説明

二酸化チタン分散液、二酸化チタン分散液の製造方法、および有機光学素子

【課題】酸化チタン微粒子が光学素子としての光散乱・透過性能を満足する程度に微粒化させ白濁を抑制するとともに、黄着色の少ない二酸化チタン分散液および該分散液の製造方法を提供する。
【解決手段】溶媒であるジグライムと表面処理剤であるトリメトキシプロピルシランとを少なくとも含む溶液に、平均一次粒子径が1nm以上30nm以下の二酸化チタン微粒子を分散させ、透過率が80%以上であることを特徴とする二酸化チタン分散液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈折光学素子、回折光学素子、レンズ、プリズム、フィルター、反射防止膜等の光学素子に使用される二酸化チタン含有樹脂組成物、およびそれに用いられる二酸化チタン分散液、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からガラスや有機樹脂からなる屈折光学素子や回折光学素子などにおいては、屈折率やその波長分散性、2次分散性の異なる光学材料を組み合わせることによって様々な収差を低減している。
【0003】
一般的に、光学用有機樹脂は光学ガラスと比較して優れた加工性を有している。そのため光学用有機樹脂は射出成形や注型成形などによる比較的低温での成形や、放射線(紫外線)硬化による成形などで、短時間で容易に加工することができる。これに対して光学ガラスは比較的高温でのモールド成形などによる加工や、粉砕及び研摩よって加工されるため、必然的に加工コストは光学用有機樹脂よりも高くなってしまう。
【0004】
しかしながら従来から知られている光学用有機樹脂は、光学用ガラスと比較して、屈折率や波長分散性及び2次分散性の特性の範囲に限りがあった。そのため、製品の性能や使用形態などにより、レンズの構成や枚数に限度がある場合では、色収差などを十分に補正することが困難となり、利用範囲が制限されている。
【0005】
近年、ナノサイズに微粒化された無機微粒子を有機樹脂中に均一に分散させる有機−無機複合材料が注目されている。この材料を光学素子に用いた場合、有機樹脂の加工のしやすさを維持したまま、有機物単独では成し得ない光学特性を無機微粒子により付与することが可能となる。しかしながら、異なる光学特性を有する物質を用いるため光を散乱させてしまい、無機微粒子の粒径を、使用する光の波長の約1/10程度まで微粒化することが必要となる。
【0006】
例えば無機物質の一つである二酸化チタンは、高い屈折率を有することが知られており、高屈折率の光学素子材料として用いることが種々検討されている。可視光の波長領域で低光散乱率である必要がある用途においては、一般に二酸化チタン微粒子の最大長は、50nm以下、更に好ましくは30nm以下とすることが好ましいと考えられている。しかしながら、一次粒子径50nm以下の二酸化チタン微粒子はその表面積の大きさから非常に凝集しやすく、一度凝集した微粒子を再度一次粒子まで高均一に分散させることは困難な場合が多い。
【0007】
特許文献1(特開平8−193172)では、少なくともメディアと無機粒子と分散媒が入った微粒子化室で、メディアと無機粒子を衝突させて無機粒子を微粒化し、無機粒子を分散媒に分散させる製造方法が開示されている。より詳細には、メディア径0.1から0.3mmのメディアにより顔料及び染料等を微粒化し、目的粒度以下の粒子となったものをろ過層にて分離することを特徴とする製造方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−193172
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載のメディア径0.1から0.3mmのメディアを用いた場合の処理は、メディアから無機微粒子に伝わる運動エネルギーが無機微粒子を粉砕する程に大きく、無機粒子の破断面がより多く露出されると考えられる。新たに露出された極性や活性の高い破断面は、無機粒子間及び/又は無機粒子と液体分子間において相互作用を容易に発現する。それにより、微粒子の再凝集や無機粒子混合物の高粘度化を引き起こすため、凝集しやすい粒子径50nm以下である二酸化チタン粒子の分散は非常に困難である。
【0010】
本発明者はさらに検討を進め、メディアの径等を最適化することにより、径50nm以下である二酸化チタン粒子の微粒化を検討している。二酸化チタン微粒子が微粒化され一次分散されていくと、二酸化チタン分散液の白濁は徐々に解消される。
【0011】
しかしながら、二酸化チタン分散液は二酸化チタン微粒子がより分散されるに従い、二酸化チタン分散液に黄着色が確認された。これでは、より高い透明性を要求される用途においては使用することができない。また更に、一旦微粒化された二酸化チタン微粒子は、時間の経過とともに再凝集を開始する。そのため、長期にわたって透明安定性を維持することは非常に困難であった。
【0012】
本発明の目的は、二酸化チタン微粒子が光学素子としての光散乱・透過性能を満足する程度に微粒化させ白濁を抑制するとともに、黄着色の少ない二酸化チタン分散液を製造することでる。また、一旦微粒化した二酸化チタン分散液の、長期にわたって透明安定性を維持することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を達成するため、溶媒であるジグライムと表面処理剤であるトリメトキシプロピルシランとを少なくとも含む溶液に、平均一次粒子径が1nm以上30nm以下の二酸化チタン微粒子を分散させ、透過率が80%以上である二酸化チタン分散液を提供している。
【0014】
また本発明は、有機分散媒と、下記一般式(1)で表されるシラン化合物とからなる溶液に添加した混合溶液に、窒素原子がドープされた平均一次粒子径が1nm以上30nm以下で凝集体を含む二酸化チタン微粒子が分散しており、透過率が80%以上であることを特徴とする二酸化チタン分散液を提供している。
一般式(1)
Si(OR3−n
(式中、Rは炭素数1〜7のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜2の炭化水素基を表し、R3は炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは0あるいは1である。)
【発明の効果】
【0015】
本発明における二酸化チタン分散液は、二酸化チタン微粒子が光学素子としての光散乱・透過性能を満足する程度に微粒化させ白濁を抑制するとともに、黄着色も抑制されており、光学用有機樹脂として非常に有用である。また、一旦微粒化した二酸化チタン分散液の、長期にわたって透明安定性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ビーズミル装置断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態として、有機光学素子としての光散乱・透過性能を満足する程度に、二酸化チタン微粒子を微粒化させ、白濁を抑制するとともに、黄着色も抑制された二酸化チタン分散液を示す。
【0018】
