フレーム3の上辺フレーム3aにおける中心よりも一方側に寄った位置に設けられて二輪車23の前輪25または後輪27を保持する第1車輪保持部11と、フレーム3の中心線に対して第1車輪保持部11と反対側にある縦辺フレーム3bに設けられて後輪27または前輪25を保持する第2車輪保持部13とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客と共に二輪車を搭載して搬送できる二輪車搬送機能付きリフト搬器に関する。
【背景技術】
【0002】
スキーシーズンがオフの時にスキー場でマウンテンバイク等の二輪車を利用するスポーツが行われる。
このとき利用するマウンテンバイク等の二輪車をリフト搬器で搬送することが考えられている。このような例として、ゲレンデリフトのキャリア本体に設けた連結部と、マウンテンバイクのフレーム部分を引っ掛けるフック部とを備えたことを特徴とするマウンテンバイク運搬装置が提案されている(特許文献1参照)。
そして、上記の提案においては、リフトのフレームの背面側に水平アーム部材を設け、この水平アーム部材にマウンテンバイクの水平フレームを吊持するフック部を設けるというものである。
また、この水平アーム部材を支持するために縦部材を設けており、この縦部材と水平アーム部材とで略T字状の部材となっている。
【特許文献1】実開平3−47271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の特許文献1のものにおいては、略T字状の部材を背面側に突出して取り付けているので、リフト搬器の重量が重くなる。リフト搬器の重量が重くなると、索車の数を増やす等の措置が必要になり、既存のリフトをそのまま利用できないという問題がある。
【0004】
また、特許文献1のものは、マウンテンバイクを水平状態、すなわち通常の乗車時の状態でリフトに保持するものであるため、マウンテンバイクの前後輪がリフトのフレームからはみ出てしまう。そのため、搬送中にリフトの支柱にマウンテンバイクが接触する可能性があり、危険である。
【0005】
この点をさらに詳細に説明する。
図4は一般的なリフトの全体図、図5はリフトと支柱との関係を示す図である。図4に示されるように、リフトは駆動ホイル41と従動ホイル43の間にロープ45を掛け回し、駆動ホイル41と従動ホイル43の間に複数の支柱47を立設して索輪49によってロープ45を支持している。そして、ロープ45には複数のリフト搬器51を取り付けている。
【0006】
上記のようなリフトにおいて、各支柱47の側方をリフト搬器51が通過するときは、図5に示されるようにリフト搬器51の側方と支柱47が近接することになる。
このため、リフト搬器51の側方にマウンテンバイクがはみ出していると、支柱47に接触してしまい、危険である。しかも、リフトが設置される高原などでは風等の影響でリフト搬器51が揺れることがあるので、さらにこの危険は大きい。
【0007】
本発明は係る従来技術の有する課題を解決するためになされたものであり、簡易な構造で、かつリフト搬器のフレームから二輪車がはみ出す量をできるだけ少なくした二輪車搬送機能付きリフト搬器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る二輪車搬送機能付きリフト搬器は、リフトハンガーに取り付けられる略矩形状のフレームと、該フレームの前面に形成された乗車部と、前記フレームの背面に形成された二輪車保持機構と、を備え、前記二輪車保持機構は、前記フレームの上辺フレームにおける中心よりも一方側に寄った位置に設けられて二輪車の前輪または後輪を保持する第1車輪保持部と、前記フレームの中心線に対して前記第1車輪保持部と反対側にある縦辺フレームに設けられて後輪または前輪を保持する第2車輪保持部とを有することを特徴とするものである。
【0009】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、第1車輪保持部は、上辺フレームから背面側に突出して設けられた棒状部材の先端に略C字型で開口部を上に向けて設けられたフックからなり、第2車輪保持部はフレームから背面側に突出する棒状部材からなることを特徴とするものである。
【0010】
(3)また、上記(2)に記載のものにおいて、第1車輪保持部および第2車輪保持部はリフト搬器が空の状態において先端側が高位置になるように斜めに取り付けられていることを特徴とするものである。
