二輪車用チャイルドシートの安全装置
【課題】 自転車201が倒れたとき、チャイルドシートCSに座る子供が、顔面や頭を地面に強打しないようにする。
【解決手段】 上記車体202と揺動機構A1,A2とを、上記チャイルドシートCSの揺動を止めるロック機構B1〜B8を介して連係している。そして、このロック機構B1〜B8は、車体202が傾いてチャイルドシートCSを揺動させる力が設定値以上になったときロックを解除してチャイルドシートCSの揺動を許容する。そのため、チャイルドシートの座面が水平に保たれるようになる。
【解決手段】 上記車体202と揺動機構A1,A2とを、上記チャイルドシートCSの揺動を止めるロック機構B1〜B8を介して連係している。そして、このロック機構B1〜B8は、車体202が傾いてチャイルドシートCSを揺動させる力が設定値以上になったときロックを解除してチャイルドシートCSの揺動を許容する。そのため、チャイルドシートの座面が水平に保たれるようになる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、子供などを座らせる自転車用チャイルドシートの安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自転車に取り付けるチャイルドシートとして、例えば特許文献1,2に示すものが従来から知られているが、これらのチャイルドシートは、自転車のハンドルや荷台等にしっかりと固定される。
そして、このチャイルドシートにはシートベルトを設けて、走行中に自転車が転倒しても、子供が路上に投げ出されないようにしている。
【特許文献1】特開2006−15920号公報
【特許文献2】特開2000−238646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
自転車が走行中に転倒したとき、子供が自転車から放り出されないようにすることも安全上必要なことである。しかし、自転車が転倒したときに、チャイルドシートに座っている子供の姿勢いかによっては、顔面や頭などを地面に強打することもあるので、自転車が転倒しても、子供の姿勢を安全に保つことも重要になる。
ところが、前記従来の安全装置では、上記したように自転車が転倒した際に、子供が自転車から投げ出されるのを防止できるが、子供の姿勢を安全に保つことに関しては、全く無防備であるのが実情である。かえって、シートベルトなどで体の自由を束縛されている分、本能的に安全な姿勢を整えるといったこともできず、安全を目的としたシートベルトが危険を大きくすることすらあった。
【0004】
そこで、発明者らは、自転車のチャイルドシートに座っている子供を詳細に観察したところ、自転車が横倒しになったときには、チャイルドシートの座面から地面に落ちる方が、言い換えると子供のお尻のほうから地面に落ちる方が、より安全性が高いことを見出した。
この発明の目的は、自転車が転倒した際に、子供が頭を地面に強打しないようにしたチャイルドシートの安全装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、車体のサドル前方または後方に揺動機構を介してチャイルドシートを揺動可能に設けた点に特徴を有する。
第2の発明は、第1の発明を前提とし、上記車体と揺動機構とは、上記チャイルドシートの揺動を止めるロック機構を介して連係する一方、車体が傾いてチャイルドシートを揺動させる力が設定値以上になったとき、上記ロック機構がロックを解除してチャイルドシートの揺動を許容する構成にしている。
【0006】
第3の発明は、上記第2の発明を前提とし、上記ロック機構は、車体側あるいはチャイルドシート側のいずれか一方に設けた保持部と、いずれか他方に設けた被保持部とからなり、車体が傾いてチャイルドシートを揺動させる力が設定値以上になったとき、ロック機構でロックされた上記揺動機構の揺動支点を中心にして描かれる保持部あるいは被保持部の揺動軌跡から、保持部あるいは被保持部のいずれか一方もしくは双方を退避させてロックを解除する構成にしたものである。
第4の発明は、チャイルドシートの座面よりも下方に重りを設けたものである。
なお、上記二輪車には、自転車のほか、自動二輪、いわゆるオートバイも含まれる。
【発明の効果】
【0007】
第1の発明によれば、車体が傾いたときには、チャイルドシートが揺動するので、このチャイルドシートは、子供の体重の作用で、その座面を水平方向に保つ機能を発揮する。このようにチャイルドシートの座面が重力方向を向いていれば、それに座っている子供もお尻の方から着地することになる。したがって、子供は、顔面や頭などを地面に強打することがなく、その安全性は非常に高いものになる。
【0008】
第2,3の発明によれば、自転車の傾きが小さくそれが安定している状態では、チャイルドシートが不用意に揺動しないので、子供が座っている状態で多少暴れても、当該チャイルドシートが揺れたりせず、安全な状態が保たれる。しかも、安定走行中にはチャイルドシートがゆらゆら揺れないので、その操舵性や安定性が損なわれることもない。
第4の発明によれば、重りの作用で、チャイルドシートの座面をより安定的に水平に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1〜図4を用いて、この発明の第1実施形態について説明する。
図1に示す自転車201は、その車体202に、サドル203、前輪204及び図示していない後輪を設けている。また、上記前輪204には、この発明の車体側軸となるハンドル軸205を介してハンドル206を連係するとともに、ハンドル206の操舵に応じてハンドル軸205が回転し、このハンドル軸205の回転によって前輪204を転舵する。
【0010】
そして、ハンドル206には、チャイルドシートCSが連結されるが、このシートCSをハンドル206に連結するのが揺動機構A1である。この揺動機構A1は、シートCSを、揺動自在に支持するもので、以下には、揺動機構A1について説明する。
【0011】
揺動機構A1は、ハンドル206に固定した一対の取り付け部材1,1間に支持部材2を掛け渡しているが、この取り付け部材1,1は、例えばヒンジを介して二分割可能にし、それら二分割した部材でハンドル206を挟んで保持し、それらをボルト等で固定するようにしている。
上記のようにした支持部材2には、図2に示す軸受保持部3を固定しているが、この軸受保持部3には軸受4を設けている。
そして、上記軸受保持部3には貫通孔3aを形成し、この貫通孔3aに上記支持部材2を貫通させて、当該軸受保持部3を支持部材2に固定している。結果として、この状態で上記軸受4が支持する回転軸5a、すなわち揺動軸線IIがハンドル206と直交する関係を保つことになる。
【0012】
上記のようにした軸受4には揺動体5の回転軸5aを回転自在に支持するが、この揺動体5は、図3に示すように、上記回転軸5aと、この回転軸5aに対してほぼ直角に折り曲げた揺動フレーム5bと、この揺動フレーム5bの下端を2つに分岐させたシート固定部5cとからなる。そして、軸受4に支持された回転軸5aとハンドル軸205とが直交するので、車体202がまっすぐに立っているときには、上記揺動フレーム5bが鉛直線上にあってハンドル軸205と正対することになる。また、ハンドル206を転舵すれば、揺動体5もそれにともなって回ることになる。
なお、図中符号CSはチャイルドシートで、上記シート固定部5cに固定している。
【0013】
上記のようにした揺動機構A1に支持されたチャイルドシートCSは、自転車201がまっすぐに立てられた状態では、図1に示すようにその座面が水平に保たれることになる。一方、シートCSに子供を乗せた状態で、図4に示すように、自転車201が矢印方向に傾いたとすると、シートCSの自重や子供の体重の作用で、揺動体5が、軸受保持部3を支点として揺動する。
【0014】
次に、図5〜図9を用いてロック機構B1について説明する。図5に示すように、ハンドル206と前輪204とを連係するハンドル軸205には、ロック機構B1が固定されている。
図6(a)はロック機構B1の上面図、図6(b)はロック機構B1の断面図である。このロック機構B1は、ハンドル軸205に固定する固定部材10を備えているが、この固定部材10はハンドル軸205に固定されていれば、その固定方法は問わない。そして、この固定部材10は、底面10aの周囲に外筒部10bを設けるとともに、この外筒部10bの開口縁には外側に突出するフランジ部10dを形成している。また、底面10aのほぼ中央にはハンドル軸205にぴったりとはまる内径を保った固定筒10cを起立させ、この固定筒10cをハンドル軸205に固定している。
【0015】
上記のようにした固定部材10の固定筒10cにはねじりコイルバネ11をはめているが、このねじりコイルバネ11には掛け止め部11a,11bを所定の間隔を保って突出させている。そして、この掛け止め部11a,11bの取付け時の間隔は、固定部材10の外筒部10bの内面に突出させたストッパー部10eの円周方向の幅とほぼ等しくしている。
なお、図中符号10fは、固定筒10cの先端に設けた突片で、ねじりコイルバネ11が抜けるのを防止するものである。
【0016】
上記のようにした固定部材10には、保持部12を回転自在に取り付けるが、その取り付け構造は次のとおりである。すなわち、保持部12は、二つ割りにした一対の部材からなり、それらの部材をボルト等で固定するとともに、両部材を固定した状態においてハンドル軸205を回転自在に貫通させる貫通孔12cが形成される関係にしている。そして、この保持部12の底部外面には、固定部材10の上記フランジ10dがはまる環状凹部12aを形成し、この環状凹部12aに上記固定部材10のフランジ10dを回転自在にはめ合わせるとともに、この保持部12には、固定筒10cを貫通したハンドル軸205を貫通させ、当該ハンドル軸205に対して保持部12を相対回転自在にしている。
【0017】
上記のように固定部材10に回転自在に取り付けた保持部12であって、上記環状凹部12aの内側にはトルク伝達片13を垂下させている。そして、このトルク伝達片13は前記ストッパー部10eとほぼ同一の幅を有するもので、それらトルク伝達片13及びストッパー部10eを図7に示すように、互いに対向させてねじりコイルバネ11の掛け止め部11a,11b間に収めることができるようにしている。また、上記のようにストッパー部10eとトルク伝達片13とを対向させた状態で、それらを掛け止め部11a,11b間に収めたとき、その掛け止め部11a,11bの先端がストッパー部10eの両側に接触する関係にしている。言い換えると、先端をストッパー部10eの両側に接触させた掛け止め部11a,11b間にトルク伝達片13を収めることによって、保持部12の位置決めも可能になる。
【0018】
また、ねじりコイルバネ11のバネ力以上の力がトルク伝達片13に作用して、トルク伝達片13がストッパー部10eと相対移動すると、いずれか一方の掛け止め片がストッパー部に当たったままの状態を維持しながら、いずれか他方の掛け止め片が、ねじりコイルバネ11のバネ力に抗してトルク伝達片13とともに移動し、保持部12を回すことになる。
【0019】
上記のようにした保持部12には保持端12bを設けているが、この保持端12bは、前記揺動フレーム5bの周囲と曲率をほぼ同じにした円弧状の凹部からなるもので、図6に示すように、揺動フレーム5bがこの保持端12bにはまるようにしている。そして、この保持端12bは、上記ストッパー部10eと正対する位置に設け、保持部12が回転すれば、この保持端12bも揺動するようにしている。
なお、この第1実施形態では、上記凹部を円弧状にしたが、この凹部はV字状などでもよい。
また、一定以上の揺動力が作用したときに回る保持部12とこの保持部12に保持された揺動フレーム5bとが相まってロック機構B1が構成される。
【0020】
次に、第1実施形態の作用について説明する。
保持部12の保持端12bで揺動フレーム5bをしっかりと押さえている状態で、しかも、車体202の傾きが小さく、揺動フレーム5bを揺動させようとする力が、ねじりコイルバネ11のバネ力よりも小さければ、ストッパー部10eとトルク伝達片13との相対移動が阻止される。このようにストッパー部10eとトルク伝達片13との相対移動が阻止されるということは、保持部12の回転が阻止されることであって、揺動フレーム5bもその揺動を阻止されたロック状態を保つ。このロック状態では、揺動フレーム5bが車体202と一体化されるので、チャイルドシートCSの座面も車体202とともに水平になったり傾いたりする。
【0021】
上記のように、揺動フレーム5bを揺動させようとする力が小さいということは、自転車201のスタンドを立ててそれを垂直にしているか、あるいは車体の傾きが小さい安定走行中を意味する。そして、安定走行中にチャイルドシートCSが車体の傾きに追随するということは、その分、操舵性と安定性が良好に保たれることになる。
【0022】
そして、車体202が倒れ方向に大きく傾くと、それにともなって揺動フレーム5bを揺動させようとする力も大きくなるが、その力はトルク伝達片13を介してねじりコイルバネ11に作用する。このときの力がねじりコイルバネ11のバネ力に打ち勝てば、トルク伝達片13が、ねじりコイルバネ11の一方の掛け止め部11aあるいは11bのいずれか一方を押しながら、ねじりコイルバネ11のバネ力に抗して移動する。このようにトルク伝達片13が移動すると、それにともなって保持部12も回り、保持端12bが揺動フレーム5bの揺動軌跡から退避し、揺動フレーム5bを図8に示すように保持端12bから開放して、揺動フレーム5bを揺動自在にさせる。
【0023】
揺動フレーム5bが揺動自在になれば、チャイルドシートCSは、その重力によって当該チャイルドシートCSの座面を地面に対して水平もしくはほぼ水平に保つことになる。このように車体202が倒れ方向に傾いても、チャイルドシートCSの座面が地面に対して水平もしくはほぼ水平に保たれるので、そこに乗っている子供は、頭を常に上に保ちながら自転車とともに倒れるので、顔面や頭を地面に強打させたりしない。
なお、ねじりコイルバネ11の弾性力に抗して保持部12を回そうとする力は、チャイルドシートCSの揺動方向に作用する荷重に比例する。すなわち、この揺動方向に作用する荷重は、自転車201の垂直状態からの傾き角度(以下「倒れ角」という)に比例する。
【0024】
いずれにしても車体が傾いてチャイルドシートを揺動させる力が設定値以上になったときに、揺動フレーム5bが揺動自在になって、チャイルドシートCSを水平もしくはほぼ水平に保つが、上記設定値以上の揺動力とは、ねじりコイルバネ11のバネ力と保持端12bの凹部の深さ、すなわち、揺動フレーム5bとの嵌合量によって決まることになる。そして、何を基準にして設定値以上の揺動力とするかは、当該安全装置を用いたチャイルドシートCSを使用する子供の対象年齢によって異なる。対象年齢が大きければ、それだけ体重も重くなるので、当然のこととして設定値も大きくなり、対象年齢が小さければ、設定値は小さくなる。
【0025】
上記のことを考慮すると、ねじりコイルバネ11を交換可能にしておくのがのぞましい。このようにしておけば、チャイルドシートCSを利用する子供の体重ごとに、きめ細かな調整が可能になる。
【0026】
以上のように、上記第1実施形態によれば、自転車201の倒れ角が大きくなったとき、つまり当該自転車201が転倒すると考えられる場合にのみシートCSを揺動させ、通常時すなわち走行中や自転車201を押して歩いているときにはシートCSを揺動させないので、運転者の操舵性や安定性が損なわれることがなく、また、子供の乗り心地が悪化することもない。
ただし、自転車が倒れたときの安全性のみを考慮すれば、上記ロック機構B1は必ずしも用いなくてもよいが、ロック機構B1がないと、通常走行時の操安性が損なわれることもあるので、ロック機構B1を備える方が望ましい。
なお、上記第1実施形態においては、保持部12をハンドル軸205に設けるとともに、保持端12bで揺動フレーム5bを保持するようにしたが、保持部12を揺動フレーム5bに設け、保持端12bでハンドル軸205を保持するようにしても上記と同様の効果を期待できる。
【0027】
図10〜図12を用いて、この発明の第2実施形態について説明する。ただし、この第2実施形態は、揺動機構A1の揺動を止めるロック機構B2に特徴があり、その他の構成は上記第1実施形態と同じである。したがって、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付するとともに、その詳細な説明は省略し、ここでは、ロック機構B2の構造及び作用について詳細に説明する。
【0028】
上記ロック機構B2は、図10に示すように、この発明の車体側軸となるハンドル軸205側に設けた保持部20と、この保持部20に保持される揺動フレーム5bとによって構成されるものである。
そして、図11(a)及び図11(b)に示すように、上記保持部20は固定部材21に設けているが、この固定部材21は、2分割された部材でハンドル軸205を挟み込むようにして当該ハンドル軸205に固定されている。この固定部材21をさらにくわしく説明すると、上記のように2分割された部材を合わせることによって、貫通孔21a,21aが形成されるとともに、この貫通孔21a,21aにハンドル軸205を貫通させている。そして、貫通孔21a,21aにハンドル軸205を圧接させて、当該ハンドル軸205に固定部材21を固定している。したがって、ハンドル206を操舵してハンドル軸205が回転すると、ハンドル軸205と一体的に固定部材21が回転することとなる。
【0029】
そして、この固定部材21には、上記保持部20を設けているが、この保持部20は、摺動部20aを固定部材21に形成したガイド孔21bに摺動自在に挿入するとともに、この摺動部20aの挿入端には摺動部20aがガイド孔21bから抜けるのを防止するフランジ部20bを形成している。
上記のようにガイド孔21bに摺動部20aを挿入した保持部20は、その軸線がハンドル軸205に対して直交する関係にしている。言い換えると、保持部20はハンドル軸205に直交する方向に摺動自在に組みつけられている。
【0030】
そして、上記フランジ部20bとは反対端である保持部20の先端には、保持端20cを設けているが、この保持端20cは、前記揺動フレーム5bの周囲と曲率をほぼ同じにした円弧状の凹部からなるもので、この凹部は、揺動フレーム5bを嵌合させるものである。さらに、フランジ部20b側と、固定部材21内であってフランジ部20bに対向する壁面との間に圧縮コイルバネ22を介在させている。そして、この圧縮コイルバネ22の作用で、通常は、保持部20の保持端20cが揺動フレーム5b側に突出するが、揺動フレーム5bがハンドル軸205と正対しているとき、図11(a)に示すように、保持端20cが揺動フレーム5bを保持するようにしている。
なお、この第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、上記凹部は円弧状に限らず、V字状などでもよい。
【0031】
したがって、揺動フレーム5bの揺動力が保持端20cに作用したとき、揺動フレーム5bは保持部20を押しのけて揺動しようとするが、このときの押しのけ力が圧縮コイルバネ22のバネ力よりも弱ければ、揺動フレーム5bは保持端20cで保持された状態を保つ。しかし、上記押しのけ力が圧縮コイルバネ22のバネ力に打ち勝てば、揺動フレーム5bは保持部20を圧縮コイルバネ22のバネ力に抗して押しのけて揺動することになる。言い換えると、上記押しのけ力で、保持部20の保持端20cを揺動フレーム5bの揺動軌跡から退避させて、揺動フレーム5bが揺動可能になる。
【0032】
したがって、車体が傾いてチャイルドシートを揺動させる力が、圧縮コイルバネ22のバネ力で決まる設定値以上になったときに、揺動フレーム5bが揺動自在になって、チャイルドシートCSを水平もしくはほぼ水平に保つが、上記設定値以上の揺動力とは、圧縮コイルバネ22のバネ力と保持端20cの凹部の深さ、すなわち、揺動フレーム5bとの嵌合量によって決まることになる。そして、当該安全装置を用いたチャイルドシートCSを使用する子供の対象年齢によって、設定値を相違させることができること第1実施形態と同じである。
なお、この第2実施形態においても、一定以上の揺動力が作用したときに退避する保持部20とこの保持部20に保持された揺動フレーム5bとが相まってロック機構B2が構成される。
また、第1実施形態と同様に、保持部20を揺動フレーム5bに設け、保持端20cでハンドル軸205を保持するようにしても上記と同様の効果を期待できる。
【0033】
上記のようにした第2実施形態の作用は第1実施形態と同様であって、自転車が一定の倒れ角以上に傾けば、揺動フレーム5bが揺動してチャイルドシートCSの座面を水平もしくはほぼ水平に保つものである。
【0034】
図13,図14に示した第3実施形態は、上記揺動機構A1の揺動を止めるロック機構B3に特徴があり、その他の構成は上記第1実施形態と同じである。したがって、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付するとともに、その詳細な説明は省略し、ここでは、ロック機構B3の構造及び作用について詳細に説明する。
図13(a)はロック機構B3の上面図、(b)はロック機構B3の断面図である。ロック機構B3は、この発明の車体側軸であるハンドル軸205に固定する固定部材30を備えている。
【0035】
この固定部材30には貫通孔30aを形成するとともに、この貫通孔30aにハンドル軸205を貫通させて、当該ハンドル軸205に固定部材30を固定している。したがって、ハンドル206を操舵してハンドル軸205が回転すると、ハンドル軸205と一体的に固定部材30も回ることになる。
また、上記固定部材30には、前記揺動フレーム5bに対向する側に保持部31を固定している。この保持部31は、その先端に保持端31aを形成しているが、この保持端31aは揺動フレーム5bの周囲と曲率をほぼ同じにした円弧状の凹部からなるもので、揺動フレーム5bがこの保持端31aにはまるようにしている。そして、この保持端31aは、垂直に保った揺動フレーム5bと、それに正対するハンドル軸205とを結ぶ線上に位置するものである。
なお、この第3実施形態においても、上記凹部は円弧状に限らず、V字状などでもよい。
【0036】
上記のようにした保持部31には、上記保持端31aを二分するスリット31bを形成している。そして、この保持部31は所定の荷重が作用したときに変形するウレタンゴムやシリコンゴム等の合成ゴムに代表される軟質部材で構成されている。
したがって、揺動フレーム5bの揺動力が保持端31aに作用したとき、揺動フレーム5bはスリット31bで二分された一方の保持端31a側を変形させて揺動しようとする。しかし、このときの力が上記保持端31aを変形させるのに必要な力よりも弱ければ、揺動フレーム5bは保持端31aで保持された状態を保つ。反対に、上記揺動力が保持部31を変形させるのに必要な力以上になれば、図14に示すように揺動フレーム5bは上記一方の保持端31aを変形させ、揺動フレーム5bが揺動可能になる。言い換えると、上記揺動力で、保持部31の一方の保持端31aを揺動フレーム5bの揺動軌跡から退避させて、揺動フレーム5bが揺動可能になる。このことからも明らかなように、この実施形態における設定値以上の揺動力とは、保持部31の材質の弾性力及びこの保持部31の形状で決まることになる。
【0037】
そして、車体が傾いてチャイルドシートを揺動させる力が、保持部31の弾性力及び形状で決まる設定値以上になったときに、揺動フレーム5bが揺動自在になって、チャイルドシートCSを水平もしくはほぼ水平に保つことになるもので、その他はすべて第1実施形態と同様である。
なお、この第3実施形態においても、一定以上の揺動力が作用したときに変形する保持部31とこの保持部31に保持された揺動フレーム5bとが相まってロック機構B3が構成される。
また、第1実施形態と同様に、保持部31を揺動フレーム5b側に設け、保持端31aでハンドル軸205を保持するようにしても上記と同様の効果を期待できる。
【0038】
図15〜図17を用いて、この発明の第4実施形態について説明する。ただし、この第4実施形態は、上記揺動機構A1の揺動を止めるロック機構B4に特徴があり、その他の構成は上記第1実施形態と同じである。したがって、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付するとともに、その詳細な説明は省略し、ここでは、ロック機構B4の構造及び作用について詳細に説明する。
図15に示すように、ハンドル206と前輪204とを連係するこの発明の車体側であるハンドル軸205には、ロック機構B4を構成する固定部材40が固定され、揺動フレーム5bには、同じくロック機構B4を構成する連結部材41が固定されている。
【0039】
上記固定部材40は、2つの部材を合体させてなるもので、その合体状態で貫通孔40aが形成されるようにしている。そして、この貫通孔40aに前記ハンドル軸205を貫通させて、当該固定部材40をハンドル軸205に固定している。
また、上記連結部材41には貫通孔41aを形成し、この貫通孔41aに揺動フレーム5bを貫通させて、当該連結部材41を揺動フレーム5bに固定している。
そして、揺動フレーム5bをハンドル軸205に正対させたとき、固定部材40と連結部材41との対向面40b,41bのそれぞれを平坦にするとともに、それら対向面40b,41bのそれぞれに保持溝40c,41cを形成している。
【0040】
さらに、固定部材40の上記保持溝40cには保持部42を固定しているが、この保持部42を連結部材41の保持溝41cにも固定している。
このようにした保持部42は、例えばポリカーボネートやABS等の材料で構成しており、固定部材40及び連結部材41よりも強度を弱くしている。
そして、揺動フレーム5bに揺動力が作用したときには、保持部42にせん断力が作用するが、このせん断力は揺動フレーム5bの揺動力とほぼ等しい。
したがって、上記揺動力が保持部42のせん断許容力以上の大きさになると、保持部42が破壊されて、揺動フレーム5bが揺動自在になる。そして、この実施形態においても、保持部42が破壊されることによって、当該保持部42が、揺動フレーム5bの揺動軌跡から実質的に退避したことになる。
【0041】
上記のように車体が傾いてチャイルドシートを揺動させる力が、保持部42の材質的な強度で決まる設定値以上になったときに、揺動フレーム5bが揺動自在になって、チャイルドシートCSを水平もしくはほぼ水平に保つことになるもので、その他はすべて第1実施形態と同様である。
なお、上記保持部42を、固定部材40及び連結部材41に対して交換可能にしておけば、子供の体重に応じた材質的な強度を保った保持部42を用いることによって、子供の体重差に対応することができる。
【0042】
図18〜図23を用いて、この発明の第5実施形態について説明する。ただし、この第5実施形態は、上記揺動機構A1の揺動を止めるロック機構B5に特徴があり、その他の構成は上記第1実施形態と同じである。したがって、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付するとともに、その詳細な説明は省略し、ここでは、ロック機構B5の構造及び作用について詳細に説明する。
図18〜図20に示すように、ハンドル206と前輪204とを連係するこの発明の車体側であるハンドル軸205には、当該ハンドル軸205と一体的に回転するように、固定部材50が固定されている。
【0043】
上記固定部材50内には、図21,22に示すように、この発明の保持手段を構成するソレノイド機構51を組み込んでいるが、このソレノイド機構51はロッド51aを備えており、ノーマル状態において固定部材50に形成した開口50aから、ロッド51aが突出する位置を保持する。そして、ソレノイド機構51を励磁すると、ロッド51aは、開口50aから固定部材50内に退避するようにしている。
一方、図18〜図20に示すように、軸受保持部3にはケーシング52を設け、このケーシング52内に、上記ソレノイド機構51を制御する制御手段と、自転車201の倒れ角を検出する倒れ角検出手段とを組み込んでいるが、これら制御手段及び倒れ角検出手段のいずれも図示していない。
【0044】
そして、上記倒れ角検出手段は、例えば加速度センサ等で構成されており、当該倒れ角検出手段と制御手段とが電気的に接続されている。また、上記制御手段は、配線54を介して上記ソレノイド機構51にも電気的に接続されている。
そして、上記倒れ角検出手段からの信号に基づいて、制御手段がソレノイド機構51を制御するようにしている。
【0045】
一方、図21に示すように、揺動体5の揺動フレーム5bには連結部材53を固定し、連結部材53が揺動フレーム5bと一体となって揺動するようにしている。このようにした連結部材53には、ソレノイド機構51のロッド51aの先端が進入する保持孔53aを形成している。
そして、自転車201が真っすぐに起立した状態で、連結部材53と固定部材50とが、所定の間隔をもって対向するようにしている。しかも、連結部材53には、固定部材50の開口50aと対向する位置に、保持孔53aを形成するとともに、この保持孔53aには、開口50aから突出したソレノイド機構51のロッド51aの先端が進入するようにしている。
【0046】
したがって、ソレノイド機構51が非励磁であるノーマル状態にあるときには、ロッド51aが保持孔53a内に進入して揺動フレーム5bの揺動を阻止し、ロック状態を維持する。そして、ソレノイド機構51が励磁されてロッド51aが保持孔53aから退避すると、揺動フレーム5bが揺動自在になって上記ロック状態が解除されることになる。
なお、上記のようにロック機構B5は、固定部材50、固定部材50内に設けたソレノイド機構51、ソレノイド機構51を制御する制御手段、自転車201の倒れ角を検出する倒れ角検出手段、揺動フレーム5b、及び揺動フレーム5bに固定した連結部材53で構成されている。
また、上記ソレノイド機構51、制御手段及び倒れ角検出手段の電源は、当該自転車に設置されている発電機を利用してもよいし、発電機とは別のバッテリーを自転車に搭載してもよい。
【0047】
上記のようにしたロック機構B5は、制御手段にあらかじめ設定倒れ角を記憶させておく。そして、自転車201の走行中には倒れ角検出手段が自転車201の傾きを検出してそれが制御手段に入力されると、制御手段は倒れ角が設定角度以内かどうかを判定する。それが設定角度以内であれば、ソレノイド機構51を非励磁状態に保って、ロック機構B5をロック状態に保つ。
そして、自転車201の倒れ角が設定角度以上になると、制御手段はソレノイド機構51を励磁してロッド51aを保持孔53aから退避させ、そのロック機構B5のロックを解除する。
【0048】
ロック機構B5のロックが解除されれば、揺動フレーム5bが揺動自在になって、チャイルドシートCSを水平もしくはほぼ水平に保つことになるが、その他はすべて第1実施形態と同様である。
なお、この第5実施形態では、自転車の倒れ角がチャイルドシートの揺動力に相応するものとしてとらえている。したがって、この第5実施形態においても、倒れ角すなわち車体が傾いてチャイルドシートを揺動させる力が設定値以上になったとき、上記ロック機構がロックを解除してチャイルドシートの揺動を許容するものである。
また、第1実施形態と同様に、保持手段であるソレノイド機構51を揺動フレーム5b側に設け、連結部材53をハンドル軸205側に設けるようにしてもよい。
【0049】
図24〜図26を用いて、この発明の第6実施形態について説明する。ただし、この第6実施形態の揺動機構A1は、揺動フレーム5bが可撓性を有している点のみ上記第1実施形態の揺動機構A1と異なり、その他の構成は、全て上記第1実施形態の揺動機構A1と同じである。また、この第6実施形態においては、上記揺動機構A1の揺動を止めるロック機構B6を備えた点に特徴がある。したがって、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付するとともに、その詳細な説明は省略し、ここでは、ロック機構B6の構造と揺動機構A1の作用について詳細に説明する。
図24に示すように、ハンドル206と前輪204とを連係するこの発明の車体側軸であるハンドル軸205には、ロック機構B6を構成する保持部60が固定されている。
【0050】
上記保持部60には、図25に示すように、貫通孔60aを形成するとともに、この貫通孔60aにハンドル軸205を貫通させて、当該保持部60をハンドル軸205に固定している。したがって、ハンドル206を操舵してハンドル軸205が回転すると、保持部60もハンドル軸205と一体的に回転することになる。
また、上記保持部60には、先端に保持端60bを形成しているが、この保持端60bは、前記揺動フレーム5bの周囲と曲率をほぼ同じにした円弧状の凹部からなるもので、図25に示すように、揺動フレーム5bがこの保持端60bにはまるようにしている。
なお、この第6実施形態においても、上記凹部は円弧状に限らず、V字状などでもよい。
【0051】
一方、この第6実施形態では、揺動フレーム5bに可撓性を持たせた点に最大の特徴を有する。すなわち、上記のように保持部60の保持端60bで保持された揺動フレーム5bは、設定値以上の揺動力が作用したとき、自ら撓んで保持端60bを乗り越えて、ロック機構B6でロックされた上記揺動機構の揺動支点を中心にして描かれる揺動軌跡から、揺動フレーム5bが退避するようにしたものである。したがって、この実施形態では、保持部60をハンドル軸205側に設けることが必須の構成要素になる。
また、上記設定値以上の揺動力とは、揺動フレーム5bの硬さ及び揺動フレーム5bと保持端60bとの嵌合量によって異なるもので、揺動フレーム5bを柔軟にするか、もしくは嵌合量を少なくすればするほど上記設定値が小さくなる。言い換えると、この実施形態における揺動力の設定値は、揺動フレーム5bの柔軟性及び揺動フレーム5bと保持端60bとの嵌合量に依存することになる。
【0052】
したがって、車体が傾いてチャイルドシートを揺動させる力が、揺動フレーム5bの柔軟性で決まる設定値以上になったときに、揺動フレーム5bが揺動自在になって、チャイルドシートCSを水平もしくはほぼ水平に保つことになるもので、その他はすべて第1実施形態と同様である。
なお、この第6実施形態においても、一定以上の揺動力が作用したときに変形する保持部60とこの保持部60に保持された揺動フレーム5bとが相まってロック機構B6が構成される。
また、上記軸受保持部3を、支持部材2を中心に回転可能に設ければ、上記揺動フレーム5bが、上記した撓みの方向にも回動可能となり、その回動によってロック機構を解除することもできる。
【0053】
図27,28を用いて、この発明の第7実施形態について説明するが、図27,28は、揺動体5が回転自在に支持される機構と、この発明の車体側であるハンドル軸205に固定された保持部70とを概念的に示したもので、その他の詳細な構成を省略したものである。
上記図27,28からも明らかなうように、軸受保持部3には軸受4を設けるとともに、この軸受4には、揺動体5の回転軸5aと連続するシャフト71が回転自在でかつ摺動可能に支持されている。さらに、このシャフト71の先端にはフランジ部72を設け、このフランジ部72と軸受4との間に圧縮コイルバネ73を介在させている。
【0054】
一方、ハンドル軸205には、第6実施形態の保持部60と全く同じ保持部70を固定している。すなわち、この保持部70には、貫通孔70aを形成するとともに、この貫通孔70aにハンドル軸205を貫通させて、当該保持部70をハンドル軸205に固定している。したがって、ハンドル206を操舵してハンドル軸205が回転すると、保持部70もハンドル軸205と一体的に回転することになる。
また、上記保持部70には、先端に図示していない保持端を形成しているが、この保持端は、前記揺動フレーム5bの周囲と曲率をほぼ同じにした円弧状の凹部からなるもので、揺動フレーム5bがこの保持端にはまるようにしている。そして、揺動フレーム5bに対する保持部70の保持力は、上記圧縮コイルバネ73のバネ力に依存することになる。
なお、この第6実施形態においても、上記凹部は円弧状に限らず、V字状などでもよい。
【0055】
