説明

二部材結合用の作業台

【課題】カバー部材及び吸音部材のクリップ挿通孔にクリップを挿入するための作業性を向上させるとともに、低コストの設備でクリップの挿入忘れを回避する。
【解決手段】カバー部材と、該カバー部材に仮置きされたマット状の吸音部材とに予め開けられている複数個のクリップ挿通孔を相互に合致させ、これらのクリップ挿通孔にクリップをそれぞれ挿入してカバー部材と吸音部材とを結合するための二部材結合用の作業台であって、テーブル10上にワーク受け台20が設けられ、このワーク受け台は、カバー部材における吸音部材の結合箇所を裏側から支持することが可能な中空の箱形に構成されているとともに、その内部に光源26が設けられている。そして、ワーク受け台20のカバー部材を支持する面は、カバー部材と吸音部材との相互に合致した状態の各クリップ挿通孔に向けて光源からの光を通す構造になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ボデーフロアに組付けられるフロントフロアカバー等のカバー部材と、マット状の吸音部材とを、これらに予め開けられている複数個のクリップ挿通孔にクリップをそれぞれ挿入して結合するために使用される二部材結合用の作業台に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のフロントフロアカバーのように騒音吸収性能が要求されるカバー部材には、その所定箇所に不織布などでマット状に成形された吸音部材を貼り付けた状態に結合して用いる。そのための作業に際しては、カバー部材を作業台のテーブル上に設けられている箱形のワーク受け台にセットするとともに、このカバー部材の所定箇所に吸音部材を仮置きする。このとき、カバー部材と吸音部材とのそれぞれに予め開けられている複数個のクリップ挿通孔を、互いに重なるように合致させておき、これらのクリップ挿通孔にクリップをそれぞれ挿入してカバー部材と吸音部材とを結合する。
なお、車両のフロントフロアカバーに関しては例えば特許文献1に開示されており、部材を結合するための作業台については例えば特許文献2に開示されている。
【特許文献1】特開2007−145097号公報
【特許文献2】特開2006−103564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の作業台において、テーブル上のワーク受け台にカバー部材をセットし、かつ、カバー部材の所定箇所に吸音部材を仮置きして相互の各クリップ挿通孔を合致させたとき、作業者からは各クリップ挿通孔を通じてワーク受け台の暗い内部が見えた状態になる。一般に、フロントフロアカバーのようなカバー部材及びその吸音部材の色は黒っぽいことから、暗いクリップ挿通孔の位置を認識しにくく、クリップを挿入するための作業性がわるい。また、フロントフロアカバーのようなカバー部材では、クリップ挿通孔が16〜21個と多数あることから、クリップの挿入忘れも生じやすい。
なお、クリップの挿入忘れを防止するために、ワーク受け台の内部にクリップの有無を検知するためのセンサを設けることもあるが、その場合は設備コストが増加する。
【0004】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、カバー部材及び吸音部材のクリップ挿通孔にクリップを挿入するための作業性を向上させるとともに、低コストの設備でクリップの挿入忘れを回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
第1の発明は、車両のボデーに組付けられるカバー部材と、該カバー部材に仮置きされたマット状の吸音部材とに予め開けられている複数個のクリップ挿通孔を相互に合致させ、これらのクリップ挿通孔にクリップをそれぞれ挿入してカバー部材と吸音部材とを結合するための二部材結合用の作業台であって、テーブル上にワーク受け台が設けられ、このワーク受け台は、カバー部材における吸音部材の結合箇所を裏側から支持することが可能な中空の箱形に構成されているとともに、その内部に光源が設けられている。そして、ワーク受け台のカバー部材を支持する面は、カバー部材と吸音部材との相互に合致した状態の各クリップ挿通孔に向けて光源からの光を通す構造になっている。
【0006】
この構成においては、カバー部材と吸音部材との相互に合致した状態の各クリップ挿通孔が、ワーク受け台の内部に設けられている光源からの光によって明るく見え、これらのクリップ挿通孔にクリップを挿入するための作業性が向上する。また、クリップが挿入されていない孔を明確に認識でき、クリップの有無を検知するための高価なセンサ等を使用することなく、低コストの設備でクリップの挿入忘れを回避することができる。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、箱形のワーク受け台が遮光材によって構成されているとともに、カバー部材を支持する面に、カバー部材と吸音部材との相互に合致した状態の各クリップ挿通孔と対応する箇所に光源からの光を通す貫通孔がそれぞれ開けられている。
【0008】
これにより、ワーク受け台の内部に設けられている光源からの光を各クリップ挿通孔に向けて効率よく通すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
図1及び図2で示す作業台のテーブル10は、支持脚12に対して取外すことができるように載せられている。このテーブル10は、図2で示すカバー部材30の形状に対応させて左右方向に長い形状に設定されている。テーブル10上の左右二箇所には、カバー部材30の所定の二箇所を裏面から支持するためのワーク受け台20がそれぞれ設けられている。また、テーブル10上の左右両側には、カバー部材30の位置を決めるためのラフガイド14がそれぞれ設けられている。
【0010】