本発明の二酸化チタン分散液は、平均一次粒子径が30nm以下の二酸化チタン微粒子を出発原料として作製することができる。本発明において平均一次粒子径とは、粒子ひとつと同体積の球に換算した時の直径のことを示し、凝集体のそれを表すものではない。原料の平均一次粒子径が30nm以下の二酸化チタン微粒子の作成方法としては、少なくとも酸素を含む雰囲気下において、火炎中に金属粉を投入し燃焼さることで二酸化チタン微粒子を合成する方法などの公知の方法を用いることができる。一般に高温焼成された二酸化チタンはルチル構造やアナターゼ構造などの結晶構造を有し、アモルファス構造のそれと比較してより高屈折率を有するため、有機光学材料及び素子としてより好適に用いることができる。
【0019】
二酸化チタン微粒子の平均一次粒子径は、1nm以上30nm以下の範囲であることが好ましい。平均一次粒子径が1nm未満の場合は、二酸化チタン微粒子の表面近傍の結晶性に乏しい部分の体積割合が増大し、所望の性能が得られないおそれがあることから、平均粒子径は1nm以上であることが好ましい。平均粒径が30nmより大きくなると、樹脂中に高濃度分散させた際に光散乱による白濁が生じやすくなり、透明性のある分散液は得られ難くなる。一方、平均粒径が1nm未満になると、粒子表面層の非晶質部位の割合が多くなり、結晶としての特性が発現困難になる。さらに平均一次粒子径が1nm以上30nm以下の二酸化チタンは複数個の凝集体を形成していても良く、その凝集体は後述の分散処理において解砕されることにより除去される。
【0020】
本発明の二酸化チタン分散液はトリメトキシプロピルシラン存在下で分散処理することにより得ることができる。本発明者らは、トリメトキシプロピルシラン存在下で分散処理することで、二酸化チタンのゾル中での分散性を高め、さらにより高均一に微粒化、分散し、ゾルの白濁が解消されるに従いより顕著に観察される黄着色を引き起こさないことを見出し本発明に至った。一般に好適に用いられている反応性の官能基やハロゲン元素を有するシランカップリング剤を用いても、十分な高均一な高い分散性を有するゾルを作製することが可能なものもあるが、黄着色を実用上十分に抑制することは困難である。
【0021】
分散媒には、有機溶媒を用いることができる。具体的には、ジグライムを用いることが好ましい。またジグライム以外にも、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、2−メチル−2−プロパノール等のアルコール類、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、DMF、DMAc、NMP等のアミド類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素、ジグライム、ジエチルカルビトール、ジメトキシエタン、アニソール等のエーテル類、ジクロロメタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素等が挙げられるが、好ましくはエーテル類を用いることもできる。有機溶媒は常温における蒸気圧や得られる二酸化チタン分散液の着色性において適宜選択することができる。また、有機溶媒は1種類のみで使用することもでき、また、分散性や着色性を損なわない範囲において2種類以上を併用して使用することもできる。
【0022】
またゾル中には樹脂を含んでもよく、例えばアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、フェノール系樹脂、アリール系樹脂等を用いることができる。
【0023】
また、ゾル中には不飽和結合を有する樹脂モノマーを含んでもよく、例えば不飽和二重結合として(メタ)アクリレート基やビニル基等を分子内に有している化合物などを樹脂モノマーとして上げることができる。樹脂モノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリン、ジメチルアミノエチルジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、α−ナフチル(メタ)アクリレート、β−ナフチル(メタ)アクリレート、イミドアクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、1−ビニルイミダゾール、ビニルナフタレン、ビニルカルバゾール、N−ビニルフタルイミド等の1種または2種以上を用いることができる。
【0024】
また二酸化チタニアゾルは、分散剤、界面活性剤などを含んでも良く、その種類や濃度は光学素子としての散乱・透過性能が保てる程度の分散性、着色性を維持できる範囲で、所望の光学性能の求めに応じて調整することができる。
【0025】
本発明の二酸化チタン分散液を作製するためには、例えばボールミル、ビーズミル、バスケットミルなどのメディア式分散処理装置を用いることができる。このときメディアには、樹脂製、ガラス、ジルコニアなどのセラミックス製、ステンレスなどの金属製のメディアを用いることができる。その中でも、メディアや分散機との摩擦による不純物生成が少ない等の理由からより好適にはイットリウム安定化ジルコニア、ジルコニア強化アルミナ製などのメディアが好適に用いられる。
【0026】
また本発明は、平均一次粒子径が1nm以上30nm以下の二酸化チタン微粒子を出発原料を用いることができる。したがって高均一に分散した二酸化チタン分散液の作製には、二酸化チタン微粒子の凝集を解砕する分散処理が好適である。メディア式分散装置で解砕処理を行うためには、解砕に好適なサイズのメディアを用いる必要がある。例えばメディア径が100μmより大きい場合は、メディア径が100μm以下の場合と比較して、メディアの持つ運動エネルギーが過度に大きく、粒子の凝集を解きほぐす解砕処理よりも、一次粒子そのものを粉砕してしまう可能性が高い。したがって二酸化チタン微粒子の良好な分散性能を得るには、メディアの持つ運動エネルギーが小さく、解砕処理となりうるメディア径100μm以下のメディアの使用が好適である。更に好ましくは、よりエネルギー量の小さくなる粒径30μm以下のメディアの使用が好適であると考えられる。
【0027】
メディア式分散装置を図1に示す。図1では、ビーズミルなどの羽根付攪拌軸2を回転してメディアを攪拌する装置を用いて二酸化チタン微粒子の分散処理を行う場合、分散容器1には二酸化チタン微粒子、表面処理剤、分散媒、メディア(ビーズ)が導入される。その後、羽根付攪拌軸2が回転することによりメディア径100μm以下のメディアと無機微粒子が接触し、凝集した二酸化チタン微粒子が解砕し、分散される。またこのとき超音波振動装置10を設置して解砕処理を助力しても良い。超音波処理は、分散容器1、排出管4、タンク3、供給管5のいずれか、又は全てに印加することができ、解砕された二酸化チタン微粒子の再凝集を防止する。
【0028】