上記の構成のもとで、車体が傾いてチャイルドシートを揺動させる力が作用すると、その揺動力が揺動フレーム5bに作用する。このとき、保持部70が揺動フレーム5bを保持する保持力が、揺動フレーム5bの揺動力に打ち勝てば、揺動フレーム5bは保持部70に保持されたまま、ロック状態を保つ。
【0056】
反対に、揺動フレーム5bの揺動力が上記保持力に打ち勝てば、シャフト71が圧縮コイルバネ73のバネ力に抗して軸方向に移動する。シャフト71が軸方向に移動すれば、それにともなって、揺動フレーム5bは、図28に示すように、保持部70で保持されたときの揺動フレーム5bの揺動軌跡から退避して、保持部70の保持力から開放される。したがって、揺動体5は揺動自在になり、チャイルドシートCSは水平もしくはほぼ水平に保たれるもので、その他はすべて第1実施形態と同様である。
【0057】
なお、この第7実施形態では、保持部70と、この保持部70から退避可能に設けた揺動フレーム5bと、保持部70の保持力を決める圧縮コイルバネ73とが相まってロック機構B7を構成するものである。
また、上記設定値以上の揺動力とは、圧縮コイルバネ73のバネ力によって異なるもので、そのバネ力を弱くすればするほど上記設定値が小さくなる。つまり、この実施形態における揺動力の設定値は、圧縮コイルバネ73のバネ力によって決まるものである。
【0058】
図29〜図32を用いて、この発明の第8実施形態について説明するが、上記各実施形態と同じ構成については、同じ符号を付して説明する。
図29に示す自転車201は、その車体202に、サドル203と後輪207とを設けている。また、上記車体202には、サドル203の後方であって上記後輪207の上方に荷台208を固定している。
【0059】
そして、図29〜図32に示すように、上記荷台208には揺動機構A2を設けているが、この揺動機構A2は、荷台208に固定した一対のガイドレール80,80を主要素にしてなる。そして、チャイルドシートCSは、その下面に固定したスライダ81,81を介してガイドレール80,80に摺動自在に取り付けられるが、ガイドレール80,80は、円弧部80a,80aからなる。
【0060】
上記のようにした円弧部80a,80aの曲率は、チャイルドシートCSの上方に仮想支点を設定し、その仮想支点を中心に車体202の倒れ方向に揺動する軌跡に一致させている。なお、上記仮想支点を高く設定すればするほど、円弧部80a,80aの曲率が大きくなり、反対に仮想支点を低く設定すればするほど上記曲率が小さくなる。
【0061】
円弧部80a,80aの曲率は、チャイルドシートCSに座る子供の安全性を考慮すれば大きい方がよいが、その曲率を大きくしすぎると、今度は、ガイドレール80,80の両端が車体202から大きく突出してしまう。ガイドレール80,80の両端が車体202から大きく突出しすぎると、走行中にガイドレール80,80が、いろいろなものにぶつかりやすくなるので、ある程度の限界がある。結局は、チャイルドシートCSに座っている子供の安全性と、走行中に他のものにぶつからないという走行時の安全性との兼ね合いで、上記曲率が決められることになる。
【0062】
なお、スライダ81,81がガイドレール80,80から抜け出て、チャイルドシートCSが放り出されないようにするため、上記直線円弧部80a,80aを連結する連結部80b,80bを設け、さらにその安全性を高めるようにしている。
【0063】
上記のようにしたチャイルドシートCSであって、一対のガイドレール80,80の間に位置するシートCSの下面には、上記ガイドレール80,80に直交する関係にした支持軸82を設けている。そして、この支持軸82には、ロック機構B8を構成する固定部材83を設けているが、ロック機構B8の構成は、図32に示すように、第1実施形態のロック機構B1の構成と同じである。そこで、以下には、このロック機構B8の概略を説明するが、概略説明の中で省略した構成要素は第1実施形態とすべて同じである。
【0064】
ロック機構B8は、支持軸82に固定する固定部材83を備えているとともに、この固定部材83には保持部84を回転自在に取り付けている。
上記のようにした固定部材83内にはねじりコイルバネ85をはめているが、このねじりコイルバネ85には掛け止め部85a,85bを所定の間隔を保って突出させている。そして、この掛け止め部85a,85bの間隔は、固定部材83に設けたストッパー部83aの円周方向の幅とほぼ等しくしている。
【0065】
上記のようにした固定部材83には、保持部84を回転自在に取り付けるが、この保持部84には、トルク伝達片86を設けている。そして、このトルク伝達片86は前記ストッパー部83aとほぼ同一の幅を有するもので、それらトルク伝達片86及びストッパー部83aを、互いに対向させてねじりコイルバネ85の掛け止め部85a,85b間に収めることができるようにしている。また、上記のようにストッパー部83aとトルク伝達片86とを対向させた状態で、それらを掛け止め部85a,85b間に収めたとき、その掛け止め部85a,85bの先端がストッパー部83aの両側に接触する関係にしている。
【0066】
また、ねじりコイルバネ85のバネ力以上の力がトルク伝達片86に作用して、トルク伝達片86がストッパー部83aと相対移動すると、いずれか一方の掛け止め片がストッパー部に当たったままの状態を維持しながら、いずれか他方の掛け止め片が、ねじりコイルバネ85のバネ力に抗してトルク伝達片86とともに移動し、保持部84を回すことになる。
【0067】
上記のようにした保持部84には保持端84aを設けているが、この保持端84aは、荷台208に設けた車体側フレーム87の周囲と曲率をほぼ同じにした円弧状の凹部からなるもので、車体側フレーム87がこの保持端84aにはまるようにしている。そして、この保持端84aは、上記ストッパー部83aと正対する位置に設け、保持部84が回転すれば、この保持端84aも回転するようにしている。
なお、この第8実施形態においても、上記凹部は円弧状に限らず、V字状などでもよい。
また、この第8実施形態では、一定以上の揺動力が作用したときに回る保持部84とこの保持部84に保持される車体側フレーム87とが相まってロック機構B8が構成される。
【0068】
上記のようにしたロック機構B8は、第1実施形態のロック機構B1と同様に機能するものである。ただ、この実施形態のロック機構B8では、車体側フレーム87が固定で、保持部84側のみが回って、ロックが解除される点が第1実施形態と異なる。ただし、上記保持部84を車体側フレーム87に設けるとともに、この保持部84で支持軸82を保持するようにすれば、第1実施形態のロック機構B1と原理的には全く同じになる。
また、この実施形態におけるロック機構は、支持軸82と車体側フレーム87とを利用すれば、上記ロック機構B2〜B7のすべてを利用できること当然である。
【0069】
図33,34に示した第9実施形態は、自転車201の荷台に固定する固定プレート90に起立片91を設けるとともに、この起立片91にチャイルドシートCSの回転支持軸92を回転自在に貫通させている。上記のように起立片91を貫通した回転支持軸92の先端には揺動部93を連続させているが、この揺動部93は上記回転支持軸92に対してほぼ直角にしている。そして、この揺動部93の先端には重り94を設けているが、この重り94の作用で揺動部93を鉛直方向に保っているとき、チャイルドシートCSが正規位置、すなわち自転車201がまっすぐに立っているとき、チャイルドシートCSの座面がほぼ水平になる位置に保たれるようにしている。
【0070】
また、上記固定プレート90の下面には支持軸95を設けるとともに、この支持軸95には保持部96を設けている。つまり、この実施形態において、支持軸95をハンドル軸に見立て、その支持軸95と揺動部93との間で、第1〜第8実施形態と全く同じロック機構を設けることができる。したがって、この第9実施形態におけるロック機構は、第1〜8実施形態のロック機構を援用し、その詳細な説明は省略する。
ただし、この第9実施形態においては、上記したように重り94を設けているので、その分、チャイルドシートCSの座面を、より安定的に水平に保つことができる。
なお、上記各実施形態では、自転車用のチャイルドシートの例を説明したが、この発明は、自転車以外の二輪車用チャイルドシートにも、上記と同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】第1実施形態の揺動機構A1を示す概念図である。
【図2】図1におけるII−II線断面図である。
【図3】第1実施形態の揺動体を示す斜視図である。
【図4】第1実施形態における揺動機構A1の作用を説明する図である。
【図5】第1実施形態のロック機構B1を示す斜視図である。
【図6】ロック機構B1の概念図であり、(a)は上面図、(b)は断面図である。
【図7】ロック機構B1の部分拡大図である。
【図8】ロック機構B1の作動状態を示す概念図である。
【図9】ロック機構B1のロック解除状態を示す斜視図である。
【図10】第2実施形態のロック機構B2を示す斜視図である。
【図11】ロック機構B2の概念図であり、(a)は上面図、(b)は断面図である。
【図12】ロック機構B2の作動状態を示す斜視図である。
【図13】第3実施形態のロック機構B3の概念図であり、(a)は上面図、(b)は断面図である。
【図14】ロック機構B3のロック解除状態を示す概念図である。
【図15】第4実施形態のロック機構B4を示す斜視図である。
【図16】ロック機構B4の断面図である。
【図17】ロック機構B4のロック解除状態を示す斜視図である。
【図18】第5実施形態の揺動機構A1及びロック機構B5を示す概念図である。
【図19】第5実施形態の部分の側面図である。
【図20】第5実施形態のロック機構B5を示す斜視図である。
【図21】ロック機構B5の概念図であり、(a)は上面図、(b)は一部断面図である。
【図22】ロック機構B5のロック解除状態を示す概念図であり、(a)は上面図、(b)は一部断面図である。
【図23】ロック機構B5のロック解除状態を示す斜視図である。
【図24】第6実施形態の揺動機構A1及びロック機構B6を示す側面図である。
【図25】ロック機構B6の上面図である。
【図26】ロック機構B6のロック解除状態を示す概念図である。
【図27】第7実施形態の揺動機構A1及びロック機構B7を示す概念図である。
【図28】ロック機構B7のロック解除状態を示す概念図である。
【図29】第8実施形態の揺動機構A2を示す斜視図である。
【図30】揺動機構A2の側面図である。
【図31】図30におけるX−X線断面図である。
【図32】ロック機構B8の概念図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【図33】第9実施形態を示す側面図である。
【図34】第9実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0072】
202 車体
203 サドル
205 車体側であるハンドル軸
A1,A2 揺動機構
5b,93 揺動フレーム
B1〜B8 ロック機構
12,20,31,42,60,70,84,96 保持部
41,53 連結部材
【技術分野】
【0001】
この発明は、子供などを座らせる自転車用チャイルドシートの安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自転車に取り付けるチャイルドシートとして、例えば特許文献1,2に示すものが従来から知られているが、これらのチャイルドシートは、自転車のハンドルや荷台等にしっかりと固定される。
そして、このチャイルドシートにはシートベルトを設けて、走行中に自転車が転倒しても、子供が路上に投げ出されないようにしている。
【特許文献1】特開2006−15920号公報
【特許文献2】特開2000−238646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
自転車が走行中に転倒したとき、子供が自転車から放り出されないようにすることも安全上必要なことである。しかし、自転車が転倒したときに、チャイルドシートに座っている子供の姿勢いかによっては、顔面や頭などを地面に強打することもあるので、自転車が転倒しても、子供の姿勢を安全に保つことも重要になる。