【0011】
(4)また、上記(2)または(3)に記載のものにおいて、第2車輪保持部は略鉛直上下方向に回動可能に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0012】
(5)また、上記(2)〜(4)に記載のものにおいて、第2車輪保持部はその先端に車輪が抜けるのを防止するためのストッパを着脱可能に設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、リフトハンガーに取り付けられる略矩形状のフレームと、該フレームの前面に形成された乗車部と、前記フレームの背面に形成された二輪車保持機構と、を備え、前記二輪車保持機構は、前記フレームの上辺フレームにおける中心よりも一方側に寄った位置に設けられて二輪車の前輪または後輪を保持する第1車輪保持部と、前記フレームの中心線に対して前記第1車輪保持部と反対側にある縦辺フレームに設けられて後輪または前輪を保持する第2車輪保持部とを有することにより、簡易な構造で、かつリフトのフレームから二輪車がはみ出す量をできるだけ少なくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[実施の形態1]
図1は本実施の形態に係るリフト搬器を側面から見た状態を示す説明図、図2は図1に示したリフト搬器を背面から見た状態を示す説明図である。以下、図1及び図2に基づいて本実施の形態を説明する。
リフト搬器1は略矩形状のフレーム3からなり、このフレーム3は少なくとも上辺フレーム3a、両側の縦フレーム3b、3cを有している。そして、フレーム3の下部には前面側に湾曲して乗車部3dが形成されている。乗車部3dには座席板5が設置され、さらに乗車部3dの両側には手すりフレーム7a、7bが形成されている。そして、フレーム3における背面側には二輪車を保持する二輪車保持機構9が設けられている。
この二輪車保持機構9は、上辺フレーム3aにおける中心よりも一方に寄った位置(図2において右側によった位置)に取り付けられて二輪車の前輪を保持する第1車輪保持部11と、フレーム3の中心に対して第1車輪保持部11と反対側に位置する縦フレーム3bに取り付けられて二輪車の後輪を保持する第2車輪保持部13と、を備えて構成されている。
以下、各構成部を詳細に説明する。
【0015】
(1)第1車輪保持部
第1車輪保持部11はフレーム3から背面側斜め上方に延出する棒状部材からなり、その一端側が上辺フレーム3aに着脱可能に取り付けられ、他端側に開口を上に向けた略C字上のフック15が設けられている。
第1車輪保持部11の傾斜角度については、図1に示される状態(図1では人が乗車した際のイメージを表現するため、人形を二点鎖線で示しているが、リフト搬器1の傾き等は人が乗車していない状態を示している)で、フック側が高位置になるように傾斜している。この理由は、人が乗車したときに、人の重さでリフト搬器1が前方に揺れ、図1に示す縦フレーム3cがほぼ鉛直になるが、この状態で第1車輪保持部11におけるフック側が下向きにならないようするためである。
このようにすることで、人が乗車したときにも、二輪車を確実に保持できる。また、保持している二輪車の後輪側が地面に当接するのを防止している。
【0016】
なお、本実施の形態においては、縦フレーム3cが図1の状態で鉛直方向から時計回り方向に約13°の方向に斜めになっており、第1車輪保持部11はこの縦フレーム3cに対してほぼ直角に取り付けられている。
【0017】
上フレーム3cと第1車輪保持部11との連結は、図1に示すように、第1車輪保持部11の一端側にU字状金具17を設け、このU字状金具17によって上辺フレーム3cを挟み、この状態でU字状金具17の両端をボルト19にて締めつけることによって行われている。
上記のような構造であれば、第1車輪保持部11を、例えばスキーの季節などのように二輪車の搬送の必要のないときには簡単に取り外すことができる。
【0018】
(2)第2車輪保持部
第2車輪保持部13は一端側が縦フレーム3bに着脱可能に取り付けられ、背面側斜め上方に延出する棒状部材から構成されている。
この棒状部材の傾斜については、第1車輪保持部の傾斜とほぼ同様に設定されている。すなわち、図1に示される状態(人が乗車していない状態)で、先端が上方に向くようになっている。
【0019】