本発明の二酸化チタン分散液は、樹脂を溶解しコーティング液などとして用いてコーティング膜を形成したり、また、不要な溶媒等を揮発させ、その後種々の公知な成形法により所望の形状を有する光学素子とすることができる。樹脂は求める光学素子の特性に応じて二酸化チタン微粒子の分散性や着色性を維持できる範囲内において種々選択され特に限定されるものではないが、例えば二酸化チタン分散液中に溶解させることができる樹脂として前述例示した樹脂を上げることができる。また、その際分散剤、界面活性剤、レベリング剤、離型剤、酸化防止剤、光線吸収剤、着色剤などを含んでも良く、その濃度や種類は光学素子としての散乱・透過性能が保てる程度の分散性、着色性を維持できる範囲で、所望の光学性能の求めに応じて調整することができる。
【0029】
(実施例1)
粒径30μmのジルコニアビーズ400gを備えたビーズミルの分散容器に、一次粒子径15nmの二酸化チタン粉末、トリメトキシプロピルシラン、ジグライム300mLを加えた。その際、二酸化チタン濃度は1%、トリメトキシプロピルシラン濃度は2%となるよう調整した。続いて、周波数35kHz、出力100Wで超音波振動をタンクに印加しながら、攪拌軸回転数3485rpm、ポンプ流量10kg/hの条件で1440分ビーズミル処理を行った。得られた二酸化チタン分散液は、以下に示す評価法により評価した。評価結果を表1に示す。
【0030】
<光透過率・散乱率の評価>
二酸化チタン分散液を光路長2mmの石英セルに入れ、日立ハイテクノロジー社製分光光度計U−4000(製品名)を用いて測定した。透過率は、波長430nmにおける透過率が80%以上を良、80%未満を不良として評価を行い、また散乱率は、1%未満を良、1%以上を不良として評価を行った。
【0031】
(実施例2)
実施例1の二酸化チタン粉末の一次粒子径を30nmとして実施した。二酸化チタン粉末の一次粒子径以外の条件は、実施例1と同様である。得られた二酸化チタン分散液は、実施例1と同様の方法で評価を行った、評価結果を表1に示す。
【0032】
(実施例3)
実施例1で得られた二酸化チタン分散液に、PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレートと1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンを添加し、ロータリーエバポレーターを用いて24時間で大気圧から2hPsまで圧力を低下させながら実施例1で得られた分散液中のジグライムを留去した。その時の水浴温は50℃とし、留去されたジグライムは適宜系内から取り除いた。得られた光学材料は、二酸化チタン濃度が5%に、光重合開始剤が1.4%に調整された。
【0033】
本光学材料を、互いに対向させた2枚のガラス基板にスペーサーを配し、ガラス基板の中央に流延した。その後、ガラス基板に密着させながら展開し、紫外線を照射(50mW/cm、2,200秒)して硬化させた。製造されたフィルム状の光学樹脂成形体は厚さ30μmであり、光透過性の有機光学素子としての光散乱・透過性能を満足する程度の透明性を有していた。
【0034】
(比較例1)
実施例1のトリメトキシプロピルシランを、メタクリロキシプロピルトリメトキシシランに変更して実施した。得られた二酸化チタン分散液は、実施例1と同様の方法で評価を行った、評価結果を表1に示す。
【0035】
(比較例2)
実施例1のトリメトキシプロピルシランを、トリフルオロプロピルトリメトキシシランに変更して実施した。得られた二酸化チタン分散液は、実施例1と同様の方法で評価を行った、評価結果を表1に示す。
【0036】
(比較例3)
実施例1の二酸化チタン粉末の一次粒子径を180nmとして実施した。二酸化チタン粉末の一次粒子径以外の条件は、実施例1と同様である。得られた二酸化チタン分散液は、実施例1と同様の方法で評価を行った、評価結果を表1に示す。
【0037】
表1より、実施例1、2は、トリメトキシプロピルシラン存在下で分散処理した場合であり、二酸化チタン分散液は良好な分散性を示し、顕著な黄着色は確認されなかった。実施例1と比較して、比較例1と2はそれぞれメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン存在下で分散処理した場合であり、二酸化チタン微粒子は均一に分散されたが、二酸化チタン分散液は黄着色し、着色の程度を表す指標として用いた波長430nmにおける透過率は、80%未満であった。比較例3は二酸化チタン微粒子の一次粒子径を180nmにした場合であり、得られた二酸化チタン分散液は白濁すると同時に透過・散乱率も不十分な値であった。
【0038】
【表1】

【0039】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態として、有機光学素子としての光散乱・透過性能を満足する程度に、二酸化チタン微粒子を微粒化させ、白濁を抑制するとともに、一旦微粒化した二酸化チタン分散液の長期にわたっても透明安定性を維持する二酸化チタン分散液を示す。なお、以下においてドープ型二酸化チタンとは、窒素原子がドープされた二酸化チタンを意味する。
【0040】
本発明における二酸化チタン分散液は、窒素原子がドープされた平均粒径が1nm以上50nm以下の二酸化チタン微粒子と下記一般式(1)で表されるシラン化合物と有機分散媒からなる。
一般式(1)
Si(OR3−n
(式中、Rは炭素数1〜7のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜2の炭化水素基を表し、R3は炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは0あるいは1である。)
ドープする原子としては、窒素原子の他に硫黄、リン、セレン等であるがこれらに限定されない。好ましくは、毒性や合成時の容易さ、産業上の利便性等を考慮すると硫黄および窒素である。二酸化チタンに硫黄原子をドープした場合、硫黄原子特有の屈折率分散特性(高アッペ)が二酸化チタンに付与されるため、二酸化チタン本来の屈折率分散特性から大きくずれてしまう。そのため、より好ましくは、窒素である。
【0041】
該ドープ型二酸化チタンの平均粒径は、分散媒中で透過率と散乱率が有機光学素子用材料として利用できる範囲内であって分散状態を安定に保持できるのであれば特に限定はなく1nm以上30nm以下であることが好ましい。平均粒径が30nmより大きくなると、樹脂中に高濃度分散させた際に光散乱による白濁が生じやすくなり、透明性のある分散液は得られ難くなる。一方、平均粒径が1nm未満になると、粒子表面層の非晶質部位の割合が多くなり、結晶としての特性が発現困難になる。また、ヘテロ原子ドープによるレッドシフトで微粒化によるブルーシフトで低下した屈折率の異常分散特性を効率的に回復させるには、より多くのヘテロ原子をドープすることが望ましい。表面積の大きい粒子は、より多くのヘテロ原子をドープできるため、より好ましくは、該ドープ型二酸化チタンの平均粒径は1nm以上30nm以下である。
【0042】