ところが、前記従来の安全装置では、上記したように自転車が転倒した際に、子供が自転車から投げ出されるのを防止できるが、子供の姿勢を安全に保つことに関しては、全く無防備であるのが実情である。かえって、シートベルトなどで体の自由を束縛されている分、本能的に安全な姿勢を整えるといったこともできず、安全を目的としたシートベルトが危険を大きくすることすらあった。
【0004】
そこで、発明者らは、自転車のチャイルドシートに座っている子供を詳細に観察したところ、自転車が横倒しになったときには、チャイルドシートの座面から地面に落ちる方が、言い換えると子供のお尻のほうから地面に落ちる方が、より安全性が高いことを見出した。
この発明の目的は、自転車が転倒した際に、子供が頭を地面に強打しないようにしたチャイルドシートの安全装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、車体のサドル前方または後方に揺動機構を介してチャイルドシートを揺動可能に設けた点に特徴を有する。
第2の発明は、第1の発明を前提とし、上記車体と揺動機構とは、上記チャイルドシートの揺動を止めるロック機構を介して連係する一方、車体が傾いてチャイルドシートを揺動させる力が設定値以上になったとき、上記ロック機構がロックを解除してチャイルドシートの揺動を許容する構成にしている。
【0006】
第3の発明は、上記第2の発明を前提とし、上記ロック機構は、車体側あるいはチャイルドシート側のいずれか一方に設けた保持部と、いずれか他方に設けた被保持部とからなり、車体が傾いてチャイルドシートを揺動させる力が設定値以上になったとき、ロック機構でロックされた上記揺動機構の揺動支点を中心にして描かれる保持部あるいは被保持部の揺動軌跡から、保持部あるいは被保持部のいずれか一方もしくは双方を退避させてロックを解除する構成にしたものである。
第4の発明は、チャイルドシートの座面よりも下方に重りを設けたものである。
なお、上記二輪車には、自転車のほか、自動二輪、いわゆるオートバイも含まれる。
【発明の効果】
【0007】
第1の発明によれば、車体が傾いたときには、チャイルドシートが揺動するので、このチャイルドシートは、子供の体重の作用で、その座面を水平方向に保つ機能を発揮する。このようにチャイルドシートの座面が重力方向を向いていれば、それに座っている子供もお尻の方から着地することになる。したがって、子供は、顔面や頭などを地面に強打することがなく、その安全性は非常に高いものになる。
【0008】
第2,3の発明によれば、自転車の傾きが小さくそれが安定している状態では、チャイルドシートが不用意に揺動しないので、子供が座っている状態で多少暴れても、当該チャイルドシートが揺れたりせず、安全な状態が保たれる。しかも、安定走行中にはチャイルドシートがゆらゆら揺れないので、その操舵性や安定性が損なわれることもない。
第4の発明によれば、重りの作用で、チャイルドシートの座面をより安定的に水平に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1〜図4を用いて、この発明の第1実施形態について説明する。
図1に示す自転車201は、その車体202に、サドル203、前輪204及び図示していない後輪を設けている。また、上記前輪204には、この発明の車体側軸となるハンドル軸205を介してハンドル206を連係するとともに、ハンドル206の操舵に応じてハンドル軸205が回転し、このハンドル軸205の回転によって前輪204を転舵する。
【0010】
そして、ハンドル206には、チャイルドシートCSが連結されるが、このシートCSをハンドル206に連結するのが揺動機構A1である。この揺動機構A1は、シートCSを、揺動自在に支持するもので、以下には、揺動機構A1について説明する。
【0011】
揺動機構A1は、ハンドル206に固定した一対の取り付け部材1,1間に支持部材2を掛け渡しているが、この取り付け部材1,1は、例えばヒンジを介して二分割可能にし、それら二分割した部材でハンドル206を挟んで保持し、それらをボルト等で固定するようにしている。
上記のようにした支持部材2には、図2に示す軸受保持部3を固定しているが、この軸受保持部3には軸受4を設けている。
そして、上記軸受保持部3には貫通孔3aを形成し、この貫通孔3aに上記支持部材2を貫通させて、当該軸受保持部3を支持部材2に固定している。結果として、この状態で上記軸受4が支持する回転軸5a、すなわち揺動軸線IIがハンドル206と直交する関係を保つことになる。
【0012】
上記のようにした軸受4には揺動体5の回転軸5aを回転自在に支持するが、この揺動体5は、図3に示すように、上記回転軸5aと、この回転軸5aに対してほぼ直角に折り曲げた揺動フレーム5bと、この揺動フレーム5bの下端を2つに分岐させたシート固定部5cとからなる。そして、軸受4に支持された回転軸5aとハンドル軸205とが直交するので、車体202がまっすぐに立っているときには、上記揺動フレーム5bが鉛直線上にあってハンドル軸205と正対することになる。また、ハンドル206を転舵すれば、揺動体5もそれにともなって回ることになる。
なお、図中符号CSはチャイルドシートで、上記シート固定部5cに固定している。
【0013】
上記のようにした揺動機構A1に支持されたチャイルドシートCSは、自転車201がまっすぐに立てられた状態では、図1に示すようにその座面が水平に保たれることになる。一方、シートCSに子供を乗せた状態で、図4に示すように、自転車201が矢印方向に傾いたとすると、シートCSの自重や子供の体重の作用で、揺動体5が、軸受保持部3を支点として揺動する。
【0014】
次に、図5〜図9を用いてロック機構B1について説明する。図5に示すように、ハンドル206と前輪204とを連係するハンドル軸205には、ロック機構B1が固定されている。
図6(a)はロック機構B1の上面図、図6(b)はロック機構B1の断面図である。このロック機構B1は、ハンドル軸205に固定する固定部材10を備えているが、この固定部材10はハンドル軸205に固定されていれば、その固定方法は問わない。そして、この固定部材10は、底面10aの周囲に外筒部10bを設けるとともに、この外筒部10bの開口縁には外側に突出するフランジ部10dを形成している。また、底面10aのほぼ中央にはハンドル軸205にぴったりとはまる内径を保った固定筒10cを起立させ、この固定筒10cをハンドル軸205に固定している。
【0015】
上記のようにした固定部材10の固定筒10cにはねじりコイルバネ11をはめているが、このねじりコイルバネ11には掛け止め部11a,11bを所定の間隔を保って突出させている。そして、この掛け止め部11a,11bの取付け時の間隔は、固定部材10の外筒部10bの内面に突出させたストッパー部10eの円周方向の幅とほぼ等しくしている。
なお、図中符号10fは、固定筒10cの先端に設けた突片で、ねじりコイルバネ11が抜けるのを防止するものである。
【0016】
上記のようにした固定部材10には、保持部12を回転自在に取り付けるが、その取り付け構造は次のとおりである。すなわち、保持部12は、二つ割りにした一対の部材からなり、それらの部材をボルト等で固定するとともに、両部材を固定した状態においてハンドル軸205を回転自在に貫通させる貫通孔12cが形成される関係にしている。そして、この保持部12の底部外面には、固定部材10の上記フランジ10dがはまる環状凹部12aを形成し、この環状凹部12aに上記固定部材10のフランジ10dを回転自在にはめ合わせるとともに、この保持部12には、固定筒10cを貫通したハンドル軸205を貫通させ、当該ハンドル軸205に対して保持部12を相対回転自在にしている。
【0017】
上記のように固定部材10に回転自在に取り付けた保持部12であって、上記環状凹部12aの内側にはトルク伝達片13を垂下させている。そして、このトルク伝達片13は前記ストッパー部10eとほぼ同一の幅を有するもので、それらトルク伝達片13及びストッパー部10eを図7に示すように、互いに対向させてねじりコイルバネ11の掛け止め部11a,11b間に収めることができるようにしている。また、上記のようにストッパー部10eとトルク伝達片13とを対向させた状態で、それらを掛け止め部11a,11b間に収めたとき、その掛け止め部11a,11bの先端がストッパー部10eの両側に接触する関係にしている。言い換えると、先端をストッパー部10eの両側に接触させた掛け止め部11a,11b間にトルク伝達片13を収めることによって、保持部12の位置決めも可能になる。
【0018】
また、ねじりコイルバネ11のバネ力以上の力がトルク伝達片13に作用して、トルク伝達片13がストッパー部10eと相対移動すると、いずれか一方の掛け止め片がストッパー部に当たったままの状態を維持しながら、いずれか他方の掛け止め片が、ねじりコイルバネ11のバネ力に抗してトルク伝達片13とともに移動し、保持部12を回すことになる。
【0019】
上記のようにした保持部12には保持端12bを設けているが、この保持端12bは、前記揺動フレーム5bの周囲と曲率をほぼ同じにした円弧状の凹部からなるもので、図6に示すように、揺動フレーム5bがこの保持端12bにはまるようにしている。そして、この保持端12bは、上記ストッパー部10eと正対する位置に設け、保持部12が回転すれば、この保持端12bも揺動するようにしている。
なお、この第1実施形態では、上記凹部を円弧状にしたが、この凹部はV字状などでもよい。
また、一定以上の揺動力が作用したときに回る保持部12とこの保持部12に保持された揺動フレーム5bとが相まってロック機構B1が構成される。
【0020】
次に、第1実施形態の作用について説明する。
保持部12の保持端12bで揺動フレーム5bをしっかりと押さえている状態で、しかも、車体202の傾きが小さく、揺動フレーム5bを揺動させようとする力が、ねじりコイルバネ11のバネ力よりも小さければ、ストッパー部10eとトルク伝達片13との相対移動が阻止される。このようにストッパー部10eとトルク伝達片13との相対移動が阻止されるということは、保持部12の回転が阻止されることであって、揺動フレーム5bもその揺動を阻止されたロック状態を保つ。このロック状態では、揺動フレーム5bが車体202と一体化されるので、チャイルドシートCSの座面も車体202とともに水平になったり傾いたりする。
【0021】
上記のように、揺動フレーム5bを揺動させようとする力が小さいということは、自転車201のスタンドを立ててそれを垂直にしているか、あるいは車体の傾きが小さい安定走行中を意味する。そして、安定走行中にチャイルドシートCSが車体の傾きに追随するということは、その分、操舵性と安定性が良好に保たれることになる。
【0022】
そして、車体202が倒れ方向に大きく傾くと、それにともなって揺動フレーム5bを揺動させようとする力も大きくなるが、その力はトルク伝達片13を介してねじりコイルバネ11に作用する。このときの力がねじりコイルバネ11のバネ力に打ち勝てば、トルク伝達片13が、ねじりコイルバネ11の一方の掛け止め部11aあるいは11bのいずれか一方を押しながら、ねじりコイルバネ11のバネ力に抗して移動する。このようにトルク伝達片13が移動すると、それにともなって保持部12も回り、保持端12bが揺動フレーム5bの揺動軌跡から退避し、揺動フレーム5bを図8に示すように保持端12bから開放して、揺動フレーム5bを揺動自在にさせる。
【0023】
揺動フレーム5bが揺動自在になれば、チャイルドシートCSは、その重力によって当該チャイルドシートCSの座面を地面に対して水平もしくはほぼ水平に保つことになる。このように車体202が倒れ方向に傾いても、チャイルドシートCSの座面が地面に対して水平もしくはほぼ水平に保たれるので、そこに乗っている子供は、頭を常に上に保ちながら自転車とともに倒れるので、顔面や頭を地面に強打させたりしない。
なお、ねじりコイルバネ11の弾性力に抗して保持部12を回そうとする力は、チャイルドシートCSの揺動方向に作用する荷重に比例する。すなわち、この揺動方向に作用する荷重は、自転車201の垂直状態からの傾き角度(以下「倒れ角」という)に比例する。