第2車輪保持部13の縦フレーム3bへの取付部は、半割状の金具で縦フレーム3bを挟持して、この半割状の金具をボルト21で締め付けるようにしている。このような構造にすることで、第1車輪保持部13と同様に不使用のときの取外しが容易にできる。
【0020】
上記のように構成された本実施の形態においては、図2に示されるように、二輪車23を前輪25が上になるようにして、前輪25の内側をフック15に掛けるようにする。そして、その状態で、後輪27の内側に第2車輪保持部13を挿入して、第2車輪保持部13に後輪27の内側が当接するようにする。この状態では、図2に示すように、二輪車23が斜め状態になっているので、重力により後輪は図2の矢印Aの方向に移動しようとし、二輪車23が第2車輪保持部13に強く押し付けられることになり、しっかりと保持される。
【0021】
なお、図1の状態は二輪車23の前輪をフック15に掛けて二輪車23を手で保持している状態を示しており、手を放すことで二輪車23は、フック15で保持される部位を支点として図1における矢印Bの方向へ回動して二輪車23の車体の一部がフレーム3に当接することで所定位置に保持される。
【0022】
本実施の形態によれば、図2から分かるように、二輪車23はリフト搬器1のフレーム3内にほぼ納まっており、フレーム3の外に突出する部分は僅かである。このためリフトの運行時に二輪車23がリフトの支柱に衝突するという危険が防止でき、安全である。
しかも、本実施例の二輪車保持機構9は、第1保持部材11と第2車輪保持部13からなり、それぞれが棒状部材という極めて簡単でかつその重量が軽減されていることから、既設のリフト搬器にとりつけても索輪の数を増やすなどの仕様変更が不要であり、既設のリフト搬器に取り付けるのに好適である。
【0023】
また、実際にリフト搬器に搭載する際には、二輪車23の前輪25側を第1保持部11のフック15に引っ掛け、これを支点として二輪車23の後輪側をフレーム3に近づけて行けばよいだけなので、操作が極めて簡単であり、常時動いているリフトに搭載するのに好適である。
【0024】
[実施の形態2]
図3は本発明の実施の形態2の要部の説明図である。この実施の形態2は実施の形態1における第2車輪保持部13の変形例に関するものである。つまり、実施の形態1において示した第2車輪保持部13は縦フレーム3bから常時延出した状態のものであったが、この実施の形態2においては、第2車輪保持部を回動可能にすることで、使用するときのみ後方に延出させるようにしたものである。
【0025】
以下、図3に基づいて本実施の形態を説明する。
本実施の形態の第2車輪保持部31は、第2車輪保持部31を縦フレーム3bに取り付ける取付部33、一端側を取付部33に図1における矢印C方向に回動可能に取り付けられた棒状部材35、棒状部材35の先端部に着脱可能に構成されたストッパ部材37から構成されている。
【0026】
取付部33は、実施の形態と1同様に半割金具で縦フレーム3bを挟持できるようになっている(図3では片側の半割金具のみを記載している)。そして、取付部33の突出片33aに棒状部材35の一端部が軸39によって回動可能に取り付けられている。
棒状部材35は角形の管材からなり、その先端は開口する開口部35aとなっている。
ストッパ部材37は、棒状部材35の開口部35aに挿入可能な棒状部37aと、鍔状の抜け止めリング37bと、取手37cから構成されている。棒状部37aには棒状部37aを棒状部材35の開口部35aに挿入したときに棒状部37aを棒状部材35にしっかりと固定するための板ばね39が設けられている。つまり、板ばね39は棒状部37aの挿入時には棒状部37aの表面側に縮み棒状部37aの棒状部材35への挿入を可能とするが、挿入状態では板ばね39の弾性によって棒状部材35を内面から押上げることによって棒状部37aが棒状部材35から抜けないようにしている。
【0027】
抜け止めリング37bは棒状部材35よりも大径の円盤状の部材であり、これによって二輪車23の後輪27が棒状部材35から抜けるのを防止している。
なお、抜け止めリング37bの形状は特に限定されるものではなく、図3のような円形に限られず、矩形状、多角形状等であってもよい。
【0028】
上記のように構成された本実施の形態においては、二輪車を搭載しないときには棒状部材35をリフト搬器1のフレーム側に回動させておくことができ、棒状部材35が邪魔にならない。