二酸化チタンの結晶構造としては、ルチル、アナターゼ等であるがこれらに限定されない。該ドープ型二酸化チタンの合成法としては、ゾルゲル反応により直接合成する方法と予め合成した二酸化チタンにドープ剤を加えて合成する方法の2種があるがどちらでも構わない。窒素ドープ二酸化チタンの合成法の中で、ゾルゲル反応により直接合成する方法としては、例えば三塩化チタンとアンモニア水から合成する方法がある(特開2001−072419号公報)。しかし、ゾルゲル反応により直接合成する場合、反応過程中の加熱が不十分となり結晶化度の低いドープ型二酸化チタンしか合成できない。一方、予め合成した二酸化チタンにドープ剤を加えて合成する方法の場合、焼成やプラズマ雰囲気を経ることができ高度に結晶化されたドープ型二酸化チタンが合成できる。そのため、合成法としては予め合成した二酸化チタンにドープ剤を加えて合成する方法が好ましい。予め合成した二酸化チタンにドープ剤を加えて合成する方法としては特に限定されず、文献等に記載されている既知の方法の他に、例えば酸化チタンの微粒子をアンモニアの雰囲気下700℃で熱処理して合成する方法(特開2001−207082号公報)、窒素ガス雰囲気下プラズマ処理して合成する方法(特開2000−140636号公報)等である。
【0043】
また、前記一般式(1)中のRは、炭素数1〜7のものが良く、炭素数が8以上では該ドープ型二酸化チタンを有機分散媒中に分散させる工程が立体障害の影響により長時間になるため好適ではない。そのため、具体的には、メチル、エチル、ビニル、プロピル、2−プロピル、プロペニル、ブチル、3−メルカプトプロピル、3−アクリルオキシプロピル、3−メタクリルオキシプロピル、3−(2−オキシラニルメトキシ)プロピル等であるがこれらに限定されない。分散液の透過率等を考慮すると、好ましくは、メチル、エチル、ビニル、プロピル、2−プロピル、プロペニル、ブチルである。また、前記一般式(1)中のRは、炭素数1〜2のものが良く、炭素数が3以上のものは該ドープ型二酸化チタンを有機分散媒中に分散させる工程が立体障害の影響により長時間になるため好ましくない。具体的には、メチル、エチル、ビニルである。また、前記一般式(1)中のRは、炭素数1〜4のものが良く、炭素数が5以上では該ドープ型二酸化チタンを有機分散媒中に分散させる工程が立体障害の影響により長時間になるため好適ではない。そのため、具体的には、メチル、エチル、プロピル、2−プロピル、ブチル等であるがこれらに限定されない。分散液の調製時間を考慮すると、好ましくは、メチル、エチルである。
【0044】
有機分散媒としては、酸素原子を含有する有機溶媒、炭化水素系有機溶媒であるがこれらに限定されない。酸素原子を含有する有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、フェノール、クレゾール等のアルコール系、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、アニソール、メシチレン、ジグライム、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系、酢酸エチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル等のエステル系、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン系であるがこれらに限定されない。好ましくは、分散液の黄変や長期安定性を考慮すると3−メトキシプロピオン酸メチル、ジグライム、メチルイソブチルケトンである。また、炭化水素系有機溶媒としては、例えばヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、テトラリン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等であるがこれらに限定されない。好ましくは、分散液の長期安定性を考慮するとトルエンである。
【0045】
ドープ型二酸化チタン微粒子の有機分散媒からなる二酸化チタン分散液の調製法としては、粉状のドープ型二酸化チタン微粒子を機械的な手法で有機分散媒中に分散させて調製する方法と有機分散媒中で直接調製する方法の二種が代表的であり、どちらを選んでも良い。有機分散媒中で直接調製する方法の代表例としては、アルコールやアルコールを含む有機分散媒中で行うゾルゲル反応が一般的である。しかし、ゾルゲル反応によって合成されたドープ型二酸化チタンは、最高でも溶媒の沸点程度までしか加熱されていないため結晶化度の低い結晶となる場合が多い。一方、粉状ドープ型二酸化チタンから調製する場合、原料となる二酸化チタンを調製する際に焼成工程やプラズマ加熱工程を経ることができるため、結晶化度の高い結晶による分散液を調製することが可能となる。そのため、好ましくは、粉状のドープ型二酸化チタン微粒子を機械的な手法で有機分散媒中に分散させて調製する方法である。
【0046】
粉状のドープ型二酸化チタンを有機分散媒からなる溶液に、機械的に分散させた混合溶液を得る方法としては、二酸化チタン微粒子の凝集を解砕する分散処理が好適である。ジェットミル、ボールミル、ビーズミル、ディスクミル等のミル装置や超音波ホモジナイザー等が挙げられるがこれらに限定されない。透明性のある分散液を調製することから考慮すると、前述した図1に示すメディア式分散装置であるビーズミルで好適である。用いるビーズのビーズ径は、15μm以上30μm以下のものが透明性の高い分散液を得るには好適である。ビーズ径が30μmよりも大きくなり過ぎると、凝集体の解砕だけでなく粒子自身の粉砕が起こり、粉砕によって生じる再凝集の影響で分散液の透明性は失われてしまう。一方、15μm未満のビーズは現状上市されておらず分散検討を行うことはできない。また、ビーズミル処理中に該ドープ型二酸化チタンの分散液を超音波あるいはホモジナイザー等で処理することにより、分散工程の短縮も可能となる。
【0047】
また、該ドープ型二酸化チタンを機械的に有機分散媒中に分散させる際には、前記一般式(1)で表されるシラン化合物を添加すること好ましい。添加量は該ドープ型二酸化チタンに対して50重量%〜300重量%程度が好ましい。添加量が少なくなると、分散液の透明性や安定性が低下する。一方、添加量が多すぎると、有機樹脂と混合した際に該ドープ型二酸化チタンの濃度が低下するため好ましくない。より好ましくは、100重量%〜200重量%である。また前記一般式(1)の他にドデシルベンゼンスルホニルオキシチタントリイソプロポキシド、オレイン酸チタントリイソプロポキシド等のチタンカップリング剤を用いても分散液を調製することは可能である。その際の添加量は、該ドープ型二酸化チタンに対して10重量%〜100重量%程度が望ましい。添加量が少な過ぎると、分散液の透明性や安定性が著しく低下する。一方、添加量が多過ぎると、チタンカップリング剤の凝集が起こりやすくなり、分散液の透明性は低下する。
【0048】
また、該ドープ型二酸化チタン微粒子分散液と有機樹脂を混合して光学素子用材料としても良く、有機樹脂としては、例えば、1,3−アダマンタンジオールジメタクリレート、1,3−アダマンタンジメタノールジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、2(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、ステアリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソボニルアクリレート、イソボニルメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−メタクリロイルオキシ)フェニル]フルオレン、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、ブチキシエチルアクリレート、ブトキシメチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシメチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールビスグリシジルアクリレート、エチレングリコールビスグリシジルメタクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、2,2−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、ビスフェノールFジアクリレート、ビスフェノールFジメタクリレート、1,1−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−メタクリロキシエトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−メタクリロキシエトキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)スルホン、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、メチルチオアクリレート、メチルチオメタクリレート、フェニルチオアクリレート、ベンジルチオメタクリレート、キシリレンジチオールジアクリレート、キシリレンジチオールジメタクリレート、メルカプトエチルスルフィドジアクリレート、メルカプトエチルスルフィドジメタクリレート等の(メタ)アクリレート化合物、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等のアリル化合物、スチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ジビニルベンゼン、3,9−ジビニルスピロビ(m−ジオキサン)等のビニル化合物、トリメトキシ(7−オクテニル)シラン、3−(トリメトキシシリル)プロピルアクリラート、3−(トリメトキシシリル)プロピルー2−メチルアクリラート、[2−(3−シクロヘキセンー1−イル)エチル](トリエトキシ)シラン等のシラン化合物、ジイソプロペニルベンゼン等であるがこれらに限定されない。
【0049】
このとき、生成した光学素子用材料は、重合開始剤と混合して有機光学素子などの重合性組成物として利用することも可能である。重合開始剤には、光照射によりラジカル種を発生するものやカチオン種を発生するもの、熱によりラジカル種を発生するもの等が挙げられるがこれらに限定されない。光照射によりラジカル種を発生する重合開始剤としては、2―ベンジル―2―ジメチルアミノ―1―(4―モルフォリノフェニル)―1―ブタノン、1―ヒドロキシ―シクロヘキシル―フェニルケトン、2―ヒドロキシ―2―メチル―1―フェニル―プロパン―1―オン、ビス(2,4,6―トリメチルベンゾイル)―フェニルフォスフィンオキサイド、4―フェニルベンゾフェノン、4―フェノキシベンゾフェノン、4,4’―ジフェニルベンゾフェノン、4,4’―ジフェノキシベンゾフェノン等であるがこれらに限定されない。また、光照射によりカチオン種を発生する重合開始剤としては、イルガキュア250が好適な重合開始剤として挙げられるがこれに限ったものではない。さらに、熱によりラジカル種を発生する重合開始剤としては、アゾビソイソブチルニトリル(AIBN)等のアゾ化合物、ベンゾイルパーオキサイド、t―ブチルパーオキシピバレート、t―ブチルパーオキシネオヘキサノエート、t―ヘキシルパーオキシネオヘキサノエート、t―ブチルパーオキシネオデカノエート、t―ヘキシルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオヘキサノエート、クミルパーオキシネオデカノエート等の過酸化物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0050】
紫外線等を照射して重合を開始させる場合には、公知の増感剤等を使用することもできる。増感剤の代表的なものとしては、ベンゾフェノン、4,4−ジエチルアミノベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、アシルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0051】
なお、重合可能な樹脂成分に対する光重合開始剤の添加比率は、光照射量、更には、付加的な加熱温度に応じて適宜選択することができ、また、得られる重合体の目標とする平均分子量に応じて、調整することもできる。本発明にかかる光学材料の硬化・成形に利用する場合、重合可能な成分に対して、光重合開始剤の添加量は0.01〜10.00重量%の範囲に選択することが好ましい。光重合開始剤は樹脂の反応性、光照射の波長によって1種類のみで使用することもできるし、2種類以上を併用して使用することもできる。
【0052】
また、有機樹脂は熱可塑性でも良く、例えばエチレン単独重合体、エチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等の1種又は2種以上のα−オレフィンとのランダム又はブロック共重合体、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルとの1種又は2種以上のランダム又はブロック共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレンとプロピレン以外の1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等の1種又は2種以上のα−オレフィンとのランダム又はブロック共重合体、1−ブテン単独重合体、アイオノマー樹脂、さらにこれら重合体の混合物などのポリオレフィン系樹脂;石油樹脂、テルペン樹脂などの炭化水素系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン6/66、ナイロン66/610、ナイロンMXDなどポリアミド系樹脂;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリルなどのスチレン,アクリロニトリル系樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのポリビニルアルコール系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリケトン樹脂;ポリメチレンオキシド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリイミド樹脂;ポリアミドイミド樹脂等がある。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0053】