【0024】
いずれにしても車体が傾いてチャイルドシートを揺動させる力が設定値以上になったときに、揺動フレーム5bが揺動自在になって、チャイルドシートCSを水平もしくはほぼ水平に保つが、上記設定値以上の揺動力とは、ねじりコイルバネ11のバネ力と保持端12bの凹部の深さ、すなわち、揺動フレーム5bとの嵌合量によって決まることになる。そして、何を基準にして設定値以上の揺動力とするかは、当該安全装置を用いたチャイルドシートCSを使用する子供の対象年齢によって異なる。対象年齢が大きければ、それだけ体重も重くなるので、当然のこととして設定値も大きくなり、対象年齢が小さければ、設定値は小さくなる。
【0025】
上記のことを考慮すると、ねじりコイルバネ11を交換可能にしておくのがのぞましい。このようにしておけば、チャイルドシートCSを利用する子供の体重ごとに、きめ細かな調整が可能になる。
【0026】
以上のように、上記第1実施形態によれば、自転車201の倒れ角が大きくなったとき、つまり当該自転車201が転倒すると考えられる場合にのみシートCSを揺動させ、通常時すなわち走行中や自転車201を押して歩いているときにはシートCSを揺動させないので、運転者の操舵性や安定性が損なわれることがなく、また、子供の乗り心地が悪化することもない。
ただし、自転車が倒れたときの安全性のみを考慮すれば、上記ロック機構B1は必ずしも用いなくてもよいが、ロック機構B1がないと、通常走行時の操安性が損なわれることもあるので、ロック機構B1を備える方が望ましい。
なお、上記第1実施形態においては、保持部12をハンドル軸205に設けるとともに、保持端12bで揺動フレーム5bを保持するようにしたが、保持部12を揺動フレーム5bに設け、保持端12bでハンドル軸205を保持するようにしても上記と同様の効果を期待できる。
【0027】
図10〜図12を用いて、この発明の第2実施形態について説明する。ただし、この第2実施形態は、揺動機構A1の揺動を止めるロック機構B2に特徴があり、その他の構成は上記第1実施形態と同じである。したがって、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付するとともに、その詳細な説明は省略し、ここでは、ロック機構B2の構造及び作用について詳細に説明する。
【0028】
上記ロック機構B2は、図10に示すように、この発明の車体側軸となるハンドル軸205側に設けた保持部20と、この保持部20に保持される揺動フレーム5bとによって構成されるものである。
そして、図11(a)及び図11(b)に示すように、上記保持部20は固定部材21に設けているが、この固定部材21は、2分割された部材でハンドル軸205を挟み込むようにして当該ハンドル軸205に固定されている。この固定部材21をさらにくわしく説明すると、上記のように2分割された部材を合わせることによって、貫通孔21a,21aが形成されるとともに、この貫通孔21a,21aにハンドル軸205を貫通させている。そして、貫通孔21a,21aにハンドル軸205を圧接させて、当該ハンドル軸205に固定部材21を固定している。したがって、ハンドル206を操舵してハンドル軸205が回転すると、ハンドル軸205と一体的に固定部材21が回転することとなる。
【0029】
そして、この固定部材21には、上記保持部20を設けているが、この保持部20は、摺動部20aを固定部材21に形成したガイド孔21bに摺動自在に挿入するとともに、この摺動部20aの挿入端には摺動部20aがガイド孔21bから抜けるのを防止するフランジ部20bを形成している。
上記のようにガイド孔21bに摺動部20aを挿入した保持部20は、その軸線がハンドル軸205に対して直交する関係にしている。言い換えると、保持部20はハンドル軸205に直交する方向に摺動自在に組みつけられている。
【0030】
そして、上記フランジ部20bとは反対端である保持部20の先端には、保持端20cを設けているが、この保持端20cは、前記揺動フレーム5bの周囲と曲率をほぼ同じにした円弧状の凹部からなるもので、この凹部は、揺動フレーム5bを嵌合させるものである。さらに、フランジ部20b側と、固定部材21内であってフランジ部20bに対向する壁面との間に圧縮コイルバネ22を介在させている。そして、この圧縮コイルバネ22の作用で、通常は、保持部20の保持端20cが揺動フレーム5b側に突出するが、揺動フレーム5bがハンドル軸205と正対しているとき、図11(a)に示すように、保持端20cが揺動フレーム5bを保持するようにしている。
なお、この第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、上記凹部は円弧状に限らず、V字状などでもよい。
【0031】
したがって、揺動フレーム5bの揺動力が保持端20cに作用したとき、揺動フレーム5bは保持部20を押しのけて揺動しようとするが、このときの押しのけ力が圧縮コイルバネ22のバネ力よりも弱ければ、揺動フレーム5bは保持端20cで保持された状態を保つ。しかし、上記押しのけ力が圧縮コイルバネ22のバネ力に打ち勝てば、揺動フレーム5bは保持部20を圧縮コイルバネ22のバネ力に抗して押しのけて揺動することになる。言い換えると、上記押しのけ力で、保持部20の保持端20cを揺動フレーム5bの揺動軌跡から退避させて、揺動フレーム5bが揺動可能になる。
【0032】
したがって、車体が傾いてチャイルドシートを揺動させる力が、圧縮コイルバネ22のバネ力で決まる設定値以上になったときに、揺動フレーム5bが揺動自在になって、チャイルドシートCSを水平もしくはほぼ水平に保つが、上記設定値以上の揺動力とは、圧縮コイルバネ22のバネ力と保持端20cの凹部の深さ、すなわち、揺動フレーム5bとの嵌合量によって決まることになる。そして、当該安全装置を用いたチャイルドシートCSを使用する子供の対象年齢によって、設定値を相違させることができること第1実施形態と同じである。
なお、この第2実施形態においても、一定以上の揺動力が作用したときに退避する保持部20とこの保持部20に保持された揺動フレーム5bとが相まってロック機構B2が構成される。
また、第1実施形態と同様に、保持部20を揺動フレーム5bに設け、保持端20cでハンドル軸205を保持するようにしても上記と同様の効果を期待できる。
【0033】
上記のようにした第2実施形態の作用は第1実施形態と同様であって、自転車が一定の倒れ角以上に傾けば、揺動フレーム5bが揺動してチャイルドシートCSの座面を水平もしくはほぼ水平に保つものである。
【0034】
図13,図14に示した第3実施形態は、上記揺動機構A1の揺動を止めるロック機構B3に特徴があり、その他の構成は上記第1実施形態と同じである。したがって、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付するとともに、その詳細な説明は省略し、ここでは、ロック機構B3の構造及び作用について詳細に説明する。
図13(a)はロック機構B3の上面図、(b)はロック機構B3の断面図である。ロック機構B3は、この発明の車体側軸であるハンドル軸205に固定する固定部材30を備えている。
【0035】
この固定部材30には貫通孔30aを形成するとともに、この貫通孔30aにハンドル軸205を貫通させて、当該ハンドル軸205に固定部材30を固定している。したがって、ハンドル206を操舵してハンドル軸205が回転すると、ハンドル軸205と一体的に固定部材30も回ることになる。
また、上記固定部材30には、前記揺動フレーム5bに対向する側に保持部31を固定している。この保持部31は、その先端に保持端31aを形成しているが、この保持端31aは揺動フレーム5bの周囲と曲率をほぼ同じにした円弧状の凹部からなるもので、揺動フレーム5bがこの保持端31aにはまるようにしている。そして、この保持端31aは、垂直に保った揺動フレーム5bと、それに正対するハンドル軸205とを結ぶ線上に位置するものである。
なお、この第3実施形態においても、上記凹部は円弧状に限らず、V字状などでもよい。
【0036】
上記のようにした保持部31には、上記保持端31aを二分するスリット31bを形成している。そして、この保持部31は所定の荷重が作用したときに変形するウレタンゴムやシリコンゴム等の合成ゴムに代表される軟質部材で構成されている。
したがって、揺動フレーム5bの揺動力が保持端31aに作用したとき、揺動フレーム5bはスリット31bで二分された一方の保持端31a側を変形させて揺動しようとする。しかし、このときの力が上記保持端31aを変形させるのに必要な力よりも弱ければ、揺動フレーム5bは保持端31aで保持された状態を保つ。反対に、上記揺動力が保持部31を変形させるのに必要な力以上になれば、図14に示すように揺動フレーム5bは上記一方の保持端31aを変形させ、揺動フレーム5bが揺動可能になる。言い換えると、上記揺動力で、保持部31の一方の保持端31aを揺動フレーム5bの揺動軌跡から退避させて、揺動フレーム5bが揺動可能になる。このことからも明らかなように、この実施形態における設定値以上の揺動力とは、保持部31の材質の弾性力及びこの保持部31の形状で決まることになる。
【0037】
そして、車体が傾いてチャイルドシートを揺動させる力が、保持部31の弾性力及び形状で決まる設定値以上になったときに、揺動フレーム5bが揺動自在になって、チャイルドシートCSを水平もしくはほぼ水平に保つことになるもので、その他はすべて第1実施形態と同様である。
なお、この第3実施形態においても、一定以上の揺動力が作用したときに変形する保持部31とこの保持部31に保持された揺動フレーム5bとが相まってロック機構B3が構成される。
また、第1実施形態と同様に、保持部31を揺動フレーム5b側に設け、保持端31aでハンドル軸205を保持するようにしても上記と同様の効果を期待できる。
【0038】
図15〜図17を用いて、この発明の第4実施形態について説明する。ただし、この第4実施形態は、上記揺動機構A1の揺動を止めるロック機構B4に特徴があり、その他の構成は上記第1実施形態と同じである。したがって、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付するとともに、その詳細な説明は省略し、ここでは、ロック機構B4の構造及び作用について詳細に説明する。
図15に示すように、ハンドル206と前輪204とを連係するこの発明の車体側であるハンドル軸205には、ロック機構B4を構成する固定部材40が固定され、揺動フレーム5bには、同じくロック機構B4を構成する連結部材41が固定されている。
【0039】
上記固定部材40は、2つの部材を合体させてなるもので、その合体状態で貫通孔40aが形成されるようにしている。そして、この貫通孔40aに前記ハンドル軸205を貫通させて、当該固定部材40をハンドル軸205に固定している。
また、上記連結部材41には貫通孔41aを形成し、この貫通孔41aに揺動フレーム5bを貫通させて、当該連結部材41を揺動フレーム5bに固定している。
そして、揺動フレーム5bをハンドル軸205に正対させたとき、固定部材40と連結部材41との対向面40b,41bのそれぞれを平坦にするとともに、それら対向面40b,41bのそれぞれに保持溝40c,41cを形成している。
【0040】
さらに、固定部材40の上記保持溝40cには保持部42を固定しているが、この保持部42を連結部材41の保持溝41cにも固定している。
このようにした保持部42は、例えばポリカーボネートやABS等の材料で構成しており、固定部材40及び連結部材41よりも強度を弱くしている。
そして、揺動フレーム5bに揺動力が作用したときには、保持部42にせん断力が作用するが、このせん断力は揺動フレーム5bの揺動力とほぼ等しい。
したがって、上記揺動力が保持部42のせん断許容力以上の大きさになると、保持部42が破壊されて、揺動フレーム5bが揺動自在になる。そして、この実施形態においても、保持部42が破壊されることによって、当該保持部42が、揺動フレーム5bの揺動軌跡から実質的に退避したことになる。
【0041】
上記のように車体が傾いてチャイルドシートを揺動させる力が、保持部42の材質的な強度で決まる設定値以上になったときに、揺動フレーム5bが揺動自在になって、チャイルドシートCSを水平もしくはほぼ水平に保つことになるもので、その他はすべて第1実施形態と同様である。
なお、上記保持部42を、固定部材40及び連結部材41に対して交換可能にしておけば、子供の体重に応じた材質的な強度を保った保持部42を用いることによって、子供の体重差に対応することができる。
【0042】
図18〜図23を用いて、この発明の第5実施形態について説明する。ただし、この第5実施形態は、上記揺動機構A1の揺動を止めるロック機構B5に特徴があり、その他の構成は上記第1実施形態と同じである。したがって、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付するとともに、その詳細な説明は省略し、ここでは、ロック機構B5の構造及び作用について詳細に説明する。
図18〜図20に示すように、ハンドル206と前輪204とを連係するこの発明の車体側であるハンドル軸205には、当該ハンドル軸205と一体的に回転するように、固定部材50が固定されている。
【0043】
上記固定部材50内には、図21,22に示すように、この発明の保持手段を構成するソレノイド機構51を組み込んでいるが、このソレノイド機構51はロッド51aを備えており、ノーマル状態において固定部材50に形成した開口50aから、ロッド51aが突出する位置を保持する。そして、ソレノイド機構51を励磁すると、ロッド51aは、開口50aから固定部材50内に退避するようにしている。
一方、図18〜図20に示すように、軸受保持部3にはケーシング52を設け、このケーシング52内に、上記ソレノイド機構51を制御する制御手段と、自転車201の倒れ角を検出する倒れ角検出手段とを組み込んでいるが、これら制御手段及び倒れ角検出手段のいずれも図示していない。
【0044】
そして、上記倒れ角検出手段は、例えば加速度センサ等で構成されており、当該倒れ角検出手段と制御手段とが電気的に接続されている。また、上記制御手段は、配線54を介して上記ソレノイド機構51にも電気的に接続されている。
そして、上記倒れ角検出手段からの信号に基づいて、制御手段がソレノイド機構51を制御するようにしている。
【0045】
一方、図21に示すように、揺動体5の揺動フレーム5bには連結部材53を固定し、連結部材53が揺動フレーム5bと一体となって揺動するようにしている。このようにした連結部材53には、ソレノイド機構51のロッド51aの先端が進入する保持孔53aを形成している。
そして、自転車201が真っすぐに起立した状態で、連結部材53と固定部材50とが、所定の間隔をもって対向するようにしている。しかも、連結部材53には、固定部材50の開口50aと対向する位置に、保持孔53aを形成するとともに、この保持孔53aには、開口50aから突出したソレノイド機構51のロッド51aの先端が進入するようにしている。
【0046】
したがって、ソレノイド機構51が非励磁であるノーマル状態にあるときには、ロッド51aが保持孔53a内に進入して揺動フレーム5bの揺動を阻止し、ロック状態を維持する。そして、ソレノイド機構51が励磁されてロッド51aが保持孔53aから退避すると、揺動フレーム5bが揺動自在になって上記ロック状態が解除されることになる。
なお、上記のようにロック機構B5は、固定部材50、固定部材50内に設けたソレノイド機構51、ソレノイド機構51を制御する制御手段、自転車201の倒れ角を検出する倒れ角検出手段、揺動フレーム5b、及び揺動フレーム5bに固定した連結部材53で構成されている。
また、上記ソレノイド機構51、制御手段及び倒れ角検出手段の電源は、当該自転車に設置されている発電機を利用してもよいし、発電機とは別のバッテリーを自転車に搭載してもよい。
【0047】
上記のようにしたロック機構B5は、制御手段にあらかじめ設定倒れ角を記憶させておく。そして、自転車201の走行中には倒れ角検出手段が自転車201の傾きを検出してそれが制御手段に入力されると、制御手段は倒れ角が設定角度以内かどうかを判定する。それが設定角度以内であれば、ソレノイド機構51を非励磁状態に保って、ロック機構B5をロック状態に保つ。
そして、自転車201の倒れ角が設定角度以上になると、制御手段はソレノイド機構51を励磁してロッド51aを保持孔53aから退避させ、そのロック機構B5のロックを解除する。
【0048】
ロック機構B5のロックが解除されれば、揺動フレーム5bが揺動自在になって、チャイルドシートCSを水平もしくはほぼ水平に保つことになるが、その他はすべて第1実施形態と同様である。
なお、この第5実施形態では、自転車の倒れ角がチャイルドシートの揺動力に相応するものとしてとらえている。したがって、この第5実施形態においても、倒れ角すなわち車体が傾いてチャイルドシートを揺動させる力が設定値以上になったとき、上記ロック機構がロックを解除してチャイルドシートの揺動を許容するものである。
また、第1実施形態と同様に、保持手段であるソレノイド機構51を揺動フレーム5b側に設け、連結部材53をハンドル軸205側に設けるようにしてもよい。
【0049】
図24〜図26を用いて、この発明の第6実施形態について説明する。ただし、この第6実施形態の揺動機構A1は、揺動フレーム5bが可撓性を有している点のみ上記第1実施形態の揺動機構A1と異なり、その他の構成は、全て上記第1実施形態の揺動機構A1と同じである。また、この第6実施形態においては、上記揺動機構A1の揺動を止めるロック機構B6を備えた点に特徴がある。したがって、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付するとともに、その詳細な説明は省略し、ここでは、ロック機構B6の構造と揺動機構A1の作用について詳細に説明する。
図24に示すように、ハンドル206と前輪204とを連係するこの発明の車体側軸であるハンドル軸205には、ロック機構B6を構成する保持部60が固定されている。
【0050】
上記保持部60には、図25に示すように、貫通孔60aを形成するとともに、この貫通孔60aにハンドル軸205を貫通させて、当該保持部60をハンドル軸205に固定している。したがって、ハンドル206を操舵してハンドル軸205が回転すると、保持部60もハンドル軸205と一体的に回転することになる。
また、上記保持部60には、先端に保持端60bを形成しているが、この保持端60bは、前記揺動フレーム5bの周囲と曲率をほぼ同じにした円弧状の凹部からなるもので、図25に示すように、揺動フレーム5bがこの保持端60bにはまるようにしている。
なお、この第6実施形態においても、上記凹部は円弧状に限らず、V字状などでもよい。
【0051】
一方、この第6実施形態では、揺動フレーム5bに可撓性を持たせた点に最大の特徴を有する。すなわち、上記のように保持部60の保持端60bで保持された揺動フレーム5bは、設定値以上の揺動力が作用したとき、自ら撓んで保持端60bを乗り越えて、ロック機構B6でロックされた上記揺動機構の揺動支点を中心にして描かれる揺動軌跡から、揺動フレーム5bが退避するようにしたものである。したがって、この実施形態では、保持部60をハンドル軸205側に設けることが必須の構成要素になる。
また、上記設定値以上の揺動力とは、揺動フレーム5bの硬さ及び揺動フレーム5bと保持端60bとの嵌合量によって異なるもので、揺動フレーム5bを柔軟にするか、もしくは嵌合量を少なくすればするほど上記設定値が小さくなる。言い換えると、この実施形態における揺動力の設定値は、揺動フレーム5bの柔軟性及び揺動フレーム5bと保持端60bとの嵌合量に依存することになる。
【0052】
したがって、車体が傾いてチャイルドシートを揺動させる力が、揺動フレーム5bの柔軟性で決まる設定値以上になったときに、揺動フレーム5bが揺動自在になって、チャイルドシートCSを水平もしくはほぼ水平に保つことになるもので、その他はすべて第1実施形態と同様である。
なお、この第6実施形態においても、一定以上の揺動力が作用したときに変形する保持部60とこの保持部60に保持された揺動フレーム5bとが相まってロック機構B6が構成される。
また、上記軸受保持部3を、支持部材2を中心に回転可能に設ければ、上記揺動フレーム5bが、上記した撓みの方向にも回動可能となり、その回動によってロック機構を解除することもできる。
【0053】
図27,28を用いて、この発明の第7実施形態について説明するが、図27,28は、揺動体5が回転自在に支持される機構と、この発明の車体側であるハンドル軸205に固定された保持部70とを概念的に示したもので、その他の詳細な構成を省略したものである。
上記図27,28からも明らかなうように、軸受保持部3には軸受4を設けるとともに、この軸受4には、揺動体5の回転軸5aと連続するシャフト71が回転自在でかつ摺動可能に支持されている。さらに、このシャフト71の先端にはフランジ部72を設け、このフランジ部72と軸受4との間に圧縮コイルバネ73を介在させている。
【0054】
一方、ハンドル軸205には、第6実施形態の保持部60と全く同じ保持部70を固定している。すなわち、この保持部70には、貫通孔70aを形成するとともに、この貫通孔70aにハンドル軸205を貫通させて、当該保持部70をハンドル軸205に固定している。したがって、ハンドル206を操舵してハンドル軸205が回転すると、保持部70もハンドル軸205と一体的に回転することになる。
また、上記保持部70には、先端に図示していない保持端を形成しているが、この保持端は、前記揺動フレーム5bの周囲と曲率をほぼ同じにした円弧状の凹部からなるもので、揺動フレーム5bがこの保持端にはまるようにしている。そして、揺動フレーム5bに対する保持部70の保持力は、上記圧縮コイルバネ73のバネ力に依存することになる。
なお、この第6実施形態においても、上記凹部は円弧状に限らず、V字状などでもよい。
【0055】
上記の構成のもとで、車体が傾いてチャイルドシートを揺動させる力が作用すると、その揺動力が揺動フレーム5bに作用する。このとき、保持部70が揺動フレーム5bを保持する保持力が、揺動フレーム5bの揺動力に打ち勝てば、揺動フレーム5bは保持部70に保持されたまま、ロック状態を保つ。
【0056】
反対に、揺動フレーム5bの揺動力が上記保持力に打ち勝てば、シャフト71が圧縮コイルバネ73のバネ力に抗して軸方向に移動する。シャフト71が軸方向に移動すれば、それにともなって、揺動フレーム5bは、図28に示すように、保持部70で保持されたときの揺動フレーム5bの揺動軌跡から退避して、保持部70の保持力から開放される。したがって、揺動体5は揺動自在になり、チャイルドシートCSは水平もしくはほぼ水平に保たれるもので、その他はすべて第1実施形態と同様である。
【0057】
なお、この第7実施形態では、保持部70と、この保持部70から退避可能に設けた揺動フレーム5bと、保持部70の保持力を決める圧縮コイルバネ73とが相まってロック機構B7を構成するものである。
また、上記設定値以上の揺動力とは、圧縮コイルバネ73のバネ力によって異なるもので、そのバネ力を弱くすればするほど上記設定値が小さくなる。つまり、この実施形態における揺動力の設定値は、圧縮コイルバネ73のバネ力によって決まるものである。
【0058】
図29〜図32を用いて、この発明の第8実施形態について説明するが、上記各実施形態と同じ構成については、同じ符号を付して説明する。
図29に示す自転車201は、その車体202に、サドル203と後輪207とを設けている。また、上記車体202には、サドル203の後方であって上記後輪207の上方に荷台208を固定している。
【0059】
そして、図29〜図32に示すように、上記荷台208には揺動機構A2を設けているが、この揺動機構A2は、荷台208に固定した一対のガイドレール80,80を主要素にしてなる。そして、チャイルドシートCSは、その下面に固定したスライダ81,81を介してガイドレール80,80に摺動自在に取り付けられるが、ガイドレール80,80は、円弧部80a,80aからなる。
【0060】