そして、二輪車23を搭載する際に図1に示す状態になるように回動させればよい。なお、二輪車23を搭載状態では図2に示すように棒状部材は矢印Aの方向に力を受けるが、この方向は棒状部材35が回動する矢印Cの方向と異なっているので、棒状部材35は二輪車23の重さによって回動することなく二輪車23を保持することができる。
【0029】
また、棒状部材35を二輪車23の後輪27に挿入した後、ストッパ部材37を棒状部材35に挿入することによって後輪27が棒状部材35から抜けるのを確実に防止できる。
なお、二輪車の搭載時の操作としては、後輪を棒状部材35に挿入した後で、ストッパ部材37を挿入する。
【0030】
以上のように、本実施の形態においては、第2車輪保持部31を構成する棒状部材35を回動可能に縦フレーム3bに取り付けると共に棒状部材35の先端部にストッパ部材37を着脱可能に取り付けるようにしたので、第2車輪保持部31を不使用の際にはリフト搬器側に回動させることで邪魔にならないようにできる。また、ストッパ部材37を着脱可能に取り付けることで、後輪27が第2車輪保持部31から外れるのを確実に防止でき、安全である。
【0031】
なお、上記の実施の形態2においては、ストッパ部材37の棒状部37aを棒状部材35に固定する手段として板ばね39を用いたが、この板ばね39に代えてマグネットを用いてもよい。
また、上記の実施の形態においては、二輪車23の前輪側を上に向けて保持するようにした例を示したが、前輪側を下に向けて保持するようにすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係るリフト搬器を側面から見た状態の説明図である。
【図2】本発明の一実施形態の係るリフト搬器を背面から見た状態の説明図である。
【図3】本発明の他の実施の形態の要部の説明図である。
【図4】本発明の課題を説明するための説明図であり、リフトの全体を示す図である。
【図5】本発明の課題を説明するための説明図であり、リフト搬器と支柱の位置関係を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 リフト搬器、3 フレーム、3a 上辺フレーム、3b、3c縦辺フレーム、9 二輪車保持機構、11 第1車輪保持部、13、31 第2車輪保持部、15 フック、21 二輪車、25 前輪、27 後輪。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リフトハンガーに取り付けられる略矩形状のフレームと、該フレームの前面に形成された乗車部と、前記フレームの背面に形成された二輪車保持機構と、を備え、前記二輪車保持機構は、前記フレームの上辺フレームにおける中心よりも一方側に寄った位置に設けられて二輪車の前輪または後輪を保持する第1車輪保持部と、前記フレームの中心線に対して前記第1車輪保持部と反対側にある縦辺フレームに設けられて後輪または前輪を保持する第2車輪保持部とを有することを特徴とする二輪車搬送機能付きリフト搬器。
【請求項2】
第1車輪保持部は、上辺フレームから背面側に突出して設けられた棒状部材の先端に略C字型で開口部を上に向けて設けられたフックからなり、第2車輪保持部はフレームから背面側に突出する棒状部材からなることを特徴とする請求項1に記載の二輪車搬送機能付きリフト搬器。
【請求項3】
第1車輪保持部および第2車輪保持部はリフト搬器が空の状態において先端側が高位置になるように斜めに取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の二輪車搬送機能付きリフト搬器。
【請求項4】
第2車輪保持部は略鉛直上下方向に回動可能に取り付けられていることを特徴とする請求項2または3に記載の二輪車搬送機能付きリフト搬器。
【請求項5】
第2車輪保持部はその先端に車輪が抜けるのを防止するためのストッパを設けたことを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の二輪車搬送機能付きリフト搬器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−281910(P2006−281910A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−102425(P2005−102425)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000200334)JFEメカニカル株式会社 (48)