前記重合性組成物の成形体である有機光学素子を製造する過程としては、基板に利用する光透過性材料上に膜厚の薄い層構造を形成する際には、例えば、ガラス基板を利用し、対応する型に金属材料を利用する際、両者の間に、流動性を示す該重合性組成物を流し込み、軽く抑えることで、型成形を成す。その状態に保ったまま該重合性組成物の重合を行う。かかる重合反応に供する光照射は、光重合開始剤を利用したラジカル生成に起因する機構に対応して、好適な波長の光、通常、紫外光もしくは可視光を利用して行う。例えば、前記基板に利用する光透過性材料、具体的には、ガラス基板を介して、成形されている光学材料調製用のモノマー等原料体に対して、均一に光照射を実施する。照射される光量は、光重合開始剤を利用したラジカル生成に起因する機構に応じて、また、含有される光重合開始剤の含有比率に応じて、適宜選択される。
【0054】
一方、かかる光重合反応による該重合性組成物の成形体である有機光学素子の作製においては、照射される光が型成形されているモノマー等原料体全体に均一に照射されることがより好ましい。従って、利用される光照射は、基板に利用する光透過性材料、例えば、ガラス基板を介して、均一に行うことが可能な波長の光を選択することが一層好ましい。その際、基板に利用する光透過性材料上に形成する該光学材料の成形体の総厚を薄くする形態は、本発明にはより好適なものとなる。同様に、熱重合法により成形体の作製を行うこともでき、この場合、全体の温度をより均一とすることが望ましく、基板に利用する光透過性材料上に形成する該重合性組成物の成形体の総厚を薄くする形態は、本発明にはより好適なものとなる。また形成する該重合性組成物の成形体の総厚を厚くする場合には、より膜厚、樹脂成分の吸収、微粒子成分の吸収を考慮した照射量、照射強度、光源等の選択が必要である。
【0055】
一方、前記熱可塑性樹脂との混合組成物の成形体である有機光学素子を形成する過程としては、特に限定されるものはないが、低複屈折性、機械強度及び寸法精度等の特性に優れた成形物を得るためには、溶融成形が特に好ましい。溶融成形法としては、市販のプレス成形、市販の押し出し成形、市販の射出成形等が挙げられるが、成形性及び生産性の観点から、射出成形が好ましい。また、成形工程における成形条件は、使用目的又は成形方法により適宜選択されるが、射出成形における樹脂組成物の温度は、成形時に適度な流動性を樹脂に付与して成形品のヒケやひずみの発生とともに、樹脂の熱分解によるシルバーストリークの発生を防止し、さらには、成形物の黄変を効果的に防止する観点から、150℃〜400℃の範囲であることが好ましく、200℃〜350℃の範囲であることがより好ましく、200℃〜330℃の範囲であることが特に好ましい。
【0056】
なお、ヘテロ原子がドープされた二酸化チタン微粒子と前記一般式(1)で表されるシラン化合物と有機分散媒からなることを特徴とする二酸化チタン分散液の詳細な実施系については、下記の実施例に記載する。
【実施例】
【0057】
次に実施例をあげて、本発明を詳細に説明する。ただし、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例に記載する窒素ドープ二酸化チタンは、公知の方法で合成されたものを購入し利用している。
【0058】
(実施例4)
粒径30μmのジルコニアビーズ400gを備えたビーズミルの分散容器に、一次粒子径15nmの窒素ドープ二酸化チタン粉末(アナターゼ)、トリメトキシプロピルシラン、ジグライム300mLを加えた。その際、二酸化チタン濃度は1重量%、トリメトキシプロピルシラン濃度は2重量%となるよう調製した。続いて、周波数35kHz、出力100Wで超音波振動をタンクに印加しながら、攪拌軸回転数3485rpm、ポンプ流量10kg/hの条件で、240分ビーズミル処理を行った。得られた窒素ドープ二酸化チタン分散液は、以下に示す評価法により評価した。評価結果を表2に示す。
【0059】
<光透過率・散乱率の評価>
二酸化チタン分散液を光路長2mmの石英セルに入れ、日立ハイテクノロジー社製分光光度計U−4000(製品名)を用いて測定した。透過率は、波長430nmにおける透過率が80%以上を良、80%未満を不良として評価を行い、また散乱率は、3%未満を良、3%以上を不良として評価を行った。
【0060】
(実施例5)
実施例4に記載の方法において、粒径30μmのジルコニアビーズを15μmのジルコニアビーズに変更した以外は同様にして分散液を得た。評価結果を表2に示す。
【0061】
(実施例6)
実施例4に記載の方法において、一次粒子径15nmの窒素ドープ二酸化チタン粉末(アナターゼ)を一次粒子径50nmの窒素ドープ二酸化チタン粉末(アナターゼ)に変更した以外は同様にして分散液を得た。評価結果を表2に示す。
【0062】
(実施例7)
実施例4に記載の方法において、ジグライムを3−メトキシプロピオン酸メチルに変更した以外は同様にして分散液を得た。評価結果を表2に示す。
【0063】
【表2】



【0064】
(実施例8)
実施例4に記載の方法において、ジグライムをメチルイソブチルケトンに変更した以外は同様にして分散液を得た。評価結果を表3に示す。
【0065】
(実施例9)
実施例4に記載の方法において、ジグライムをトルエンに変更した以外は同様にして分散液を得た。評価結果を表3に示す。
【0066】
(実施例10)
実施例4に記載の方法において、トリメトキシプロピルシランをトリメトキシメチルシランに変更した以外は同様にして分散液を得た。評価結果を表3に示す。
【0067】
(実施例11)
実施例4に記載の方法において、トリメトキシプロピルシランをトリメトキシエチルシランに変更した以外は同様にして分散液を得た。評価結果を表3に示す。
【0068】
(実施例12)
実施例4に記載の方法において、トリメトキシプロピルシランをトリエトキシメチルシランに変更した以外は同様にして分散液を得た。評価結果を表3に示す。
【0069】
【表3】

【0070】
(実施例13)
実施例4に記載の方法において、トリメトキシプロピルシランをトリエトキシビニルシランに変更した以外は同様にして分散液を得た。評価結果を表4に示す。
【0071】
(実施例14)
実施例4に記載の方法において、トリメトキシプロピルシランをトリエトキシエチルシランに変更した以外は同様にして分散液を得た。評価結果を表4に示す。
【0072】
(実施例15)
実施例4に記載の方法において、トリメトキシプロピルシランをトリエトキシアリルシランに変更した以外は同様にして分散液を得た。評価結果を表4に示す。
【0073】
(実施例16)
実施例4に記載の方法において、トリメトキシプロピルシランをトリエトキシプロピルシランに変更した以外は同様にして分散液を得た。評価結果を表4に示す。
【0074】
(実施例17)
実施例4に記載の方法において、トリメトキシプロピルシランをトリプロポキシメチルシランに変更した以外は同様にして分散液を得た。評価結果を表4に示す。
【0075】
【表4】

【0076】
(実施例18)
実施例4に記載の方法において、トリメトキシプロピルシランをトリエトキシ(2−プロピル)シランに変更した以外は同様にして分散液を得た。評価結果を表5に示す。
【0077】
(実施例19)
実施例4に記載の方法において、トリメトキシプロピルシランをトリエトキシシクロペンチルシランに変更した以外は同様にして分散液を得た。評価結果を表5に示す。
【0078】
(実施例20)
実施例4に記載の方法において、トリメトキシプロピルシランをトリエトキシシクロヘキシルシランに変更した以外は同様にして分散液を得た。評価結果を表5に示す。
【0079】
(実施例21)
実施例4に記載の方法において、トリメトキシプロピルシランをトリエトキシ[3−(2−オキシラニルメトキシ)プロピル]シランに変更した以外は同様にして分散液を得た。評価結果を表5に示す。
【0080】
(実施例22)
実施例4に記載の方法において、トリメトキシプロピルシランをジメトキシ[3−(2−オキシラニルメトキシ)プロピル]メチルシランに変更した以外は同様にして分散液を得た。評価結果を表5に示す。
【0081】
【表5】

【0082】
(実施例23)
実施例4に記載の方法において、トリメトキシプロピルシランをトリメトキシ(3−アクリルオキシプロピル)シランに変更した以外は同様にして分散液を得た。評価結果を表6に示す。
【0083】
(実施例24)
実施例4に記載の方法において、トリメトキシプロピルシランをトリメトキシ(3−メタクリルオキシプロピル)シランに変更した以外は同様にして分散液を得た。評価結果を表6に示す。
【0084】
(実施例25)
実施例4に記載の方法において、トリメトキシプロピルシランをジメトキシ(3−アクリルオキシプロピル)メチルシランに変更した以外は同様にして分散液を得た。評価結果を表6に示す。
【0085】
(実施例26)
実施例4に記載の方法において、トリメトキシプロピルシランをジメトキシ(3−メタクリルオキシプロピル)メチルシランに変更した以外は同様にして分散液を得た。評価結果を表6に示す。
【0086】
(実施例27)
実施例4に記載の方法において、トリメトキシプロピルシランをジメトキシジメチルシランに変更した以外は同様にして分散液を得た。評価結果を表6に示す。
【0087】
【表6】

【0088】
(実施例28)
実施例4に記載の方法において、トリメトキシプロピルシランをジメトキシメチルビニルシランに変更した以外は同様にして分散液を得た。評価結果を表7に示す。
【0089】
(実施例29)
実施例4に記載の方法において、トリメトキシプロピルシランをジメトキシシクロヘキシルメチルシランに変更した以外は同様にして分散液を得た。評価結果を表7に示す。
【0090】
(実施例30)
実施例4に記載の方法において、トリメトキシプロピルシランをジメトキシ(3−メルカプトプロピル)メチルシランに変更した以外は同様にして分散液を得た。評価結果を表7に示す。
【0091】
(実施例31)
粒径30μmのジルコニアビーズ400gを備えたビーズミルの分散容器に、一次粒子径15nmの窒素ドープ二酸化チタン粉末(アナターゼ)、トリメトキシプロピルシラン、ジグライム300mLを加えた。その際、二酸化チタン濃度は5重量%、トリメトキシプロピルシラン濃度は10重量%となるよう調製した。続いて、周波数35kHz、出力100Wで超音波振動をタンクに印加しながら、攪拌軸回転数3485rpm、ポンプ流量10kg/hの条件で480分ビーズミル処理を行い分散液を得た。評価結果を表7に示す。
【0092】
(実施例32)
粒径30μmのジルコニアビーズ400gを備えたビーズミルの分散容器に、一次粒子径15nmの窒素ドープ二酸化チタン粉末(アナターゼ)、トリメトキシプロピルシラン、ジグライム300mLを加えた。その際、二酸化チタン濃度は10重量%、トリメトキシプロピルシラン濃度は20重量%となるよう調製した。続いて、周波数35kHz、出力100Wで超音波振動をタンクに印加しながら、攪拌軸回転数3485rpm、ポンプ流量10kg/hの条件で1200分ビーズミル処理を行い分散液を得た。評価結果を表7に示す。
【0093】
【表7】

【0094】
(実施例33)
粒径30μmのジルコニアビーズ400gを備えたビーズミルの分散容器に、一次粒子径15nmの窒素ドープ二酸化チタン粉末(アナターゼ)、トリメトキシプロピルシラン、ジグライム300mLを加えた。その際、二酸化チタン濃度は0.5重量%、トリメトキシプロピルシラン濃度は1重量%となるよう調製した。続いて、周波数35kHz、出力100Wで超音波振動をタンクに印加しながら、攪拌軸回転数3485rpm、ポンプ流量10kg/hの条件で120分ビーズミル処理を行い分散液を得た。評価結果を表8に示す。
【0095】
(実施例34)
粒径30μmのジルコニアビーズ400gを備えたビーズミルの分散容器に、一次粒子径15nmの窒素ドープ二酸化チタン粉末(アナターゼ)、トリメトキシプロピルシラン、ジグライム300mLを加えた。その際、二酸化チタン濃度は5重量%、トリメトキシプロピルシラン濃度は5重量%となるよう調製した。続いて、周波数35kHz、出力100Wで超音波振動をタンクに印加しながら、攪拌軸回転数3485rpm、ポンプ流量10kg/hの条件で480分ビーズミル処理を行い分散液を得た。評価結果を表8に示す。
【0096】
(実施例35)
粒径30μmのジルコニアビーズ400gを備えたビーズミルの分散容器に、一次粒子径15nmの窒素ドープ二酸化チタン粉末(アナターゼ)、トリメトキシプロピルシラン、ジグライム300mLを加えた。その際、二酸化チタン濃度は5重量%、トリメトキシプロピルシラン濃度は7.5重量%となるよう調製した。続いて、周波数35kHz、出力100Wで超音波振動をタンクに印加しながら、攪拌軸回転数3485rpm、ポンプ流量10kg/hの条件で480分ビーズミル処理を行い分散液を得た。評価結果を表8に示す。
【0097】
(実施例36)
実施例4に記載の方法において、窒素ドープ二酸化チタン粉末(アナターゼ)を窒素ドープ二酸化チタン粉末(ルチル)に変更した以外は同様にして分散液を得た。評価結果を表8に示す。
【0098】
(実施例37)
実施例4で得られた窒素ドープ二酸化チタン(アナターゼ)分散液に、PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレートと1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンを添加し、ロータリーエバポレーターを用いて8時間で大気圧から3hPsまで圧力を低下させながら実施例1で得られた分散液中のジグライムを留去した。その時の水浴温は45℃とし、留去されたジグライムは適宜系内から取り除いた。得られた光学材料は、二酸化チタン濃度が5%に、光重合開始剤が1.4%に調整された。
本光学材料を、互いに対向させた2枚のガラス基板にスペーサーを配し、ガラス基板の中央に流延した。その後、ガラス基板に密着させながら展開し、紫外線を照射(50mW/cm2、200秒)して硬化させた。得られたフィルム状の光学樹脂成形体は厚さ50μmであった。
【0099】
(実施例38)
実施例4で得られた窒素ドープ二酸化チタン(アナターゼ)分散液に、3−(トリメトキシシリル)プロピルー2−メチルアクリラートと1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンを添加し、ロータリーエバポレーターを用いて8時間で大気圧から3hPsまで圧力を低下させながら実施例1で得られた分散液中のジグライムを留去した。その時の水浴温は45℃とし、留去されたジグライムは適宜系内から取り除いた。得られた光学材料は、二酸化チタン濃度が5%に、光重合開始剤が1.4%に調整された。
【0100】
本光学材料を、互いに対向させた2枚のガラス基板にスペーサーを配し、ガラス基板の中央に流延した。その後、ガラス基板に密着させながら展開し、紫外線を照射(50mW/cm2、200秒)して硬化させた。得られたフィルム状の光学樹脂成形体は厚さ50μmであった。
【0101】
【表8】

【0102】
(比較例4)
実施例4に記載の方法において、トリメトキシプロピルシランをトリエトキシヘキシルシランに変更した以外は同様にして分散液を得た。評価結果を表9に示す。
【0103】
(比較例5)
実施例4に記載の方法において、トリメトキシプロピルシランをトリエトキシドデシルシランに変更した以外は同様にして分散液を得た。しかし、分散液の安定性が悪く粒子が沈殿したため、正確な透過率と散乱率は測定できなかった。
【0104】
(比較例6)
実施例4に記載の方法において、トリメトキシプロピルシランをメトキシトリメチルシランに変更した以外は同様にして分散液を得た。しかし、分散液の安定性が悪く粒子が沈殿したため、正確な透過率と散乱率は測定できなかった。
【0105】
(比較例7)
実施例4に記載の方法において、一次粒子径15nmを一次粒子径180nmに変更した以外は同様にして分散液を得た。評価結果を表9に示す。
【0106】
(比較例8)
実施例4に記載の方法において、ジグライムを2−プロパノールに変更した以外は同様にして分散液を得た。評価結果を表−9に示す。
【0107】
(比較例9)
実施例4に記載の方法において、窒素ドープ二酸化チタン粉末(アナターゼ)を二酸化チタン粉末(アナターゼ)に変更した以外は同様にして分散液を得た。しかし、分散液の安定性が悪く光学特性の測定前に粒子が沈殿したため、正確な透過率と散乱率は測定できなかった。
【0108】
(比較例10)
比較例9で得られた二酸化チタン(アナターゼ)分散液に、3−(トリメトキシシリル)プロピルー2−メチルアクリラートと1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンを添加し、ロータリーエバポレーターを用いて8時間で大気圧から3hPsまで圧力を低下させながら比較例6で得られた分散液中のジグライムを留去した。その時の水浴温は45℃とし、留去されたジグライムは適宜系内から取り除いた。得られた光学材料は、二酸化チタン濃度が5%に、光重合開始剤が1.4%に調整された。
本光学材料を、互いに対向させた2枚のガラス基板にスペーサーを配し、ガラス基板の中央に流延した。その後、ガラス基板に密着させながら展開し、紫外線を照射(50mW/cm2、200秒)して硬化させた。得られたフィルム状の光学樹脂成形体は厚さ50μmであった。
【0109】
また、実施例38と比較例10のサンプルの光学特性について評価したところ、屈折率異常分散特性(θg、F値)は実施例39>比較例10となり、窒素ドープによるθg、F値の上昇も確認した。
【0110】
【表9】

【符号の説明】
【0111】
1 分散容器
2 羽根付攪拌軸
3 タンク
4 排出管
5 供給管
6 送液ポンプ
7 無機微粒子混合物
8 冷却水入口
9 冷却水出口
10 超音波振動装置
11 セパレータ
12 分散容器出口
13 分散容器入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒であるジグライムと表面処理剤であるトリメトキシプロピルシランとを少なくとも含む溶液に、平均一次粒子径が1nm以上30nm以下の二酸化チタン微粒子を分散させ、透過率が80%以上であることを特徴とする二酸化チタン分散液。
【請求項2】
請求項1に記載の二酸化チタン分散液と有機樹脂を混合し、前記溶媒を揮発させた後、硬化させることを特徴とする有機光学素子の製造方法。
【請求項3】
平均一次粒子径が1nm以上30nm以下で凝集体を含む二酸化チタン微粒子を、少なくともジグライムおよびトリメトキシプロピルシランとを含む溶液に添加した混合溶液を、メディアに平均粒径が15μm以上30μm以下のビーズを用いた微粒化装置を用いて分散処理することを特徴とする二酸化チタン分散液の製造方法。
【請求項4】
窒素原子がドープされた平均一次粒子径が1nm以上30nm以下で凝集体を含む二酸化チタン微粒子を、有機分散媒と、下記一般式(1)で表されるシラン化合物とからなる溶液に添加した混合溶液を、メディアに平均粒径が15μm以上30μm以下のビーズを用いた微粒化装置を用いて分散処理することを特徴とする二酸化チタン分散液の製造方法。
一般式(1)
Si(OR3−n
(式中、Rは炭素数1〜7のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜2の炭化水素基を表し、R3は炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは0あるいは1である。)
【請求項5】
有機分散媒と、下記一般式(1)で表されるシラン化合物とからなる溶液に添加した混合溶液に、窒素原子がドープされた平均一次粒子径が1nm以上30nm以下で凝集体を含む二酸化チタン微粒子が分散しており、透過率が80%以上であることを特徴とする二酸化チタン分散液。
一般式(1)
Si(OR3−n
(式中、Rは炭素数1〜7のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜2の炭化水素基を表し、R3は炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは0あるいは1である。)
【請求項6】
前記有機分散媒が3−メトキシプロピオン酸メチル、ジグライム、メチルイソブチルケトンのいずれかであることを特徴とする請求項4に記載の二酸化チタン分散液。
【請求項7】
下記一般式(1)で表されるシラン化合物を含有した有機樹脂に、窒素原子がドープされた平均一次粒子径が1nm以上30nm以下で凝集体を含む二酸化チタン微粒子が分散していることを特徴とする有機光学素子。
一般式(1)
Si(OR3−n
(式中、Rは炭素数1〜7のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜2の炭化水素基を表し、R3は炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは0あるいは1である。)

【図1】
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【公開番号】特開2012−214311(P2012−214311A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79564(P2011−79564)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】