上記のようにした円弧部80a,80aの曲率は、チャイルドシートCSの上方に仮想支点を設定し、その仮想支点を中心に車体202の倒れ方向に揺動する軌跡に一致させている。なお、上記仮想支点を高く設定すればするほど、円弧部80a,80aの曲率が大きくなり、反対に仮想支点を低く設定すればするほど上記曲率が小さくなる。
【0061】
円弧部80a,80aの曲率は、チャイルドシートCSに座る子供の安全性を考慮すれば大きい方がよいが、その曲率を大きくしすぎると、今度は、ガイドレール80,80の両端が車体202から大きく突出してしまう。ガイドレール80,80の両端が車体202から大きく突出しすぎると、走行中にガイドレール80,80が、いろいろなものにぶつかりやすくなるので、ある程度の限界がある。結局は、チャイルドシートCSに座っている子供の安全性と、走行中に他のものにぶつからないという走行時の安全性との兼ね合いで、上記曲率が決められることになる。
【0062】
なお、スライダ81,81がガイドレール80,80から抜け出て、チャイルドシートCSが放り出されないようにするため、上記直線円弧部80a,80aを連結する連結部80b,80bを設け、さらにその安全性を高めるようにしている。
【0063】
上記のようにしたチャイルドシートCSであって、一対のガイドレール80,80の間に位置するシートCSの下面には、上記ガイドレール80,80に直交する関係にした支持軸82を設けている。そして、この支持軸82には、ロック機構B8を構成する固定部材83を設けているが、ロック機構B8の構成は、図32に示すように、第1実施形態のロック機構B1の構成と同じである。そこで、以下には、このロック機構B8の概略を説明するが、概略説明の中で省略した構成要素は第1実施形態とすべて同じである。
【0064】
ロック機構B8は、支持軸82に固定する固定部材83を備えているとともに、この固定部材83には保持部84を回転自在に取り付けている。
上記のようにした固定部材83内にはねじりコイルバネ85をはめているが、このねじりコイルバネ85には掛け止め部85a,85bを所定の間隔を保って突出させている。そして、この掛け止め部85a,85bの間隔は、固定部材83に設けたストッパー部83aの円周方向の幅とほぼ等しくしている。
【0065】
上記のようにした固定部材83には、保持部84を回転自在に取り付けるが、この保持部84には、トルク伝達片86を設けている。そして、このトルク伝達片86は前記ストッパー部83aとほぼ同一の幅を有するもので、それらトルク伝達片86及びストッパー部83aを、互いに対向させてねじりコイルバネ85の掛け止め部85a,85b間に収めることができるようにしている。また、上記のようにストッパー部83aとトルク伝達片86とを対向させた状態で、それらを掛け止め部85a,85b間に収めたとき、その掛け止め部85a,85bの先端がストッパー部83aの両側に接触する関係にしている。
【0066】
また、ねじりコイルバネ85のバネ力以上の力がトルク伝達片86に作用して、トルク伝達片86がストッパー部83aと相対移動すると、いずれか一方の掛け止め片がストッパー部に当たったままの状態を維持しながら、いずれか他方の掛け止め片が、ねじりコイルバネ85のバネ力に抗してトルク伝達片86とともに移動し、保持部84を回すことになる。
【0067】
上記のようにした保持部84には保持端84aを設けているが、この保持端84aは、荷台208に設けた車体側フレーム87の周囲と曲率をほぼ同じにした円弧状の凹部からなるもので、車体側フレーム87がこの保持端84aにはまるようにしている。そして、この保持端84aは、上記ストッパー部83aと正対する位置に設け、保持部84が回転すれば、この保持端84aも回転するようにしている。
なお、この第8実施形態においても、上記凹部は円弧状に限らず、V字状などでもよい。
また、この第8実施形態では、一定以上の揺動力が作用したときに回る保持部84とこの保持部84に保持される車体側フレーム87とが相まってロック機構B8が構成される。
【0068】
上記のようにしたロック機構B8は、第1実施形態のロック機構B1と同様に機能するものである。ただ、この実施形態のロック機構B8では、車体側フレーム87が固定で、保持部84側のみが回って、ロックが解除される点が第1実施形態と異なる。ただし、上記保持部84を車体側フレーム87に設けるとともに、この保持部84で支持軸82を保持するようにすれば、第1実施形態のロック機構B1と原理的には全く同じになる。
また、この実施形態におけるロック機構は、支持軸82と車体側フレーム87とを利用すれば、上記ロック機構B2〜B7のすべてを利用できること当然である。
【0069】
図33,34に示した第9実施形態は、自転車201の荷台に固定する固定プレート90に起立片91を設けるとともに、この起立片91にチャイルドシートCSの回転支持軸92を回転自在に貫通させている。上記のように起立片91を貫通した回転支持軸92の先端には揺動部93を連続させているが、この揺動部93は上記回転支持軸92に対してほぼ直角にしている。そして、この揺動部93の先端には重り94を設けているが、この重り94の作用で揺動部93を鉛直方向に保っているとき、チャイルドシートCSが正規位置、すなわち自転車201がまっすぐに立っているとき、チャイルドシートCSの座面がほぼ水平になる位置に保たれるようにしている。
【0070】
また、上記固定プレート90の下面には支持軸95を設けるとともに、この支持軸95には保持部96を設けている。つまり、この実施形態において、支持軸95をハンドル軸に見立て、その支持軸95と揺動部93との間で、第1〜第8実施形態と全く同じロック機構を設けることができる。したがって、この第9実施形態におけるロック機構は、第1〜8実施形態のロック機構を援用し、その詳細な説明は省略する。
ただし、この第9実施形態においては、上記したように重り94を設けているので、その分、チャイルドシートCSの座面を、より安定的に水平に保つことができる。
なお、上記各実施形態では、自転車用のチャイルドシートの例を説明したが、この発明は、自転車以外の二輪車用チャイルドシートにも、上記と同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】第1実施形態の揺動機構A1を示す概念図である。
【図2】図1におけるII−II線断面図である。
【図3】第1実施形態の揺動体を示す斜視図である。
【図4】第1実施形態における揺動機構A1の作用を説明する図である。
【図5】第1実施形態のロック機構B1を示す斜視図である。
【図6】ロック機構B1の概念図であり、(a)は上面図、(b)は断面図である。
【図7】ロック機構B1の部分拡大図である。
【図8】ロック機構B1の作動状態を示す概念図である。
【図9】ロック機構B1のロック解除状態を示す斜視図である。
【図10】第2実施形態のロック機構B2を示す斜視図である。
【図11】ロック機構B2の概念図であり、(a)は上面図、(b)は断面図である。
【図12】ロック機構B2の作動状態を示す斜視図である。
【図13】第3実施形態のロック機構B3の概念図であり、(a)は上面図、(b)は断面図である。
【図14】ロック機構B3のロック解除状態を示す概念図である。
【図15】第4実施形態のロック機構B4を示す斜視図である。
【図16】ロック機構B4の断面図である。
【図17】ロック機構B4のロック解除状態を示す斜視図である。
【図18】第5実施形態の揺動機構A1及びロック機構B5を示す概念図である。
【図19】第5実施形態の部分の側面図である。
【図20】第5実施形態のロック機構B5を示す斜視図である。
【図21】ロック機構B5の概念図であり、(a)は上面図、(b)は一部断面図である。
【図22】ロック機構B5のロック解除状態を示す概念図であり、(a)は上面図、(b)は一部断面図である。
【図23】ロック機構B5のロック解除状態を示す斜視図である。
【図24】第6実施形態の揺動機構A1及びロック機構B6を示す側面図である。
【図25】ロック機構B6の上面図である。
【図26】ロック機構B6のロック解除状態を示す概念図である。
【図27】第7実施形態の揺動機構A1及びロック機構B7を示す概念図である。
【図28】ロック機構B7のロック解除状態を示す概念図である。
【図29】第8実施形態の揺動機構A2を示す斜視図である。
【図30】揺動機構A2の側面図である。
【図31】図30におけるX−X線断面図である。
【図32】ロック機構B8の概念図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【図33】第9実施形態を示す側面図である。
【図34】第9実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0072】
202 車体
203 サドル
205 車体側であるハンドル軸
A1,A2 揺動機構
5b,93 揺動フレーム
B1〜B8 ロック機構
12,20,31,42,60,70,84,96 保持部
41,53 連結部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のサドル前方または後方に揺動機構を介してチャイルドシートを揺動可能に設けた二輪車用チャイルドシートの安全装置。
【請求項2】
上記車体と揺動機構とは、上記チャイルドシートの揺動を止めるロック機構を介して連係する一方、車体が傾いてチャイルドシートを揺動させる力が設定値以上になったとき、上記ロック機構がロックを解除してチャイルドシートの揺動を許容する構成にした請求項1記載の二輪車用チャイルドシートの安全装置。
【請求項3】
上記ロック機構は、車体側あるいはチャイルドシート側のいずれか一方に設けた保持部と、いずれか他方に設けた被保持部とからなり、車体が傾いてチャイルドシートを揺動させる力が設定値以上になったとき、ロック機構でロックされた上記揺動機構の揺動支点を中心にして描かれる保持部あるいは被保持部の揺動軌跡から、保持部あるいは被保持部のいずれか一方もしくは双方を退避させてロックを解除する構成にした請求項2記載の二輪車用チャイルドシートの安全装置。
【請求項4】
チャイルドシートの揺動支点よりも下方に重りを設けた請求項1〜3のいずれかに記載した二輪車用チャイルドシートの安全装置。
【請求項1】
車体のサドル前方または後方に揺動機構を介してチャイルドシートを揺動可能に設けた二輪車用チャイルドシートの安全装置。
【請求項2】
上記車体と揺動機構とは、上記チャイルドシートの揺動を止めるロック機構を介して連係する一方、車体が傾いてチャイルドシートを揺動させる力が設定値以上になったとき、上記ロック機構がロックを解除してチャイルドシートの揺動を許容する構成にした請求項1記載の二輪車用チャイルドシートの安全装置。
【請求項3】
上記ロック機構は、車体側あるいはチャイルドシート側のいずれか一方に設けた保持部と、いずれか他方に設けた被保持部とからなり、車体が傾いてチャイルドシートを揺動させる力が設定値以上になったとき、ロック機構でロックされた上記揺動機構の揺動支点を中心にして描かれる保持部あるいは被保持部の揺動軌跡から、保持部あるいは被保持部のいずれか一方もしくは双方を退避させてロックを解除する構成にした請求項2記載の二輪車用チャイルドシートの安全装置。
【請求項4】
チャイルドシートの揺動支点よりも下方に重りを設けた請求項1〜3のいずれかに記載した二輪車用チャイルドシートの安全装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【公開番号】特開2009−190563(P2009−190563A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33365(P2008−33365)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(302046920)株式会社デザインネットワーク (4)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(302046920)株式会社デザインネットワーク (4)
[ Back to top ]