両ワーク受け台20は、それぞれ遮光性の樹脂板等によって箱形に構成されている。両ワーク受け台20の側壁22は、ほぼ完璧な遮光壁になっているとともに、箱形の上面に相当し、ワーク(カバー部材30)を支持するための支持面24は、複数の貫通孔24a,24bが開けられており、これらの貫通孔24a,24bを除く部分は遮光壁になっている。両ワーク受け台20の内部には、光源の一例として蛍光灯26がそれぞれ設けられている。この蛍光灯26を、発光ダイオード等の光源に代えることは当然可能である。
【0011】
図2で示すカバー部材30は、車両のボデーフロアに組付けられる金属製のフロントフロアカバーが例示されている。このカバー部材30は、その複数箇所においてボデー取付け部32を有し、これらのボデー取付け部32の箇所がボデーフロアにボルトで締結される。そして、カバー部材30の二箇所には、吸音部材40を設けるための凹状のセット箇所34がそれぞれ設定されている。また、吸音部材40は、不織布等をマット状に圧縮成形したもので、カバー部材30の両セット箇所34の平面形状に対応した外形状に設定されている。
【0012】
カバー部材30の一部を拡大して表した図3から明らかなように、カバー部材30のセット箇所34および吸音部材40は、それぞれ複数個のクリップ挿通孔36,42が予め開けられている。吸音部材40はカバー部材30のセット箇所34に対し、それぞれのクリップ挿通孔36,42を相互に合致させた状態で仮置きされ、これらのクリップ挿通孔36,42にクリップ50を挿入することで、カバー部材30と吸音部材40とが結合される。
なお、図2及び図3においては、一部のクリップ挿通孔36,42にクリップ50が既に挿入された状態が示されている。
【0013】
図1において、両ワーク受け台20の支持面24に開けられている複数の貫通孔24a,24bのうち、小径の各貫通孔24aはカバー部材30及び吸音部材40の各クリップ挿通孔36,42の位置に対応している。また、個々の支持面24に一つずつ開けられている楕円形の貫通孔24bは、カバー部材30の各ボデー取付け部32のうち、セット箇所34の範囲内に位置するボデー取付け部32Aの位置に対応している。なお、個々の支持面24に開けられている他の大径の各孔は、両ワーク受け台20の軽量化等を目的とするものである。
【0014】
つづいて、カバー部材30と吸音部材40との結合作業について説明する。
まず、テーブル10上の両ワーク受け台20に対し、カバー部材30の両セット箇所34を裏側から支持した状態で載せ、かつ、両セット箇所34にそれぞれ吸音部材40を仮置きする。このとき、カバー部材30はテーブル10上の各ラフガイド14によって両ワーク受け台20に対する位置決めを行い、両吸音部材40はカバー部材30における個々のセット箇所34に位置決めする。この結果、カバー部材30と吸音部材40とのクリップ挿通孔36,42が相互に合致し、かつ、これらの合致したクリップ挿通孔36,42は両ワーク受け台20における支持面24の各貫通孔24aに合致している。
【0015】
両ワーク受け台20にカバー部材30が載せられることにより、それを検知するリミットスイッチ(図示省略)等がオンになって両ワーク受け台20内に設けられている個々の蛍光灯26が点灯する。この蛍光灯26からの光は、ワーク受け台20における支持面24の各貫通孔24aからカバー部材30及び吸音部材40の各クリップ挿通孔36,42を通って外に洩れる。つまり、作業台の傍に立っている作業者からは各クリップ挿通孔36,42が蛍光灯26の光によって明るく見え、カバー部材30及び吸音部材40の色が黒っぽい場合でも、各クリップ挿通孔36,42の位置を明確に認識することができる。
【0016】
そこで、各クリップ挿通孔36,42にクリップ50を順に挿入していき、カバー部材30と吸音部材40とを結合する。なお、クリップ50が挿入されたクリップ挿通孔36,42は、蛍光灯26からの光が遮断されて未だクリップ50が挿入されていないクリップ挿通孔36,42との違いが明確になる。したがって、クリップ50の有無を検知するための高価なセンサ等を使用することなく、クリップ50の挿入忘れを回避することができる。
なお、カバー部材30の形状や種類によっては両ワーク受け台20の形状や相互の間隔が異なるので、その場合にはテーブル10をワーク受け台20と共に交換することで対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】二部材結合用の作業台を表した外観斜視図。
【図2】二部材の結合作業状態の作業台を表した外観斜視図。
【図3】図2の一部を拡大して表した外観斜視図。
【符号の説明】
【0018】
10 テーブル
20 ワーク受け台
26 蛍光灯(光源)
30 カバー部材
36 クリップ挿通孔
40 吸音部材
42 クリップ挿通孔
50 クリップ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のボデーに組付けられるカバー部材と、該カバー部材に仮置きされたマット状の吸音部材とに予め開けられている複数個のクリップ挿通孔を相互に合致させ、これらのクリップ挿通孔にクリップをそれぞれ挿入してカバー部材と吸音部材とを結合するための二部材結合用の作業台であって、
テーブル上にワーク受け台が設けられ、このワーク受け台は、カバー部材における吸音部材の結合箇所を裏側から支持することが可能な中空の箱形に構成されているとともに、その内部に光源が設けられており、ワーク受け台のカバー部材を支持する面は、カバー部材と吸音部材との相互に合致した状態の各クリップ挿通孔に向けて光源からの光を通す構造になっている二部材結合用の作業台。
【請求項2】
請求項1に記載された二部材結合用の作業台であって、
箱形のワーク受け台が遮光材によって構成されているとともに、カバー部材を支持する面に、カバー部材と吸音部材との相互に合致した状態の各クリップ挿通孔と対応する箇所に光源からの光を通す貫通孔がそれぞれ開けられている二部材結合用の作業台。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate